無限列車の件から数ヶ月が経った。私達は相変わらず朝と昼は鍛練をし、夜は鬼を見つけては頸を斬って、血を採取する日々を送っている。(まあ、私はその合間に薬の調合もしているけどね....)今のところ、鬼殺隊の人達とは会っていない。獪岳と上手く連絡を取っているから、私と獪岳とで炭治郎達と鬼殺隊を遭遇させないようにしている。でも、警戒しておいた方がいいと考え、毎日の周辺の警戒は怠ってない。
獪岳との協力関係はかなり良好だ。獪岳は時々私の鍛練に付き合ってくれる。足りないところはきちんと教えてくれるし、忙しいのに来てくれる獪岳には感謝しています。ちなみに、無限列車の時に使った華ノ舞いの紅梅うねり渦は時間がかなりかかったが、獪岳と炭治郎のおかげでなんとか習得することができた。だけど、炭治郎の説明があって時間がかなりかかってしまったとも言えるのだよね。私はなんとなく理解はできるようになったけど、そこまでに結構時間がかかるし、獪岳は炭治郎が何を説明しているかすら分からなかった。炭治郎の説明の下手さには獪岳も呆れていたよ。
炭治郎も禰豆子も初めの頃と比べて獪岳と話すことが多くなった。獪岳と出会ったことは私にとっても、炭治郎達にとっても良いことだったな。このまま炭治郎のトラウマが回復すると良いのだけど.....。それと、獪岳の鎹鴉との仲も良好である。たまに仲間の鎹鴉達を連れて来てくれるくらい。初めて獪岳の鎹鴉が他の鎹鴉を連れてきたのは驚いたけど、その鎹鴉とも仲良くできて良かったよ。その鎹鴉は遠藤という如何にも人の名字っぽい名前の鎹鴉だが、私達のことを鬼殺隊に黙ってくれると言ってくれるので、感謝の意を込めて団子をあげた。鎹鴉のことで鬼殺隊に何か勘づかれないかと思っているが、鎹鴉達が仲間を連れてきてくれるほどの信頼はあるらしいと実感できて凄く嬉しい。
そんな感じでほのぼのとした時間も過ごしたけど、内心で少し....いや、滅茶苦茶ヒヤヒヤする事件もありました。それは......上弦の壱、黒死牟との遭遇です。上弦の壱である黒死牟は原作での詳しい描写は無限城とほんの少し獪岳が鬼になったきっかけとして上弦の壱が出るくらいだった。おそらく今回私達が出会ったのは獪岳が鬼になるきっかけとなる方の時期なのだと思う。獪岳と黒死牟の遭遇の回避については私も思い出してすぐに行動したかったのだが、具体的な時期が分からなくてあやふやだったから対策が練りづらかった。獪岳が鬼になった具体的なところは私も分からないからね。
それに、獪岳は前世の記憶を持っているから大丈夫かなと思ったので、黒死牟との件は獪岳に任せてしまった。まさか私がそれに巻き込まれるとも知らずにね...。
黒死牟と遭遇してしまった時、ちょうど炭治郎と禰豆子は珠世さんのところに、私と獪岳はたまたま特訓の一環として一緒に行動していた時に、鬼殺隊と黒死牟との戦いに巻き込まれてしまったのだ。私がこれって獪岳が黒死牟と戦って命乞いをして鬼になった時じゃないの!今日だったの!と内心混乱して叫びながら獪岳を見た時、獪岳が冷や汗をかきながら『そういえば今日だったな』と呟いていたのを今でも忘れない。こんな重要なことを忘れないでいただきたい!
