ごほん。取り乱してばかりじゃ何も解決できない。一旦落ち着こう。頭の中が多少混乱しているが、冷静にならないと。......落ち着け、落ち着くんだ!
少し落ち着いてきたから、状況を確認しよう。まずは私に威嚇してくる禰豆子から......
禰豆子は鋭い爪と猫のような縦長な目から鬼になっていることは分かる。しかも、今はまだ太陽が出ているのに元気に威嚇してくることから、禰豆子は日光を克服していることが分かる。
鬼は日の光を浴びると灰になってしまうが、禰豆子は日光を克服することができた鬼だ。原作の禰豆子が日光を克服したのは刀鍛冶の里の戦いが終わった後だから、今は刀鍛冶の里の戦いより後だと考えられるが........。
一方で炭治郎の方を見ると、市松模様の羽織を着ているが、その下は鬼殺隊の隊服ではなかった。鬼殺隊に入る前の初期の時に着ていた着物だ。それに、炭治郎の痣はまだやけどのような痣だ。
さらに言うと、炭治郎も禰豆子も十三歳の私とそんなに身長が変わらない...。
これらのことを考えると、原作が始まってすぐだと思うのだが.......時期から考えて禰豆子が日光を克服するのはまだ先だけど、実際に今、日光を克服しているんだよね....。
一体、どういうことなの!?って叫びたいけど、我慢しないと。
というか、今はこんなことを考えている場合じゃない!
私はもう一度炭治郎の方を見た。顔色が悪く、見たところ熱っぽい。耳を澄ますと息も荒くて苦しそう。薬を渡したいけど、さっき全部売っちゃったから何も持ってないし、休むところだって必要だ。
原作とかの前にまずはこっちをなんとかしないと!目の前で倒れている人がいるんだから。
けど、禰豆子が看病させてくれるかな...。威嚇してくるし.....相当警戒しているよね......。でも炭治郎の様子からして、だんだん容態が悪化しているし...ああもう!声をかけるしかないでしょ!
「......あのー.......」
「ヴッー!」
声をかけただけで唸り声を上げられてしまった。
うーん....どうしよう.......。ここまで警戒されてるとは...。なんとかして警戒を解かないと....怯んでいる場合じゃない。
「あの!その倒れた人は大丈夫ですか?見たところ、全然大丈夫そうに見えないのですが....熱とかあるのでしょうか?」
私が聞くと、禰豆子は一瞬目を見開いて、さらに警戒してきた。
逆効果だったのかもしれない...けど、熱があることは分かった。熱があるならどこかに休ませないと....。
「これでも私は薬草を調合して薬を作るのが仕事だから。本当は今すぐ解熱剤を渡したいけど、今は町で売っちゃったから薬がないの。今から薬を持ってくるから、そこで待ってて。それと、いつまでも固い地面に寝かせていたら余計に体調が悪くなるから、柔らかい場所に運んで寝かせてあげて」
これで、どうにかなればいいんだけど...って⁉︎
私がそう言うと、禰豆子は炭治郎を背負ってどこかに行こうとした。
いや、ちょっと待て!
「何⁉︎どこに行くの⁉︎行かないといけない場所があるの⁉︎でも、その場所は近いの⁉︎遠くだったら背負っても悪化するよ⁉︎」
私は必死に禰豆子を追いかけて声をかけるが、禰豆子は何も言ってくれない。
いや、せめて唸り声でもいいから何か言ってよ!
「もう!お節介なことしているのは分かってるけど、何か言ってよ!何か言ってくれないと、どうしたらいいか分からないよ!いや、どうもしてほしくないかもしれないけど!」
私がそこまで言うと、禰豆子が突然立ち止まった。私も驚いて立ち止まった。互いに何も言わず、辺りは沈黙で包まれた。
えっ?......何?この状況?私から喋るの?
「ど、どうして?」
あ、禰豆子から話してくれた。やっと喋ってくれたよ...。私の方を見てくれないけど......。
「どうしてって?」
けど、私は禰豆子のどうしてという言葉の意味が分からず、聞き返した。
「どう、して、わた、し、たち、の、こと、を?あ、なた、に、は、かんけい、な、い。」
「へっ?」
禰豆子がたどたどしく言う言葉に、私は変な声が出た。
えっ?いやいや........。
ちょっと禰豆子にそう言われるのは予想外だったよ。
「いや。目の前に倒れていたら普通に心配するよ。体調の悪い人を目の前に放置して忘れることなんてできるわけないよ。私のことを怪しいって思ってるのは分かるよ。でも、私はなんとかしたいの。........って、こうしている間にますます熱が上がってない!?早く休ませて、絶対に安静にさせないと!」
私は初めは警戒を解いてくれるように笑顔で話しかけていたが、炭治郎が苦しそうにしているのを見て、めちゃくちゃ焦った。禰豆子が私の方を向いて黙って見ていたが、私は焦り過ぎて気づかなかった。しばらくして、禰豆子は後ろを向いて口を開いた。
「ど、どこ?」
「どこって?」
「い、え。」
いえ?...家....家!?家って.....まさか.......
