ガールズ&パンツァー みほのお見合い大作戦   作:ジャーマンポテト

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 みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れ様です。


第4章 元文科省役人の嘆き

 降り立った駅から周囲を見渡せば、目前に広がるのは、長閑な農村風景・・・

 

「田舎だ・・・」

 

 最初に頭に浮かんだ感想は、それだった・・・

 

 

 

 

 いかにも、寂れた風情の無人駅・・・

 

 それが、傷ついた彼の心に、さらに無情の刃をグサグサと、突き立てる。

 

「・・・・・・」

 

 到着する予定時間は、事前に伝えていたはずなのだが、迎えらしき人の姿は、どこにも無い。

 

「・・・・・・」

 

 眼鏡を掛け直してため息を1つ付き、彼はスーツの内ポケットからスマートフォンを取り出すと、画面を操作して耳に当てる。

 

 プルルル・・・プルルル・・・カチャ!

 

「な~に~?」

 

 何度目かの着信音の後で、間延びした、どこか間の抜けた声が返って来た。

 

「あの・・・今、駅に到着しました」

 

「あっそ。じゃあ、待っているね~」

 

「いえ・・・迎えの車とかは・・・?」

 

「駅前に、タクシー会社があるでしょう?タクシーで、来れば~?」

 

「・・・今、タクシー会社の前なのですが、タクシーが全部出払っていて・・・」

 

「あっそう。じゃあ、しょうがないなぁ~・・・隣の商店で、自転車のレンタルやっているから、それで来れば~?」

 

 言葉遣いは、のほほ~んとした感じだが、言っている事は、かなり無茶苦茶だ。

 

「・・・あのぉ~・・・私は、そちらの住所が、よくわからないのですが・・・」

 

「商店街の前の道をズ~ッと南に下って。大きな川に突き当たったら、橋を渡らずに、そこを右に曲がって、暫く行ったら水車が見えるから。んで、少し真っ直ぐ行ったところで野良猫ちゃんが、日向ぼっこしているお地蔵さんが立っている辻を右に曲がって、しばらく行ったら、お爺ちゃん、お婆ちゃんが井戸端会議しながらプレイをしているゲートボール場があるから、そこの道を左に曲がって、ず~と行った所にある、長尾さんちの田んぼの隣だから、すぐわかるよ~」

 

「長尾さんちの田んぼって、田んぼだけ見たって、何処の家の田んぼかわかる訳無いじゃないですか~!?」

 

 彼は、思わず絶叫した。

 

「じゃあね~そういう事で~」

 

 プツッ!

 

「えっ!?もしもし!?もしも~し!!?」

 

 ツー・・・ツー・・・

 

「・・・・・・」

 

 スマホの向こうから響いてくる無情な音・・・

 

「・・・惨めだ・・・」

 

 彼は、途方に暮れて、つぶやいた。

 

 

 

 

「あれぇ~本当に、来たんだ~」

 

 2時間程かかって、ようやく目的地である屋敷に着いた、文科省の役人を出迎えた天満流家元の第一声が、それだった。

 

 どうやら、自分は招かねざる客だったようだ・・・

 

 その事実が、かれの傷ついた心に、さらに追い打ちを掛ける。

 

 

 

 

 それでも、形式的な礼節でもって、屋敷に通された役人は、応接室で茶菓の接待を受けた。

 

「西住みほさんには、西住流家元を通じて、御子息とのお見合いの話を、お伝えしています」

 

「知ってる~しほちゃんから、連絡受けているから~・・・わざわざ来なくても、電話1つで済んだのに~」

 

「いえ、上からは直接家元に、ご報告するようにと言われまして・・・」

 

「ふ~ん。それって、もしかしてイジメかな~・・・でもしょうがないよねぇ~・・・去年の夏の戦車道大会以後のゴタゴタのせいで、文科省は、防衛省と外務省の顔に、泥を塗っちゃったもんね~・・・その、中心的な役割を果たしちゃった貴方には、風当たりが強くても仕方が無いよね~・・・」

 

 天満流家元が言っているのは、文科省が、昨年の戦車道大会で大洗女子学園が優勝すれば、廃校を撤廃するという口約束を反故にして、廃校を強行した事を言っている。

 

 もっとも、文科省側の言い分としては、たかが一役人が約束・・・しかも、正式な書面を交わしていない約束には応じられないという事だ。

 

 それに、学園艦の運用には莫大な費用が掛かるとなれば、少子化で年々、学生数が減少している以上、各学校の統廃校を進めざるを得ないという事情もある。

 

 彼らが、大洗女子学園の廃校を強制的に進めたのも、そのためだ。

 

 当然、その事を様々な情報で知った国民から、非難や批判の声は寄せられたが、正直、いちいちそれには構っていられない。

 

 あくまでも法に則っての措置であるから、感情論で非難される謂れは無い。

 

 事実、大洗女子学園や、その他の廃校予定の学園艦を存続させた場合の、予算の試算データを元に、それらを補填するためには、増税、もしくは少子化対策に投入している予算の削減に踏み切るしかないと、公表したところ、それらの非難がピタリと止まったくらいなのだ。

