「テメェのことは俺様が個人で調べたが.....特に目立った不自然な点はない。生野彩花、十五歳。山の中で暮らす薬屋夫婦の娘。昔から物分かりが良くて、親の手伝いを良くしていた見た感じ普通の子ども。だが、八歳の時に夫婦が近くの村で流行り病にかかって死亡。子どもの方は両親が山に置いていったため無事だった。
その後、親戚もいなかったためにその子どもを引き取られず、引き取り手のいない八歳の子どもを村の人達が気にしていたが、子どもは両親と共に暮らした家から離れようとせず、そのまま一人でその家に暮らし続け、両親がやっていた薬屋を始めた。村の人達はその子どもを気にかけながらも薬の効力の素晴らしさもあって、その薬屋を頼ることにし、その子どもは薬屋として暮らしていけてた」
「私のことをよく調べましたね」
「いや。前職が忍びという特殊な職種だったんでな。このことに鬼殺隊は関係ない。俺が個人で調べたことだから、文句は俺に言いな。勝手に調べて悪かったな」
「いえ。むしろ感心しますよ」
私は宇髄さんから私についての情報を聞き、感心してしまった。この世界は私達の世界と違ってはいるけど、大正時代でこれほど詳しい情報を集めたことは凄いと思う。この時代にはインターネットがないからね。調べるのは大変だったと思う。忍びという職種だったとしても、本当に良く調べたものだと感心しますよ。忍びって凄いな。こっちが油断できないくらい。
「そんな生活を送っていたが、今から二年前、テメェが二人組の旅人を助けて家で看病しているから、しばらく村に来れないと村の人達に話して、数日間村に降りてこない時があった。その後、村に降りてきて早々、突然助けた旅人達と一緒に旅に出ると言って村を出た。......この二人組の旅人は竈門兄妹のことだろう」
「そうですよ。それにしても、村の人達の話を聞いているということはわざわざその村まで出向いたのですね。私に直接会わずに他の人から私のことを聞いただけでその村を調べ上げたことも、その村に自ら足を運んだことも含めて本当に凄いですよ」
「まあな。だが、俺様にとっては気がかりなことがある。何故テメェは村から出ることにした?何故竈門達と共に行動している?どうやって出会った?何故だか分からねえが、テメェは竈門達と普通に会話できるようだしな」
私の過去は村の人達から聞いたのだろうけど、私に直接会ったこともないのに、どうやって私のいた村の場所を知ることができたのだろうか?やっぱり忍び独自の情報網があるのかな。
.....まあ、それは置いといて...宇髄さんが聞いてくる質問は当然だ。突然薬屋を止めて旅に出ると言い出すのは明らかに怪しい。それに、炭治郎達と行動している私は前世の記憶を持っている人達にとってイレギュラーな存在だ。宇髄さんの話を聞いてみても、私が炭治郎達と一緒にいることがおかしいという口振りだ。つまり宇髄さんが前世の記憶を持っていることは確定だね。....でも、この質問は私の前世の記憶について話さなくても良さそうな内容ね。内容次第によっては私の前世の記憶のことを話さないといけないと思ったけど、その必要はなさそうだ。だって、私が炭治郎達と出会ったのは偶然だったし、他も本当のことを大体話せば良さそう.....。
「炭治郎達と会ったのは偶然ですよ。村に薬を売った帰りに遠くで人が倒れ、その人の周りをもう一人がうろうろしていたところが見えたので、どうしたのかなと思って声をかけました。そして、疲労で倒れた炭治郎とその炭治郎を心配している禰豆子に出会ったのです。声をかけた時、禰豆子に威嚇されていたのですが、体調のことが心配だから、薬屋をしているから薬を作れるなどと説得して、なんとか炭治郎達を家に招いて看病することができました。もちろん、心的外傷を持った炭治郎と人間嫌いの禰豆子には初めはものすごく警戒されましたけど、色々と話をしているうちに少しずつ警戒を解いて目を合わせて話せるようになりました」
「....そうか。だが、テメェがあの兄妹と行動する理由はねえ。看病するだけならともかく、そのまま旅に出る必要はねえはずだ」
私はその時のことをありのままに説明すると、宇髄さんは顎に手を当ててしばらく考えた後、とりあえず納得した様子で次の質問を聞いた。
