勇気ある者、歌に導かれて   作:自己満筆者

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皆さん、どうもおはこんばんにちわ。自己満筆者です。
投稿が遅れてしまい、大変申し訳ございませんでした。言い訳としてはここしばらくまでインターネットに繋がらない場所にいたことと、そこで熱中症で倒れてしまい、記憶が一時の間ぶっ飛んで「僕の名は?」みたいなことになっていたからです。
さて、今回から新しい試みとして作中で場所・時間が大きく動く際に段落末に/を入れてみました。理由は自分で読み返した時にあったら分かりやすいと思って導入しました。もし、逆に混乱を招くようであればコメントで教えてください。
友人に「ストーリーを見返すなら⋅⋅⋅」とシンフォギアXDUを勧められ、そこそこ必死にメインを進めています。第3期までは録画があったんですけど、テレビを買い換えた時に失なわれました。懐かしのHDD搭載だったのです。ところで、このゲーム「レアリティアップ」難しくない? 無課金だったらこれ苦行じゃないかと思っています。
次回のこの場は後書きの方に書きます。理由は次回になればすぐにわかる。⋅⋅⋅そういえば「あの人」を呼んだんですけど、まだ到着していません。次回辺りに来てくれることと思います。え? 誰って? ほら、あの人ですよ! あ の ひ と!

それでは、本文へどうぞ!


第1章 流るる血を止めた者は
Episode 01 ガングニールの適合者


2044年春 ある日の夜

 

凱「ウィルナイフ!」

 

IDアーマーに内蔵させている短剣を引き抜いて目の前にいるノイズへ肉薄する。そして、2度3度切るといとも簡単に炭化する。

 

こんな辻斬りのようなことを始めて半年が経とうとしていた。

あのライブからもう2年、あの時にGストーンの力でノイズに対抗できると知った俺は家計がなんとか整った後、夜中で且つ近くであれば対処していた。

だが、全部倒しきる前に撤退する。その理由が、今回も遅れながらヘリでやってきた。遠くからローター音が聞こえ、近くにとまるとヘリから人影が落ちてくる。この世界の対ノイズ用の防衛組織から戦士が運ばれて来たのだ。

 

しかし俺まだこの者と、さらには背後にいる組織と仲良くしようとも、彼女と共闘しようともまだ思っていない。

まだまだこの世界の中でのあの兵器に関する情報と情勢が未だにわからないからだ。

もちろん、国家機密がそう簡単に転がっているわけがない。だが、向こうもだがこちらも手の内を全て明かしていないし、そんな者と仲良くなろうとするお人好しな国は存在しない。故に足がつかないように彼女が到着直前で退却する。それは今回も例外ではなく、ノイズを2~3割ぐらい残してその場を去った。

 

/

 

特異災害対策機動部二課

 

藤尭「特定していた座標に到着しました!」

 

友里「同時にアンノウンも撤退して行きます!」

 

弦十郎「⋅⋅⋅今日も接触し損ねたか」

 

奏『やっぱ、あたしら嫌われてるんじゃない?』

 

櫻井「シンフォギアの存在とそれに関する情報は、それこそ都市伝説にならないぐらい厳重にしてあるはずだけど」

 

弦十郎「どこかで知ったか、あるいはってところだが⋅⋅⋅今日こそは協力を頼みたかったんだがな」

 

モニターに映しだされている2つの反応。

1つは奏者である風鳴翼のもので、もう1つは謎の黄金の戦士(アンノウン)のものだ。

 

半年ほど前から存在が確認され、シンフォギア・システムではと考えられてはいたものの奏者はシンフォギアを維持するために歌を歌うのだが、奴は歌っていないことからシンフォギア・システムではないと判断され、さらに監視カメラを確認しようとしても奴の現れている時だけ砂嵐が生じて顔すらわからない状況だった。唯一わかっていることはヘリから直接撮影された映像から金色の鎧を纏い、時々緑色の光を発していることだけだった。

一方で、聖遺物の起動で発せられる「アウフヴァッヘン波形」が奴から確認されている。また、素性はどうであれ奴はノイズに対抗できる手段を持っている。しかも、それはシンフォギア・システムではない。

 

世界は広いと思いもするし、奏者としての人手がいつでも足りない二課にとっては是非とも仲間になって欲しい人物だった。

だが、何故か奴は翼が戦闘に参加しようとすると足早と立ち去ってしまう。これではまともな会話一つ、とることもできない。

やがて、アンノウンの反応が消えて、

 

友里「アンノウン、ロスト。追跡班も見失いました」

 

藤尭「ノイズの全滅を確認」

 

弦十郎「よし、ヘリで迎えに行ってやれ。翼、よくやったな」

 

翼「叔父様、この程度であれば労いの言葉も必要ありません」

 

弦十郎「そうか。帰還したら、さっさと寝ておけよ。もう奏君とじゃれてる時間じゃないからな」

 

翼「じゃ、じゃれてなどいません! ⋅⋅⋅忠告に従って今日は休みます」

 

こうして、通信は一方的に切られた。

 

奏『おいおい、ダンナ。あたしら別にじゃれてなんていないぜ?』

 

あの事故があった後、声を失った奏は1年ほどは50音+αが載っているボードを使っていたが今は首から提げているモニターに伝えたい言葉が表示されるようになっている。

 

弦十郎「じゃれていなくとも、夜更かしは身に毒だ。特に子供にはな」

 

奏『へいへい、わかりましたよ。じゃあ、あたしもお先に失礼してさっさと寝るよ』

 

そう表すと奏は司令室から出て行った。

 

櫻井「結局、こっそり配置していた追跡班も失敗だったわね」

 

弦十郎「そうだな。奴はとてもヒトとは思えないほどの身体能力を持っている。それに追跡班はついていけなかったのだろう。今度は緒川も配置してみるか⋅⋅⋅」

 

そう言葉を交わしつつ、ふと思った。奴は一体どこで身を潜めているのだろうか?

