内気な少女がこのすば世界に行ったようです   作:心紅 凛莉

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やりたいことがーあるのならー、やりたいうちにーやっちまえーー


遅くなりました。一気に暑くなりましたね、皆様熱中症にはお気をつけください。



episode 73 アクシズ教義!はいっ!

 

 

 

 

想起される私の黒歴史。それはこの世界に転生してまだ右も左も分からない時、アクセルの街で生きる為に行ったアクシズ教の布教活動。

知って後悔するも後の祭り、39人もの人を犠牲にしておいて知らぬ存ぜぬではすまないし済ませる訳にもいかない。

そんな事実が私に重くのしかかる。いたたまれない気持ちになりそれは表情に出ても仕方ないことだった。

 

「おや?どうなさいましたかアリス様、顔色が優れませんが」

 

「……私が勧誘してしまった人達は…その後どうしているのですか…?」

 

「ん?どういう事ですかな?」

 

私の質問にセシリーさんもゼスタさんも不思議そうな顔をした。キョトンとしたその様子はまるで私がおかしなことを聞いてるようにも見えてなんだか納得がいかない。

 

「どうしてるって…残念ながら半分ほどはアリスちゃんが信徒じゃないと知って抜けていったわね」

 

「えっ…?」

 

意外な答えに私は静かに驚く。それはそうだ、あれだけ強引な勧誘をしてまで得ている信徒なのだ、そんな簡単に抜けられるものなのだろうかと疑問に思うのは私からすれば当然とも言える。

 

「そ、そんな簡単に抜けちゃえるんです?」

 

私の疑問をゆんゆんが口にしてくれた。ゆんゆんとしても、いやアクシズ教徒でない人なら誰しも疑問に思う事は間違いないと私としては断言できるものなのだ。セシリーさんは何やら困ったような様子でいるしゼスタさんは顎に手を当ててなにやか思案している。

 

「ふむ、どうやら貴女達は我々アクシズ教徒を誤解している様子なのでこの際ですから説明しましょう、…確かに私達はエリス教徒よりも少ないアクシズ教の尊厳を守ろうと日夜必死になって布教活動を行っております、ですが誰でも信徒になればいいと言う訳ではありません、あくまで御神体であるアクア様への信仰心、これは絶対です。なのでそれを持てない方がアクシズ教徒を名乗ったところで私達としては意味が無いのです」

 

「少しばかり強引な布教活動なのは私も分かってるわ、だけどとりあえず入信さえすれば、その後にでもアクア様の教えを理解して貰えたらそれで立派な信徒になるのよ、それができない人は私達としても去るのを追うつもりはないわ」

 

…正直いきなりこんな風に真面目に返されても反応に困るのがこちらの率直な感想である。私もゆんゆんもどう返したらいいのかわからず黙りしていた。とりあえず私はどこか無意識にアクシズ教徒はなりふり構わない無法者集団だと思っていたのだけどその考えは少しばかり改めてもいいのかもしれない。

 

「ごめんなさい、私…アクシズ教徒の方々を少し誤解していたようです…」

 

「わ、私も…」

 

「別にいいのよ、そんなのは慣れっこだからね。なんなら2人ともこれを機にこの入信書にサインを…」

 

「それはやめておきます」

 

当然それとこれとは話が別である。予想は出来てたので割と冷静に対応できた気がする。というよりさりげなく少し強引と言ったが全然少しではすまない。

 

「何をそんなに抵抗するのかしらねぇ…アクシズ教は誰もが抱く性癖や内なる想いを存分に解放できる素晴らしき教えなのに…」

 

セシリーさんは理解できない様子でいるが真面目に考えたら言いたい事は理解できる。

確かにアクシズ教の人は基本的に自重というものがない、皆思い思いのままに心を解放してやりたい放題やっている。それは本人からしてみればストレスフリーで実に楽しいだろう。…だけど普通の人は人目を気にするのである。

 

アクシズ教は全てが許される教え。同性愛者でも、人外獣耳少女愛好者でも、ロリコンでも、ニートでも、アンデッドや悪魔っ娘以外であれば、そこに愛があり犯罪でない限りすべてが赦される。