この質問も前世の記憶のことは少し隠しながら話せば問題ないね。ただ........。
「それは...実は、炭治郎達の看病していた時、鬼が私の家を襲ってきたのです。私と炭治郎達は家の外で戦ったのですが、襲ってきた鬼はなかなか強く、家は壊されて病み上がりの炭治郎は追いつめられてしまいました。その時、私は無意識だったのですけど、炭治郎が言うには私が呼吸を使って鬼を斬ったそうです」
「.....何?....それは確かなのか」
「はい。炭治郎が見た限り、見たことも聞いたこともない呼吸を使っていて、しかも痣が出ていたそうです」
「ほう。テメェの家は剣術や呼吸法が受け継がれているのか?一体どんな呼吸だ?」
「いえ、そんな物は一切受け継がれていません。なので、私にもなんで使えるのか、それが何なのかは分かりません。炭治郎が言うには、華ノ舞いと言っていたそうです」
「華ノ舞いね......聞いたことがねえな」
「.....そうですか...。私も両親からそのような言葉を聞いたことがなかったので、華ノ舞いがどういうものなのか分かりません。どうして使えるのかも分かりません。だから、華ノ舞いが一体どういうものなのか、どうして私がそれを使うことができるのかを知りたくて、炭治郎達と一緒に旅に出ることを決めました」
私は少し悩みながらも華ノ舞いのことを宇髄さんに話すことにした。この質問は華ノ舞いのことを話さないと納得してもらえないし、もしかしたら華ノ舞いについて何か知っている可能性はあると考えて話してみたけど、宇髄さんも知らない様子だ。どうやら私のことを調べている中で、華ノ舞いという言葉は出て来なかったようだ。
「........なるほどな。それなら煉獄の言っていた炎を纏った呼吸にも説明がつくし、テメェの家がぶっ壊れていたのも納得だ」
「私の家にもわざわざ行ったのですか?」
「おう。念には念を入れないとな。ところで......」
しばらくの間、宇髄さんは顎に手を当てて考え、とりあえず納得した様子でそう言った。どうやら私の家まで調べ上げて行ったようだ。煉獄さんからもちゃんと話を聞いているみたい。もしかしたら、煉獄さんの話に出た呼吸のことや私の家が壊れていたことも怪しませる要因になったのかもしれない。流石、忍びはそこまで念入りに自身の足で調べ上げるんだな。本当に凄いよ。
私が宇髄さんの情報収集能力に感心していると、宇髄さんが何か別の質問を言おうとした時、何かが崩れる音が聞こえた気がして、その音が聞こえた方を見た。宇髄さんも何か聞こえたらしく、私と同じ方向に視線を向けていた。そこには地下まで見れるほどの大きな穴が空き、さらに、穴が空いた衝撃で上に飛んだであろう瓦礫がこちらに向かって降ってくる。
「宇髄さん!今すぐ私の首元にある刃物を下ろしてくれませんか?この状態では私が逃げられません!」
「お、おう」
私は瓦礫が降ってくる様子を見てすぐに宇髄さんに小刀を退けてほしいと頼み、宇髄さんは少し躊躇ったが、瓦礫を見てこの状態のままでいるのは危険と判断し、渋々小刀を下ろした。
その瞬間、私は前に動き、宇髄さんは後ろに退いて瓦礫から避けることができた。私はそれを見ながら大きな穴の隣にあるお店の屋根に移り、そこから穴の中を覗いた。穴の中では善逸と伊之助が何かを言い合っていて、動きやすそうな着物の女性二人が善逸と伊之助から離れたところに立っていた。どうやら原作通りに堕姫の分身である帯を斬り、善逸や宇髄さんのお嫁さん達を解放することができたようだ。善逸と伊之助がどうして言い合いをしているのかは分からないけど......。
まあ、原作通りに進んでいることが分かったのだから、私の目的は完了ね。今なら宇髄さんとも離れているし、ここから逃げられそう。それに、堕姫の分身である帯が倒したということは、次に宇髄さんや善逸達が向かうのは.......急ごう。
私はお店の屋根の上を移りながら炭治郎達が戦っているであろう「ときと屋」に向かった。
