ガールズ&パンツァー みほのお見合い大作戦 作:ジャーマンポテト
みほたちの合同合宿場の施設を、訪れて来た人物がいた。
「家元からの言い付けで、君たちのサポートをする鳴滝佑真です。よろしくお願いします」
佑真は、頭を下げた。
「きゃああああ!佑真君!!」
予想通り、沙織がはしゃぐ。
「・・・うるさいんだけど」
佑真は耳を押えながら、抗議する。
「あははは・・・」
みほは、苦笑する。
しかし、すぐにみほは我に戻り、頭を下げた。
「こちらこそ。よろしくお願いします」
「頭を下げないで、僕は、家元の言い付けで仕方なく、君たちの教官を承諾したけど、僕としては、やる気が出ないんだ。まあ、大学選抜副隊長という肩書があるから、僕の立場の為に、きちんと教育はするけど、負けると分かっている人たちのチームを教育するのは、やはりやり切れない」
相変わらずの毒舌を吐く佑真に、みほは苦笑するしかなかった。
他のメンバーたち(沙織を除く)も、苦笑を浮かべている。
「1つだけ言っておくけど、僕にも面子があるから、無様な負け方はしないでよ。僕の面子が、丸つぶれになるから、そんな事になったら、天満流の名が地に落ちるだけでは無く、尚弥さんと家元の名にも傷がつくから」
「はい、頑張ります」
みほは乾いた声で、返した。
「う~ん・・・佑真君に、きつい事を言われるの、とても快感~・・・」
沙織は、うっとりとした表情を、浮かべている・・・
「おい、沙織。お前は今、危ない橋を渡っているぞ!!」
「いえ、橋どころか、すでに川底に落ちています」
「・・・ですねぇ」
麻子、華、優花里の3人が、顔を見合わせる。
「それで・・・僕の部屋は、どこかな?」
「もちろん、私と同じ部屋~」
佑真の言葉に、沙織が、うっとりした声で告げる。
「バカ者!」
パン!!
どこからか出したかわからないハリセンで、麻子は沙織の頭を叩いた。
「いった~い!!麻子、手加減してよ。冗談だよ!!」
「お前には、このぐらいが丁度いい。バカ者!!」
「ひどい、麻子。私、そんなにバカじゃないもん!テストだって、平均点を越えるぐらいの点は、とっているもん!!」
「勉強のバカでは無い!人間としての、バカだと言っている!」
ぎゃあぎゃあと騒いでいる沙織と麻子を後目に、みほが先に立って、佑真を案内した。
「こちらに、どうぞ。佑真君」
通路を進みながら、みほは佑真に声をかけた。
「気を悪くしないでね」
「大丈夫。家元に、君たちの教官になるように言われてから、僕の機嫌は、とても悪いから」
「ソウデスカ・・・」
佑真の言葉に、棒読み口調で言葉を返してから、気を取り直すように、みほは表情を変える。
「でも、一応説明しておくけど、沙織さんも本気で言っている訳じゃないから、歳の近い男の子と話す機会なんて、あまりないから・・・それで、はしゃいでいるだけだから・・・」
みほは、沙織の面子を守るために説明をする。
「優しいね・・・貴女は・・・」
「そうかな」
「僕も、あまり興味ないけど、僕自身の試合の意識改革という事で、貴女の試合も見せてもらったけど、やっぱり優しさを感じるよ」
「ありがとう」
「別に褒めている訳じゃないよ。事実を言っただけだから」
そんな話をしていると、佑真の部屋に到着した。
「ここが、佑真君の部屋です」
佑真がドアを開ける。
「何か足りない物は、ありませんか?もし、あるようでしたら、すぐに手配します」
華が佑真に、確認した。
華は、ここでの事務的作業も任されているため、備品等の発注は、すべて華、優花里、沙織が取り仕切っている。
天満尚弥が、高校生戦車道に試合を申し込んだ事により、みほの元に続々と各高校の戦車道受講生たちが集まって来た。
黒森峯女学園からは、逸見エリカと彼女に選抜された受講生たちが、到着した。
他の学園からもローズヒップ率いる聖グロリアーナ女学院、アリサ率いるサンダース大学付属高校、カルパッチョ率いるアンツィオ高校、ニーナ率いるプラウダ高校、西率いる知波単学園、ミカ率いる継続高校、安藤率いるBC自由学園。
