勇気ある者、歌に導かれて   作:自己満筆者

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どうも、皆さんおはこんばんにちは。前回のEpisode-02から約3.7倍に文字数が増えて我ながら驚いている自己満筆者です。ぎゅうぎゅう詰めってきついね。
なんとかして前日譚にあたるこの話しは早めの投稿を心がけて結果、投稿することができました。
それとセレナファンと奏ファンの皆さん、ごめんなさい!どうしても、奏者は原作と同じにしたかったのです。なので、2人には奏者として活躍させないために大怪我を負ってもらうしかなかったのです。許してください。
あまりにぎゅうぎゅう詰めにしてしまおうと思ったものだからかけ足になっている部分が多々あります。後、原作のセリフを一語一句覚えているわけではないので、「ここちげーよ」っていうころがあるかもしれませんが我慢していただくとありがたいです。
それと、この話し、実は製作中に忙しくて製作の時期が大きく前半・後半と2つにわかれております。そのため、表現に差がある場合があります。ご了承ください。ちなみに、本文中で「はなす」を「話す」としています。ご理解ください。
さて、次回から無印に突入します。一応、メインがシンフォギアなので、まだガオガイガーは出ません。というかまだ出せません。何しろ彼らの生活の基板まだがなってないから。早くしろって言わないで!私も早く書きたいんだから!
では、本編へどうぞ!



Episode-01 到達、新天地

時刻不明 ワームホール内

 

空間の中を未ださまようジェネシック・ガオガイガーと本体から取れてしまった脱出挺クシナダの残骸。

ジェネシックとフュージョンしている獅子王凱はどうにかして動かす方法を模索していた。だが、研究者の端くれでもない凱にはエヴォリュダーの能力を以ってしても、ちっとも分からずにいた。それでも、ジェネシックが動かなければこの状況も一向に動かない。だから、必死になって方法を探していた。

 

すると、ふいに次元空間の目の前が急に暗くなった。そこから、何か――有り体に言えば化け物が現れた。全身が白く、目と呼べる器官がなく、口が裂けていて尚且つジェネシックを超えるほどの巨体だった。

対して、こちらは機体が動かず攻守共にできない状況だった。化け物はここは通さんとでも言うかのように目の前に立ち塞がる。

凱はここをなんとか突破する方法を考えに考えて、自分にはまだ手があることを思い出した。

それは、

 

凱「ジェネシック・オーラ!」

 

ボイスコマンドの入力により、胸の獅子が大きく吼える。ジェネシック・オーラは先の戦いでジェネシック・ガオガイガーにファイナル・フュージョンする際に辺りの敵をはねのけるために使った武装だった。

 

咆哮からバリバリという何かが剥がれる音と共に発せられたジェネシック・オーラは、化け物にぶつかり、まるで霧だったかのように化け物はその姿を消した。

辺りに緑色の空間が甦るその瞬間、凱の横を会ったこともない、1人の小柄な少女の顔がよぎった。慌てて振り向いたが、少女はおろか人は1人もいない。

 

だが、流れるジェネシックに更なる異変が襲う。なんと、ガイガー以外のジェネシックマシンが光になって消えていくのだ。

 

凱「なっ⋅⋅⋅どうして!?」

 

凱が戸惑っているうちにジェネシックマシンは全て光の粒子になって、目の前に流れるクシナダの塊もとい医務室があるブロックの中に吸い込まれた。ファイナル・フュージョンが解かれたことでジェネシックガイガーへと自動で変形する。

すると、今度はクシナダの残骸たちが光となって1つの白い流星になって貫くように流れ、やがて見えなくなった。

残されたのは1人の人間⋅⋅⋅宇都木命だけになった。

 

凱「!? 命ーーー!」

 

ここは仮にも宇宙空間。

そんなところに生身の人間が放り出されたら、1分もしない内に死んでしまう。助けたいと願う凱にGクリスタルが輝きをもって応える。すると、ガイガーが凱の意志なく動き、ギャレオンの口内に命の身柄を納め、口を閉じる。そうしている内に再び目の前に闇が広がる。

だが、今度はこの闇の正体を凱は知っていた。

 

それは、出口の闇だった。

 

/

 

2042年 ある日の上空

 

その日、人々は天空から何の前触れもなく流れる幾筋もの流星を目にした。だが、不思議なことに流星はオレンジや白、緑、紫の色をしていた。その翌日からあらゆる研究機関が流星の落下地点へ調査にのりだしたが、落ちてきた跡のクレーター以外は何もなかったそうだ。

 

/

 

ある日の翌日

どこかの山奥

 

命「う⋅⋅⋅⋅⋅⋅あれ、ここは?」

 

凱「目が覚めたのか、命!」

 

命が目を開けると、そこにはこちらを心配するように覗き込む凱の顔があった。

 

命「うん、私は大丈夫・・・」

 

それよりもだ。

 

命「凱、ここは一体どこなの?」

 

目の前には宇宙空間⋅⋅⋅ではなく、生い茂る緑が溢れるまさに大森林と呼べる場所だった。それもちょっとでも気を抜いたら、熊をはじめとする危険生物に襲われると思うほどの。

 

凱「どこって言われてもわからないが、とにかくここは地球らしい」

 

聞けば、昨日の夜に流れ星として地球に着いたらしく、その場にいたら人に見つかると思ってここまで移動したという。

でも、それだったら私たちは大気圏からの摩擦熱で跡形もないはずと思ったけど、そこで私は後ろから感じる大きな気配に気づいた。

振り返ると少し遠いけど、こちらも心配そうに見つめるギャレオンの姿があった。

 

命「ギャレオン⋅⋅⋅⋅⋅⋅」

 

私が声をかけるとギャレオンは応えるかのようにガウと短く吼えた。するとギャレオンは口を開き、光の中から2枚の紙と大きな箱を吐き出した。紙の方には覚えがなかったが箱の方には覚えがあった。

 

凱「これはIDアーマーを収納する⋅⋅⋅」

 

そう。これは先の戦いで、エヴォリュダーになった凱のために新調させたプロテクター「ID(Indemitable Difend)アーマー」を収納する大型トランクケースだった。でも、IDアーマー本体はガオファイガー対パルパレーパ・プラス戦の際に粉々になったはず。

だが、ここにトランクがあるということは中身はちゃんとあるのだろう。

 

一方、紙の方には「個人戸籍履歴書」と書いてあって、誕生日や血液型などの生体データからどこに在住していたのかなどの履歴もあり、1番新しい履歴からどうやら私たちはつい最近までどこかの孤児院にいたことになっている。

つまり、今は帰る場所がないことを示していた。こんな書類は私たちの世界では、見たことも聞いたこともなかった。

 

命「凱、やっぱりあの時にGGGの皆と⋅⋅⋅」

 

凱「ああ、そうだ」

 

やっぱり、あの時に感じたことは間違いじゃなかったことを知る。そして、さっきの話しから結論を出すと、消滅したジェネシックマシン。

 

それは、この世界から脱出する手段を失ったことを意味していた。

 

命「やっぱり、私たち元の世界に帰れないのかな?」

 

凱「⋅⋅⋅命、GGG憲章第五条百二十五項は?」

 

それは、あの次元空間内で大河長官がかけた言葉だった。

 

命「『GGG隊員は、いかに困難な状況に陥ろうとも、決して諦めてはならない』⋅⋅⋅だね」

 

凱「そういうことだ。それに俺たちはまだこの世界ことを知らない。これからしっかり調べて、それから結論を出そうぜ」

 

命「⋅⋅⋅うん、そうだね!」

 

凱「でもまぁ、とりあえず移動は夜になってからだ。昼からだとこの世界の人たちがギャレオンに気づいてしまうからな。

日没までに時間があるから、深呼吸してこれからの状況に備えようぜ」

 

凱からの提案に私は頷いた。

 

その日の夜

 

ギャレオンの乗って真っ先に見えた街の郊外で降りる。ギャレオンは海中に隠れると吼えていたので、すぐさま音をたてないように静かに海に潜っていった。

さて、夜中なので役場などの公共施設はもうしまっているがとりあえず街をまわって見ることにした。空からでもわかっていたが、なかなか大きな街でかなりの規模のショッピングモールや東京タワーよりも高い搭、50以上はある学校施設があった。でも、さすがに歩き続けて少し疲れたので丁度近くにあった公園で休憩。

