ガールズ&パンツァー みほのお見合い大作戦   作:ジャーマンポテト

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第19章 戦車の精霊

 某地域にある、とある食堂。

 

「美味い!」

 

 特盛の天丼を食べながら、いつもの如く京一郎が叫んでいる。

 

 テーブルの上には、空になった丼鉢が、すでに5つ。

 

 ここは京一郎の行きつけの食堂であり、京一郎は事ある毎に、ここに来て様々な定食を注文するのである。

 

 京一郎が、ここを気に入っている理由は、他の定食屋と比べて、当然ながら味も良いのだが何より一人前の量が多いのだ。

 

京一郎は、いつも十人分は、お代わりをする。

 

 因みに佑真は、あまり、この定食屋を好ましく思っていない。

 

 佑真と一緒に、この定食屋に来店した時の、佑真の感想は・・・

 

「味はいいけど、量が多いよ。僕の口にも合うけど、全部を食べるのは、かなり苦労するよ。残すのは勿体ないから、全部食べるけれど・・・」

 

 ・・・である。

 

「隊長。こちらでしたか・・・?」

 

「おぅ!夕食の時間だからな!」

 

 京一郎は、ご飯を一粒も残さず食べた丼を、テーブルの上に置く。

 

「隊長。座ってもよろしいですか?」

 

「いいとも!」

 

 京一郎が、定食屋の大将に顔を向けた。

 

「大将!天丼の、お代わりだ!それと、彼にも同じものを頼む!」

 

「ご飯の量は?」

 

 大将が、京一郎の前の席に座っている青年に、声をかけた。

 

「並で、お願いします」

 

「あいよ!」

 

 大将は、天ぷらを揚げながら、定食セットの準備を行う。

 

 漬物と、小鉢をトレイに並べ、味噌汁を付ける。

 

 天丼のタレが入った器を乗せ、熱々のご飯を丼鉢によそい、揚げたての天ぷらを乗せていく。

 

 その間に、青年は京一郎に視線を向ける。

 

「隊長。大洗連合チームの件ですが・・・」

 

「その話は後だ。食べながら話そうではないか!こういう待っている時間が、楽しいんだ!」

 

「そうですか・・・」

 

「天丼セット、お待ち!」

 

 2人の前に、天丼セットが置かれた。

 

「これは、サービスだ」

 

 大将は、唐揚げが盛られた皿を、2人の前に置いた。

 

「ありがとう!」

 

「いただきます!」

 

 青年は、手を合わせた。

 

 京一郎は、天丼のタレを天丼にかけ、海老の天ぷらを早速、頬張る。

 

「何度食べても、美味いです!大将」

 

 京一郎と青年は、海老天を頬張り、味噌汁を啜る。

 

 

「隊長。大洗連合チームの件ですが・・・」

 

 人心地ついたところで、青年は先ほど言いかけた話を始める。

 

「おぅ!そうだった!何だ!?」

 

 京一郎は、唐揚げを食べながら、聞いた。

 

「はい、大洗連合チームに、練習試合を申し込んだのは、本当ですか?」

 

「ああ!本当だ!」

 

 青年は、箸を止めて京一郎の返事を聞いた。

 

「何故ですか?鳴滝副隊長が、彼女たちの教官として天満流家元の命令で派遣されているでしょう?」

 

「ああ!そうだ!」

 

「副隊長だけでは、手に余る事態が発生したのですか?それとも、副隊長の毒舌に、彼女たちが根を上げたのですか?」

 

「いや!そんな報告は受けていない!」

 

「では、何故?」

 

「西住君の、天満尚弥さんを思う気持ちに、胸を打たれたのだ!」

 

「思う気持ちですか?失礼ですが・・・彼女は、あらぬ情報を世間に流し、天満尚弥さんの名誉を傷つけようとしたのですよ。尚弥さんは、子供のした事だから、という事で笑って許していますが・・・自分は・・・」

 

