今週分です。台風にもろに影響のある地域にいるのでやばかったです。停電しまくり…。朝になりなんとか落ち着きました。
―アルカンレティア・???―
―視点変更・ハンス―
俺はハンス。魔王軍の幹部でありデッドリーポイズンスライムのハンスだ。
計画は念入りに行われていた。
憎きアクシズ教団をぶっ潰す、その為に俺が組んだ計画は俺の毒を少しずつ温泉に浸透させて行くこと。それによりアクシズ教団のメインとなる財源を無くしてしまおうと。
まずは街の1番外れに位置する南エリアの温泉街に集中的に毒を盛って連中の目を南エリアに集中させた。これが第一段階。
奴らが南エリアに位置する温泉街に気を取られたらいよいよ本命だ。真逆の方角に位置する山の上にある温泉の源泉、これが俺の目的。
…正直に言えば当初はこんな回りくどい真似はするつもりはなかった。
だが相手はあの変態気狂い揃いのアクシズ教徒、出来れば真っ向から立ち向かいたくはない。
決して普通に戦えば負けるだとか考えている訳では無い、単純にまともに相手をしてやれるような奴らではないからだ。
南エリアに強めの毒を混入、注目は間違いなく南エリアに集まるだろう、そう思っていたらイレギュラーが発生した。
ウィズ。俺と同じ魔王軍の幹部であるウィズがこのアルカンレティアにいたのだ。
こいつは魔王軍の幹部でありながら人間共への攻撃などは一切行わない。そんな取り決めで幹部になったと聞いた。
……ふざけてやがる。
バニルといいウィズといい、人間への敵対意思ってやつが欠片も存在しない、俺はそれが気に入らなかった。
偶然この街に来た幹部のウォルバクもまた、俺の作戦は気に入らなかったようで邪魔はしないが手伝うこともしないと言うなり、この街を去っていった。
どいつもこいつも……。
そんなウィズがいた。まず俺への援軍って可能性はないだろう。むしろ逆。
こいつは幹部になる際に力を持たない人間に危害を加えたら人間側につくとまで魔王様に断言している、よってここでの俺の犯行を全て知ることになれは味方どころか敵に回る可能性は高い。
へっ、上等だ、邪魔をするって言うなら容赦するつもりはない。こちらは魔王軍として動いているんだ、流石に俺の邪魔をすればウィズの立場も危うくなる。返り討ちにしてやる……とは言いたいが簡単には行かないだろう。
あいつは同じ幹部のベルディアを一方的にのした強さを持つ。ここで力押しにしてしまえばそれこそ今までの俺の作戦が水の泡だ。アクシズ教徒だけでもできれば関わりたくないのだ、それにウィズまで敵に回すのは得策ではない。
だから後は北の源泉に赴き、作戦を最終段階に移行し、アルカンレティアの温泉を毒塗れにしてしまえばそれで俺の仕事は終わりだ、さっさとこんな街からはおさらばするつもりだ。
……なのだが。
いざ実行に移そうとしたら街の雰囲気が大きく変わっていた。街中に張り巡らされた俺の似顔絵描き、それも魔王軍の幹部ハンスと名前付きでだ。
これは一体どうなってやがる……1番大事な場面なのに気軽に街中を動くことが出来なくなってしまった。今もこうして路地裏に潜んでいる。
考えられる可能性としては……まず俺の正体を知っているのはウィズしかいない。くそっ…あの時顔を見られてしまっていたか。
同時に憤怒の感情が俺を支配する。敵対意志がないとはいえウィズは魔王軍の幹部だ、アクシズ教徒に俺の情報を流したことは充分すぎる裏切り行為でしかない。
こうなったら仕方ない。秘密裏に作戦を終わらせるつもりだったがバレないように北の源泉まで行くには……
擬態を変えるしかない。
ウィズにしては随分と浅はかなことをしたものだ。俺の擬態が割れたからなんだというのだ、それなら擬態を変えて警戒態勢の中、堂々と街中を歩けばいい。
そんな時だった。
『……ヒューヒュー……』
「あ?」
風が通り抜けるような音……いや、声が聞こえてきた。気配は全くしねぇ、こいつは一体どこから……?
