前世のことを話してから、私と炭治郎は日輪刀が来るまでの間、鍛練をした。この鍛練は素振りなどの基礎だけではなく、私の華ノ舞いの水仙流舞をものにするためなのと全集中の呼吸・常中を習得するための鍛錬を主にした。華ノ舞いの水仙流舞を習得するのはともかく、全集中の呼吸・常中は早いんじゃないかと思ったのだけど、炭治郎が、もしかしたらできるかもしれないし、使える方が良いからと言われて、習得することになった。
まあ。炭治郎には勝てないけど、機能回復訓練に近いものはしているからね......。鬼ごっこで炭治郎と禰豆子を相手に鬼と逃げる方をやったり(禰豆子は体力が全然消耗しないので、前よりもかなり厳しい鬼ごっこになった...)、大岩を二つ縄で括って持ち上げる鍛練をしたり(そのうち、私が岩に押し潰されそう.....)、寝る時に全集中の呼吸を止めてしまったら、禰豆子に蹴り起こされたりなど......色々あり過ぎたよ.....。でも、その鍛練の成果もあって、思ったよりも早く習得することができた。ついでに言うと、華ノ舞いの水仙流舞も使えることができた。鱗滝さんが言うには、私は元々呼吸を使うのが上手いから早く習得できたのだろうとのことだそうです。
あと、炭治郎と刀の打ち合い稽古もしているんだけど......お察しの通り、私は全戦負けています....。というか.....二周目の炭治郎に私が勝てるわけないでしょ!
そんなことがありつつ....十数日が経った。
チリーン!
私と炭治郎がいつものように鍛練していると、風鈴の音が聞こえた。
「うん?この音は......風鈴?」
「.....この匂いは!?」
私と炭治郎は風鈴の音が聞こえ、音のする方を見ていた。私は姿が見えなくて誰なのか分からなかったが、炭治郎には鼻で誰なのか分かったらしく、その人物に驚いた様子だった。
「......漸く来たか。」
「鱗滝さん?」
「鱗滝さん、あの........。」
「あやつは信頼できる。あやつしか日輪刀を頼めないだろう......。」
「はい!」
その人を呼んだのは鱗滝さんだった。炭治郎は鱗滝さんにどうして呼んだのかと聞こうとしたが、その前に鱗滝さんに先を言われ、鱗滝さんの言葉に炭治郎は笑って返事をした。私は鱗滝さんと炭治郎の会話と見えてきた人の姿を見て、やっと誰を呼んだのか分かった。
「鋼鐡塚さん!」
鋼鐡塚さん.....炭治郎の日輪刀を何度も作った人だ。...確かに、炭治郎の刀は鋼鐡塚さんにしか頼めないよね......。
私は炭治郎が鋼鐡塚さんに駆け寄っていく姿を眺めながらそんなことを考えていると.......
「貴様ぁ!」
鋼鐡塚さんが叫声を上げて炭治郎にプロレス技をかけていた。......いや、なんで!?
「鋼鐡塚さん!」
「貴様ぁ!どういうことだぁ!」
「炭治郎!ちょ、ちょっと!鋼鐡塚さん!?止めましょうよ!」
鋼鐡塚さんは炭治郎に叫びながら力をさらに込め、私は炭治郎から骨が折れそうな音が聞こえ始めたので、さすがに止めに入った。
「鋼鐡塚さん!心配してくださっていたのは嬉しいことなのですが、もう少し落ち着いてください。」
「うるせぇ!」
あの後、鱗滝さんも一緒に間に入ったので、漸く鋼鐡塚さんも落ち着いてくれた。鋼鐡塚さんも前世の記憶を持っているようで、今世では炭治郎と禰豆子のことを凄く心配していたそうだ。そして、私達が最終選別が始まる前に藤襲山に行った時に、鱗滝さんが鋼鐡塚さんに炭治郎が鬼殺隊に入らずに個人で鬼狩りをすることを伝え、そのために炭治郎とその旅について行く私に日輪刀を作ってほしいと頼んだそうだ。......そういえば....鱗滝さんと鋼鐡塚さんは仲が良かったっていう話だったよね...。....それで、本当ならもう少し早く届けられるはずだったが、炭治郎のために満足できるまで刀を作ったせいで遅くなって、十数日が経ってしまったそうだ。鋼鐡塚さん、炭治郎の刀を作るのに凄くはりきったのですね.....。
......と、私は炭治郎の骨が無事なのか確認し、炭治郎の手伝いでみたらし団子を作りながら聞いていた。結果、炭治郎の骨は無事でした。ちなみに、炭治郎がみたらし団子を作った後、材料が少し余っていたので、炭治郎と鱗滝さんにお願いして笹団子を作ることができました!やったー!久しぶりに笹団子を作ることができた!
