内気な少女がこのすば世界に行ったようです   作:心紅 凛莉

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新章突入、フラグを色々と折る章になりそうです。

―視点アリス―




七章 ―貴族と悪魔―
episode 84 決意新たに


 

 

アルカンレティアでの戦いから2日が経ちました。

あのアクア様のカミングアウトでどうなることかと思いましたがあの直後、意外にもアクシズ教団の面々はそのカミングアウトに何も言えずに硬直してしまってました。

 

…そりゃまぁ理解出来ない事でもありませんけど。あそこに集まったアクシズ教団の人達はゼスタさん曰くアルカンレティアでも有数の女神アクア様への信仰心が高い人達をよりすぐって集められたらしいのですから、そんな強くアクア様を崇拝する人達の目の前に本物のアクア様が存在している。それは歓喜、狂喜、感動など様々な感情が沸き起こると推測される。だけどそれが原因による混乱、それがアクシズ教団の方々がすぐに動けなかった理由だったのでしょう。

 

その硬直が私達にとって何よりのチャンスだった。1番に動いたのはカズマ君だった。

 

「ゆんゆん、ウィズ!!テレポートは使えるか!?すぐにホテルまで飛ぶぞ!!みんな集まれ!!」

 

カズマ君の判断と行動は早かった。アクシズ教団の人達が呆然としている隙に爆裂魔法により魔力切れとなってその場に倒れていためぐみんを背負ってゆんゆんとアクア様のいる場所へと走る。私は弱っているであろうウィズさんの手を引いてそれに続く。この状態でウィズさんがテレポートを使えるか不安ではあるがテレポートは4人までしか運べないのでゆんゆんだけだときびしいものがある。ダクネスとミツルギさんも少し出遅れたものの、ゆんゆんの傍へと駆けつけた。

 

カズマ君は冷静だった。私なら慌ててそのままアクセルへ飛ぶと言ってもおかしくはなかったと思う。だけど私達の荷物はホテルにある、それを置いていくわけにもいかない。

ウィズさんは弱ってはいたものの、なんとかテレポートを使うことができたので一安心である。ホテルに飛ぶなり全員流れるように自分達の部屋へと走り、荷物をまとめる。

 

「ちょ、ちょっと待ってよー!?そりゃうっかりしゃべっちゃったのは悪いと思うけど、本当に!?本気で帰るの!?」

 

「あったりまえだろこの駄女神が!!?お前のおかげで旅行も何もかも台無しだよ!!」

 

「そ、そんなのあんまりよ!?私頑張ったのに…!ねぇねぇお願いだから考え直してよぉぉぉ!!」

 

「ダメに決まってんだろ!?旅行前に言っただろうが!?お前の正体がバレることがあったらすぐにアクセルに帰るってな!!」

 

「うわぁぁぁん、カズマしゃーん!?お願いだから許してよぉぉぉ」

 

とまぁ2人はこんな感じでいたのだけど私と同じ部屋のゆんゆんの様子は軽く混乱していた。それもそうでしょう、彼女もまた、アクシズ教団の方々と同じく、アクア様が女神だと言う事を知らない1人だったのだから。とはいえ説明してる時間はない。セシリーさんは私達がこのホテルに泊まっていることを知っているのだからすぐにでもアクシズ教団の方々が押し寄せてくる可能性があるのだ。

 

私達は荷物をまとめるなりロビーに集合、そしてチェックアウトをしてすぐ様アクセルへとテレポートで帰還。全員戦いからの即帰宅で疲労は計り知れない状態だった。ウィズさんは少し休んで自分のお店に帰りましたがミツルギさんはそのままカズマ君の屋敷に泊めてもらうことに。話は全員が回復してからしようということにして。

 

 

 

 

――

 

 

―アクセルの街 カズマ君の屋敷―

 

そして今。あの時の旅行のメンバー8人全員が揃い、中央にあるソファーには私が座り、その両脇にはめぐみんとゆんゆんが座っている。それを囲むように他の面々が立ったまま私の言葉を待っていた。

 

何故こんな状況なのかは言うまでもなく…私が今まで悪魔に狙われていたことを隠していたことを言及する為、とでも言えばいいのでしょうか。

 

…とはいえここにいる誰もが私の気持ちについては察していたようで、私を責めるような目を向ける人は誰一人いなかった。だけど…、私にはそんな優しさが何よりも辛かったりもした。

 

「アリス…あの時私はアリスの気持ちもわかるって言った。確かに私がアリスの立場なら同じように背負い込むかもしれないと今でも思ってる…だけどそれでも…、それでも私は話して欲しかった…」

 

そんな静寂の中、一番に口を開いたのは私の隣に座るゆんゆんだった。言いにくそうにゆっくりとではあるものの、ゆんゆんの一言一言は確かに私の胸に刺さっていた。言いたい事も理解できた、おそらくゆんゆんの中でも譲れない葛藤があるのだろう。そしてその気持ちはミツルギさんや、アクア様以外のカズマ君のパーティも想いは同じのようだ。

 

