ここまで新作が無かったことをお詫び申し上げます。
語りたいものはありますが後書きへまわすので、ここではほどほどに。
一つ注意があります。今作中にある「もの」がありますが、それに対して差別的な意思を全く持っていないことをここに表明しておきます。
それでは、オープニングどうぞ!
ガガガッ ガガガッ ガオガイガー!
ガガガッ ガガガガッ ガオガイガー!!
叫べ 光のエヴォリュダー 赤いたてがみ 金の腕
光り輝くGストーン 人々の心 照らすため
今こそ 立ち上がれ
人の 心に潜む闇が 星を覆う前に
ガガガッ ガガガッ ガオガイガー!
ガガガッ ガガガガッ ガオガイガー!!
ファイナルフュージョン承認だ!
今だ! 超人合体だ!
空曲結界! プロテクト・シェード!
不屈!闘志!情熱!勝利!
再誕!奇跡の くろがねの巨神 ぼくらの勇者王!
ガッガッガッガッ ガオガイガー!!
[これは勇者と奏者が織り成す、戦いと成長の物語である]
回想
二年前 ライブの日
ジェネシックオーラ衝突直後
「う⋅⋅⋅あ⋅⋅⋅⋅⋅⋅――!? か、奏? 奏!!」
今しがた起きた謎の衝撃。
ノイズは残らず消え去ったのは良かったものの、背後の壁に亀裂が走り音を立てて崩れてきた。
それを奏がドンと押しのけてそれで⋅⋅⋅⋅⋅⋅。
奏はどこだろうか。
「⋅⋅⋅⋅⋅⋅どこだ、翼。目開けらんないから、お前の顔が見えねえや⋅⋅⋅大丈夫か?」
――いた。
崩れた壁に押し潰されて胸から上と左腕だけが見える。
目が開けられない程衰弱しているだろうか。
いや、目はうっすらと開いている。
ただ見えていないだけ。
左手がなんとか力を入れようと痙攣していて、かろうじて頭が浮いている。
「大丈――か、奏!? 奏こそ大丈夫なの!?」
「⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅悪いな。もう一緒に⋅⋅⋅唄えないみたいだ⋅⋅⋅⋅⋅⋅」
「いきなりどうして⋅⋅⋅どうしてそんなこと言うの⋅⋅⋅⋅⋅⋅。奏はいじわるだ⋅⋅⋅⋅⋅⋅」
「私は奏と、もっと一緒に唄いたいのに⋅⋅⋅ッ!」
「だったら翼は⋅⋅⋅泣き虫で弱虫だ⋅⋅⋅」
「それでもいい⋅⋅⋅⋅⋅⋅ッ! だから⋅⋅⋅だからずっと――ッ!」
これぐらいの怪我、必ず治る。
時間はかかるがもう一度立ち上がれる。
だって、あのLiNKERでの適合にだって一度も折れなかった。
弱気になっているのは、今までに無い大怪我を負ったからだって。
⋅⋅⋅そう言いたかったのに、つっかえて言葉が出ない。
「今はだ。今だけ⋅⋅⋅だ」
「なあ、知ってるか⋅⋅⋅翼。思いっきり⋅⋅⋅唄うと⋅⋅⋅な、すげぇ腹減る⋅⋅⋅んだって⋅⋅⋅⋅⋅⋅さ」
なんで今そんな関係無い言葉が出るのか。
せめて痛がってくれたら、すぐに動けたはずなのに。
呆気にとられて何も言いだせずにただ耳を傾けるばかりだった。
「だから⋅⋅⋅帰ったら⋅⋅⋅⋅⋅⋅一緒に飯に⋅⋅⋅しよう⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅ぜ――」
そう言うなり糸が切れたように頭がドサッと落ちる。
ふと視線が横にずれて左手が映る。
痙攣はもう止まっていた。
――あまりに、信じられなかった。
「⋅⋅⋅⋅⋅⋅奏? 奏ぇぇぇぇぇッ!」
何度声をかけても荒げても反応しない。
そこでようやく「誰かに助けを」という考えがよぎって、焦ってキーを押し間違いしながらもやっと緒川さんに繋がる。
そして、繋がるなり叫んだ。
「緒川さん! 奏がコンクリートの下敷きになって⋅⋅⋅。早くしないと⋅⋅⋅早くしないと奏が⋅⋅⋅!」
傍から見ればみっともないと思われるかもしれないがそれほどにあの時の私は余裕が無かった。
あの日あの時、私が弱かったばっかりに奏は二度とシンフォギアを纏えなくなってしまったどころか、声さえ奪われてしまった。だから、私は強くならなければいけない。一人で皆を守れるほどに。
あんな半端な覚悟しかない者に奏のガングニールを纏う資格も、誰かを守る資格もない!