「...これがお前の日輪刀だ。」
「ありがとうございます!」
鋼鐡塚さんがみたらし団子を受け取ってから炭治郎に日輪刀を渡し、炭治郎は頭を深く下げて受け取った。炭治郎は受け取った刀をすぐに鞘から抜いた。すると、炭治郎の日輪刀は黒色に染まっていった。日輪刀は日光が蓄えられた鋼、猩々緋砂鉄と猩々緋鉱石を原料に作られた刀で、持ち主によって色が変わり、刀としての特性も変わる。別名も色変わりの刀と呼ばれている。
「綺麗....!」
「フン。」
私は炭治郎の刀が漆黒に染まる様子に感嘆の声を上げ、それに対して、鋼鐡塚さんは不機嫌そうにみたらし団子を頬張っていた。
鋼鐡塚さんは赤色の刃が見たかったらしいけど.......これはこれで良いと思うのにな....。黒色に染まっていくのも綺麗だと思うよ.....。
「おい!お前の日輪刀だ。真っ赤な刃になるとは思えないが、早く抜け。」
「まあ.....。」
そんなことを言われなくても分かってますよ。.....絶対に赤くならないと思う...。いや、炎を纏っていたし....でも、あれはどちらかと言うと炭治郎のヒノカミ神楽の方が近いから...黒色になるのかな.......。けど、水も纏ってたから......青色?.....というか...それよりも日輪刀の色を変えられるかな?........変わらなかったらどうしよう.....。赤色と違う色になったよりもそっちの方が怒りそう....。.......一度考えたら、だんだん不安になってきた......。一旦落ち着こう。大丈夫。大丈夫だ.......。
私は鋼鐡塚さんから受け取った日輪刀を手に持ち、気持ちを落ち着かせるために深呼吸をしてから刀を抜いた。しかし、抜いた日輪刀の色がなかなか変わらず、私が駄目なのかとショックを受けていると、日輪刀の色が変わり始めた。私の持っていた日輪刀はガラスのような無色透明に変わり、薄らと葉の模様が刀に浮かび上がった。
「.....透明...?」
「まるでガラスみたいだ.......。」
「綺麗だね...。」
「初めて見る色だ.....。」
「.........。」
私は目を見開いて無色透明に変わった日輪刀を凝視し、炭治郎も禰豆子も鱗滝さんも鋼鐡塚さんも私の日輪刀を見つめている。
....うん。初めて見る色だっていうのは分かりますよ...。私だって無色透明な日輪刀、初めて見ましたよ!えっ!?無色透明な日輪刀なんて、原作ではなかったよね....。無色透明って.....何の呼吸が適正なの?......あっ!もしかして、華ノ舞いと何か関係があったりして.....。....まあ...確かに無色透明な日輪刀は綺麗だし、葉の模様も合わさってやっぱりガラスのように見えるよね......。
私は日輪刀を見つめ、気持ちを落ち着かせるために大きく深呼吸をしようとした。しかし、少し混乱していたのか間違えて水の呼吸を使ってしまった。すると、私の持っていた日輪刀が青色に変化した。
「えっ!?」
「「「「!?」」」」
それを見た私も周りにいた炭治郎達も驚いて私の日輪刀を凝視した。私が驚きのあまり水の呼吸を止めると、刀は元の無色透明に戻った。
.......無色透明だったはずなのに...水の呼吸を使った途端.....もしかしたら....!
