内気な少女がこのすば世界に行ったようです   作:心紅 凛莉

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大変遅くなりましたm(*_ _)m



episode 71 ゆんゆんとるんるんデート

 

―ホテル・ロビー―

 

疲れも大きくあってぐっすり眠れた翌日。私達8人はロビーに集合して今日は何をするかを話し合っていた。

 

「流石にこの人数で観光するには少し多すぎるからな、そこでこんなのを用意した」

 

カズマ君の提案で出されたのは8本の割り箸のような棒。それには赤、白、黒、青の四色が各2本ずつ塗られている。

 

「なるほど、ペアを4組作って回るわけですね、まぁいいんじゃないでしょうか」

 

「僕も特に異論はないよ」

 

他のメンバーも文句はないようでそれを確認しつつカズマ君は色のついている部分を見えないように手で隠す。そして1人ずつクジを引いていった。

 

「僕は青だな…」

 

「小柳さんかぁ、まぁいいわ、私をしっかりエスコートしなさいっ!そう、女神であるこの私をっ!」

 

ミツルギさんの言葉にアクア様が反応した。手に持つ青の色が付着された棒を指揮棒のように振りながらアピールしていた。昔の苦手意識はないようで私としても安心できた。

 

「…ミツルギです、アクア様と共に観光ができるとは光栄です、こちらこそよろしくお願いします」

 

「ミッツさん、分かってはいるだろうけど…」

 

「心配するな佐藤和真、二人でいる時はアクアさんと呼ぶようにする」

 

「いやそれもなんだけどな、そいつ放ったらかしにしておくと何をしでかすか分からないからしっかり手綱を握っておいてくれ、なんなら首輪とリードをつけてもいいから」

 

カズマ君の顔は至って真面目そのものである。もしかしたら少し前のミツルギさんなら激怒したかもしれないけど今はそんなこともなく、何も言えずに苦笑している。

 

「ふふっ、こーいうのって楽しくていいですね、私は白です♪どなたですかー?」

 

「おっと白なら私ですね、よろしくお願いしますよウィズ」

 

2組目はウィズさんとめぐみん。続いてダクネスとゆんゆんがクジを引く。

 

「私は黒だな」

 

「私は赤です」

 

そして私が最後に引く訳だけど残るクジは2本。黒を引けばダクネス、赤を引けばゆんゆんと一緒になる。どちらかなと何も考えずにクジを引くと棒の先の色は赤。ゆんゆんとペアになったようだ。個人的には大抵ゆんゆんと一緒なので気楽と言えば気楽なのだけど。

 

「ふふっ、なんかいつも通りですね。よろしくお願いしますよゆんゆん」

 

「う、うん」

 

「てことはダクネスは俺とか」

 

「ふっ、ならばしっかりエスコートしてもらおうか」

 

そんなわけでそれぞれペアが決まった。行先自由の夕方にホテル集合という計画性無しのぶらぶら観光になりそうだ。ただこういうのも悪くないとも思える。

 

「なるほど、つまりカズマの奢りは明日に持ち越しという事ですね」

 

めぐみんによりしっかり釘を刺されたカズマ君はがくりと項垂れていた。私としては半ば冗談だったので必要ないことなのだけど。それにしてもその奢りが私は気になった。ゆんゆんが提案するとはとても思えないのだから。とりあえず2人きりになったら聞いてみようかなと思いつつ、それぞれのペアは思いのままに移動を始めていた。

 

 

 

……

 

 

 

 

―アルカンレティア・歓楽エリア―

 

私とゆんゆんはとりあえずぶらぶらと歩いてみた。今回ゆんゆんが一緒なので見知らぬ街でも迷う心配は全くないのが強みである。迷ったらゆんゆんのテレポートでホテルまで飛べばいいのだから。

今いる場所に名前はないがにぎやかで人が多く、露店なども多いので歓楽街のようなものかといった感じ。いちいち布教活動をしてくる輩が多いのだけど、私達はそれを素通りすることが出来ていた。

 

「今日はいつもの服なのね」

 