 

同時刻 凱たちの部屋

 

凱「ただいま」

 

俺が帰って来た時、命は先に部屋にあるトランクへ帰って来ていたIDアーマーの手入れをしていた。

 

命「お帰り、今日も遅かったの?」

 

凱「ああ。やっぱりGストーンが事前に察知するのと、反応があってからとじゃわけが違うってことなのだろう」

 

命「⋅⋅⋅私たちが出る幕、無くなればいいのにね」

 

凱「そういうわけにはいかないさ。それに、いつかは勇者として、また活動しようとは思っていたから」

 

命「そっか。⋅⋅⋅それじゃ、さっさと寝ないとね。凱の新しい職場はきっと大変だよ?」

 

凱「大丈夫だよ。わからないことがあっても岩倉さんが教えてくれるってことだったし」

 

命「あと」

 

凱「?」

 

命「あそこに来る人たちに色眼鏡で見ないようにね!」

 

凱「そ、そんなことするわけないじゃないか」

 

それでも、命はギロリと睨み付けながら、

 

命「本当に?」

 

凱「ほ、本当だよ。さ、さあもう寝よう、明日も早いからな。おやすみ、命」

 

命「⋅⋅⋅おやすみ、凱」

 

こうして、寝床に伏したのだが今夜は横からの視線がやたらと痛かった。

 

/

 

時は流れて約数週間後のある日の昼下がり

私立リディアン音楽学院

 

響「あと、少しで⋅⋅⋅」

 

立花響は木登りしていた。それも昼休みが始まってから。

なぜ、登っているのかというと、昼食中に見かけた木の上にいる自力で降りられなくなった猫を見かけたから。そして、なんとかして猫のいる枝に乗って猫を抱き上げた時だった。

 

凱「おーい、響君。そこで何をしているんだい?」

 

と下から声がする。声の主はこのからこのリディアンで用務員として雇われた獅子王凱だった。

 

響「あ、はい、実はですね⋅⋅⋅って、うわぁ!?」

 

その時、バキッという音を立てて枝が折れてしまい猫ごと落ちてしまう。それをお姫様抱っこで受け止める。

 

凱「大丈夫かい?」

 

響「は、はい。なんとか⋅⋅⋅」

 

それに同意するように抱いていた猫がミャーと鳴く。

 

凱「ん、猫? ⋅⋅⋅なるほどそういうことか。助けるのはいい事だけど、勉強も疎かにしちゃいけないよ。この猫は預かっておくから放課後になったら引き取りにおいで。それに⋅⋅⋅あ、ほら、午後の授業が始まったよ?」

 

その声と同時に授業の開始を告げるチャイムが鳴り響く。

 

響「え!? い、急がないと! 凱さん、猫のことお願いします!」

 

凱「ああ、頑張ってね」

 

響「はい!」

 

と言って猫を渡してダッシュで校舎へ戻って行った。一方の猫は最初は腕の中で暴れていたもののGストーンの力が無自覚で発動し、最終的に落ち着かせることに成功した。

 

/

 

放課後

 

放課後、猫を引き取りに来たのは響君と未来君。聞けば、あの後既に授業が始まっていて、こっそりと教室に入ったものの先生に見つかってしまい、こっぴどく怒られたそうだ。

猫をどうするのかを聞くと、住んでいる学生寮では飼うことができないためここでお別れすると言った。

そっと地面に置いて、響君はそのことを身振り手振りで一生懸命に説明していた。猫はその間、響君をじっと見つめていた。

やがて、説明が終わると猫は理解したのか響に背を向けて歩きだした。途中、名残惜しそうに同じように響君を見つめていたが、小走りに近くの茂みの中に入り、とうとう姿が見えなくなった。

二人は俺にお礼を述べ、それに対して俺は響君にもう一度、二言ぐらい説教して二人は学生寮の方へと帰って行った。

 

/

 

響と未来の部屋にて

 

響「はぁ、疲れた~。今日はいろいろありすぎてクライマックスが百連発きた気分だよ⋅⋅⋅。私、呪われてるかも~」

 

未来「半分は響のドジだけど、あとはいつものお節介。呪いじゃなくて自業自得でしょ。凱さんにもお世話になってちゃって」

 

響「人助けって言ってよ~。人助けは私の趣味なんだから~」

 

未来「響の場合は度が過ぎてるの。普通、同じクラスの子に教科書貸さないでしょ」

 

響「私は未来に見せてもらうからいいんだよ~。小学校からずっと一緒の幼馴染みなんだしさ」

 

未来「⋅⋅⋅もう、バカ」

 

響「――あっ、未来、その記事! 翼さんの新作CD発売の! ねぇ、スクラップにしてもいい?」

 

未来「もう仕方ないなあ。でも、本当に響は翼さんが好きだよね。憧れでリディアン(ここ)に進学決めてしっかり合格したんだから、大したものだよね」

 

響「だけど、まだ一度もお目にかかれてないんだよね~。トップアーティストだし簡単に会えるとは思ってないけれどさ」

 

未来「同じ学校だし、きっと会えるチャンスはあるよ」

 

響「ありがとう、未来。あ~、早く会ってみたいなあ⋅⋅⋅」

 

響(⋅⋅⋅もし会えたら訊いてみたい。戦っていたツヴァイウィング、あれは幻だったのか。雲の中にあった影の正体はなんだったのか。そして、二年前のあの日に一体何があったのかを)

/

 

その日の夜 ある場所にて

 

自衛隊A「目標、前方のノイズ群! ⋅⋅⋅撃てぇ!」

 

ここでは出現したノイズを一課から派遣されてきた自衛隊が迎撃していた。鳴り響く銃声とそれに覆い隠されるカラカラという空薬莢の落ちる音、放たれた銃弾は全てノイズへと向かう。

だが、銃弾はノイズをダメージを与えられずにすり抜けていく。

 

自衛隊A「くっ⋅⋅⋅やはり、位相差障壁で我々の武器が通用しない⋅⋅⋅!」

 

自衛隊B「隊長、軍曹が!」

 

自衛隊C「う、うわあぁぁぁぁ!!」

 

見れば隊員の一人が今まさにノイズに触れられそうになっていた。許せ⋅⋅⋅と思っていたその時、

 

???「ウィルッ! ナイフ!」

 