「ヒノカミ神楽.....!」
私は試しにヒノカミ神楽を使ってみた。すると、今度は炭治郎のような黒色に変化した。私がまた呼吸を止めると、日輪刀の色は元の無色透明に戻った......。
.....やっぱり....呼吸によって、日輪刀の色が変わるのね...。
「....如何やら呼吸によって日輪刀の色が変わるみたいですね.....。」
「ああ....。儂も使う呼吸によって色が変化する日輪刀のことは...見たことも聞いたこともなかった.....。」
「...華ノ舞いだと....色はどうなるんだ?」
私が日輪刀の色の変化のことを呟き、鱗滝さんが私の日輪刀を凝視しながらそう言った。隣にいた炭治郎の言葉を聞き、私は確かにと思い、華ノ舞いを使ってみることにした。水仙流舞は習得したばかりだし、ここは家の中なので、何かに当たらずに動けそうな日車で試すことにした。すると、日輪刀はヒノカミ神楽の時のような黒色に染まり、ヒノカミ神楽と同じなんだな......と私は思っていたのだが.....
「日輪刀、模様、違う!」
「...えっ?」
よく見ると......葉の模様まで変わっていた。無色透明だった時は普通であまり特徴もない葉だったが、今は葉の形が変わり、葉と葉の間に向日葵の花があった。私が驚いてまた呼吸を止めると、さっきまであった模様の向日葵の花は無くなって葉の形も戻り、色も無色透明に戻った。もう一度ヒノカミ神楽を使うと、日輪刀の色は黒色に変わるが、葉の形はそのままで向日葵の花もなかった。ちなみに、外に出て水仙流舞の方も試すと、日輪刀の色は青色に変わり、日輪刀の模様も葉の形が変わって葉と葉の間に水仙があった。その後、水の呼吸を使ってみたが、水の呼吸も色は青色に変わるが、ヒノカミ神楽の時と同様に模様は変わらなかった。
「.......華ノ舞いを使った時は日輪刀の色も模様も変わり...水の呼吸やヒノカミ神楽は色だけ変わるのね....。」
「.......儂もこんな事例は初めてだ.....。」
「俺も聞いたことがありません。」
一通り試した後、私達は話し合い、頭を悩ませた。
呼吸によって刀の色が変わるのは幾ら何でも分からないよね....。だって、こっちが聞きたいくらいだよ!原作でもこんな設定はなかったし、どういうことか私も分からないよ!なんで私の日輪刀は無色透明で、呼吸に反応して色が変わるの!なんで華ノ舞いを使う時は模様も一緒に変わるの!もう!意味が分からなくなってきたよ!原作とは明らかに話が変わっているし、ここまで原作崩壊していると、意味が分からなくなってくる......。
「.......。」
「え、えーと...鋼鐡塚さん.....?」
一方、鋼鐡塚さんは私達と違って黙ったまま私の日輪刀を見つめていた。
....私、刀を折ってないし、刃こぼれとかもしてない。......そうなると.........やっぱり、私の日輪刀の色が原因かな......。鋼鐡塚さんは赤色の刀が見たかったわけだし....。
「おい!」
「は、はい!」
鋼鐡塚さんに突然声をかけられ、私は姿勢を正して返事をした。
なんか鋼鐡塚さん........興奮していませんか.....?
鋼鐡塚さんの興奮している様子を見て、私は首を傾げた。
「お前!刀の色を変えられるなら、赤い刃にしろ!」
「ええっ!?」
いや、無茶だよ!呼吸によって日輪刀の色が変わるのだから、私が使えるのは水の呼吸とヒノカミ神楽なので、青と黒色以外無理です!赤色ということは炎の呼吸を使えないと!...というより、私に炎の呼吸の適正があるかどうか分からないし、他の呼吸を使っても刀の色が変わるかどうかも分からないから!
