ガールズ&パンツァー みほのお見合い大作戦   作:ジャーマンポテト

22 / 26
第21章 大洗連合チーム対中学選抜チーム その1

「試合、開始!」

 

 蝶野の号令で、試合が開始された。

 

 

「パンツァーフォー!」

 

 みほの号令で、大洗連合チームに所属する戦車が、前進を開始した。

 

「戦車、前進」

 

 美信の号令で、中学選抜チームの戦車が、前進を開始する。

 

「大隊長車より、各車へ、現在、順調に前進中ですが、現在位置は、大洗連合チームの勢力圏内です。相手チームが、どのような戦法をとるか、わかりません。みなさん、注意してください。相手チームは、男子戦車道の試合を熟知しています。佑真君と同じく、通信妨害を行う可能性があります。通信傍受はされていると思うので、これより、通信の周波数を変えます。各車へ、事前の打ち合わせ通り、通信の周波数を変えて下さい」

 

「「「了解!」」」

 

 各車から了解の返信が来た。

 

 

 

 

「大隊長。敵チーム、我々の通信傍受を警戒して、通信の周波数を変えました!ご指示願います」

 

「了解したわ。通信傍受は、これまで通り続けて、これから通信妨害を行うわ。各車、事前の作戦通りに、地雷の設置をお願いね」

 

「「「了解!」」」

 

 美信率いる中学戦車道選抜チームの戦車は、各中隊に分れ、さらに小隊ごとに分かれて、散開した。

 

 美信率いる中学戦車道選抜チームの各小隊は、美信の勢力範囲内全域に広がり、地雷の設置を行った。

 

 みほ率いる大洗連合チームは、中隊ごとによる部隊行動を行っているため、前進速度が遅く、美信率いる中学戦車道選抜チームは、小隊ごとに移動しているため、その移動速度は速い。

 

 

 

 

「大隊副長車より、各中隊へ、中学選抜チームの勢力範囲に接近!これより、偵察を開始します」

 

 梓が、車長ハッチを開放し、車外に出た。

 

 同行者として、紗季も続いて車外に出る。

 

 M3[リー]は、樹木の影に隠れる。

 

「この近くには、いないみたい。行こう、紗季」

 

 梓が前進を開始しようとした時、紗季が梓の手を引いた。

 

「どうしたの?」

 

 紗季が、地面を無言で指差す。

 

「えっ!?何!何!?」

 

 紗季の突然の行動に訳がわからず、梓は思わず問いかけた。

 

「シィー」という感じで、紗季は自分の口元に人差し指を立てて、しゃがんだ。

 

 そのまま紗季は、地面を掘り始めた。

 

「あっ!?」

 

 地面の中から出てきた物を見て、梓が声を上げる。

 

「地雷!?」

 

 梓には地雷の種類は判別出来ないが、それが、対人地雷である事は、わかった。

 

 恐らく、自分たちのように戦車から降りて、偵察を行う者をターゲットにしたトラップであろう。

 

「大隊副長より、各車へ、対人地雷が設置されています!」

 

「怪我は?大丈夫!?」

 

 沙織の心配した声が、聞こえる。

 

「大丈夫です。対人地雷を踏む前に、紗季が発見してくれました」

 

「わかりました。梓さん。それ以上の偵察は危険です。戦車に戻って、本隊に合流してください。地雷処理車を出動させます。恐らく、対人地雷が設置されているという事は、対戦車地雷も設置されている可能性があります」

 

「待って、みほさん」

 

 みほと梓の通信に、愛里寿が割って入ってきた。

 

「梓さん。その近くに車影は見える?」

 

「え~と・・・」

 

 愛里寿の言葉に、梓は周囲を凝視する。

 

「見えません。もしかしたら・・・見えないように、カムフラージュしているのかも・・・」

 

「・・・そう」

 

 愛里寿は、つぶやいて、しばらく考えた後、みほに具申した。

 