幸いにもサバイバルキットの中に緊急用の食料と水があったので、昼と夜の分はそれで済ませたが、もうあと明日の朝の分しか残っていなかった。

 

朝になって朝食を済ませると、私たちは役場へ行ってあの書類と引き換えに、新しい戸籍と保険証を手に入れた。

次は、住む場所を探そうと思っていたのだが、役場にて「住む場所ありませんよね?」ということである場所を紹介してもらい、役場を後にした。

 

10分位かけて、役場から紹介された場所へ行くとそこには建てられてからおよそ30年は経っているのではないかと思うほど古い二階建てのアパートがあった。その場で立ちつくしていると、敷地の入り口付近で、掃き掃除をしていたおじいさんに声をかけられた。

 

???「もしかして、君たちが役場からここを紹介された子たちかな?」

 

凱「ええ、そうですが⋅⋅⋅」

 

???「ハッハッハ、そうかそうか、待っとったよ。なに、怖がることはないさ。私がここの大家なんだから、役場からの電話で事情は聞いているよ。さあさあ、私の部屋だけどお入り。手続きなんかもそこで済ますからね」

 

なかなか強引な大家さんの案内で部屋に入って早速、契約書を取り出して座らされた椅子の近くにあるテーブルの上に置く。建物は築37年だが12年前にリフォームされており、部屋は10畳でユニットバスとキッチンがあり、家賃が月に3万ポッキリと書いてあった。今まで物件探しなんてしたことが無かったが、破格の物件だと思う。

でもそれより、目をひいたのは赤のマジックペンで『ただし』と大きく書かれた文字だった。

 

凱「あの⋅⋅⋅このただしの意味は?」

 

大家さん「ああ、それか。孤児生活保護法といってな、孤児である子たちの家や食料を働ける年齢になるまで無料にするっていう法律なんだけどな」

 

命「でも、私たちは働ける年齢に⋅⋅⋅」

 

大家さん「まあまあ、話しは最後まで聴いとけ。

確かに君たちは働ける年齢だ。だが、孤児院から出て間もないだろう? そういう人たちは家は与えて、ある程度の期間が経ったら家賃や電気代なんかを払ってもらうのさ」

 

命「その期間とは?」

 

大家さん「住み始めて3ヵ月だ。それまでは私が払う。どうだ、悪くはない話しだろう?」

 

凱「そうですね⋅⋅⋅。命は?」

 

命「うん、悪くないと思う」

 

大家さん「ハッハッハ、そうかそうか。じゃあここに契約成立というところで何か質問はあるかな?」

 

命「あの、防音の方は」

 

大家さん「うん? ⋅⋅⋅そうかそうか、夫婦の営みも大事だからということか」

 

命「い、いや、そういう意味じゃなくてですね⋅⋅⋅」

 

大家さん「なぁに、そう誤魔化さなくても大丈夫。ウチは防音はピカイチなんだ、だから心配せんでええ」

 

多分、話し声でGGGのことが外に漏れないかを聞いたのかもしれないが、予想もしない返しに顔を真っ赤にして下がる命を尻目に俺はあることを頼む。

 

凱「大家さん、もしよろしければ俺たちに仕事を斡旋(あっせん)してもらえませんか?」

 

大家さん「おう、いいぞ。これでもここら辺じゃ顔が広いからな、流石にバイトとかからだろうがいい仕事を持ってきてこよう。任せておきなさい」

 

凱「ありがとうございます」

 

あっさりと承諾した大家の対応に感謝を述べていると、さてと言って財布から2万円を取り出してこちらにさしだす。

 

凱「あの、これは?」

 

大家さん「これは衣服や食料を買うお金だよ。色々買うには足らないが、これ以上はこっちの生活が苦しくなるんでな。あ、いいんですか?とかはいらんからな」

 

凱「⋅⋅⋅⋅⋅⋅ありがとうございます。では、使わせていただきます。えっと、すみませんがお名前を⋅⋅⋅」 

 

大家さん「ん?ああ、そうか。まだ名乗ってなかったね。私の名前は岩倉(いわくら)大知(たいち)だ。これからよろしく」

 

凱「こちらこそ、よろしくお願いします」

 

命「よろしくお願いします」

 

俺はお金を受け取り、その後部屋の鍵を受け取り、部屋にIDアーマーが入っているだろうトランクを置いて俺たちは日用品と食料を買いにショッピングモールへ向かった。

 

その道中

 

おばさん「キャーッ、ひったくりよ! 誰か捕まえて!」

 

歩道の奥から声が聞こえた。すると前にいた人波が2つに分かれ、ひったくり犯が現れる。

犯人は右手に包丁を武装して、左手にひったくった、いかにも高そうなバッグを握っていた。

 

犯人「邪魔だ、どけ!」

 

凱「⋅⋅⋅命、少し離れてろ」

 

どんな世界に来ようが犯罪は勇者として、なにより人として許せないものだ。

正面から来る相手の右手首を右手で掴んで受け流し、後ろに素早く回り込み左手で服をしっかりと掴みつつ、前に押して体を倒す。この時に掴んだ服を引っ張り勢いを相殺し、右腕を後ろにもってくる。あとは、完全に倒れたら左手で相手の左手首を掴み肩甲骨の間へまわし、両膝で腰部を体重をかけて抑える。右腕を後ろへ振りきらせて相手の右腕に激痛をはしらせ、包丁を手放させるのも忘れない。これで、あっという間に確保は終わる。

 

凱「⋅⋅⋅あの、すいません。誰か警察を呼んでくれませんか? 私、今携帯持ってないんです」

 

到着した警察によって犯人は現行犯逮捕、バッグも無事に持ち主の手に戻っていった。

 

命「流石だね」

 

凱「あんなのは人として当たり前さ」

 

短い会話を交わしながら目的地へ急いだ。

ショッピングモールでは100円ショップで箸と食器と包丁を買い、衣服は3日分購入。あとはテーブルとタオル、シャンプーなどの石鹸・洗剤と調理器具を買い、千円強ほど残して残りは全て食料品を買った。手に持つとなかなか重いがそこまで疲れない。恐らくエヴォリュダーであるがためなのだろう。

ショッピングモールを出るともう日が暮れかけていたので、驚愕の視線を送る人々の目を気にせず、帰路を急いだ。

 

部屋へ帰るとドアに搭載させているポストに1枚の紙が入っていた。差出人は岩倉さんで「帰ってきたら、ウチに来てくれ」と書いてあった。俺は命と一緒に大家さんの部屋を訪れた。呼び鈴を鳴らすとドアが勢い良く開き、

 

岩倉「おお、お帰り。ちょっと待ちくたびれちゃったよ。ちょっと入ってきてくれるか? 仕事が見つかったんだ」

 

え、もう? と思いながら招かれるように部屋に入る。

岩倉さんは2枚を俺と命に1枚ずつ渡した。内容はシフト表でシフトの時間帯と地図が添付されていて、赤のマジックで2ヶ所に丸がついていた。大家さんはその内の1点を指し示し、

 

岩倉「ここがウチでここが君の仕事場。凱君、君は配達会社の荷物乗せのバイト。命君、君はここのショッピングモールでレジ打ちのパートだ。今日は月曜日だから、2人とも明日からスタートだ。頑張ってね」

 

命「ありがとうございます、何から何まで」 

 

岩倉「いいってことよ。この程度のこと、なんてことないさ」

 

凱「それでも、ありがとうございます」

 

岩倉さんの部屋を去り、自分たちの部屋に帰る。

今日の夕飯は白ご飯と味噌汁、ショッピングモールで買った惣菜だ。ご飯に関しては炊飯器が買えないので鍋を使って代用した。久しぶりのちゃんとした夕食は、言葉にできないが感動した。食べ終わった食器を洗って片付けそして、寝る時間になった。

が、寝具を何も買ってないので畳の上に寝なければならない。その寝心地はなかなか悪く、あまりよくは眠れなかった。

 

翌日

 

朝は早起きして昼食の準備をしなければならない。そのため、朝食を作って食べる余裕はない。それに昼食のおかずを作る技術がないので、買った弁当箱の中身は白ご飯しかない。でも、ないよりずっとマシだと思う。

仕事に関しては命が9:00~17:00まで、俺が7:30~16:00となっている。これを土日以外毎日なのだが、勇者として活動していたときよりもかなり楽だと確信できる。

