内気な少女がこのすば世界に行ったようです   作:心紅 凛莉

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短めになりましたがとりあえず4000は越えたので投稿。とはいえまとまりがない気がするので加筆修正するかもです。


episode 91 まさかの依頼

 

―アクセルの街・アルダープ邸―

 

案内された場所は広々とした空間。エントランスよりも小規模なシャンデリアが天井を彩り、赤いカーペットが敷き詰められた床、そして部屋の中央には大きな長方形のテーブルがあり白い清潔なテーブルクロスがかけられている。

その上には王都の高級レストランにあるような豪華な料理の数々、これからクリスマスパーティーでもやるのかと思えてしまうほどのものだ。

 

そんな場違いにも思える空間に落ち着くことができずにいたが、私達3人はメイドさんに言われるがままに席に着いた。そしてアルダープが部屋に入るなり対面越しに座ると、そのままゆっくりと料理を食べ始めていた。

 

「……」

 

「どうした?遠慮なく食べて構わんのだぞ?この料理は諸君らの為にわざわざ用意してやったのだからな?」

 

流石に唖然としていた。まず何故私達はここまで高待遇を受けているのか、それがさっぱり分からない。まずアルダープという人間は私が知っている限りではこのような事をする人間ではない。

 

王室や自分以外を全て下に見る。ドケチ。様々な理由をつけてのアクセルでの重税など不祥事スレスレの政治行為。まさに悪徳貴族の中の悪徳貴族。以前カズマ君の裁判の件で私が調べたアルダープはこんな感じなのだ、流石に警戒するなという方が無理である。

 

「…ふん、まぁ良い。先に報酬は支払っておこう」

 

「…はい?」

 

予想外すぎて変な声が出てしまった。まだ何もしていないのに報酬と言われてもこちらとしても困ってしまう。前払いという意味なのだろうか?まだ受けると決めた訳ではないのにそんなことをされても困る。

 

私の想いを嘲笑うように先程の執事が座っている私の横に立つと小さく頭を下げるなり、両手に持たれた札束を私の前のテーブルに置いたのだ。これには流石に何かを言わないと。

 

「…恐れながら領主様、私達はまだ何もしておりません。ですからこれを受け取る訳には行きません」

 

「……ほう、冒険者なら金さえ出せば何も言わずにがっつくかと思ったが…安心しろ、それは依頼達成の報酬だ」

 

「…達成…と言われましても…ですから私達はまだ何も…」

 

「何を言っておる?今ここに来たではないか。ワシの家に指定時間通りに来て話を聞く、これが手紙による依頼なのだからな?」

 

私は思わずミツルギさんやゆんゆんに顔を向けていた。もはやとことん予想外な対応すぎてどう判断したらいいのかわからないのだ、ミツルギさんもゆんゆんも戸惑いを隠せていないし。私の前に置かれたお金は…見た感じ40~50万エリスはありそうだ。ここに来るだけで支払うお金としては大きすぎる。

 

わからない。この領主様が何を考えているのか、その真意はなんなのか。

この並べられた料理、そして何もしていないのに高額の報酬。分からない事だらけで気持ちが悪い。少しでも理解するには…話を聞くしかないだろう。

 

「…では、その依頼というものは別にあるのですよね?」

 

「勿論だとも。依頼というよりは君個人に頼みたいことがな?話しても良いが…まずはせっかくの料理だ、冷めないうちに食べてもらえんかね?心配せずとも毒などははいっておらんよ、心配なら後ろにおるメイドに毒味をさせてみれば良い」

 

「…いえ、そこまでは…、では、有難く頂きますね」

 

再びミツルギさんやゆんゆんに目配せすると、2人ともにゆっくりと無言で頷いた。ゆんゆんは不安そうな様子だったけどここまで言われたら食べない訳にも行かない。正直、これがどんなに美味しかったとしても、まともに喉を通る気はしないのだけど。

 

 

 

 

 

 

「時に…君、魔剣の勇者の……ミツルギと言ったね?」

 

「…は、はい」

 

食事を摂っている中、その最中はアルダープによる色々な話がされた。主に自慢話なのだが私達は相槌を打つことでなんとかごまかして聞いていた。そんな中、何故かミツルギさんが呼ばれた。あくまでミツルギさんとゆんゆんは付き添いに過ぎない、アルダープが招待したのが私個人である以上、2人に絡む事はないと思っていたのだけど…。

 

「率直に聞こうか、君はアリス君とどんな関係なのかね?」

 

「…え?」

 

またも予想外な質問にミツルギさんは固まってしまった。なんでそんなプライベートなことを聞いてくるのか。意図が掴めない。とりあえず私が代わりに答えておこう。

 

「友人であり仲間です、どうかなされましたか?」

 

私が割って入るようにそう告げると、ミツルギさんの顔は軽い驚きと、目立たない程度の曇りを感じさせた。はて?おかしな事を言っただろうか?