本当にあの時が一番焦ったよ。戦いが始まってすぐに獪岳に首根っこ掴まれ、獪岳に引っ張られるようにその場から離れた。すると、先程までいた場所の地面が切り裂かれるように割れ、その光景を見て、私は血の気が引いた。助けてもらえなかったら私はここで終わっていた。どんな斬撃が来るかは分かっていても、動きが速すぎるうえに斬撃を多すぎて私には見えなかった。獪岳が黒死牟と一度戦っているので、ある程度動きを読めるから避けることはできるけど、こっちは攻撃ができない。流石は十二鬼月の中で一番強い鬼、上弦の壱だ。幾らどんな攻撃が来るか分かる獪岳でも黒死牟の斬撃がどんなものかは分かってはいるが、全くその斬撃が見えない私を引っ張って逃げているので、こっちが殺されるのも時間の問題だった。
私は完全にお荷物になっているので、何かしないとと考えて気体型の毒やら薬やらが入った複数のカプセルを出した時、ちょうど黒死牟の斬撃が来たらしく獪岳が思いっきり私を引っ張り、私はそれに反応できずに手を滑らせ、持っていたカプセルを全て地面に落としてしまった。一緒に液体の薬品が落ちたようで、パリンッという音が聞こえた。確か、あの容器に入っていた液体の薬品は失敗作だったような....。.....カプセルは何かに当たれば開くような構造だったので、地面に落としたカプセルは全て中にある気体の毒や薬を放出していた。おまけに失敗作の液体の薬品も入れ物が割れて中身が流れている。それらにより状況はさらにヤバくなった。
『か、獪岳!早くあのカプセルや失敗作から離れて!!』
『はっ!?どういうことだ!?あの中にヤバい毒や薬があるのか!?しかも、失敗作って、どんな物を作った!?いや、アホ!テメェ、何で失敗作を持ち歩いてるんだ!!』
『確かにどの毒や薬もちょっと厄介なものだけど、そういうものじゃなくて、それにその失敗作は後で色々分析したくて持ったままなだけで....とにかく今すぐ逃げて!!』
私はカプセルから出てくる煙を見てすぐに獪岳に逃げるように言った。獪岳は私の首根っこを掴んで走りながら私に聞き、私は説明しようと思っていたが、煙の様子を見て急いで逃げるように言った。
私が見た時に複数のカプセルから出た煙は重なり合い、色がだんだん変わり始めていた。私はそれを見てとてつもなく焦った。私が落としたカプセルは全て種類が違うのだ。どの毒や薬が効くのかと多くの種類を作って、一つの毒を使ってその毒が駄目だったら他の毒を使うために必ず多種多様な毒や薬を持ち歩いていた。ちなみに、失敗作の液体の方もカプセルの毒や薬とは別物だ。
しかも、あれは炭治郎や獪岳の目を盗んで自分で試そうと思って水で薄めていたものだ。同じ種類がないそれらの毒や薬が混ざり合い、おまけに水を多く含んだ液体の薬品も流れている。気体の毒や薬品同士が最初に混ざり合って液体.....水や化学物質とも混ざって化学反応が起きると.......
ドッガーーーーーン!!!!
『ひゃああああああぁぁぁぁ!!?』
『おい、アホ!!何を作った!!?』
.....と、このような爆発が起きる。私達は全力で走って距離を取っていて直撃はしなかったし、私は何が起こるのかは知っていてすぐに受け身を取っていたのだけど、爆風と衝撃で遠くまで吹き飛ばされたんだよね....。私の落としたカプセルは中に入っている毒や薬の種類は違うが、全部広範囲まで煙を出せるタイプだったから中に入っている煙の量は多くて、それで爆発が.......。
しかし、私達があまりにも遠くに飛ばされたのか、あの爆発が黒死牟にも当たって再生するのに時間がかかったのか、黒死牟は私達とは逆方向に飛ばされることになったのかは分からないが、その後は黒死牟に遭うことはなく、夜明けを迎えることができた。だが、私と獪岳はあの爆発のせいで骨折してしまいました...。炭治郎には上弦の壱と出会って生きているだけでも良かったと安堵されたけど、この骨折は上弦の壱との戦いではなく、私の作った毒や薬の化学反応で起きた爆発によるものだから、私は少し複雑だったし、獪岳が私に向ける視線はかなり痛かった。
この爆発が起きたのは私が薬の入ったカプセルを落としたのが悪かったし、爆発の原因も私の薬なんだけど、あの爆発は私が意図して起こったものではないよ!!
