ガールズ&パンツァー みほのお見合い大作戦   作:ジャーマンポテト

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 みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れ様です。


第3章 男子たちの四方山話+a

 天満家が管理する道場で、木刀を持った2人の男性が、お互いを睨みあっている。

 

「どこからでも、かかってこい!」

 

 天満尚弥が、天満流門下生の男子中学生に告げる。

 

「はいっ!!」

 

 男子中学生は、元気よく返事をした。

 

「やあぁぁぁ!!」

 

 男子中学生は、木刀を頭より高く掲げた状態で、突っ込んできた。

 

「はぁっ!」

 

 尚弥は横なぎの態勢で、木刀を相手の脇腹に叩き込んだ。

 

「ぐはぁ!?」

 

「それまで!勝負あった!」

 

 審判役の西住虎次郎が、手を挙げる。

 

「打ち込み方は、いい線いっているが、踏み込みが甘い」

 

 尚弥が、手を差し出す。

 

「ありがとうございます」

 

 男子中学生が、手を握る。

 

「いい握りだ」

 

 尚弥は、そのまま立ち上がらせる。

 

「では、少し休憩した後、もう1本、やるぞ」

 

「「「はい!!」」」

 

 門下生である、他の男子中学生たちが、立ち上がる。

 

「お疲れ様です。隊長」

 

 虎次郎が、タオルを渡す。

 

「ありがとう」

 

 尚弥は、タオルで汗を拭く。

 

「あいつら、去年とは見違える成長だな」

 

 虎次郎が、スポーツ飲料を飲む男子中学生の門下生たちに、顔を向けながら感想を口にする。

 

「だから、楽しい」

 

 尚弥は、水筒を持つと喉を潤す。

 

 スポーツ飲料が入っているため、失われた水分補給が即可能である。

 

「俺たちは、社会人として次の人材を育成するのも役目だ。彼らも高校生となり、大学生となっていく。そして、自衛隊で、曹候補学生又は幹部候補生に進む」

 

 男子戦車道は、防衛省が管轄している。

 

 文部科学省が管轄する戦車道とは異なり、男子戦車道は防衛省が毎年2回実施している選考試験を受けて、合格しなければならない。

 

 合格すれば、男子戦車道の受講生として認定され、防衛省から中学生及び高校生であれば見習い自衛官としての身分が与えられ、大学生及び社会人であれば予備自衛官としての身分が与えられる。

 

 中学生及び高校生、大学生は、防衛省が学費を負担する変わりに、学業と男子戦車道だけでは無く、一定期間の間、自衛隊での教育訓練を受ける義務がある。

 

 高校を卒業後は、男子戦車道受講生は、曹候補学生となり、教育訓練後、曹として6年間、常備自衛官として勤務する。

 

 大学を卒業後は、男子戦車道受講生は、幹部候補生となり、同じく教育訓練後、幹部として4年間、勤務する。

 

 階級は、男子戦車道の受講年数及び成績等で、大きく変わる。

 

 天満尚弥は、幹部候補生学校を卒業後、1等陸尉として入官した。

 

 彼の副官である西住小次郎も、1等陸尉として入官している。

 

 2人は、陸上自衛隊機甲科に配属され、機甲科隊員として勤務した。

 

 そこでの成績も高く、異例の速さで昇進し、尚弥は2等陸佐、虎次郎は3等陸佐まで上り詰めた。

 

 その後、常備自衛官から予備自衛官に転向し、男子戦車道天満流の戦車隊幹部として勤めている。

 

 基本的に男子戦車道にいる間は、常備自衛官としての勤務年数が過ぎても、予備自衛官として勤務する事になる。

 

「天満師範代!」

 

 門下生の男子中学生が、声をかけた。

 

「どうした?」

 

「お客様です」

 

「客?」

 

 尚弥が顔を上げると、道着姿の陸上自衛隊富士教導団戦車教導連隊第1戦車中隊長の蝶野亜美1等陸尉が現れた。

 

「天満2佐。お久しぶりに、お相手をお願いします」

 

 亜美が、木刀を持って道着姿で現れる。

 

 

 

 