「いや.....無理ですよ....。」
「さっさと赤く染まった刃......赤い刃を見せろ!」
「ひっ!?」
「わわっ!止めてください!鋼鐡塚さん!」
私が無理だと答えると、鋼鐡塚さんは私に飛びかかり、私は悲鳴をあげながらもすぐに後ろに下がって避け、炭治郎が私と鋼鐡塚さんの間に入ってくれた。その後、さらにヒートアップした鋼鐡塚さんを炭治郎と禰豆子と鱗滝さんが宥め、漸く鋼鐡塚さんが少し落ち着き、珍しいものが見れた、次は赤い刃を見せろと言って、まだまだ興奮した様子のまま帰っていった。
......なんか...凄く疲れた....。
鋼鐡塚さんが帰った後、いよいよ出発ということで準備をすることにした。私は二年前に村の人達に貰ったものの中で着れる大きさの着物を着ることにした。上が若菜色の明るい黄緑色の着物を深緑色の袴の中にインして着た。村の人達が言ってた通り、軽いが丈夫な布でできているようだ。その上に笹の葉の羽織を着て、着替える前に肩くらいの長さに揃えた髪を赤い紐で一つに結んだ。
「....どうかな?」
「良い、と思う!」
私が着替えた着物を禰豆子に見せると、禰豆子には好評だった。
.....似合っているなら...良かった......。次は.......
「禰豆子。この袴、禰豆子に似合うと思うよ。」
「いい!」
「でも、禰豆子の蹴りを見ていると.......心配になるのよね........。いつか......って....。」
「だい、じょうぶ!」
「.....そう...。」
私は村の人達に貰った袴の中から禰豆子に一つあげようと思ったが、禰豆子に拒否された。
その袴をあげようとしたのは禰豆子に似合いそうというのも一つ目の理由だが.......他にも理由がある。それは....心配というか...不安というか......禰豆子が脚を大きく振り上げているから...原作では描かれていなかったけど......現実だとあり得そうだからこそ........心配なのですよね...。敢えて何かは言いませんが!
私は禰豆子を説得しようとするが、禰豆子は大丈夫だと言って聞かなかった。
.....まあ。原作で描かれていなかったから大丈夫だと信じることにしたよ....。それにしても、禰豆子も炭治郎の妹だからか頭が堅いね......。
「...うーん.......。薬を持って行きたいのだけど......どうしようかな.....?」
それと、今、私の目の前にある問題はこれだ。薬をどうやって持っていくかだ。薬の量も薬を作るための道具も合わせると結構多い....。何か籠や箱のようなものに入れておかないと......絶対持ち運べない!少量ならなんとかなるが...薬も道具も全部だとね........。
「.....どうやって薬を持ち運ぼうか.......。...うーん....。」
「彩花。」
「はい。」
私が薬の持ち運びに悩んでいると、鱗滝さんに呼ばれた。私は一旦考えるのを止めて鱗滝さんの方を向いた。
「旅の準備はどうだ?」
「着替えも済み、後は荷物を纏めるだけなのですが.....薬や薬を作る道具が多くて....どう持っていこうかと悩んでいたところです。」
「.......あれほど多いと、どこに持っていっても戦いの邪魔になる。.....そう思ってこれを用意しておいた。」
「へっ?」
私が首を傾げていると、鱗滝さんが私の目の前に何かを出した。それは........
「....せ、背負い箱?」
私は鱗滝さんに渡された背負い箱を見て、表情には出せないようにしたが、心の中では凄く驚いた。なぜなら、その背負い箱は....原作で炭治郎が禰豆子を連れて行く時に使っていた背負い箱と同じ物だったからだ。
.....えっ!?なんで!?なんであの背負い箱がここに......!?炭治郎に渡すはずの物じゃ....あっ!禰豆子が日光を克服しているから、炭治郎が背負い箱を持つ必要ないじゃん!.....それで、私が作った薬やその道具を収納するための箱として使うことになったと。....まあ。この背負い箱は軽いうえに丈夫だから、薬の持ち運びが少しは楽になるし、鬼との戦いで薬やその道具が壊れる可能性も少なくできるということね.......。
「...ありがとうございます!」
私はお礼を言ってありがたく背負い箱を受け取った。ちなみに、その背負い箱に私の薬や薬を作る道具も全部綺麗に入れることができました。やったー!