ノイズの横から金色の何かが飛び出してノイズを一閃し、逆にノイズを炭化させた。

驚いてその後を目で追うと、そこには金色の鎧を身に纏い、手には刀身が緑に光る不思議な短剣を手にした、身長約200cmほどの大男だった。その後も彼は次々とノイズに立ち向かっていく。その戦いぶりはまさに一騎当千の言葉がふさわしいほどで突然の乱入者に全員戦闘を中断してその様子に釘付けになっていた。

だが、その手がふと止まる。

そして、

 

???「もう、彼女が来るのか⋅⋅⋅。やはり、既に自衛隊が展開しているからだろうな⋅⋅⋅」

 

と呟き、戦闘を放棄してダッと走りだし、その凄まじい脚力で5秒としない内に見えなくなった。そのかわり、

 

???「Imyuteus amenohabakiri tion⋅⋅⋅⋅⋅⋅」

 

天から声が聞こえ、一人の女性が舞い降りて来る。

彼女は二課に所属している人類最後の希望とも言えるシンフォギア・システムの適合者、つまり「奏者」だ。だとしたらもう自分たちの出る幕はない。

 

自衛隊A「()()が来た! 全員、第二防衛ラインまで後退!」

 

一方で

 

翼「叔父様、目標地点に着きました。」

 

弦十郎「よし、まずは一課との連携を⋅⋅⋅」

 

翼「いえ、私一人で十分です」

 

そう言って通信を切り、ノイズへと立ち向かう。

 

翼(ノイズは全て、私が斬り伏せる!)

 

そして、ほんの二十分程度でノイズは全滅した。

 

翼「⋅⋅⋅⋅⋅⋅状況終了。これより帰投します」

 

こうして、頭上のヘリから降りてくる梯子に捕まって彼女は戦場跡から離脱していった。

 

自衛隊B「あれが噂に聞く、人類の希望なんですね。あんなノイズをいとも容易く斬れるなんて」

 

自衛隊C「でも、先に来たあの人の方がもっと凄かったですね」

 

自衛隊A「⋅⋅⋅まあなんであれ、俺たち自衛隊よりもあの二人の方がよっぽどノイズ退治を簡単にできるってことは間違いないな」

 

自衛隊B「しかし隊長、あの女性の声。あの声って確か歌手の⋅⋅⋅」

 

自衛隊A「おっと、それ以上の詮索はしない方がいい。お前の見たこと聞いたことは全部、バラさずに自分の胸にしまっておきな」

 

自衛隊B「りょ、了解!」

/

 

翌日 リディアン音楽学院 食堂

 

未来「『自衛隊特異災害対策起動部による避難誘導は完了しており、被害は最小限に抑えられた』だって」

 

響「へえ、そうなんだ⋅⋅⋅」

モグモグ

 

未来「ここから、そう離れてないね。なんだか怖いかも⋅⋅⋅」

 

響「うん、そうだね⋅⋅⋅」

ポロポロ

 

未来「⋅⋅⋅⋅⋅⋅今日発売のCD、人気で売り切れ続出だって」

 

響「そりゃ、翼さんの新曲だもん――って、ええ!? 本当に!?」

 

未来「フフッ、うっそ~。響が朝からずっとCDのことで頭いっぱいにして上の空だったから、意地悪しただけ」

 

響「はぁ~、もうおどかさないでよ~。初回特典の充実度が凄いから放課後まで残ってるか心配なんだからさ~」

 

未来「だからって、食事のときぐらい集中しないと。ほら、ほっぺたにご飯粒が⋅⋅⋅」

 

ふいに食堂がざわめく。

聞き耳を立ててみれば、なんとあの風鳴翼が現れたからだ。現れた生の風鳴翼は何人(なんぴと)たりとも寄せ付けないオーラを身に纏い、そんな彼女を見はすれど話しかける猛者はいなかった。

 

響「えっ、翼さん!?」

 

私は翼さんが現れたと聞いて、自分の身だしなみを整えるのも忘れて、翼さんに話しかける。これは、めったにないチャンス! 今回は私、ラッキーかも!

 

響「あの、翼さん! ⋅⋅⋅あの、えっと、その⋅⋅⋅」

 

響(ど、どど、どうしよう!? いざ、話しかけれたけど心の準備が⋅⋅⋅。2年前のお礼⋅⋅⋅じゃなくて、あのこと、あの事を訊かないと⋅⋅⋅⋅⋅⋅)

 

翼「⋅⋅⋅頬、ついてる」

 

響「⋅⋅⋅え?」

 

もたもたしていた私に対して翼さんがかけてくれた言葉に思わず、「え?」って返しちゃった! でも、ほっぺたに一体何がついて――

 

未来「響、だからほっぺたにご飯粒が⋅⋅⋅」

 

そんな未来の声と同時にほっぺたについていたご飯粒を探り当てた。これでわかることは⋅⋅⋅

 

響「あ⋅⋅⋅あああ⋅⋅⋅!」

 

翼「食事は落ち着いて食べることだ」

 

そう言って翼さんは去っていった。

 

響「あ~もうダメだ⋅⋅⋅。今ので完璧におかしな子だと思われた⋅⋅⋅」

 

未来「間違ってないんだからいいんじゃない?」

 

響「ううっ、私やっぱり呪われてるー!」

 

一方その頃

 

凱「岩倉さん、花壇用のブロックはここに集めるんですか?」

 

岩倉「ああ。土はもう少し奥の方に集積所があるからそこにおいといてくれ」

 

凱「わかりました」

 

岩倉(⋅⋅⋅なるほどなぁ。確かにこんだけたくさん持てりゃ、他のモンの仕事は無くなるな)

 

岩倉はブロックを置いた後に袋詰めの土80kgを台車無しで軽々と運ぶ凱を見てそう思った。

 

/

 

放課後

 

響「はぁはぁ、はぁはぁ⋅⋅⋅⋅⋅⋅」

 

とうとうやってきた放課後。私は未来に、

 

響「今度、何かおごるから!」

 

と荷物を預けてがむしゃらにCD屋さんへと向かっていた。

もちろん、翼さんの新作の初回限定版CDを買うために。

今日だけはあまりにも他のことに集中してなかったから、人にぶつかったり、授業中は先生に何度も注意されたりした。今日はクライマックスが千連発きた気分だったけど、そんなのは放課後という時間の到来で吹き飛んでいった。