「君たち、休憩しながら、試合の見学ができるぞ」

 

 虎次郎が、門下生の男子中学生たちに告げる。

 

 門下生の男子中学生たちが、一斉に注目する。

 

「それでは両者、位置について」

 

 虎次郎が、審判役になる。

 

 尚弥と亜美が木刀を構えたまま、位置につく。

 

「それでは、いざ!」

 

「まいる!」

 

 亜美と尚弥が、口々に言った。

 

「始め!!」

 

 虎次郎の声で、亜美が床を蹴った。

 

 そのまま木刀を掲げ、尚弥に突っ込む。

 

「やあぁぁぁ!!」

 

 亜美は、そのまま木刀を振り下ろすが、尚弥は、木刀で防ぐ。

 

 木刀で防がれ、亜美の木刀が弾かれる。

 

 しかし、亜美は素早く木刀を持ち替え、そのまま横なぎの攻撃を行う。

 

 尚弥は、同じく木刀で防ぐ。

 

「さすがですね。私の攻撃を難なく防ぐとは・・・」

 

 亜美が、感心するように言った。

 

「次は、こちらから行くぞ!」

 

 尚弥は、木刀は高く持ち上げて構える。

 

「あの構え!?」

 

「まさか!?」

 

 門下生の男子中学生が、叫ぶ。

 

「示現流!!?」

 

 尚弥は、示現流の姿勢になると、そのまま一気に距離を詰める。

 

 亜美は、一切、動かない。

 

(ぎりぎりで、躱すつもりか・・・?)

 

 虎次郎が、心中でつぶやく。

 

「いやぁぁぁぁ!!!」

 

 尚弥は、亜美の目の前まで急接近すると、そのまま木刀を振り下ろす。

 

 しかし、亜美は、紙一重で、それをかわす。

 

「隙あり!」

 

 一撃必殺の攻撃を外し、無防備となった尚弥に、木刀を打ち込む。

 

「!?」

 

 亜美は、驚いた。

 

 完全に隙をついたと思ったのに、尚弥は、その打ち込みを躱した。

 

 尚弥は床を蹴り、距離をとり、亜美の打ち込みを躱したのである。

 

 だが、亜美は、そのまま床を蹴り、さらに追撃をかける。

 

 が・・・

 

「隙あり!!」

 

 尚弥の掛け声と共に、尚弥が放った木刀が、亜美の腹部に直撃する。

 

「ぐはっ!?」

 

 亜美は、そのまま床に倒れる。

 

「それまで!勝負あった!」

 

 審判役の、虎次郎が叫んだ。

 

 亜美は、脇腹を押さえて激しく咳き込む。

 

「最後の打ち込み、焦ったのが災いしたな」

 

 尚弥が、手を差し出す。

 

「そ・・・そのようですね。隙をつけたと思ったのに・・・」

 

 亜美が、脇腹をさすりながら、差し出された手を握る。

 

「おお!」

 

「すげぇ~!!」

 

 門下生の男子中学生たちが、歓声の声を上げる。

 

「私も、まだまだですね・・・」

 

「いや、そんな事は無い。最初の打ち込みも、なかなかのものだった。木刀で防いだ時、かなりの衝撃があった」

 

 尚弥と亜美は、一通り言った後、互いに一礼した。

 

「師範代。タオルを」

 

「蝶野様も、タオルを」

 

 門下生の男子中学生たちが、駆け寄る。

 

「ありがとう」

 

「ありがとう」

 

 尚弥も亜美もタオルを受け取り、汗を拭く。

 

 

 

 

「ミャ~オ!」

 

 かわいい猫の鳴き声がした。

 

「ん・・・いいぞ」

 

 尚弥が足下に顔を向けると、キジトラの猫が顔を上げている。

 

 飼い主からの許可を得ると、そのまま床を蹴り、尚弥の道着にしがみつき、よじ登って肩に乗った。

 

「ミャ」

 

 一鳴きすると、ゴロゴロと喉を鳴らしながら、尚弥の頬に自分の顔を擦りつける。

 

「大きくなりましたね」

 

 亜美が手を差し出し、猫の顎を撫でる。

 