アクシズ教徒はやればできる。できる子たちなのだから、上手くいかなくてもそれはあなたのせいじゃない。上手くいかないのは世間が悪い。

自分を抑えて真面目に生きても頑張らないまま生きても明日は何が起こるか分らない。なら、分らない明日の事より、確かな今を楽に行きなさい。

汝、何かの事で悩むなら、今を楽しくいきなさい。楽な方へと流されなさい。自分を抑えず、本能のおもむくままに進みなさい、それが犯罪でない限り。

汝、我慢することなかれ。飲みたい気分の時に飲み、食べたい気分の時に食べるがよい。明日もそれが食べられるとは限らないのだがら…。

 

要約すれば今がよければそれでよしの至上快楽主義である。聞こえは悪いものではないのだけどこれの内容によっては他人が絡むとろくなことにならない場合が多い、これこそ一般的にアクシズ教徒が嫌われている由縁である。

 

他人の目を、場合によっては他人の迷惑を気にしないのであれば悪くないのかもしれない、だけど私にはどうしてもそんな気にはなれないし何よりアクシズ教にはいるまでもなく今のままで満足できている。

 

 

 

……

 

 

 

 

「そういえばアリスちゃんが勧誘した人、今ここにいるわよ?」

 

「えっ」

 

セシリーさんの何気ない唐突な宣告に私は動揺を隠しきれていなかった。それもそうだろう、何も知らなかったとはいえ私のせいで人生を狂わされた被害者と言ってもいい人と再会など気が重たすぎる。本人に抜ける選択肢もあったとはいえ今なおアクシズ教徒として残っていることはどういう状況なのか想像もつかないが私は単純に恐怖を覚えていた。

 

「今は懺悔室に行ってたようだけど……あ、終わったみたいね、ほらあの人よ」

 

セシリーさんの指す方向に目を向けると私にとって見覚えのある一見商人風の人がいた。白髪にターバンを巻き、雲のような髭の中肉中背の男性がこちらに向かって歩いてきている。この男性はこちらに気が付くなり一瞬目を瞬かせて急ぎ足で急接近してくる、私は自然に身構えてしまった。

 

「おお…、これは天使様、お久しぶりでございます」

 

「…て、天使様って…」

 

私は自身の表情が引きつっていることを自覚した。どう見ても歳上のおじさんに天使様などと呼ばれるのは流石に抵抗しかない。だけどおじさんは至って真面目な様子でいるので対応に困る。

 

「天使様ですよ、きっと貴女は私がアクシズ教徒になる為に女神アクア様が遣わせてくださった天使様に違いない、私は元々エリス教徒でしたが、改宗して良かったと心から思っております」

 

「…そ、そうですか…」

 

100%間違いではないからタチが悪い。確かに私はアクア様の力によってこの世界に来たのだから。勿論アクシズ教の為に来た訳では無いので全力で否定はしたいのだけど目の前のおじさんの様子を見る限りそれも言いづらさが半端ない。

それにしても記憶を手繰り寄せるとこの男性はもっと大人しめだった気がするのだけど随分とはきはき喋る。これもアクシズ教効果なのだろうか。

 

「か、改宗して良かったとは…?」

 

「ええ、実はですね…私はエリス様の胸を見てエリス教徒となったのです、私は無類のおっぱい好きですからな、ですがそんな私の本心をエリス教徒に知られようものなら私は裁きを受けてしまうでしょう、私はそれに怯えていました。しかし天使様がアクシズ教を紹介してくださり、私は救われたのです!」

 

 

 

 

… こ の 人 は 一 体 何 を 言 っ て る ん だ 。

 

何堂々と女の子の前で胸の話をしてるの!?普通に最低なんですけど。すぐにでも逃げ出したいのだけどおじさんの興奮した勢いは止まらない。

 

「ですがエリス様の胸にも未練がありましたので今日はこうして懺悔をしにアクシズ教の総本山、アルカンレティアまで来たのですが…今日は本当に来てよかった…実に素晴らしい神託を頂きました」

