誤字報告ありがとうございます、何度も見直しているのですがお恥ずかしい限りです。そして何度も見直すので自分の書いたSSが面白いのかさっぱり分かりません、感想もっとください(直球)
episode 66 たまにはノーマルなラブコメを
―王都テレポートサービス前―
とうとう待ちに待った温泉旅行の日がやって来ました。昨日の早朝にカズマ君達はアクセルから馬車でアルカンレティアへ向かっていて問題がなければ今日の昼から夕方辺りにはアルカンレティアに到着するはずだ。
お金に余裕があるカズマ君は今回完全な客として馬車に乗っているらしい、護衛の人も別にいるので戦闘になることもないだろう。アクセルからアルカンレティアまでの道のりは比較的魔物と遭遇しにくいと聞いているし仮に遭遇してもアクア様、めぐみん、ダクネス、さらにウィズさんと揃っているので心配する方が失礼かもしれない。
私達3人はと言うと、ミツルギさんの希望もあって昨日までバリバリクエストを受けてました。本来王都のクエストは1日で終われるようなものはまずないのだけどその理由の8割は移動距離にある。だけどこちらにはテレポート持ちのゆんゆんがいるのでその移動時間は単純に半減できる、だからこそ昨日の内に受けたクエストを終わらせることができ、夜はゆっくり休んだ上で、今は午前10時、こうして王都でミツルギさんと待ち合わせしているのだけど…。
「……眠いです」
はい、眠いです。昨晩はこの世界で初めての旅行が楽しみすぎて満足に眠れなかった。最後に時計を見たのは3時半くらいだったと思うからおそらく4時くらいまでは起きてた。起きたのは午前8時だから4時間は寝ているのだけど前日のクエストの疲れが完全に取れているとは言えない。こんなので大丈夫だろうかと思うものの…うん。
「……zzZ」
「ゆんゆん、いくら何でもここで寝たらまずいです」
「……う、…うん……ごめんねアリス…今日が楽しみすぎて昨日一睡もできなくて…」
背中をポンポンと叩いて揺するとこんな答えが返ってきた、まさに上には上がいるってことである。ぶっちゃけ2人して眠いので時間ギリギリまで2度寝しようかとも思ったけど起きれる気がしないので10時半の待ち合わせなのにこんなに早くこの王都テレポートサービス前にいたりする。なんだか開始からグダグダ感が半端ないです。とりあえず飲み物でも買ってきて目を覚ましてもらうしかない。
「ゆんゆん、飲み物買ってきますからここで座って待っててくださいね」
「う、うん……わかったぁ…………」
今はテレポートサービスの待合所のような一室、その中のベンチに2人して腰掛けていたのだけどゆんゆんのうつらうつらした様子に不安になるものの、私は1人立ち上がり近くにある出店で飲み物を買いに動く。ゆんゆんの荷物の中にこっそり私の水の魔晶石を入れておく。
…ゆんゆんから距離を取れば案の定感じる悪魔の力。今までは気が付かなかったものの、こうして意識を向ければなんとなくだけどわかる事がわかった。念の為にゆんゆんの持ち物にアクア様の魔晶石を入れておいてよかった、それがなければ離れるとともにゆんゆんが操られていた可能性が高い。おそらくこれは王都にいる時だけ受けているのだろう、アクセルにいる間は特に感じることはなかった。
つまりこの力の持ち主は王都にいることは間違いない。本当なら凄く怖いけど逆に考えたらこれはチャンスでもある。私が王都にいる時のみ常時悪魔が狙ってくるのなら私はそれを逆手に取り、悪魔を追跡する術を得ているからだ。勿論今はまだできないけど旅行が終わったら皆に協力を仰いで解決するつもりでもある。…大丈夫、みんなと一緒なら魔王軍幹部だってなんとかなったんだから。そう思い、決意するように私は本来の目的の為に足早に移動を開始するのだった。
……
飲み物を買って待合所に戻ると案の定ゆんゆんはベンチに座ったまま背もたれに身体を預けてすやすやと眠っていた。待合所には係の人がいるから荷物の窃盗などの心配はないのだけどそれにしても無防備すぎである。
私は隣に腰掛けるなり懐中時計を確認する。時刻は10時45分、テレポートサービスの予約時間は11時なのでそろそろミツルギさんが来ないと焦るのだけどどうしたのだろうと辺りを見渡してみる。すると入口で待合所の中を見回している男の人がいた。ただ一瞬誰だかわからなかった。
「…ミツルギさん?」
「…っ!…あぁ、そこにいたんだね、いつもと服が違うからすぐには気付かなかったよ」
「それはお互い様ですよ、鎧以外の格好を初めて見ましたよ」
ミツルギさんの服装はいつもの青い鎧姿ではなく、黒いジーンズに白いシャツの上には青いチェック柄の服をマントのように羽織っている。このまま日本にいてもおかしくはない。ただ腰には魔剣グラムがしっかり帯刀してあるのでこのまま日本にいたら銃刀法違反で捕まるだろうけど。
そして私の服装もいつもの青のゴシックプリーストではない。赤いチェックのスカート、黒の長い靴下にローファー、胸には赤い大きなリボン、そして黒のブレザー。勿論いつもの杖はそのまま持っている。
実はこの服もまたアクア様に作ってもらったのだ。勿論アクア様の加護もついているのでこの服でも問題なく対悪魔装備として機能している。