 

 しかし、刺客は別にいた。

 

 女子の戦車道は、あくまでも学校教育の一環で、スポーツの1つというのが、公の見解だが、男子戦車道を管轄している防衛省からすれば、戦車戦術の研究という点で、女子の戦車道にも着目している。

 

 昨年の大会の大洗女子学園の優勝について、防衛省は非公式ではあるが、高い評価を出していた。

 

 それを、足蹴にされたのだから、防衛省が激怒した。

 

 それだけでは無い。

 

 外務省からも、猛抗議が届いた。

 

 何度も言うが、女子の戦車道は学校教育の一環ではあるが、戦車戦術の研究という点で、各国の軍組織に着目されている。

 

 当然、非公式だが日本国内の大使館に駐在している駐在武官も大会を、一観戦者として観戦している。

 

 その駐在武官から事の顛末が伝えられ、外務省に各国から直接的な表現は、避けられているものの苦情が殺到し、それらの対処に外務省が奔走させられたのは想像に難くない。

 

 その後の、大学選抜チームとの試合を、大洗女子学園と戦車道連盟が、お膳立てできたのも、防衛省と外務省が密かに戦車道連盟に協力したからだった。

 

 もちろん、あの試合に勝利出来たのは、大洗女子学園と他の高校戦車道チームの尽力があっての事ではあるが・・・

 

「もちろん、私もしほちゃんには、しっかり協力させていただきました~」

 

「・・・・・・」

 

「千代ちゃんも、賛成してくれたしね~もっとも、試合は全力で、手加減は一切しないって、条件だったけどね~・・・」

 

「・・・・・・」

 

「まあ、もう終わった事は置いといて~無限軌道杯で、大洗女子学園が優勝した事で、彼女たちが決してマグレじゃ無く、実力で優勝の栄誉を勝ち取ったって事も証明出来たし、めでたし、めでたし」

 

「・・・ですがっ!!我々も決して悪意から、大洗の廃校を強行した訳ではありません!!憲法で保障されている、教育を受ける権利に則って、より質の高い教育を若者たちに受けさせるためには、学園艦の数を整理する必要もあったのです!」

 

 眼鏡を光らせて、役人は訴える。

 

 家元は、腕を組んで、ため息を付いた。

 

 それは、役人のガチガチの固い思考に呆れているようだった。

 

 組んだ腕を解いて、姿勢を正した家元は、先ほどまでの、のほほんとした雰囲気を、一変させた。

 

「まったく・・・いつまでも下らない事を、グダグダと・・・」

 

 役人は、自分の周囲の空気が冷たくなるように感じて、身震いした。

 

「君たちの本意など、この際どうでもいい。問題なのは君たちのとった行動だ。君たちが、法を持ち出して自分たちを正当化するなら、大洗女子学園前生徒会長と交わした口約束を反故にするなど出来なかったはずだ。私が小耳に挟んだところでは、民法を無視した君たちの言動に、法務省は相当な不快感を示していたそうだからな。それに、増税だの何だのと勝手な事を言い出して・・・財務省も、かなり怒っているそうだ」

 

「いえ・・・教育予算を考えますと・・・」

 

「予算が足りないのは、どこの省庁でも同じだ。言い訳をするな!!」

 

「・・・申し訳ありません・・・」

 

 先ほどまでとは別人のような家元からの厳しい一喝を受けて、役人は背中に冷たい汗が流れるのを感じた。

 

「と・・・まあ、所詮はトカゲの尻尾要員の、木っ端役人にすぎない貴方に言っても、しょうがないんだけどね~・・・本当に尻尾切りされちゃったし~」

 

「・・・とどめを刺さないで下さい・・・」

 

 精神的に満身創痍のところに、痛恨の一撃を受け、息も絶え絶えとなった役人が、弱々しく懇願する。

 

 

 

 

 コン!コン!

 

 やや控えめな感じで、応接室のドアがノックされる。

 

「入って~」

 

「失礼します」

 

 控えめな感じでドアが開き、大洗女子学園の制服を着用した、黒髪の少女が入室して来た。

 

「おかえり~」

 

「ただ今、戻りました」

 

 立ち振る舞いも、言葉遣いも清楚な少女だ。

 

 大洗の五十鈴華、知波単の西絹代、聖グロリアーナのダージリン、BC自由学園のマリーと、どこか似た上品な雰囲気が全身から、にじみ出ている。

 

「ええと・・・こちらの方は?」

 

「私の娘だよ~」

 

「えええええ~!!!!!?」

 

 思わず、役人は絶叫した。

 

「あれぇ~・・・このリアクションは、どう判断したら良いのかなぁ~?」

 

 ニッコリと笑う、家元の目が怖い・・・

 

「お母様、そんな怖い顔をしては、いけません」

 

「はいはい」

 

「はい。は、1回です」

 

 娘に窘められて、家元は鋭い目の光を収めた。

 

「・・・・・・」

 

 家元のプレッシャーから、開放された役人は、内心で安堵のため息を付いた。

 

「・・・お客様に、ご挨拶してね~・・・招かれざる客だけどぉ~・・・」

 

「お母様!」

 