それだけでは無く、助っ人として大学選抜から島田愛里寿、メグミ、アズミ、ルミが加わった。
みほの指揮下に入ったのはそれだけでは無く、大学に入学するそれぞれの高校の卒業生たちも、特別に許可が出て、みほの指揮下に入った。
「そういう訳で、西住ちゃん。また、よろしく頼むよ」
杏が干し芋を食べながら、みほに挨拶した。
「大学選抜との試合の時以来ですわ。みほさんの指揮下に入るなんて・・・今回も素晴らしい試合を楽しみにしています」
優雅に紅茶を飲みながらダージリンが、みほに挨拶をした。
「早速、宴会だ。アンツィオ名物のイタリア料理を目一杯振舞うからな!」
「宴会だったら、私たちサンダースも、負けていないわ!」
アンチョビとケイが、叫ぶ。
「カチューシャが来たからには、この試合は私たちの勝利よ。ミホーショ!大船に乗ったつもりでいなさい!」
「はい、その通りです。カチューシャ」
ノンナに肩車された状態で、カチューシャが胸を叩く。
「また、みほとエリカたちと試合が出来るとは、日本にトンボ帰りしたのは、悪く無かったな」
まほが苦笑しながら告げる。
「皆さん。ありがとうございます」
みほが、頭を下げる。
「いいよ、いいよ。西住ちゃん。皆、西住ちゃんの事が、好きだから・・・」
杏が、干し芋をパタパタさせながら告げた。
「いい!皆、今度は西住ちゃんのピンチだからね!西住ちゃんのピンチを救うのは、私たち、だ!」
「「「おお!!」」」
「それで、みほ。現在の戦力は、どのくらいになっている?」
「優花里さん」
みほは、優花里に振り返った。
「はいっ!」
優花里が、挙手の敬礼をする。
「え~と・・・ですね」
優花里が、書類を出す。
「ティーガーⅠが1輌、ティーガーⅡが1輌、パンターが2輌、ヤークトティーガーが1輌、T―34/85が2輌、IS―2が1輌、KV―2が1輌、シャーマンが2輌、ファイアフライが1輌、チャーチルが1輌、クルセイダーが1輌、マチルダⅡが1輌、P40が1輌、セモヴェンテが1輌、カルロ・ヴェローチェが1輌、BT―42が1輌、ルノーFT―17が1輌、ソミュア35が1輌、ARL―44が1輌、パーシングが3輌、センチュリオンが1輌、T―28が1輌、カール自走臼砲が1輌、九七式中戦車新旧が6輌、95式軽戦車が6輌です。そして、私たち大洗女子学園の戦車10輌で、計50輌です」
「男子戦車道との試合では、正式な公式ルールが定められていないが、基本的には50輌で試合に参加する事が決められている」
まほは、優花里から書類を受け取る。
「これだけの戦車が揃っていたら、十分に私たちが有利ね」
カチューシャが、勝ち誇ったように宣言する。
「安心するのは早いぞ。相手は、経験だけでは無く、技術も私たちよりも上だ。防御能力が高いヤークトティーガーや、T―28があっても、安心は出来ないぞ」
アンチョビが、腕を組んで、告げる。
「それですねぇ!皆さん!」
優花里が、声を上げる。
「これを、ご覧ください!」
優花里は、1枚のSDカードを見せた。
「優花里さん。もしかして・・・また?」
みほが、乾いた笑みを浮かべる。
「OK!OK!オットボール軍曹!」
ケイが、豪快に笑いながら、叫ぶ。
「私たちに手酷い目に遭わされたのに、まだ、懲りていないのですね」
マリーが、ケーキを食べる。
「ですが、マリー様。嬉しそうですね」
押田が、つぶやく。
「隊長。嬉しそうに言わないで下さい!それによって、私たちのチームの情報が、筒抜けになったんです!」
アリサがケイに突っ込む。
「アリサ。今は、貴女が隊長なのよ!それに、細かい事は気にしない!気にしない!」
「少しは、気にして下さい」
「あの~・・・盛り上がっているところ、申し訳ありませんが、私が尚弥殿のチームに潜入する余裕はありませんでしたから、変わりにホームページに掲載されている。尚弥殿の男子戦車道紹介を、コピーしたものであります」
「な~んだ。オットボール軍曹が、潜入した訳じゃないんだ・・・」
「はい、申し訳ありません」
「い~の、い~の!オットボール軍曹も忙しかったんだし、それに、いずれは・・・潜入するつもりなのでしょう?」