 

響「はぁはぁ⋅⋅⋅CD屋さんまであと少し⋅⋅⋅⋅⋅⋅え? 何、これ⋅⋅⋅?」

 

そこには、お店の窓ガラスが割れ、商品棚が倒れて床に商品が散乱していた。近くには焦げたような黒い跡がたくさんあった。

 

響「⋅⋅⋅これ、まさかお昼に未来が言ってたノイズの!?」

 

そのあまりの惨劇にしばらく呆然としていたが、誰かの叫びが人のいない商店街に木霊す。

 

女の子の声「きゃあぁぁぁぁ」

 

響「今、悲鳴が!?」

 

いまなら、間に合うかも! そう思って声の聞こえた方角へ走る。裏路地に入って通りに出て、また裏路地に入って通りに出る。

 

響「さっきの声、確かこっちの方から⋅⋅⋅あっ!」

 

見えた。

 

女の子「やあ、あ⋅⋅⋅あ⋅⋅⋅」

 

極彩色の怪物が向かう先に女の子がいた。腰を抜かしているのか尻もちをついている。

 

響「こっちにっ! ⋅⋅⋅ううん、今行くから!」

 

そう言って私は女の子のもとに駆け寄る。

 

響「もう大丈夫っ! 走れる? さあ、お姉ちゃんの手を掴んで!」

 

女の子「でも、ママが⋅⋅⋅」

 

響「はぐれちゃったんだね! わかった、逃げながら探そうっ! だから、ノイズが来る前に⋅⋅⋅!」

 

女の子「⋅⋅⋅⋅⋅⋅う、うん!」

 

差しのべる手を掴んで後ろから来る気配に気をつけて、女の子のお母さんを探し始めた。見通しのいい所から悪い所まで隅々と。でも、どこにも誰もいなかった。

やがて空が暗くなっていって、とうとう日も暮れてしまった。それでも、諦めないで探していた。でも、

 

女の子「お、お姉ちゃん⋅⋅⋅。もう、走れないよ⋅⋅⋅」

 

響「大丈夫、お姉ちゃんがおんぶするから⋅⋅⋅さあっ!」

 

もう走れなくなった女の子を背負ってもう必死に逃げていた。目指すはシェルター⋅⋅⋅なんだけど、

 

響(でも、シェルターからどんどん離れちゃってる⋅⋅⋅。どこか、隠れられる場所は⋅⋅⋅あっ!?)

 

足元への注意が疎かになってしまって転んでしまう。

 

女の子「きゃあ!?」

 

響「い、いたた⋅⋅⋅。だ、大丈夫? 怪我はしてない? ――ッ!?」

 

ふと後ろを振り返るとノイズの大群がもう10mもないところまで迫っていた。

 

響(ノイズがもうここまで⋅⋅⋅。こんなの⋅⋅⋅もう⋅⋅⋅)

 

女の子「お姉ちゃん⋅⋅⋅私たち⋅⋅⋅死んじゃうの?」

 

響(⋅⋅⋅死ぬ? 死んじゃうの? 私たち、ここでノイズに――)

 

諦めようとしていた私の耳にあの声が響く。

 

『生きるのを諦めるなッ!』

 

響(――あの日、あの時、間違いなく私はあの人に救われた。この子を助けるために私ができることがきっと、きっとあるはずなんだ!)

 

お姉ちゃん「お、お姉ちゃ――」

 

響「生きるのを、諦めないでッ!」

 

響(あの時、あの人は歌っていた⋅⋅⋅。とても⋅⋅⋅優しくて、力強い歌を!)

 

その時、私の胸から何かが溢れる。これは歌? そう思っていた時にはもうそれを口にしていた。

 

響「Balwisyall Nescell gungnir tion⋅⋅⋅⋅⋅⋅」

 

その瞬間私から光が溢れて、気がついたら変な鎧?を纏っていた。

 

/

 

少し時間を巻き戻して放課後

 

けたたましく鳴るサイレン

それは、ノイズ出現を知らせるものだ。もう住民のほぼ全員がシェルターへ避難しており、辺りはもう閑古鳥が鳴くほどに静かだ。俺はある建物の屋上に立ってノイズの気配がする方角を見つめていた。とある事を今か今かと待ちわびて。そして、それはとうとうやってきた。

 

命『凱、お待たせ!』

 

ワイヤレスイヤホン型の通信端末から準備万端の報告を受ける。

 

凱「よし、いくぞ!」

 

今回はまだ日没までに少し時間があるが住民は皆避難しているから、人相が割れて喜ぶのはあの組織だけだろう。よって、問題は無い。静かな街の上でボイスコマンドを高らかに叫ぶ。

 

凱「イークイーップ!」

 

すると4時の方向から次々と黄金の鎧が飛んでくる。通信端末を通じてコマンドが入力され、命が開けた家の窓からこちらに飛来するのだ。

それらは足に、腕に、腰に、肩に、胸に装着されて最後は頭部に大きなVの字のアンテナが目立つプロテクターが着けられ、右の視界を覆うように緑色のバイザーが展開する。そして、持参していたオプションの黒いマスクを手動で装着する。

 

これは本来、あのトランクにもどこにもなかった代物だが、命がかつて使っていたバイザー付きのヘッドギアと一緒に入っていた。

こんな風にトランクの中には3つの関係ないアイテムが入っていたのだ。最後の1つはラティオこと(まもる)の胸にあったような形のGストーンが封じ込められているポインターのようなものだ。ちなみにそれは今、右腕のアーマーに付けている。

話しを戻して、これの機能はボイスチェンジャーで、これを介すると声が赤の星の戦士である「ソルダートJ」と同じになる。これの起動テストとして命と会話してみたが、あまりに似ているために命が途中で「凱がソルダートJのモノマネしてるみたいでおかしい」と大笑いするほどだ。

通常なら本当の声とのギャップを防ぐためにこれを使うことはないが、今は正体を隠さないといけない状況なので使わなければいけない。

だが、もう少しでIDアーマーのマイク機能の変更が終わって常時エコー機能が追加されれば、このマスクはいらなくなる。それまでの我慢なのだ。

ちなみに、何故高い建物の上にいたのかというと地表から高いほど障害物が少ないため、アーマーの到着が早くなるのだ。

 

凱「フッ!」

 

勢いよく屋上から飛びたち、建物の屋根を伝って現場へ急行する。そして、着けばすぐさま、

 

凱「ウィルッ! ナイフ!」

 

緑色の刀身の短剣の引き抜きノイズへ切りかかる。やがて、日没で辺りが暗くなってしばらく経ったとき3時の方向から声が聞こえた。

 

???「生きるのを、諦めないでッ!」

 

凱(!? この声はまさか響君か! もしかして近くに人がいるのか? いけない、早く救出しなければ――ッ!? なんだ、この光は!?)

