「.....禰豆子。とりあえず、私の切符を血鬼術で燃やしてくれる?」
「わかった。」
色々と予定が変わったが、とりあえず私は禰豆子に自分の分の切符を血鬼術で燃やしてくれるように頼んだ。目が覚めているとはいえ、血鬼術がかかっている切符をそのままに持っておくことはできないからね...。念には念を入れておかないと......。
「さてと...。これは....まずは少し状況を確認した方がいいね.....。」
「まだ行かないの?」
「うん。予定よりも私が早く目を覚ましてしちゃったからね....。先がもう読めなくなってきたから、列車が今、どうなっているか確認しようと思う。下手に手を出して相手を刺激したら、一般の人達に被害が出る。状況を確認してから対策を練り直そう。」
禰豆子にそう言いながら私は周りを見た。冷静に言っているように見えるが、実は内心では凄く焦っています。
早く魘夢を倒した方がいいのは分かっているが、今の段階はおそらく魘夢が列車と融合しようとしている状態だ。まだ完全には融合していないのなら、今のうちに斬った方がいいんじゃないかとは考えたけど......不安要素がある。今の魘夢が列車と完全に融合していないとしても、列車は体の一部のようになっているかもしれないので、完全に融合できていない状態でも乗客を襲うことはできるかもしれない。
....でも、完全に列車と融合するのを待つのは駄目だ。それに、もう一つ問題がある。魘夢は幸せな夢を見て死にたいと思っている人達に協力させているため、その協力させている人達が危険な目に合うか、もしくは人質としてとられてしまう可能性もある。魘夢に協力しているとはいえ、あの人達は誘惑に負けただけの被害者のような人達だからね。見殺しにしたいなんて思えない。だが、この人達は禰豆子の爆血によって炭治郎達の夢から追い出され、そこで躍起になって炭治郎を殺そうとするのだけど、今のところは私達に誰も送ってないのを見ると、魘夢は隊服を着ていない私達が鬼狩りではないと踏んで脅威に感じてないのだろう。
となると、あの人達と話をするには善逸達を起こすのが良いのだけど、禰豆子が善逸達にやってくれるかなんだよね。.....起こしてくれなさそうだな....。それと、あの人達を起こしたら魘夢にバレてしまうからね。まあ、私が起きたことで完全にバレているよね...。なら、いつ私達に攻撃してくるか分からないな。.......となると、やっぱり.....。
しばらくの間、私は周りをよく見て考えて...そして、動くことを決めた。今、魘夢を刺激して何が起こるか分からないが、完全に列車と融合されるのはまずいし、あっちに私達のことがバレているなら先手を打たれるのもまずい。こっちが先に仕掛けられれば列車と融合する時間を遅らせられるのかもしれない。それなら、先に仕掛けた方がいいのかも。
幸い私と炭治郎は鬼殺隊に入っていないから、対象外として誰も縄を結びに来ないし、精神の核を壊しに来ない。魘夢もまだ融合の最中でこっちに来れない。
つまり、今なら誰にも邪魔されずに動くことができる。よし。
「禰豆子、この箱をお願いね。それと、炭治郎の切符を血鬼術で燃やしておいて!私は他の車両を少し見た後、上にいるはずの鬼のところに行ってくる!だから、炭治郎に私が早く目が覚めてしまったことを話しておいて!」
「うん。わかった。気をつけて。」
私は禰豆子に背負い箱を任せ、炭治郎の血鬼術を解くことと炭治郎が起きたら状況の説明をするように頼み、他の車両に向かった。他の車両に来たのは列車全体の状況を確認したいというのもあるが、乗客や善逸達の様子を確認したかったからだ。乗客の人達は今のところ無事そうだし.....善逸達は原作通りに腕を縄で縛られ、その縄の先が別の男の子や女の子の腕に縛られていた。夢の中に堕ち始めている段階なんだと思う。となると、この段階だからあの子達もまだ精神の核を探している最中かな....。
ただ......ずっと眠っていたくなるような夢を見せられているから、善逸達が望むものを見ているのだろう.......。その場で善逸と伊之助の様子を見つめていると、善逸と伊之助が寝ながら炭治郎と禰豆子の名前を呼んでいた。それを見て、私の心が凄く痛む。きっと炭治郎と禰豆子が出てくる夢を見ているのだろう.....。....今の関係になる前の.....。