 青年は天満流男子戦車道の受講者であり、天満流家元を敬愛している。それと同時に次期家元である尚弥を、誰よりも敬愛している。

 

 青年は、尚弥直々に男子戦車道の指導を、受けている。

 

 そのため、尚弥の人なり等を、理解している人物の1人である。

 

 だからこそ、今回の男子戦車道社会人選抜チームと、大洗連合チームとの試合の発端とも言うべき、根も葉もないデマの流布に付いて、怒りを覚えている者の1人である。

 

 実際、あのデマが巷に流布した際には、男子戦車道を志し、尚弥との関りが深い者たちの、みほに対する怒りは凄まじいものがあった。

 

 尚弥は、それらの者たち1人、1人に丁寧に誤解に至った経緯を説明し、了解を得ていたが、それでも内心で釈然としないものを感じている者も、少なからずいる。

 

「尚弥さんが許すと言っているのだ!それに異議を唱えるのか!?敬愛すべき尚弥さんが、そうおっしゃっている!それでいいではないか!それに、西住君の親友が、親友を思う気持ちで行った事だ!誤解も晴れた事ではあるし、それでいいではないか!」

 

「ですが・・・」

 

 だが、青年は今一つ納得が、出来ないようだ。

 

「この話は以上だ!」

 

「・・・・・・」

 

 京一郎は、最後の唐揚げを齧る。

 

「美味い!」

 

 青年は、不満そうな顔をしているが、それ以上は何も聞かなかった。

 

「大洗連合チームの副教官も、志願したようですが・・・?」

 

「ああ。西住君のレベルは、彼女の試合を見ていた上で鳴滝少年からの報告を受けているが、今のレベルでは、一瞬のうちに負けるであろう!そんな無様な試合は、西住君の意気込みには似合わない!西住君のために、俺も一肌脱ぐ事に決めたのだ。すでに、天満流家元にも許可を取ってある!」

 

「それは、かなり難易度の高い話ですね・・・正直、レベルの差は、埋めようもないのでは・・・」

 

「それが、出来ない!という事は、俺が未熟な証拠だ!俺もいずれは大学卒業し、大学院に進む、そこではもっと強者が揃っている!そんな中で大学院選抜チームに選抜されるためには、さらなる努力が必要となる!」

 

「すごい目標ですね・・・ですが、隊長なら大学院選抜チームの隊長にも、なれるのではないでしょうか?少しは身体を休めるのも必要かと・・・」

 

「その必要は無い!人間は1日6時間睡眠をとる!その睡眠時間で1日の疲れは、すべて消える!18時間は鍛錬だ!」

 

「隊長。隊員たちにも、言われているでしょう。偶には鍛錬では無く、休む日を作って下さいと、でなければ隊員たちが、隊長を差し置いて休む事が出来ないのです」

 

「それは、すまない!だが、俺は俺のやり方が、一番しっくりくるんだ!俺は俺のやり方を貫くが!お前たちが、それに倣う必要は無い!」

 

「はぁ~・・・」

 

 青年は、ため息を吐いた。

 

 京一郎は、こうと決めたら、頑として譲らないところがある。

 

 良くも悪くも、大洗連合チームは、佑真に加えて京一郎が教官の1人として参加する事で、さらに厳しい訓練が課される事になるだろう。

 

 それに、西住みほを始めとして、各高校の戦車道チームの面々は、堪える事が出来るのだろうか・・・

 

 青年には、とても想像が付かない。

 

 

 

 

 夕食を終えると、京一郎は定食屋を出た。

 

「隊長。このまま宿舎に、戻られますか?」

 

「いや!大学に戻る!」

 

「そうですか・・・」

 

「その前に、行きつけの弁当屋に向かう!」

 

「わかりました。お供します」

 

「うむ!整備長や整備士たちには、いつも世話になっているからな!日頃の感謝の気持ちを込めて!弁当を差し入れしようと思っている!」

 

「整備長や、整備士たちが喜びますね」

 