一方のアルダープはその答えを聞いて満足そうな笑みを浮かべていた。これには思わず首を傾げるしかできない。

 

「ほほっ、そうかそうか、ならば良いのだ」

 

アルダープはそう告げるなり再び食事を再開していた。

…というよりさっさと依頼を聞いた上でやるやらないを決めてここから出たい、それが今の私の1番の気持ちだった。食事も食べようと心掛けてみたものの、全然喉を通らないしそれは他の2人も同様だ。

はっきり言えばここで最高級の料理を食べるよりもアクセルの屋台で売ってる1本200エリスの串焼きでも買って食べた方がよほどマシだ。

 

 

 

 

「ふう、中々良い食事だったな。諸君らはあまり食べてはいないようだったが、味はお気に召さなかったか?」

 

「いえ、大変美味ではありましたが私達はここへ来る前に食事を済ませておりましたので…」

 

ちなみにこれは嘘である。話を聞くだけと思っていたのが食事まで出てくるとは思っていなかった。すぐに終わると思っていたので昼食は後回しにしていたのだ。私達は基本的に三食しっかり食べているが冒険者という職業上稀に一食抜くくらいのことはあるので食べなくても特に問題はないのだけど。

 

「ふん、まぁいい。それでは君に頼みたいことを説明しよう――」

 

 

 

 

 

 

 

 

このすば。(「早く帰りたい……」)

 

 

 

 

 

―アクセルの街・貴族街―

 

依頼?を聞いた私達はアルダープの屋敷から無事何事もなく出てきていた。ただその依頼内容を聞いた私達は絶句していた。それは予想外にも程がある内容だったのだから。

 

そして私が出した返事は……『保留』だった。

 

今思えばあの高待遇は誰が見ても印象の良くない私のアルダープへの考え方を少しでも改めたかったのかもしれない。ではないとあの高待遇は説明がつかないしする理由がない。

 

「……アリス…そ、その…どうするの…?」

 

「断るに決まっているではないですか、あの時考える時間が欲しいと言ったのは安直に断っても問題が起きそうな気がしたからですよ。ダクネスにも相談したいですし」

 

「…うん、そうだね…、下手に断って貴族の機嫌を損ねるのは確かにまずい、しかし突然僕にあんなことを聞くからなんだと思えば…あれなら嘘でいいから僕とアリスが付き合っていると言った方が良かったのかもしれない」

 

「…それは結果論ですよ、ミツルギさん…」

 

アルダープとしてはなるべく早めに答えが欲しいとのこと。ここまで譲歩してくれるのもまた、意外ではあった。それにミツルギさんの提案も決して安全ではない、下手をしたら今度はミツルギさんが狙われてしまう可能性すらある。あくまで可能性ではあるけどそんなことになる可能性は潰しておきたい。ならば時間が許す限りダクネスに相談するなり最適解をもって断りたいのだ、我ながら落ち着いた判断だったと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―アクセルの街・カズマ君の屋敷―

 

 

ミツルギさんも含め、私達はカズマ君の屋敷にたどり着く。中に入ればカズマ君もアクア様もめぐみんもダクネスもリビングに勢揃いしていた。それぞれが私の帰宅に反応してくれた。…だが何故か一同の表情は焦っているように見える。どうしたのだろうか?

 

「アクア、大丈夫そうか?」

 

「……とりあえず反応はなさそうね」

 

私が帰るなりアクア様は気難しそうな顔で私を見ていた。一体どうしたというのだろう?行先がアルダープの屋敷だったこともあり、心配してくれていたのは分かってはいるけどカズマ君やアクア様の反応は妙に感じた。

 

「とにかく無事で良かった、いいかアリスよく聞けよ?」

 

「ど、どうしたのですか?」

 

何時になく真剣な様子のカズマ君に私は後退りしていた。ダクネスやめぐみんの様子も見てみるとどちらもカズマ君のようにいつになく真面目な様子と私を心配するように見つめている。

 

 

「アルカンレティアでハンスを乗っ取って大暴れしたあの悪魔なんだけどな…アルダープが裏にいる可能性がある」

 

「…っ!?ど、どういう事ですか!?」

 

カズマ君の言葉に私達は騒然としていた。確かに可能性はあるとは思っていたものの、何一つ証拠は見つからなかった。それに対してカズマ君はまるで確信があるように言うのだから。

 

「佐藤和真、1から説明してくれないか?」

 

「分かってるって、俺も今日になって思い出したんだ。…とはいえそんな難しいことじゃない、あのアルダープが自分でふいに漏らした言葉を聞いたんだからな」

 

「…アルダープが?何処でです?」

 

「裁判だよ、俺達がほぼ勝訴になった瞬間、あのおっさんは確かに言ったんだ、『馬鹿な…マクスは何をしている』ってな」

 

「マ、マクスって…あの悪魔の名前…?」

 

ゆんゆんが震えながら反応すれば、私もまた戦慄していた。そしてこれまでの謎の点と点が繋がっていくのを感じた。確かに…あのアルダープがマクスウェルの主だとしたら私達の件以外の過去の裁判、アルダープが絡んだ裁判の結果が全て悪魔の力で『捻じ曲げられていた』としたら何よりも納得できる。それでも私を狙う理由がよくわからないのだけど。例えそれをふまえたとしても…。

 

「だとしたら…カズマ君の裁判で悪魔が動かなかった理由は何故なんでしょう…」

 

「確かにそれも気になるが、重要なところはそこじゃないぞ、アリス」

 

私が疑問を口にすれば、ダクネスから呆れたようにつっこまれてしまった。とはいえその言い方は少しきつめで真剣なもの。

 

「そうですよ、あの悪魔がアルダープと繋がりがある以上、これ以上アリスがアルダープと関わるのは危険だと思います」

 

「俺が思い出した時は既にアリス達はアルダープの屋敷だったからな…戻らなかったら俺達で突入しようと思っていたんだ」

 

なるほど、いの一番にアクア様が私の状態を見たのは私の知らないうちにマクスウェルが私になんらかの接触をしているかを見たという事だ。

 

「…そういえばアリス、あんたあの領主に何を言われたのよ?」

 

「そ、それは…」

 

アクア様の質問に私は思わず口篭る。ただこの件はダクネスに相談したかったし、話す他ないだろう。…気づけばダクネスもめぐみんもカズマ君も、私の答えを待っていた。

 

 

 

 

 

 

 

「アルダープの息子さんと……お見合いをしないかと…持ちかけられました…」

 

 

 

 

 

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