内気な少女がこのすば世界に行ったようです   作:心紅 凛莉

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お昼休みになんとかできたので投稿。アルカンレティアはできるだけオリジナル要素でやってみようと試みてます。ベルディアもバニルも原作に似た形だったしね!


episode 78 対抗意識

 

 

それはめぐみんの一言から始まった。

 

「アリス、ゆんゆん、それにみっつるぎ、私達のパーティは貴方達に勝負を申し込みます!!」

 

いざ毒混入の犯人である魔王軍の幹部、デッドリーポイズンスライムのハンスの捜索へと意気込んだ直後にめぐみんのこの掛け声である。これには私達だけではなくカズマ君も微妙な顔をしている。アクア様とダクネスの表情はあまり変わっていなかったけど。

 

「ちょっとめぐみん…急にどうしたのよ?今はそんなことを言っている場合じゃ…」

 

「おーい、どうでもいいけど俺達を巻き込むのをやめろー?」

 

「ゆんゆんがそれを言いますか、今でこそ大人しくなったものの学生時代から毎日のように私に勝負を挑んで来たゆんゆんが」

 

「そ、それは昔の話じゃない!!今はそれどころじゃないってことくらい、めぐみんだって分かるよね!?」

 

ちなみにカズマ君の抗議の声は完全に無視されている。そっとしておこう。

ゆんゆんがめぐみんに対抗意識を持っていたことは以前ゆんゆんから聞いた事があった。ゆんゆんは学生時代魔法学校で2位の実力を持ち、めぐみんは1位だったそうだ。

だが次期族長となるゆんゆんからして見ればこの結果は満足できるものではない、1位であるめぐみんに勝つ事で誰もが認める族長としてありたかったと、常日頃から思っていたようだ。

それでゆんゆんは学生時代だけでなく私と出会うまでも何度も勝負を挑んでいた、結果は挑み続けていたことでお察しである。王都に行くことがきっかけなのか、ゆんゆんが勝負を挑むことは最近ではなかったのだけどどうして今になってゆんゆんが、もといゆんゆん達が挑まれる形になってしまっているのだろう。…まぁ理由はともあれ。

 

「…別にいいのではないですか?」

 

「ちょっとアリスまでどうしたの!?」

 

ゆんゆんは私の発言が予想外だったのか声を荒らげているが冷静に考えたら大した問題ではない。競うことでこの事件がよりはやく解決できるのならそれに越したことはないのだから。

 

「カズマ君のパーティは4人ですので、私達はウィズさんを加えて4人として挑ませて頂きますね、よろしくお願いします、ウィズさん♪」

 

「なっ!?それはずるいですよ!?」

 

「ずるいです?人数的には丁度いいと思いますけど」

 

めぐみんが抗議の声をあげるがその気持ちは私もわからないものではない。こちらには自分で言うのも恥ずかしいが王都で活躍する蒼の賢者、魔剣の勇者と色々便利なゆんゆんと揃っているのに更にリッチーであるウィズさんまで追加するというのだから。

とはいえ私はカズマ君のパーティを軽視してはいない。ベルディアにデストロイヤー、さらにバニルと実績はあるのだから。だからこそウィズさんは頂いていく所存である。

 

「めぐみんが自信がないのでしたら別に勝負自体をなかったことにしても…」

 

「なっ!?誰が自信がないと言いました!?紅魔族は売られた喧嘩は買う主義です!いいでしょう!それでいきましょう!!」

 

つまりは嫌なら辞めてもいいんじゃよ?(チラッ)である。沸点の低いめぐみんに効果はバツグンだ。カズマ君は諦めたようにぐったりしているけど。というより喧嘩を売ったと言うのならそれはどう見てもめぐみんの方なのだけどあえてそれは言わないでおこう。

 

「あ、あの…本当に対抗する形で行くのですか?相手は魔王軍の幹部ですよ?できたら皆さんで協力した方が…」

 

「別に競うと言ってもお互いの邪魔をしたりするつもりはありませんよ、勝敗はハンスにトドメを刺した者がいるパーティの勝ちと言うことでどうですか?」

 

ウィズさんが魔王軍の幹部の恐ろしさを語るのは説得力のあるようなないような微妙なところなのだけどめぐみんの言うルールは確かにわかりやすい。参加者はウィズさん含めて全員冒険者カードを所持しているので討伐した人間が誰かは一目瞭然だし魔王軍の幹部を倒すほどの一撃に絶対の自信があるからこそのめぐみんの提案なのだろう。

 

「それは構いませんけどどの道まずはそのハンスを探さないといけませんね」

 

「だがめぐみん、ウィズが言うように相手は魔王軍の幹部。手柄を焦ることのないように頼むぞ。誰がハンスを見つけたとしても、まずは報告だ」

 