...夢の中では......善逸達はとても幸せなのだろう....。血鬼術のせいかどうかは分からないが......炭治郎への裏切りの件は善逸達にとって不本意なことだったのかもしれない。.....だからこそ、その夢...前の関係に戻れたその夢は善逸達には目が覚めたくなくなるほど幸せな夢なのだろう......。....でも........。
「幸せな夢だろうと....目覚めたくなくなるような夢だろうと......現実は変わらないんだよ...。厳しいことを言うかもしれないけど....今見ているものは幻だからね。...現実逃避をしても....現実はその夢の通りになってくれないから......。その魘夢が作った仮初の幻ではなく、現実を見た方がいいよ。」
私は小声でそう呟き、しばらくの間は善逸と伊之助のことを見ていた。その時に善逸と伊之助の目から涙が流れていることに気がつき、手拭いでそっと拭いてあげた。私はとても切ない気持ちになったが、今はそれよりも行かないといけない場所があると思い、後ろ髪を引かれる思いで善逸達から視線を外して目を瞑り、その場から離れた。
.....ごめんね。この件に関して....私も何も分からないし......何もできないよ...。....炭治郎と禰豆子のことをよく見ているから、二人が善逸達鬼殺隊に会いたくないのは分かる...。.......けど、あの善逸と伊之助達を見ると....なんとかしたいと思ってしまう...。どうしてこうなったのかは分からないのだけど.....被害者は炭治郎と禰豆子、加害者は善逸達鬼殺隊....それが事実だというのに.....。...それなのに、なんか...ほっとくことができないんだよね......。........善逸達のことは気になるけど、早く魘夢をなんとかしないと....。しっかりしないと.....。
「うーん.....あっ。ここなら行けそう。」
私は列車の中を走り、扉を開けて上に出れそうな足場をありそうな場所を見つけた。原作では扉から外に出て炭治郎は列車の上に乗っていたけど....これは凄く怖いです。列車が走っている状態で扉から列車の上に登る度胸なんて普通はありませんが、今はとにかく体を動かさないと。風も強いし、万が一にも足を滑らしたら......そんなことを考えるだけでもう無理です!気にしては駄目!気にしては!
「....それにしても.....思ったよりも風が強いな。よく炭治郎はこの風であの扉から列車の上に登ることができたよね...わっと!?....ふう。危ない......。」
私は風で足が滑りそうになりながらもなんとか列車の上に登ることができた。列車の上に登れたことに少し安堵したが、すぐに気を引き締めた。列車の上に登ることができても風は強いし、それにこの場所には鬼がいる。油断しないようにしないと....。.....そういえば、列車内でつけていたら怪しまられるからと思って狐面を外していたけど、そのまま狐面をつけていなかったな...。でも、ここでつけるのは止めておこう。風に飛ばされてほしくないし。
「.....あれ?もう夢から覚めちゃったの?」
私がそんなことを考えていると声が聞こえた。この場所と声ですぐに誰か分かった....。私は声が聞こえた方に振り向いた。そこには、原作で見た魘夢という鬼が列車の上に立っていた。
「幸せな夢だったはずなのに...どうして目が覚めちゃったの?.」
「それは私の方が気になるかな。なんで何もしないで目を覚ますことができたのかは私も分からないよ。それに.....現実に戻りたくなくなるほどの幸せな夢だったかというと......そうでもありませんでしたね。」
魘夢は心底不思議そうな顔をしてそう聞き、私は魘夢の質問に答えながら改めて自分の夢に関して疑問に思った。
確かに...。夢から覚めたあの時は夢の中で自分の首を斬らないで目が覚めたことと、カナエさんが夢の中に出てきたうえに華ノ舞いを何故か知っていたことに対して動揺し過ぎていたからそこまで頭が回らなかったが、私が見た夢は色々とおかしかった。夢の中で昔の自分に戻っている....亡くなったはずの家族と再会する.....これらは炭治郎と同じような夢だ。きっと...私も炭治郎のように家族と普通に暮らしていた時の夢を見たいと思っていたのだろう....。.......でも、少し違った。炭治郎の夢は鬼舞辻無惨に襲われずにいつも通りに家族と暮らしている夢だったので、炭治郎の家族は皆日常のような会話をしていた....。......しかし、私の両親は少し違った。私の両親は日常会話というより.....