ガールズ&パンツァー みほのお見合い大作戦   作:ジャーマンポテト

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第12章 恐るべき無撃破勝利

 男子戦車道社会人選抜チームと、陸上自衛隊中部方面隊男子戦車道選抜チームによる試合が開始された。

 

「試合の合図が出た」

 

 大隊長車である五式中戦車[チリ]の車長席から、上半身を出した状態で尚弥が、通信機に告げた。

 

「相手は、これまで通りの相手であるが、レギュラーメンバーの多くが変更されている。事実上、初めて対戦する相手チームだ。油断せず、作戦会議で決められた作戦行動をとれ。では、各員の奮戦を期待する」

 

 尚弥が簡単に訓示を告げると、各中隊が一斉に前進を開始した。

 

「A中隊。前進開始!」

 

「B中隊。前進開始!」

 

「C中隊。前進開始!」

 

「D中隊。前進開始!」

 

 各中隊長から前進開始の声が、尚弥の耳に届く。

 

「各中隊長へ、男子戦車道公式ルールとして、無線傍受は認められている。以降、通常交信は不可、暗号交信のみで、交信を行う!」

 

 尚弥が言った後、謎の言語で、「「「了解!!」」」という返答が出た。

 

 

 

 

 観客席では、男子戦車道社会人選抜チームの意味不明な言語に、ざわめきだした。

 

「何!何!何て、言っているの!?」

 

 沙織が、声を上げる。

 

 観客席では、双方の交信内容が流されている。

 

「まったく、わかりませんね・・・」

 

 華が、首を振る。

 

「男子戦車道公式ルールでは、無線傍受は認められていますし、無線傍受と暗号解読は、男子戦車道の公式試合では、定番の諜報合戦ですから」

 

 優花里が解説する。

 

「サンダースの新隊長が、喜びそうな戦いだな・・・」

 

 麻子が嫌味気味に、つぶやく。

 

「でも、無線傍受と暗号解読は定番だから、アリサさんが、その場にいたとしても何も出来ないと思うよ」

 

 みほが、つぶやく。

 

「みぽりん。何気に、ひどい!」

 

 沙織の言葉に、みほは、苦笑する。

 

「それで、誰かわかる?あの意味不明な言葉?」

 

 沙織が聞くと、前席で座る佑真が面倒臭そうな顔つきで、振り返って答えた。

 

「そんな事もわからないの?あれは縄文語だよ」

 

「縄文語?そんな古い言葉を、話しているの!」

 

「そうだ!縄文語に尚弥さんがアレンジを加えた暗号式になっている。そのため、尚弥式暗号と呼ばれている。尚弥式暗号は、解読不可能な暗号だ。防衛省情報本部や陸上自衛隊陸上総隊中央情報隊も、暗号解読に挑戦したが、縄文語の原本があっても、まったく意味不明な言語なため、解読できなかった!」

 

 今度は、ホットドックでは無く、試合が開始される前に買ってきた焼きそばのパックを持って、恭一郎は麺を啜っている。

 

 

 

 

 

「各中隊。現況を報告せよ」

 

 尚弥式暗号通信で、尚弥が交信を行う。

 

「A中隊。接敵無し!」

 

「B中隊。接敵無し!」

 

「C中隊。接敵無し!」

 

「D中隊。接敵無し!」

 

 今の所、接敵無い事を確認した尚弥は、端末機の画面を注視した。

 

(そろそろ。接敵が、ある頃だろう・・・)

 

 陸上自衛隊中部方面隊男子戦車道選抜チームは、奇襲攻撃を得意とする。

 

 彼の予想では、茂みや森林地帯に潜んだ97式中戦車や、95式軽戦車等の中戦車や軽戦車が、ゲリラ戦を仕掛け、突撃し、隊列を乱し、各中隊を混乱させると考えている。

 

 その隙に、本隊である主力部隊が、戦場を迂回し、大隊長車がいる地点に奇襲攻撃をしかけると思う。

 

「D中隊より、大隊長車へ、偵察に出した38tが、茂みに潜む一式中戦車を発見!威力偵察を行ったところ、反撃せず、そのまま退避した。罠の危険性がある。各中隊、注意せよ!」