「みほさん。もしかしたら、地雷処理車が来るのを待っているのかも・・・地雷処理車も撃破対象だから、地雷処理車が撃破される可能性がある。それに、相手チームの戦車が待ち伏せしている可能性もあるから・・・」

 

「わかりました。その可能性もありますね。梓さん、本隊が到着するまで、待っていて下さい」

 

「わかりました」

 

 

 

 

「敵チーム。M3[リー]の車長と装填手が、地雷原を発見!本隊と合流する模様です」

 

『移動したの?』

 

「いえ、その場で、待機しています」

 

『わかったわ・・・』

 

 美信からの通信が、そこで一瞬途切れた。

 

 おそらく、思考を巡らせているのだろうか。

 

(大隊長。考え込むなんて、珍しい・・・)

 

 偵察小隊の小隊長は、心中で、つぶやく。

 

 美信は、基本的には考え込む事は無い。

 

 どんな状況下になろうとも、美信は、即時に判断する事を心掛けている。

 

 つまり、美信が、考え込むという事は、それだけ敵チームは、恐るべき相手であるという事だ。

 

(さすがは、西住みほさん・・・初心者のみで編成された戦車道チームで、全国大会、無限軌道杯に優勝しただけはある。うちの大隊長を悩ますなんて・・・)

 

 相手は高校生と大学生で編成された連合チームである。

 

 50輌以上ある戦車を完璧に指揮し、受講生たちに慕われている。

 

 これだけのレベルを考えれば、経験だけでは無く、実力も高いという事になる。

 

(でもうちは、天満流を熟すチーム、西住流や島田流とは大きく異なる。柔軟に状況に対応出来る派閥・・・私たちが負けるはずが無い!)

 

 小隊長は、そう思うのであった。

 

『M3[リー]は・・・』

 

 ようやく大隊長が、口を開いた。

 

『大洗連合チームの大隊副長が、搭乗する戦車よ。その戦車が最前線に出ていると言う事は、西住みほさんの右腕である事は確実・・・ここは、ゲリラ戦で、M3[リー]を撃破して。M3[リー]を撃破出来たら、大洗連合チームの指揮能力を、半減させる事が出来るわ』

 

「了解しました」

 

 小隊長は、手で合図を出した。

 

 彼女が率いるⅢ号戦車の搭乗員たちが、親指を上げた。

 

 小隊長は、自身が乗るⅣ号戦車D型に、搭乗するのであった。

 

「小隊。エンジン始動!」

 

 5輌のⅣ号戦車D型と、Ⅲ号戦車が、エンジンを始動する。

 

「前進!」

 

 5輌のⅣ号戦車D型とⅢ号戦車は、茂みの中を飛び出した。

 

「撃て!!」

 

 小隊長の号令で、Ⅳ号戦車D型とⅢ号戦車の砲口が、吼えた。

 

 

 

 

 梓の耳に、かすかであるが戦車のエンジン音が、響いた。

 

「エンジン音!!」

 

 間違えるはずが無い。

 

 彼女が憧れる先輩が乗る戦車のエンジン音と、まったく同じである。

 

 そのため、梓が気付くのは、早かった。

 

「後退!!!」

 

 桂里奈が、即座にレバーを引く。

 

 M3[リー]が、後退を始める。

 

 梓の目の前の森から、Ⅳ号戦車D型とⅢ号戦車が5輌、現れた。

 

 現れたと同時に、敵1個小隊が、砲撃を開始した。

 

 しかし、梓の指示が早かったため、砲弾は1発も当たる事は無かった。

 

「全速後退!!」

 

 梓が、さらに指示を出す。

 

「彩、あゆみ、砲撃して、当てる必要は無いけど、足を止めて!」

 

「了解!」

 

「了解!」

 

「撃て!!」

 

 梓の号令で、M3[リー]の主砲と副砲が、吼えた。

 