それにアルカンレティアに行ってまでアクシズ教徒扱いされるのも嫌なのでそれ対策でもあるしこの服装なら王都で無駄に名前が売れた蒼の賢者とはパッと見誰も思わないだろう。制服に杖がミスマッチすぎるけどそこは仕方ない。
「その制服はもしかして…」
「…はい、本来通うことになるはずだった高校の制服ですよ、アクア様に無理を言って作ってもらいました。修学旅行って言ったら着てみたくなりまして」
そう、この服のデザインは私が進学予定だった高校、ミツルギさんが通っていた高校の女子の制服なのだ。単純にあの高校の制服は可愛いと私のいた街では人気だった。なので今回着ることでミツルギさんに喜んでもらおうかな、と安直に考えていたのだ。
「…そうか…」
「…あっ…」
感慨深くあった私のふいに出た言葉にミツルギさんは影を落としたように俯いた。それを見て私は今言ったことを取り消したくなった。本当に安直だった、こんな姿を見せたらミツルギさんが前世を思い出すのは当たり前だ。それにこれでは私が未だに死んだことを引きづっているように見えなくもない、勿論そんな気はないものの、せっかくの旅行のスタートから暗い話題にする必要は全くない。
「あ、ち、違うんですよ、未練とかじゃなくて単純に可愛い制服でしたから着てみたくて!…そ、その…似合ってますか?」
慌ててミツルギさんの前に立ち上がり、私は恥じらいもなしに見せつけるようにその場で元気にターンを決めた。赤いチェックのスカートと私の頭のツインテールがふわりと揺れる。ただやってみて少し後悔する、誤魔化したい気持ちが大きかったのかもしれない。普通ならこんな恥ずかしいことまずやれないしやりたくない。
「あぁ、凄く似合っている、可愛いよ」
「……あ、ありがとうございます…」
自分の考え無しの行動にかなり恥ずかしくなっているのにまさかの追い討ちである。本当にこの先輩はずるい。なんで全く躊躇なくそんな風にど直球に女の子を褒めることができるのか。男の人に面と向かってこんなことを言われたのは当然私の人生で初めてだ、おまけにあのミツルギさんに。
そりゃ私は恋愛感情が乏しいのでミツルギさんを見てもイケメンとは思ってもそれ以上は普段思わないのですよ、それでもやっぱり私も女の子なのですよ、イケメンに面と向かって可愛いとか言われたら嬉しいし恥ずかしいのですよ。
「そ、その…ミツルギさんもかっこいいですよ…」
「ん?何か言ったかい?」
「な、なんでもないです…!!」
余計に私の羞恥は加速する、おのれバニルめ、何処にいる!?何故ですか!?声が出ない!まるでろくに喋ることができない昔に戻ってしまったような感覚が私を襲った。そりゃいつもの鎧姿を見慣れているから今の格好には少しだけドキドキしましたよ、だけどミツルギさんに言われたから言い返そうとしただけなのに声が全然出ないのはなんでなのですか!?ゆんゆん相手なら自然に可愛いとか言えるのに!
「そ、それよりその服はどうしたのです?どう見てもその服は…」
日本のでは、と言いかけて止める。言うなと言われた事はないけどなんとなくこの世界で日本のワードを言うのもよくないという暗黙の了解みたいなものがある、ただこれだけでもミツルギさんは理解したようだ。
「…実はこの手の服を専門に売っているお店があるんだよ、……大きな声では言えないけど、日本の転生者が服屋を営んでいるんだ」
「ひゃう!?……そ、そうなんですか…」
もしかしてミツルギさんの中身はバニルではないだろうかとまで思ってしまう。突然耳元で囁かれたらそりゃ私でも慌てますよ!?まさかミツルギさん狙ってやってませんか!?と声をあげて聞きたいくらいあった。そりゃ転生者とか安易に誰が聞いているかわからない場所で話すことではないかもしれないけど。
…まぁそれはそれとして興味はある、いつもの服もいいけど日本の服は正直に言えば欲しい。やっぱり日本の服の方が着慣れているのもあるし屋敷で過ごす普段着として是非欲しい。
「そのお店って、女性物もあります?」
「あぁ、確かあったと思うよ、良かったら今度一緒に行こうか」
「本当ですか?ありがとうございます♪」
良かった、これで日本の服が手に入ると思うも束の間…いやいや、ありがとうございます♪じゃなくて…これ冷静に考えたらデートの約束してませんか、物凄く自然な流れで受け答えしてしまったのだけどどうしよう。いや別にパーティメンバーの一人と服を買いに行くだけだし!そんなに意識する必要ないし!…何かいちいち自分に言い聞かせてて恥ずかしくなってきた、今日の私は本当にどうしたのだろうか、多分寝不足でテンションがおかしなことになっているに違いない、そうに決まってる。……いい加減にしてくださいよバニルめ!!
…こうしてドギマギしている間、私は全く気が付かなかった。
(……どうしよう、起きるに起きれない…えっ?何この空気めちゃくちゃ入りにくいんだけど…!?)
ゆんゆんが既に起きてて寝たフリをしていたことに。
次回、ようやくアルカンレティアへ!…引っ張りすぎとか言わない!
アンケートぼちぼち締め切りますね( 'ω')圧倒的ゆんゆん