「....彩花。また薬を作っているのか?」
「うん...。薬がもう少し良く効くように調合を少し変えてみたの。」
那田蜘蛛山での戦いというか山火事事件も終わった後、原作と炭治郎と禰豆子の記憶ではあるはずの次の任務が来るまで時間があるので、私達は色々なところに行ったり、珠世さん達のところに戻ったりと旅をしていた。主にやっていることは、鬼の頸を斬ったり鍛練をしたり、薬を調合したりだ。
「.....さてと、後はこれを入れて混ぜれば完成ね。」
「....おい。またやっているのか?」
私が最後の仕上げに取り掛かろうとした時、後ろから声が聞こえた。声から誰なのかは察しているが、私はとりあえず振り返り、立ったまま不機嫌そうにしているその人物を見た。
「別に良いじゃない。薬の効能が上がれば治りが早くなったりとか良いことは多いよ。薬の調合を変えるのも新しく作ることも無駄なことじゃなくて良い方に転がるんだから、そんな顔をしなくていいじゃない。剣技も鍛えておかないといけないけど、私はこっちの技術も磨きたいんだよ、獪岳。」
私は不機嫌そうな顔をしている獪岳にそう言った。すると、獪岳は私の話を聞いて舌打ちをした。
「薬を作ることは別に構わねえが、問題はそっちじゃねぇよ!」
獪岳が私を指差して不満そうにそう言った。
どうして獪岳が一緒にいるのかって?それはね.......那田蜘蛛山が終わり、私達が他の鬼の頸を斬りに色々な場所を旅をし始めたばかりの時だ...。
私達はとある小さな町に着いた時、鬼の匂いがすると炭治郎が言った。それで炭治郎にその匂いを辿ってもらい、その鬼の頸を斬ることができた。そこは問題なかったけど、問題はその後のことだ。鬼殺隊の人とばったり鉢合わせしてしまった。その鬼殺隊の人は任務でこの町に来たみたいだった。(その任務の鬼は私達が先に倒してしまったが.........。)それで、その鬼殺隊の人は鬼の禰豆子を任務の鬼だと勘違いして禰豆子を斬ろうと刀を抜き、それを見た炭治郎が前世のあの時のことを思い出してトラウマを発症し、禰豆子は鬼殺隊の人が刀を抜いた姿と炭治郎の様子を見てキレてしまったようで、攻撃態勢をとった。それらを全て見た私は心の中で半分キレながら炭治郎を落ち着かせるために背中を摩り、鬼殺隊の人と禰豆子を宥めようとした。しかし、鬼殺隊の人は聞く耳を持たずに刀を構えたままで、禰豆子も鬼殺隊の人がそんな様子なので、警戒している様子だった。私は仕方がないから、鬼殺隊の人を眠らせようと懐から吹き矢を取り出そうとした時、突然鬼殺隊の人が呻き声を上げて地面に倒れていった。そして、後ろには地面に倒れている鬼殺隊の人とは別の人がいた。どうやらその鬼殺隊の人を気絶させたのはこの人のようだ。炭治郎と禰豆子はその人の行動に驚き、私も目を見開いた。しかし、私はその人の行動にも驚いたが、一番驚いたのはその人のことだ。どうして、この人は私達を助けてくれたの?だって......
「...貴女、名前は?」
「ああ?獪岳だ。」
やっぱり獪岳だよね....。黒い髪に勾玉の首飾りをした男の人...原作で見た獪岳の姿と同じだ。獪岳の行動も驚いたけど、そもそもどうしてここに獪岳がいるんだろう?