 

凱「じゃあ、いってくる」

 

命「うん、いってらっしゃい」

 

朝は命に見送られ夕方には、

 

命「ただいま」

 

凱「お帰り」

 

命を迎える。その後夕食を済ませて寝るを平日は繰り返す。

着替えがなくなる日はコインランドリーへ行って洗濯を任せる。

休日には情報を手に入れるために役場のすぐ近くにある図書館に通って本や新聞記事を読み漁った。

命は料理の本を借りて家に持ち帰り、俺も一緒になって料理の腕を磨いた。⋅⋅⋅もちろん最初は失敗して、焦げてしまった料理も食べられると思う部分は食べた。

給料はその日その場でもらうことなっているので、半月で念願の寝具を買い、磨いていた料理の技術が実り日々の弁当に彩りが増えていった。

 

それから1ヵ月後

 

図書館に通い詰めてわかったことがいくつかある。

この世界には「ノイズ」と呼ばれる謎の物体が現れ、人々を襲う災害が10年前から頻発していて、さらに通常の兵器は何一つ効かないので、人々はノイズが自然崩壊――いなくなるまでシェルターに避難するか逃げるしかないようだ。逆にGGGに関する記述は何もなかった。絶望的状況だが、2つ気になることも見つけた。

 

1つ目は「聖遺物」という物の存在だ。この世界には神話や伝説の中に出てくる武器などが実在するらしく、また様々な効果を発揮するらしい。

しかし、そのほとんどが劣化がひどくて欠片程度しか残らず、その効果が目に見えないほどに弱まるが、稀に完全な状態で発見させることがあり、これを「完全聖遺物」という。その中から「空間と空間を繋げる」という効果がある完全聖遺物を探せば帰還することができるのではないかという考えだ。さらに、それが欠片だった場合はその力を増幅されるものがある。

それが2つ目の新聞記事に写真付きであった「8筋ものオレンジ色の流星」だ。おそらくこれの正体は滅びの力である「ザ・パワー」だろう。この力を使い聖遺物の力を増幅するという保険だ。

 

正直、この方法自体は根拠とできるものはこの情報しかないし、完全聖遺物どころか欠片を探しだすことも困難を極める。

そもそも、こんな危険なものを国家が放置しているわけがない。仮に探しだしても繋がった空間が果たして俺たちの世界とは限らない。できたとしたら、それは御伽噺(おとぎばなし)に出てくる奇跡に近いものだ。

でも、俺も命も諦めなかった。GGG憲章のこともだが、俺たちはあの時勇気ある誓いをたてた。こんなところで挫けていれば皆に笑われる。

それに1つの疑問があった。ノイズという存在は太古の昔から存在していたらしく、命名されたのがつい最近だという。つまり、太古の人々はノイズに対抗する手段を持っていて、それが聖遺物として残っているのではないだろうか。

公にならないのはおそらく政府が関与しているに違いないと思っている。もしかしたら本当に方法が無いのかもしれないがそれは無かったときに考えることにした。

 

同年 2人が仕事を始めてから1ヵ月1日後

   どこかの居酒屋

 

岩倉「で、どうよ? 私が紹介した新人君らは?」

 

命の仕事先の上司「正直言って、人間かどうか疑うほどだ。仕事のスピードがとにかく早い。給料上げるからって品物の整理も頼んだけど、もうどのパートの人よりも把握してるよ」

 

凱の仕事先の上司「こっちもだ。あまりにパワーとスピードが違い過ぎて他のやつの仕事が減ってな。

おまけにウチのマドンナ的な社員を荷物の下敷きになりそうなところを助けちゃってさ。もうその子、そいつに惚れちゃって。他の男たちが嫉妬しててさ、何か悪いことが起きるかもって心配してるぐらいだ」

 

命の仕事先の上司「それはこっちもだ。レジにいるとき若いお客さんからラブレターをもらってるんだよ。それに昼休みになったらそのラブレターに断りの返事を全部書いてる。その子目当てでウチの売り上げは上がってるけど、近いうちにトラブルが発生するかもってヒヤヒヤしてるんだ」

 

岩倉「まあまあ、今のとこはあっちが生活に苦しんでいるから耐えてくれや。それにもう1ヵ月が経ったから凱君には()()をしてもらう。命君は無理だけどね。それで手打ちとはできないか?」

 

凱の仕事先の上司「⋅⋅⋅わかった、それで手打ちといこう」

 

命の仕事先の上司「こっち全く変わってないけど!? まあ、なんか対策を考えておくわ」

 

岩倉「じゃあ、もう一度乾杯といこうじゃないか」

 

そして、3人は自分のジョッキを持って、

 

3人「「「若者の明るい未来に乾杯!!!」」」

 

数日後 岩倉の部屋

 

凱「⋅⋅⋅子供たちの交通安全ですか」

 

岩倉「ああ。ここに来る子たちに自治体から義務づけされていることだ。すまないが君の出勤する時間を7:30から9:30に変わる。当然、その分給料も減る。それでいいか?」

 

凱「いいですよ。初めの給料の1.5倍はもらっていましたし、子供の安全を守ることは決して悪いことではありませんから」

 

岩倉「だけどね、ここに来ていた子たちは皆それの両立ができなくてここ去った。君は大丈夫かな?」

 

凱「もちろん、任せてくださいよ」

 

岩倉「⋅⋅⋅⋅⋅⋅わかった。じゃあ、これをする子たちには必ずあげる報酬だ」

 

と岩倉さんはラジオを1台くださった。

 

凱「ありがとうございます」

 

岩倉「交通整理は6:45からだ。遅れるなよ」

 

凱「はい」

 

その後、命にこのことを報告。ラジオは不良品ではなかったのか問題なく動いた。

 

命「子供たちにおじさんって呼ばれるかもよ?」

 

凱「⋅⋅⋅その度に訂正してもらうように言うさ」

 

命に冗談で言われ、少しムッとしながら答えを返す。おじさんと子供に言われるのは、あのEI-02襲来の時以来だろうか。あの時はおじさんって言われてついつい、

 

凱「おいおい、おじさんはないだろう?これでもまだ、二十歳(はたち)なんだぜ」

 

と緊急時にも関わらず返したのだ。もうそれも遥か昔のことのように感じる。

それもそのはず、EI-02を皮切りに多くのゾンダーが街を襲い、その度に出撃して街を護っていたからだ。今思い返しても、激闘の連続だった。さて、果たして子供になんて呼ばれるかなと思いつつ、眠りの落ちた。

 

それからさらに2ヵ月後の9月、

 

子供たち「「「お兄さん、おはようございます!!!」」」

 

凱「ああ、おはよう!」

 

あれから、さらに1ヵ月が経った。ちなみに、子供たちはやっぱり最初はおじさん呼ばわりだった。だから、

 

凱「おいおい、おじさんはないだろう?これでもまだ、22歳なんだぜ」

 

と根気強く言うといつの間にかお兄さんになっていた。

一方で、子供たちと言っても小学生だけでなく中高生も使っており、小学生の人混みの中でちらほらと目立っている。今日もいつもと同じぐらいの交通量だと思ったその時、

 

???「凱さん、おはようございます!」

 

凱「ああ、立花君おはよう!」

 

この朝の通学の中で2人だけ名前で呼ぶ者がいる。1人は今挨拶してくれた子、立花(たちばな)(ひびき)君。そしてもう1人は、

 

凱「小日向君もおはよう!」

 

未来「凱さんもおはようございます」

 

この子、小日向(こひなた)未来(みく)君だ。なぜ、この2人からこんな風に呼ばれるようになったかというと、あれは1週間ぐらいのことだ。

 

1週間ぐらい前の朝

 

今日も通学する人が多いなと感じていた時だった。

1人の小学生が横断歩道を渡っている途中に、よそ見をして信号無視で進入してきた、どう見てもスピード超過のトラックがその子に対して迫って来たのだ。

それを立花君が「危ない!」と叫び、歩道を飛び出してその子を向かいの歩道へ押した。しかし、どうやら後先を考えていないと悟った俺は咄嗟に子供たちが渡る時に使う旗を放り、歩道を飛び出し、立花君の足を素早くはらい、お姫様抱っこをしてなんとかその小学生も立花君も事なきを得た。

その後に立花君を降ろして、

 

凱「大丈夫か?」

 