ダクネスの忠告がめぐみんに刺さる。繰り返すが相手は魔王軍の幹部、アクセル近郊のジャイアントトードを狩るのとは訳が違う。事は慎重にあたらなければならない。

 

 

 

 

 

 

さてさて、こうして私達はパーティになぞってペアで捜索を開始したのだけど私の今回のお相手はゆんゆんではない。

彼はタイミングを伺うように私に声をかけてきた、話がしたいからペアを組んでほしいと。

…そしてその意味を私はよくわかっていた、決してラブコメめいたものではないことは確かだ。

 

「それで…お話とはなんですか、ミツルギさん?今なら話を聞く人は誰もいませんよ」

 

「すまないな、ワガママを言ってしまって…だけど本人に直接聞くのも勇気が必要だったからね、こうしてリーダーであるキミを通させてもらうことにした。僕が聞きたいのはもちろん…ウィズさんのことさ」

 

やはりか、と私は肩を竦めた。それもそのはず、ミツルギさんは今回の旅行でウィズさんと絡むのは初めてだったりするらしい。アクセルでは様々な意味で有名だったので一方的に知ってはいたらしいものの、当然ながらウィズさんがリッチーであり魔王軍の幹部であることは知らなかった。

ただ状況が状況なので立ち止まることはなく、ゆっくり歩きながらの対話になってはいるが。

 

「とはいえ幾分警戒しているつもりもない、話を聞く限りでは君達とはうまくやっているようだしね…ただ確認をとりたかったんだ」

 

ウィズさんに直接聞かなかったことは非常に正しい。場合によってはミツルギさんがウィズさんに剣を向けるような事態になる可能性もあるわけだ。本来なら一昨日さらっとウィズさんが話していた時にそうなっていても可笑しくはなかったのだ。だけど私達を信じてその剣を抜くことなく冷静に話を聞いてくれていたのだろう。セシリーさんだけではなくミツルギさんもまた知らなかったことはこちらとしても完全に失念していただけにミツルギさんの成長した冷静さには素直にありがたいと思えた。

 

「私に聞いてくれたのは正解です、昨日ですが私はウィズさんのことを本人から細かく聞くことが出来ました、先に言っておきますがあの人は私達の敵ではありません、リッチーとなり、魔王軍の幹部にまでなったのは真っ当な理由があります…おそらく、私が同じ境遇になった時にそうした可能性があると言えるくらいの…」

 

今の私の顔はおそらく泣きそうになっている。ごまかすように俯いたのだけど多分バレているだろう。それでもちゃんと話をしないと、と私は話を続ける。

 

「今でさえ形式上ウィズさんは魔王軍の幹部です、ですが約束してくれました、来るべき時には幹部の役割…魔王城の結界の管理を放棄するとまで」

 

「…それだけ聞けたら充分だよ、やはり君に話を聞いておいて正解だった、ウィズさん本人からも今回の事件の解決に乗り気なのは分かっているし、それなら安心して背中を預けられる」

 

何より重要なのはミツルギさんの言うこれに尽きる。疑心暗鬼な状態では土壇場になって後ろから魔法を撃たれる可能性すら考えてしまえるのだから。無論私達から見たらウィズさんがそんな事をしないのは分かっているけど付き合いの浅いミツルギさんからしたらそうもいかない訳で。魔王軍の幹部を前後から相手にする可能性など考えたくもない。

 

 

 

 

とまぁウィズさんの件を納得してくれたことで、私としてもミツルギさんには聞きたい事があったりする。

 

「ところでミツルギさん、私は本当にリーダーでよろしいのでしょうか?」

 

何せ私がリーダーというのはズルに近い事をして得た物だ、あくまで私がリーダーになりたい訳ではなく、ミツルギさんをリーダーにしない為のものだったのだけど。

 

「それはもしかしてあの時の決め方を気にしているのか?それなら僕としても誤解は解いておかないとね」

 

「えっ?」

 

当然とは思っていたものの、やはりミツルギさんはあの時の決め方はミツルギさんをリーダーにしない為だったのを見抜いていたようだ。それにしても誤解とはどういう事なのだろうか。

 

「例えあのルールに自分の名前を書いてはいけないというものがなかったとしても、僕はアリスの名前を書いていたと思うよ」

 

てくてくと、ゆっくりながら歩いていたのだけど私は足を止めた。それに合わせるようにミツルギさんもまた、私の前で足を止めて振り返る。

 

「僕がリーダーに向かない事は昔のパーティやアリスやゆんゆんと組んだばかりの時を考えたら嫌でも痛感していたよ、特に僕は周りを見ないで突き進むことが多いからね…、それで君達に迷惑もかけた。だけどアリスがリーダーになってからまだ日が浅いけどそれでも以前よりずっと動きやすくなったと思っている、やっぱり僕の目に狂いはなかった」

 

流石に褒めすぎである。私の立ち位置は後衛だからこそ冷静に後ろから物事を見ることができるからってだけだしそんな大したものではない。それに…

 