「実は昨日アクア…さんから聞きまして、どうも全く勧誘を受けなかったらしいのですよ。なのでもしかしたら服装でアクシズ教徒と思われて勧誘されないのではないかと思いましたが…ビンゴだったようですね」

 

今の私の服装はいつもの青いゴシックプリーストドレスである。もはや気慣れているので落ち着くし、此処に来るまではアクシズ教徒扱いが嫌で着なかったのだけど勧誘が来なくなるメリットがあるのならむしろ着るべきと判断した。おかげで私は現状勧誘を全く受けていない、ゆんゆんはたまに勧誘されてるけど。私が隣にいるからか気持ち少なめにも思える。

 

「うん、昨日の服も凄く可愛かったけどアリスはやっぱりその服が1番似合ってると思う」

 

「ふふっ、褒め言葉と受け取りましょう、それより昨日のなんちゃって裁判で気になったのですが、ゆんゆんの提案にしては意外な判決でしたね」

 

「…あー、それはね…その…」

 

私が聞けばゆんゆんは迷うように目を逸らした。軽く周りを見回してるようにも見える。私が首を傾げていると、ゆんゆんは1枚の小さな紙を私に差し出した。

それを見れば『判決が有罪なら明日の昼食奢りの刑』と書かれている。つまりあの提案は本来ゆんゆんのものではない。そしてあの裁判を始めたきっかけは誰だろうか、更にゆんゆんを裁判長に仕立てあげた人は誰だろうか。…つまりはそういうことである。

 

「なるほど…あの時の私達はめぐみんの掌の上だったという事ですか」

 

「う、うん…カズマさんには悪いと思ったのだけど…」

 

「まぁ気にしなくていいのではないですか?カズマ君も今や何も気にしていない様子ですし」

 

実際今のカズマ君はおそらく私達の中で1番稼いでいる。デストロイヤー、バニルの討伐報酬、更にバニルとの商談でいずれは億単位のお金が入るのだとか。何をすればそうなるのかはわからないけど流石の幸運値である、代わりにその反動が他で出ている気がするけど。昨日の一件がいい例だ。

私としてはもはや本人が良いならいいやと投げやりなのだけど、いくらカズマ君がお金を持っているとはいえそれとこれとは話が別だ。少なくともゆんゆんにしてみれば。カズマ君は拾ったお金で今の状態になったわけではない、全てカズマ君の手腕で得たお金なのだから。デストロイヤー戦は話でしか聞いていないので割愛するが少なくともバニル戦はカズマ君なしでの勝利はなかっただろう。それは私達が何よりも知っている。それにお金ならカズマ君ほどではないが私達もある。だからこそ今回の旅行は全員自費での参加だ。ウィズさんは反動で貧乏に戻らないか心配ではあるけどそこはバニルさんのお仕事ということで。

 

 

 

 

閑話休題(このすば)

 

 

 

 

 

さてさて、ただ歩くのも疲れるだけなので私とゆんゆんはアルカンレティアの玄関、あのテレポートサービスから出てすぐに見えた大きな噴水のある広場に来ました。改めて見てみると絶え間なく湧き出る綺麗な水はただ眺めているだけでも飽きない。来たばかりの時は勧誘の波でまともに見れなかったけどこうして落ち着いて見てみれば綺麗なものだ。

 

「改めて見ると凄く綺麗だね…」

 

「そうですね…昨日のアレが嘘のように心落ち着きます」

 

それは絶景だった。露店で何かを買って食べたり喫茶店でお茶をしながら会話に花を咲かせるのも悪くは無い…だけどこうしてあえて何も話さずじっと流れる水を見つめながら何も考えずに過ごすのも悪くは無いと思えた。

今思えばこの世界にきてここまで頭を空っぽにしたことは初めてかもしれない、毎日が退屈とは無縁で、慌ただしくて。

 

「…アリス?」

 