 

目の前には光源が未だにノイズで見えないものの、そこには光の柱が現れた。

 

/

 

特異災害対策機動部二課本部

 

藤尭「高エネルギー反応! さらにアウフヴァッヘン波形です!」

 

櫻井「まさか、それって⋅⋅⋅」

 

翼(まさか、私以外のシンフォギア奏者がいたというのか!?)

 

友里「⋅⋅⋅アウフヴァッヘン波形、特定完了!」

 

特定が終わり、スクリーンに聖遺物のコードが表示され、驚きのあまり手元のボードをバンと震わす。

 

弦十郎「ガングニールだとッ!?」

 

奏『なに!?』

翼「なんだと!?」

 

それは、かつて片翼が使い、あの日に粉々になってしまった聖遺物の名だった。

 

翼(ガング、ニール⋅⋅⋅! それは、奏の⋅⋅⋅)

 

翼「――ッ!」

 

何を思ったのか翼は指令室から飛び出していった。

 

弦十郎「ま、待て、翼っ! ⋅⋅⋅チッ、二課のサポートを翼に回せ! 今すぐにだっ!」

 

奏(ガングニールの新しい使い手⋅⋅⋅。一体、誰なんだ⋅⋅⋅?)

/

 

響「え、ええぇぇ!? 私、どうなっちゃったの!?」

 

響(それに、胸の中から歌が溢れ出る⋅⋅⋅! こんなにも優しくて力強い歌が!)

 

女の子「お姉ちゃん、かっこいい⋅⋅⋅」

 

光が溢れたと思ったら着てた服が消えて、見たこともない格好になっちゃった。それに、胸の中から歌が聞こえる!?

アワアワしてたらノイズが1体、襲ってきた。

 

響「――ッ!?」

 

とっさに顔を背けてパンチをくり出す。でも、よくよく考えれば当たれば逆に私が炭になっちゃう。それも、腕だけじゃなくて全身が。ああ、ごめんね未来。どうせだったら未来の料理食べてからがよかった。

―――

――

 

あれ、炭化しない。恐る恐る目を向けるとノイズに私のパンチがめり込みで逆に炭になった。

 

女の子「お姉ちゃん、すごい! ノイズ、倒しちゃった!」

 

響「あ、あはは。ありがと⋅⋅⋅」

 

響(え、ノイズって確か触れないんじゃなかったっけ?

それに私、ノイズ⋅⋅⋅倒しちゃった。でも、この力があれば守れる! あの日の奏さんのように!)

 

響「はあぁぁぁぁ!」

 

今度は意識してパンチをくり出す。今度もノイズが消えて私は消えない。何かよくわからないけど、今の状況から生きられる手段を手に入れた。積極的にパンチでノイズを殴って一点突破を狙りながらこの子を守る。

そして、少しずつ厚さが薄くなってきたと思ったその時だった。

 

響「あっ!?」

 

女の子「えっ?」

 

いつの間にか横にいたノイズがあの子に攻撃しようとしていた。でも、女の子はまだそれに気づいていない。しかも、今私が蹴りを入れようとしてもギリギリ届かない距離にいる。

まさに命中するその時、いきなりそのノイズが炭化した。そして、代わりに現れたのは、金色の鎧のような防具に、ライオンのたてがみを思わせる髪の毛、そして口を覆う大きなマスクが特徴的な大きな人だった。手には緑に光るナイフを持っている。

 

???「大丈夫か?」

 

女の子「あ、はい。ありがとう⋅⋅⋅ございます」

 

響「私からもありがとうございます!」

 

声からしてこの人は男の人だ。一言で言うならクールな声だった。

 

???「礼はいい。それより、私も援護をする。この女の子を安全なところへ避難させ、君もそこで待機するんだ」

 

響「でも私、まだ戦えます!」

 

???「まだ君の武術の腕はあまりに未熟。今はまだ体力が残っているからいいものの、それが少なくなれば君は返り討ちにあうだろう。なれば、今は大人しく引き下がり腕を磨くのだ」

 

響「でも、それだとあなたが」

 

???「私はこれでも鍛練は積んでいる。少なくとも君よりは長くもつ」

 

響「わ、わかりました。それで、あの⋅⋅⋅」

 

???「なんだ?」

 

響「えっと、名前は⋅⋅⋅」

 

???「名前? ああ、無いと不便か⋅⋅⋅。⋅⋅⋅⋅⋅⋅私の名はエヴォリュダーという」

 

響「エヴォリュダーさん、ですね! 私は立花響です。よろしくお願いします!」

 

エヴォリュダー(凱)「ああ。君が前衛だ。ただ前の敵を殴りとばせ。後方は私がやる」

 

響「かなり数が多いです。気をつけてください!」

 

エヴォリュダー(凱)「⋅⋅⋅真の戦士たる者、常に警戒を怠らない。存分に暴れるといい」

 

響「はい! では⋅⋅⋅行きます!」

 

そして、私はエヴォリュダーさんの言う通りただ前だけをひたすらかき分けていった。後ろにいるはずの女の子が特に目立った悲鳴があげてないから、この人はとてつもなく強いんだ。

なんとなくだけど、この人が信頼できた。でも、なんでか懐かしさも感じた。⋅⋅⋅なんでなんだろう?