........まあ、そんな感じで少しほのぼの時々ハードな時間を過ごしていたのだけど、そろそろ動かないといけないと思う。何故かって?もう数ヶ月経ったからね....。...まもなく吉原遊郭編が始まる頃だと思うんだよね。.....だから、どのタイミングであの人と善逸達が動くか、他の柱がどう動くのかを獪岳にそれとなく探ってもらえるようにお願いとしようと考えていた矢先、
『情報を集めるために他の奴等に話を聞いていたら、音柱様とばったり会い、数合わせだとそのまま強引に連れてかれた。行き先は遊郭だとさ。潜入捜査であのカスと猪もいる』
という急いで書いたような殴り書きの獪岳の手紙が届いた。
「「「.............」」」
私達は無言でその手紙を読んだ後、互いの顔を見た。きっと同じ考えが頭の中に浮かんでいるのだろう。
「炭治郎。これはやっぱり.....」
「...ああ。上弦の鬼がいる遊郭だ。前世では俺と善逸、伊之助の三人でその遊郭に潜入したんだが....」
「炭治郎がいないので、その空いた穴に獪岳が入ったということだね...」
私が炭治郎に確認すると、炭治郎はゆっくりだけど頷いた。炭治郎の前世では、ここは原作と同じように炭治郎達三人が遊郭に潜入したが、今回は炭治郎がいないので、人数が足りなかったところをたまたま獪岳が通った。そして、丁度良いからと言われ、獪岳はそのまま捕まって遊郭に連れて行かれたということだね.....。私も炭治郎がいないなら、誰が炭治郎の代わりに空いた残りの場所に行くのかが気になっていたけど...まさか獪岳が変わりになるなんて思わなかったよ....。
.....って、今はそんなことを考えている場合じゃない。確かに獪岳が遊郭に潜入捜査することになるのは想定外だったが、善逸達が動き出したということは吉原遊郭編が始まるということだ。もう原作が始まっているのだとしたら、私達も遊郭に向かわないといけないということだね。
「炭治郎達に聞くのはとても申し訳ないんだけど、音柱って前世ではどうだったの?」
私は前回の無限列車での反省を活かし、私は原作と違うところがないかを確認するために炭治郎達に聞いた。
「どうって?」
「例えば、何処か怪我をしたとか、引退されたとか...」
「怪我?引退?いや、そんなことはなかったぞ。柱として最終決戦まで戦っていたからな」
「......そう。ありがとうね」
私が具体的なことを言うと、炭治郎は首を傾げながらそう答えた。私は炭治郎にお礼を言い、考え始めた。
どうやら宇髄さんも原作とは違う流れのようだ。原作では宇髄さんは遊郭での上弦の陸との戦いで左手と左目を失い、鬼殺隊を引退した。最終決戦でも宇髄さんは引退しているので、御館様の護衛となっていた。だが、炭治郎達の前世では宇髄さんは左手と左目を失わずにそのまま鬼殺隊の柱として戦い続けていた。.......炭治郎や禰豆子が亡くなったことや無限列車の時だけでなく、遊郭や最終決戦も原作と違う。一体何が原因でここまで変わってしまったのか....。
......うん。今、あれこれ考えても分からないよね。原作との違いが色々と分かってきたが、分からないことが多すぎる。というか、増えてきている気がする。とりあえず今は宇髄さんが原作と違う流れだったことを知れて良かったと思っておこう。そうしよう。
「.....次はもう始まっているみたいだし、そろそろ行こうか。遊郭に潜入している獪岳のことも気になるからね」
「そうだな。鬼が前と同じ時に出てくるとは限らないからな。少し早めに着くようにしよう」
私は色々と考えてからそう言い、炭治郎は私の話に頷いて準備を進めた。炭治郎が少しずつだけど立ち直ってきていて、本当に良かったよ。前の炭治郎は鬼殺隊がいると聞くと顔を真っ青にしていたが、今も動き出したんだ。顔色が少し悪くなるけど、前よりは大分マシだ。まだ鬼殺隊の人達へのトラウマを克服してないが、最初の頃よりはマシになったと思う。
私も獪岳にそっちに行くと手紙を書いて...うん?....そういえば........。
「一つだけ聞いていい?獪岳が遊郭に潜入しているということは......つまり、今の獪岳は女装しているということなの?」
「カァー!ソノ通リダ!」
「あっ。やっぱり......。獪岳、眉間に皺を寄せていそうだね」
私が鎹鴉に尋ねてみると、鎹鴉は大声で肯定した。私が獪岳の女装した姿を想像しながらそう呟くと、鎹鴉は静かに頷いた。
それにしても.......獪岳が女装か....。獪岳の女装姿、ちょっと見てみたいかも.....。まあ、どっちみち獪岳と合流したいし、その時に見れるかな?