とはいえゆんゆんもいるのにひとりの世界に入り込むのもよろしくない。こうやってゆんゆんと2人きりなのも最近ではなくなってしまった。家に帰ればカズマ君達がいて、クエストではミツルギさんがいる、それは悪い事ではない、コミュニティの輪が広がるのは私にとってもゆんゆんにとっても喜ばしいことだ。

 

「どうしましたか?」

 

「う、うん…ちょっと話がしたくて…」

 

私の視線は常に噴水に向いていてゆんゆんを見ることはなかった。

勿論コミュニティの輪が広がるのは悪いことではないけれど、私にとってゆんゆんは一緒に居て当たり前の存在でもあるのかもしれない。他の人がいても私は気が付くとゆんゆんの名前を呼んでいる。それはきっと2人きりで居た時間が長かったせいだろう。

 

「えっと…そのね…私にとってアリスは尊敬できる目標なの」

 

「……突然ですね、理由を聞いても…?」

 

流石にそんなことを言われたのは私の人生において初めてだ。恥ずかしいし照れてしまう。私なんかのどこを尊敬できるというのか私にはさっぱり分からない。

 

「…アリスが私と初めて出会った時のこと、覚えてる?」

 

「初めて…確か私がミルクティーをウェイトレスさんに運ばせて…」

 

「うん、それ。あの時はびっくりしたわよ」

 

苦笑混じりにゆんゆんは言うけど私としてもあの当時の挨拶は苦笑で返したくなるほどのものだったりする。確かこちらに声を掛けてこないで様子を伺ってばかりだったので引っ込み思案でコミュ障なのかなと思っていたらあの紅魔族の名乗りだ。

 

「こっちは馬鹿にされてると思いましたけど。初対面の人にあんな名乗りできるなら普通に話しかけるくらい訳ないでしょ、と」

 

「えぇ!?…その、ごめん…」

 

「ふふっ、今となってはいい思い出ですよ」

 

今となっては本当にいい思い出ではあるのだが私としてははっきり言えばゆんゆんの第一印象はあまり良くない、めんどくさい子ってイメージが強かった。だけどあの日一緒にクエストをやってきて本当に良い子なんだなと思ったし友達になって欲しいと言われた時も不快感はまずなかったし私としてもお願いしたかったくらいあるのだから。

 

「そ、それでね、怒らないで聞いてよ?その…実はあの日より2日ほど前からずっとアリスの事見てたの。いつも朝に1人でご飯を食べてたしパーティの募集もしてたから…私と同じように1人なのかな…って」

 

「別に事実ですから怒りはしませんけど…」

 

それ以前に知ってたとは言わないでおこう。捉え方によってはストーカーなんだけど今となってはゆんゆんの人となりを知っているので言うのも野暮だろう。テイラーさんのパーティに入ってはいたので厳密にはあの時だけ1人になってただけのもあるけどそれも今やゆんゆんは知っているし。

 

「つまりね、その…私と似た感じの人だったら、そのパーティを組んでくれるかなって思って…」

 

「…まぁそれは私も少し思いましたけど…似ているという点では」

 

付け加えるなら似てるとは思ったものの私以上にひどいとは思ったのだけどそれもまた言い難い。ちなみに似ているとは内面的なものであって見た目ではない。

 

「だけど一緒にクエストをやってみて、全然そんなことはないって思ったの、自分の考えをしっかり持ってて、それに行動力もあって…しかもそのアリスの芯の強さは会う度に強くなっていって…1番凄いって思った時は…王都で捕まった時かな…あの時のアリスは凄く頼りになって、かっこよかったし…」

 

「……」

 

今思えば私はゆんゆんと一緒の時は無駄に張り切っていたのかもしれない。だってゆんゆんが率先して動かないから私が動くしかないのだから。本来人を引っ張る行動力なんて私には皆無だったものだ。人に言われてなんとなく動くのが当たり前、前世ではむしろそれだった。それでなんとでもなっていたのだから気にしたことすらなかった。

だけどこの世界に来て、それでは生きていけないと感じたら、そうするしか手はなかった。流されるも何も流す前提がこの世界の私にはないのだから。

 