 

しばらくとしない内にノイズの壁に風穴が空いてそこから私たちは脱出した。

 

響「はあ⋅⋅⋅はあ⋅⋅⋅はあ⋅⋅⋅はあ⋅⋅⋅」

 

エヴォリュダー(凱)「君は彼女を連れて奥の方へ逃げるんだ。ここは私が食い止める」

 

響「わかり、ました。行こう?」

 

女の子「うん⋅⋅⋅。バイバイ、おじさん」

 

エヴォリュダー(凱)「お⋅⋅⋅⋅⋅⋅」

 

女の子「お?」

 

エヴォリュダー(凱)「⋅⋅⋅お気をつけて」

 

⋅⋅⋅なんで敬語? って思ったけど聞いてる余裕がない。私は女の子のおぶって奥の方へと走った。

 

/

 

命『凱、今「おじさんはないだろう?」って言おうとしたでしょ?』

 

さっき、俺が「真の戦士たる者⋅⋅⋅」のくだりで噛み殺してた笑いを抑えなれなくなった人にそんなことを言われる筋合いがあるだろうか。

 

凱「ギリギリセーフだから大丈夫だろ。それよりも彼女は来ているのか?」

 

命『5時の方向200mにヘリの反応があるわ。あと、8時の方向に人が1人いる。多分、あっちの差し金だと思うわ。

⋅⋅⋅ッ!? 凱、響ちゃんが行った方向にノイズが!』

 

凱「⋅⋅⋅くっ、今回は彼女に任せよう。今はこの親玉のような奴をしとめる!」

 

残るノイズの群の中でひときわ大きなノイズがいる。おそらく、こいつが今回の親玉だろう。

これをしとめれば連鎖で他のノイズも消えるかもしれない。ぞ思い、俺は立ち塞がるノイズを切り捨てながら、敵の足元で跳躍。計7箇所を切りつけ、最後に兜割りの要領で縦に切る。すると耐えきれなかったかのように炭化した。しかし、周りのノイズは残っている。

 

もしかしたら、ノイズに誰が(おさ)などというシステムが存在しないのかもしれない。

 

やはり、響君のことは彼女に任せるしかない。

 

/

 

翼「Imyuteus amenohabakiri tion⋅⋅⋅⋅⋅⋅」

 

前方に現れたノイズに足止めさせている者がいる。あれがガングニールの奏者か?

 

???「――ッ!? この歌は⋅⋅⋅まさか翼さん!?」

 

ヘリから飛び出し、彼女とノイズの間に降り立つ。そして、彼女のギアを見る。

 

翼(この子の姿⋅⋅⋅一部形状が違うがこれは紛れもなく奏の⋅⋅⋅。――いや、今はノイズへの対処が先決!)

 

ノイズを正面に捉え、手に持つ得物を巨大化させて、

 

翼「はあーー!」

 

縦に振り下ろし、青色の斬撃波でノイズを切り裂く。その名も〈青ノ一閃〉!

 

翼「まだだ!」

 

今度は大きく跳躍し、得物よりも小さい剣を大量に創りノイズへと降り注ぎ突き刺す。その名も〈千ノ落涙〉!

 

???「すごい⋅⋅⋅⋅⋅⋅やっぱり、翼さんは――」

 

女の子「⋅⋅⋅⋅⋅⋅あっ! おねえちゃんっ、おっきいのがっ!」

 

???「――ッ!?」

 

翼「そこを動くなっ! はあぁぁぁーーっ!」

 

いきなり現れた巨大ノイズへ対応できていない少女へ叫ぶ。

それと同時に得物を巨大化、落下する剣の頭金(かしらがね)へ蹴りをいれ、足首に装着しているブースターで加速をかけてそのままノイズに突き刺す。その名も〈天ノ逆鱗〉!

巨大ノイズを一撃で葬った。そして、どうやら最後の1体だったらしく終わりを察した緒川さんがどこからともなく現れる。

 

緒川「その少女の母親と思われる人物とコンタクトが取れました。ここから歩いて少しした場所を合流地点としています。行きましょう」

 

/

 

自衛隊「少女とその母親の保護、完了しました!」

 

自衛隊の人が確認するようにさっき来た黒いスーツの人に報告している。

 

あの後、私と女の子と翼さんは今報告を受けている人に先導してもらってここに着いた。途中、あの鎧が消えて元の服に戻った。正直、このままこのコスプレのような格好のままなんじゃと焦ったから戻ってきてよかった〜。

着いた場所で女の子のお母さんが待っていて、ようやく女の子はお母さんと会うことができた。その光景を少し離れて見ていたら、

 

???「あの、あったかいもの、どうぞ」

 

あの男の人同じように黒いスーツを着た女の人が温かいコーヒーの入った紙コップを差し出す。すっかり秋になって夜はもう寒い。鎧を纏っていたときはそうでもなかったけど、服に戻るとちょっと肌寒かった。

 

響「あ、あったかいもの、どうも⋅⋅⋅⋅⋅⋅。ふぅ、ふぅ~。ん~~、はあぁ~~⋅⋅⋅⋅⋅⋅」

 

生き返る~。

コーヒーの温かさが体に染みわたる余韻に浸っていると、

 

翼「⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅」

 

翼さんから注がれる険しい視線に気付いた。

 

響「あああ、あ、ありがとうございます! 実は、翼さんに助けられるのは⋅⋅⋅⋅⋅⋅これで二回目なんです!」

 

翼「⋅⋅⋅二回目?」

 

困惑している翼さんを通り抜けて1つの影が近寄る。

 

女の子「お姉ちゃん!」

 

響「あっ、体、大丈夫? 怪我とか痛いところがあったりする?」

 

女の子「大丈夫! お姉ちゃんが護ってくれたからっ! ありがとう! バイバーイ!」

 

女の子がそう言って引き返したその先にその子のお母さんらしい人が私にお辞儀をして、女の子と手をつないで帰っていった。その後ろ姿を見て、なんかこう⋅⋅⋅嬉しくなった。

 

響「⋅⋅⋅ふう、よかった~。じゃあ、私もそろそろ⋅⋅⋅え?」

 

気がつけば黒いスーツの人たちにすっかり囲まれていた。

 

響「え、えっと⋅⋅⋅なんで私、黒い服の皆さんに囲まれてっ!?」

 

翼「⋅⋅⋅あなたをこのまま帰すわけにはいきません」

 

響「なんでですか――え、てっ、手錠っ!?」

 

ガチャリと手錠を三重にかけられた。

 

翼「二課まで同行してもらいます」

 

緒川「すみませんね。あなたの身柄を拘束させてもらいます」

 

響(あわわわ⋅⋅⋅っ!? 私、どうなっちゃうの~!?)