私はそんなことを考えながら手紙を書き、それを鎹鴉の脚に括り付けて空に飛ばした。私は鎹鴉の姿が見えなくなったのを確認した後、薬の確認などの準備をし始めた。
「....遊郭って、賑やかなんだね...。未来では遊郭なんてなかったから、....本とかそういうのでしか見たことがなかったよ.....。けど、本当に本で見たもの以上に人の出入りが多いね。浅草と良い勝負だと思う」
「確かに...俺達が初めて来た時も遊郭のなんだか甘い匂いに凄い戸惑ったな。遊郭があんな場所だとは思わなかったから、本当に驚いたよ」
「となると、炭治郎の鼻も今回はあまり期待できないね。これは地道に探すことになりそうね」
私は周辺の遊郭の建物や光景を見て、前世では見覚えがなく漫画とかでしか見たことがない景観に感嘆の声を上げた。原作で見たとはいえ、実物を見ると違う感じがした。珍しい物を見るような目で周りを見渡す私に炭治郎が懐かしそうに周りを見ながら言った。私も確かに炭治郎の鼻には刺激が強いよねと納得しながらそう呟き、原作の話を思い出すことにした。
今回の吉原遊郭編は確か.....本来は音柱である宇髄天元の嫁が潜入捜査中に行方不明になり、炭治郎達は女装をして潜入することになる。そこで、炭治郎は上弦の陸の堕姫と遭遇し、潜入捜査は一転して討伐任務となり、禰豆子の鬼化が進んだり炭治郎に痣が出たりと色々とあったが、炭治郎や善逸達鬼殺隊が協力し、上弦の陸の頸を斬ることができたという内容だったはずだ。上弦の陸を倒せたのだから大丈夫なんじゃないか、何が心配なのかと疑問に思うが、困ったことがある。
それは炭治郎が堕姫の居場所を知らないことだ。私は原作を見ているから、堕姫が「京極屋」にいることは知っている。それなら、「京極屋」に行けばいいんじゃないかと思うかもしれないが、今は駄目だ。何故なら、堕姫は分身体として帯を別の場所に置いてあるのだ。その帯には攫われた花魁の人達が閉じ込められていて、宇髄さんのお嫁さん達もその中にいる。下手したら、戦っている最中にその帯の中に閉じ込められている人達を回復などのために食べてしまう...。
だから、先に帯に閉じ込められている人を助けたいのだけど、こっちの方も微妙なんだよね...。帯の場所を見つけたのは伊之助で、炭治郎はずっと堕姫と戦っていたから、どこなのか知らない。私も正確な場所は分からない。原作ではそんなに詳しく書かれていなかったから。炭治郎も私も遊郭の地下だということは知っていても、その入り口が何処か知らないのだ。伊之助はあちこちで暴れたことによって入り口を見つけたらしいが、私と炭治郎は見つかったら困るから、暴れることはできない。.....となると、獪岳に聞こうかな?獪岳ならこの任務のことで何か知っているかもしれない....。
「とりあえず獪岳のところに行ってみよう。獪岳の方で何か起きているかもしれないからね」
「確かに。獪岳の様子も気になるし、獪岳に会いに行くか」
とりあえず私は炭治郎と禰豆子と一緒に獪岳がいるであろう「ときと屋」に向かった。ちなみに、遊郭をうろうろしていたら町を監視しているであろう宇髄さんにバレると思ったので、今の私達は頭巾をかぶっている。これなら、獪岳のところに行っても大丈夫だよね?それと、何故「ときと屋」に向かっているのかと言うと、原作で「ときと屋」に潜入していた炭治郎がいないのなら、代わりとして獪岳はそこにいるかな.....と私の勘が告げているのよね。でも、どうやって獪岳に会えばいいのかな?名前も変えていると思うから、誰かに聞くことはできないし....。.....まあ、行ってみれば、なんとかなるかな?
