一部オリジナル設定がはいってます。あれ?原作では違うような?とか原作ではそんな情報はなかったような?などと思った部分がそれに当たります。この小説の話に合わせて改変してますのでご了承くださいませm(*_ _)m
時間はアルダープ邸にアリス達がいた時に遡る―
「ワシには一人息子がいてな、今は王都で騎士として励んでおるのだが…どうも蒼の賢者として名高い冒険者のアリス、君のことが気に入ったらしいのだよ」
「…は、はぁ…恐縮です…」
アルダープに息子がいたという話は初耳だった。気に入ったと一方的に言われても何とも言えないのが本音ではあるのだけど。
「ワシの息子は19歳ながら、中々良き相手に恵まれなくてな、そこでワシは思ったのだよ。気に入ったのなら、いっそ嫁がせてしまえばどうだ、とな」
「……っ!?ちょ、ちょっと待ってください!?」
勝手に話が進みすぎである。というよりも勘弁して頂きたいのが本音だ。大体私はただの冒険者に過ぎないのだ、そんな私が領主の息子で王都の騎士をしているような方と釣り合うはずがないのだから。まだ15歳なのにそんな事が考えられる訳がないと言う事も私の内情的な理由にあがるのだけどこの世界の結婚適齢期を考えれば私の年齢での結婚はこの世界では一般的だ、断る理由にはならない。
「む、どうしたのかね?君にとっても決して悪い話ではないはずだぞ、冒険者が貴族と結婚できるなど、滅多にないことなのだからな?」
「そこですよ領主様、私は貴方の言うようにただの冒険者でしかありません、領主様のご子息と、など…身分が違いすぎます!」
「ふん、そんな事か。確かに珍しい話ではある、だがそういった話はまったくなくはないのだぞ?この国の歴史を紐解けばベルゼルグの初代国王は冒険者だったという伝説もあるのだ。無論冒険者なら誰でもそのような話が出てくることはない、だが君は違う、蒼の賢者という異名の元数々の実績を残した今や王都でも名を知らぬ者はほとんどおらぬ英雄だ、そんな者ならばワシとしても是非とも身内に迎え入れたいというもの、実際にこうして話してみれば冒険者にしては礼節も弁えておるしあのシンフォニア卿やダスティネス卿とも親交がある。つまり君が心配をするようなことは何もないということだ」
それ以前に結婚なんて絶対にしたくない。仮にそんな事になれば私は冒険者ではいられなくなる可能性もある、ましてや貴族様と結婚なんて色々と縛られてしまいそうだし何よりこのアルダープを父親として見なければならないなんて絶対に嫌である。例えそのご子息がどんな人であってもだ。
勿論そんな本音をぶちまける訳にも行かない。だけどあっさり断るのも後が怖い気がする、そんな考えから私の脳裏に浮かんだのはダクネスの顔だった。彼女に相談した方が良さそうだ、その為にもまずはこの返事の先延ばしをしなければ。
「…恐れながら申し上げます、これは私の将来を決めかねない大事な事柄と判断しましたので…どうか返事をするまでお時間を頂けないでしょうか…?」
「…ふん、まぁいいだろう。だがなるべく早めに頼むぞ?見合いの席を設けるとなればこちらも息子を帰省させたり色々な準備があるのでな?では今日のところは帰るといい…おい」
「…失礼します、出口までお送り致します」
今の私に落ち着きはあまりなかったかもしれない。だけどとりあえずこれで外へ出ることができると思えば、若干ながらの安堵があった。
「おお、そうだ」
そう思っていたらアルダープが何かを思い出したように立ち上がった。それにより案内しようとしたメイドさんの足がとまるので私達も止まらざるをえない。
「よく考えてみれば君達は明日の王都での会食に招待されていたな?ならばその時にでも返事を聞くとしよう。…言っておくが冒険者にこのような話が舞い込むようなことは滅多にない、いわば君にとって千載一遇のチャンスとなるわけだ、良き返事を期待させてもらうぞ?」
…というよりもこの人明日来るの?が一番に思った事だ。前日なのにまだアクセルの自宅にいるので来ないものと思っていたのだけど。まぁよくよく考えてみれば貴族様お抱えのテレポートを扱えるアークウィザードとかいてもおかしくはないか。ただ王都の会食で顔を合わせるとなると逃げ場はなさそうだ。できる限り無表情を貫こうとしていた私ではあったけどもしかしたら悪感情が顔に出ていたかもしれない、それくらい今の気持ちは最悪だった。
私達は軽く一礼して、アルダープの屋敷から立ち去った――
時間は戻り――
―アクセルの街・カズマ君の屋敷―
「…という事がありました…」
「……」
私が事の顛末を説明すれば、皆黙り込んでしまった。流石に予想外すぎたのだろう。当事者である私がそうなのだから当然の反応とも言える。
「そ、それでアリスはどうするつもりなのですか?」