私を起こしに来たという感じに近かった。それに、原作の知識があるからというのもありそうだが、私はすぐにこれは夢だと......列車にいたと最初から気づいていた。これらの特徴は炭治郎が見た夢と違う......いや、炭治郎の夢の中でも最初は少し意識を保っていたし、炭治郎のお父さん、炭十郎さんが夢の中で炭治郎に助言を言っていたから、ここも炭治郎と同じなのか?...でも、私の場合は何故かカナエさんが出てきたよね......。何より、カナエさんと会った場所が可笑しい。無意識領域って.....私がなんで入れるの!?カナエさんもなんで私の無意識領域にいるの!?無意識領域って...魘夢が言うには、魘夢の見せる夢は無限には続いてはおらず、夢を見ている者を中心に円形になっている。そして、その夢の外側で無意識の中の領域であり、その領域には精神の核があるんだよね....。本来、夢を見ている張本人も自我が強い人ではなければ入れない場所なのに.....。ひょっとして、私って自我が強い?いや、そもそもそれとも何か少し違うような気がする....。
私はそこまで考えて首を横に振った。
今は考え込むのを止めた方がいい。目の前の魘夢がいつ攻撃してくるか分からない。
「それにしても...君は鬼狩りじゃないよね?なんで君は刀を持っているの?夢からこんなに早く目覚めるなんて、今も眠っている鬼狩りとは違うみたいだね。」
「まあ。.....私には少々事情があるのでしてね...。.......時間稼ぎはそこまでにしてください。」
魘夢は呑気に私に話しかけ、私はそう言いながら刀を構えた。
魘夢がこう何度も私に話しかけるのは私を警戒していないことと時間稼ぎというのがあるのだろう。血鬼術が破られたとはいえ、鬼殺隊に入っていない刀を持った一般人の私はそこまでの脅威ではないと思っているのだろう。だが、私が善逸達を起こしたらまずいし、列車との融合が終わってないから相手をしたくないとは思っているのだろう。だから、善逸達の精神の核を壊して列車と融合するために時間稼ぎが必要なのだろう.....。
「君は鬼狩りでもないのに俺と戦う気かい?」
「うん。貴方をこのまま放置することは無理ですから。」
魘夢は特に私のことを警戒せず、私は魘夢が油断している隙に先手を取ることにした。
「華ノ舞い 水ノ花 水仙流舞」
「強制昏倒催眠の囁き。眠れ。」
私が刀を振った同時に魘夢は血鬼術を仕掛けてきた。私は血鬼術を使ったことに気づき、すぐに夢の中に入ったら首を斬ろうと思って身構えた。しかし.......
「うん?」
「.....へっ?」
私は眠らずにそのまま刀を魘夢の頸に向け、魘夢はそのことに驚きながらもすぐに頸が斬られると気づき、後ろに退いた。私も眠らずにそのまま頸まで刃を向けれていたことに困惑してしまったので、刀を振るスピードが遅くなり、避けられた後も少し動揺していた。互いに何が起きているか分からず、とりあえず私は自分の頰をつねった。でも、寝てはいないようだ。
......えーと.....。...これはまた....予想外のことが起きたな。さっきは何故か早く魘夢の血鬼術が解けたのだが、今度は魘夢の血鬼術が効かない。これもさっきのことと何か関係がありそうですね......。魘夢の血鬼術が私に効かないことは私にとって好都合なのだけど、私も困惑してしまってそう考えることができなくなっていた。
「眠れ。」
「華ノ舞い 水ノ花 水仙流舞」
魘夢がもう一度血鬼術をかけてくる中、私はまた華ノ舞いを使い、今度は迷いなく刀を振った。しかし、これも魘夢に避けられてしまった。右肩から斜めに斬ることはできたが、すぐにその傷も癒えてしまう。
「眠れ。眠れ!眠れ!眠れ!」
魘夢は私のことを鬼狩りではないからという理由で油断していたが、予想外のことに動揺して血鬼術をかけようと必死になっていた。私も魘夢が何度も血鬼術をかけているのは分かっているので、何故か眠らないことに疑問に思いながらも魘夢との距離を縮める。魘夢も私も血鬼術が効かないという予想外の事態に困惑していた。
......駄目。魘夢の体の一部を斬ることができても頸を斬ることはできない。...血鬼術が効かないことはこっちにとっては好都合だが.....効かないと分かっても、どうしても身構えてしまう。なんとかしないと....。.....身構える暇がない速さで斬れればもしかしたら.......実戦で使うのは初めてだけど....やるしかない!