「それに、西住君と練習試合もする予定だからな!今まで以上に戦車の整備に専念してもらわなければならない!恐らく、激しい激戦が期待出来るだけでは無く!我々も、かなり苦戦するかもしれん!」

 

「そのような結果になるでしょうか・・・?」

 

 青年は、懐疑的な表情を浮かべる。

 

「なる!西住君を侮ってはいけない!ほとんど無の状態から大洗女子学園戦車道の受講生たちを鍛え上げ!聖グロリアーナ女学院に練習試合を申し込み!聖グロリアーナ女学院が、油断をしていたとはいえ!4輌を撃破!1輌に、傷をつけた!」

 

「ですが、その試合では負けましたが・・・」

 

「そうだ!だが、戦車道初心者のチームで、4輌のマチルダⅡを撃破するのは、極めてすごい事だ!」

 

「ええ、まあ・・・」

 

「その後の全国大会では1回戦で、戦車保有数最大のサンダース大学付属高校戦車道チームに、見事勝利した!」

 

「かなり、ギリギリの勝利だった・・・ですが・・・」

 

「だが!勝利は、勝利だ!」

 

「ええ、まあ・・・」

 

「全国大会2回戦では、アンツィオ高校と当たった!西住君の完璧な指揮により、1輌の損失だけで、完全勝利を収めた!」

 

「確かに、2回戦は、コールド勝ちのような結果ではありましたが・・・次の試合では、2回戦の勝利に浮かれてしまい、かなり苦戦しましたが・・・」

 

「うむ!確かにそうだ!3回戦はプラウダ高校に当たり、ほとんどの戦車が撃破されたが!フラッグ車の迅速な行動により、間一髪で、名砲手の砲撃を回避した!初心者チームでありながら、すさまじい練度だ!」

 

「ええ、まあ・・・」

 

「決勝戦では、黒森峰女学院の電撃戦により、緒戦は不利になるが!うまく、攻撃を回避し、見事、高地に陣取った!高地からのピンポイント砲撃により、数輌の戦車を撃破した!その後、完璧な包囲下を突破し、見事、脱出した!その後・・・」

 

 京一郎は、拳を握り締めた。

 

「くぅ~!あの試合の西住君の行いは、何度見てもジ~ンとくる!川でエンストしてしまったM3を助けるために、戦車から戦車へ、飛び移り、見事、M3に飛び乗ったでは無いかっ!!」

 

「隊長。到着しました」

 

「うむ!そうか!」

 

 一番の感動を伝えようとしたところで、話の腰を折られてしまったのに、残念そうな表情を京一郎は、浮かべた。

 

 弁当屋に到着した京一郎と青年は、弁当屋に入店した。

 

「いらっしゃいませ!あ、名務さん。いらっしゃいませ。いつも、ありがとうございます」

 

 若い女性店員が、笑顔で出迎えてくれた。

 

 ここも、京一郎の行きつけの弁当屋である。

 

「ご注文いただいた、お弁当は出来上がっています。よろしければ、大学まで配達いたしますよ」

 

「しかし、忙しい時間に手間を取らせるのは、申し訳ないのだが・・・」

 

 弁当屋の店内は、時間的なものもあり、弁当を買い求める客で賑わっている。

 

 さすがに、ありがたい申し出とはいえ、そこまで手間を取らせるのは気が引ける。

 

「いえいえ、いつもたくさん、お買い上げいただいている常連さんですし、配達員も手配していますから・・・お気になさらず」

 

「そうか、ではお言葉に甘えて、お願いしよう」

 

「はい」

 

 

 

 

 弁当屋の手配した配達車に便乗して、大学に戻った京一郎と青年は、戦車の整備が行われている車庫に、向かった。

 

「整備長!!」

 

「うん?」

 

「弁当の差し入れだ!!」

 

「おお、これは、すまない」

 

 整備長は、油で汚れた手を布で拭きながら、声を上げた。

 

「お~い!名務隊長が、弁当の差し入れを持って来てくれたぞ!!皆!!いったん、休憩に入るぞ!!」

 

「「「はいっ!!!」」」

 