響「えっ?あ、えっと、は、はい、大丈夫です⋅⋅⋅」

 

凱「そうか、よかった。怪我がなくて」

 

未来「ひびきー!」

 

響「あっ、未来!」

 

声が聞こえた方角から1人の少女が小走りに近寄る。

 

未来「響、大丈夫?怪我はないの?」

 

響「うん、私は大丈夫。この人が助けてくれたんだ」

 

未来「あっ、そうなんですね。友達を助けていただきありがとうございます。⋅⋅⋅えっと、お名前は?」

 

凱「俺は獅子王凱だ」

 

未来「私は小日向未来です。そして、こっちが⋅⋅⋅」

 

響「私は立花響です!助けてくださりありがとうございます!」

 

俺は突然の溢れんばかりの元気に驚きつつも、

 

凱「あ、ああ、どういたしまして⋅⋅⋅。⋅⋅⋅⋅⋅⋅君は勇気に溢れているんだね」

 

響「えっ! そ、そうですか? エヘヘ」 

 

凱「でもね⋅⋅⋅」

 

響「?」

 

凱「確かに、人を助けることはとてもいいことだ。でも、助ける時は同時に自分も助かる努力をしなきゃいけないよ」

 

散々、恋人を泣かせた自分が言うのもおかしいが2度と誰かに悲劇を味わって欲しくないと思い、自分にも釘をさしながら語った。

 

響「⋅⋅⋅はい、わかりました。凱さん、ありがとうございます」

 

凱「うん。さあ、学校へいってらっしゃい」

 

響「はい、行って来ます! 行こう未来!」

 

未来「うん。では凱さん、失礼します」

 

こんなことがあったのだ。

あの小学生は立花君が押した時に歩道にたどり着いたので学校へ行ったのか姿が見えなかった。ちなみに、トラックの運転手は200m先にいた同じ交通整理の人に通報され連行されていった。

 

 

そういうことで二人からはお兄さんではなく名前で呼ばれるようになった。しかし、立花君はいつも元気いっぱいで彼女の周りだけスポットライトが当たっているようだ。さらに、今日は何時にも増して上機嫌だ。

 

凱「おや立花君、何かいいことがあったのかい?」

 

響「エヘヘ。あっ、わかりますか? 実は未来と一緒にあの『ツヴァイウィング』のライブに行くんですよ。もう楽しみで楽しみで」

 

「ツヴァイウィング」というのは風鳴(かざなり)(つばさ)天羽(あもう)(かなで)の2人組のユニットのことだ。

その人気ぶりは凄まじく、ラジオで聞いた限りでは海外にもファンが大勢いるらしい。そんなユニットのライブとあればワクワクを抑えろという方が難しいだろう。

俺は宇宙飛行士になりたくて猛勉強していたり、勇者としての活動があったりしてそういうものとは無縁だった。だから、少し興味があったが今自分は業務中なのを思い出し、

 

未来「もう、この話5回ぐらい聞いてるんですよ」

 

凱「ふふ、楽しみにするのはいいけど、ちゃんと勉強もするんだぞ」

 

響「大丈夫ですよ、危ない時は未来に助けてもらって――」

 

未来「響、今度は助けないかもよ?」

 

響「えっ!? それは勘弁してよ~」

 

凱「さっ、学校が始まるからそろそろ行かないと。引き留めてごめんね」

 

未来「いえいえ、こちらこそ。響、行こう?」

 

響「あっ、待ってよ未来! えっと、凱さんも頑張ってください」

 

凱「ああ、いってらっしゃい」

 

そう返すと立花君はまるでウサギみたいに先に行く小日向君を追いかけて行った。それにしてもライブか⋅⋅⋅

 

凱「一度でもいいから行ってみたいなぁ」

 

と呟き、自分の業務に戻った。

 

その日の夕方、商店街のくじ引き前にて

 

⋅⋅⋅当ててしまった。

家のポストに入っていた、ここの自治体に住む人全員に配られたくじ引き券で見事一等賞の、ツヴァイウィングのライブチケットをゲットしてしまった。このことを命に報告すると、

 

命「ふ~ん⋅⋅⋅。いいんじゃない? 行っても」

 

と不機嫌を隠さずに言った。実際に行く訳だから、いや行かないと言って弁解できないので他に返す言葉がなかった。

 

そして、ライブの日

 

ライブは大きなステージで行われると聞いていたが未だに入口には長蛇の列があった。それはもう、最後尾が見えないぐらいだ。列を遡っていると見知った顔を見つけた。

 

凱「おはよう、立花君」

 

響「⋅⋅⋅えっ、あ、はい、おはようございます⋅⋅⋅」

 

凱「どうしたんだい?」

 

響「未来が⋅⋅⋅家の用事で来れなくなったって電話がきて」

 

凱「それで元気がなかったのか」

 

響「えっ、そう見えましたか?」

 

凱「ああ。でも、ライブは見ない訳じゃないんだろ?」

 

響「はい」

 

凱「だったら、ライブを楽しんで今日のことを小日向君に伝えればいい。そして次こそは、一緒に行こうって約束すればいい」

 

響「そう⋅⋅⋅ですね。そうですよね! やっぱり凱さんはとても頼りになります!」

 

凱「そうかな? ・・・でも、悪い気はしないかな。それじゃ、並ばないといけないから⋅⋅⋅立花君またね!」

 

響「はい! 凱さんも楽しんでくださいね!」

 

と最後尾へ向かって行った。

 

響「⋅⋅⋅そういえば凱さん、どうやってチケット手に入れたんだろ?」

 

最後尾へ到着し並んでいたが、後から後から続々と人が並んでくる。中には手作りしたような応援用の道具がリュックからはみ出ている人もいた。結局、会場に入れたのは体感で3時間ぐらい後だった。

会場は人がぎゅうぎゅうに詰まっていてさらに9月なのもあって暑苦しい。

1mもしない距離に人がいる。だが、どの人も会場の1番目立つ場所であるステージを見つめ、辺りには緊迫した空気が流れている。そして、その空気を裂いたのはステージの下から白い煙が吹き出し、そこから二人の歌姫が現れた。観客席のあらゆるところから歓声が溢れライブの始まりを告げる。

 

翼「今日は来てくれてありがとう!」

 

奏「でも、来るだけでバテてるやつは遠慮なく置いていく! ついて来れるやつだけついて来な!」

 

ここで再び歓声が沸き上がるが、果たして置いていっても大丈夫なのか?それは自分たちの不利益にならないか?と考えずにはいられなかった。

そして、始まる曲の数々。確かにラジオから流れるCDの音源からしたら、やはり生の方が迫力があるが、それよりも周りのファンがタイミング良く合いの手のように声をあげることに驚いた。

もしかして、彼らは皆何かしらの知り合いなのだろうか? それか何らかの打ち合わせでもしたのだろうか? と周りの激流にただただ流されるばかりだった。

 

それから、ライブは何事もなく進んで終盤に差し掛かろうとしたその時だった。

突然、謎の違和感を覚え、左手の甲に「G」の文字が浮かび上がったのだ。だが、何に警戒すればいいのかわからず、臨戦態勢をとった。

すると前の方から、極彩色のモンスターが現れた。誰かが悲鳴と共に「ノイズ」と言って会場が歓声から悲鳴に変わり、我先にと非常口へ駆け込む。避難誘導に動こうしていたが肩を押されたり前に割り込まれたりでなかなか前に進めない。

一方で状況はますますカオスになり、暴力を使って無理矢理にでも逃げようとする人まで現れた。このままでは死人がでてしまうと懸念していると後ろから後頭部に衝撃がはしり、そのまま気を失ってしまった。

 

 

やっと気がついて身体を起こすが、もう辺りに人はおらず、代わりにノイズが囲うようにこちらを見ていた。だが、ノイズは人を炭化されることができる。なのに、何故しないのかと考えると左手の甲に映る「G」の紋章で気づいた。

 

もしかしたら、Gストーンの力ならノイズに対抗できるのではと。

 

その時頭上から気配がした。それは雲の中に潜んでいるらしく、姿は見えない。でも、俺には誰か、いや何がいるのかがわかった。

ギャレオンだ。ギャレオンもこの違和感を感じて来てくれていたのだ。そして、殴られた頭がクリアになってきたのか、ようやく誰かが歌っていることに気がついた。ひとまず、ノイズの輪から出ようと1体に近づくとそのノイズは避けるかのようにその場をどいた。

歌が聞こえる方に目を向けると2人の少女がノイズと戦闘を行っていた。しかも、間違いなくあのツヴァイウィングの2人だった。どちらも見たこともない鎧に身を包み、風鳴翼は刀を、天羽奏は槍をふるってノイズを炭化されていた。やはり、対抗する手段があったのかと思う反面、冷静に見れば2人が多勢に無勢となっていることもわかる。それでも、2人は戦っていた。そして、その傍ら1つの人影を見つけた。影から這い出て徐々にその正体がわかる。それは、

 

凱(――立花君!!)