「どうして血鬼術が効かないのかは私にも分かりませんが、貴方の頸は斬らせてもらいますよ!」
私はそう言って立ち止まり、左足を後ろに下げて姿勢を低くし、刀を鞘に戻して居合の態勢に入った。刀を少し抜くと、刀からビリッという音が聞こえ、少ししか見えてなかった刀は黄色く染まっていた。おそらく刀全体が黄色く染まっているだろう。私はゆっくりと呼吸をした。
「雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃」
そう言うと、雷の音と同時に私の姿は魘夢の前から消え、気がついた時には魘夢の頸は斬られていた。頸を斬られた魘夢の体は列車の上に倒れる。
うん。上手くいった。獪岳にはああ言ったけど、本当に説明されていただけだったから少し不安だったんだよね。他の型はしっかり見せてもらったし、説明は(炭治郎と比べて)凄く分かりやすかったから無事に成功できた。速さは善逸には及ばないけど、成功して良かったよ。.......でも.....まだ終わってないんだよね.....。
「いつまで死んだフリをしているのですか。貴方が頸を斬られても大丈夫だということは、とっくに分かっていますよ。」
「.......本当に君って、むかつくよね...。」
私は後ろを振り向き、全く動かない魘夢に声をかけた。すると、全く動かなかった魘夢の頸が動き出した。列車から出てくる何かと魘夢の頸が繋がれ、まるでろくろ首のようだ。
「俺は人が苦しんだり絶望したりした顔を見るのが好きなのに、君はどうして頸を斬られても生きているのかっていう顔をしていない。まるで全てを知っていたかのような顔をしている。それに、俺の血鬼術は効かないし、凄く苛つく。」
「まあ、血鬼術の件以外のことを知っているのは事実だね。列車と融合しようとしていたのでしょう?」
魘夢は私のことにイライラしている様子だったが、私はそれよりも気になることがあったので、そう言った。
原作よりも早く戦ってしまったから、列車の融合がどこまで進んでいるのか分からない。斬った時に手応えは少しあったけど......何かがおかしいと感じた。絶対に何かある。
「そうだよ。俺は列車と融合した。まだ完全というわけではないけど、この列車は俺の身体の一部だ。元の身体の頸がこんなにも早く斬られてしまったのは想定外だったが、列車の方が無事だから俺はまだ生きている。」
魘夢の話を聞き、私は列車の様子を見た。
やっぱり完全には列車と融合できていないらしいけど、身体の一部になっているのならこの状況が危険なことには変わりない。身体の一部である状態でも、原作と同じようなことができるのかもしれないね.....。
「君の察しが良くて助かるよ。つまり、この列車に乗っている乗客全員が人質。まだ完全に融合できていないとはいえ、俺は乗客全員を襲うことも喰べることもできる。」
やはり....できればこれは外れてほしかったが、完全に融合できていない状態でも油断はできないということね...。
「ねえ。守りきれる?君は一人で、この列車の端から端までうじゃうじゃとしている人間達全てを俺に"おあずけ"させられるかな?」
魘夢はそう言うと、頸も体も列車の中へと吸収されて消えた。
....原作に近い流れになってきたな。魘夢の列車の融合を止められなかったのは残念だったが、私達の負けにはしませんし、乗客も全員守ります。ところで、魘夢は私一人と言っていたけど、残念ながら一人じゃないんだよね。.....そろそろ目覚めた頃かな?