「勿論断るつもりですよ、返事を保留としたのはあくまでもダクネスを含めた皆さんと相談したいと思っていましたので」
おそるおそるめぐみんが聞くので私は即答した。当然だ、貴族になんてなりたいとは思わないしなるつもりもない、何より結婚などしたくないのだから。お見合いなどするだけ無駄なのである。…と思っていた、少なくともここでマクスウェルの話を聞くまでは。
「ですが…」
「……?」
私の言葉に全員が疑問符を浮かべたような様子でいた。それもそうだろう、何せ私もこうやって話をしていて今のカズマ君の話で思い付いた事を言おうとしているのだから。確かに今カズマ君の話を聞くまでは断ることしか頭になかった。だけど今の状況を利用してうまくいけばこれで悪魔との関わりを終わらせてなおアルダープの悪事を暴き、アルダープを失脚させることまでができてしまう。…だけどそれは私一人では不可能だろう。だから皆の協力が必要だ。
「このお見合いの話、私は受けようと思っています」
「「「……っ!?」」」
「アリス!?貴女自分が何を言っているのかわかっているのですか!?」
私の決断に全員が驚いていた。ゆんゆんなんて信じられない様子で口を両手で覆っているしミツルギさんは口を大きく開けたまま固まってしまった。他も驚愕の表情を見せるそんな中、ダクネスだけは冷静になって聞いていた。
「いや、私は悪くない案だと思う」
「おいおい、ダクネスまで何言ってんだよ?相手はただの貴族じゃない、悪魔を使役しているんだぞ?」
「だからですよ、カズマ君」
「…どういう事なんだ?何か考えがあるのか?」
ミツルギさんの疑問に、私は無言で頷いた。私は皆が唖然としている中、ゆっくりと移動して、ソファに座っているカズマ君の隣に腰掛けた。
「この状況、見方を変えたらチャンスだと思いませんか?」
「…見方を変えたらって…玉の輿云々じゃないよな?」
「全然違いますしそのようなことに興味はありません、私が言っているのはこれを逃したらおそらくアルダープの首元まで近付けるチャンスが二度とないかもしれないという点です」
「…っ!?」
そう、お見合いなど口実に過ぎない。これは普通なら簡単に近寄ることのできないアルダープの傍まで近付ける滅多にないチャンスだ。何せあちら側から誘ってくれているのだ、自然に入ることができてしまう。私がこのお見合いを受けることでおそらくそのお見合いはアルダープの屋敷で行われる。つまり隙を見て屋敷内を調べたりすることもできなくはないはずだ。
これで上手く悪魔を見つけたり、それに近いものを見付けられれば即座にダクネスがダスティネス家として国に直訴することもできるだろう。できたら悪魔も討伐してしまいたい。これはアルダープの言った通り千載一遇のチャンスと言えるだろう、当人が言ったのと意味合いは全く異なるが。
仮にそういったものが完全に隠蔽されていたとして、それでも大きなデメリットはない、ようはお見合いをするだけして私がそれを破綻させればいいだけだ。
「勿論私が一人だと意味がありません、皆さんの協力が必要になります」
「…なるほどな…そういう事か…」
「だ、だけど…危険じゃないかな?もし勘づかれたりしたら…」
「いや、それなら俺がなんとかどう動けばいいか考えてみるよ、確かにアリスの言う通り…これを逃したら簡単にあの領主の懐には入れないだろうし、下手に屋敷に潜入して悪魔を探したりするよりよほど安全だ」
「無論私も協力させてもらおう、アリスの友人として、仲人のような立ち位置で私が行けば、アルダープも断りはしまい」
何よりも私は一刻も早くあの悪魔との関わりを終わらせてしまいたい。だからこそこの件を思い付いたとも言える。
「だがその前に…」
ダクネスの目線はカズマ君、アクア様、そしてめぐみんへと向けられていた。どうしたのだろう?と首を傾げるも、その理由はすぐに理解できた。
「忘れていないか?明日は王城でアイリス様との会食だぞ?私達のパーティは、今日はみっちり言葉使いや礼節などをしっかりと覚えてもらうからな?」
ダクネスの言葉に3人は嫌そうな顔を見せるがこれは仕方ない。私が話した事でアイリスにはある程度カズマ君達のことが伝わってはいるものの、それでも本番でカズマ君達が失礼な言動を起こせばぶち壊しである。
「特にめぐみん、お前のあの紅魔族特有の名乗りは今回禁止だ!」
「……っ!?何を言うのですダクネス!?ゆんゆんがやらなくなった今、私がやらずに誰がやるというのです!?」
いやそもそも誰かがやる必要性はまったくもってないのだけど。
「アクアも!酒場ではないのだから宴会芸などをする必要はないからな!」
「えぇ!?なんでよ!?私の花鳥風月なら、きっと王族だろうと満足してくれると思うの!」