 

 

 

 

「尚弥さん率いる男子戦車道社会人選抜チームの戦車編成は、私たちの学校と同じで、種類が様々だね」

 

 沙織の何気ない言葉にみほ、優花里、華、麻子の4人が、ため息をついた。

 

「物凄い。今更感ですね・・・」

 

 優花里が、つぶやく。

 

「沙織さん。あれだけ言われたのに、週刊誌や月刊誌に乗っている、イケメンしか見ていないのですね・・・」

 

 華が、つぶやく。

 

「・・・・・・」

 

 麻子は何も言わず、額に手を乗せる。

 

「麻子!何か言ってよ!!」

 

「何も言う気が無い。沙織に、その辺の事を期待するのは、無理な話だ」

 

「何それ!?ひどい!」

 

 沙織が、叫ぶ。

 

「ひどいよね?みぽりん」

 

「あはははは・・・」

 

 みほは、乾いた笑い声を、上げるだけであった。

 

「雑誌を読め!」

 

 麻子が、叫ぶ。

 

「だったら、麻子は知っているの?」

 

「普通程度には・・・な」

 

「教えて!」

 

「教えない」

 

「麻子のイジワル~」

 

「私にでは無く、秋山さんに聞け!」

 

 麻子が、優花里に振る。

 

「ゆかりん。教えて!」

 

「わかりまし・・・」

 

「うるさいんだけど」

 

 優花里が立ち上がり、説明しようとしたら、佑真が迷惑そうな顔つきで、告げた。

 

「あ、ごめんなさい」

 

 みほが、謝る。

 

「今、いいところなのに・・・後ろでギャアギャア言われたら、集中して見れないんだけど・・・」

 

「ごめんねぇ~佑真君。静かにするから・・・」

 

 沙織は、謝罪するよりも自分をアピールするかのように、謝った。

 

「・・・貴女が、一番うるさいんだけど・・・」

 

「・・・・・・」

 

 断言されて、沙織が沈黙する。

 

 それでも、沙織の立ち直りは早い。

 

「あ!そうだ!」

 

「うるさいな」

 

 沙織が、突然に叫び声を上げ、佑真が耳を塞ぐ。

 

「佑真君。尚弥さんの義弟でしょう。佑真君、どうして、尚弥さんのチームは、様々な戦車で、編成されているの?」

 

「どうして、僕が教えなきゃいけないの?」

 

「だって、ゆかりんに説明されるのは、不愉快なんだよね」

 

「そういう訳じゃないけど・・・」

 

「鳴滝!いいじゃないか!教えてあげても!」

 

 恭一郎は、2つ目の焼きそばに、とりかかるところであった。

 

「わかった」

 

 佑真は、面倒臭そうに、沙織に顔を向けた。

 

「尚弥さんのチームが、様々な戦車で構成されている意味を知りたいの!」

 

「それは、わかったから・・・どこから、説明して欲しいの?」

 

「最初からお願いします!」

 

 沙織の言葉に、佑真は、ため息をついた。

 

「そんな事も知らないで、男子戦車道の試合を観戦しているんだね・・・」

 

 佑真は、毒舌を吐いた後、説明を始めた。

 

「尚弥さんが、様々な戦車を各中隊に配備しているのは、各中隊長の能力や士気等を、最大限に高めるためだよ。A中隊はイタリア製戦車、B中隊はアメリカ製戦車、C中隊は日本製戦車、D中隊はドイツ製戦車。1つに統一してしまうと、今まで馴れていた戦車や戦術を、完全に0からリトライしなければならない。それでは、効率が悪い。だから、様々な戦車を導入しているんだ」

 

「なるほど、そう言う事か!」

 

 佑真の説明に、恭一郎が叫んだ。

 

「貴方は、知っているはずでしょう?」

 

「いや!知らない!」

 

 焼きそばの麺を啜りながら、恭一郎が豪快に叫ぶ。

 

 そんな、恭一郎に佑真がため息をついた。

 

「1年程度の付き合いで、ある程度には、わかっていたけど、本当に食べる事と試合をする以外は興味ないんだね・・・」

 