 

/

 

黒塗りの車に乗せられてたどり着いたのはリディアンだった。車を降りてどんどん先へ進む二人にたまらず訊いてみた。

 

響「あの⋅⋅⋅なんでリディアンに⋅⋅⋅? ここって先生たちのいる中央棟ですよね⋅⋅⋅⋅⋅⋅?」

 

ここは中央棟。

ここには職員室や校長室なんかととにかく先生に関係するものがここにある。ちなみに、昨日の音楽の授業後、先生に怒られたのはこの中の第一職員室だった。

 

翼「黙ってついてきなさい。⋅⋅⋅このエレベーターよ」

 

翼さんに冷たくあしらわれた後、着いたのは何の変哲もないただのエレベーター。内装も全く普通。

 

緒川「さ、危ないので、何かに捕まっててください」

 

そう言いながら、翼さんに「緒川さん」と呼ばれてた人がボタンをカチカチと、まるで金庫を開けるように次々と押していった。

 

響「え? 危ない――って!? ドアにシャッターが⋅⋅⋅」

 

ガクン

 

響「へ? どわあぁぁぁ!?」

 

一度ガクンと動いたと思った次の瞬間、エレベーターがジェットコースターぐらいのスピードで下へ降り始めた。ここ、一階だったはずなのに!?

 

しばらくしたら大きな空間が目の前にとびこんできた。見える壁一面にびっしりと絵と文字のようなものが描かれていた。まるで、昔のエジプトの⋅⋅⋅⋅⋅⋅なんだっけ? え~ピエログリルだっけ? のようにも見える。

 

響「⋅⋅⋅すごい、学校の下にこんな場所が⋅⋅⋅。えっと、どれだけ深いんですかね?」

 

翼「⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅」

 

響「あ、あはは。で、ですよね、言えませんよね⋅⋅⋅」

 

翼「⋅⋅⋅愛想は無用よ。これから向かう所に、微笑みなんて必要ないから」

 

響「あ⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅」

 

また、冷たくあしらわれた。今度は翼さんから緊張感に近いものを漂わせていた。

 

響(翼さん、なんかピリピリしてる⋅⋅⋅。この下に一体何が待っているんだろう⋅⋅⋅⋅⋅⋅)

 

やがて着いたのかエレベーターが止まって、シャッターが開いた。

 

そこには⋅⋅⋅⋅⋅⋅飾り付けられた部屋に目の前に広がるごちそう。歓迎してくれる知らない人たち。そして、上から吊り下げられている看板にはでかでかと

 

『ようこそ 2課へ! 熱烈歓迎! 立花響さま』

 

と書かれている。

想像してたものとのギャップが大きすぎてあっけにとられていると、その中でハットをかぶった体格のいい大柄な男の人が私に話しかけてきた。

 

???「ようこそ! 人類最後の砦、特異災害対策機動部二課へッ! 俺はここの責任者を務める、司令の風鳴弦十郎だ」

 

響「⋅⋅⋅⋅⋅⋅へ?」

 

翼「ああ、なんて緊張感のない⋅⋅⋅⋅⋅⋅」

 

櫻井「さあさあ、笑って笑って~。ね、立花響ちゃん? 私は櫻井了子。あの櫻井理論の提唱者なのよ?」

 

響「さ、櫻井⋅⋅⋅理論? そ、それよりもあの⋅⋅⋅どうして初めて会う皆さんが私の名前を⋅⋅⋅⋅⋅⋅」

 

一言で言えば考えていたのと違う。翼さんがピリピリしてたからすごくおぞましいものが出てくると思ってたけど、全然そんなことはなかった。むしろ想像のはるか斜め上をいっていた。

 

弦十郎「我々二課の前身は第二次大戦時に設立された特務機関なのでね。調査なんて、お手の物なのさッ」

 

櫻井「⋅⋅⋅な~んて。ホントは響ちゃんの生徒手帳をちょっとばかり、拝見されてもらったの」

 

響「ああ~ッ! それ、落としちゃってた私の手帳ッ! 何が調査はお手の物ですかッ! 返してくださいよ~ッ!」

 

弦十郎「ははは、失礼したね。⋅⋅⋅さて、君をここに呼んだのは実は協力を要請したいことがあるのだ」

 

響「協力⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅もしかして、さっきの力のことッ!?」

 

響(そうだ、あの時こみ上げてきた歌⋅⋅⋅。あの時の奏さんや翼さんと同じ力――)

 

響「教えてください! あれば、一体なんなんですか?」

 

櫻井「うんうん、気になるのはわかるわ。でも、それに答える前にほんの2つばかりお願いがあるの。まず、1つ目は今のこと特にあの力のことは誰にもナイショ。理由はあとで教えるわね」

 

響「は、はあ⋅⋅⋅。それでもう1つは⋅⋅⋅⋅⋅⋅?」

 

櫻井「⋅⋅⋅⋅⋅⋅とりあえず脱いでもらいましょうか」

 

響「へ? ⋅⋅⋅⋅⋅⋅な、なんでぇ~!?」

 

そして、うふふと笑う櫻井さんに連れられて奥の部屋へと足を踏み入れた。

 

/

 

それから約30分後

 

奥の部屋で制服を脱がされて、代わりにX線での検査で使うような厚い服を着させられ、人体改造⋅⋅⋅みたいなのじゃなくて学校でやってるような健康診断をレベルアップさせたような内容だった。

でも、量が多くて終わる頃にはどっと疲れが出て、そろそろ限界だった。

 

櫻井「ごめんなさいね、メディカルチェックに協力してもらって。でも、大切なことだから許して? ね?」

 

響「はあ⋅⋅⋅⋅⋅⋅」

 

でも、いきなりはさすがにひどいと思う。

 

櫻井「お疲れモードも仕方ないわね。初めての負荷でもあるし。でも、安心して? 大きな異常は特に見当たらなかったわ」

 

弦十郎「詳しい検査結果は後日伝えることになるだろう。さて、それでは君の疑問に対する答えだが⋅⋅⋅⋅⋅⋅おや?」

 