「.....もしかして、私の家がどこかって聞いているの?」
私がまさかと思いながら聞くと、禰豆子は無言で頷いた。
ですよねー。一瞬、時期的に鱗滝さんの家かなと思ったけど、流れ的にやっぱり私の家かー。まあ、鱗滝さんの家は禰豆子の方が知ってるし、そもそも私の方が分かりません。
「この山の上だよ。」
私が近くの山を指差してそう言うと、禰豆子は炭治郎を背負ったまま、私が指差した山の方を向き、その山を登ろうとした。
「ま、待って!私の言う通りに休ませようとしてくれてるのはありがたいけど、山を登って体調が悪化したら大変よ!他に休める場所を探すから、そこで.........。」
私がそう言いかけるが、禰豆子の何かを訴えるかのような目を見て口を閉じた。
.......もしかして.....
「...他の人のことが苦手だったり関わりたくないと思ってたりとかするの?」
私の言葉に禰豆子はまた頷いた。
もうなんだかよく分からなくなってきた.....。原作の設定と全然違う....。頭の中を整理するのは後回しだ。とりあえず今は炭治郎のことを考えることにしよう。いちいち考えていたらキリがなさそうだ。
「それって....私の家も駄目じゃない?」
「でも、ほかに、いいところ、ない。」
私がふと思ったことを聞くと、禰豆子はそれを否定せずにそう言った。
うん。知っていたけど、私も駄目だって言われて結構胸に刺さったよ。でも、人が苦手な人を私の家にも他の人の家にも連れて行くのはなんか気が引けるというか......その...うーん。
「.....分かった。でも、私の家までの道は結構険しいよ。本当にいいの?」
私が確認すると、禰豆子はまた無言で頷いた。まあ、声をかけたのは私だし、引き止めたのも私だからねー.......。
「....じゃあ、案内するね。」
私は炭治郎と禰豆子を家まで案内しようとしたが、すぐに立ち止まった。あることを忘れていたからだ。
「あー...ちょっと待ってね。」
私は一旦禰豆子を待たせて自分の荷物を漁り出した。禰豆子が警戒していることには気がついていないフリをして、私は探していた物を見つけた。
「はい。これ。」
私はそれを.......手拭いを禰豆子の前に出した。
「私の家の近くに藤の花が咲いているの。気休め程度にしかならないと思うけど、少しでもマシになると思うから。」
私がそう言うと、禰豆子は目を見開いて後退った。
....うん。まあ、こうなると分かってたよ。そりゃあ、こっちは鬼だって分かってるんだからね。
「察してる通り、私は貴女が鬼だということは分かってるよ。昔、お年寄りの人達に鬼について聞いたことがあるから.....。それでも、私は貴女が鬼であっても助けると決めたら助けるよ。そんなことより、私には病人の体調の方が心配だよ。私は鬼であろうと何であろうともそんなに気にしてないから....貴女は気にするみたいだけど.....。こんな状態で悪いけど、早く行こう。」
私の言葉に禰豆子は目を見開きながらも警戒していたが、しばらく考えて頷いた。背負っている炭治郎を落とさないように背負い直そうとしたのを見て、やっぱり私がつけようかと声をかけた。
「その子を万が一に落としたら大変だからね。」
本当は私が代わりに炭治郎を背負って禰豆子が息苦しくないように自分で調節した方がいいのだろうけど、禰豆子は絶対警戒しているから無理だろうね。せめて、これくらいはさせてほしいな....。
禰豆子は私のことを見た後、動きを止めた。やってもいいってことなのかな?.....でも、警戒していつでも逃げれるようにしてる。あんまり刺激しないように早く終わらせよう。
私は手拭いを広げ、それを半分に折った後、禰豆子の口元を手拭いで覆って後ろに結んだ。マスクのような感じになるのをイメージしたが...まあ、いいか。
「大丈夫?きつくない?息苦しくない?」
私がそう聞くと、禰豆子は頷いてくれた。私はそれに安心した後、私の暮らしている山を指差した。
「行こう。」
なんか波乱が起こりそうな気がする.......あれ?何かフラグが立った気がする。気のせいかな........。
分からない.......。
私はそう思いながら案内する女の子を見た。見て見ぬフリをすれば良かったのに、彼女は私達に声をかけた。お兄ちゃんが倒れているのを見て、心配して声をかけたみたい。彼女は変わった人ね。
私の名前は竈門禰豆子。炭焼きを家業としている六人兄弟の長女で、貧しいながらも幸せに暮らしていた...。けど、お父さんが病気で亡くなって、お兄ちゃん以外の家族は殺され、私は鬼になってしまった。鬼になった私を見て、お兄ちゃんは泣いていたけど、そうしている場合でもなかったから、私とお兄ちゃんは亡くなった家族を埋葬してその場から離れた。
どうして離れたのって?
