坂田銀八は居座りたい   作:TouA(とーあ)

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はじめましての方ははじめまして。
TouA(とーあ)と申します。

今回の内容はジャブです!
楽しんでいただければ!どうぞ!



坂田銀八は居座りたい

 秀知院学園────。

 東京都港区に拠点を置く、幼稚園から大学までの私立一貫校。

 嘗て、貴族や士族を教育する機関として創立されたという由緒正しき歴史を持ち、貴族制が廃止された今で尚、富豪名家の子供が多く就学している。

 

 国の将来を背負うであろう人材が集うこの学園にて、彼らを率い纏め上げ、トップに君臨する存在────秀知院学園生徒会。

 

 生徒会会長────白銀御行。

 

 質実剛健・聡明叡智! 

 白銀御行はこれを地で征く猛者である。

 学園模試は不動の一位にして、全国でも頂点を天才達と互角以上に渡り合う。

 外部入学から勉学一本で上級国民を黙らせるその姿勢は畏怖と敬意を集めている。

 

 生徒会副会長────四宮かぐや。

 

 才色兼備・ 傾国傾城(けいこくけいせい)! 

 四大財閥の一つに数えられる『四宮グループ』の本家本流の長女で正真正銘の令嬢である。

 白銀とは対照的に、様々な分野で華々しい功績を残す万能型の天才で筋金入りの箱入り娘である。

 

 白銀御行と四宮かぐや。

 そんな二人だからこそ、あらぬ噂が跡を絶たない。

 二人で歩けば周囲はざわめき立ち、登壇すれば尊さのあまり失神する者もしばしば。

 既にお付き合いをしているのでは? 

 あの二人以上にお似合いの方はいらっしゃる? 

 尊い、マジ尊い。横入りする輩? 処す? 処す? 

 好奇・畏敬・崇敬・恋慕……。

 他人の恋路、それによる関心の収斂は高校生にもならば財閥や権力関係なく不偏不党である。

 

 故に二人はこう考える─────まぁあちらから告白してくれば考えてやらんでもない。

 

 己が矜持を優先し、常に上に立とうとするマウントの取り合い。

 

 即ち、恋愛頭脳戦。

 如何に相手に告らせるか。

 好きになったほうが負け、これに尽きるのである。

 

 

 

 そんな大戦が水面下で行われている生徒会で半年が経とうとした────5月。

 

 

「はい、今日から生徒会顧問になりました坂田銀八です。宜しくぅ」

 

 

 現国教師────坂田銀八。

 

 糖尿寸前・自由奔放! 

 この男────死んだ魚の様な目にずり落ちた眼鏡、青みがかった白髪の天然パーマに咥えタバコ。

 桃色のワイシャツにだらしなく白衣を羽織り、およそこの学園の教師に似つかわしく無い風貌で戦場(生徒会室)へ踏み入った。

 

「「……は?」」

 

 急転直下の出来事に間抜けな声を漏らしたのは二人。

 今日も今日とて恋愛頭脳戦をしていた彼らにとってその来客は目を引ん剥いてしまう程の意外性があった。

 

「会長、この事を聞いていました?」

「いや俺も初耳だ……どうして坂田先生が顧問に?」

「いや何、校長からの命令でな。クラスも部活も持ってねェし」

 

 銀八は秀知院の中でいうと新米教師である。

 ここ秀知院学園は将来国を背負って立つ生徒が多い。であるからして教育の質と教師の能力は勿論高い。

 その基準をパスしている事は二人も理解は出来ている。出来ているのだが……。

 

((なぜ坂田先生……?))

 

 という疑問が拭えない。

 秀知院の教師にしては授業技術は平々凡々。

 ただ持ち前のチャランポランさと世俗に塗れた価値観は生徒からの妙に厚い人望へと成っていることは事実である。無論、この生徒会も何度かお世話になっている。

 

「確かに、今考えてみると顧問がいないのはおかしな話だったか」

「えぇまぁ。ただ顧問が居なかったのは、ここの先生方は()()()()()()()()()ので独立した生徒会には相応しく無いという理由ではないかと」

「ふむ、それもそうか」

 

 即ち、坂田銀八は()()()()()()()()()()ことになる。 これは派閥争いの絶えぬ秀知院において稀有な存在であることの証左。

 二人は納得がいったように視線を交わす……が。

 

((いやでもどうして坂田先生??))