「そうだ!」

 

 2つ目の焼きそばを、完食する。

 

「次だ!」

 

 3つ目の焼きそばを、取り出す。

 

「本当に、よく食べますね・・・」

 

 優花里が驚くような、引くような表情で、つぶやく。

 

 

 

 

「お!」

 

 恭一郎が、声を上げた。

 

「鳴滝!西住君!中部方面隊男子戦車道選抜チームの1個中隊が、A中隊に奇襲攻撃を仕掛けたぞ!!」

 

「だが、A中隊は奇襲攻撃をされるのを、事前に予想していたようだぞ。最初の一斉射を受けた時に、全車が散開した。なかなか、素早い動きだ」

 

 麻子が感心したように、つぶやく。

 

「すごいです。あのような走行状態でも、発射ができるのですね。それも、敵戦車の砲身を破壊するなんて・・・」

 

 華が驚愕したように、つぶやく。

 

「何!あの神業の通信は!?あっと言うに間に中隊内に伝達し、他の中隊に交信した。まったく、何を言っているのか、わからないけど、暗号内容を日本語みたいに、使い慣れている!?」

 

 沙織が、驚く。

 

「操縦手、通信手、砲手もそうですが・・・装填手の方々は明らかに、車長が指示する前に、適切な砲弾を装填しています。車長と砲手との連携が、とれていなければ出来ない芸当ですね」

 

 優花里が、納得したように頷く。

 

 優花里は、男子戦車道の試合を何度もテレビで観戦しているが、装填手として、生の試合を観戦するのは初めての事であり、装填手として感じられる事があるのだろう。

 

 いや、他の3人もそれぞれの役目から見られるものがある。

 

「みぽりん。男子戦車道の受講生たちは、みんな、すごいの?」

 

「それは、どうかな・・・」

 

 みほは、困惑した表情を浮かべる。

 

「同じ男子戦車道でも、陸上自衛隊中部方面隊男子戦車道選抜チームの方々は、普通だけど、尚弥さん率いる男子戦車道の社会人チームだけが、そうだから、尚弥さん率いる男子戦車道社会人チームが、別格なだけだと思うよ」

 

「当然だよ」

 

 再び佑真が、口を挟む。

 

「尚弥さんは特別なの。日本男子戦車道を、世界レベルにしたのも尚弥さん。僕は飛び級で、大学選抜チームの副隊長を任されているけど、大学選抜チームは、尚弥さん率いる社会人チームには、遠く及ばないよ」

 

「そうだな!大学選抜チームの隊長を任されている俺も、まだまだ未熟だという事だ!もっと鍛錬をしなければならない!」

 

 恭一郎は、3個目の焼きそばの麺を啜る。

 

「しかし、この焼きそばは、とても美味いな!どこの麺とソースを使っているのか?なあ、鳴滝!」

 

「知らないよ。僕は、食べてないから・・・それから、鍛錬したからといって、他の人たちがついて来られなかったら、練度を高める事は出来ないよ」

 

「そうか!そうだよな!!よし、他の受講生たちが、どんな苦難にも立ち向かえるように、明日から特訓開始だ!!」

 

 恭一郎が、3個目の焼きそばを食べ終える。

 

 その後、袋の中に手を伸ばし、ある物を取り出した。

 

 それは・・・

 

 アメリカンドックであった。

 

「さて!デザートを食べるか!」

 

 恭一郎は、アメリカンドックをかじる。

 

「どれだけ、食べるのでしょうか・・・」

 

 華が、引き気味に、つぶやく。

 

「華も周りからは、あんな風に見えているんだからね!」

 

 人の事は言えないよ・・・というように、沙織が突っ込む。

 

「そうなのですか!?それは、お恥ずかしい・・・」

 

 沙織の指摘に、華が驚く・・・が、手にしている3個目のたこ焼きを、食べない気配は無い。

 

「恭一郎さん。それって、昼食ですか?」

 

 沙織が、聞く。

 

「いいや!これは午前の、おやつだ!」

 

「いえ、それは・・・すでに1食分だから・・・間食とは、言えないんじゃないですか!?」

 

 沙織が驚く。

 