「いや、良かったよ。獪岳の鎹鴉が「ときと屋」の周辺にいてくれて。おかげで獪岳の名前が分かったから、中に入れてもらえたよ」
「ったく。手紙が来てすぐにアイツを外に出しておいたが、正解だったみてぇだな」
「うん。ありがとう。それにしても...獪岳。その格好、凄く似合っている。というか綺麗な美人にしか見えない」
「うるせえ!」
私達の目の前には今、獪岳がいます。私の勘の通り、獪岳は原作の炭治郎が潜入していた「ときと屋」にいた。私達が「ときと屋」の近くまで来ていた時、突然獪岳の鎹鴉が目の前に現れ、獪岳が何処にいるのかとか、潜入している時の名前とか色々と聞くことができた。そのおかげで、「ときと屋」の人達に獪岳のことを話してここに来れた。獪岳はずっと女装しないといけないから不機嫌だったけどね。
お姉ちゃんのことが心配で、思わずここに来てしまいましたと言うと、あっさり案内してくれました。それにしても、原作で少ししか出ていなかった人達だったけど、このお店の人達は良い人達だね。炭治郎と禰豆子を人見知りの弟と妹なんですと言うと、炭治郎達から少し離れてくれたし、あまり話しかけても来なかったからね。ちなみに、この件で弟と呼んだことに炭治郎が俺は長男だぞ!と納得がいっていなかったらしくてそう言っていた。....ごめんね。前世のことがあって、炭治郎のことを弟のように見えてしまうの。炭治郎達も前世の記憶があるみたいだけど......私は前世では十八歳、今世では十五歳。炭治郎は前世も今世も十五歳。計算すると、私は現在三十三歳、炭治郎は三十歳なので、精神年齢的には私の方が年上なのです。いや、炭治郎は逆行したのは二年前だから、十七歳の方が正解かな。.....まあ、大丈夫だよ。どっちにしろ、炭治郎が長男なのは変わらないから。
それよりも、私は獪岳が凄く美人になっていたことに驚いたよ。一瞬、誰ですかと思って固まったくらいだもの。しかし、獪岳は遠くから離れて見ても分かるほど不機嫌だけどね。私が美人だと言うと、獪岳はさらに機嫌を悪くするし、おそらく今回の件は獪岳にとって黒歴史になるだろう。
「........それより、お前の手に持っているその袋はなんだ?」
「あっ、これ?お店の人達がくれた飴。この部屋に来る間に貰ったの」
「お前ら、完全に餓鬼扱いされてんな。」
「...うん。一応、十五歳だから子どもなんだけど、多分十五歳とは思われていないと思う」
「お前らはその顔だからな。そのせいでもっと幼く見えるんじゃないか?」
「......言い返したいけど、実際にこの飴を貰っちゃっているからね」
会った時から気になっていたのだろうか、獪岳が私達が手に持っている袋について聞いた。私はここに来るまでのことを思い出し、苦笑いしながら答えた。私達が案内してもらいながら普通に歩いていたら、突然話しかけてきたから、最初はバレたのかと警戒していたが、飴の袋を渡してきて、一瞬頭の中に?マークが浮かんだけど、すぐにどういうことか分かった。私は苦笑いしながらそれを受け取った。ちなみに、炭治郎は少し震えていたし、禰豆子はその人のことを警戒し過ぎていたので、代わりに私が三人分貰ったら、お姉ちゃんはしっかりしているねと言われて、さらに炭治郎がショックを受けていた。
私は獪岳に童顔のことを指摘されて何か言い返したかったが、獪岳の言う通りだからこそ、この飴を貰ってしまったということは分かっているので、全くその通りなのだろうなと思った。おまけに、飴を貰った時にお礼を言ったら、偉いねと頭を撫でられた。この時は流石に十五歳の扱いと違う感じがした。あと、炭治郎と禰豆子も頭を撫でられそうになって、私がごめんなさい。この二人は人見知りなのでごめんなさいと謝ったら、止めてくれたから助かりましたよ、炭治郎の精神的にも.....禰豆子による物理的な暴走に対する被害にも.........。
「......それよりも、聞きたいことがあるの。まずはそっちの潜入調査をすることになった原因って、音柱の宇髄天元さんのお嫁さん三人からの連絡が途絶えたからだった?」
「ああ.....。連絡がねえと言っていた」
「それじゃあ、前世の記憶はないということか......」
「いや、前世の記憶はあると思うな。音柱が前回と同じことになっちまったと呟いていたのを聞いた」
「.....前世の記憶を持っていそうな発言ね....。まだ決定打が欠けているから、確証はないけど...」
私は自分達の子ども扱いのことは後回しにして確認しようと思っていたことを聞いた。色々言いたいことや聞きたいことはあるが、まずは原作とどこまで同じなのか気になったので、そこから確認することにした。獪岳がそれに頷いたので、原作通りに進んだことが分かり、それなら宇髄さんは前世の記憶がないのかと思った。原作では自分の命よりもお嫁さん三人を大切にしているからね。だが、獪岳は私の言葉に首を横に振り、そう言った。前世のことを言っているのかもしれないが、前回という言葉だと前の潜入調査のことを指している可能性もあるから、確定するのはまだ早い。とりあえず様子を見ておこう。
「それと、今のところは何か動きらしいことはあった?」