「....では、行きます!」
「ちょっと待ちなさい。」
私達は準備を整え、これから出発しようとした時、鱗滝さんに待つように言われ、立ち止まった。私達が止まっている間に鱗滝さんが炭治郎の着物や私の着物を整えた。炭治郎と私の着物を整えると、炭治郎の肩を軽くニ、三回叩き、私と禰豆子の頭を撫でた。鱗滝さんが無言で頷き、私も炭治郎も禰豆子も頷き返した。私達は鱗滝さんに一通り手を振った後、狭霧山を出て行った。
「彩花。さっき作っていた笹団子....。」
「あっ!駄目!」
「......本当に彩花は笹団子が好きなんだな。」
「うん。前世の頃からの私の大好物だからね」
私は炭治郎が笹団子の話をするだけで拒否し、炭治郎はそんな私の様子に苦笑いを浮かべていた。
....ごめんね。私、他の食べ物ならあげれるけど、大好物の笹団子をあげるのはちょっと......
「...うーん.......。凄く良い匂いがしたんだが......今度、俺が笹団子を作るから、俺達も少し食べて良いだろうか?」
「.....それなら.......。」
私は炭治郎にそう言われ、渋々頷いた。
だって、炭治郎は料理が美味いから.....。炭治郎の作った美味しい笹団子を食べてみたいからね......。
私は炭治郎と禰豆子と話したり笹団子を渡したりして歩いていた。
.....そういえば...私達、旅に出るのが少し早いよね....。原作では最終選別が終わってから十五日後に日輪刀が来て、任務も来たから.....私達は最終選別の一日目から十数日後に旅に出ている。つまり、原作よりも早いということね....。もしかしたら、里子さんは間に合うかもしれない.......。というか.....和己さんは前世の記憶とか持っているのかな?鬼は覚えていないみたいだったけど、炭治郎や禰豆子、鱗滝さんと錆兎と真菰と鋼鐡塚さんは覚えていたから、人間は覚えているのかな......って思ったのだけど............うん?
私はそこまで考えて、あることに気がついた。
.....これはあくまで仮定なんだけど....鬼殺隊の皆さんも...もしかしたら前世の記憶を持っているのかもしれない....。確証はないけど、炭治郎、禰豆子、鱗滝さん、錆兎、真菰、鋼鐡塚さんと会った原作の人達みんなが覚えているのだから...あり得るのかもしれないけど.......まさか...ね........。
「....彩花?大丈夫か?」
「あっ。...うん。大丈夫だよ。」
私のその様子が匂いで分かったのか、炭治郎は心配そうに私を見ていた。私は炭治郎の声で現実に戻り、炭治郎にそう返事をした。
旅がこれからどうなるかなんて、今考えても何も分からないからね.....。前世の記憶があろうと無かろうとも...大変な旅になるのは変わらない。....でも、前世の記憶を持っている人が他にもいたら...色々ややこしいことになりそうだな.......。まあ、それに関しては....私にはどうにかできそうにないけど...。
「......行ってしまったか...。」
一方、鱗滝さんは炭治郎達の姿が見えなくなってもその方向を見つめていた。
「カァー!」
その時、一羽の鴉が鱗滝さんのところに飛んできた。その鴉は鱗滝さんの腕に止まり、一通の手紙を渡した。鱗滝さんはその手紙を読み、少し経ってため息を吐いた。
「.......見ての通り、ここには儂以外に誰もおらん。そう伝えておくれ。」
鱗滝さんはそう言うと、鴉の頭を撫でた。鱗滝さんの話を聞くと、鴉は鱗滝さんの腕から離れ、家の周辺を一周飛び回り、どこかへ飛び去っていった。鱗滝さんはそれを見た後、再びため息を吐き、炭治郎達が行った方向を見た。