 猫は、気持ちよさそうに目を細める。

 

「何て、名前でしたっけ?」

 

「美緒(ミオ)だ」

 

「ミーちゃん。おいで~」

 

「・・・・・・」

 

 名前を聞いておいて、愛称で呼ぶとは、どういうつもりなのか、と言った目で見る尚弥だった。

 

「こっちの方が、呼びやすいですから」

 

 そんな視線に気づいた亜美が、笑いながら言う。

 

 

 

 

 門下生の男子中学生たちの稽古は、虎次郎に任せて、尚弥は来客である亜美を、応接室に案内した。

 

 どちらも道着姿では無く、尚弥はスーツ姿で、亜美は陸上自衛隊の制服姿である。

 

「天満2佐。お元気そうで何よりです」

 

 亜美は門下生が出した緑茶を、飲みながら言った。

 

「その呼び方はよせ。今の私は、予備2佐だ」

 

「予備自衛官なのは知っていますが、この呼び方が定着していますから・・・」

 

「それで・・・教導隊の方は、どうだ?」

 

「充実しています。ですが、2佐の指揮下にいた時の時代が懐かしい限りです。今も覚えています。74式戦車で10式戦車を撃破判定した時の訓練を」

 

 尚弥が常備自衛官だった頃、彼は、陸上自衛隊富士学校部隊訓練評価隊第1戦車小隊に所属していた時があった。

 

 その時、陸上自衛隊機甲科10式戦車部隊から選抜された精鋭の戦車乗りたちで編成された10式戦車小隊と、天満尚弥1等陸尉(当時)率いる74式戦車小隊が、実戦形式の演習を行った。

 

 4輌の10式戦車は、ことごとく撃破判定が出され、74式戦車4輌は2輌が、撃破判定が出され、1輌が大破判定だった。

 

 当時、亜美は、2等陸尉だったが、10式戦車の車長として、天満尚弥と演習を行った。

 

 亜美の乗る10式戦車は最初に撃破されたが、西住流に恥じない攻撃を行い。見事に74式戦車を1輌撃破させた。

 

「あの時は、勝利の運がこちらに向いていた。実際、74式戦車では、10式戦車を五分五分の条件下で勝利するのは難しい。不可能では無いが、非常に困難だ」

 

「ですが、2佐は、それをやりました」

 

「私だけでは無い。私の部下たちが優秀だった。戦車は1人だけでは動かない。戦車に搭乗する乗員が、お互いを信頼し、お互いの性格や癖等を完全に把握できて、戦車を動かせる」

 

 尚弥の言葉に、亜美はうなずく。

 

「大洗女子学園の戦車道チームが、全国大会で優勝した時は、2佐は大変驚愕されていましたね」

 

「西住みほさんは、確かに優秀だ。しかし、あのような寄せ集めの戦車と、戦車の乗車経験も無い者たちを短期間で、育成し、優勝候補の学校を、ことごとく倒していく等、私には信じられなかった」

 

「みほちゃんが、大洗女子学園の戦車道チームの隊長になって間もない頃、私に相談をしてきました」

 

 亜美が、懐かしそうな表情を浮かべる。

 

「彼女は、黒森峰で十連覇を逃した事について、かなり気に病んでいました。まあ、それだけでは、ありませんでしたが・・・」

 

「戦車が川に水没し、その乗員を救助に向かったが、その乗員のほとんどが、その後すぐに転校した事が決定的になった・・・」

 

「私は、みほちゃんに、自分の信じる道を進みなさいといいました。物事の是非だの関係無い。その時に、最善と思われる行動が大切だと」

 

 亜美の言葉を聞きながら、尚弥が笑みを浮かべた。

 

「どうしました?」

 

「いや、みほさんが決勝戦の前日に私に電話してきた時も同じ事を聞かれ、答えを言った後、みほさんが蝶野1尉に同じ事を言われたと言った」

 

「2佐は何と?」

 

「川に転落した戦車の搭乗員を助けに行く事と、そのまま試合を続行する事、私なら、救出を優先する。それで十連覇を逃しても敗北では無い。ある意味では勝利だ。川に転落した戦車を見捨てて、誰かに救出を任せ、試合を続行する。そんな十連覇の勝利等、こっちから願い下げだ。それは西住家元も同じ考えだった」