「ああ。特に目立った情報だと、何やらあのカスが捕まったという報告が来たくらいだ」
「善逸が捕まった?....ということは....炭治郎、善逸が捕まった後って.......」
「確か.....鯉夏さんが襲われる!」
もう一つ、今はどの時期まで来ているのか知るために獪岳に質問した。獪岳から善逸が捕まったことを聞き、原作と同じ流れになっているよねと思いながら炭治郎に聞いた。原作の流れは大体覚えているけど、随分と時間が経っているから、もしかしたら記憶違いしているかもしれない。本人達に確認しておいた方が良い。炭治郎は少し考えた後、そう言って横の方を向いた。おそらくその方向に鯉夏さんがいるのだろう。
鯉夏さんが襲われる原因は確か....身請け先が決まったからだったような...。堕姫は美しい人間しか食べない鬼で、鯉夏さんは花魁となっているくらい綺麗な人だからね。そんな鯉夏さんが身請け先が決まってここを去ることが分かり、その前に食べようとして襲ってきたところを炭治郎が助けたんだよね。それが上弦の陸討伐の戦いのきっかけとなって。.....ということは、もうすぐ上弦の陸との戦いが始まるということだよね。どうしよう。思ったよりも早くてまだ心構えができていない。いや、あんまり長居し過ぎると宇髄さん達にバレてしまうから、来て早々に上弦の陸との戦いを終わらせて戻ればいいものね。早く終わらせることに何のデメリットもない。よし。
「それなら、私達も早く備えないと。炭治郎、鯉夏さんが襲われるのって、今夜だと思う?」
「ああ。今夜辺りだと思う」
「じゃあ、尚のこと急がないとね」
「だが、今回は前の時とは明らかに色々と流れが違う。無限列車でも前とは違うことが起きたから、ここでも前とは違うことが起きるんじゃ....」
確かに、炭治郎の言っている可能性もある。そもそも獪岳と私が介入している時点で前と全然違うのだが、それはこの際置いといて......上弦の陸との戦いで何か原作とは全く違うことが起こるかもしれない。となると、原作のように堕姫がここに本当に来るかも分からないし、人質をしっかり助けられるかどうかも分からない。....これは確認する必要があるね。まあ、あっちも前世の記憶があるから最悪の事態は避けられると思うが......一応、ね。鬼殺隊の様子も気になるし。
「もしもが起きても対応ができるように、二手に分かれることにしない。鯉夏さんの方はここで働いている獪岳は確定。ただ獪岳だけで上弦の陸を一人で相手できるかどうか不安だから、経験のある炭治郎と禰豆子が近くで待機して戦いになったら獪岳の援護をする」
「彩花は?別行動するって言っていたが、一体何処に......?」
「ちょっと「萩本屋」の方に。鬼殺隊の方の動きとか気になるからね」
「確かに。俺とお前らが一緒にいるところを見られたら、怪しまれるからな。鎹鴉は何とかできても、柱に見られたら言い逃れはできねえな」
私が二手に分かれることを提案すると、炭治郎に私が二手に分かれて何処に行くのか聞かれた。私が「萩本屋」に行って鬼殺隊の様子を見てくると言うと、獪岳も炭治郎達も納得した。
獪岳の言っていたことも鬼殺隊の動向を気にする理由の一つだ。私達と獪岳が一緒に、しかも普通に会話しているところを見られたら、獪岳と何かしら関係があると疑われる。鎹鴉は団子とかで買収.....じゃなくて話し合うことができるが、善逸達に見られたら言い逃れなんてできない。特に柱の宇髄さんと聴覚や触覚の鋭い善逸達の証言となると、隊士である獪岳では誤魔化すのは無理だ。今、獪岳との関係がバレてしまうと、この後の鬼殺隊の動きが分からなくなるからまだバレたくない。鬼殺隊と鉢合わせると......炭治郎の方は問題だが、それよりもさらに問題なのが禰豆子だ。煉獄さんを前にして突然鬼化することをお忘れですか?あの時は禰豆子の鬼化を止めるのに必死だったが、視界の端で煉獄さん達の夢の中に入っていたのだろう人達が禰豆子の方を見て、動けなくなっていたのだ。原作では炭治郎に襲いかかっていた人達が禰豆子の前では動けなくなるくらい怖がっていた。....これでもう分かりますよね。むしろ分かってください。私もあまり詳しくは知らないので。えっ?何で知らないのかって?あの時の私は禰豆子を止めようと必死になって抱きついていたので、詳しくは分かっていないのだけど、周りの様子から分かったんだよね。...というわけで察してください。とにかく鉢合わせるのは避けないといけないということなんだよ。それに、ここから先は刀鍛冶の里とか無限城とか鬼殺隊の動きが分からないと介入できなくなる。二つとも鬼殺隊関係の場所だからね。それに、その二箇所は鬼殺隊によって隠されているから、獪岳にはなんとかしてここに残ってほしいの。
「じゃあ、私は鬼殺隊の方に行って、問題が無さそうならすぐに戻ってくるから」
「ああ」
「彩花。無理はするな」
「気を、つけて、ね」
「うん。分かっているよ」
私は襖を開けて獪岳達に声をかけ、獪岳は普通に返事をするだけだったが、炭治郎と禰豆子は凄く心配そうにしていた。私はそれを見て苦笑いしながらそう答え、襖を閉めて「ときと屋」を出た。
.......あっ!?私、「萩本屋」の場所を知らない!どうしよう!?