それはあいつが来るから.....あいつが来る前にそこから離れたかった....。
誰かなのかって?どうして来るって分かってるのかって?
それはあいつ....あいつらが私を殺し、お兄ちゃんまで殺したから.....。あいつが来るのは知ってる。だって、前世では来たのだから。
私には前世の記憶というものがある。信じられない話だけど、本当のことなんです。私が前世の記憶を思い出したのは私が鬼になった時......前世と同じようにお兄ちゃん以外の家族を鬼舞辻無惨に殺され、私が鬼になった時に思い出した。お兄ちゃんも私が鬼になったのを見て、前世の記憶が戻ったみたい。......前世の記憶を思い出した私とお兄ちゃんはあいつ.......水柱の冨岡義勇に出会って鬼殺隊に入ることになることを思い出し、私とお兄ちゃんはすぐに家族を埋葬して家から離れた。あいつが来る前に......。
一刻も早く離れないとと思ってたから、私はいつの間にか日光を克服していた。私もお兄ちゃんも驚いたけど、今はそれどころじゃなかった...。
休まず走り続けていたから、お兄ちゃんが倒れてしまった。私は鬼だから平気だった。お兄ちゃんが急に倒れて私は困った。特に目的もなく、行く宛てもなく、ただあそこから離れるために...遠くに行きたくてここまで来た。周りは知らない場所....私もお兄ちゃんもあの件から人間が嫌い。憎くてたまらない。でも、お兄ちゃんが熱を出して倒れてる....どうしよう.....。
私が途方に暮れていた.......そんな時に....彼女が来た。
「大丈夫ですか!」
声が聞こえてすぐに私はお兄ちゃんを後ろに庇い、声をかけてきた人を威嚇した。
声をかけてきた彼女は少し緑が混じった黒髪に少し大きな黒色の瞳をもった、まだ幼さを思わせる顔立ちだが、私やお兄ちゃんとそんなに背丈が変わらない子だった。
彼女は戸惑っている様子だった。私が威嚇してるから困惑しているのね...。早くあっちに行ってくれないかな....。けど、私の思いとは裏腹に彼女は私達に話しかけてくる。こっちが拒絶しているのに、彼女は熱が出ている、薬を持ってくる、柔らかい場所に休ませた方がいいと色々言ってくる。貴女には関係ないんだから、さっさとあっちに行った方がいいのに....。
私は彼女の話を無視して、お兄ちゃんを背負って彼女から離れた。
(もう。関わらなくていいのに.....。)
私は心の中でそう呟いていると、彼女は私達を追いかけてきた。私が歩くスピードを上げても、彼女は追いかけてくる。彼女は私を追いかけながらお兄ちゃんの心配をしていた。
どうして来るの⁉︎
「もう!お節介なことをしているのは分かってるけど、何か言ってよ!何か言ってくれないと、どうしたらいいか分からないよ!どうもしてほしくないかもしれないけど!」
それなら....