/
翼にぶたれた日の夜
響と未来の部屋
響(翼さん・・・泣いてた。・・・私、何を間違ったの・・・か・・・な・・・う~~――)
こっくり こっくり
未来「・・・響、寝たら間に合わないよ」
響「うん・・・・・・」
未来「そのレポートさえ提出すれば、追試免除なんだから」
響「わかってるんだけど・・・ハァ・・・――」
未来「だから寝ちゃダメだって」
響「寝てないって、起きてるよぉ・・・。ほんのちょっとだけ目をつぶってるだけ・・・・・・」
未来「最近、なんだか疲れてるみたいだけど・・・」
響「へいき・・・へっちゃら~・・・・・・」
未来「・・・もう、しかたないなぁ。そんなとこで寝たら風邪引いちゃうよ? あ、そうだ響。前に話した流れ星の話、覚えてる?」
響「ん? え~とぉ・・・何だっけ?」
未来「しし座流星群。もう・・・一緒に見ようって約束したでしょ」
響「あ、そうだったッ! ごめんごめん~」
未来「あのね、それがもうすぐ来るんだって。来週くらいには見られるんじゃないかな?」
響「本当ッ!? 楽しみだな~。一緒に見ようね未来ッ!」
未来「もう・・・・・・調子いいんだから。ちゃんとレポートやらなきゃ、追試と重なって見れなくなっちゃうよ?」
響「うぐ・・・・・・が、頑張るッ!」
未来「うん。私も手伝うから、ちゃんと終わらせて二人で一緒に流れ星見ようね」
来たる流星群に胸を膨らませて、閉じそうなまぶたを必死に押し上げてレポートに取りかかる。最初の悩みはどこかへ飛んでいったように。
/
同日の晩
凱と命の家
凱「ただいま⋅⋅⋅」
命「あ、おかえり」
凱「⋅⋅⋅⋅⋅⋅」
命「言いたいことは分かるよ。でも⋅⋅⋅あれが一番だったんじゃないかな」
凱「命は⋅⋅⋅そう思うのか」
命「うん。というか私にはあそこまでできなかった。もし、それが必要だったとしても」
凱「でも問題は、これで二人の関係が変わるかどうかだ。変わらなければ意味がない」
命「変わると思うよ。でも、時間がかかりそうかも。勘だけどね」
凱「かかりそう⋅⋅⋅かぁ⋅⋅⋅⋅⋅⋅」
命「⋅⋅⋅凱」
凱「ん?」
命「私たちは反省はしてもいいけど⋅⋅⋅⋅⋅⋅もう後悔はできない。彼女たちと関わるって覚悟したその時から。だから、今までのように、いつものように、ただできることをがむしゃらにやるしかないよ。私はGGGの――特に凱は勇者。
⋅⋅⋅そうでしょ?」
凱「⋅⋅⋅そうだな。ああ、その通りだ。俺たちは関わらない選択を自分で切り捨てたんだ。だからこそ、戦い続けるんだ。俺たちの世界へ帰れるその時まで」
命「うん、その意気だよ。それじゃあ、凱の分温めなおすから先に着替えてきて」
凱「ああ、分かった」
/
ある日の昼下がり
街中
男「はぁ、また落ちた…これで10件目かぁ」
何に落ちたって? 採用試験だよ。
社会人になってプログラム関係の仕事が多い東京に上京して来たのは良かったものの、こうして試験に落ち続けている。別に俺に問題があるというわけではない。俺の出身地が問題なのだ。
ハンセン病という病気を知っているだろうか。
別名「らい病」と言われ、発病してそのままにしておくと日常生活に支障をきたす程の後遺症が出るが、そもそも発病自体昔、といっても昭和位の大昔ならまだしも現代ではめったに起きない病なんだ。古くは明治時代から対応されてきた病で、1931年から名前を変えながら1996年まで続いた「らい予防法」で患者は隔離施設で偽名での生活を余儀なくされた。