 

気付けばおじさんは涙を流して語っている。こちらは呆れを通り越してムカついてきているのだけど。

 

「その神託とは……『エリスの胸はパッド入り』!!どうです?素晴らしい神託でしょう!?」

 

「なんと…それは素晴らしい、実に素晴らしい神託です!」

 

「えぇ、こんな素晴らしい神託は初めて聞いたかもしれないわ…」

 

横目に見ればゼスタさんとセシリーさんが拍手喝采の感涙状態だ。え、何この空気?私がおかしいのだろうかと錯覚してしまいそうになる。ゆんゆんに目を向ければ案の定私と同じようについていけない様子でそっと目を逸らしていた。

 

「今日の懺悔室のプリーストはどなたなのです?このような素晴らしい神託を授かるとは只者ではないでしょう」

 

「えっと確か…旅のアークプリーストの方ですね、なんでも両親が熱心なアクシズ教徒で名前がアクアというらしいです」

 

「「えっ」」

 

ゼスタさんの問いかけにセシリーさんが持っていた本をペラペラと捲りそう言うと、私とゆんゆんの驚きの声が同時に出てしまった。まず旅のアークプリーストなんて余所者をそんな場所に入れてしまっていいのだろうか、そして何よりもアクアという名前だ。今聞いた限りではこの世界としてありえそうな設定ではあるもののもしかしたらそれは一緒にいたはずのミツルギさんが考えた設定の可能性もある。そしてあのアルカンレティアにめちゃくちゃ来たがっていたアクア様だ、アクシズ教の総本部であるこの場所に来たいと思うのは自然な流れだ。

 

「あの、セシリーさん、そのアクアさんって人…ミツルギさんと一緒じゃなかったです?」

 

「ミツルギさんって昨日のイケメンの子よね?いいえ、1人だったけど」

 

私とゆんゆんは再び顔を見合わせる。ミツルギさんが一緒じゃないとしたらその人はアクア様とは別人なのだろうか。わからないがなんとなく興味がわく。

 

「それでは私はお勤めがありますので失礼します、この神託を皆に伝えなくては」

 

「ええ、それは大事なことです、よろしくお願いします」

 

一体どこに大事な要素があるのか私には一生かかっても理解は追いつかないのだけど考えるだけ無駄なので諦めることにする、諦めても諦めなくても試合終了なのは間違いないので安西先生もきっと許してくれるだろうなどと私の思考は混沌めいていた。これがアクシズ教パワーなのか、実に恐ろしい。

 

「ゆんゆん、気になりません?……ゆんゆん?」

 

「……え?あ、何?」

 

「…大丈夫ですか?気をしっかり持ってください、私も危ないですけど」

 

「……う、うん…」

 

これはダメだ、ゆんゆんの脳内キャパシティは既にオーバーヒート寸前だ。それほどにアクシズ教は色が濃いのだ。

ただ私としては気になって仕方がなかった。果たしてアクア様なのか、同名の別人なのか。ただゆんゆんを残していくのも心配だ。王都のクエストで臨むダンジョンでもここまでの心労はないのにここに来てさして時間は経ってないにも関わらずこの疲労感、恐るべしアクシズ教。

 

「ゆんゆん、そのアクアさんって人のこと、気になるので一緒に見に行きませんか?」

 

「……うん」

 

「…セシリーさん、よければ私もその懺悔をしてみたいのですがよろしいです?」

 

「…まぁ大丈夫だけど…ゆんゆんさんは大丈夫なの?」

 

「…私なら大丈夫です…よ…」

 

大丈夫じゃないのは貴方達のせいですと声を大にして言いたいけどここはぐっと我慢しておく。頑張って取り繕った笑顔でごまかすと、ゆんゆんは力無い返事をする。どう見ても大丈夫ではないのだけどこうなっては治す術がない、この後温泉でも入って心身ともにリラックスするしかなさそうだ。

 

私とゆんゆんは、そのままセシリーさんに着いていき懺悔室へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 





中途半端な気もしますがネタが……文章力が…時間が…(吐血)
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