 副砲弾は命中しなかったが、主砲弾は、Ⅲ号戦車の正面装甲を貫いた。

 

 砲塔から白い旗が、上がった。

 

『中学選抜、Ⅲ号戦車。走行不能!!』

 

 亜美の放送が、流れる。

 

「大隊副長より、各車へ、現在、敵チーム1個小隊からの先制攻撃を受けました。現在、回避運動中!しかし、1輌を撃破しました!」

 

『わかりました。あさがお中隊が、急行しています。もう少しだけ、堪えて!』

 

 沙織からの通信が、入る。

 

『大隊長より、各中隊へ、大隊副長車が攻撃を受けています。みなさんも注意して!!』

 

 

 

 

「あちゃ~」

 

 薫子が、おでこに手を当てる。

 

「美信。焦ったわね~」

 

「そうですね。姉さん」

 

 薫子の言葉に、紫子は頷く。

 

「え?どうしてですか?美信ちゃんは、相手が引いたから、それに乗じて、攻勢に出たと思うんですけど・・・」

 

 莉子が、首を傾げる。

 

「莉子。これが、同じ中学戦車道のチームだったら、攻勢に出るのは間違い無い。だけど、相手は大学選抜チームを破った大洗連合チームだ。それに大隊長は、ほとんど無の状態から、一流の戦車道チームに育て上げた西住みほさんだ。その実力を考えれば、あれは、攻勢に出るように仕向けられていると考えるのが、一般的だ」

 

 浩太が、妹に状況を、丁寧に説明をする。

 

「そうだな。美信ちゃんは、油断している訳では無いけど、相手のペースに飲まれてしまったかな・・・」

 

「ふん!そんなもの!突撃精神で、いくらでも状況を打開できる!突撃!突撃!突撃だ!」

 

 衛と圭太が、それぞれの見解を述べる。

 

「突撃か!?それは、いいかもしれないな!しかし、闇雲に突撃しても状況は打開しない!逆に相手に受け流されて、窮地に陥る可能性もある!」

 

『中学選抜、Ⅲ号戦車!走行不能!』

 

「あらあらあら~」

 

「あぁ~・・・」

 

 薫子と紫子が、声を上げる。

 

「あっ!やられちゃった・・・」

 

 莉子が、残念そうに、つぶやく。

 

「まあ、当然の結果だね」

 

 佑真が、頷く。

 

「美信。経験豊富な西住みほさんと、試合が出来るって事に、張り切ってしまったのね~まあ、仕方ない、仕方ない。ここから、どう挽回するか?楽しみねぇ~紫子?」

 

「そうですね。攻撃を受け流し、反撃でⅢ号戦車を撃破。それに奢る事無く、速やかに後退する。なかなか、侮れません」

 

「うむ!この試合、なかなか目が離せない試合になった!突出した1個小隊を、どう助けるか!?さらに、相手の流れを受け流す、西住君が、どのように、相手チームを自分の勢力範囲内に誘い込むか!見物だ!」

 

 紫子と京一郎が、それぞれの見解を述べる。

 

「あっ!!?」

 

 薫子がビールのコップに口をつけると、中が空っぽである事に気付く。

 

「お姉さん~!ビールの、おかわり~!!」

 

「は~い!!」

 

「うむ!!俺も、おかわりを頼む!!」

 

「えっ、まだ、飲むの?」

 

 佑真が、もの凄く嫌な顔をした。

 

「もちろんだ!この試合、なかなか面白い事になった!これほど、熱を帯びた試合になるのであれば、ビールがもの凄く美味く感じる!!」

 

「さすがに、もう止めた方がいいんじゃ・・・顔が真っ赤だよ。このまま行けば、試合が終わって、熱が冷めたら、そのままつぶれるんじゃないかな・・・」

 

「鳴滝、安心しろ!!俺は、そこまでやわじゃない!!この日のために、父と兄に協力してもらい、酒の修行をした!今では、かなりの量が飲める!!つぶれる事は無い!!」

 