「アリス、私達はアリスのパーティメンバーではありません、ですが共に生活する大切な友人とは思っています。ですから気持ちとしては私もゆんゆんと同じです」

 

その言葉はゆんゆんに言ってあげたらさそ喜ぶと思いますよ、なんてぼかした返しを即座に思いついたが流石にそれを言ってはぐらかす度胸は私にはなかった。ゆんゆんに言われても、めぐみんに言われても、私は申し訳なさそうに俯いていることしかできなかった。

 

「…というかさ、話を聞いてる限りアクアとウィズは知ってたんだよな?どうして話してくれなかったんだ?」

 

「確かに私は知ってたけど、私の加護でアリスに直接の被害はなかったし、言う必要を感じなかっただけよ」

 

「す、すみません、私もアクア様が傍にいらっしゃるので問題はないと思っていた部分もあったので…それに…あんな強力な悪魔とは思いもしなかったですから…」

 

カズマ君が溜息混じりにアクア様とウィズさんに話を振れば、当然のように語るアクア様と申し訳なさ気にしているウィズさんがこう返した。ただ私としてはアクア様にもウィズさんにも直接悪魔の件を相談した訳では無い、アクア様には言うまでもなく看破されてしまい、ウィズさんはお店で対悪魔用の魔道具を買う際にうっかり知られてしまった形になるのだから。

 

「…皆その辺にしておけ。…アリス、私達はお前を責めているつもりはない、ゆんゆんが言うようにお前の気持ちもわからなくはない…だが、逆にアリスもまた、私達の今の気持ちは…わかってくれるだろう?」

 

ダクネスが前にでて皆を落ち着かせるように告げると、私はまたも無言のままその場で頷くしかできなかった。私だって散々悩んだのだ、当然みんなの気持ちは理解できている。だからこそ申し訳なくて、何も弁明できずにいたのだから。

 

「…今回はアリスが狙われているということだが…現状私達は魔王軍の幹部を3人とデストロイヤーを倒したという大きな功績がある、これは人間側だけではない、魔王軍にも周知されていることだろう。だからこそ、今ここにいる誰もが、今のアリスのように狙われる可能性は充分にあるということを自覚して欲しい…、だから、もしそのような事態に見舞われた時には、仲間を頼ってくれ、相談してくれ。」

 

「…ダクネス…」

 

ふいに私は顔を上げてダクネスを見ていた。ダクネスは私だけではなくウィズさんを含む全員に言っていた。…それも当然のことだろう。今回のアルカンレティアでの戦いはウィズさんも完全に人間側で参加している。例えウィズさんがどんな約束を魔王としていたとしても、それは充分すぎる魔王軍への裏切り行為に過ぎないのだから。

 

「…それにしても腑に落ちない点が多いな、今回の悪魔については」

 

「ミツルギさん?」

 

私がミツルギさんを見ると同時に全員の視線がミツルギさんに向く。そして腑に落ちないという意味では私も思っていたことではある。

 

「そうですね、マクスウェルと名乗りましたね、あの悪魔は。私もその名前は聞いた事がないです、新たに魔王軍に入ったのなら私の耳にも届くはずなのですが…」

 

「いえ、あの悪魔は魔王軍ではないでしょう。それを証拠にハンスの意識が戻った時のあの叫びです。ハンスのあの言い回しだと、知り合って間もないということが推測できます」

 

めぐみんの指摘に私もまた思い出すように考えを巡らせる。つまりハンスは追い詰められた時にマクスウェルと出会い、一時的な協力関係にあった可能性。そしてその協力の仕方が、ハンスにとって不本意な流れだったのだろう。

 

「…それにしてもマクスウェル……マクス…?あれ?前に何処かで聞いた事があるような…」

 

カズマ君だけは違う形で頭を捻っていた。と、いうより悪魔の名前まで分かってしまったのだからそれを同じ悪魔であるバニルに聞けばわかりそうなものでもある。魔王軍の幹部を乗っ取るほどの強さだ、バニルが知らないわけが無いのだから。

 

「そもそも名前まで判明したんだ、バニルに聞けば1発でわかるんじゃないか?」

 

「…それが私もそう思い、帰ってすぐにバニルさんに聞こうとしたのですが…、帰ったら置き手紙があって、商品の仕入れの為に1.2週間ほど留守にすると…」

 

「ちっ、本当に使えないわねあの仮面悪魔は!」

 

私が思った疑問は、即座にカズマ君が口に出し、即座にウィズさんの言葉によって破綻してしまった。

 

「…情報が得られないのは痛いが仕方ないな。私個人としてはエリス教徒であるから…あまり悪魔に頼るというのも複雑なのだが…」

 

「アリスはウィズから悪魔を探知する魔道具を買ったのですよね?でしたら王都に行って私達で悪魔を追い詰めてやりましょう!」

 

 

めぐみんが勢いのまま言えば、他のメンバーもまた頷き、決意を秘めた顔つきになっていた。それはとても頼もしい反面、やはり申し訳なさがにじみでてくる。

話した今となっても大事な仲間や友人を危険に晒したくはない、その気持ちに変わりはないのだ。だけどその仲間達の立場になって考えたら、私も同じ想いに至るだろう。…だからこそ、複雑だった。