まあ、何が言いたいのかっていうとな、隔離施設があった土地に住宅街が建って安全が証明されていても、そこにいたっていうだけで面接で偏見と差別を含んだ眼差しでその場で「不採用」された訳だ。「らい予防法」廃止からもうすぐ半世紀だというのに。しかも、未だにこういった事例は意外にも少なくない。
こうしたことに関わっていない連中は皆口を揃えて「そこに住むのが悪い」と言う。差別の認識を改善しようともせずにだ。
ふと、見かけた公園のベンチで自販機から買った缶コーヒー片手に座りこみ、深いため息を吐く。
ホント――
???「嫌な世の中ね」
男「ッ!? いつの間に――ってか、誰だお前!」
???「あら、レディに随分な物言いね。私はあなたに、素敵な提案をしようってのに」
いつの間にか隣に金髪で黒づくめの服装をした女がいた。驚きのあまり、バッと立ち退く。
男「胡散臭いし、バカな悪徳商人でももうちょいマシな誘い文句が飛び出すぞ⋅⋅⋅。ま、一応話しだけは聞こうか。んで、提案ってのは?」
???「フフフ、復讐を手伝う力をプレゼントするっていう提案よ」
男「ケッ、もっと胡散臭くなったぞ」
男(⋅⋅⋅しかしこいつ、今さっき考えてたことを。⋅⋅⋅心の中を読んだのか? エスパー⋅⋅⋅いや俗に言うメンタリストみたいなものか?)
???「それは、これを見てから決めてちょうだい」
男「ッ!? な、なんだ?」
その手に握られていたトゲトゲした玉が妖しく紫に光る。
男「見るからにヤバそうなんだが!?」
???「あなたの闇を叶える力よ」
男「なんかもっと光りだして…うわッ!?」
目の前が紫がかった白に包まれてそして、
男「あ⋅⋅⋅?」
何も起きなかった。眩しくて瞑ってしまっていた目を開くと、今日の空は青く、鳥はさえずり、公園も来た時と変わらない様子で、女はいない。
男「⋅⋅⋅就活で疲れたのか?」
とため息をついてコーヒーを飲み干して公園を後にした。
/
翼さんにぶたれてしばらく経ちました。あれから翼さんとは仲直りどころか未だに険悪な関係で、更に私のことを避け始めました。ノイズの襲撃があっても風鳴司令の言葉も無視してでも私が来る頃には全滅させようとします。そして、足早に去ってしまうんです。
でも、今日はその逆です。私が一人でノイズに立ち向かっています。毎度翼さんが立ち去っていく度に「もっとできるようになりたい」と気合いを入れて、未来に秘密でエヴォリュダーさんに言われたように筋トレをして体を鍛えて気力も十分! ⋅⋅⋅でも翼さんのように上手くいかなくて、今ピンチな状況に陥っています。
響(くッ⋅⋅⋅、やっぱりアームドギアが使えないとダメなのかな⋅⋅⋅。でも、どうしたらアームドギアが使えるようになるんだろう?)
弦十郎「響君ッ! 翼が到着した、後は二人で連携して対処するんだ!」
頭上から唄が聞こえ、次の瞬間には蒼い衝撃波がノイズを切り伏せにかかる。もちろん私の出番なんて無い。私が散々苦戦していた数のノイズもあっという間に殲滅させて、
翼「戦闘終了、帰投します」
と、さっさと行ってしまった。⋅⋅⋅と、こんな調子で今日まできちゃってる。なんとかしなきゃいけないんだけどって分かってるんだけど⋅⋅⋅⋅⋅⋅ハァ、どうしたらいいんだろう?