満足云々よりも旅芸人として行くならともかく魔王軍の幹部を倒したパーティのアークプリーストとして出向くのに何故宴会芸を披露しようと思ったのか。
「そしてカズマ…!お前はたまに本音を漏らす癖があるからな、とにかく何を言われようと我慢だ、絶対にそれだけは守ってくれ…!」
「俺をこの2人と一緒にするなよ!?」
「「カズマにだけは
こればかりはどっちもどっちな気もする、まだ不安は残るけど今は私もダクネスに付き合ってあげよう。いくらパーティが違うとはいえ一緒に行く以上は一蓮托生な訳だし私達にも無関係では済まない。
「安心してめぐみん!私がしっかりと礼儀や弁えを教えてあげるわ!」
「絶対に嫌です!!なんでゆんゆんに教えてもらわなければならないのですか!?大体ゆんゆんが王族や貴族の前でハキハキと喋ってる姿など想像もつきません!どうせアリスやミッツルギ任せなのでしょう!?」
「そ、そんな事は……ないよ!?」
「なんですか今の間は!?やはりそうなのでしょう!?」
正にその通りなので何も言えないまである。ただ教える側で紅魔族の感性を一番理解しているのはゆんゆんだと思うからめぐみんに常識を叩き込むという意味ではゆんゆんが一番適任なのは間違いない。だけどめぐみんのプライドを考えたら素直に習うとも思えないし難しいところだ。
それからダクネス以外のカズマ君パーティの、会食での礼節講座がスタートした――
2時間が経過した。ぼちぼち夕方になろうとしていたのだけどまだまだ猛特訓は終わってはいない。詰め込んでも仕方ないので休憩にしようと私は紅茶を、ゆんゆんは簡単なお菓子でも作ろうと2人でキッチンに来ていた。
「…ところでアリス…」
「はい?」
棚から紅茶葉を取り出したところでゆんゆんから声がかかる。私は手を動かしながらも視線だけゆんゆんに向けていた。
「アイリスちゃんも言ってたけど、アリスって本当は貴族とかじゃないの?だってあんなに受け答えできてるし…」
「あー…」
なるほど、
「私は貴族などではありませんよ、日本では一般的な普通の家庭で育ちましたしあんな風に王族や貴族など、偉い方と話をするのは最近が初めてです」
「…とてもそうは見えないから聞いてるんだけど…」
「ふふっ、これでもかなり練習したのですよ、ダクネスにお願いしまして」
アイリスと出逢い、王城へ出向く事が多くなり、そしてカズマ君の屋敷で住むようになってから私は定期的にダクネスにお願いして習っていた。それでも喋ることだけならなんとかなった程度だった。流石に偉い方の前で流暢に普通に話すことなど簡単ではない。では私はどうやったか。
「私が話す時、私の顔を見た事はあります?」
「話す時…?うーん…あまり見てないかも…」
「実は大抵の場合、私は自然と目を閉じて話してるのですよ」
「えっ?そ、それだけ?」
本当にそれだけなのだ。意外と話す事に集中できてしまうし私には合うやり方だと思えた。ただ場合によっては相手の顔を見ないそのやり方は失礼に当たるのでたまに目は開けるようにはしてるけど。次第にそのやり方でやっていたらできるようになっていた。後は…
「後は自分ではないと思う事ですね…」
「え?え?どういう事??」
「演じるのですよ、私はこういう役柄だと。目を閉じることでそれに集中するようにしてるんです、私は昔と姿が違いますので、余計にやりやすかったのもありますね、参考になったかは分かりませんけど、ゆんゆんもやってみたらどうです?」
というより初対面で紅魔族特有のあんな名乗りをやれるのなら私のやってることはあれに比べてかなり難易度の低いことだと確信を持って言える。意識次第ではゆんゆんでも普通に話せると思うのだけど。
「…そ、そうよね。私もいずれは紅魔族の族長になるんだし…アリスみたいに話す機会も増えてくると思うし…」
話しながらもテキパキとお菓子の用意をするゆんゆんは何気に流石である。私も紅茶とティーカップの準備はできたし、皆に持っていくとしましょうか。
まずは明日…王城での会食…そしてアルダープのお見合い…個人的にはどちらも勘弁願いたいのだけど、それでも行くしかないか。私一人なら逃げ出しているかもしれないけど、大切な仲間達が共に行くのだ、そんな訳にもいかない。
これらが終わった時に、また羽根を伸ばして旅行でも行きたいなぁ、なんて思いながらも、私は静かに大きな溜息をついていた。
内気なはずのアリスちゃんが貴族とかの前でちゃんと話せてる理由、若干強引ですがこんな感じなのとゆんゆんと2人パーティだった時の名残と思ってます。アイリスとの出会いが結果的にアリスを更に成長させた!的な解釈です。
なお、アイリスとカズマ達の出会いは原作ではダクネスの屋敷にアイリス達が招待された上で行われていましたが本作でアイリスやアリス達が王都で襲撃にあった為にアイリスの安全の為に王城で行う事になりました。