 

なんと彼女が1人逃げ遅れていたのだ。どうにかして助けられないかと考えていたとき、それは起こった。天羽奏の槍が粉々に砕け散り、その破片が立花君の胸に刺さったのだ。そのことに気づいたのか慌てて駆け寄り意識を繋ぎとめるように呼びかける。

 

奏「おい、死ぬな! 生きるのを諦めるな!」

 

その一言に俺はハッとなって通路の方に進み、出口を目指す。やがて、誰も何も見えなくなり出口が見えてきたときだった。

 

翼「奏、ダメーッ!!」

 

という叫びを聞いた。その声で「フュージョン」は間に合わないと判断して出口から飛び出し、空に向かって叫ぶ。

 

凱「ジェネシック・オーラ!」

 

するとかすかにギャレオンを咆哮が聞こえ、その声は雲を吹き飛ばし会場へと叩きつけられた。

こっそりと会場内を見ると、ノイズは全て消えたものの衝撃が強すぎたのか側面のコンクリートが崩れていてその下敷きになっている天羽奏と呆然とその様子を見ていた風鳴翼がいた。

やがて、風鳴翼はハッとなって急いでどこかに連絡をとり始めた。

 

翼「緒川さん! 奏がコンクリートの下敷きになって⋅⋅⋅。早くしないと⋅⋅⋅早くしないと奏が⋅⋅⋅!」

 

と泣きじゃくりながらそう叫んでいた。

一方の立花君はさっきと位置が動いてない。おそらく死んだか、あるいは生きているのかもしれないが生死に関わるほどの重症であることは間違いないだろう。だが、今俺が行ってできることは何もない。

あとは彼女たちの背後にいる大きな組織に任せるほかなく、俺はまたこっそりとその場をあとにした。

全部、俺の責任だった。ギャレオンに気づいた時点でフュージョンし、ガイガーになっておけばこんなことにはならなかった。

だが、突発的に現れたノイズに対抗して姿を現せば各国政府の興味の的になり最悪の場合、ギャレオンを巡って戦争が勃発しかねないと考え、フュージョンすることを躊躇った。未知の世界での慣れない生活と初めてのノイズ襲来で判断力が鈍っていたのかもしれない。だが、いくら後悔しても時間を巻き戻すなんてことはできない。まさに、嫌な事故だった。

 

だが、世間はここでこの事故を終わらせなかったのである。

現場のカオスぶりから察していたが、この事故でやはり人為的な死亡者が多くでており、亡くなった遺族と生き残った生存者に政府が多額の慰謝料を支払ったことで「人殺しに何故、金をやるんだ!」と全国各地で生存者へのバッシングが発生した。これに関して政府は何も表明しなかったことによりバッシングはさらにヒートアップし、俺も仕事場に居場所が無くなり孤立してしまった。

だが、俺には命がいてくれるお陰でなんとか通勤することができた。あの日にも後悔で顔を曇らせて帰ってきた俺を泣いて迎えてくれたし、

 

命「凱。私はね⋅⋅⋅私は、凱が無事に帰ってきてくれたことが、嬉しいの」

 

と言い俺の自分への自嘲に最後まで付き合ってくれたからこそ俺は立ち直ることができた。もし、支えてくれる人がいなかったらと思うと俺は周りの圧に押し潰されていただろう。

 

その事故もとい事件から1ヵ月経っても状況はますます悪化していくばかりであった。その日は夕方から季節外れの大雨が降っていて、道端の側溝からは雨水が溢れるほどだった。帰路を急いでいた俺は横の道から制服姿で傘もささずに歩いている女の子と会った。

それは立花君だった。生きていたのかと喜びたかったが、その足取りは重く、顔も下を向いていた。それに、実はこれから彼女が行く道は俺の帰路と同じ一方でいつも彼女が来る方角から来ている。つまり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

凱「立花君」

 

と声をかける。しかし、彼女から返事はない。

 

凱「立花君、どうしたんだい?」

 

とさらに肩をたたいて声をかけるとその体は糸が切れたようにゆっくりと前のめりに倒れた。

 

凱「! 立花君、しっかりするんだ!」

 

と声をかけても返事がない。慌てて彼女の背負い、家へと走って帰った。

 

共同の傘さしに傘を刺して部屋の前につくと、

 

凱「命、ごめんだけどドアを開けてくれないか? 今、両手が塞がっているんだ」

 

するとドアの向こうから音が聞こえドアが開く。

 

命「お帰り、凱。今日凄い雨だった⋅⋅⋅ね⋅⋅⋅⋅⋅⋅。⋅⋅⋅どうしたの、その子?」

 

凱「知り合いなんだけど、この雨の中で傘をささずにいたんだ。かなり体温が低い、事情は後で話す。だから、頼む。手伝ってくれないか?」

 

命「もちろん、わかったわ」

 

そこから命は「男は見ちゃダメ!」と俺はユニットバスの前で止め、彼女を背負い中に閉じ籠ってしまった。

仕方がないので俺は布団を敷き、つい最近買った炊飯器ではなく鍋を使ってお粥を作り始めた。水加減は炊飯器よりも上手にできる。鍋でご飯を炊いていた影響がこんなところにでていた。

しばらくしてお粥ができた頃に、命がユニットバスから出てきて立花君に自分の寝間着を着せて敷いていた布団に寝かせて、お粥を少しだけ食べさせた。

その後、俺は命に言われるがままに立花君との関わりを全て話した。序盤、命はこちらを睨みつけていたが終いには哀しみの眼差しを彼女に投げかけていた。

幸いにも明日は土曜日だ。彼女の容態を1日中気にかけることができる。一体、彼女の身に何があったのだろうか?

 

この日から約1ヵ月前 最寄りだった病院のある病室にて

 

徐々に意識が浮かびあがり、目を開けるとそこには白い天井があった。左にはピッピッと電子音を絶えず鳴らす機械と口元のプラスチック製のマスクから伸びているチューブの向こうから空気が送られることでようやく自分が病院にいることに気づく。すると病室のドアが開き、そこから見知った顔が見える。あたしの相棒である風鳴翼だ。翼はこっちが見ていることに気づくと花束を落としたことも気にかけずに右側から駆け寄る。

 

翼「奏!? 目が覚めたのね、奏!」

 

と涙を流し始める。おいおい、泣くなよって声をかけようと口を動かした。⋅⋅⋅あれ、()()()()()。もう一度やっても結果は変わらない。すると翼が、

 

翼「あ、ああ・・・ちょっと待ってて」

 

と傍にある棚から1枚のプラ板を取り出して、左手に握らされる。それは小学生が使うような50音順にひらがなを並べた表だった。訳がわからず、翼に見つめ返す。すると、

 

翼「⋅⋅⋅あのね、担当医が言ってたの。原因は不明だけど、奏はもう声が出せないって。だからその⋅⋅⋅それを使って自分の言いたいことを指差してって⋅⋅⋅」

 

えっ?と戸惑った後に悲しみと怒りが押し寄せる。

どうして。

どうして「ガングニール」を纏うためにあんなに努力したのに。それが一気に無駄になったなんて。信じられない、信じたくない。でも、声が出ないこの状況こそ何よりも動かぬ証拠。動揺して震える指であることを聞く。

 

翼「⋅⋅⋅ガングニールは? ⋅⋅⋅奏、声が出ない以上二度とガングニールは纏うことはできないわ」

 

やっぱり⋅⋅⋅やっぱりそうなるよな。続けて指を走らせ言葉を作る。

 

翼「⋅⋅⋅他に怪我は?