 

 

「…そうだな。少なくともウィズ以外のここにいる全員が、王都に行く理由があるからな」

 

「…王都に行く理由?」

 

ダクネスの言葉に口に出したのはカズマ君だが疑問に思ったのは全員だった。そしてダクネスの手には私が見た事のある紋章が刻まれた封書があった。ダクネスはその封書をそのままカズマ君に手渡した。…だが手渡したダクネスの顔はより複雑そうに見える。

 

「…私としては気が進まないのだが…これが昨日私の家に届けられてな。そしてこの紋章が刻まれている以上…私は貴族…いや、この国の人間として拒むことはできない」

 

「…なんだよ突然改まって…」

 

ダクネスの様子に怪訝な顔をしたカズマ君はゆっくりとその封書を受け取ると中に入っている手紙を取り出し、読んだ。その表情はみるみる変わっていく。どことなく嬉しそうに見えるような?

 

…そしてあの紋章は見たことがあった。あれは私が王都にいた頃に冒険者ギルドに届いた王城からの手紙に刻まれていた紋章と全く同じものだ。つまりあの手紙の送り主は…

 

 

「……魔王軍の幹部に機動要塞デストロイヤー、それらを見事討伐したカズマのパーティとアリスのパーティ、ベルゼルグの第一王女アイリス様は是非お前達とお会いしたいそうだ。その為の会食の招待状になる」

 

「「!?」」

 

…ダクネスの複雑な顔の理由がよく分かった。ようやくこの時が来てしまったのだ。魔王軍の幹部を3人、更に機動要塞デストロイヤーの討伐。これらはここ数百年なし得られなかった快挙だ、そんな快挙を突然アクセルに現れた冒険者パーティがやってのけたのだ。そんなパーティが今まで国の中心であるベルゼルグと何も面識もないというのはおかしな話である。言ってしまえばこの話は遅すぎるくらいなのだ。

だけど遅くなった事情は私としては分かっている。主な原因は王都での襲撃によるものだろう。…そう、私を狙ったあの襲撃。そう思えば自然と罪悪感がわいてくる。私のせいでアイリスをも危険に晒したことになってしまうのだから。

 

 

 

……

 

 

 

 

「あ、あの…話が落ち着いたところで、一ついいですか?」

 

カズマ君とめぐみんとアクア様が、王城への招待で大興奮している中、その言葉はゆんゆんから出てきた。

 

「その…アルカンレティアでアクアさんが言ったじゃないですか、その…水の女神のアクアだって…」

 

「…何かと思えばそんなことを気にしていたのですか?」

 

「え?」

 

ゆんゆんの疑問を真っ先に遮ったのはめぐみんだった。それは溜息混じりでいて次に言おうとしていることが何よりも理解できてしまう。

 

「そんなのアクアの嘘に決まってるではないですか、確かに強い力を持っていることは認めますが、考えてもみてください?アクアが本当に水の女神なら、何故こんな辺鄙な街で私達とパーティを共にしているのです?」

 

「えっ…そ、それはそうだけど…」

 

「ちょっと嘘じゃないわよ!!私は正真正銘の…」

 

「そうだぞゆんゆん、それにアクアも。お前が熱心なアクシズ教徒なのは分かっているが、流石に信仰する女神様を騙ることはどうかと思うぞ?あの時テレポートがなかったらどうなっていたことか…私はそのまま残っても良かったのだがアクアが危険に晒される訳にはいかないからな…」

 

ちなみに、あの時ダクネスとめぐみんはアクアの正体が露見したから逃げたわけではない、アクアが女神を名乗ったことでアクシズ教団の人達に襲われると危惧したことで逃げたのだ。カズマ君の意図とは全く違うものである。

 

そしてそれを聞いたゆんゆんは…もっとも単純な結論にたどりついた。

 

「…言われてみればそうよね…それに凄いって言ってしまえばアリスやミツルギさんも凄いと思うし…」

 

「そういうことですよ、まったくそんな事を悩んでるとは、やはりゆんゆんはゆんゆんでしたね」

 

「ちょっとそれどういう意味よ!?」

 

「だから…私は本当に女神なんだってばぁぁぁ!!」

 

やれやれ、再び場がカオスになってきた。もっとも、静かに話が終わることがないのはこの仲間達の特色ではあるのだけど。

 

マクスウェルはまだ討伐されていない。けどアルカンレティアの件で弱っている可能性はある…ならば今はチャンスだ。長く付き纏われたストーカーさんには、いい加減に退場してもらわないと。未だに私を狙う理由はわからないままではあるが、それは本人から聞けばいいだけである。

 

アイリスとカズマ君達が出会うことの不安はあるが、それよりも私は…マクスウェルとの決着に向けて決意を新たにしていた。

 

 

 

 

 

 




カズマパーティがアイリスと謁見。話の流れが完全に某所とかぶってるけどそこは原作にアリスが乱入した形の小説なのでご愛嬌

次回も1週間以内に書けたらいいなぁ(願望)
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