私は炭治郎に精神安定の薬を渡しながら獪岳に話しかけることにした。
「獪岳さんはどうしてここに?」
「こいつとの合同任務だったんだよ。俺は後からここにい着いただけだ。」
獪岳が気絶した人を指差しながら話し、私は納得した。獪岳はその人との合同任務でここに来たが、任務で聞いていた鬼は私達が先に倒してしまったということですね...。でも、まだ疑問が残る。獪岳が仲間であるはずの鬼殺隊の人を気絶させた理由は分からない。......もう一回聞いてみよう。
「....鬼殺隊の人を気絶させたのは.....。」
「それはこいつを気絶させた方がいいだろう。それに、俺には話したいことがあるからな。」
「話したいこと?それは一体...。」
「お前じゃなくて、そいつらとだ。」
私が理由を聞くと、獪岳がそう言った。私は獪岳が何を聞きたいのか分からず身構えたが、獪岳が指差したのは私ではなく、炭治郎と禰豆子だった。
なんで炭治郎と禰豆子?......もしかして、獪岳にも記憶が...でも、原作では獪岳は炭治郎と禰豆子と会うことはなかったはず......。
「....お、俺にですか?」
「.....炭治郎、知り合い?」
「.......いや、会ったことがない。前世でも...。」
飲ませた精神安定の薬が効いているのか、炭治郎はさっきよりも落ち着いている。呼吸も安定しているようだ。炭治郎も獪岳の指名を聞き、戸惑っている様子だった。確認のために聞くと、やはり炭治郎と獪岳は前世でも会ったことはないようだ。.....禰豆子は.......獪岳にずっと威嚇している時点で察せるよ...。
「ああ?そいつに前世のことを話すということはそいつにもあるのか?鬼殺隊では見なかった顔だが.....。」
「鬼殺隊には入っていませんからね....。獪岳さんはどうして炭治郎達のことを?会ったことがないということは...前世のあの時にはいなかったということですよね......?」
獪岳の話からして、獪岳にも前世の記憶があることは間違いない。でも、どうして炭治郎と禰豆子に話したいことがあるのだろう?....というか、どうやって二人のことを知ったのだろうか?.....あっ!善逸の手紙か!.......まあ、それは置いといて...前世のあの時にいなかったということなら......獪岳は原作通りに鬼になったということかな?最後決戦は鬼殺隊と鬼の全勢力での戦いだったから、獪岳が鬼殺隊側に姿がなかったのなら、原作と同じように鬼になって善逸に頸を斬られたのだろう....。
炭治郎に視線を向けると、炭治郎は頷いた。.....となると、前世では獪岳は原作通りに進んだということね...。けど....それなら、なおさら獪岳が炭治郎と禰豆子に話したいことがあるというのはおかしいような.....。
「......前世のあの時....俺はもう死んでいて、あの世から様子を見ていたんだ。お前らも.....あの時は辛かったな....。」
「.......はい...。」
「...........。」
獪岳の言葉に炭治郎は納得しながらも未だに獪岳を警戒していた。禰豆子は何か気になる様子で獪岳のことをじーっと見ていた。そんな中、私は獪岳の言葉から場違いなことを考えていた。
....あの世で見ていたから分かると言っていたけど.......あの世から見るって、どんな感じで見ているのかな?上から見下ろす感じなのかな...?.....それとも、何か映像のように映し出されて見えるのかな......?
自分でも場違いだなと思いながらも、ついそんなことを考えてしまった.....。
「....それで、お前らは何をしているんだぁ?何か知らねえけど、カスや柱達がお前らのことを探しているし、前とは状況が全然違くて今の状況が分からねえ。」
「カス?」
「....黄色い髪の隊士がいただろう。そいつだ。一応、あのカスとは...同門なんだ。」
「同門.....。」
「俺はあのカスの兄弟子だ。前世では鬼になって、あのカスに頸を斬られた。....だが、今は違えからな。今度は前世のような失敗はしねぇ。」
獪岳のカスといく言葉に炭治郎は誰を指しているのか分からなかったが、獪岳から特徴を聞き、誰なのかすぐに分かった。獪岳は前世の経験から今世はどうするかとしっかりと決めているようで、原作とは少し違う雰囲気を感じる...。
......獪岳も前世の経験から学ぶことはあったのね....。もう始めから原作の内容が変わっているけど.....また原作での話は変わりそうね...。獪岳が鬼にならないのなら、最終決戦は少し有利になりそう......。
「...状況と言われましても.....私達よりも獪岳さんの方が詳しいと思いますよ。私達は鬼殺隊に入っていませんので、鬼殺隊の今の状況は分かりません。........それで、他には聞きたいことがありますか?炭治郎と禰豆子にそれを聞きに来ただけということではないですよね?」
私は獪岳にそう聞いた。
こんなこと.....少し考えれば分かることだ....。こんなことを聞くためだけに、わざわざ炭治郎達と話そうとは考えられない......。他にも何か用があるはず...。
「.....お前らに協力してやろうと思ってなぁ。困ったら、何か言えよ。協力してやる...。」
「.....へっ?」
「えっ?」
「うっ?」
獪岳の言葉に私は変な声が出た。炭治郎と禰豆子は予想外の言葉に固まっている様子だ。
.......えっ?何?どういうこと!?
