ガールズ&パンツァー みほのお見合い大作戦   作:ジャーマンポテト

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第23章 大洗連合チーム対中学選抜チーム その3

 大洗連合チームと、中学選抜チームの境界線・・・

 

 大洗連合チーム側。

 

「これから、大規模な戦闘が開始されます。敵の奇襲攻撃に備えて、各戦車の整備と燃料補給を、お願いします」

 

 みほが、無線機に告げる。

 

「どうでしょうか、西住殿。各戦車の補給と整備を行っている間に、各中隊ごとに、交代で小休止をとらせては・・・?」

 

「そうですね・・・では」

 

 みほは、優花里の具申を受けて、指示に追加する。

 

「みなさん、ここは敵地間近です。狙撃手等による襲撃を警戒しながら、小休止をとってください。軽食であれば、飲食も許可します」

 

『もう始めていますわ。みほさん』

 

 ダージリンの声が、聞こえる。

 

『たんぽぽ中隊は、この間にティータイムを行うつもりです。他の中隊の皆さんも、同じ状況でしょう・・・』

 

『ああ、ひまわり中隊は、カチューシャ副隊長の強い要望で、中隊長権限で飲料水による水分補給を命じた』

 

『あさがお中隊は、アメリカン式の小休止を始めているわ!チョコレートとビスケット・・・それにコーヒータイムね!』

 

『あさがお中隊副長の西です!私たち大和乙女に、洋菓子は似合いません!ですので、氷砂糖を、舐めさせています!それと、緑茶を!』

 

『あじさい中隊も、みほさんの指示が出る前に、小休止を命じておいた。軽食もかまわないというなら、ありがたい限りだ』

 

「みなさん、それぞれのやり方で、小休止をとっていますね」

 

「それで、みぽりん。わたしたちは、どうするの?」

 

 沙織の言葉を聞き、みほは砲塔内に顔を沈めた。

 

「私たちは、警戒任務の指揮をとらなきゃ・・・梓さんと磯部さんには、苦労をかけているから、まず、彼女たちに休憩をとってもらう」

 

「OK~伝えておくね」

 

「西住殿。中学選抜の動きですが・・・」

 

「うん、偵察の話だと、偵察とゲリラ戦術を行う小部隊だけを残して、本隊は本拠点に集結中・・・」

 

「男子戦車道の公式ルールでは、戦車搭乗員による歩兵戦が、認められています。本隊を囮として、周囲に対戦火器を装備した歩兵が展開している可能性も、あります」

 

「それもあるけど・・・地雷原で、私たちの動きを止めている可能性もある・・・」

 

「ですが、ルール上、地雷と対戦車火器の所持数は、決まられています。緒戦の段階で大量の地雷を設置したので、残りは少ないかと・・・」

 

「そうだけど・・・即席爆弾を設置している可能性もある。榴弾や徹甲弾は、制限がないから・・・」

 

「確かに・・・」

 

「奇襲攻撃と、本隊による正面戦闘の可能性も有る」

 

 麻子が、つぶやいた。

 

「麻子?」

 

「島田さんの推測通りに考えるなら、その可能性が十分に高い。八柳さんは、私たちと試合が出来て、嬉しいんだ。確かに、男子戦車道の公式ルールで行う試合では、彼女たちが先輩であるが、高校戦車道最強の西住さんと、西住さんのお姉さん、大学選抜最強の島田さんとの混成チームと試合が出来るという事は、戦車道を受講する選手としては、喉から手が出る程欲しい、試合のチケットだ」

 

「どう思います?」

 

「そうかもしれない・・・」

 

 みほは、地図とメモ帳にペンを走らせながら、作戦の基本計画を練る。

 

「みぽりん!警戒部隊が、敵と遭遇したそうだよ!」

 

「被害は?」

 

「え~と、無いんだって・・・」

 

「ただの偵察ですね。そのままにして下さい」

 

「わかった」

 

 

 

 

『大隊長。警戒指揮を変わります』

 