宇髄さんと話していたこともあって、結構時間がかかっちゃったな。もう堕姫と戦い始めているよね。というか話のペースが速いような....やっぱり私達や鬼殺隊全員が先のことを分かっているから、色々と変わっているみたいだね。もしかすると、既に堕姫の頸を一回斬っているかもしれないね。もしそうなら、いくら炭治郎達でも苦戦する可能性はあるな。とにかく急がないと。
「あっ!いた。...けど、やっぱりね」
遠目で炭治郎達の姿が見え、私はそう呟いた。私が向かっている方向では炭治郎達と対峙する二人の鬼の姿が見えた。そのうちの一人は禰豆子と獪岳、もう一人を炭治郎が相手になって戦っていた。禰豆子と獪岳が戦っているのは帯で攻撃してくる鬼の堕姫で、炭治郎が戦っているのは鎌を使う鬼、妓夫太郎だ。妓夫太郎と堕姫は兄妹であり、二人で上弦の陸となっているので、両方の頸を斬らないと倒れない鬼だ。しかも、今は妓夫太郎の目を堕姫に渡した状態だ。連携も良い。
これは....炭治郎が妓夫太郎の相手をしている間に禰豆子と獪岳で堕姫の頸を先に斬って、その後、堕姫の頸を持った状態で一斉に妓夫太郎と戦う作戦かな。
「炭治郎!禰豆子!獪岳!戻ってきたよ!」
「おい、バカ!遅えよ!」
「何か、あった?」
「ちょっと宇髄さんに絡まれたけど、特には何もされてないよ。あと、獪岳。名前で呼んでほしい」
「お前はアホかバカでいい。それで十分だ」
「私は嫌!」
私は刀を抜き、獪岳の隣に来て声をかけた。すると、獪岳からすぐに怒られ、禰豆子には心配された。私は何もされてないから大丈夫だと報告した後、獪岳に名前で呼んでほしいと頼んだ。しかし、獪岳はその呼び方のままのつもりでいるらしくそう言い、私はいや、呼んでよと思いながら言った。
「で、お前がここに来たってことは、今のところはあいつらの方は問題ないってことか」
「うん。さっき、善逸と伊之助が鬼の分身である帯を倒し終えていたよ。」
「......つまり、音柱とあのカス達がやってくるってことか」
「多分....もうすぐなんじゃないかな」
獪岳が本題を聞き、私は頷きながら答えると、禰豆子が宇髄さん達が来ると聞くと、露骨に嫌な顔をした。それを見て、獪岳は溜息を吐き、私は苦笑いを浮かべた。禰豆子は本当に宇髄さんや善逸達が嫌いらしい。
「そりゃあ、さっさと終わらせてお前達は帰った方がいいな」
「そうだね。このままだと上弦の陸と私達と鬼殺隊の三つに分かれて戦うことになりそう」
「ったく、長く続いたら厄介なことになるな。その前に一気に肩をつけるぞ。お前はあっちの鎌を使う鬼のところに行け。俺はそいつとすぐにこの鬼の頸を斬る。お前達も早く鬼の頸を斬れ」
「わ、分かったけど...獪岳は大丈夫なの?私達に協力して.......」
「当たり前だろ。お前達と共闘したのはお前達と争うよりも上弦の陸と戦う方が優先だと判断したからって伝えればいいだろう。筋は通るし、他にも誤魔化しようはある。それに、鬼殺隊にバレたって問題ねえ。鬼殺隊に未練なんてねえからな」
「........分かった。でも、獪岳も禰豆子も気をつけてね」
「ああ」
「うん!」
獪岳が頭をかきながら言い、私もそれに頷いた。獪岳は面倒くさそうな顔をしてそう言うので、私は大丈夫なのかと聞くと、獪岳は鬼殺隊の方は誤魔化せるし、仮に私達の協力関係がバレても問題はないと言って、目の前の鬼の方に集中した。私はその様子を見て獪岳と禰豆子のことを信じることにし、炭治郎の方に向かった。
「炭治郎!大丈夫?怪我とかしていない?毒も浴びていない?」
「大丈夫だ。俺は何処も怪我していない。それよりも彩花の方は大丈夫か?」
「大丈夫だよ。それと、状況の方も問題はなさそうだったよ」
「そうか.....。良かった」
私は炭治郎のところに来てすぐに炭治郎が怪我していないか毒を浴びていないかを確認した。炭治郎はその質問に答え、私の心配をした。私は大丈夫だと答え、続けて言葉を濁しながらも状況の方の報告もした。だが、私が言っている話が何を指しているのか分かったらしく、炭治郎は一瞬だけ表情が引き攣った。しかし、それはほんの一瞬だけで、炭治郎はすぐに気持ちを切り替えてそう言った。
前よりはマシになったが、やっぱり無理ね....。今はまだ、炭治郎と善逸達を会わせるのは駄目そうだ。このまま長く戦いが続けば鬼殺隊と交戦の可能性が高くなる。炭治郎が戦おうとはしないけど、禰豆子が確実に暴れる。うん。早く終わらせないといけない。
