ガールズ&パンツァー みほのお見合い大作戦 作:ジャーマンポテト
しほとの話を終えたみほたちは、みほの部屋にいた。
「何なの!勝手に結婚相手を決めるなんて!!みぽりんの気持ちは、どうなるの!!?」
沙織は、みほの部屋に入った途端に、感情を爆発させた。
「あの役人!うちの学校を廃校にできなかったらって、今度はみぽりんに狙いをつけるなんて!!」
沙織の爆発は、収まる気配を見せない。
「落ち着け、沙織」
麻子は、使用人が用意したケーキに、フォークを刺しながら告げる。
「そうですよ。沙織さん」
「華も麻子も、平気なの!!?」
「平気と言いますか、家元の娘である以上、このように親同士の合意の上で、結婚相手が決められるのは当然の事かと・・・それに西住流家元も、先ずは、お見合いをしてからと仰っていましたし・・・みほさんの意志を無視してという事にはならないでしょう」
「名家である以上、家の名に恥じないようにと、こういう風に結婚が決められるのは当然だ。本人同士の相性も大事だが、それと同等に、家と家との繋がりも重要視される場合もある」
華と麻子が、出されたケーキを食べながら言う。
「ぐぬぬぬぅ~!!」
沙織としては、納得がいかないようだ。
「あの~・・・」
優花里が、恐る恐る手を挙げる。
「武部殿。まずは西住殿の気持ちを考えてから、感情を爆発させるべきでは・・・西住殿の気持ちを無視しています」
優花里の指摘に沙織は、はっ、となった。
「ごめんね、みぽりん。私、みぽりんの気持ちを、考えてなかった」
「いいの、いいの。沙織さんのその気持ちは、とてもうれしいものだから・・・」
みほが、手を振る。
「みほさん。お相手となる殿方は、どう言った方ですか?みほさんとお母さまの話を聞いていますと、まったく知らない殿方ではありませんようですし、差支えがなければ教えていただけ無いでしょうか?」
華が聞くと、みほは立ち上がり、本棚から1つのアルバムを取り出した。
「尚弥お兄ちゃんは、お母さんが戦車道で、唯一、頭が上がらない人の息子なの。戦車道を始めた時は、師範であり、姉のような存在だった人なの。そんな人でもあって、息子の尚弥お兄ちゃんとも交流があったの」
みほが、手に取ったアルバムのページを開いていく。
アルバムには、みほと姉のまほが幼い時の写真があった。
そして、その写真にみほの結婚相手となる予定の少年の姿があった。
「ずいぶんと歳が離れているようだが・・・」
麻子が、つぶやく。
「うん。10歳ぐらい離れているかな」
「10歳!?離れすぎじゃん!!」
沙織が反応する。
「あの・・・天満尚弥殿って、あの天満尚弥殿ですか!?」
優花里が、アルバムを見ながら、叫んだ。
「知っているの?ゆかりん」
「知っているも何も・・・武部殿も知っています!男子戦車道の月刊誌には、必ず載る人物ですから!」
「え?」
沙織は、カバンから男子戦車道の月刊誌を取り出した。
「持っているんだ・・・」
みほが、苦笑した。
「もしかして、この人!?」
沙織がページを開き、写真に写っている人物を指差す。
「うん」
「そうです」
みほと共に、優花里がうなずく。
「でも、この人か~・・・まあ、そこそこイケメンには分類されるけど・・・普通だね」
「何気にひどいな・・・」
「沙織さん。いくらなんでもその言い方は、ありませんよ」
麻子と華が、肩を竦める。
「だって、男子戦車道の隊長と言えば、この人でしょう!」
沙織が別のページを開き、1人の人物を指差す。
「沙織の好みだな・・・」
「・・・ですね」
「そうですね・・・」
「あははは・・・」
麻子、華、優花里、みほが、やっぱりかと言った感じの表情になった。
「だって、カッコいいじゃん!」
沙織が叫ぶ。
「ですが・・・この方は、男子戦車道日本代表チームの中隊長です。大隊長は、西住殿のお相手の方でして・・・」
「そうなの!?顔は普通なのに、そんなに強いの!?」
「沙織。顔で判断するな!」
麻子が、突っ込む。
「このお写真を見る限り、みほさんも、みほさんのお姉さんも、大変楽しそうですね」
華が、お菓子を食べながら、アルバムを見る。
「ん?新しい男が現れた」
「え!?」
沙織が、反応する。
「どこ?どこ?」
「ここ」
沙織が、食いつくかのようにアルバムを見る。
「この男の子ですね」
優花里が、指を指す。
「ああ、虎次郎お兄ちゃんだね」
みほが、答えた。
「また、みぽりんのお母さんの、知り合いの息子?」
「ううん」
みほが、首を振る
。
「虎次郎お兄ちゃんは、従兄だよ」
「従兄!?」
「西住さんの、お姉さんに似ているな」
麻子が、虎次郎の写真を見ながら、つぶやく。
「本当ですね。西住殿のお姉さんに、かなり似ていますね」
優花里が、うなずく。