俺は周囲を見渡す。誰もいねぇことは分かってはいるがそうせずにはいられなかった。路地裏に潜む俺の周囲には当然誰もいねぇ。だがそうすれば感じるものがあった。…こいつは人間じゃ…ねぇな。
『…こんにちわ、何処かの誰かさん』
「…この気配はバニルに似てんな…悪魔か?」
俺は人間でないことには一瞬安堵したが何故このアルカンレティアに悪魔がいる?という疑問から警戒をとることにした。まぁ悪魔がアクシズ教徒の味方の訳がねぇ、だからといってこちら側とは限らねぇ、警戒するに越したことはない。
『…ヒューヒュー…そうだよ、僕は悪魔、名前はマクスウェルさ、ヒュー…』
「…その悪魔が俺に何の用だ?」
間髪入れずに俺は聞いた。もしかしたら今の俺には余裕があまりないのかもしれない。だがそれを相手に読ませるわけにもいくまい。
相手は悪魔、そういった心の隙につけこむのを生業としているような連中だ。
『僕の目的はね…ヒュー……青い髪のプリーストが邪魔だから、始末したいんだ、そうしないと僕がアルダープに怒られちゃうからね』
「…まさか俺にそれをする手助けをしろとでも言うつもりか?」
青い髪のプリーストというのは今の所見た事はない。だがこの街ならプリーストなんぞいくらでもいる、おそらく青い髪のプリーストくらい探せばいないこともないだろう、…だからと言って、俺には全く関係のない話だ。
『…ヒュー……、そうしないと、アルダープのお願いが達成できそうにないんだ、そうしないと、あの子を捕まえられないんだ、ヒュー』
『…僕の手伝いをしてくれるなら…ヒュー…君のこともお手伝いするよ…』
…なんだコイツは。
話を聞いているとどうも脈絡がない。繋がりがない。ちゃんとした会話になっている自信がねぇ。まず俺の言葉をちゃんと聞いているのか?ただこの場所で青い髪のプリーストなんてアクシズ教徒でしかないだろう。先程思った通りだがやはり関わりたくはない。
…とはいえ…、渡りに船とはこの事かもしれん。
実際こちらとしても手助けが欲しい状況ではある。だが誰でもいい訳でもない。こいつは使えるのか?まずはそれを確認してからでも答えは遅くない。
「おい、つまりその、あの子ってのを捕まえたらいいだけじゃないのか?だったら勝手にそうしてりゃ…」
『……ヒュー…、金髪のツインテール…青い服を着た、女の子…ヒュー…』
「…金髪のツインテール…?まさか…」
もはや話が一方通行なのは突っ込むまい、言うだけ無駄と感じた。だがそれはそれとして金髪のツインテールの少女というのは覚えがあった。…確かあいつとぶつかった後にウィズが来て…
「…確かアリスとか呼ばれていたな…」
『…ヒュー…そうだよ、アリス、僕が捕まえたい女の子…』
まるで今思い出したといった様子の悪魔の声。それにしても回りくどい、だったら最初からそう言えばいいのだ。俺はこの声に対して終始不機嫌な感情を抑えきれていなかった。いや、あのバニルと同族の悪魔が相手だ、もしかしたらそういった悪感情が好みなのかもしれないが。
「…つまりだ、俺がそのアリスってガキを捕まえることをすれば、お前はその為に俺の目的の手助けをしてくれる、…そういう契約になるんだな?」
あえて強引に契約という言葉を紡いだ。だがそれでいい、どんな惚けた悪魔であっても何よりも契約は重んじる。あのバニルですらそうだった記憶がある。
実際、それを聞いたからか、声は止まった。
『……ヒュー……、契約、契約…!』
…やはりこいつはどこかネジが飛んでるんじゃねぇだろうかと不安になる。だがこうして探知しているが未だにこいつの所在が不明のままだ。正直気味が悪いのだが贅沢は言っていられねぇ。
「そうだ、契約だ。おい、それでいいのか?」
『…ヒュー…わ、わかったよ…ヒューヒュー……それで、僕は何をしたらいいの?』
なんだか大人しくなった気もするがその方が扱い易い。俺は密かに口角をあげていた。こいつがどの程度の悪魔なのかは知らないが利用できるのなら利用するまでだ。
「よし、だったら貸せる限りの力を俺に貸せ、具体的には魔力だ、できるか?」