「炭治郎。私も加勢するよ。それと、これを持ってて」
「これはなんだ?」
「解毒薬だよ。もし妓夫太郎の毒を浴びたらそれを飲んでね。どのくらいの強さの毒かは分からないけど、少しは和らぐと思うから」
「分かった。ありがとう」
「獪岳も念のために持っておいて」
私は炭治郎に加勢すると言った後、解毒薬を渡した。もしもの場合に備えて獪岳にも投げて渡した。私は炭治郎と獪岳がしっかりと受け取ったことを確認してから、刀を構えた。私の分の解毒薬はとりあえず取り出せるようにしておいている。もし毒がかかっても私は毒に耐性を持っているから、ある程度なら動けるはずだ。炭治郎達と行動すると決めた時からこの日のために、毒耐性を強くつけようとしていたからね。
「炭治郎、準備はできたよ」
「分かった。俺が先に行くから、彩花は俺に続いてくれ」
「了解」
私は炭治郎に準備ができたことを伝え、炭治郎が妓夫太郎の様子を見ながらそう言い、私は頷いた。それを合図に炭治郎は妓夫太郎に向かって走り出し、私も少し遅れて前に進んだ。
「ヒノカミ神楽 烈日紅鏡」
「華ノ舞い 水ノ花 水仙流舞」
炭治郎が妓夫太郎の毒鎌を弾き、私はその隙に右腕を斬り落とす。そして、すぐに懐から吹き矢を出して吹いた。その吹き矢は見事に背中に命中した。私が吹き矢が当たったのを確認して少し距離を取ろうとした時、真横から鎌が心臓を目掛けてきた。私は咄嗟に刀で鎌の狙いを晒そうとした。だが、その前に炭治郎が妓夫太郎の腕を斬り、私は後ろに下がって新たな矢を詰めた後、刀をしっかりと握って前に出た。
「血鎌 跋扈跳梁」
「ヒノカミ神楽 幻日紅」
「華ノ舞い 炎ノ花 紅梅うねり渦」
妓夫太郎が血の斬撃を放ち、炭治郎はその斬撃を避け、私は華ノ舞いで防いだ。刀からカタカタという音が聞こえたが、なんとか上手く防ぎきることができた。妓夫太郎の血の斬撃が治まってすぐに炭治郎が妓夫太郎の懐まで迫り、頸を斬ろうとした。妓夫太郎がそれに気づいて咄嗟に鎌を振るが、その前に私が妓夫太郎の腕に吹き矢を命中させ、少し動きが鈍くなったところで炭治郎が妓夫太郎の頸を斬った。
「よし、思った以上に上手くいったね」
「ああ。彩花の作った毒が良く効いたおかげだ」
「本当にそれなぁ〜。テメェの毒が厄介過ぎて、毒の分解に手間取っちまった。一体どうやってそんな滅茶苦茶なヤツができるんだぁ〜」
「えーと、私があれこれと改良を施したものです」
「...どうやったらあんな物ができるんだ」
私は上手くいったことを喜び、炭治郎も私の言葉に同意した。そんな会話をしていると、妓夫太郎が頸だけの状態で話しかけてきた。
どうやら妓夫太郎によると、私の作った麻痺毒は分解するのが難しかったようだ。実はあの毒は前に使った麻痺薬を改良したものだ。普通の鬼に効いたからと言っても、それよりも強い鬼に効かないと意味がない。ましてや、これから戦いがさらに激しくなり、上弦の鬼との戦いが増えてしまう。そのためにも今から改良しておいて、いざという時のために使えるようにしたい。全員で生き残れるようにというのもあるけど、私が介入したことや炭治郎と禰豆子が鬼殺隊に入っていないことなどで原作とは違う話になっているし、何が起こるかも分からなくなってきているから、私が何もしなくても鬼は倒せる、生き残れるとは思えない。だから、私自身の身に何か起きても対処できるようになりたいし、その時に足を引っ張らないようにしておきたい。
それにしても、私は確かに麻痺毒にあれやこれや色々と試行錯誤して改良したのだが、上弦の陸が分解させるのが難しいと言わせるほどの毒になったのは予想外だった。どうやったらあんな物ができると言われても....普通に藤の花に麻痺させる効果がある毒草を入れたり、藤の花や麻痺の効果を強くするために毒草の量を多くしたり種類を増やしてみたりなど、そういったことをしたぐらいだ。改めて思い出してみても、そこまで特殊なことをした覚えはない。だから、妓夫太郎に化け物を見るような目をされるのはおかしいの!私は普通に調合しただけだから!