「みぽりん」
沙織がジュースを飲みながら、みほに顔を向ける。
「何?」
みほが、顔を上げる。
「こんなに男の人と面識があるんだったら、私に1人紹介してくれてもいいじゃん!」
「あははは・・・そうだね・・・」
沙織の言葉に、みほが苦笑した。
「みほさん」
華が、顔を上げる。
「面識があるのでしたら、一度、お会いになってみては、いかがですか?」
華が、提案する。
「そうだな。西住さんがよければ、見合い相手の男に、会うべきだろうな」
麻子も、うなずく。
「もちろん!私たちも、同行します!」
優花里が、声を上げる。
「は~い!私も!私も!」
「沙織は、どちらかというと、男子たち・・・特に、このイケメンに、会いたいだけだろう?」
「ひど~い!私だって、みぽりんが心配だし、男だらけの世界に、みぽりん1人を行かせる訳がないじゃん!」
「確かに、そうだな」
「男だらけじゃ、無いかな・・・」
みほが、肩を竦める。
「それで、どうします?西住殿?」
優花里が、顔を近づける。
「そうだね。その方が、いいよね」
みほも、覚悟を決めた。
「お母さんに言って、尚弥お兄ちゃんに会えるかどうか、聞いてみる」
「あ~、質問!男子戦車道って?私たちの戦車道と、何が違うの?」
沙織が、手を挙げる。
「月刊誌を、読め!」
麻子が、即答する。
「・・・・・・」
沙織が、言葉を失う。
「麻子のいじわる~」
「すまん、すまん。その事については、秋山さんに聞いたらいいじゃないか」
「ゆかりん。教えて」
「わかりました」
優花里が、簡単に説明した。
男子戦車道は、戦車道の試合とは違い、フラッグ戦又は殲滅戦では無い。
拠点制圧戦である。
拠点制圧戦とは、双方のチームに本拠点と支拠点があり、これを制圧するのがルールだ。
基本的には、本拠点を制圧すれば試合が終了する。
本拠点を制圧及び制圧阻止のために、戦車戦を行う。
このため、ルール上、一回戦及び二回戦は、戦車を20輌まで使用可能、準々決勝からは50輌までの使用が可能になる。
そのため、戦車道とは違う激戦が繰り広げられる。
勝利条件は拠点制圧であるが、3つの勝利条件がある。
1つは、単に拠点を制圧する。
2つ目は、補給部隊を殲滅する。
3つ目は、敵戦車をすべて撃破する・・・である。
「前の2つは違いますけど、3つ目は、大学の戦車道の殲滅戦と、同じなのですね」
華の言葉に、みほが頷き、捕捉を加える。
「でも、もう1つ・・・極めて難易度が高い勝利方法があるんだよね」
「その通りです。西住殿!」
優花里の説明に、力が籠る。
男子戦車道の勝利条件で、もっとも難易度が高く、極めて不可能に近いものがある。
それは、双方の参加戦車に、1輌たりとも撃破判定を出さず、相手の拠点を制圧する事である。
「何それ~!?」
沙織が、首を傾げる。
「つまり、相手チーム及び自分のチームの戦車を、撃破せず、撃破されずに、相手の拠点のみを制圧する事です」
優花里の説明に、沙織が驚きの声を上げた。
「そんなの無理じゃん!!」
「それですから、難易度が高いのではありませんか?」
華が、沙織に告げる。
「西住さんなら、できそうな気もするが・・・?」
麻子に言われて、みほが考え込んだ。
「う~ん。理屈や理論は理解しているけど、それを実践するのは難しいかな・・・」
「やっぱり、みぽりんでも、無理なんだ・・・」
沙織の言葉に、みほがうなずく。
「うん」
「それが・・・ですね」
優花里が、胸を張る。
「その不可能を実現させた隊長が、いるのです」
「もしかして・・・」
沙織が、察しがついた表情を浮かべた。
「そう」
麻子が、うなずく。
「天満尚弥殿です」
「それも、五連覇を成し遂げたんだよね」
「五連覇!?」
みほの言葉に、沙織が声を上げる。
「男子戦車道の月刊誌に、大きく書かれていますよ」
華の言葉に、麻子が言った。
「五十鈴さん。沙織は、男子戦車道については、イケメンにしか目がいっていない。他に目がいかないから、そんな事を言っても無駄だ」
「ですが、無撃破で五連覇という文字は、男子戦車道の月刊誌の表紙に大きく書かれていましたし、ニュースでも放映されました」
「無駄だ。男子戦車道に関しては、イケメンしか頭にない」
「ううう~・・・麻子のいじわる~」
「すまん。沙織」
ず~んと、沈む沙織に、少し言い過ぎたと反省する麻子だった。
「ゆかりん。でも、どうやって、相手チームや味方チームの戦車を撃破せずに戦えるの?」
「それも書いているんだけど・・・」
みほが、肩を竦める。
「それはですね。相手戦車の履帯や砲身に砲弾を撃ち込んで、一時的に行動不能又は攻撃不能にするのです」
「そんな神業のような事が、できるの!?」
「はい、私も、最初に読んだ時は、まったく信じられませんでしたが、それが可能なようです」
