ガールズ&パンツァー みほのお見合い大作戦   作:ジャーマンポテト

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第25章 大洗連合チーム対中学選抜チーム その5

「大隊副長車より、あさがお中隊」

 

「こちらあさがお。何か様子変わった?」

 

「いえ、恐ろしいぐらいに静かです。まもなく、敵の支拠点の1つに接近します」

 

「了解。ラビット、敵の待ち伏せがあるかも知れないわ。十分に気をつけてね」

 

「はい」

 

「あっははははっ!」

 

「どうしたんですか?」

 

「ラビットって、みほの真似をしようとして、空振りしているもの・・・」

 

「え!?」

 

 梓は、頬を赤く染めた。

 

「貴女は、梓、みほでは無いわ。みほに似せる必要はどこにも無いの。貴女は貴女がやりたいようにしなさい」

 

「はい」

 

「西です」

 

「はい、西さん。何でしょうか・・・?」

 

「大隊副長殿は、お固すぎます。西住隊長の真似は誰にも出来ません。西住隊長は、とても素晴らしい方です。しかし、それに似せる必要はまったくありません。私も隊長として、自責の念に堪えられない時もありますが、そんな時こそ、根性です!!」

 

『根性!?』

 

 無線に、磯部が割り込んだ。

 

「はい!根性です!何事もこれに敵う精神は、存在しません!!」

 

「ま・・・まあ・・・それもそうね・・・たぶん」

 

 潔いくらい、きっぱりと言い切る西の言葉に、ケイは違和感を覚えながら、つぶやいた。

 

『根性論も、たいがいにしろ!!』

 

 無線に、まほが割り込んだ。

 

『大隊副長。根性論だけでは、物事を解決出来ない事がある。みほを模範にする事は大切な事だ。しかし、あくまでも模範にするだけで、真似をする必要は無い。真似をした戦術は、いざという時に応用が効かないだけで無く、対象者の悪い癖を真似する事になる』

 

「そんな西住・・・いえ、隊長に悪い癖なんてありませんよ!」

 

『そんな事は無い。大隊長は大隊長で、悪い癖がある。だが、それを挽回出来るだけの能力がある』

 

「・・・・・・」

 

『さすが、まほ。大隊長の事をよく知っている。それにチームの弱点をすぐに見つけ出す。さすがだわ』

 

『あまり褒めるな、ケイ。この部隊の弱点は、それに通ずる事もある』

 

『はぁ~!?この私がいる以上、この大隊に弱点は無いわ!ねぇ、ノンナ』

 

 さらに、カチューシャまで無線に割り込んで来た。

 

『はい、カチューシャ。ですが、絶対ではありません。ここはまほさんの話を聞いてみましょう』

 

『すまない。ノンナ』

 

『いいえ』

 

『私たちを含めて、この大隊全員が、大隊長の判断に絶対の信頼を持っている。むろん、信頼を持つのは大切だが、それは、すなわち、大隊長車が撃破されたら、その時点で、このチームは、機能不全を起こす。男子戦車道の試合の流れを見たが、ここでは、それが命取りだ。大隊長車だけを狙ってくる場合もある。組織に置いてナンバー2は不要と考える者もいるが、男子戦車道に関しては、ナンバー2も必要だ』

 

「それが、私という事ですか・・・?」

 

『そうだ』

 

『そうよ』

 

『そうです』

 

「何故、私なんですか?このチームには、大隊長に匹敵する隊長格の人が何人もいるのに?」

 

『ああ、確かにいる。だが、大隊副長ほどでは無い』

 

「何故ですか?」

 

『それは、みほから聞いたじゃない?』

 

「・・・・・・」

 

 ケイの言葉に、梓は言葉を失う。

 

「まあ、みなさん、お固い話は、そのぐらいにしましょう。そろそろ敵の支拠点です」

 

 西の言葉に、まほ、ケイ、カチューシャの空気が変わった。

 

「それでは、みなさん。まず、私が斥候として、現地に行きます」

 

『『『!!?』』』

 

 突然の梓の言葉に、全員が声を失った。

 

『・・・指揮官、先頭・・・で、ありますか?』

 

 オズオズという感じで問いかけてくる西の声に、梓は自分の考えを説明する事にする。

 

「はい。ええと・・・緒戦の戦闘で中学選抜チームは、戦車を撃破されています。最初に立てていた戦術は、破綻したとして変更してくるでしょう。考えられるのは、幾つか構築している支拠点を、重要な支拠点のみに限定して、囮の戦車隊を配置して私たちを分散させ、各個撃破に出る。または、支拠点全てを放棄し、全部隊を本拠点に集結させ、総力戦での攻勢防御に出てくる。後は・・・」

 

『そう思わせて、別動隊を組織しての、私たちの本拠点への逆転をかけての奇襲攻撃ってトコでしょう』

 

 カチューシャが、口を挟んできた。

 

「は・・・はい、そうです・・・」

 

『カチューシャには、中学生の考える事なんて、すべて、お見通しよ!』

 

 多分、エッヘンと踏ん反り返っているカチューシャの姿が、容易に想像出来る。

 