「....協力するとは......どういうことですか?」
私はとりあえず獪岳がどうしてそう言ったか分からずにそう聞いた。
ごめんなさい.....。獪岳が真剣に言ってくれているのは分かるけど...どうして協力すると言ったのか.....よく分からなくて....。
「......ああ。そうだな.....。俺は死んだ時は次は誰にも負けねえように強くなってやる、鍛えてやると思ってた。.......だが、その後のそいつらの様子を見て、考えが変わった。そいつらが死んだ時もすぐにそいつらのところに会いに行きたかったが...気がついたと時には俺は戻っていた。思い出したのは二年前の時だ....。いつも通りに鍛練をしていた時にいきなり前世の記憶が戻った.......。おそらくあのカスも同じだ。あのカスもその日はいつものように大騒ぎしていたが.....あのカスの様子を見れば、前世の記憶が戻っているのは間違いなかった...。」
「....二年前...ですか.......。」
獪岳の話を聞き、私は考え込んだ。
獪岳も二年前に前世の記憶が戻った?.....それも、善逸も...ということは........。炭治郎も禰豆子も鱗滝さんも二年前に前世の記憶が戻ったと言っていたし.....これは鱗滝さんに後から聞いた話だけど.....鋼鐡塚さんも前世の記憶が戻ったのは二年前だって言っていたのよね......。珠世さんと兪史郎さんには聞いていなかったな...。今度聞いてみようかな....。でも、炭治郎と禰豆子、鱗滝さんに鋼鐡塚さん、そして、獪岳と善逸......今、分かっている時点で六人も二年前に前世の記憶が戻ったということは....他の人達も二年前に前世の記憶が戻った可能性が高いよね.....。...二年前ということは......原作が始まった時だよね....。原作が始まったと同時に前世の記憶が戻った...。同時期に炭治郎達が前世の記憶を思い出したということは......間違いなく何かあるよね.....。
「.......炭治郎と禰豆子はどうする?」
「俺は....獪岳さんのことを何も知らないから......どうするか悩むな....。」
「反対!」
とりあえず、炭治郎と禰豆子に意見を聞くと、炭治郎は獪岳のことを警戒しながらも悩んでいる様子で、禰豆子ははっきりと嫌がった。
...うーん....。炭治郎は少し悩んでいて...禰豆子は反対.....。まあ、予想はしていたけど....獪岳と協力することになっても、互いを信じていないと意味がないのよね......。協力関係を築くにしても、互いを信用しないと築くことはできない。禰豆子は獪岳のことを全然信用していないし、炭治郎は悩んではいるが、獪岳のことを信用はしていないのよね.....。.......どうしようか...。
「そう言う彩花はどうなんだ?」
「うーん.....。私は.......。」
...どうしよう......。.....炭治郎と禰豆子のことを考えると、あんまり精神的なストレスを与えたくない...。....でも、獪岳と協力関係が結べたなら、何かと好都合なことがあるんだよね......。.......よし。
「....私は......協力関係を結ぶことには...賛成かな.....。」
「!...彩花........。」
「但し、条件があります。」
「条件だ?」
「そう。いくつか条件を出させてほしいのです。」
私の言葉に炭治郎と禰豆子が何か言いたそうにしていたが、私はその前にそう言った。
いきなり獪岳を信じろと言われて、流石に炭治郎も禰豆子も信頼するのは無理だ。...それなら、いくつかの条件を出して、それを獪岳が守っていれば、少しは信用できるようになるんじゃないかなと思ったの.....。後は、獪岳次第であるのと時間の問題かな....。
「一つ目は私達と協力関係を結んでいることを他の人にバレないようにすること。協力関係を結んでいることが誰かにバレたら、獪岳さんを監視して鬼殺隊の人達が来るかもしれませんからね。獪岳さんも色々な人達に付き纏われたり、監視されたりするのは嫌でしょうし。」
「...まあ、確かにな。」
この協力関係がバレたら、互いに面倒なことになるのは確実だからね......。
「二つ目の条件は鬼殺隊の情報を教えてくれること。」
「.....それは、つまり...鬼殺隊の情報を漏らせ.....ということか。」
「まあ、そうですね。私の知りたい情報は二つ。一つは鬼殺隊全体の現状、もう一つは善逸達や柱の行動...この二つを教えてほしいのです。」
鬼殺隊の情報は欲しい。相手の行動範囲が分かれば、こっちは鉢合わせにならないように動ける。何よりも、ここから先は柱が大きく関わる。柱の行動が分かれば原作の次の話が始まる時期が分かるはずだ。そうすれば、その時期に間に合うか、もしくはそれよりも先に動くことができるかもしれない。
「...俺は別に構わねえ....。あのカス達や柱達の行動が分かればいいんだな?」
「はい。鬼殺隊の動きが分かった方が動きやすいので。」
「......できる限り、その情報を集めておく。」
よし。これで、鬼殺隊の情報は得られそうね。さてと、あと個人的なことを頼みたいけど.......これは承諾してくれるかな...?