....道が分からなくて困っていた私を獪岳の鎹鴉が見つけてくれたおかげで、漸く京極屋に着いたけど......どうやら一足遅かったみたい。私が来た時にはもう「萩本屋」は大騒ぎ。今、「萩本屋」の目の前に立っているけど、ここからでも誰か!猪のお化けが!?とかそんな声が聞こえてくる。それに、微かにバタバタという足音が聞こえる。これは伊之助が大暴れしているみたいね。まあ、原作通りに行動しているようだし、ここは大丈夫かな。.....とりあえず、一応ちゃんと人質達が解放されるところを見ておこうかな。
私はそう考え、塀を使って屋根に登り、少し中の様子を伺いながら屋根の上を歩いていると、何かの気配を感じてすぐにその場から横に移った。しかし、
「なかなか良い動きをしているが、まだまだだな」
何の物音もなく、いつの間にか私の首元に小刀が押し当てられた感覚がした。私は驚きながらも隣に音もなく現れた人物に視線だけを向けた。
先程見た何の物音もせずに私の隣に現れる技術と声からして誰なのかはすぐに分かった。横に視線だけを動かして見てみると、体系が背が高くて大柄でとても筋肉質で、頭には宝石が散りばめられた額当てをつけ、化粧もしている派手な男性だった。だから、すぐに分かった。私に刃を向けているのは元忍であり、現鬼殺隊の音柱である宇髄天元だということが。
「初めてまして。貴方は鬼殺隊の音柱、宇髄天元さんですね」
「なんだ、俺のことを知っているんだな」
「それはそうですよ。直接会ったことはなくとも、宇髄さんの特徴は聞いた話だけでとても分かりやすいのですから」
「まあな」
私は表面上は和やかに挨拶をしているが、内心ではパニックになっていた。ここで宇髄さんと会ったのは想定外だったからだ。確かに、宇髄さんは原作では捕まったお嫁さん達の情報を集めて「京極屋」に向かっていたけど、宇髄さんなら自分の命よりも大事なお嫁さん達の元にさっさと行くはずなのに...。
「それにしても.....貴方が今、ここにいるのは予想外ですね。貴方なら一目散に鬼のところに向かうと思っていたのですが....」
「ああ。こっちには頼りになる継子がいるんでね。あいつらに安心して任せられるから、俺はここに来れたというわけだ。」
「なるほど...」
私は緊張しながらも宇髄さんに聞いてみると、宇髄さんは自信満々にそう言った。私は宇髄さんの言葉で善逸達のことを信頼していることが分かり、納得した。
「それで、私に何か用ですか?ここには鬼がいるのに、それよりも貴方がこっちを優先したのはどうしてですか?」
「まあ、こっちの都合でな。テメェのことを少し調べさせてもらった」
「.....そうですか。それで、どうしたのですか?」
私は宇髄さんに本題を聞いた。わざわざ私のところに来たのは何か理由があるはずだ。大体は宇髄さんの性格とこの行動から予想できるけど..........やっぱり私のことを調べているよね。しかし、私は何を聞きに来たのか予想ができず、宇髄さんの様子を伺った。
「単刀直入に聞くが......テメェは何者だ?」