/
一方
二課本部
ざわざわと呆れの雑談を交わすオペレーターたちの上で、
弦十郎「あれからしばらくと時間が経ったというのに、全くかみ合わずか⋅⋅⋅」
櫻井「まさに青春真っ盛りね」
弦十郎「このままではいけないと本人たちも理解しているはずなんだろうがな」
櫻井「⋅⋅⋅弦十郎君、私名案思いついちゃった。ちょっと耳貸して」
弦十郎「⋅⋅⋅なるほど、まあ良い提案か。よし、やってみるか」
/
しばらくして
櫻井「では、全員揃ったところで仲良しミーティングを始めましょ」
と、唐突に始まった変な企画。
全員の内訳は響、翼、奏、弦十郎、櫻井、緒川、藤尭、友里の8人。
ちなみに、何があるのか奏者たちは知らされていない。ただ、翼はずっとピリピリして、逆に響はオドオドしている。もちろんお互いに対してだ。
弦十郎「さて、まずはこれを見てくれ」
言葉の後にモニターが点き、地図の上に赤い丸が不規則に偏って置かれている。
弦十郎「これは、ここ最近のノイズの発生件数とその場所だ。こいつを見てどう思う?」
響「⋅⋅⋅いっぱいですね」
弦十郎「ハハハ、まあそうだな。ここでおさらいをしよう。響君はノイズにつけてどこまで知っているんだ?」
響「はい。ええと、ノイズは無感情で機械的に人に襲い掛かってきて、襲われた人は炭化する、場所時間問わず神出鬼没で特異災害に認定されている⋅⋅⋅ってところまでです」
弦十郎「意外に詳しいんだな」
響「えへへ、今やっているレポートのお題なんです」
櫻井「そのノイズはね、国連に問題として挙がってきたのはだいたい13年ぐらい前からなんだけど、発生自体は太古から、それも世界中にその記録があるのよ」
弦十郎「君たちが使っている聖遺物はどれも伝説や言い伝えにある名前ばかりだ。だから、各地に残る異形とされたものはノイズ由来のものが多いと我々は推測している」
櫻井「んで、話を戻すけど⋅⋅⋅ここ最近のノイズ発生に私たちは作為的なものだと考えているの」
響「作為⋅⋅⋅ってことは誰かによるものだってことですか!?」
翼「⋅⋅⋅モニターを見ればわかるように、最近のノイズ発生の中心点は、ここ。私立リディアン音楽院高等科、我々の真上だ。おそらく、サクリストD―『デュランダル』を狙っている証拠だろう」
すかさず割って入った翼の口から聞き慣れない単語が飛び出してきた。
響「あのすいません⋅⋅⋅デュランダルって?」
[司令と同時に説明しよう! 私立リディアン音楽院高等科の真下の地中深くに位置する二課本部。それよりもさらに下層の最深部に「アビス」と呼ばれる区画が存在する。そこに日本政府によって厳重に保管され、また二課が研究をしているほぼ完全な状態の聖遺物「デュランダル」がある。
ちなみにデュランダルとは、フランスの叙事詩『ローランの歌』にて登場する聖剣であり、その切れ味は持ち主であり主人公のローランも「切れ味の鋭さデュランダルに及ぶもの無し」と誇るほどのものである]
弦十郎「シンフォギアは聖遺物の欠片にある力を歌という形で増幅させているが、完全聖遺物は歌は必要無いどころか、常時出力100%で起動し、さらに奏者以外の者でも使える、という研究結果が出ているんだ」
櫻井「そう、それこそが櫻井理論! でも、起動にはそれ相応のフォニックゲイン値が必要だけどね~」
響(む、難しくてよくわからない⋅⋅⋅)
奏(おいおい、仲良しミーティングというにしては、ちょっと専門的なことを詰め込みすぎじゃないか?)