「しかも、テメェらの連携は隙がねえしなぁ〜。鬼狩りではないが、異様に鬼との戦いに慣れてやがるし」
「まあ、主に炭治郎との一対一の試合方式を訓練で良くやっているし、禰豆子と獪岳も入れて、二対二のチームでの訓練も結構やっているからね」
「ああ。それなりに互いがどう動けるか、連携の方でもどうすれば良いのかも分かっているからな」
妓夫太郎は私と炭治郎を交互で見ながら言い、私は炭治郎達との訓練のことを思い出して苦笑いをして、炭治郎はそう言った。
何故苦笑いするのかって?それはとても厳しいからである。確かに私自身が強くなれるし、上弦の陸との戦いで役には立っているけど、とても大変なんですよ。二週目である炭治郎達と私の一対一で対決するだけでも本当に疲れる。私が必死に刀を振っても炭治郎達には全く歯が立たないくらい、炭治郎達が圧倒的に強すぎる。そんな炭治郎達と毎回打ち合い稽古や実戦方式の訓練をしている。ざっくりと一言で言うと、ハード過ぎるのである。だって、炭治郎達は鬼狩り二周目であるのに対し、こっちは前世で女子高校生だったんだよ。そのおかげ様で、剣術の腕は上がっていきますがね........。まあ、まだまだ私はみんなをサポートできるのがやっとという感じなのですけど........。
「あれ?まだ消えていない。ということは....」
「禰豆子と獪岳がまだ堕姫の頸を斬っていないのか?だが、幾ら何でも遅すぎる.....」
「そうだよね。獪岳と禰豆子ならもっと早く...「おい」」
私は炭治郎達との訓練を思い出していたが、しばらく妓夫太郎の頸を見ていても消える気配がないことに気がついた。炭治郎もそれに気づき、禰豆子と獪岳の心配をした時、後ろから声が聞こえてきた。振り返ると、獪岳が視線を別の方向に向けて警戒しながらこっちに向かってきた。しかし、近くに禰豆子はいないようだ。
「獪岳!?どうしたの?禰豆子は?堕姫の頸は斬れたの?何かあったの?」
「.....落ち着いて聞け。....まずいことになった」
「まずいことって......?」
「............」
私は獪岳が来たことに驚きながらも獪岳に聞きたいことを質問すると、獪岳は溜息を吐きながらそう言った。心無しか顔色が少し悪くなっているような気がする。私は獪岳のまずいことになったという意味を聞き返すと、獪岳は無言で自身の背後を指差した。私と炭治郎がその先に視線を向けると、
「おい!竈門妹の鬼化が始まってねえか!?」
「いや、禰豆子ちゃんはただ俺達にだけ殺気を向けているので、一般の人達は襲わないと思います!禰豆子ちゃんはただ俺達だけに怒っているんだよ!」
「おい!ねず「ヴヴッ!ヴーッ!!」」
お互いの敵であるはずの上弦の陸の堕姫を置いておいて、鬼殺隊VS禰豆子の対決が始まっていた。
私はその光景を見て、声にもならない叫びを上げかけた。なんとか一歩踏み止まったけど、内心では叫び散らして頭を滅茶苦茶振っていた。
何!?どういうこと!?