「炭治郎!禰豆子!」
私はすぐに列車の上に登った場所から登る時とは逆の手順で降りて、二人のいる車両に行き、大声で炭治郎と禰豆子の名前を呼んだ。
あれから時間が経っているし、炭治郎も起きているだろう。
「彩花!」
「炭治郎!禰豆子も!良かった。目が覚めたんだね。...ごめんね。計画とは全然違う行動を勝手にしちゃって.......。」
私の声に気づき、炭治郎と禰豆子が私のところに来てくれた。私は炭治郎が目が覚めたことに安堵しながらも謝った。
当初の予定では、列車に乗って血鬼術にかかった私と炭治郎を禰豆子が少し時間が経ってから血鬼術で起こし、炭治郎が列車の上で魘夢と戦ってそのまま操縦室に行き、そこにある魘夢の頸を斬る、私と禰豆子は炭治郎が魘夢の頸を斬るまで乗客達を守る...という感じだった。だけど、私が計画よりも早く目が覚めてしまったため、魘夢がそれに気づいて何かしてくるかもしれないし、炭治郎が起きるのを待っている時間はないから今のうちに戦った方が良いと思ったのだけど、結果は何も変わらなかった。むしろ私は元々あった話をさらにややこしくしただけだと思う。
「いや、俺が遅かったんだ。それに、列車と完全に融合していない今ならと思って行動したのだろう。」
「でも、列車と完全には融合していないけど、体の一部となってしまったから乗客全員を人質にされたし、私達にとって不利な状況になってしまったことには変わらないよ。」
「ど、どうする?」
炭治郎から慰めの言葉を聞き、私はこんな状況になってしまったことを後悔して少し落ち込んだが、すぐに切り替えた。
今は落ち込んでいる場合じゃない。私の判断ミスでこうなってしまったのなら、すぐに挽回しないと....。でも、私達三人だけじゃ乗客全員を守るのは無理だし、乗客全員を守れたとしても、肝心の魘夢の頸を斬らないとね.....。明らかに人数が足りない。何か考えないと......いや、方法はあるが....炭治郎と禰豆子が納得してくれるかな...?
「....彩花?...何か考えがあるのか?何やら悩んでいる匂いが.......。」
「さすがは炭治郎の鼻。もうバレているのね.....。....考えはあるけど...炭治郎と禰豆子が納得してくれるかどうか分からない。でも、これは上手く行けば.......。炭治郎と禰豆子に負担はかけるし、少し話し合いや説得が必要だけど....成功すれば一気にこっちが有利になるの。」
「......分かった。」
「ありがとう。それで頼みがあるの。禰豆子を少し借りてもいい?どうしても禰豆子の力が必要なの。」
私が悩んでいることはすぐに炭治郎の鼻によってバレ、私は考えていたことは詳しく話さないでそう伝えた。
やっぱり...炭治郎にはバレるんじゃないかと思っていたけど、思ったよりも早かった。私は炭治郎の鼻に感心しながら詳しく話さずにそう言った。だって、私が今考えていることを話したら反対されるのは目に見えて分かるからね....。........まあ、多分すぐにバレると思うけど.......。狡い私でごめんね....。
「禰豆子の?...彩花。まさか.....。」
「....炭治郎、ごめんね。でも、この状況で乗客全員を守るためには...やっぱり.......。」
「...........そうか....そうだよな...。」
「本当にごめんね。説得も話し合いも私がなんとかするから、とりあえず...炭治郎達には近づかせない方針でお願いできるかな.....。」
「ああ...。.......そうしてくれるとありがたい。」
私が何をするつもりなのかが分かったらしく顔色を変える炭治郎に、私はとても申し訳ない気持ちになりながら謝り、頭を下げながら頼んだ。炭治郎はあまり乗り気ではなかったが、状況を考えてそう言っている場合じゃないと分かっているらしく頷いてくれた。....ただ、そんな炭治郎の様子を見ていると、私の罪悪感が半端ないんだよね......。...まあ、炭治郎がこういう反応がをするのを分かって覚悟して言ったのは、他でもない私なんだけどね.....。