えっと、まず、もう声が出ないこと。次に、右腕がノイズによる部分炭化で消失。最後に、両足の骨折ね。骨折は軽いものだから1ヵ月位で治るって。あっ、私は大丈夫。大怪我っていうほどの怪我は負ってないから」

 

そうか、翼に大事がなくて安心した。んで、足が治るってことはまた歩けるようになるってことか。そして、最後に聞きたいことを聞く。

 

翼「⋅⋅⋅あの子は? あの子って⋅⋅⋅ああ、あの子なら今はリハビリ中だって」

 

ああ、そうか、よかった。と安堵しつつこれからどうなっていくのかと不安を感じずにはいられなかった。

 

それから約2週間後

 

緒川「奏さん、調子はどうですか?」

 

奏『調子はかなりいい。早くベッドから出たいぐらいだ』

 

緒川「そうですか⋅⋅⋅それはよかったです。それならリハビリへの気力もバッチリってことですね」

 

今日は翼がノイズ狩り中なのでこの人が見舞いに来てくれた。表面はあたしたちツヴァイウィングのマネージャーで、裏面は二課のエージェントで忍者の緒川(おがわ)慎次(しんじ)さん。その実力はかなりのもので、ダンナの右腕的存在だ。一方で、あたしは今日は翼ではなく緒川さんが来てくれたことが幸運だと思った。なぜなら、緒川さんに頼みたいことがあったから。

 

奏『緒川さん、頼みたいことがあります』

 

緒川「はい、どんなことですか?」

 

奏『実は⋅⋅⋅⋅⋅⋅』

 

緒川「⋅⋅⋅わかりました、調べておきましょう」

 

奏『サンキュー』 

 

きっかけはテレビから流れるニュースだった。

あのライブで生き残った人たちがバッシングを受けているというニュース。それに嫌な予感めいたものを覚え、緒川さんに調査を頼んだ。この流れからしたら、きっとあの子も⋅⋅⋅。そう考えると妙な震えが止まらなくなった。

 

時は戻って、凱が響の連れ帰ってきた次の日の午後 凱たちの部屋にて

 

響「う、う~ん⋅⋅⋅」

 

命「あっ! 凱、彼女が起きたよ」

 

凱「ああ。⋅⋅⋅調子はどうだい、立花君?」

 

響「あれ、凱さん⋅⋅⋅。ここは?」

 

凱「ここは俺の家だ。君は昨日、道端で倒れちゃったんだよ」

 

響「そうなんですね、ありがとうございます。でも、私もう逝かなきゃ」

 

凱「行くってどこに?」

 

響「この先にある港に行って、私はそこで身投げをして、死ぬんです」

 

凱「!? ダメだ、立花君! そんなことをしたらいけない!」

 

響「ほっといてください。どうせ私は人殺しなんです」

 

凱「君は人を殺してなんかいないだろう!」

 

響「凱さんに何がわかるんですか。それに、周りの皆は誰も私の言うことに耳を傾けてくれない。だったら、いっそのこと私が死ねば⋅⋅⋅」

 

俺は彼女の前に立って説得をしていたが彼女は心ここにあらずのような状態で濁った目をして、部屋から出ようする。すると、

 

命「⋅⋅⋅凱、どいて」

 

命が一言声をかけ、俺はその場をどく。そこに命が立ち、

 

命「⋅⋅⋅ごめんね」

 

と右手で彼女の頬をぶった。

部屋にパチンという乾いた音が響く。彼女はぶたれた頬を手でおさえながら目を見開いて命を見つめ返す。

 

命「少しは目が醒めた?」

 

よく見れば命の拳が固く握られて小刻みに震えている。それで俺は、命がどれほど怒っているのかがわかった。まさに怒り心頭といったところだ。

 

命「どうして殴られたかわかる?」

 

響「⋅⋅⋅わかりませ――」

 

命「わからないの! あなた、今死のうとしていたんだよ? それが、どれだけ悪いことかわからないの! あなたには帰る場所があって、そこにはあなたの帰りを待っている人がいないの?それに、凱からいつものあなたの様子を聞いた。あなたには頼りにしてる友達がいるんじゃないの?」

 

そこで彼女の目に少し光が戻り、

 

響「いま⋅⋅⋅す」

 

命「だったら、あなたが死んで悲しまないと思ってるの? まさか、喜ぶとかそんな馬鹿なことを考えてないよね?

いい? どんな人間でも大切に思っている人が死んだら悲しまない人なんてこの世に1人もいないの! あなたが大切に思っている人は本当に悲しまないと思う?」

 

響「ちが⋅⋅⋅い、ます」

 

彼女の目に涙がたまる。

 

命「だったら! 死ぬことに甘えないで! 死のうって思わないで! あなたを大切に思って支えてくれる人がいる。ここにいる凱だって私だってそう!⋅⋅⋅一緒に生きる努力をしよう?」

 

そこで彼女の膝が折れ、その場に座り、

 

響「はい⋅⋅⋅ごめんなさい。ごめ、んな、さ⋅⋅⋅」

 

その後はもう言葉になってなかった。彼女は涙でいままで溜め込んだことを、全部吐き出していたのだから。

 

それから、しばらくは泣いて泣き止んだら水を飲んで、今はもうだいぶ落ち着いてきた。目はほとんど元の輝きを取り戻していた。

 

凱「⋅⋅⋅それじゃあ、話してくれるかい?あのライブの後から何があったのか」

 

響「⋅⋅⋅はい」

 

その口から紡がれた出来事はまさに苦痛の塊だった。

また、家で家族全員で食卓を囲もうとリハビリを頑張っていた矢先に父親が家を出ていき行方不明になったこと。

そして、家に帰って見れば外の塀に死ねなどの誹謗中傷がびっしり書かれ、家の窓ガラスは割れていたこと。

毎日毎日どこからか百数十件の誹謗中傷の電話が鳴り、学校でも陰でまたは面と向かって死ねと言われたり、教師が世間に呑まれるようにそれに加担していたこと。

そして、昨日学校から帰ると家が誰かに燃やされ、こっちを見た母親の虚ろな目にとうとう耐えきれなくなって荷物を放ってその場から逃げだしたこと。

それらをつっかえながらも話してくれた。

 

命「そう、そんなことが⋅⋅⋅」

 

凱「⋅⋅⋅だったら立花君、君の調子が完全に戻るまでここにいていいよ」

 

響「え?」

 

命「あ、私もそう思っていたの。あなたがまた元の生活に戻る気になるまで、ここに住んでもいいって」

 

響「⋅⋅⋅いいんですか?」

 

凱「ああ。だって、俺も命も君を大切に思っている者の1人だからね」

 

命「凱の言う通りよ。あ、自己紹介まだだった。私は卯都木命。これからよろしくね」

 

響「はい、よろしくお願いします。だったら、あの⋅⋅⋅お願いがあるんです」

 

凱「? お願いって何だい?」

 

響「あの⋅⋅⋅凱さん、命さん、私がここにいるまででもいいですから私のことを名前で呼んでくれませんか?

なんか他人行儀だといつか2人が離れていくような、そんな気がして⋅⋅⋅」

 

そう言いながら震える両手を俺は右手を、命は左手をそっと包む。

 

凱「⋅⋅⋅響君、俺たちはいつかは君の前からいなくなると思う。でも、君がまた立ち上がる時までは必ず一緒にいる。約束するよ」

 

命「うん、私も響ちゃんと一緒にいるよ。いつまでもっていうわけにはいかないけど、ほんの少しだけのあなたの親の代わりぐらいちゃんとやってみせるよ」

 

響「凱さん、命さん。あ、ありがとう⋅⋅⋅ござい、ま⋅⋅⋅」

 

そこからまた泣いちゃってまた水をもらっていた。

だが、俺たちはまだ自分たちの生活が円滑に進むには程遠く、やっぱり働かなければいけなかった。それを彼女に伝えると、

 

響「いえ、私がお邪魔しているんです。確かに寂しいですけど、帰って来るって約束してくれましたから、大丈夫です」

 

と返してくれた。そして、命が「あの箱には触らないでね」とIDアーマーが収納されているトランクケースを指差しながら釘をさしていた。

こうして、彼女との共同生活が始まった。

 

 