 梓からの通信が入る。

 

「わかった。警戒指揮をお願いします。今のところ、嫌がらせ程度の威力偵察が行われていますが、これは私たちを誘い出し、隙を作るために行う陽動です。絶対に乗らないようにして下さい」

 

『わかりました。大隊長』

 

『みほ。ちょっといいかしら?』

 

 急に、エリカからの通信が入る。

 

「はい、何でしょう・・・?」

 

『少しは大隊副長だけで、行動出来るようにした方がいいと思うわ』

 

「梓さんだけで、行動できるように、ですか・・・?」

 

『そうよ。貴女も来年には卒業するのだから、後輩の育成には力を入れるべきでは無い?いつまでも、みほの腰巾着のままでは、身に付く力も身に付かないわ。私が、そうだったもの・・・まほ先輩が、ドイツの大学に留学してから、突然、隊長を任さられるようになってから、自分が前隊長のように上手く出来るか、ずっと不安だったもの・・・これまでは前隊長の腰巾着のままで良かったけど、自分が戦車道のメンバーを率いるようになって、不安で、仕方なかったわ。だから、大隊副長にも、ある程度任せて、1人立ち出来るように指導した方がいいわ』

 

『隊長!私も、そう思います!』

 

 磯部が、通信に入った。

 

『私もバレー部のキャプテンとして、部員たちを鍛えて、導いてきました!ですが、いつまでも私がバレー部のキャプテンにいる訳ではありません!後輩に、1人立ちが出来るように教育し、自分がいなくなっても、バレー部が存続出来るように導いていく事が大切です。ある程度に、澤さんが、1人立ちが出来るように、本人にも努力してもらいましょう!根性で!』

 

『そんな!私だけで、警戒部隊の指揮を行うなんて無理です!今でも大隊長の指示下で指揮を行うのがやっとなのに・・・』

 

『澤さん!そんな時こそ、根性だ!』

 

「わかりました。梓さん。責任は、私が取りますから、ある程度自由にやって下さい。大丈夫、まずい状況になったら、私が何とかしますから、梓さんが好きなようにやって下さい」

 

「そんな大役・・・私には務まりませんよ!」

 

『大丈夫よ。貴女のために、各中隊長と中隊副長が、補佐するわ。それに、歴戦を経験した猛者が貴女をサポートするんだもの・・・そう簡単に、相手チームに遅れを取る事は無いわ』

 

 エリカが、肩を押す。

 

『わ、わかりました。皆さん!よろしくお願いします!』

 

『『『歓迎するよ!新隊長!』』』

 

『ラビット。安心しなさい。誰も、みほのようになれとは言わないわ。ラビットはラビットらしく、自分の戦車道をしなさい』

 

『ケイさん・・・』

 

『あっ!男子戦車道だったわ』

 

『『『ワッハハハハ!!!』』』

 

「よろしいのですか?みほさん」

 

 華が、聞く。

 

「うん。確かに、エリカさんや磯部さんの言う通り・・・梓さんには、私がいない時でも指揮が行えるように育てる必要があるから・・・将来は、戦車道を、率いてくれないと・・・」

 

「でも、心配だよ」

 

 沙織が、つぶやく。

 

「まあ・・・西住さんの判断は、正しい」

 

 麻子が、頷く。

 

「はい、西住殿の決断は、正しいです」

 

 優花里も、頷く。

 

「大丈夫。沙織さん、華さん。梓さんに対応出来ない状況になったら、すぐに私が出るから、それに梓さんには、大局を見る能力も、身に付けて貰わないといけないから・・・」

 

「そうだね。ここは、心を鬼にして・・・」

 

「はい。華道でも、1人立ちの機会は、大切です」

 

 

 

 

「後任の育成は、大事だ!」

 

 京一郎が、ビールを飲み干しながら告げる。

 

「お姉さん!ビール、おかわりだ!」

 

「それ・・・何杯目?」

 

 京一郎のおかわり宣言に対して、ものすごく嫌そうな顔をする、佑真であった。

 