 

 拭えぬ疑問。それも至極当然の疑問。

 授業中にも関わらず咥えタバコ、本人談ではレロレロキャンディ。

 朝の読書は少年ジャンプ。時折、読みながら涙を流す始末。

 国語の音読は大抵鬼道。なんなら銀八が受け持っているクラスは全員「黒棺」の完全詠唱が出来るまである。

 二日酔いで授業を行うときもある。大体そのときは自習か「かめはめ波」の練習である。※魔貫光殺砲も可。

 自由奔放を地で征くダメ人間───これがかぐや及び白銀の評価であった。なのになぜか影響力がある為に一目置かざるを得ないという不可思議な存在。

 

 そんな時、生徒会室の部屋を元気よく開け放ち、見る者を魅了する笑顔を浮かべた少女が入室する。

 

「あっ! 銀ちゃんだ! こんにち蒼火墜!」

「はいはい、こんにち断空」

 

 これである。

 影響を受けに受けた少女────藤原千花。

 天真爛漫・阿呆丸出(I Q 3)! 

 政治家と外交官の娘というハイブリッドで在りながら生徒会書記という肩書きを持ち、ゆるふわ巨乳(容 姿 端 麗)チャームポイント(極 黒 リ ボ ン)を付けるなど属性過多(私 の 推 し)である。

 

「えへへ〜、生徒会に何かご用ですか?」

「用っつうか顧問になった」

「ホントですか! やったぁ!!」

 

 嬉しさに飛び跳ねる藤原。

 これはマズイと思い悩む白銀。

 飛び跳ねる一部に妬みの視線を送るかぐや。

 三者三様、生徒会の通常運転である。

 

「取り敢えず、坂田先生が顧問になった経緯を教えて下さいませんか? 会長として把握しなければならない事だと思うので」

「私も会長に同意です。是非、お聞かせ願いませんか?」

「あ~! 私も知りたいです! 今まで顧問自体が居なかったのにどうしてですか?」

「ん〜そうだな。これは昨日に遡るんだが……」

 

 

 + + + + +

 

 

 昨夜のこと。

 

『テメェにやる部屋も酒もねェんだよ!! とっとと出て行きな!!』

『マーベラスッ!!』

 

 家賃滞納・金亀換酒(きんきかんしゅ)! 

 借りていた部屋の下、タダ酒が呑み放題で有名な飲み屋の店主兼大家からタコ殴りにされ放り出されたまだ肌寒い5月の夜。

 

 放蕩した先に辿り着いたは以前も拾ってくれた学園の校長。

 事情を聞いた校長は場所提供をするにあたって、条件を一つ付けた。

 

 

『生徒会ノ顧問ニなって下さイ。学園ノ手本デある彼等ヲ見テ、少シは自分ノ襟を正シて欲シいのでス。貴方、最近チョットヤリ過ギ。コノ学園デ遅ラセへながらノ“中ニ病”が流行リ出シていル。イタタタタタ……デス』

 

『……すんません』

 

『……マァソレはそれとしテ。コノ学園デ、立場ニ束縛サれなイ貴方ナらきっト彼等ヤ生徒達ニ良イ刺激ヲ与エられル筈デース。ヨリ良イ学園ライフノ為ニ期待シてまス』

 

『グスッ、さんきゅーボビー』

 

『誰ガナイジェリア出身ノ格闘家デスか。兎モ角、宜シク頼ミますヨ。Mr.銀八』

 

『超メンドクセーがOK承ったわボビー』

 

『だから違ェつってんだろ』

 

 

 + + + + +

 

 

「てなわけだ」

「成る程、そういう事情でしたか」

 

(やっぱり顧問にしたら駄目なんじゃないの!? ていうかあの校長流暢に喋れるのかよ!)

 

 白銀は顔には出さず、心の中で盛大にツッコミを入れる。

 かぐやも白銀とほとんど同じ考えであった。顧問にするにしても相応しくなさ過ぎない……? と、だが。

 

「だい゙べん゙だっ゙だん゙で゙ずね゙! 銀ちゃん! 自分らしさを捨ててまで生徒の為に働こうとする姿勢! わ゙だじ感゙動゙じま゙じだ」

 

 滂沱の涙を流す生徒が一名。

 

「ふ、藤原さん? どちらかと言うと今の話は生徒達(私 達)より先生自身の生活を守る為の話だった様な気が……」

「かぐやさん! 衣・食・住は誰もが認められている権利ですよ! この国に居れば憲法で守られている様に最低限度の生活は手に入るんです! それを捨ててまで顧問になってくれたんですよ! これを感動と言わず何と言うんですか!」

「いやですが……」

 

「よせやい、藤原」

「ぎ、銀ちゃん……」

 

