「.....どうするんだ?」
「どうもこうもこの状況をなんとかする方法を探すしかねえだろ」
「二対三だけど、あの二人の連携に勝てるかどうかは微妙だからね」
私達は妓夫太郎と堕姫の猛攻を避けながらこの状況を抜け出す方法を考えていた。妓夫太郎が堕姫に片目を貸しているのもあって、こちらが攻撃する隙を与えずに話し合える時間さえ与えてくれない。こっちは不利な状況を陥っているというのに、あっちはあっちで...........
「ヴヴーッ!!」
「ちっ。こうなったら、ねずみをなんとかしねえと...!」
「はあ!?おい、猪!禰豆子ちゃんに何しようとしてんだあ!!」
「ああん!?じゃあ、どうしろと言うんだ!俺達の話、全く聞かねぇんだぞ!」
「確かにな。今回は嘴平に賛成だ」
「ちょっと!?いとしの禰豆子ちゃんに何すんの!?この筋肉ダルマ!」
「気絶させるだけだ。安心しろ。ド派手にはやらずに地味にしてやる!」
貴方達は何をやっているのですか!!?なんかヒートアップしてませんか!?上弦の陸が敵なのは共通なのに揉めないでくださいよ!?気絶させるのに、派手も地味もありますか!?まあ、宇髄さんならそういうのがあるかもしれないけど、止めてください!!こっちは上弦の陸を二人とも相手にしているのですよ!早く手伝いに来てください!いや、善逸達が来たら来たで揉めそうね。今のところ、こちらと鬼殺隊の仲は複雑な関係だ。そんな状態でまともに連携がとれるのか....。
......うん、無理ですね。いきなり協力し合えるとか、そういう光景が想像できない。それに、炭治郎が耐えられるかが心配だ。戦いの途中で心的外傷を発症する可能性があるので、炭治郎と連携をとるとしたら、禰豆子や私、獪岳の方が良いのだろう。まあ、そもそも止めないと話にならない。でも、どうやって止めようか。先程聞こえた善逸達の会話から考えるに、善逸達は禰豆子を斬ろうと思っていないから、禰豆子を止められればあの戦いは終わると思う。ただ、問題は今の禰豆子が誰の言葉も耳を貸さないので、禰豆子を落ち着かせるのは難しい。炭治郎なら可能性があるかもしれないけど、炭治郎を善逸達と会わせて何かあったら大変だ。だけど、炭治郎をそのまま戦うことにして私か獪岳のどちらかが行くにしても、二対二ではさらにこっちが不利になるし、あれを止められるかどうかも微妙だし......どうしよう....何か..........。
「血鎌 円斬旋回」
「ヒノカミ神楽 円舞」
「チッ!この状況が続けば、流石にヤバいな」
妓夫太郎の鎌や堕姫の帯による攻撃を受け流したり弾いたり斬ったりしていたが、着々と追いつめられていた。頸を斬れる隙がなく、こっちの体力の問題もあった。夜明けまで時間を稼ぐにしても、朝日が昇る時間はまだ先だ。このまま戦い続けると、私達が負ける。なんとかしないと.......。
「そろそろケリを着けようぜー。堕姫、お前はあの女の餓鬼を先に殺れ。毒を使うし、俺の鎌の毒のことを知って解毒薬を渡すし、少々厄介だからなー。先に殺しておけ」
「えー。あの女の餓鬼、美しくないから食べたくない」
「そう言うな。あの女の餓鬼の左目は色が変わるんだぞ」
すみませんね、普通の顔で。私は貴女に絶対に負けますから。堕姫の美貌が美しいのはもう分かってますので。
妓夫太郎と堕姫の会話を聞いて、私は溜息を吐きそうになった。分かってはいるけど、そんなにはっきり言われると、少しへこみます。...まあ、今はそんな場合じゃないので、気を取り直そう。....うん?確か、妓夫太郎は堕姫に私をさっさと殺すように諭しているのよね.....。妓夫太郎の方は私....正確に言えば私の作った毒や薬を警戒しているみたい。これって、私が優先的に狙われるということだよね。それなら..........