「そこは、気にしない約束だよ」

 

 佑真が、ボソッと、つぶやく。

 

 

 

 

「そろそろだな・・・」

 

 尚弥が、五式中戦車の車長席から上半身を出した状態で、つぶやく。

 

「大隊長護衛隊長」

 

「はい、何でしょう?」

 

「まもなく、相手チームの本隊が、我々に奇襲攻撃をかける。備えろ」

 

「了解しました」

 

 大隊長直轄部隊である大隊長護衛隊長が、待ちくたびれたように返答した。

 

 男子戦車道の公式試合では、50輌まで参加させるため、尚弥率いる男子戦車道の社会人チームは、1個中隊10輌で、4個中隊編成で、大隊長直轄部隊の大隊長護衛隊4輌と副大隊長直轄部隊の副大隊長護衛隊4輌を、編成している。

 

「来たな・・・」

 

 尚弥は空気の流れを感じ、本隊の接近を感知した。

 

『散開!』

 

 大隊長護衛隊長の声が響く。

 

 大隊長護衛隊に所属する五式軽戦車[ケホ]が、全速走行状態で散開する。

 

 大隊長護衛隊長車である三式中戦車が、尚弥が搭乗する五式中戦車の前に出る。

 

 それと同時に、森の中から、九七式中戦車改や九五式軽戦車で編成された10輌が、突撃して来た。

 

 九七式中戦車改の、四十七粍戦車砲が火を噴いた。

 

 しかし、大隊長車及び大隊長護衛隊の中戦車、軽戦車の回避行動が早かったため、砲弾は1発も当たる事は無かった。

 

『迎撃せよ!』

 

 大隊長護衛隊長の命令が、響く。

 

 五式軽戦車の砲塔が、旋回する。

 

 五式軽戦車は、軽戦車でありながら、九七式中戦車改や一式中戦車に匹敵する火力を有し、車体も同2車よりも大きい。

 

 五式軽戦車の砲塔が止まり、砲口が吼える。

 

 四十七粍徹甲弾が飛び出し、徹甲弾が、九七式中戦車改の履帯に直撃する。

 

 最初の一斉射撃で、4輌の九七式中戦車改及び九五式軽戦車の履帯が破壊され、そのまま停車した。

 

 大隊長護衛隊長の三式中戦車の砲塔が旋回し、七十五粍戦車砲の砲口が吼え、七十五粍徹甲弾が撃ち出された。

 

 徹甲弾は、九七式中戦車改の小さな砲身に直撃し、砲身をへし折った。

 

 大隊長護衛隊の五式軽戦車も、相手チームの九五式軽戦車の履帯を破壊した後、砲身に徹甲弾を撃ち込み、砲身をへし折った。

 

「最初の奇襲攻撃は、なかなかのものであったが、やはり、ここまでが限界か・・・」

 

 尚弥は、面白くなさそうな顔で、つぶやく。

 

「最近の男子戦車道の戦車搭乗員たちの練度が、低下しているのは目に見えているな・・・どうしたものか・・・」

 

 尚弥が、そうつぶやいた時、最後の九七式中戦車改の砲身が破壊され、戦闘不能になった。

 

「そろそろだな」

 

『大隊長。4個中隊長より、本拠点に到着したとの連絡が入りました』

 

 副大隊長である、西住虎次郎からの連絡が入る。

 

「よし、全車!突入!」

 

 尚弥の命令で、4個中隊が一斉に相手チームの本拠点に向けて突入した。

 

 本拠点に到着する前に、相手チームの戦車は、すべて走行不能及び戦闘不能にしている。

 

 尚弥率いる男子戦車道の社会人チームは、相手及び味方戦車を1輌も撃破せず、撃破されず、本拠点を制圧する神業で5連覇をしており、この勝利で6連覇に目になる。

 

「今回も、無撃破勝利ですね」

 

 五式中戦車の装填手が声をかけてきた。

 

「相手チームは、人員の入れ替えをしたと聞きましたが、この結果だと、また人員の入れ替えですね」

 

「経験を積ませるのは良い事だ。しかし・・・」

 

「その経験が、生かされていませんね」

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