響「ん⋅⋅⋅すぅ⋅⋅⋅すやぁ⋅⋅⋅はッ! お、起きてます起きてま⋅⋅⋅すぅ⋅⋅⋅くぅ⋅⋅⋅」

 

弦十郎「⋅⋅⋅⋅⋅⋅日を改めたほうが良さそうだな。翼、緒川、彼女を送ってやれ」

 

翼「わかりました⋅⋅⋅⋅⋅⋅こっちだ」

 

響「す、すみません⋅⋅⋅。では、皆さん失礼しま⋅⋅⋅すぅ⋅⋅⋅」

 

翼「あ、こら、歩きながら寝るな」

 

そうして彼女は翼に小突かれながら退室していった。

 

弦十郎「ふぅ⋅⋅⋅⋅⋅⋅。それで、調査によれば彼女は『2年前の現場』にいた」

 

櫻井「ええ。精密な検査結果は後日になるけど、ほぼ間違いないわね。彼女の身体の中にあるのは⋅⋅⋅第3号聖遺物、ガングニールよ」

 

奏『新しい奏者になる⋅⋅⋅か、あの子が』

 

/

 

リディアン学生寮 響と未来の部屋

 

響「ただいま~⋅⋅⋅⋅⋅⋅」

 

未来「響ッ! もう、こんな時間までどこ行ったの! 近くでノイズがまた出たって、ニュースで言ってたんだよッ!」

 

響「ごめん⋅⋅⋅色々あって⋅⋅⋅⋅⋅⋅。でも、もう大丈夫だから」

 

未来「⋅⋅⋅⋅⋅⋅色々って?」

 

響「うん⋅⋅⋅⋅⋅⋅その――」

 

それから私は未来にその色々を話した。でも、その中に本当のことはCD屋さんに行くところまでしかない。

その後は風鳴さんが用意した偽物の事情だった。でも、それで未来は満足してくれた。そして、寝る時まではいつもと変わらなかった。

 

響「未来⋅⋅⋅あのね――」

 

同じベッドで背中に未来の体温を感じながら私は未来に今日起きた本当のことを話したくて、でもそのすんでで口をつぐむ。

 

響(あの風鳴さんから力のことは誰にも言うなって言われた。知れば危険に巻き込まれるかもって。ホントは本当のこと話したい。小さい頃に『隠し事はしない』って約束した)

 

  (でも――)

 

響「ん⋅⋅⋅⋅⋅⋅その、何でもない。これからはあんまり遅くならないように気を付けるから!」

 

未来「私は⋅⋅⋅何でもなくない。響の帰りが遅いから、本当に心配したんだよ?」

 

響「ごめん⋅⋅⋅⋅⋅⋅でも心配してくれてありがと。やっぱり、未来はあったかいなぁ⋅⋅⋅」

 

未来「⋅⋅⋅ひ、響? どうしたの? 急に、抱きついてきたりして⋅⋅⋅」

 

響「小日向未来は私にとっての陽だまり。未来の傍が一番あったかいところで、私が必ず帰ってくるところ。これまでもそうだし、これからだって⋅⋅⋅」

 

未来「響⋅⋅⋅」

 

響(だから⋅⋅⋅ごめん、未来にも話せないよ)

 

/

 

時を少し巻き戻して響が熱烈歓迎を受けている頃

凱と命の部屋

 

凱「ただいま」

 

命「おかえり。⋅⋅⋅ねえ、響ちゃん、あれからどうなったの?」

 

凱「彼女たちの組織に連れられたけど、多分大丈夫。おそらく、あの力について聴かされて協力を要請させるのだと思う」

 

命「そうだといいけど⋅⋅⋅。凱、響ちゃんの覚醒は偶然だと思う?」

 

凱「現時点だったら俺はそう思ってる。でも、偶然だとしても響君の登場は両陣営に大きな衝撃を与えたはずだ。それによって、もしかしたらこの状況が変わるかもしれない。場合によってはギャレオンに助けを求めなければならないこともあるかもしれない」

 

命「でも――」

 

凱「ああ。そうだとしても俺は、俺たちはGGGの一員として地球の皆の戦うだけだ」

 

命「ええ、そうね。ところで凱、アレ完成したよ」

 

凱「ありがとう、命。これでソルダートJからは卒業だな」

 

命「正直、もう少しいじりたかったけどね~」

 

凱「おいおい、勘弁してくれよ」

 

命「ふふ。さあ、ちょっと遅いけどご飯にしましょう?」

 

凱「ああ! 今日のおかずはなんなんだ?」

 

命「今日はね⋅⋅⋅ジャーン! ハンバーグだよ!」

 

凱「おお!? 今日も美味しそうだな!」

 

/

 

響を送って後 翼の部屋のシャワールーム

 

翼(どうして、あいつが⋅⋅⋅ッ!)

 

か弱い滝にうたれながら今日のことを思い返していた。あいつがガングニールを使うことに奏は驚いてたけど「いいこと」って言った。

 

翼(でも、あれは⋅⋅⋅⋅⋅⋅奏と一緒に唄って、一緒に戦った。奏の⋅⋅⋅奏のガングニールなのに⋅⋅⋅ッ!)

 

いつか奏が言ってくれた『二人一緒なら、何も怖くないな⋅⋅⋅』が胸の中で反芻(はんすう)する。その思い出の結晶をあんな奴が使うなんて⋅⋅⋅!

 

翼「ガングニールは奏の⋅⋅⋅⋅⋅⋅奏だけのものだ⋅⋅⋅ッ!」

 

/

 

一方 ???では

 

???「ククク、これは天啓だ。聖遺物と融合した人間のデータ、これがあれば我の計画は飛躍的に進む。あとは宇宙(そら)から降ってきたこれの試験だけだな。⋅⋅⋅もう少しだ。もう少しで、あの方に再び相見えることができる」

 

その傍らには「Z」の文字が浮かびあがる紫に発光するひし形に近い形をした金属が7個、別々に保管されていた。




君たちに最新情報を公開しよう
突如として街に現れた巨大な影
その力に奏者は手も足も出ずに惨敗してしまう
その時、勇者が下した決断とは

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