弦十郎「あれから2年、今の翼の歌であれば、或いは⋅⋅⋅⋅⋅⋅」
友里「でも、起動の許可が政府から下りるでしょうか」
藤尭「いやそれ以前に、アメリカが安保を楯にして再三のデュランダル引き渡しの要求をしているらしいじゃないか。起動どころか慎重に扱わないといけない。下手すりゃ国際問題だ」
友里「まさかこの件、アメリカ政府が糸を引いているなんてことは⋅⋅⋅」
弦十郎「調査部からの報告だと、ここ数ヵ月で数万にも及ぶここへのハッキングをしかけた痕跡が認められているそうだが、アクセスの出所は不明。それらをアメリカ政府によるものと断定はできないが――」
緒川「⋅⋅⋅司令、お話し中すみません。翼さん、今晩はアルバムの打ち合わせが入っています」
奏『あっ、もうそんな時間か』
響「⋅⋅⋅ほえ?」
緒川「表では、アーティストの翼さんのマネージャーをしているんですよ」
地下にいながら難しい会話を交わして、すっかり夕方になっていることも気付かなかった面々に、今の時間帯を教えた緒川が響に対してスッと名刺を渡す。そこにははっきりと、風鳴翼のマネージャーだと書かれている。
響「わあ、名刺貰うなんて初めてです! こりゃまた結構なものをどうも!」
翼「では、お先に失礼します」
奏『じゃあ、あたしも失礼するよ』
響「奏さんも⋅⋅⋅?」
奏『いや、あたしはただ付き添ってあげてるだけさ』
と3人は退室していった。
響「ただ、ノイズを倒すだけじゃない。私たちを取り囲む脅威は、ノイズだけじゃないんですね。⋅⋅⋅ゾンダーだっているのに」
櫻井「⋅⋅⋅⋅⋅⋅」
弦十郎「うむ、悲しい話だがな」
響「どこかの誰かがここを狙っているなんて、考えたくもありません⋅⋅⋅」
櫻井「大丈夫よ。なんてったってここは、メディアでも有名なこの櫻井了子が設計した人類を護る砦よ。異端にして最先端のテクノロジーが変な奴らなんて寄せ付けないんだから!」
響「あはは、頼りにしてます。⋅⋅⋅あ、私ももう行かなきゃ。風鳴さん、私も失礼します!」
弦十郎「君もかい?」
響「はい、宿題を提出しないといけないので! では、失礼します!」
と言って彼女も退室していく。扉が閉まる直前で
響「未来からメールまで来ちゃった! い、急がないと!」
と慌ただしく。
/
緒川「月末予定のライブのスケジュールは以上です。次に、例のイギリスのレコード会社からのお話ですが――」
翼「それは断っておくように伝えたはずです。私は剣――戦うために歌を唄っているに過ぎないのですから」
足音響く廊下を歩きながら打ち合わせをしていく三人。横を駆け抜けて行った少女を翼はどうにかやり過ごした。
緒川「⋅⋅⋅⋅⋅⋅翼さん、怒ってますか?」
翼「怒ってなんかいません! ⋅⋅⋅剣に、そのような
キッパリと言い放ち、スピードを速めてさっさと歩いて行った。
緒川「⋅⋅⋅⋅⋅⋅無かったら、歌を唄えないと思うんだけどなぁ」
奏『確かに、翼は怒ってはいないさ。』
緒川「奏さんもそう思うんですか?」
奏『ああ。今翼は、エヴォリュダーに言われたことに戸惑っているんだ。多分だけど、翼の行動は意識していた以上に過激になっていって、そしてあそこまで発展した。だから翼は、あそこまで大きくなった原因を考えているんだ。
でも、立ち止まって考えればどれもそこまでの動機にならないように見えてしまう。だから翼は、真の理由が見つけられなくて苛立っているのさ。理由は多分もう見つけているのにな』
緒川「さすがですね奏さん。そこまでわかっているなんて」
奏『伊達に翼の相棒はやってないよ』
/
ほんの少し時間は流れて
リディアン 廊下
響「良かったぁ、レポート受け取ってもらえたよ~」
未来「やったね響、おつかれさまッ!」
響「これで、約束の流れ星は見られそうッ!」