「...義勇から手紙が届いた。儂の家に誰かいないかと......。誰もいないとは伝えたが、これは一時的な時間稼ぎにしかならん。いつか会うことになるだろう....。炭治郎と禰豆子はあの様子ではまともに話もできぬだろう...。すまぬが、彩花.....炭治郎と禰豆子を頼んだ。」
鱗滝さんはそう呟いた後、家に戻っていった。
「「御館様の御成です。」」
「やあ。私の可愛い子ども達。」
二人の少女の声と同時に一人の男性が部屋の中に入ってきた。男性の前には九人の男女と四人の少年少女達がひざまづいていた。御館様と呼ばれた男性、鬼殺隊の当主であり、父でもある産屋敷耀哉はその場にいる全員に声をかけた。
「今回は炭治郎と禰豆子の件で集まったのだけど、前とは違うんだよね。義勇。」
「はい。二年前、俺は竈門家に向かいましたが、俺が来た時には炭治郎と禰豆子の姿はなく、他の家族は既に埋葬されていました。おそらく、今回もまた鬼舞辻が竈門家を襲い、炭治郎と禰豆子が亡くなった他の家族を埋葬したかと。」
会議が始まり、御館様が端の方にいる義勇に話しかけると、義勇は淡々とその時のことを報告し、目を閉じて二年前のことを思い出していた。二年前のあの時、冨岡義勇はその日の朝に前世の記憶を思い出した。その後すぐに竈門家に向かったが、既に竈門家は鬼舞辻に襲撃され、炭治郎と禰豆子の家族は殺されていた。それだけではなく、炭治郎と禰豆子の姿も周囲にはなく、すぐにその周辺を探したが、炭治郎と禰豆子を見つけることはできなかった。
「....最終選別にも炭治郎の姿はないと聞き、俺はすぐに俺と炭治郎の師である鱗滝さんに連絡を取りましたが、誰も来ていないとのことです。鎹鴉も確認したそうですが、鱗滝さん以外誰もいなかったそうです。」
義勇の話を聞き、御館様は何かを考えている様子だった。他の者達は顔を曇らせていた。何故、炭治郎と禰豆子を捜しているのか?...それは炭治郎と禰豆子に謝るためだ。かつて.....前世で犯してしまった自分達の罪を謝罪するために......。
「.......実は今回集まってもらったのは炭治郎と禰豆子の件とは別に他の件でも呼んだ。....この件はみんなにも聞いてほしい。」
「御館様。失礼ながらその別件とは何でしょうか?」
御館様の言葉にその場にいた者達は話の先が気になった。御館様が話したいということはそれだけ重要なことだからだ。
「最終選別の前の日に、藤襲山に何者かが侵入したらしいんだ。」
「藤襲山に!?」
「だが、あの山には鬼が閉じ込められている。一般人が入れば鬼の餌になる。見張りの奴らは何をしていた。」
藤襲山に侵入した者がいたことに全員が驚いた。最終選別を行う場所である藤襲山には鬼がいる。しかも最終選別の前日なので、鬼はたくさんいたはずだ。一般人がその中に入れば藤襲山にいる鬼達に食われてしまう。しかし、御館様の話はその場にいた全員の予想とは全く別のものだった。
「それがね。......その侵入した者は見張りの子達の隙をつき、藤襲山の中に入り、戻ってきたそうだ。」
『!?』
御館様の言葉に全員はまた驚いた。藤襲山に入り、戻ってくるとは一般人ができることではないからだ。
「どういうことですか?」
「.....気づいたのは最終選別が始まる日の朝だったそうだ。藤襲山の中に入っていく足跡を隠が見つけたみたいなんだ。見つけた隠が慌てて中を確認したが、侵入した者の姿もその遺品らしき物もなかったそうだ。足跡を辿っていくと、藤襲山の外に着いたところで足跡が途切れたそうだ。それに、侵入した者の血痕らしきものもなかったそうだ。このことから私は最後選別の前日に藤襲山に入った者は生きていると考えている。」
御館様の話に全員が納得したと同時にある疑問が出てきた。藤襲山に侵入した者は一体何をしにきたのだろう?と。