「じゃあ、私は禰豆子を連れてあの車両に行くね。終わったらすぐに戻ってくるから。」
「.......分かった....。気をつけてくれ。」
「うん。話し合いをするだけだから...そっちに来ようとしてもしっかり止めるから、安心して。」
「....ああ。」
「そろそろ行こうか。あっちがいつ攻撃してくるか分からない。......ごめんね、先に行ってくる。」
炭治郎と私は向かい合って話し合ったが、炭治郎はまだ不安そうにしていたので、私は少しでも安心させようとそう言った。まだ少し炭治郎の様子が心配だったが、私は禰豆子の手を引いて後ろの車両に向かった。私は少し焦っていた。今は魘夢が完全に列車と融合していないから大丈夫だけど、いつ攻撃してくるか分からない。それなら、今のうちにさっさと行動しておかないと.......。
「.....いた。」
「うん、いたね。いたけど....禰豆子。あまり興奮しないで。」
私達は目的の車両に着き、ある人達の近くに立った。その人達は善逸と伊之助、煉獄杏寿朗だ。どう考えても私達三人では乗客全員を守ることはできないし、そうしていたらいつまでも魘夢の頸を斬ることができない。それなら、戦える善逸達にも手伝ってもらおうと考えた。戦える人は多い方がいいからね.....。炭治郎があんな状態になっているから、あまり使いたくなかった手だったが...人数が多い方が有利なのは私も炭治郎も分かっている。だから、私も炭治郎も善逸達の手を借りることにしたのだけど.........。
「ヴーッ!」
「...気持ちは分かるけど、駄目だよ。」
私は善逸達に怒って唸り声を上げる禰豆子を落ち着かせようとした。
禰豆子もそういうことは分かっているのだけど......どうしても許すことはできないようだ。
私は何度も禰豆子に話しかけながら少し冷静になるまで隣で押さえていた。
「.....禰豆子。私達だけじゃ、八両もある列車の中に乗客全員を守りきるのは難しい。何より、そんな状況で鬼の頸を斬るのは無理でしょ。だから、血鬼術を解いて協力してもらわないと。納得はいかないかもしれないけど、人数が増えた方が良いから。」
「..........。」
私が必死に説得し、禰豆子も少し冷静に考えることができたようで善逸達に血鬼術を使った。ただし、渋々といた感じで善逸達の方を見ずに。私はそれを見て苦笑いした。
......そこまで嫌なのか.....。
「.......彩花。終わった。」
「えっ?もう終わったの!?早いね!?」
「うん。だから、お兄ちゃんのところ、行っていい?」
「あっ.....うん。血鬼術がもう解けたのなら、炭治郎のところに行ってもいいよ。禰豆子。」
私はもう少し時間がかかると思っていたので、禰豆子の終わったという言葉に驚いた。禰豆子は早くここから離れたいという様子で言い、私はそれならと思って頷いた。
どれだけ鬼殺隊のことが嫌いなのよ....。まあ、血鬼術が早く解けるのは良いんだけどね。.....それにさっきの様子を見て分かったが、今の禰豆子と善逸達を会わせるのは駄目だね、これは。善逸達が目を覚ます前に禰豆子は炭治郎のところに.......。
「......うっ....。.....た...炭治郎......?ね...禰豆子、ちゃん....?」
その時、善逸の声が聞こえ、私が慌てて善逸の方を見ると、善逸が目を開けようとしていた。伊之助も体を起こしていた。
......いや!このタイミングで!?...って、禰豆子は.....。
私は内心大声で叫んだ後、おそるおそる禰豆子の方を見ると、禰豆子の青筋を立てていて....そこまで確認して、視線を逸らした。
......うん。禰豆子さん、めっちゃ怒ってますね!えっ!?どうしよう?この状況で禰豆子と善逸達が戦うことになるの!?まずいよ、それは!