 どこぞの司令官のポーズをしながら、藤原を止める銀八。

 ちゃらんぽらんとした雰囲気が消え去った銀八に三人は思わず息を呑んだ。

 

「四宮の言う通り。俺は所詮、教師の前に一人の人間。あくまでこれを受けたのは俺の為だ」

「ひぐっ……銀ちゃん……ど、どうして」

「だがなァ」

 

 銀八は藤原の肩に手を置き、彼女の瞳を真っ直ぐに見つめる。

 

 

「僕は(憲法を)知りましェん。生徒たち(貴 方)のことがちゅきだかる゙ァ!」

 

「ゔわ゙ぁァァァァァァん!! 銀八ぜん゙ぜぇえ゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙!!!」

 

 

 銀八の胸に飛び込み、泣き喚く藤原。

 白銀はクラスでよく見る光景を生徒会室でも再現されて頭を抱え、かぐやは何が起こっているのか判らず、口をあんぐり開けていた。

 

「か、会長……私は何を見ているんです?」

「茶番だ、盛大な茶番だ四宮。頼むからお前はあちら側に行かんでくれよ……」

「心配しなくても行きませんよ、絶対

 

 しばらく後。

 落ち着きを取り戻した藤原、少々疲れ顔のかぐやと白銀は改めて銀八に向き直る。

 その三人の立ち見姿を流し見した銀八は改めて口を開く。

 

「まっ、仲良くしようや。顧問といえど、なにも知らねェからお前達の部下みたいなもんだし、扱き使うなり何なり銀さんに出来る事があれば頼りなさい」

「……はい、宜しくお願いします坂田先生。それと中二病って何かしら?」

「そう……ですね、宜しくお願いします。あの鼻はほじらないで下さい…………飛ばすなァ!!」

「よろしくお願いしま〜す! 折角なので歓迎のゲームしましょう! ゲーム!!」

 

 5月某日。

 生徒会顧問───坂田銀八、就任。

 更なる波乱が待っているとか、待っていないとか。

 夕暮れの生徒会、何も起きない筈はなく…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 てなわけで。

 就任日、その放課後。生徒全員が下校して居なくなった生徒会室内、その隠し部屋───学生運動の拠点として使われていたというその一室。

 

「うっし、寝るか」

 

 午後22時。早すぎて見逃してしまうのではないかと思わんほどの時間帯に布団を敷き始める。

 10畳と少し、畳張りのその部屋で。

 新たな寝床と共に、坂田銀八は生徒会顧問として、校長の頼みに応えるよう真面目で真っ当な教師としてのニューキャリアを積んでいくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んーと、クーラーと冷蔵庫。後はテレビだな」

 

 

嘘である。

 この男、生徒会を乗っ取ろうとする気満々である! 

 住めば都と言わんばかりに隠し部屋、及び生徒会室を自分好みに改造しようとしている! 

 自費で払わなくても経費で落ちるじゃんと意気揚々に間取りを考え始めている! 

 

 ──── 顧問といえど、なにもしらねェからお前達の部下みたいなもんだ。扱き使うなり何なり銀さんに出来る事があれば頼りなさい。

 

 無論、嘘である(ブ ラ フ)! 

 扱き使われるどころか扱き使う、何なら部下どころか傀儡政治を始めようとする始末! 

 どこにも属さないからこその暴挙! 

 誰にも束縛されないからこその奔放! 

 生徒会を通すことでマネロンする蛮勇! 

 結局のところ私利私欲!! 

 

 しかし! 簡単でないことは百も承知! 

 教師という立場を最大限活用しなければ成しえない! 

 

 

 ────ヨリ良イ学園ライフノ為ニ期待シてますヨ

 

 

「その学園ライフって俺も入ってるよな?? 

 じゃあ文句は言わせねェ!! ダァッハッハッハッハッ!!」

 

 

 気分は最高潮、私が天に立つと言わんばかりである。

 

 

 かくして。

 四宮かぐや、白銀御行の恋愛頭脳戦の水面下にて。

 

 

 

生徒会利権争奪戦、開幕!! 

 

 

 

 




これを思いついたのは、かぐや様のアニメを見ているときでした。

「なんかこの生徒会室既視感あるなぁ…あっ!万事屋やんけ!」

間取りがほんとに似てるんですわ。ソファの向きとかが違うくらいで。
なんか二次創作作ってみたいなぁ…あ、教師キャラとかいいんじゃね?銀八先生…いける?どう?微妙?まっいっか勢いで押し切ろうぜ!

的な感じでした。書いてて楽しかったです。まる

ではまた次回!感想や評価をください!モチベになります!いやほんとにまじで!

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