「う~ん、10杯目・・・いや、11杯目か?もう!わからん!」

 

「15杯目だよ。記憶が曖昧になってきているから、そろそろビールをやめにしないと、本当に潰れちゃうよ。僕が、また名務の家に隊長を介抱しながら、連れて行ったら、貴方の弟の宗一郎(そういちろう)が、ものすごく嫌そうな顔をするのだから・・・」

 

「それは、そうだ!だが、ここはやめる訳には、いかん!」

 

「どうして?」

 

「東雲師範が!ビールを飲んでいる!」

 

「それが?」

 

「ここで、俺が止めてしまったら、彼女に負けた事になる!それは、俺のポリシーが許さない!一度、受けた挑戦は、最後まで受ける!俺が勝つまで・・・な!」

 

「勝負なの?いつから勝負になったの?そもそも、美味しいお酒は、一緒に飲むと、より一層美味しいという発想から、飲んでいただけじゃないの?」

 

「ついさっきから、勝負になったのだ!」

 

「・・・・・・」

 

「やっぱり屋外で飲むビールは、何杯もいけちゃうわ~お姉さん~おかわり~」

 

 薫子が、空になったビールのコップを掲げる。

 

「姉さん!いい加減にして下さい!昨日だって、パーティーとティータイムで、大量のお酒を飲んじゃったじゃないですか!そろそろお酒は、お開きにしましょう!」

 

「何、言っているの紫子?ビールは、ただのジュース!お酒じゃないわ~」

 

「ジュースだったとしても飲み過ぎです!そんなに飲んだら、お腹の中が、液体でチャップチャップになるでしょう!」

 

「それに、お酒の勝負で、私が負ける訳にはいかないわ~特に、お酒に弱い名務さんに負けるなんて、末代までの恥よ~!」

 

「理由が、おかしい!第一、いつから勝負になったんですか!?」

 

「つい、さっきからよ~」

 

「昨日だって、大学選抜チームと、蝶野さんと、一緒にお酒の飲み比べ対決をしていたじゃないですか!それに、その対決でも、勝ったじゃないですか!」

 

「私は、お酒対決の大会では、日本第2位じゃダメなの~」

 

「第2位?第1位は、誰だ!?」

 

 京一郎が、叫ぶ。

 

「もちろん。尚弥さんですよ~」

 

「うむ!尚弥さんか、それなら納得だ!彼以上にお酒を飲める人は、日本にいない!」

 

「どうでもいいんだけどさ、酔っ払い2人が尚弥さんの事をそう言ったら、大酒飲みにしか聞こえないじゃないの。尚弥さんは、日本一お酒が好きで、日本一お酒に強いの。隊長と東雲のお姉さんと、一緒にしないでよ」

 

「おっ!大洗連合チームが、動き出したぞ!」

 

 京一郎が、モニターに表示されている光点と、リアルタイムで受信している戦車の生映像を見て、つぶやいた。

 

「でも、みほちゃんたち、佑真君に鍛えられてから、見違える程の成長を遂げましたね」

 

 紫子が、つぶやく。

 

「本当ね~あんなに嫌がっていたのに、やっぱり、尚弥さんが関係していると、嫌だ、嫌だと口で言っているけど、やる時はやるのね~佑真君は~」

 

「当然だよ」

 

 薫子の言葉に、佑真は即答した。

 

「尚弥さんは世界一の戦車乗りであり、名指揮官だよ。そんな人と試合をするなんて、凡人には勿体ないよ。だから、凡人では無く、それなりのレベルに達してもらわないと、僕が試合を断るよ」

 

 さっきまで、友人たちに、みほの事を手本にするようにと言っていたのに、尚弥がからむと、途端に毒舌になる佑真に、周りの者たちは苦笑する。

 

 

 

 

「おっ!姉ちゃん!ビールのおかわりだ!」

 

「は~い!」

 

 東條が、ビールの売り子に、おかわりを求める。

 