「今でもミツルギさんが入ってくれてパーティリーダーとして何も問題なくやれてると思うし、アリスが最初からそんな感じだったらそこまでは思わなかったのかもしれないけど、アリスは私と出会って時間とともに凄くなってて…それが羨ましくて…」

 

「…ゆんゆん、ゆんゆんも私から見れば充分変わってると思いますよ、勿論良い意味で、です」

 

「え?……そ、そうなのかな…?」

 

「気になるならめぐみんにでも聞いてみてはどうです?絶対変わったと言うと思います、少なくとも私が初めて出会った時のゆんゆんなら今のような自分の想いを長々と述べたりはまずできません」

 

そうなのだ、私が変わったと言うのならゆんゆんも間違いなく変わっている。カズマ君達は今とあまり変わりのないゆんゆんとが初対面だったので実感が薄いと思うけど私より昔からの付き合いであるめぐみんなら間違いなく断言できるだろう。

 

「ダクネスが言っていたじゃないですか、それは成長しているってことらしいですよ、自分では実感はありませんがゆんゆんが成長してるのは私が断言出来ますよ」

 

「…うん、うん…アリス、ありがとう…私が成長できたって言うのなら、それはアリスのおかげだと思うから…」

 

感慨深く胸を抱きしめるように言うゆんゆんの台詞に私は穏やかに笑った。笑ってしまうのも仕方ない。

 

「ふふっ…やっぱり私とゆんゆんはどこか似ているのかもしれませんね、私が成長できたと言うのなら、それはゆんゆんのおかげだと最近思っていたところです」

 

「…っ!…な、なんかこれ…恥ずかしいね…」

 

「言わないでくださいよ、私だって我慢してるのですから」

 

「「ふふっ…あはははっ」」

 

2人して顔を赤くして、お互いを見合わせておかしくて笑う。気恥しさを誤魔化すように笑う。数秒の2人の笑い声が終わると、私とゆんゆんはほぼ同時にまた顔を見合せた。

 

「これからもよろしくお願いしますよ、私の大事な相棒さん」

 

「…っ!うんっ!こちらこそよろしくね!…ぐすっ…」

 

少しだけ、ほんの少しだけゆんゆんの目は潤んでいたし今にも泣き出しそうなのだけど私は何も言わなかった。茶化すような空気でもなかったし、涙の理由は嬉し涙だろうし、それさえ分かれば私としては充分だった。

 

 

 

 

 

……

 

 

 

 

 

「……あの……そこのラブラブカップルの御二方……」

 

 

ふと男の人らしき声が聞こえた。とは言え私達はカップルではないので関係はないけど。ゆんゆんは慌てるように周囲を見回しているけど何故そこまで慌てるのだろうか。

…だけど何か視線を感じた。視線に敏感すぎるのも考えものだとため息をつくなり意識をそちらに持っていく。その視線は…噴水の下の湖から感じて、私はそっと視線を湖に移した。

 

「あ、やっと気づきましたか、逢瀬のお邪魔をしてしまい大変申し訳ないのですが、できれば助けてくださると…勿論この状態でも女神アクア様のお膝元にいるようで心落ち着くのですが…」

 

湖を見れば…司祭のような格好の男の人が縄で縛られて湖に流されていた。ただぷかぷかと浮いていてたまに噴水の水の直撃を受けては

 

「あばばばぶぶぶくぶく……!?」

 

と溺れかかっている。流石にこの状況には混乱しかしない。私が呆気にとられていると、ようやく湖の方に気が付いたのかゆんゆんは噴水の下を見るなり表情を驚愕に変えた。

 

「きゃぁぁぁ!?!?」

 

うん、アクア様とか言ってるし間違いなくアクシズ教徒の人だろう。それも見た目はとても偉そうだ。ほっといて逃げようとも考えたけどゆんゆんは助ける気みたいだし嫌な予感しかしないけど私はゆんゆんに着いていくようにやる気なく救助へと向かった。

 

 

 

 

 

 




デェトのお邪魔虫襲来、一体何者なんだ(棒)

次回はいつかな…(遠い目)
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