「そう思ってくださるのなら、きっと私が見てきた他のパーティリーダーさんが優秀だったのでしょう」

 

私が見てきたリーダーとは言うまでもなくカズマ君やテイラーさんだ。特にテイラーさんは半年近く一緒に組んでもらい、ダストやキース、リーン、そして私の面倒をよく見てくれていた。普段出たがりのダストやキースもなんだかんだ言いながらもテイラーさんの事はしっかりしたリーダーと認めていた。私としてはそんなテイラーさんのようになりたい…などと思った事は正直に言えば全く無い。成り行きで現パーティのリーダーとなったものの、今思えば私がリーダーなんてやってしまっていいのだろうかと思ってしまってる始末。

 

「…アリスは自分を過小評価するタイプなのかな?」

 

そんな私の気持ちを見抜いたようにミツルギさんが問いかける。心を見透かしたような言い方には少しムッとしてしまう。多分私は少し不機嫌そうな顔になっているかもしれない。

だけどそれが悪い事とは思っていないし実際自分が凄いとも思ってはいない。

 

「…評価してくださることは素直に受け止めますよ、ありがとうございます、これからも頑張りますね」

 

「気を悪くさせたなら謝るけど、僕としてはもっと自分に自信を持っていいと思うよ、そうしてもらわないと困るのもあるけどね」

 

「…困る、ですか?」

 

「当然だろう?アリス、君は僕やゆんゆんのリーダーなんだ、リーダーには自信を持ってもらいたいという気持ちは、わかってくれるよね?」

 

「…うっ…」

 

正に言われてみればと言うやつだ。私が見てきたリーダーは皆自信を持っていたと思う。テイラーさんは勿論のこと、カズマ君でさえも。カズマ君の場合自信ではなくやる気がないだけで。

確かに自分がメンバーだとしてリーダーに自信がないというのは問題がある気もする。

 

「それと、リーダーだからと気負いすぎる必要もない、今まで通りで構わないってことさ。佐藤和真でさえあの調子なんだからな」

 

「…ふふっ、確かに私としてもその方が気楽ではあります、カズマ君のことはノーコメントで♪」

 

お互いに笑い合う。カズマ君から見れば失礼な話ではあるけどそこはご愛嬌。

 

 

 

 

 

話が落ち着いたところで本題の犯人探しに移行する。セシリーさんの行動は早かったようで宿泊施設や温泉のどの入口を見てもアクア様によって描かれた似顔絵の写真がポスターのように貼られている。これなら見つかるのも時間の問題かもしれない。私は安堵していたのだけど…ミツルギさんは険しい顔つきをしていた。

 

「これは…不味くないかい?」

 

「ミツルギさん?」

 

周囲を見渡すとアクシズ教徒らしき人が厳戒態勢のように見回り、至る場所にハンスの似顔絵ポスターが貼られている。

 

「アリス、仮に君がハンスだとして、この状況をどうする?」

 

「ど、どうすると申されても…」

 

困るとしか言えない。私はハンスではないのだからわからないが、あくまで私がこうなっていると考えたらかなり絶望的な状況ではある。

 

「…そうですね、無難なのは犯行に及んでいる場合ではないので身を隠す、ですか?」

 

「それも1つの手ではあるね、もっとも僕は別の可能性を考えていたけどね」

 

「……別の可能性…?」

 

考えを巡らせる。私がハンスだったら…。アルカンレティアから逃げ出す?…違う。相手は魔王軍の幹部、もっと攻撃的な方法を取るとしたら…

 

ハンスの正体はデッドリーポイズンスライム、つまり人の姿は擬態……

 

…!?

 

 

私は思いついた答えに血の気が引くのを感じていた。自然と頬に一滴の汗が流れる。

 

「ハンスの人型は擬態…おそらく昔捕食した人間だと思う、だけどその顔がここまで割れているとなると…それを逆手にとる可能性が高い」

 

「……つまり別の人間を襲って……擬態を変えて別人に成りすます…!?」

 

ミツルギさんは無言で頷く。正直こちらとしては似顔絵を広めたのはアクシズ教徒の人達に秘密裏に知って欲しいという理由であってここまで大胆に広めるのは予想外でしかないのだ。早く見つけたい気持ちが完全に裏目に出たことになる。

 

「…まずはアクシズ教団の本部に行きましょう!ゼスタさんにこの事を…この可能性を報告しないと!」

 

「…あぁ、そうだね…」

 

ミツルギさんは苦虫を噛み潰したような顔をしている。おそらく私もだ。こちらの意図ではないものの、このような形になっているのはこちらが強引に捜索を行った結果だ。ゼスタさんからは協力を拒否されているだけに出逢い報告することは気まずさが大きいがそんなことを考えている余裕もない。

 

私達は、がむしゃらに走り、アクシズ教団の本部へと向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

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