「禰豆子、とりあえず.....いったん落ち着こう。」
「ね、禰豆子ちゃん!?」
「ねず公!」
「ヴーッ!」
私は禰豆子を落ち着かせようとするが、完全に目を覚ました善逸と伊之助の声を聞き、禰豆子は唸り声を上げた。
炭治郎と禰豆子のことを気にしていた善逸と伊之助の気持ちは分かるけど、今の禰豆子に声を掛けないで!今、私が禰豆子の前に手を出して制しているから大丈夫だけど、この手がなかったら禰豆子が二人に襲いかかっちゃうから!
「ね...禰豆子ちゃん?」
「ど、どうした?」
「善逸!伊之助!気持ちは分かるけど、今の禰豆子に話しかけない方がいいから!」
「えっ!?彩花ちゃん!?」
「ヴーッ!ヴーッ!!」
「禰豆子も今は落ち着いて!」
私は禰豆子に威嚇されて困惑する善逸と伊之助に声を掛けたり、今にも襲いかかろうとしている禰豆子を落ち着かせようとしたりと....なんとか戦いにならないように動いた。善逸と伊之助は私もいることに驚きながらも何も言わずに大人しくしていたが、禰豆子は興奮状態のままだった。けど、頭の中ではこんなことをしている場合じゃないと分かっているのだろう。だからこそ、禰豆子は威嚇するくらいでそれ以上は耐えている。
.....よし!禰豆子は耐えてくれているが、流石に話し合いまで耐えられないだろう。やっぱり炭治郎のところに戻ってもらおう......。
「うむ!よもやよもやだ!」
私がそんなことを考えている間にまた別の声が聞こえた。
次から次へと!ちょっと待ってくださいよ!状況がややこしくなるから!
「うむ!君は竈門少女だな!それで、君が........。」
「生野彩花です。」
「うむ!水町少女だな!」
「いえ、生野彩花です。どこから水町という名前が出たのですか?」
「話は聞いている!水町少女も鬼狩りをしていると!」
「いや、人の話を聞いてください!」
私は先程目覚めた人に自己紹介をするが、全くの別の名前を言う。この人は原作と同じだな.....。そう思いながらその人を見上げた。赤と金色の派手な髪に大きな声で話す男性...炎柱の煉獄杏寿朗だ。
原作で知っていたけど、声が大き過ぎて煉獄さんが話す度に窓が揺れていませんか?......気のせいかな?....まあ、これで鬼殺隊の人達全員が目を覚ましたということだよね...。
「それよりも!竈門少女と一緒に行動していた水町少女がいるということは竈門少年もこの列車に乗っているということだな!」
「.........。」
.....それは言っちゃ駄目だよ!善逸と伊之助が煉獄さんの言葉を聞いて顔色を変えた。さっきのことがあったので、どうやら次の展開を察したようだ。何が駄目なのか、私も良く分かるよ!だって.......。
「ヴヴーッ!!ヴーッ!!!」
「禰豆子!それは止めて!」
先程まで落ち着いていたはずだった禰豆子が爪を伸ばし、額に青筋を立てていたので、私は慌てて禰豆子に抱きついた。ちょうど禰豆子が飛びかかろうとしたタイミングだったようで、私の体が一瞬浮いたが、私は必死に禰豆子が暴れないように全体重をかけて抑えた。
「うむ!竈門少女!鬼化が進んでいるぞ!どうした!」
貴方が原因だよ!!今の禰豆子は鬼殺隊への怒りで我を忘れているの!どうして分からないの!というか、禰豆子の鬼化が進んでしまうほど怒らすなんて、鬼殺隊はよっぽど炭治郎に酷いことをしたんだね....。それと.....煉獄さん。禰豆子の鬼化が急に進んだ時点で気づいて!前世の件が原因って、自分達が炭治郎のことを呼んだのが原因だって察してよ!
煉獄さんの言葉に私は内心色々と大声で叫んでしまった。口に出していないか心配だったが、周りは私より禰豆子の方を見ているので、口には出していないようだ。......いや、そんなことを考えている場合じゃないね。こうしているうちに禰豆子の体が大きくなってきているのだから!本当にこのままだと禰豆子の体がさらに大きくなって、原作の吉原遊郭編の時の姿にならない!?まずい!それはなんとしても止めないと!私も禰豆子を抑えきれない!今も煉獄さんに飛びかかるために暴れようとしているから、手を離しそうになるよ!