...どうして起きたかというのは一旦置いておいて、目の前のことから確認しよう。......うん。ついに恐れていたことが起きてしまったのか.....。上弦の鬼との戦いの最中で始まる鬼殺隊との戦闘。私が出来れば避けたいと思っていた戦いだ。しかも、まだ上弦の陸との戦いは終わっていない。これは困ったことになった...。
「獪岳、一体何があったのかを詳しく説明してくれない?」
「ああ。ただ、そんな時間もあまりねえからざっくり言う。俺達があの帯の鬼を追い込み、俺が頸を斬ろうとしたタイミングであのカス達が来ちまったんだ。あいつも初めは鬼の相手が先だと抑えていたが、カス達が話しかけた時点で耐えられなかったようで、ああなった」
「.....いや、充分だよ。ありがとう。大体の状況は分かったよ。それで、獪岳の手には追えないくらいに事態が悪化していって、堕姫の頸を斬れる状況じゃなくなったということね」
「その通りだ。しかも、俺も隊服を着ているから襲われかけた。俺には無理だ。お前は止められるか、あれを」
「.......怪我はしていないみたいで良かったよ....。ああなる前ならまだ止められる可能性があったのだけど、あの状況にまで陥ってしまうと私も無理だよ。今の状態で私が間に入っても、話し合える状況になりそうもないね」
「だよな」
私はとりあえず事態をしている獪岳に話を聞くことにし、獪岳は簡潔に説明してくれた。簡潔な説明だったけど、流れが分かりやすかった。私は大体の状況の流れをまとめて聞くと、獪岳はそれに頷き、禰豆子達の戦いを指差して止められるかどうかを聞いてきた。私は獪岳が怪我していないかを確認した後、禰豆子達の戦いを見て、話すらできないような状況だから止められないと判断してそう言った。獪岳もそれに同意した。
もしかしたら、炭治郎の言葉なら聞いてくれるかもしれないが、炭治郎が善逸達を前にして話せるかどうかは分からないから、それ以外の方法を考えないとね。
今の炭治郎はなんとか冷静になろうとしている様子だ。善逸達を見た時は過呼吸になりかけていたり手足が少し震えたりしたけど、深呼吸をしたり体の震えを必死に抑えようとしたりなどの落ち着こうという意思はある。以前より症状は悪くはないが、顔は少し真っ白になっているし、抑制剤を渡しておこう。まだ戦いは終わっていないからね。
「そういえば、お前達の方はどうだ?もう一匹の鬼と戦っていたが、そいつはどうした?」
私が炭治郎に抑制剤を渡して飲ませていると、獪岳が声をかけてきた。
「えっ?こっちは炭治郎が頸を斬ったから、もう.....「彩花!危ない!」...へっ!?」
私が獪岳と話していると、炭治郎が大声でそう言った。私は炭治郎が突然大声を上げたことに変な声を上げたが、すぐに私達に向けられる殺気に気がつき、慌ててその場から離れた。炭治郎と獪岳も反射的に距離を離した。次の瞬間、先程まで私達がいた地面に鎌が刺さっていた。
「なんか仲間割れしているなぁ。まあ、運は俺達に向いているようだなぁ。その仲間割れで俺から注意を逸らしてくれたから、あの毒を分解する時間を稼げたし、俺の頸を取り戻すことができたしなぁ」
鎌を使って攻撃してきたのは妓夫太郎の頸がない身体だった。しかし、その身体の手に妓夫太郎の頸があった。妓夫太郎は自身の頸を身体にくっつけて戻しながら私達に不適な笑みを浮かべてそう言った。禰豆子達の方を見ていたから、妓夫太郎の方への注意が疎かになってしまったようだ。迂闊だった。堕姫の頸が斬れていないということは妓夫太郎はまだ動けるということだというのに....。反省は後にしないと。今の状況はまずい。妓夫太郎の頸が戻ったので、振り出しに戻ってしまった。それと、あの毒がどうとか言っていたけど、私の麻痺毒に手間取ったということかな?......まさかね....。麻痺薬と言っていたのを麻痺毒にした方が良いと判断するくらい効き目を強くしたけど、流石にそこまで効かないと思う...。いや、今はそんなことを考えている暇はない。この状況をなんとかしないと!
「お兄ちゃん!あいつらがアタシのことを無視するんだけど!!」
「そうだなぁ〜。悔しいよなぁ〜。だが、あいつらはどうせ自滅するだろう。そっちは後回しだぁ。先にこっちを片付けるぞ」
堕姫が妓夫太郎にところに来て禰豆子達に怒っていた。なんか心なしか涙目になっている気がする。まあ、あっちは上弦の陸の堕姫のこと関係なしに戦っているからね.....なんか、すみません。妓夫太郎はそんな堕姫を慰めながら私達の方を向いた。私達に向けるその目には殺意があった。
...あれ?これって........上弦の陸の妓夫太郎と堕姫対私と炭治郎と獪岳になるってこと!?
「この展開はつまり....私達だけで上弦の陸を二人同時に倒さないといけないってことだよね.......」
「ああ、そうだ。ったく、滅茶苦茶だ」
私が確認すると、獪岳が額に手を当てながらそう言った。
本当にそうですね.....。運があっちに味方してしまったみたい....。この状況はもうカオスだよ...。事前に話し合った通りなら、戦いはもう終わっているはずだったんだけどね....。全くどうしてここまでややこしくなっちゃったのかな...。
この後の続きは少し添削してから投稿しようと思います。少しお待ちしてもらえるとありがたいです。