「どうぞ」

 

「お~すまない」

 

 東條は、ビールを受け取ると、一気に飲み干す。

 

「くぅ~試合で熱くなった身体を、ビールで冷やす・・・なんて、贅沢なんだ!!」

 

「そ、そうですね・・・」

 

 文科省の元役人が、ビールをチビチビ飲みながら、小さな声で、つぶやく。

 

「何だ!?その飲み方は・・・もっと、豪快にいけ!」

 

「いえ、自分は、これ以上飲むと・・・」

 

「何ィ!!俺のビールが不味くて飲めないだと!?いい度胸じゃねぇか!」

 

「いえ、そんな事は思っていません。第一、貴方のビールでは無いでしょう」

 

「細かい事を気にするな!俺のビールと言ったら、俺のビールだ!」

 

「・・・・・・」

 

「どうした?お前が、ただの捨て駒だったと聞いて、ショックが大きいか?」

 

「当然でしょう!自分はエリートです。文科省の上層部が望む事は、何でも叶えて来ました!なのに・・・」

 

 やけくそのように吐き捨てると、元役人は、紙コップに残ったビールを、一気に飲み干す。

 

「もう一杯飲め」

 

 再び、注がれたビールを、一気に飲み干した。

 

「プハー!」

 

「良い、飲みっぷりだ」

 

 先ほどまでの粗野な口調では無く、優しい声で東條は、元役人に語り掛ける。

 

「悔しいか?そうだろうな・・・だが、お前も、これで終わりたくは無いだろう?」

 

「そ・・・それは、そうです。私を使い捨てにした連中に、目に物を見せてやりたいです・・・ですが・・・そんな力は、今の私には、ありません・・・」

 

「おいおい、お前がそんな弱気でどうする?それこそ、西住みほ率いる大洗の連中を見ろ!あいつらは、周りが絶対に無理だと思っていた事を、次々と成し遂げたのだぞ。お前は、ある意味ずっと、それを見守ってきたのだぞ。彼女たちのような強い信念と努力、根性と、諦めない精神を持ち続ければ、必ず成し遂げられる!」

 

 強い口調で、激励の言葉を掛ける東條に、元役人は訝しげな視線を向ける。

 

「今の文科省の戦車道連盟の担当役は、貴方でしょう?上層部に取り入った方が、貴方にとっては出世の為に都合が良いのでは?なのに、何故、文科省に見捨てられた私なんかを気に掛けるのです?」

 

「さぁて、何でかなぁ?姉ちゃん!ビールを、もう一杯頼む。俺と、コイツの分だ」

 

「はーい!」

 

 はぐらかすような言葉の後で、東條は、ビールの売り子に声を掛けた。

 

「・・・・・・」

 

 なみなみと注がれたビールの入った紙コップを、元役人は無言で眺めていた。

 

 

 

 

『大洗連合チームが、前進を開始しました!』

 

「・・・そう」

 

 美信の元には、偵察に出した各中隊の搭乗員たちから、報告が次々と入ってくる。

 

「フフフ・・・」

 

 美信の口元に、小さく笑みが浮かぶ。

 

 思った通りだ。

 

 情報から、みほは、美信が予想した作戦のうちの1つを、採用したようだ。

 

 これに、対処するには・・・

 

「隊長、何だか楽しそうですね?」

 

 普段なら、感情を出さずに淡々と指揮を執る美信が、笑みを浮かべている。

 

 搭乗員にとっては、それは驚きでもある。

 

「楽しそう?そう・・・楽しそうね。私は、本当に楽しいの。こんな気持ちになるのは、初めて試合で、敵戦車の撃破判定を出した時以来かな・・・」

 

 こんなに楽しい気分になったのは、久し振りだ。

 

(みほさん。私に、この気持ちを思い出させてくれて、ありがとうございます。お礼に、私の全力をお見せします)

 

 美信の笑みは、決意のこもった、不敵な笑みに変わっていた。




次回の投稿は10月末を予定しています。
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