『カチューシャ。大隊長代理の言葉を遮るのは、いかがなものかと思います』

 

『わ・・・わかっているわよ!』

 

 ノンナの窘める言葉に、カチューシャは慌てて言い返している。

 

『2人とも、大隊長代理の説明の途中だ。黙るように』

 

『申し訳ありません』

 

『・・・悪かったわ・・・ごめんなさい』

 

 まほに、ピシャリと言われて、カチューシャとノンナは黙った。

『それで・・・』

 

 2人を黙らせてから、まほは、梓に話を続けるように促した。

 

「はい。それを確かめるために、威力偵察を行いたいと思います」

 

『そうか・・・わかった。だが、中学選抜チームも、このまま手を拱いてはいないだろう。くれぐれも注意してくれ』

 

「はい!」

 

『OK。ラビット、後方支援は任せて!』

 

『十分に、注意して下さいね』

 

『カチューシャが付いているわ。大船に乗ったつもりでいなさい!』

 

「はい、注意します。皆さん、ありがとうございます!」

 

 

 

 

 M3[リー]が本隊を離れて、単体で支拠点に向かって行くのを、みほは、手元の端末で確認した。

 

「梓さんは、自ら支拠点に偵察に向かうようだね」

 

「大隊長代理自ら?それって、危なくない?」

 

 それを聞いた沙織が、心配そうに言う。

 

「大隊副長が、自分で考えた事だ。西住さんが大隊の指揮を澤さんに任せた以上。ある程度には彼女の思う通りに行動させ、口を出さない事だ」

 

「それは、わかっているけど~・・・」

 

 麻子の言葉に、沙織はプゥとむくれる。

 

「ま・・・まあまあ。沙織さんが心配する気持ちもわかっています。でも、梓さんの意思を尊重したいので・・・」

 

 言い争いになりそうな、麻子と沙織をやんわりと窘めつつ、みほも思案を巡らせる。

 

(・・・中学選抜チームが、次に打って来る手段は・・・)

 

「みぽりん」

 

「は・・・はい。何でしょう、沙織さん?」

 

 思案を途中で中断されて、話しかけてきた沙織に顔を向ける。

 

「このまま、後方でジッとしているのも何だし。澤さんの向かっている支拠点とは別の支拠点に、偵察に向かうっていうのは、どうかな?」

 

「・・・偵察・・・ですか?」

 

「うん。点在する支拠点を、1つ1つ攻略していくなんて、効率悪いと思うんだ」

 

「ま・・・まあ、そうだね・・・」

 

「沙織!」

 

 操縦桿を握りながら、麻子が強い口調で沙織の名を呼ぶ。

 

「さっき、澤さんの意思を尊重すると、言っただろう?」

 

「わかっているわよ。澤さんの邪魔は、しないわよ。ただ、別動隊としてバックアップをするのはアリかなぁ~って、思っただけだもん!」

 

「そんな事を仰っていますが・・・佑真さんにアピールしたいって、下心があるのではないですか?」

 

(ギクッ!)

 

 やんわりとした口調で鋭い指摘をする華に、沙織は言葉を詰まらせる。

 

((((やっぱり・・・))))

 

 実に、わかりやすい。

 

「・・・でも、武部殿の意見にも一理あります。我々が別行動を取れば、中学選抜チームも、こちらに意識を割かねばなりません。それは、相対的に澤殿の助けになります」

 

「でしょ!!でしょ!!」

 

 優花里の言葉に、表情をパァッと明るくして、沙織はウンウンと頷く。

 

「・・・ですが、武部殿が言うと、何か・・・裏というか、邪さを感じると言うか・・・今までのやらかしもありますし・・・」

 

「何それ!ゆかりん、酷~い!」

 

「確かに」

 

「そうですね」

 

「ちょっと~!!!」

 

 華と麻子に、ウンウンと頷かれて、沙織はプンプンである。

 

「・・・あはははは・・・」

 

 みほは、乾いた笑いを浮かべるしかなかった。

 

 しかし、これでは話は先に進まない。

 

「わかりました。沙織さんの意見を採用します。私たちは、こちらの支拠点への偵察を行います」

 

「やったー!!」

 

 沙織が、ガッツポーズをする。

 

「ただし!」

 

「?」

 

「私たちの目的は、あくまでも梓さんたちの援護のための偵察です。戦闘は極力避ける方針でいきます」

 

「了解です」

 

「わかった」

 

「わかりました」

 

「わかったよ」

 

 これで話はまとまり、みほはⅣ号戦車の前進の指示を出したのだった。

 

 

 

 

「五十鈴流家元。ご無沙汰しております」

 

 新三郎と共に、娘の華の試合を観戦していた五十鈴流家元に、声をかけてくる人物がいた。

 

「あら?篁さんではありませんか。こんな所で会うなんて、奇遇ですわね」

 

 家元に声をかけてきたのは、五十鈴華の婚約者候補であり、五十鈴流と同じ、華道の名家である御子神流家元の子息である。

 

 そして後、半月後に迫っている大洗連合チームの試合相手である男子戦車道社会人チームの中隊長でもある御子神篁であった。

 