「ごめんなさ~い」

 

 どの家元もそうだが、自分の娘には激甘のようだ。

 

「お初に、お目に掛かります。天満やよいです」

 

 やよいは、ペコリとお辞儀をする。

 

「あ・・・こちらこそ・・・ところで、やよいさんは大洗女子学園に在籍されているのですか?」

 

「はい。といっても、来月の4月からですが・・・今日は、制服が届いたので、早速着てみたのです」

 

「そうですか。良く似合っていますよ」

 

「はい。ありがとうございます」

 

 やよいは、嬉しそうな笑顔を浮かべる。

 

「私、みほお姉様に、小さな頃から憧れていたのです。同じ高校に入学出来る事になって、とても嬉しいです」

 

「ええと・・・だとすると・・・やはり戦車道を、受講するのですか?」

 

「はい!そのつもりです!」

 

「そうですか・・・頑張って下さい」

 

 やや棒読み口調で、役人は激励の言葉を贈った。

 

(もしも・・・大洗の廃校手続きが、今年だったら・・・)

 

 役人の心が、凍り付く。

 

(間違いなく文科省は、天満流家元によって潰されていた・・・)

 

 青くなって、ガタガタと震えている役人を後目に、母娘は楽しそうに語り合っている。

 

「来月の話はさておき、やよいちゃんは明日の親善試合に全力を尽くさなきゃだね~」

 

「はい。中学選抜チームの一員として、恥ずかしくないよう最後の試合に臨みます」

 

「うんうん。いい心がけ~さっすが、私の娘~」

 

 満面の笑みを浮かべている家元だが、ハタと何かを思い出した表情になった。

 

「そうそう。やよいちゃんに、サプライズがあるんだ~」

 

「サプライズ・・・ですか?」

 

「うん。でもナイショ~びっくりさせたいから~明日のお楽しみ~」

 

 楽しそうに目を輝せながら、家元は語る。

 

「・・・お母様が、そのような笑顔を浮かべている時は、90パーセント以上の確率で、良くない事の前触れなのですが・・・」

 

「何それ~?ママ、傷ついちゃう・・・メソメソ・・・」

 

「嘘泣きしても、駄目ですよ」

 

(・・・さすがに、天満流家元の御息女・・・見た目と違って、胆が据わっている・・・)

 

 役人は、内心で舌を巻いていた。

 

 

 

 

 やよいが、明日の準備のために応接室から退室して、数十分。

 

 尚弥が、顔を出した。

 

「今、帰った」

 

「ミャア~」

 

「おかえり~尚弥。美緒ちゃんも」

 

「電話で、話そうとしていた事は何だ?」

 

 帰ってくるなり、尚弥は、早速本題に入る。

 

「ん~とね。しほちゃんから連絡があって、西住みほちゃんと大洗女子学園戦車道チームの皆さんが、明日、こっちに来るって~」

 

 もの凄い爆弾が、炸裂する。

 

「明日って?そんな、急な・・・予定を空けろとは聞いたが、無茶苦茶だろう。それに、明日は・・・」

 

「うん。やよいちゃんたち、女子の戦車道中学選抜チームと、天満流男子戦車道門下生中学選抜チームの親善試合の日~」

 

「普通なら、予定をズラすなり、何なりするだろう!?」

 

「だって~・・・びっくりさせたかったんだもん!」

 

「・・・・・・」

 

 どう考えても、普通の右斜め上を遥かに超える母親の言動に、尚弥のこめかみに、2・3個の怒りマークが浮かんだ。

 

「・・・あれ~?もしかして・・・怒った~?」

 

「・・・怒らない奴がいたら、どうかしている・・・」

 

「ひぃいぃぃぃ~!!!」

 

 修羅場の予感に、役人は悲鳴を上げた。

 

「おや?貴方は?」

 

 役人の悲鳴を聞いて、尚弥は自分たち以外に人がいる事に気が付いたようだ。

 

「うわぁ~・・・影、薄っす!」

 

「・・・・・・」

 

「母さん!!」

 

「ごめ~ん」

 

 息子に叱られて、家元はシュンと肩を落とす。

 

「・・・まあ、仕方が無い・・・だが、明日の予定は変えられない。親善試合が終わってから会う・・・で、いいな?」

 

「うん。元から、そのつもりだよ。せっかくだから、みほちゃんたちにも親善試合を観戦してもらう予定だよ。男子戦車道の試合も、みほちゃんたちの勉強になると思うんだ~・・・やよいちゃんには内緒だよ~憧れの、みほお姉様が、観戦に来るって聞いたら、変に気負っちゃうといけないから~やよいちゃんには、全力で試合に打ち込んで欲しいんだ~」

 

「・・・表向きはそうだとして、その心は?」

 

「ナイショ~!」

 

「・・・・・・」

 

 尚弥のこめかみに、さらに怒りマークが浮かぶ。

 

 

 

 

(・・・こんな、連中と付き合っていかなければいけないなんて・・・私の未来は・・・)

 

 出世街道をばく進していたはずが・・・どこでどう間違ったのか・・・

 

 役人は、自分の不幸を心中で深く嘆いていた。

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