「はい!」
優花里は、挙手の敬礼をした。
「さっさと見ない?いつまで、待たせるの!?」
カチューシャが不機嫌そうに、急かしてくる。
「はい!只今!」
優花里は、ノートパソコンを取り出し、SDカードを差し込む。
ページが開かれ、優花里がクリックする。
「男子戦車道に興味を持つ、皆様。この動画サイトを見て頂き、誠にありがとうございます」
スーツ姿の尚弥の姿が、映った。
「今日、皆様に、私が率いているチームを紹介します。まずは、A中隊」
画面が変わった。
「A中隊長、御子神篁(みこがみ たかむら)です。A中隊は、大日本帝国製戦車を主力とした編成です。八九式中戦車を中隊長車として、一式中戦車や二式軽戦車がメインです。機動性を活かした一撃離脱戦法を主戦術として、敵戦車を撃破します」
「・・・!!」
沙織の目が、ハートの形に変わる。
「なんて、美麗な殿方なのぉ!!」
世に言う、イケメンと呼ばれる男性アイドル、俳優が束になっても敵わない・・・そう言っても過言では無い整った容姿の男性に、どうやら一瞬で心を奪われてしまったらしい。
「まあ・・・この方が・・・」
華が、小さな声を漏らした。
「華、お知り合い?」
その声が、耳に入ったのか、沙織が華に振り返る。
「この方は、華道界の名家、御子神流家元のご子息で、私の婚約者候補の方です」
「ぬわんですってぇぇぇ!!?」
華の投下した爆弾に、沙織が目を剝いた。
「まだ、正式に婚約した訳ではありませんから。あくまでも、私が大学を卒業してから婚約をする予定です。それまでは、お互いを理解しあうために、お付き合いをさせて頂くという形になっています」
華の発言に、沙織は目を白黒している。
「それなら、話してくれてもいいじゃん!」
「・・・いえ、まだ正式に婚約した訳ではありませんし・・・結果論から申し上げれば、皆さんに、お伝えしていなかったのは、申し訳ないとは思いますが、それは正解だったかと・・・」
「・・・・・・」
沙織の苦情に、華はシレッと答える。
「・・・確かに」
それに、麻子が相槌を打つ。
「ぐぬぬぬぬ~・・・」
沙織は、唸るしか出来なかった。
画面が戻った。
「B中隊」
画面が変わった。
「B中隊長、各務真太郎(かがみ しんたろう)です。B中隊はイタリア製戦車を主力とした編成です。中隊長車はP40で、軽戦車はM11/39、中戦車はM15/42がメインです」
イケメンだが、髪を金髪に染めた、カルいと言うか、チャラいと言った感じの男である。
「因みに、各務中隊長は、男子戦車道大学選抜チーム隊長の各務さんの、お兄さんだそうです」
「「「何ですって~!!?」」」
優花里の説明に、全員が絶叫する。
それもそうだろう・・・
硬派で、無駄に暑苦しい熱血漢の各務京一郎と、真太郎は似ても似つかない外見と雰囲気であるからだ。
「・・・まあ、ある意味ではバランスは取れているな・・・兄弟が2人揃って硬派な熱血漢だったら、周囲の人間が、その暑苦しさに耐えられずに、熱中症でバタバタ倒れる・・・なんて事になりかねない・・・」
アンチョビが、呆然として、つぶやく。
画面が戻った。
「C中隊」
画面が変わった。
「C中隊長、植松伸郎(うえまつ のぶろう)です。C中隊はアメリカ製戦車が主力です。中隊長車も中隊の戦車も中戦車のシャーマンがメインです」
ちょっとポッチャリした体型の、人の良さそうな感じの男である。
イケメンとは言えないが、癒し系と言った感じだ。
「「「・・・・・・」」」
全員が、無意識にため息を付いたのは、A隊長、B隊長のインパクトが余りにも強すぎたせいだろう。
彼の顔を見ていると、心が和んで来る。
画面が戻った。
「D中隊」
画面が変わった。
「D中隊長、瀬戸禎彦(せと よしひこ)です。D中隊は、ドイツ製戦車が主力です。中隊長車はⅤ号戦車[パンター]を主力として、Ⅳ号戦車とⅢ号戦車をメインとした編成です。ドイツ戦車でもあるように、尚弥率いるチームの主力として位置付けています」
眼鏡を掛けた気真面目そうな男である。