未来「それじゃあ、響はここで待ってて。頑張ったご褒美に、教室からカバン取ってくるからッ!」
響「えっ、そんなのいいのに~⋅⋅⋅⋅⋅⋅もう、行っちゃった。さすが元陸上部――」
ピリリピリリ
と誰もいない廊下でもう聞き慣れた特別なアラーム音が鳴り響く。
響(⋅⋅⋅⋅⋅⋅本部からだ。なんで、今⋅⋅⋅⋅⋅⋅
人助けで選んだ道、選んだ力なのだから。
響「⋅⋅⋅⋅⋅⋅はい」
/
響「⋅⋅⋅⋅⋅⋅未来? ごめんね、急な用事が、また⋅⋅⋅入っちゃった。今夜の流れ星⋅⋅⋅⋅⋅⋅一緒に、見られない、かも⋅⋅⋅⋅⋅⋅」
話している間ずっと俯いていた。とても⋅⋅⋅とても顔を、眼を見ることなんて出来なかった。
未来「⋅⋅⋅⋅⋅⋅分かった。なら、仕方ないよ。部屋の鍵開けておくから、遅く⋅⋅⋅ならないでね」
響「⋅⋅⋅ありがとう、未来。ごめんね⋅⋅⋅⋅⋅⋅」
と言って逃げるように別れた。一瞬だけ顔を上げて見てしまった親友の表情については、もう話したくもない。
/
発生現場へ急行
戦場にて
一人で戦っていた。翼さんはどうやらまだ来ていないようだ。彼女がいれば、戦場はかなり荒れるからすぐに分かる。だが、それを気にも留めない程激しく怒っていた。
響(許せない⋅⋅⋅レポート、あんなに手伝ってくれたのに。約束の流れ星、ずっと楽しみにしてくれていたのに⋅⋅⋅⋅⋅⋅ッ!)
別れ際に見たあの表情がずっと脳裏から焼き付いて離れない。歯を食い縛って、握る拳にいつも以上に力がこもる。
響「絶対に、許さないんだからッ!!」
/
ほぼ同時刻
隣町の公園
カラスが数羽鳴く夕暮れの公園のベンチで、一人項垂れていた。今日も結局、採用してくれる会社は無かった。
もうダメだ、どこの老害も俺のことを見てくれない。どいつもこいつも出身地だけで腫れ物扱い。この世界のどこかに、俺を本当に見てくれる会社はあるかもしれないが、そんな会社はもう春に募集を終えている。今はもう秋だ。
もういっそのこと、一度罹ってみればいいんだ。そうすればわかるはずだ。同じ痛みを、いや俺は罹ったことは無いから俺以上だが、痛みと辛さを味わえばきっと⋅⋅⋅。
不意に、視界が紫に染まる。そういえばいつだったか。あの変な女が言ってたな、闇を叶える力だかなんだかって。じゃあ、折角だから叶えてもらおうかな。
よっ⋅⋅⋅と。さてと、老害たちの荒療治を⋅⋅⋅始めよっか。
街中に突如として現れたのは、季節外れの、ビルより巨大な雪だるまだった。剛腕を除けば、至って普通の見た目だ。それが身体から、ゴルフボール程の何かをまるでタンポポの綿毛のように風に乗せながら辺りにまき散らしていく。行き交う人々がそれに触ると、それは染みるように体内へと消えるばかりで
しばらく経って、風を切ながら海の方角から巨大な獅子が現れ、雪だるま――NEI-03と対面した。
/
一方
獅子王凱は
命『凱、分析してみた結果が出たわ。この物体はゾンダーの粒子を核にしている細菌よ! 触れば何が起こるか全く予想できない。でも、凱とギャレオンはGストーンの力があるから余裕で相殺できるわ。できるだけ被害が広まる前に早く浄化させないと――』
凱「了解、こっちは現場までもう少し時間がかかりそうだ」
今勇者はノイズが現れた現場からゾンダー――NEI-03が出現した現場へ急行していた。先に発生したノイズへウィルナイフを振るっていたが、ゾンダーの出現に慌てて移動しているのだ。幸い、移動の直前に響君の聖遺物の気配があったので後釜は一応到着したようだ。
いざ、現場に到着するとギャレオンが果敢にNEI-03へ攻撃していた。だが、相手はまるで雲のように身体を霧散させて空振りをさせている。
凱(これじゃあ雪だるまじゃなくて菌だるまだな!)