 整備士たちが、大きな声で返事をする。

 

 青年は、手近のテーブルに、弁当の入った袋を置いた。

 

「はい、どうぞ」

 

 青年は、整備士1人、1人に弁当を直接手渡した。

 

「お茶もあるぞ!」

 

 京一郎が、ペットボトルのお茶を手渡す。

 

「ありがとうございます」

 

 整備士が、カレーライス弁当を受け取りながら、青年や京一郎にお礼を言う。

 

「うむ!いつも俺たちが乗る戦車が万全なのは、君たちの整備のおかげだ!これは細やかなお礼だ!遠慮せず、食べてくれ!!」

 

 京一郎が、お茶を手渡す。

 

「お疲れ様です」

 

 青年が、ハンバーグ弁当を手渡す。

 

「ゴチになります」

 

「うむ!そんなに嬉しそうな顔をしてくれると、俺が差し入れしたかいもある!遠慮せず食べるといい!」

 

 大量に積み上げられていた弁当は、見る見るうちに整備士たちに手渡され、皆、分散した。

 

「さあ、弁当とお茶が行き渡ったところで、各務隊長たちが、用意してくれた弁当に感謝して、手を合わせよう」

 

 整備長の言葉に、整備士たちが手を合わせる。

 

「いただきます!!」

 

「「「いただきます!!」」」

 

 整備士たちの声が、重なる。

 

「しっかりと食べて、英気を養って欲しい!!そして、西住君率いる大洗連合チームに遅れをとらないよう、戦車の整備をしてくれ!!」

 

「「「はい!!」」」

 

「うむ!いい返事だ!」

 

 京一郎も、ステーキ弁当の蓋を開けて、切りそろえられた牛肉の1つを箸に摘まむ。

 

「ここの弁当屋の弁当も、最高だ!!」

 

 京一郎が程よい焼き加減の、柔らかい牛肉を食べて、感想を漏らした。

 

「本当に、美味いです!」

 

 青年も、ハンバーグ弁当のハンバーグを一口サイズに箸で割り口に入れて、感想を述べた。

 

「それで名務隊長」

 

「何だ、整備長!?」

 

「西住みほ率いる大洗連合チームに、練習試合を申し込んだのか・・・?」

 

「そうだ!我々も日々、成長する事が必要だ!」

 

「俺は整備だけが天職だから、全てを把握している訳では無いが、西住みほの実力は侮ってはいけない」

 

「むろんだ!!俺は、いつも、どんな相手に対しても全力で立ち向かう!俺が率いる隊員たちも同じだ!!」

 

「確かにな・・・だが、西住みほ率いる戦車道チームの強さは、整備士たちにある」

 

「整備士たち・・・?」

 

 青年が、お茶を飲みながら、問い返す。

 

「そうだ。大洗の整備士たちの整備能力は、極めて高い。もともと大洗の戦車は、何十年も放置されたままだった。それを完璧に、小さな部品1つ、1つもすべて綺麗に整備した。綺麗にされた戦車は、戦車に宿る精霊が喜ぶ。精霊が喜ぶと、その戦車は通常以上に能力が上がる・・・」

 

 整備長は、ステーキ弁当を食べながら、自分の考えを述べた。

 

「俺の勘だが・・・恐らく西住みほは、天満尚弥さんを凌ぐだろう・・・西住みほの強さは、自身の能力もさることながら、戦車の精霊に愛されている。それが、彼女の強さの1つでもある」

 

「そんな、バカな!!?」

 

 青年が、驚く。

 

「別に驚く程の事ではない。これは、単なる俺の勘だ。気にしないでくれ」

 

「いや!整備長は、戦車に宿る精霊の声を聞く事が出来るそうではないか。それに、彼女のこれまでの戦車道の試合を観ていれば、整備長の言う事には納得出来る!俺も、西住君を見習おう。それも含めて、彼女の行動を見極めるつもりだ!」

 

 京一郎は、そう言いながら牛肉ステーキを食べる。

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