「....それと........これは私の個人的なお願いだから.....断ってもいいです。獪岳さんは水の呼吸とは違う呼吸を使っているんですよね?」
「あ、ああ...。俺は雷の呼吸を使う。それがどうした?」
「私に雷の呼吸を教えてほしいのです。」
「はあ?」
「えっ?」
私の質問に何を聞きたいのかという顔をしながら答えていた獪岳は、次の私の言葉を聞いて何を言っているんだ、こいつという顔をして私を見ていた。炭治郎と禰豆子も私の言葉に驚いている様子だった。
「お前、雷の呼吸を教えてくれとはどういうことだ?」
「私には華ノ舞いという呼吸の型のようなものを使っているのですが、その型を私は知らないのです。」
「はあ?知らねえ?」
「はい...。私は型を知らないのです。しかし.....何がきっかけなのか分からないのですが....今まで見たり教えてもらったりしたものが頭の中に流れて、それが型になるのです。何故、それらが型となるのかは分かりませんが.......。」
「....つまり、手がかりも何も分からねえ呼吸か。」
「まあ、そう捉えてもいいです。私は華ノ舞いのことが気になるのですけど、まだ二つしか分かっていないので、情報もまだ少ないのです。それで、知っていたり使えたりする呼吸が増えれば何か掴めるのではないかと考えたのですが....。」
そう。華ノ舞いが分かった時は、二年前に初めて鬼と会った時と藤襲山で手鬼と戦った時...きっかけは私も分からない。突然頭の中に呼吸の型が流れ、体が勝手にその型と似た動きをする......。ここ最近、鬼と戦っているが、その現象は全く起きない。鬼は関係なく、他に原因があるということだ。...それなら、何が原因なのか......外部とかが原因ではなく....私自身が原因...。私はそう考え、頭の中に流れる型が関係しているのではないかという考えに辿り着いた。頭の中に流れる......私が実際に見たり使ったりした型.....その型が足りないのかもしれない....華ノ舞いの型に必要な型が......。そう考えたからこそ、私はこうして獪岳に頼んでいる。
「.....それで、他の呼吸の型を知りたいのか...。」
「はい....。引き受けてもらえませんか?」
私は獪岳の華ノ舞いや頭の中に流れてくる型の話を獪岳に話した。炭治郎と禰豆子も私の話を聞いて、納得した様子で静観していた。私は獪岳の様子を見て、あと一押しだなと思って口を開いた。
「これは獪岳さんにも利点がありますよ。」
「ああ?なんだ?その利点というのは?」
「教えることができるということはそれをしっかり理解しているということになります。それに、教えることで新たに何かが分かったりすることだってありますよ。」
「..........。」
私の話に獪岳は真剣に考えている様子だった。
..さてと.......引き受けてくれるかな....。
「....言っておくが......俺は壱ノ型は使えない....それでもいいか?」
「構いませんよ。使えなくても、その知識だけでも教えてもらえれば大丈夫ですから。私は今、強くなりたいのです!」
まあ.......壱ノ型が使えないことは最初から知っていたし....知っていたうえで獪岳に頼んでいますからね。これから先のことを考えると不安だから、私は少しでも強くならないと......。
「.....後悔しても知らねえからな。」
!!.....それは....つまり........!