「いくぞ、フュージョン! ガイガー!!」
ギャレオンと合体し攻撃に加わる。だが、ガイガークロ―を使ったり体当たりしても攻撃を当てた手応えが一向に無い。しかし、NEI-03の剛腕から繰り出される一撃は確かに質量を感じる。どうやら身体の密度を自由に操ることができるようだ。
凱「ステルスガオー! ドリルガオー!」
ならばステルスガオーで風を起こして霧散させること範囲を狭めればながら挟み撃ち。さらに、そこからドリルガオーと合体して集まった部分を貫こうと考え、作戦を実行するがやっぱり手応えが無い。
命『凱、今街が大変なことになってる!』
凱「どうしたんだ!」
命『NEI-03がまき散らしていた細菌の効果が現れ始めて、顔が腫れたりしていってまるで⋅⋅⋅ハンセン病みたいな――』
凱「ストップ。滅多なことを言うものじゃないが⋅⋅⋅久しぶりに聞いたなそれ。昔はよくニュースになっていたな⋅⋅⋅と言っても、もうこの世界じゃ50年ぐらい前だけどな。それはそうと命、ファイナルフュージョンだ」
命『何か作戦があるの?』
凱「正直なところ今のところは無い。無いがガオガイガーのエネルギー出力で何か活路が開けるかもしれない」
命『わかった、分析とサポートは続けるから。⋅⋅⋅いくよ凱!』
凱「ああ! ガオーマシンッ!」
命『ファイナルフュージョン! プログラムドラーイブッ!』
凱「ファイナルッ! フュージョォォン!」
ガイガーから噴出する緑の竜巻に菌で構成されているNEI-03はなす術もなく弾き飛ばされる。こうなれば妨害は無理だろう。
凱「ガオッ!ガイッ!ガーッ!!」
「さあ、ゾンダー。勝負はこれからだッ!」
/
場所は戻って ノイズの現場
立花響は
弦十郎『小型ノイズの中に、一つ大きな反応が見られる。間もなく翼も到着するから、それまで持ちこたえるんだ。⋅⋅⋅くれぐれも無茶はするなよ』
響「わかってますッ! 私は⋅⋅⋅私にできることをするだけです!」
襲い掛かるノイズに応戦ではなく、最早ノイズに襲い掛かる程敵地に進入していた頃にそんな通信が入る。それは、飢える獅子に格好の獲物がいるよと知らせたようなものだ。ますますのめり込んで獲物を探す。
響(大きなノイズ⋅⋅⋅いたッ! あのブドウみたいな奴! あいつのせいで――)
「⋅⋅⋅流れ星、一緒に見たかったのにッ!」
一撃を繰り出すが、小型の
響「あッ⋅⋅⋅! 逃がすかッ!」
逃げるブドウみたいなノイズを追いかけるうちに、日は暮れ月が昇り、何か大きな質量とがぶつかり合う音が遠くから聞こえてきていた。だが、今の彼女には
響「見たかった、見たかったッ!」
肉壁を殴り飛ばして遂に本体を殴る。
響「未来と一緒にッ! 流れ星、見たかったぁーーーッ!!」
約束を破らせてしまった親友のことを想えば、自然と拳を繰り出すスピードが速くなる。
響「あんた達が、誰かの約束を侵して、嘘の無い世界を、争いの無い世界を――」
その時、胸の内から溢れる黒いざわめきを、身体は感じ始めていた。しかし、それが分からない程に我を忘れていた。
響「何でもない日常をッ! 奪うと、いうのならァッ!」
今日一番の拳がブドウなノイズが突き刺さるが、存外タフなのだろうか。まだ逃げようとしていた。
響「待て――あれっ⋅⋅⋅流れ、星⋅⋅⋅⋅⋅⋅?」
大きく跳躍したノイズにつられて天を仰いだとき、蒼い流星が一筋そこにはあった。約束を果たせなかったと思っていた矢先、流れ星がこっちに近づいて来ていることに気づいた。そしてそれは、どんどん近づいて、跳躍していたノイズを捉え真っ二つにして大地に突き刺さった。思いもしなかった。流れ星の正体は、大きな剣でありその持ち主は、
響「翼⋅⋅⋅⋅⋅⋅さん⋅⋅⋅」
弦十郎『上手く合流できたな! 二人でノイズの排除を進めてくれッ!』
翼「了解。これより迎撃します」
すかさず差し込まれた通信にサラッと応えてすぐさま戦闘態勢に移り、襲い掛かるノイズを一太刀で切り伏せる。
響「あッ! ま、待ってください! わ、わたしもッ!」
いつもなら引き下がってしまっていたが、今夜は違った。少なくとも親友を悲しませた今夜だけは、引き下がりたくなかった。
響(私だってやれるのに⋅⋅⋅私にだってッ!)