 

「そうです。家元は、西住流の教えを、みほちゃんに再度教えて、自分のした行動に胸を張るように言いました。しかし彼女は、その言葉を違った方向に解釈してしまい、戦車道から離れてしまった・・・」

 

 尚弥は、緑茶を飲む。

 

 

 

 

 亜美との面会を終えた尚弥は、帰り支度を始めた。

 

「どうだ。門下生たちの様子は?」

 

「レベルは問題無い。来年、高校生になる者たちは心技体、どれも問題無いレベルに成長した。後は、経験を積ませるだけだ」

 

「そうか・・・彼らには決定的な敗北を、経験させてやりたいがな・・・」

 

「確かに」

 

 尚弥と虎次郎が、互いにうなずく。

 

「従妹も、決定的な敗北を経験して、自分の道を見つける事ができた。単なる敗北では無く、決定的な敗北を経験するのは、人の成長には不可欠だ」

 

「蝶野1尉とも話したが、黒森峰の十連覇をかけた決勝戦は、ある意味、黒森峰の勝利であり、プラウダの勝利でもあった。しかし・・・」

 

「従妹が戦車道から離れてしまったため、結局、プラウダの一本勝ちだった」

 

「そうだ。西住流家元も、十連覇を逃した事については、さほど気にしてはいなかった。まあ、十連覇を逃した事について、とやかく言う輩はいたが、所詮は、外野の意見に過ぎない。そんなものは無視していい」

 

「そうだ。だが、従妹は、それができなかった。もともと、強く胸を張る事ができない性格だったから仕方が無いがな・・・」

 

「しかし、その名誉を挽回するチャンスが、1年後に訪れた」

 

「もともと古い仕来りや、誰かの思惑があった訳でも無いから、従妹にとっては、やりやすかったのだろう。それに、そういった物に囚われない友人たちが、彼女を支えた。だからこそ、優勝という旗を掲げる事ができた」

 

「ミャ~」

 

 飼い猫の美緒が、肩に乗った。

 

「よしよし、帰るぞ」

 

「ミャ、ミャ」

 

 美緒は鳴くと、そのまま床に降りて、キャリーバッグの中に素直に入った。

 

「さてと、明日の予定は?」

 

 帰り支度を終えた尚弥が、秘書に聞いた。

 

「はい、明日は、午前中に男子戦車道の練習試合が、あります・・・その後、午後からは親善試合が・・・」

 

 その時、ポケットに入れてあるスマートフォンから、着信音が鳴った。

 

「すまん、電話だ」

 

「どうぞ」

 

 着信者が誰か、スマホの画面を確認した。

 

「もしもし、何だ?」

 

『つれないなぁ~・・・母親からの電話を、そんなに嫌そうにしなくても~・・・』

 

「これから帰るところだ。急ぎの用でもなければ、家に帰ってからでもいいだろう」

 

『急いでいると言えば急いでいるし、急いでいないと言えば急いでいないんだけどねぇ~・・・』

 

 どっちだ!?と、突っ込みを入れたくなるような言葉が返って来る。

 

「だから、何だ?可及的速やかに用件を言え!」

 

「はいは~い。西住本家の家元から連絡があったんだけど~近いうちに、みほちゃんと、みほちゃんのお友達が、挨拶に来るから予定を開けといて~」

 

「近いうちとは、いつ?俺も忙しいが?」

 

「近いうちは、近いうちだよ~予定を開けといてね。宜しく~」

 

「わかった、わかった。お偉いさんには伝えておく、帰ったら、正確な日時を教えてくれ」

 

「了解(ラジャ)~」

 

 気が抜けるような口調で応対する母に、ため息をつく尚弥だった。

 

「家元から電話ですか?」

 

 虎次郎が、聞いてくる。

 

「そうだ。噂をすれば何とやら・・・だ。みほさんが友達を連れて、訪問してくるそうだ」

 

「それは、そうだろう。大学を卒業した後とは言え、見合いの話をいきなりされたら、誰だって、そうだろう」

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