私が凱さんと命さんの家で暮らすようになって5日目に入ろうとしています。

ここで1日を過ごすようになってだんだんと元の自分に戻っていくように感じています。凱さんと命さんはこっそりと私に対して色々なことをしてくれました。

まず、ラジオをつけないこと。凱さんが「周りのことよりも自分のことに専念した方がいい」ということで1度も今のところラジオをつけていません。

次に、食事のこと。私の好きなものはごはん&ごはんなもので、つい自分の家と同じように日曜日のお昼を食べてしまった後、2人は毎食のごはんの量が少なくして、私にごはんを盛ってくれました。ちょっと心苦しかったけど、少し嬉かった。

この生活にずっと甘えていたい。でも、やっぱり自分に起きていることと向き合わなければいけないと思って、昨日から私は2人がいない時間にラジオをつけて、ひたすらニュース番組をかけて私たちの周りでどんなことが起きているのかを吸収していった。

 

そして、今日私は本当の家に帰る決心がつき、この決意を2人に伝えた。

 

凱「⋅⋅⋅わかった。明日は金曜日だから、夕方に電話をかけていつ帰るのかを伝えないとな」

 

命「でも、もう行くの? 疑うわけじゃないけど本当に大丈夫?」

 

響「はい。私は2人に大切に思ってもらって、人は支え合うものだってすごくわかった気がします。⋅⋅⋅でも、もしまた私が挫けてしまったら、その時はまた助けてくれませんか?」

 

凱「もちろんだよ、響君」

 

命「うん、また頼りにしてね、響ちゃん」

 

響「――ッ、ありがとうございます!」

 

そして、次の日に凱さんがここの大家さんから電話を借りて家に電話をしていた。

 

???「はい、もしもし?」

 

凱「あ、もしもし、こんばんは。獅子王という者ですが⋅⋅⋅」

 

???「あれ、凱さん?」

 

凱「ん、あれ? その声、もしかして小日向君かい?」

 

響「えっ、未来なんですか!?」

 

未来「その声、響!? 凱さん、これってどういうことなんです?」

 

凱「⋅⋅⋅詳しい話は本人から聞くといいよ。それでね、少しの間彼女を保護していたんだけど、家に帰りたいってね。それで、明日の午前中に彼女を連れて行くけどお家の人はその時間帯、予定が空いているかい?」

 

未来「はい、明日は響のお母さんたちと一緒に響を探しに行こうって話していたんです」 

 

凱「そうか、わかった。積もる話はあるだろうけど、それはまた明日ね」

 

未来「はい。響をお願いします」

 

両方の合意を得てどちらも通話をきった。

明日からまた元の生活に戻るっていうことを改めて実感した。

実は、2人に聞いてみたいことが1つだけあった。2人ともとっても優しくて、未来と同じぐらいの日だまりにいると感じていた。でも、ときどき命さんに触れられると背筋に悪寒がはしるような感覚がして、逆に凱さんが触れると日だまりよりももっと太陽にグッと近くなったように感じることがある。この感覚は一体なんなんだろう?

でも、聞くと命さんが怒ると思って結局、聞きそびれてしまった。

 

そして、次の日

 

命さんは「家の番があるから行けない」と留守番して、一方で私は約1週間ぶりに自分の制服に袖を通し、靴を履いていざ外へ1歩を踏み出す⋅⋅⋅はずだった。

足を踏み出そうとすると足に重りがついたかのようにびくともしない。

 

どうして?

一昨日、やっと決心したのに。

と、もたもたしていると、

 

凱「⋅⋅⋅しょうがないな。よっと⋅⋅⋅⋅⋅⋅」

 

響「えっ、凱さん。急に座りだしてどうしたんですか?」

 

凱「足、踏み出せないんだろ? 踏み出せるまで俺がおぶって行くよ」

 

響「えっ、そ、そんな⋅⋅⋅そこまでしなくても」

 

凱「いいから、ほら」

 

響「じゃあ、えっと⋅⋅⋅お借りします?」

 

私は凱さんにおぶってもらいながら、帰路への1歩を踏み出した。

今日の天気は雲1つない快晴だった。でも一方で、アパートから出て100mちょっとでおぶってもらっていることに恥ずかしくなって、

 

響「凱さん、降ろしてください。もう歩けます」

 

凱「本当にいいのかい?」

 

響「はい、ですから早く降ろしてください!」

 

と言った。凱さんは力を抜いて私は自らドンとアスファルトの上に降り立った。そこからの1歩は⋅⋅⋅軽い。さっきと比べたら足に羽が生えたぐらいだ。

 

凱「歩けそうかい?」

 

響「⋅⋅⋅はい、大丈夫です! 行きましょう!」

 

と凱の隣に立って歩きだした。

家まで半分をきったときだった。

 

凱「なあ、響君。響君はもしかして命のことが嫌いなのかい?」

 

響「えっ、そんなことないですよ! 命さんとっても優しいし――」

 

凱「いや命がな、ときどき響君が嫌な顔をするときがあるって言ってたんだ。それで今日はわざとついて来なかったんだ。2人の間で何かあったのかい?」

 

響「えっと、何かあったってわけじゃないんです。実は――」

 

と私は聞きそびれたことを凱さんに聞いてみた。すると一瞬目を見開いた後に上を向いて、

 

凱「⋅⋅⋅ごめんな、俺も命もそういう体質なんだ」

 

響「⋅⋅⋅体質? あっいえ、別にそんな、謝ることじゃ――」

 

凱「そうかい? ⋅⋅⋅それじゃあ、あそこの信号の前まで競争だ!」

 

響「えっ!?」

 

凱「よーい、ドン!」

 

響「あっ、凱さん!? ちょっと待ってくださいよ~ッ!?」

 

いきなり走りだす凱さんを慌てて追いかけた。横断歩道はしっかり歩いて渡ってそれからしばらくしたときに、

 

凱「そういえば、昨日のニュースは聞いたかい?」

 

響「はい! ツヴァイウィングの会見のことですよね!」

 

昨日のツヴァイウィングの会見。それはこんな内容だった。

 

ツヴァイウィングの片翼である風鳴翼が事故の後に初めて開いた生放送の会見で、もう片翼である天羽奏の重症により「ツヴァイウィング」の事実上の解散を発表するという内容だった。初めはそれだけだった。

だが、外を警備していた警備員から、天羽奏本人から直接受け取ったという分厚い手紙で会見は思わぬ方向へと進んでいった。それは風鳴翼によって読まれ、その内容が明らかになった。

 

手紙の内容「事前に言いますが、この手紙は代筆です。

皆様、来ていただきありがとうございます。この手紙は私の相棒である風鳴翼が会見を開き、ツヴァイウィング解散を発表すると聞いて慌てて医療関係者に協力してもらい作成しました。

まず、私の現在の身体の状況を報告します。現在、私は両足の骨折、右腕の消失、声が出ないという症状をもっています。骨折に関してはいずれ完治するとのことですが、腕の消失と発声できない症状は原因不明で、声の復活は期待できないとのことでした。よって、この会見の目的となっているツヴァイウィング解散はそういう理由なのです。

一方でこんなことを耳にしました。あの事故で生き残った人たちへバッシングが行われていると。確かにデータでは、ノイズによる被害者よりパニックになった人たちによる圧死などで死亡した人の方が多いという報告が上がっており、それで政府が遺族と生存者に等しく慰謝料を支払ったことに反感を覚えて行われていると。

さて、ここで1つ皆様に質問です。あの事故で生き残った私や翼を皆様どう思いますか? 可哀想と思うのでしょうか? それとも、ふざけるなと思うのでしょうか?