『ヒュー……できる、けど、貸せるだけ貸してしまったら、僕は存在を維持するのも大変になっちゃうよ、ヒュー…』
こいつは限度ってものを知らないのだろうか、やはり頭の方はあまり良くないらしい。そんな様子に若干イラついたが俺は思うままに言った。…言ってしまった。
「あぁ!?お前はどこかに隠れたまま目的を達成しようとしているんだろう?貸せるだけ貸せ!!この巫山戯た街を滅ぼすくらいの力を俺に貸せ!!」
結果として……俺の意識はそこで途切れることとなった……。
……
―アルカンレティア・アクシズ教団本部―
―アリス視点―
私とミツルギさんが教団本部に着くと同時に、めぐみんとカズマ君もまた教徒本部に到着していた。
「…はぁ…はぁ…アリスとみっつるぎ…その様子だとこの異常事態の深刻さに気がついたようですね…」
「…気付いたのはミツルギさんですけどね…、状況は?」
「状況も何も俺達も今ここに来たばかりだよ、だけどこの状況でどうやって…」
どうやって避難させるのか。アクシズ教徒のノリだとハンスの姿を見かけ次第逃げるどころか追おうとする可能性すらある。それは流石に危険すぎる。
「兎に角ここに来たのはその報告をする為だろう?僕達はすぐにでもこの件をここの偉い人に伝える義務がある」
ミツルギさんが言えば、ここまで走り息を切らしていたカズマ君とめぐみんもそれを整えて頷く。事態はいつどうなるかわからない、なら行動は早い方がいい。そんな考えから足早に建物の中に移動しようとする。
「おや?どうしましたか?」
教団本部から出てきた眼鏡をかけた女性と目が合う。私達の知らないアクシズ教徒の人なのだろうか。
「貴女は確かトリスタンさんでしたね」
「…えっと貴女は確かめぐみんさん?これはこれはご無沙汰してます」
おおらかに対応してくれるこの人はどうやらめぐみんの知り合いのようだ。何故めぐみんとアクシズ教徒の人が知り合いなのかはわからないが今はそんなことを気にかけている余裕は全くない。
「最高責任者のゼスタさんはいますか?急ぎ報告したいことがあるのですが」
「ゼスタ様ですか?…今日も確かセクハラにより罰を受けていると思いますよ、多分また中央の湖にでも流されているか…」
どうやらこんな状況でもアクシズ教はいつも通りらしい。私はそっと頭を抱えたくなった。少しは空気を読んで頂きたい。そしてさりげなく今日もと言ってまたとも言った。もはや恒例行事のようだ。
「そんなことをしている場合じゃないんですよ!魔王軍の幹部が!ハンスが…」
めぐみんがそこまで言ったところで大きな音が聞こえてきた。…この音は聞いたことがある。あれは確か王都でコロナタイトが爆発して起こった…建物が倒壊する音。
その場にいた全員に緊張が走る。そして見渡しのよさそうな場所に走り原因を確認すれば、見えてきたのは街の真ん中に見える大きな砂煙。そして聞こえる恐怖からの叫び声。おそらくその場から逃げている人達があげているのだろう。
…だが何よりも、そんな建物の倒壊よりも目に付いた存在が確かにあった。それは非常に巨大な毒々しい紫色の塊。まさしくあれはスライム…デッドリーポイズンスライム…!
「そんな…まさかここまで強行策に走るとは…!?」
ミツルギさんの言う通りこれは私達の予想の斜め上を行っている。温泉に毒をいれるなど、今までひっそりと行ってきたはずなのに何故ここにきてこんな目立つ真似をしてしまっているのか理解が追いつかない。
「あ…あぁ…街が…!?」
トリスタンさんは身震いをしながら街が崩される現状を見ているしかできない。私達もこうやってただ見ている訳にもいかない。あの大きさなら街のどこから見ても気が付く、私達の仲間ならまず駆け付けるだろう、なら私達もそれに追いつかなくては。
「皆さん、急ぎ向かいましょう!」
「…あーくそっ、なんでこんなことに…!」
「佐藤和真、気持ちはわかるが行くぞ!」
「ゆんゆんやウィズに先を越される訳には行きません!」
1人だけ明らかに奮起する内容が違うのだけどめぐみん故に仕方ない。私達はその場に立ち尽くすトリスタンさんを置いて、その場から現地へと向かい走り出していた。
ハンスさんの自我の出番ここで終了()