「⋅⋅⋅⋅⋅⋅私だってッ! 守りたいものがッ! あるんですッ!」
ピタッと刀を振るう手が止まり、こっちを振り返る。
翼「⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅」
響「だからッ!」
翼「⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅」
「だから」の次が出なかった。もう喉のここまで来ているのに。
響(⋅⋅⋅言葉が出ない。私、怖いの⋅⋅⋅⋅⋅⋅? 翼さんに、拒まれてまたあんなことになるのが⋅⋅⋅⋅⋅⋅)
一方で、翼は期待していた。最近悩まさせる苛立ちに終止符を打つ答えを彼女が持っていると。
???「『だから』? で、どうすんだよぉ、その後は?」
だから、何の前触れもなく第三者の声が響き渡った時には、お互い死角から冷水をぶっかけられた位の衝撃だった。
響「え⋅⋅⋅⋅⋅⋅」
翼「誰だ⋅⋅⋅⋅⋅⋅――ッ!?」
ガサガサと森の茂みを踏み分けて歩み寄る何者かが、冷ややかな月の光に照らされてゆっくりとその姿を現した。
銀を主体とし、肩部に棘が造形された鎧を全身に纏い、その鎧に負けない位の艶やかな銀の長い髪。そして、緑色のバイザーの奥から見える突き刺さる程の眼差し。それらを持つ者が突如として現れた。
突然の闖入者の、あることに気づいたのは翼だった。
翼「ネフシュタンの、鎧⋅⋅⋅⋅⋅⋅?」
それは、二年前のあれから行方不明になっていた完全聖遺物であり、あの忌むべき地獄を作りだした元凶の名前だった。
さて、皆様前書きぶりですね。
最新作だった投稿から二年ほどお待たせしてしまいました。投稿しなかった理由は、単純に気力を失っていたからです。
色々なことがこちらではありました。本作と関係する重要な出来事もありました。疲れてしまっていたのです。でも、一度たりとも本作を忘れたことはありません。ほんの少しづつでしたが今作をこつこつ執筆していました。証拠としては不十分ですが、過去に投稿した話の更新日をご参照ください。
久々に振り返ると文字数がいつもの半分で、復活にはややインパクトに欠けることになりました。不定期だからこその大ボリュームなので、はやる気持ちがあったとはいえ少し複雑な気持ちです。
さて、今回のNEI-03辺りの設定について説明します。元々NEI-03とNEI-04は読者である皆様へアイディアを募集していたのですが、一通も来なかったので私が探すことにしました。決して皆様を責めている訳ではありません。そんな時友達の友達が鹿児島県のとある町出身で、この話しを聞いたと又聞きしたので、それを採用したという単純な訳です。あっと、一応言っておきますけど、NEI-04のアイディアはまだまだ募集しています。期限は登場までです。
改めて、皆様にはお待たせしまして、本当に申し訳ございません。虫のいい話しですが、これからも応援していただければ幸いです。
それでは、次回予告です。どうぞ!
君たちに最新情報を公開しよう!
正体不明の敵の登場と崩れ落ちる風鳴翼。唯一の守護者となった立花響は何を思い、立ち向かって行くのか。一方、奏者の切り札に勇者たちは戦慄する。
NEXT「翼は沈みて 臥竜は目覚める」
次回もファイナルフュージョン承認!