「...つまり、教えてくださるということですか?」
「......ああ...。」
「ありがとうございます!」
獪岳の返事に私は大喜びしながら礼を言った。
そこから、私達と獪岳の協力関係が始まった.....。週に一、二回はこうして獪岳と会っている。獪岳に雷の呼吸を教わり、その休憩時間に鬼殺隊の情報を教えてくれるという感じだ。相変わらず、鬼殺隊の方は私達のことを探して、色々なところで情報を集めているみたい。....まあ、獪岳から情報をもらっているから、今のところは鉢合わせすることはないけどね.......。雷の呼吸も獪岳に教わって順調に習得してきているし、獪岳との交流を重ねていたから、炭治郎も禰豆子も少しずつだけど獪岳のことを信用してきているし...。
「獪岳、もう少し待ってね。あとちょっとで薬が完成するから.....。」
私も、今ではさん付けをしないで獪岳と呼んでいるからね...。初めの時よりも良い信頼関係を築けていると思うよ。
「....その完成した薬をどうするんだ?」
「うん?この薬は瓶に入れるだけだよ?」
「いや。お前のことだから、どうせ碌なことを考えてねえだろうが。」
「........何のことですか?」
「.....お前、声は冷静だが....顔は引きつっているし、目は泳いでいるし、分かりやす過ぎるよな.....。その薬の効果を試すためにまたやる気だろう?」
「!!うぐっ!」
獪岳の話に私は図星を突かれて変な声が出た。
......獪岳にはもうあの時、あれを見つかってしまってから私の行動はお見通しみたいね....。
実は私は薬を作る時に決まってあることをする。幼い頃から私は自分の薬がちゃんと効くか心配だった。だから、私はその薬が効くかどうか自分で確かめていたのだ。と言っても、風邪をひいていないのに風邪薬を飲んでも意味がないからね。実験として使ったのは睡眠薬や麻痺薬、あとは.....毒薬かな?..........あっ。毒薬と言っても、害がないように薄めているから大丈夫だよ.....た、多分......。解毒薬も実験として飲んでいるし....。検査しても命に別状はなかったから.....。ただ.....試作品の毒薬を飲んでいるところを獪岳に見つかったのは迂闊だったと...私は今でも思う.....。
「....薄めていたし、解毒薬を飲んでいたし、体の検査もしていたのだから...別に良いじゃない。」
「体に明らかに耐性ができるくらい長い間、頻繁にやってんだからよぉ。あの二人にもしっかり見張るように言ったんだが.....その様子だと、全く反省してないようだな。」
私はそう言いながら木刀を手に持ち、獪岳も木刀を構えた。そして、同時に互いに距離を詰めて木刀を振った。木刀が強く打ち合う音が聞こえる。
そう。薬の濃さがだんだん濃くなっていても大丈夫なほど、薬や毒に対して耐性ができているのだ。もうすぐで獪岳が来ると思って慌てていたため、薬がそこまで薄くなっていなかったんだよね....。その後、獪岳にバレて色々と質問されたり、確認されたりして薬や毒の耐性ができていたことが分かったんだよね。獪岳達はそれくらい長い間、頻繁に実験していたことがバレたのよね.....。お陰様で炭治郎と禰豆子にもバレて見張られてしまい、前のように実験するのが難しくなったのだ。まあ、この件で炭治郎と禰豆子と獪岳の距離が少し縮まったのは良かったけど....私は納得がいかない。こっちは実験するのが難しくて、こっそりとやるしかないんだからね。やっちゃいけないことなのは分かっているけど.....。
「だって...実験のために動物を使って、その動物を死んじゃったら嫌なんだし、それに....自身の体で試した方が効果が良く分かるし........。」
「お前はなぁ.....。...そもそも薬をそんなに作らなくても良くないか?」
「ううん。薬はたくさん作っておいた方が良いのよ。薬には人それぞれで効くものと効かないものがあるからね。」
私と獪岳はそんなことを話しながら打ち合い稽古をしていた。獪岳との鍛練は得られるものが多かった。雷の呼吸を教えてくれるし、こうして打ち合い稽古もしてくれる。打ち合い稽古も雷の呼吸が速さを誇る呼吸なのだからか、始めは獪岳の速さに追いつけずに苦戦したが、今では獪岳の速さに大分追いつけるようになった。
「......作るのは構わねえが、実験は止めろ。いいな?」
「....それは保証できません。」
その言葉と同時に私と獪岳は後ろに退いた。
「彩花!獪岳!鍛練か?」
「うん。炭治郎も一緒にやる?」
「ああ。勿論だ。」