「どうかな・・・」

 

 京一郎の言葉に佑真は、不安を隠せない表情を浮かべた。

 

 佑真としては、この後、必ず京一郎がつぶれてしまい、家まで自分がおぶって帰り、介抱しなければならないと思った。

 

「姉さん。ビールを飲み過ぎですよ。この試合が終わったら、大洗連合チームで、また宴会があるんですから、そこで、出されたお酒を飲むでしょう?そろそろ止めてもらわないと、ここで、悪酔いしますよ」

 

「紫子。悪酔いするのは、お酒が美味しい証拠よ。最良の友が、もの凄く喜んでくれている証拠なの~だから、どんどん飲まなければ、ダメ~」

 

「理由が、おかしい!」

 

 薫子の言葉に、紫子が叫ぶ。

 

 観戦だか、酒宴だか判らない状況になってしまっている2人だった。

 

「俺も、喉が渇いてきたぜ!」

 

 そんな2人に影響されたのか、圭太が、2人の紙コップにビールを注いでいる女性に、声を掛ける。

 

「ネエちゃん!俺にも、ビール・・・じゃなかった!ジュースをくれ!!」

 

「はーい!オレンジジュースと、アップルジュース。どちらにします?」

 

「両方だ!」

 

「あっ!俺、アップルジュース!莉子は?」

 

「・・・オレンジが、いいかな・・・」

 

「俺も、オレンジ!」

 

 浩太と衛も、飲み物を注文する。

 

「佑真君は?」

 

「僕は、いいよ」

 

 ビールを飲んで、出来上がっている京一郎が心配なのか、佑真は、素っ気なく断った。

 

 

 

 

「うん。まあ、仕方ないかな~美信ちゃんも、みほちゃんに憧れているからねぇ~・・・緊張して、指揮に影響を及ぼすのは仕方ない、仕方ない~・・・」

 

「・・・美信・・・」

 

 4月になって、晴れて大洗の生徒となった天満さつきの娘である、やよいは、自分の後輩である美信を心配している。

 

「やよいちゃん。やよいちゃんは、もう美信ちゃんの先輩っていうだけじゃなく、みほちゃんの後輩でもあるんだから~・・・これからは、大洗戦車道チームの一員として、みほちゃんの指揮下で戦車道を修めていくんだよ~美信ちゃんばっかり応援しちゃダメだよ~」

 

「それは・・・わかっています」

 

 大洗の制服に身を包んでいる、やよいは、コクリと頷いた。

 

「うんうん。自分の古巣である中学選抜チームが気懸りなのも、わかるよ~でも・・・ね。美信ちゃんだって、このまま引き下がったりしないよ~どんな、反撃を見せるか、楽しみだね~」

 

 どこか、間の抜けた口調で語る母親の言葉を聞きながら、やよいは、会場のモニター画面を凝視する。

 

「高校戦車道とは異なるルールである、男子戦車道のルール。それを短期間で把握して、いかに自分の戦術に組み込んで来るか・・・みほちゃんには、また、私を驚かせて欲しいな~楽しみ、楽しみ~ねぇ~しほちゃん!」

 

 さつきは、自分の後ろの席で、娘たちの試合を観戦している、しほと、千代に視線を送る。

 

「天満師範に、そのように期待されて光栄です。ですが、みほもまほも、まだまだ戦車道を極める域には至っていません。これからも、さらなる努力と鍛錬が必要です」

 

「ん~・・・厳しいね~・・・でも、みほちゃんや、まほちゃん。愛里寿ちゃんに、私はスゴ~く、期待しているんだな~・・・あのコたちが、これからの日本の戦車道を、どこまで発展させてくれるかな~・・・て」

 

 自分たちの尊敬する師範であり先輩である天満に、娘たちの事を褒められて、しほと千代は、顔を見合わせて、笑みを浮かべる。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。