「ど、どうして?」
彼女は私が声を出すと少し嬉しそうにしていたが、すぐに首を傾げた。
「どうしてって?」
「どう、して、わた、し、たち、の、こと、を?あ、なた、に、は、かんけい、な、い。」
「へっ?」
私が言うと、彼女から変な声が聞こえた。まるで聞かれたことがよく分からないという風に....。
「いや。目の前に倒れていたら普通に心配するよ。体調が悪い人を目の前に放置して忘れることなんてできるわけないよ。私のことを怪しいって思ってるのは分かるよ。でも、私はなんとかしたいの。」
私は気づかれないように彼女の方を見た。彼女の笑顔を見て、私は一瞬目を見開いた。あの笑顔は私を騙そうとするものじゃない。本当に優しくて.......誰かのことを心の底から思っている.......まるで、お兄ちゃんが私に向ける笑顔みたいだった....。お兄ちゃんみたいと思ったせいか...不思議と彼女に安心感がある......。お兄ちゃんの様子を見て焦る彼女を見て、私の勘は外れていないんじゃないかと思った。もしかしたら....彼女なら......。
「ど、どこ?」
「どこって?」
「い、え。」
私がそう言うと、彼女はしばらく考えてからあんぐりと口を開けた。
「....もしかして、私の家がどこかって聞いているの?」
彼女の言葉に、私は何を言ってるの?貴女以外の誰がいるの?と思いながらも頷いた。彼女は少し悩んでいる様子で近くにある山を指差した。
「この山の上だよ。」
彼女が暮らしていると言った山を見た。彼女の暮らす山は私達が住んでいた山よりも低かった。私がお兄ちゃんをしっかり背負ってその山に向かおうとしたら、彼女が止めてきた。なんで止めるの?
「ま、待って!私の言う通りに休ませようとしてくれてるのはありがたいけど、山を登って体調が悪化したら大変よ!他に休める場所を探すから、そこで.........。」
何か言ってるけど、私はお兄ちゃんを他の人に預けるのは嫌なのよ!また、お兄ちゃんを死なせたくないのよ!
「他の人のことが苦手だったり関わりたくないとか思ってたりとかするの?」
察しが良いみたいね....。彼女は私の目を見て勘づいたみたい。
「それって....私の家も駄目じゃない?」
「けど、ほかに、いいところ、ない。」
確かにそうだけど、彼女と他の人だったら彼女の方がまだ信用できる。どうしてか分からないけど、私は彼女を見ると落ち着く。昔の...裏切られる前のお兄ちゃんと似ている気がするからかな.......。
「....分かった。でも、私の家までの道は結構険しいよ。本当にいいの?」
私は無言で頷いた。ほんの少しの会話だったけど、彼女が本当に心配してくれているのは分かる。
「....じゃあ、案内するね。」
彼女がそう言って歩き始め、私もその後を追ったが.......
「あー...ちょっと待ってね。」
彼女は急に止まって私にそう言うと、背負っていた箱から何かを取り出そうとした。私はそんな彼女を警戒し、彼女が手を出した時に一歩下がった.....。
「はい。これ。」
彼女が渡してきたのは手拭いだった......。どういうこと?
「私の家の近くに藤の花が咲いているの。気休め程度にしかならないと思うけど、少しでもマシになると思うから。」
彼女の言葉に私は再び警戒した。
彼女は私のことを鬼だって気づいている。一般人の彼女が鬼のことを知っていて.....尚且つ、彼女は私のことを鬼だって分かっていながら私達を家まで連れて行こうとしている....。何か裏があるかもしれない。
「察してる通り、私は貴女が鬼だということは分かってるよ。昔、お年寄りの人達に鬼について聞いたことがあるから.....。それでも、私は貴女が鬼であっても助けると決めたら助けるよ。そんなことより、私には病人の体調の方が心配だよ。私は貴女が鬼であろうと何であろうともそんなに気にしてないから....貴女は気にするみたいだけど.....。こんな状態で悪いけど、早く行こう。」
彼女は何を思ったのかそう話し始めた。.....でも、嘘ではないみたい。まあ。彼女が怪しい行動したら私がなんとかするから....。
私は大丈夫だと考えて彼女に頷き、お兄ちゃんを背負い直して、手拭いを身につけようと考えた時...
「私がつけようか?その子を万が一に落としたら大変だからね。」
彼女は私の考えたことがお見通しみたいで、そう声をかけてきた。私がお兄ちゃんに触ってほしくないのに気づいたみたい。私もあんまり触ってほしくなかったけど、お兄ちゃんよりもまだ.......。私はそう思い、彼女も察してくれたみたいで、必要最低限に触れ、尚且つ素早く結んでくれた。しかし丁寧に調節してくれたので、丁度良く、息苦しさも感じないくらいだった。彼女が少し触れた手はとても優しく...暖かった......。
「大丈夫?きつくない?息苦しくない?」
彼女は私の口元に手拭いを巻いた後、そう聞いた。その姿がお兄ちゃんに本当に似ていた。
息苦しくなかったから、私は頷いた。それを見て、彼女は安心したような顔をした。
「行こう。」
彼女は笑顔でそう言って歩き出した。彼女の背中を追いながら私は確信した。
彼女はお人好しね。