社会人と言っても、一番、自衛官という雰囲気があり、出来る男という感じがする。
画面が戻った。
「では、大隊長車の紹介です。大隊長は私、天満尚弥で、大隊長車は五式中戦車です」
画面が変わった。
「大隊副長、西住虎次郎です。大隊副長車は、Ⅵ号戦車[ティーガーⅠ]です」
画面が戻り、尚弥が映った。
「これらの重戦車、中戦車、軽戦車をバランス良く編成し、全部で50輌が試合に参加します。中隊長は変わる事は、ほとんどありませんが、小隊長は常に変わっています。試合に合わせて、それぞれの得意分野を考慮し、小隊長、車長、装填手、砲手、操縦手をバランスよく選抜しています・・・」
それから1時間ぐらい動画は続いた。
「「「・・・・・・」」」
会議室内は、静まり返っていた。
天満流男子戦車道のPR動画は、とても衝撃的なものであった。
尚弥率いる男子戦車道社会人選抜チームの実力は、陸上自衛隊中部方面隊男子戦車道選抜チームとの試合で、ある程度に理解できたが、1回程度の試合だけでは完全に理解する事は難しい。
しかし、天満流男子戦車道のPR動画は、男子戦車道受講生の実力を把握するには、十分なものであった。
どんな内容だったかと言うと、まずは、尚弥率いる男子戦車道社会人選抜チームの中隊長たちの自己紹介から始まり、その後、彼らの練習メニューが紹介された。
移動式的の左右に味方戦車が1輌ずつ配置された状態で、移動を開始する。
砲撃を担当する戦車が、全速走行状態で、行進間射撃を行うものだ。
砲手が砲の操作を行うのは僅かな時間であり、その僅かな時間で、砲の調整を行い、砲弾を正確に的に撃ち込む。
それを何度もやるため、砲手の計算能力の高さは計り知れない。
「さあ!皆、まだ、練習もしていないのに、暗くなっていたら、本当に負けてしまうぞ!ここは、宴会だ!!宴会!!」
アンチョビが、静まり返った空気を吹き飛ばす。
「そうね!派手にパーティーをしましょう!!」
遅れてケイも、賛同する。
「そうっすね!姐さん!」
「仕方ないですねぇ・・・」
ペパロニと、アリサが乗る。
「みほさん。美味しい紅茶を楽しみましょう」
ダージリンが、上品に紅茶を飲みながら、告げる。
「いえいえ、ダージリン様。みほさんは、私と美味しいケーキを楽しむのですの。みほさん、あちらで美味しいケーキを頂きましょう」
マリーが、みほの右手を握る。
「あらあら、これから楽しい宴会をしますのに、そのようなものを食べてしまっては、お腹がきついですわ。さあ、みほさん、あちらで、紅茶を楽しみましょう。スコーンとクッキーもありますわ」
ダージリンが、みほの左手を握る。
「え?え?え?」
みほが、目を白黒させる。
「マリーさん。その手を離して下さる?みほさんが困っていますわ」
「それは、こちらのセリフです。ダージリン様、みほさんが困っていますわ。手を離して下さる」
ダージリンとマリーとの間で、バチバチと火花が散る。
「では、こうしましょう。みほさんが選ぶ・・・という事で」
ダージリンが、提案する。
「いいですわ。ダージリン様。みほさんが、どちらを選んでも恨みっこ無しですわよ」
マリーが、提案に乗る。
「「さあ、みほさん。どっちを選びます!?」」
ダージリンとマリーが、みほに迫る。
「え~と、え~と・・・」
みほが、狼狽える。
「2人ともいい加減しろ。みほが、困っているだろう!」
まほが、助け舟を出した。
「ケーキも紅茶も、どちらか1つに絞らなくてはならない訳では無い。両方を食せば、とても美味しいものになる。ここは1つ、紅茶とケーキを両方楽しむ事にしようではないか」
まほの言葉に、みほが明るくなった。
まほは、みほに片目を瞑った。
「そうですわね。スコーンやクッキーもいいですけど、ケーキを食べるのも悪くありませんわ」
「はい!ダージリン様。ケーキには、やはり美味しい紅茶を、合わせて飲むのがいいですね」
ダージリンとマリーが、納得した。
「宴会の準備に、しばらくかかるから、その間に自由に飲んで食べていてくれ」
アンチョビが、エプロンをつけながら、声をかけてくる。