華が、言う。
「是非とも、天満尚弥さん率いる男子戦車道の選抜チームの砲手には、ご教授を承りたいと思います」
華は、砲手であるため、そのような芸当ができる砲手たちに会ってみたいと考えていた。
「みほさん。宜しければ、天満尚弥さんに砲手の人と面会する時間を、設けてくださいますよう、お願いできますか?」
「うん。私のお願いなら、尚弥お兄ちゃんは、絶対に引き受けてくれるから、お願いしてみるね・・・あっ!」
「どうしました西住殿?」
「尚弥お兄ちゃんの地元には、そこだけしか売っていないボコのぬいぐるみがあるって、愛理寿ちゃんが言っていた。ついでに、お願いしておこう」
「西住さん。ついでにいいか?」
麻子が、手を挙げる。
「何?麻子さん」
「天満尚弥さんの地元には、介護用品や健康維持のための品物が数多くあると聞く、何かオススメがあるか聞いてくれないか?」
「そうだね。尚弥お兄ちゃんの地元は、高齢化問題に積極的に取り組んでいて、そういった品物が数多くあるものね」
みほが、うなずく。
「あっ!じゃあ、私も!!私も!!」
「無理かなぁ・・・」
「無理ですね」
「武部殿。さすがに無いと思います」
「沙織。そんな都合良くはいかない」
みほ、華、優花里、麻子という順で、沙織が言う前に否定した。
「グス・・・グス・・・」
沙織が、落ち込む。
「こうして見ると・・・男子戦車道の試合は、実際の戦闘に近いな」
みほの部屋の隅で、沈んでいる沙織を放っておいて、麻子がつぶやく。
「男子戦車道は、私たちの戦車道とは違い、戦術の研究や、各国の国家間の関係を良好にする目的が強いですから」
「戦争は、とても悲しいものです。悲しい事を起こさないために、代わりのもので、互いを競い合い、関係を築いていくのは、素晴らしい事です」
華が、両手をポンと叩いて告げた。
「うん。私たちの戦車道は競技としての意味合いが強いけど、男子戦車道は国際平和を維持するための目的だから、すごいよね」
みほが、感心したようにつぶやく。
「しかし、あの文科省の役人は、男子戦車道の認知度を高めるとか言っているが、男子戦車道の認知度も、十分にあると思うが、何が目的なのだろう?」
「それは、ですね」
麻子の疑問に、優花里が答える。
「男子戦車道は、世間一般的には軍事演習として認識されています。私たち戦車道のように単純なスポーツ・・・武道として見られる事がありません。まあ、これは文科省の管轄では無く、防衛省の管轄、という事が大きいですが・・・」
優花里の言う通り、世界的に見ても戦車道は、女子の嗜みとして、武道として扱われているのが一般的である。
そのため、各国の教育機関が管轄している。
男子戦車道は、戦技研究等の軍事目的が強いため、各国の軍事機関が管轄している。
「前生徒会が言っていたけど、戦車道の世界大会が行われる事も、関係しているのかな?」
いつの間にか、沙織が復活していた。
「おぅ。復活したか、沙織」
「それも関係しているかもしれません。男子戦車道も、近年は人も少なくなっていますから、多くの人に、男子戦車道の認知度を高めるためにも行われるでしょう」
「でもでも、男子戦車道は、中学生からでも見習い自衛官としての身分が、与えられるんだよね」
「はい、高校や大学を卒業後、一定期間の自衛官として勤務する事が義務付けられていますが、基本的には中学生から見習い自衛官としての身分が与えられ、男子戦車道をしながら、自衛官としての教育も受ける事になります」
「じゃあ!天満尚弥さんも、自衛官として勤務した事があるの?」
「それも、書いていますが・・・」
華が、肩を竦める。
「うう~・・・華のいじわる~」
沙織が、悲しそうな顔をする。
「ええ。天満尚弥殿は、陸上自衛隊の2等陸佐の階級が与えられ、戦車部隊の大隊長を務めていたそうです」
「年齢を考えれば、かなりの大抜擢だな」
麻子が、驚く。
「そうだね。20代後半で、2等陸佐と言うのは、かなりすごいかな」
みほが、うなずく。
「質問!私たちの戦車道の講師、蝶野教官の階級は、どのくらいだったけ?」
「1等陸尉だね」
沙織の質問に、みほが答える。
「あんまり気にした事無いから、今まで気にした事は無かったけど・・・それって、どのくらい?」
沙織の質問に、優花里が答える。
「それはですね。1等陸尉も2等陸佐も自衛隊の幹部に区分される階級です。幹部は尉官、佐官、将官の3つがあります。蝶野教官は、尉官の最上級である1等陸尉。天満尚弥殿は、佐官の中間である2等陸佐です」
「なるほど」
わかりやすい説明に、沙織はフンフンとうなずいている。
「ちゃんと、月刊誌を読んでいれば、普通にわかる事なんだが・・・」
ボソッと麻子が、つぶやく。