「藤襲山に侵入した者は何を.......。」
「侵入した者達の目的は私も分からないよ。ただ、出ていく時に藤の花がいくつか採られたような形跡があった。一見、分からないようにしていたが、明らかに人の手によるものだったそうだ。」
「侵入した奴の目的は藤の花か?....いや、それじゃ中に入る意味はないよな.......。」
全員が侵入した者の目的について考えていると、突然猪の被り物を持った少年があることを聞いた。
「.....達と言っていたが、一人じゃねえのか?」
『!?』
「その通りだよ。足跡は二種類あったんだ。しかも、二人の足跡は両方とも大人より小さいことから子どもだと思うんだ。」
その話に九人は絶句し、四人の少年少女は互いに顔を見合わせた。
「何か気になることがあるのかな?」
その四人の様子に気づき、御館様が声をかけると、四人は互いを見合わせた後、頷き合った。
「実はその二人らしき話を聞きました。その二人が最終選別の前日に侵入したことは知らなかったので、特に何も言いませんでした.......。」
「鬼から話を聞きましたから嘘かもしれませんが、俺の耳と伊之助の勘とカナヲちゃんの目で確認したので、嘘は言っていないと思います。」
「それは誠か!」
黄色い髪の少年と顔に傷がある少年がそのことを話すと、他の九人も話に喰いついてきた。
「一体どんな話だったのかな?」
「その鬼の話によると、侵入した二人は藤襲山の中に突然入ってきたみたいなんです。藤襲山に入るや否や何かを探すように走り回っていたそうです。侵入した二人のうち一人がどこにいるのかとか言っていたそうなので、何かを探していたのではないかと思っています。」
「それで、一体何を探していたのかな?」
「それは.....その鬼も分からないそうです。侵入した二人は探しもの以外のことに興味はなく、呼吸が使って立ち塞がった鬼を斬ることはしたが、何もしなければ普通に通り過ぎて行ったそうで、その鬼は二人と関わらないようにしたようです。呼吸も何の呼吸だったのか分からないそうです。」
「そうか....。」
「ですが、その鬼は侵入した二人の姿を見ていました。」
『!?』
侵入した二人の目的は分からないが、特徴が分かれば侵入した二人が何者なのか分かるかもしれないと聞いていた九人は期待した。
「それはどんな特徴だったのかな?」
「......それは........。」
御館様が聞くが、四人は答えずに再び互いを見て、何か言いづらそうにしていた。
「みんな。どうしたの?」
「.....その特徴は二人とも背丈は俺と伊之助とカナヲちゃんと同じくらいで、体格からして一人は男で、もう一人は女の子だったそうです。そのうち、男の方の髪は赤みがかっていたそうです。」
『!?』
黄色い髪の少年の言葉に御館様も他の九人も驚いた。
「それはつまり....。」
「侵入した二人のうち一人は.......炭治郎の可能性があります。」
侵入した一人が炭治郎の可能性があると聞き、他の九人は動揺した。この場にいた全員、行方不明だった炭治郎の行方がまさかここで出てくるとは思わなかったのだ。
「....他にその侵入者の特徴はあったのか?」
「いえ、侵入した二人は手彫りの狐面を顔につけていたらしく、顔までは分からなかったそうです。」
「それでは、その侵入者が竈門少年だと確定していない!赫灼の髪を持つ少年は竈門少年以外にもいる!竈門少年とは別の人物の可能性がある!」
「.....いや.......。」
赫灼の髪以外に決定的な特徴がなく、藤襲山に侵入したのは炭治郎じゃないのではと周りが思い始めてた時、冨岡義勇が突然口を開いた。
「おそらく、炭治郎だと思います。」
「それはどういうことかな?」
「侵入者のつけていた手彫りの狐面は鱗滝さんが彫ってくれる厄徐の面なんだと思います。同門ならその狐面を持っています。」