炭治郎に話しかけられ、私がそれに返事をして一緒に鍛練しようと誘うと、炭治郎も木刀を持った。獪岳を少しずつ信じられるようになって、こんな感じで炭治郎も鍛練に加わるようになった。
「獪岳も良いよね?」
「それはいいが......そいつを納得させてからにしろよな。」
「はいはい。」
私が獪岳に確認すると、獪岳は溜め息を吐きながらそう言って炭治郎の後ろの方を指差した。私はもうどういうことなのか分かっているので、獪岳にそう返事をしてその方向にいる人物を見た。案の定.....。
「...........。」
「禰豆子。そう獪岳を睨まなくても大丈夫だからね。」
「でも.....。」
私が炭治郎の後ろにいた禰豆子に話しかけて説得しようとするが、禰豆子は納得できない様子だった。
禰豆子は少しは獪岳のことを信用し始めているが、炭治郎と比べるとそこまでは信頼していない。というより、自分と話すのはいいが、兄である炭治郎に近づけることに関しては警戒している。だから、まだ炭治郎と一緒にいることを心配して、毎回こうなっている。
「大丈夫だ。怪我はしないよ。」
「鍛練が終わったら、次は鬼ごっこしよう。ね?」
「......うん。」
炭治郎と私がそう言うと、禰豆子は渋々納得してくれた。
禰豆子はそんなに獪岳のことを信用してはいないが、一緒に稽古に付き合うことに抵抗はないみたい。まあ、禰豆子は剣術を使うことも呼吸を使うこともできないので、脚を鍛えるためにやっている鬼ごっこだけは参加している。
...というのが、毎回の鍛練の流れです。なんだかんだ言っても獪岳は鍛練や鬼ごっこにも付き合ってくれるし、私はこの鍛練がとても楽しいし、炭治郎も楽しそうだ。禰豆子も鬼ごっこは楽しんでいるからね...。だんだん笑うようになってきたし、獪岳との鍛練は色々と正解だったみたい。これは良い傾向だよ。
「今日はここまでだ。」
「いつもありがとうね、獪岳。」
楽しい時間はあっという間に過ぎる。今日の獪岳との鍛練は終わった。......で、その後はと言うと....
「獪岳。今日の情報は?」
「鬼殺隊で目立った動きはまだねえよ。」
そう。獪岳から情報を聞くのだ。鬼殺隊の情報は私達が鉢合わせしないためにはとても役立つものだ。獪岳もそれとなく噂話を聞いたり鎹鴉に情報を集めさせたりなどしているから、鬼殺隊にはバレていないようだ。
「ただ.....炎柱がカス達を連れて任務に行くそうだ。」
「!?」
獪岳の話に私の体は少しピクリと反応した。
炎柱...煉獄さんが.....善逸達を連れて任務...........まさか.......
「....場所は?」
「確か、列車だとか言っていたな。」
獪岳の言葉に私はやっぱりと思った。
原作の流れからして、次はそれだと思ったし...そろそろ始まる頃だと思っていた。時期的にもね.......。...とうとう始まるのね....無限列車編が......。
「他の鬼殺隊の奴らの動きは前と変わらねえ。.....んじゃあ、俺はもう行く。これから任務だからな。」
「いつもありがとうね。その情報は本当に助かったよ。」
獪岳は持っている情報を全て話し終えると、すぐにその場を去った。今回は急いでいるようだ。毎回ぎりぎりの時間まで鍛練をつけてくれるからね...。獪岳って....なんだかんだ面倒見が良いんだよね......。ただ、獪岳についている鎹鴉に私達と会っていることを誰にも話さないようにと頼んでいた時、バラしたらこいつが実験体にするからなと獪岳が私を指差して言ったことは許さない。私が生き物を実験体にしたくないのは、獪岳も知っているのに...。....まあ。その結果、獪岳の鎹鴉は鬼殺隊に私達のことを漏らさなかったんだけど.....そのせいで、獪岳の鎹鴉に怖がられてしまって仲良くなるのが大変だったんだよ......。まあ、今は仲良くなって、その上で黙ってくれているけどね.....。
「...炭治郎と禰豆子も聞いたよね?」
「ああ....。」
「うん.......。」
獪岳が去っていく様子を見届けた後、私は近くにいた炭治郎と禰豆子に声をかけた。さっきの獪岳の話も聞き耳を立てて聞いていたからね.......。炭治郎も禰豆子もどうするかはもう決めているみたいね...。勿論、私も炭治郎と禰豆子と同じ考えだと思う....。何せ十二鬼月とも遭遇するし、炭治郎と禰豆子がいないと善逸達や一般の人達がどうなるか分からないからね...。これは関わられずにはいられないよ。見て見ぬふりなんてできない。
「.........鬼殺隊の方は色々と進んでいるみたいだし、私達も行こうか。」
原作の話も始まっているみたいだから、私達も早く行かないとね.......無限列車に。