「禰豆子!今は落ち着こう!ねえ!落ち着いて!炭治郎のことが心配なのは分かるから!禰豆子は炭治郎のところに行って!なんか前の方から嫌な予感がしてくるし!こっちは大丈夫!私がしっかり説得して炭治朗のところに行かないようにしておくから!」
私は大きくなっていく禰豆子に必死に掴まりながら落ち着かすように背中を撫で、そう大声で言った。すると、禰豆子はぴたりと動きが止め、同時に鬼化も止まった。
「.........。」
「.....禰豆子?......うわあ!?」
動きも鬼化も止まってからずっと黙っている禰豆子を心配し、禰豆子の顔を覗こうとした時、禰豆子の体が縮み、元の大きさに戻った。私は突然のことに反応できず、バランスを崩して尻もちをついてしまった。
「いたた.....。」
「ごめん、ね。だ、大丈夫?」
「うん。大丈夫だよ。」
私が床に座っていると、禰豆子が心配そうに私に近づいてきた。私は禰豆子に大丈夫だと言って立ち上がり、禰豆子の様子を見た。
鬼化は治っているようだし、落ち着いているね。また興奮されたら困るし、炭治郎のところに戻ってもらおう。それに、さっき言っていた嫌な予感も気になる。なんとなくという感じではあったが。気のせいだったらいいのだけど....少々不安だ。
「禰豆子。炭治郎のところに戻ってて。本当に何か起きているかもしれないし、ここからは私一人でも大丈夫だから。」
「......うん。でも、彩花....気をつけて。」
「うん。分かっているよ。禰豆子達も気をつけてね。そっちの方が何が起こるか分からないから。」
とりあえず、私は禰豆子に炭治郎のところへ戻っているように言い、禰豆子は少し考えて頷いたが、心配そうな顔をしていた。私は大丈夫だからと何度も言ったので、禰豆子はまだ不安そうな顔をしながらも炭治郎のところに行った。
...うーん......。....これは...私への信頼が低いのか、鬼殺隊の人達への警戒がひどいのか........後者の可能性の方が高いと個人的には思いたいけど....。それよりも最近の禰豆子は前よりも気を張りすぎているんだよね.....。周りを気にするのは良いことだと思うが......私は炭治郎のことも心配だけど、禰豆子のことも心配なんだよね...。さっきの鬼化が急激に進んだ現象も含めて、禰豆子が人食い鬼にならないか不安なんだよね。禰豆子が人を食べるなんてこと、炭治郎も私も嫌だからね。
「さてと。それでは話を.......「うむ!俺も竈門少年のところに向かう!」....いや、駄目です!ストップ!待ってください!」
私は禰豆子の姿が見えなくなったのを確認してから善逸達と話をしようとした。しかし、煉獄さんは私の話を聞いていなかったのかそう言って炭治郎達の方に向かおうとした。私は一瞬煉獄さんの言葉で固まったが、すぐに煉獄さんの腕を左手で掴み、近くの座席の背の部分を右手で掴んで止めた。
煉獄さん、力が強過ぎる!いや!駄目ですって!何のために距離を離したと思っているの!二人とも今のままだと話せないというより、話になるとは思えないくらいなんだから!会っても炭治郎は発作を起こすと思うし、禰豆子はまた鬼化しそうだし.....というか、禰豆子の様子を見てまだ話すのは無理だって察してよ!....って、煉獄さんに言っても難しいことか...。それより、これは......まともに話ができるのかな?話しても今の煉獄さんが聞いてくれるか分からないし.....。...禰豆子にはちゃんと説得すると言ったけど....結構難しいかも.....。
....あっ。善逸と伊之助も行っちゃダメだからね。私が鬼殺隊の人達に用があるのだから。それに、現実を言ってしまうけど、善逸と伊之助が行ってもさっきの反応をされるだけだからね。お願いだから、大人しくしてよ。