「.....その話だと、炭治郎の可能性が高くなってきたね......。しかし、炭治郎が何故藤襲山に侵入したのか...その目的も分からないね。」
「.....炭治郎が侵入したなら....藤襲山に侵入した目的になりそうなことを聞いたことがあります。藤襲山に鱗滝さんの弟子を狙って殺していた鬼がいたと言っていました。おそらく、炭治郎はその鬼の頸を斬りに藤襲山に来たのではないかと。」
「......俺もその話は知っています。俺の兄弟子も姉弟子も錆兎も皆......その鬼に........。」
「.....なるほど.......。それなら炭治郎が藤襲山に侵入しに来てもおかしくないね.....。」
義勇と黄色い髪の少年の話からその場にいる全員の中では侵入した一人が炭治郎の可能性が高くなってきた。
「冨岡の手紙の話も含めると、竈門兄妹は既に師に会っていて、冨岡が手紙を送った時にはもう出て行っていたということか......。」
「となると...藤襲山に侵入したもう一人の女の子は禰豆子さんの可能性が高いですね.....。」
話が藤襲山に侵入したのは炭治郎と禰豆子ということで纏まりかけたが、四人の少年少女はどこか納得していない様子だった。
「みんな、どうしたの?」
「実は....侵入したもう一人は禰豆子ではない可能性があります。」
蝶の髪飾りをつけた少女の言葉に全員が驚愕した。
「......どういうことですか?」
「侵入したもう一人も狐面をつけていて顔は分からないのですが、髪の色が緑色のような色だったそうです。」
『!』
女性の質問に顔に傷がある少年が答えた。その話で御館様も他の九人も四人がどうして納得していなかったのか分かった。禰豆子の髪色とは違うからだ。
「ねず公の髪とは全然違げえだろう?」
「....確かにそうですね。禰豆子さんの髪は黒色で毛先が橙色でしたから...。」
「そうなると......そいつは竈門禰豆子ではないということだな.....。」
「でも....それなら、炭治郎と一緒にいた緑色の髪の女の子は誰なんだろう.....。」
侵入したもう一人が禰豆子ではなくて別の誰かだということが分かり、それが誰なのかと話し合ったが、結局何も分からなかった。現状で分かる特徴は髪色と炭治郎達と同じくらいの背丈の少女だということしか分からないので、それだけでは誰なのか判明できなかった。とりあえず義勇が鱗滝さんのところに行って、炭治郎と禰豆子、緑色の髪の少女のことを聞き出すことになり、他は任務の合間に炭治郎と禰豆子の情報収集や捜索と緑色の髪の少女の情報を調べることが決まり、会議は終わりとなった。
前世で罪を犯した者達....自分達が傷つけた者達に会って、どうするつもりなのだろうか?.......それぞれが何も思い、どう行動するか....それがどんな結果を呼ぶか.....。それはまだ...誰も知らない......。分からない....。
再びやり直した者達の人生に.......関係のなかったはずの一人の転生者がこの先も深く関わっていくことを.....そして....その転生者も彼女が知る原作と明らかに違う展開になることを........この時は誰も知らなかった...............。
オリ主は笹団子と両親の形見(笹の葉の羽織と赤色の紐と吹き矢と薬を作る道具セット)は誰にも渡したくない。それ以外は何をあげてもいいが....。ただ、時と場合によっては考える。誰かが落ち込んでいたり緊急事態の時だったりなどそういう時には.....。あと、笹団子に関しては代わりの物があると分かればあげる。例えばもう一つ笹団子があるとか....今度笹団子を作ると約束してくれた時など...色々ある。