確かに、実際に殺人をしている人がいたという事実は、同じ人として確かに立腹するところでもあります。ですが当時のあの状況では誰もが生きたいと思っていたはずです。

では、殺人を正当化するのかということですが決してそうではありません。殺してしまった人は法に基づいて裁かれるべきです。ですが、遺族の方々が生存者にバッシングを行うということはおかしいことだと思いませんか? 今述べた通り、殺してしまった人は法に基づいて裁かれるべきです。しかし、あなた方が裁いていいとは1つも述べていません。

さあ、一体何人の方々があの時の総ての被害者の後を追ったのでしょうか? 今、遺族の方々がやっていることは当時の殺人犯と全く同じことをやっているのです。しかも、1人に対して不特定多数の人たちが。それに、当時の殺人犯は誰かとも判らずにあなた方は無差別に行っている。

1つ実例をあげましょう。私があの時に助けた瀕死の重症を負っていた少女の行方を、やってはいけないと思いつつも依頼して調査をしていただきました。調査の結果、彼女は学校のクラスというコミュニティから外されてしまい、毎日毎日どこからか来る電話に怯え、そして先日彼女の家に放火が行われました。今、その彼女自身は行方不明です。

さて、大分前置きが長くなってしまいました。ここから私が記者である皆様方と政府関係者、そして今この会見を聞いている皆様にお願いがあります。

まず、記者の皆様と政府関係者の皆様にはあの事故の後に死亡した人を調べあげて総合して生存者が果たしてどれぐらいいるかを調べてほしいのです。また、生存者のご家族がどのような仕打ちにあっているのかを。

そして、これを聞いている皆様にはもうバッシングを行う、または加担するようなことはやめていただきたいのです。皆様が大切に思っている人いると思います。ですが、その存在がポッカリ空いてしまったらどうしますか?きっと悲しいじゃ済まないことでしょう。そんな目にあっている人たちがいるのです。それも他ならないあなた方によって。それを止めることができるのもまたあなた方なのだということも忘れないでください。

以上で私から皆様へのお話を終わります。翼、読んでくれてありがとうな。」

 

こんな内容だった。先だって話されていたものの詳細な理由とこれを読んだ風鳴翼の、

 

翼「⋅⋅⋅私はこの手紙を初めて読みましたが、もしここに書いてあることが本当だとしたら私も皆様の協力をお願いしたいです。

あの事故の主催者の1人として遅かれ早かれ結果を知ることになるでしょう。ですが、私はこの手紙を読んだ今だからこそここに記されてあることの結果が聞きたい。それが例えどんなに辛い結果だったとしても。

だから皆さん、お願いします!」

 

この会見の主旨を含め、彼女たちからの願いと願う理由としての実例。そして、生放送で発表されたことで編集が効かなかったことで、メディアや政府は動かざるを得ないことになった。これから、生存者への被害とその損害、そして加害者の発見に躍起になるだろう。まさにあつい手のひら返しの始まりだった。

 

響「⋅⋅⋅だいたいこんな内容でしたね」

 

凱「ああ、それでね――」

 

響「あっ、家が見えてきましたよ!」

 

なんか凱さんの話を遮った気がするけど多分、気のせいだと思う。久しぶりの我が家はほぼ炭と化していてリビングのある部屋だけ奇跡的にそんなに被害あるように見えない。きっと、あの大雨で鎮火したのだろう。そして、我が家の門の前には、懐かしい影があった。

 

未来「――ッ! 響ッ!!」

 

響「未来⋅⋅⋅未来ッ!!」

 

こっちに走って来る未来と抱擁を交わす。凱さんから見たらこれぞ感動の再会なのかな?

でも、私はよく知る日だまりに帰って来ることができた。それだけで嬉しかった。しばらく抱き合っていると未来がハッと気づいたように抱擁をやめて、

 

未来「凱さん、響をありがとうございましたッ!」

 

凱「別にどうってことないさ。それにあの日響君に出会ったのはたまたまだったんだ。もし、会っていなかったらって思うと、なおさらね」

 

響「私からも改めて、ありがとうございました!」

 

凱「だから、別に気することはないよ。人として当然のことをしたまでだから」

 

未来「⋅⋅⋅じゃあ、響? これからじっくりと何をしていたのかを話してもらうからね?」

 

響「み、未来? なんか顔が怖いんだけど⋅⋅⋅」

 

未来「当たり前でしょ! だってこれだけ心配させたんだから! 凱さん、では失礼します」

 

凱「あ、ちょっと待ってくれないか? 二人に話しがあるんだ」

 

二人「「??」」

 

凱「これから響君は元の生活に戻るだろう。でも、前と全く同じだったらまた同じことを繰り返しになってしまう。だから、説教ってわけじゃないけど、少し話しをしてもいいかな?」

 

響「・・・はい、お願いします!」

 

未来「私もこれからもっと響を守るために聞きたいです!」

 

凱「ああ。それじゃあいきなりだけど、例え話をしようか。今回、響君は自分の意志で家に帰るって言っただろう?」

 

響「はい」

 

凱「でもね、その言葉自体には自分自身を行動させる力が無いんだ」

 

未来「え? だったら凱さんはどうしたら力を得ると思っているんですか?」

 

凱「それが力を得る、つまり行動するきっかけを後押しするのは様々な感情だと思うんだ。

今回の場合は響君がたくさんの気持ちに後押しされて行動できたと思う。だから、基本的な感情である喜怒哀楽をはじめとするものが人を動かしていると思うんだ」

 

未来「でも、その話しとこれからの生活に関してどんな関係が?」

 

凱「⋅⋅⋅君たちは何かに立ち向かうに沸き立つ感情って何だと思う?」

 

未来「え、え~と、その⋅⋅⋅⋅⋅⋅」

 

響「う~ん⋅⋅⋅⋅⋅⋅ダメだ、わからない! 凱さん、一体それって何なんですか?」

 

凱「これも俺の考えだけどね、俺は『勇気』だと思っているんだ」

 

二人「「勇気⋅⋅⋅」」

 

凱「ああ。勇気は何かに立ち向かうときに自分自身の力を補う隠れた力だと思っているんだ。ほら、学生だったらよく耳にしないかい? 困ったときは勇気を出して、とか」

 

響「ああッ、確かに聞いたことある!」

 

凱「だろう? それだけ勇気は補える力があるってことなんだ」

 

未来「でも、なんで今この話しを?」

 

凱「小日向君はツヴァイウィングの会見をもう聞いたかい?」

 

未来「え? ああ、はい、聞きました」

 

凱「これから、新聞会社や政府がこんな風に生存者へ被害をだした者を調べて、逮捕して、裁判にかける。これをメディアは『復讐者狩り』と呼んでいたけど、これで徐々に響君たち生存者が社会に復帰できるのも時間の問題なる。

でも、だからといってバッシングが止むかっていうとしばらくは止まないと思う。だから、互いに支え合っている二人だからこそこの話しをしたかったんだ」

 

未来「そうだったんですね。さすがに、気が回りませんでした」

 

凱「いや、さすがにエスパーでもなければ先読みなんてできないし、そんなことことを気にしなくてもいいよ。

⋅⋅⋅それじゃあ俺はもう行くから。響君、ちゃんと包み隠さず言うんだよ?」

 

響「はい! 全部話して、また助けあえるようになります!」

 

未来「・・・あの、最後に凱さんに聞きたいことがあります」

 

凱「?」

 

未来「確か、響のことは『立花君』って呼んでいたはずです。いつの間に『響君』になったんですか?」

 

凱「おっと、つい。⋅⋅⋅それも本人に聞いた方がいいと思うよ。何せ彼女から呼んでくれって言われたからね」

 

未来「じゃあ⋅⋅⋅、私のことも名前で呼んでくれませんか?」

 

凱「? どうしてだい?」

 

未来「⋅⋅⋅なんか、仲間外れにされた感じで嫌なんです!」

 

凱「わかった。じゃあ改めてこれからよろしくな、未来君」

 

未来「はい、こちらこそ!」

 

凱「それじゃ、今度こそ。さようなら、また月曜日にね」

 

響「はい、ありがとうございました!」

 

未来「私からも、ありがとうございました!」

 

凱「ああ。それじゃ!」

 

と凱さんは元来た道を辿って帰っていきました。私も未来も凱さんが視界から見えなくなるまで手を振りました。やがて、凱さんが見えなくなって、

 

未来「じゃあ、行こう? おばさんが待ってるよ」

 

響「うん!」

 

私は改めて家のドアの前に立っておもいっきりのドアを開けながら、叫ぶ。

 

響「ただいま!!」

 

これから、あの部屋で暮らしたことを話す。

そして、お母さんとおばあちゃんに謝ろう。

そして、また皆で暮らしていくんだ!

 

 

立花響の帰宅。その様子を影から見ている者がいた。

 

「よかった、帰って来て。これで奏さんの依頼は達成ですね。⋅⋅⋅お帰りなさい、立花響さん」

 

そして、その者はフッとそこから姿を消した。




次回予告

君たちに最新情報を公開を公開しよう
あのライブから2年が経った
勇者も密かにノイズを狩るようになった頃
この日、新たなる奏者の誕生によって両陣営に大きな転機が訪れる

NEXT「ガングニールの適合者」
次回もファイナル・フュージョン承認!
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