(ひょえ~・・・男の俺でも惚れ惚れする程の、超絶イケメン・・・いや、そんなレベルは超越している・・・)

 

 思わず見とれている新三郎であった。

 

「向こうの招待席で観戦いましたが、家元のお姿を拝見しましたので、ご挨拶をと思いまして、こちらに参りました。隣に座ってもよろしいですか?」

 

「ええ、どうぞ」

 

 家元も、にこやかに応じ、御子神は家元を挟んで、新三郎の反対側の席に座る。

 

「貴方が、新三郎さんですね?」

 

「は・・・はいっ!!」

 

 御子神に見とれていた新三郎は、いきなり声をかけられ思わず大声を出してしまった。

 

「はしたないですよ。新三郎」

 

「も・・・申し訳ございません・・・」

 

「失礼。急に声をかけて、驚かせてしまいましたね。貴方が、華さんが戦車道を修めるのに力添えをしたと聞いていたもので、一度直接お会いして、お礼を言いたかったものですから・・・」

 

「お・・・お礼ですか・・・?」

 

 礼を言われるような事は、していないと思うのだが。

 

「私事で恐縮ですが、私が男子戦車道を志した時に、父である御子神流家元に、強く反対されました。『華道家の嫡子として、あるまじき』という事で、勘当を言い渡され、一時父とは絶縁状態となっていましたが、昨年、父から連絡がありました」

 

「は・・・はあ・・・」

 

「昨年、五十鈴流の生け花展が開かれた際、父も招かれていたようですが、そこで私と同じ様に戦車道を志した華さんの作品を観て、いたく感銘を受けたそうです。私の父は、伝統を重んじる傾向があり、厳しい方ではありますが、華さんの生けた花々が、華美さと繊細さの調和だけではなく、花が本来持っている強靭な生命力とも言うべき力強さを感じられたと申しておりました。一つの事を極めるには、ただただ精進するだけではない。とも思ったようで、私が男子戦車道を志す事を、控えめではありますが許していただけました。もちろん、華道家としての精進も怠らないというのが条件ではありますが。貴方の言葉は、華さんが、自分の道を切り開いて行くという切掛けになっただけでは無く、私と父との和解にも一役を買って下さったのです。その事には、感謝しきれません。ありがとうございました」

 

「・・・・・・」

 

 もの凄い美形に頭を下げられ、新三郎としては、どう反応していいか困ってしまう。

 

 そこまで考えて、華の背中を押した訳では無いのだが・・・

 

「お・・・いえ・・・私なんて、大した事はしていませんよ。すべては、お嬢・・・いや、華お嬢様がご自分で考え、お決めになられた事です」

 

「そんな事はありませんよ、新三郎。華が、戦車道を志した時、私は猛反対しましたね。以前の華なら、それで諦めたかもしれません。ですが、お前は最初から華が自身で決めた事に賛成し、味方であり続けたではないですか。もちろん、良いお友達に恵まれたという事もあるでしょうが、華は、自分の決めた事を貫き、華道でも新境地を開く事が出来ました。お前という理解者がいたからこそですよ。もちろん、まだまだ精進は必要ですが、華は、これからも自分の華道というものを見つけていくでしょう。お前のおかげですよ」

 

「・・・奥様・・・」

 

 家元から優しい言葉をかけられて、新三郎は涙が出そうになった。

 

「そうですね。華さんは、素晴らしい女性だと思います。私も、彼女を見習って、戦車道にも華道にも、精進していきたいと思います」

 

 

 

 

 Ⅳ号戦車は、中学戦車道チームの築いた1つの支拠点に近付いていた。

 

 一定の距離を保って、みほは、Ⅳ号戦車を停車させた。

 

「ここからは、徒歩で偵察に向かおうと思います」

 

「はい!はーい!!私が、行きまーす!!」

 

 沙織が張り切って、立候補をする。

 

「ダメだ!沙織、お前は隠密行動には向いていない。ここは、秋山さんに任せるべきだ!」

 

「偵察くらい、出来るもん!」

 

 麻子に即座に却下されて、沙織はプウッとむくれる。

 

「まあまあ・・・では、沙織さんと優花里さんの2人で行ってもらうという事で・・・」

 

「やったー!!!」

 

 苦笑しながら出してきたみほの妥協案に、ハイテンションで、やる気満々になっている沙織。

 

「西住さん。沙織を甘やかすのは良くない」

 

「何でよ~!?」

 

「あはははは・・・」

 

 すかさず苦言を呈する麻子に、反発する沙織。

 

 いつも通りである。

 

「わかりました。沙織さんにも偵察の経験を積んでもらうというのは、大事かもしれません。私が付いて行きますので、問題は無いと思います」

 

 少し、心配そうな様子ではあったが、優花里も承諾した。

 

「くれぐれも無茶はしないで下さい。恐らく、支拠点の周囲には地雷原があると思われます。それらの位置の把握に努めて下さい」

 

「OK!任せて~!」

 

「・・・大丈夫でしょうか・・・」

 

 ボソッと、華がつぶやく。




 お読みいただきありがとうございます。
 次回の投稿は2023年の3月末を予定しています。
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