「獪岳、炭治郎のことをよろしくね」
「ああ?どういうことだ」
「ちょっと成功するかどうかは微妙なんだけど、上手く行けばこの状況をなんとかできる」
「......大丈夫なのか」
「...うん。一か八かなんだけど、上手く行けたら全部なんとかできる可能性がある。お願いね」
「........チッ。...分かった」
私は丁度近くにいた獪岳に声をかけた。獪岳は突然の私の言葉に驚いて聞き、私はなんとかできそうだからとか大丈夫だからとか言って獪岳を説得しようとしたが、獪岳は不安そうにした。言葉を間違えたかな。私は獪岳の肩に左手を置き、目をしっかりと見て頼んだ。しばらくの間その状態が続くと、獪岳が根負けしたらしく、とりあえず納得してくれた。舌打ち付きだが。
まあ、獪岳を不安にさせるほど私も不安なんだろう。正直に言うと、私も自分が考えたことに不安を感じているからね。上手くいくかどうかも上手くいっても勝てるかどうかも分からない、行き当たりばったりだってはっきり言えるほど、無理矢理で一か八かなんだよね。できればこの状況で炭治郎達と一緒にすることが良かったのだけど、
「それで、お前はこの状況をどうする気だ」
「相手は私の作った毒を警戒して私を先に殺そうとしているみたいだから、私がここから離れればどっちかが必ず私を追いかけてくる。そうすればまた二手に分かれられる」
「おい。お前一人で大丈夫か」
「大丈夫だよ。一人でなんとかできるとは思っていないからね。それをなんとかできる考えがあるの。一か八かだけど、これしか思いつかなかったから。それじゃあ、よろしくね」
「お、おい!」
私は獪岳にざっくりともう一度二手に分かれて戦うことを話し、獪岳はそれに関して怒ったような顔で私に聞いた。確かに私の話を要約すると、私を囮にしてと言っているようなものだからね。獪岳は不満そうな顔をしているけど、妓夫太郎と堕姫がいつまで話しているかは分からないから、もう説得しないで強制的に行こうと考え、私は文句を言われる前に獪岳によろしくと言って走り出した。案の定、獪岳が叫んでいるが、無視する。
「おい。あの女の餓鬼が逃げたぞ。こっちの鬼狩り達は俺が殺しておくから、女の餓鬼を追え」
「もう!分かったわよ、お兄ちゃん」
走り出した私を見て、妓夫太郎が堕姫にそう言うと、堕姫は渋々私を追いかけた。
追いかけてきたのは堕姫か.....。無事に行けるかは分からないが、妓夫太郎が来るよりはまだマシだ。なんとしても
「華ノ舞い 水ノ花 水仙流舞」
「あんたは美しくないけど、その左目の色が変わるのは本当だったみたいね。なかなか美しいじゃない。その左目だけはくり抜いて食べてあげるわ」
「それは丁寧にお断りします!」
私は回避に向いている水仙流舞で捕まえようとしてくる堕姫の帯を斬りながら避けていた。堕姫は華ノ舞いを使って色が変わった私の左目を見て、気に入ってしまったようだ。私の左目をくり抜いて食べると言われ、私は内心悲鳴を上げながら断り、全速力で走った。
絶対に嫌です!なんか目をくり抜くという言葉を原作で炭治郎に言っていませんでした!?確かに炭治郎の目は綺麗だったし、私の左目も色が変わるからとても珍しいけど、こっちだって目をくり抜かれるわけにはいかないのですよ!さっきまで美しくないから食べたくないって言っていましたよね!食べなくて大丈夫です!
「もういい加減に大人しくしなさいよ!」
「お断りいたします!」
「八重帯斬り」
堕姫は走りながらも帯を避けたり刀で帯を斬ったりして必死に抵抗する私にしびれを切らし、八本の帯を使って退路を塞がれてしまった。私は八本の帯を同時になんとかしないといけないことに気づき、すぐに八本の帯を同時に斬る方法を考えた。
相手は上弦の鬼だから、一番体に合っている華ノ舞いが効果的だと思うが、日車は八本を同時に斬るのは向いていないし、水仙流舞は流れるような動きで回避と攻撃を同時に行える型だから、同時に何かを斬る時に使うとしたら微妙かな....。紅梅うねり渦は八本の帯を防ぐことはできるが、守りに向いている型なので、水仙流舞と比べて流暢には動くことができない。今は少しでも前に進まないといけないから、守りに徹していたらまた帯で退路を塞がれそうだ。そうなってしまうと、体力はそこでかなり消費しそうだし、八本の帯を斬れるような連撃ができる型を使えればなんとかできそうかな。華ノ舞いの方が体に合っていて使いやすいけど、今使える華ノ舞いの型の中で連撃が使えるのはないので、他の呼吸を使おう。
「花の呼吸......!?」
私が花の呼吸を使おうとした時、口が動かなくなった。次の瞬間、頭の中にヒノカミ神楽の烈日紅鏡と雷の呼吸の弐ノ型の稲魂と花の呼吸の伍ノ型の徒の芍薬が流れ、体の中から熱くなり、別の動きをし出した。刀の色は真っ黒に変わり、模様の葉も紅葉に変わった。
「華ノ舞い 紅ノ葉 陽日紅葉」
私の口が動いてそう言い、私の体は炎を纏った刀を振った。すると、一瞬で八本の帯が斬れ、私は足を止めずに真っ直ぐに走った。私は新たな型に内心驚いていた。
あの八本の帯を一瞬で!?私には刀を一振りしただけで多数の斬撃を放ったように見えた。しかも、あの多数の斬撃の軌跡が紅葉のように見えるなんて...。
あの時、一振りしただけで多数の斬撃を放ったように見えた(少なくとも私には)が、実は八回も刀を振っているのだ。私の目には一振りしか刀を振っていないように見えているのだけど、私の腕からの感覚では刀を八回振ったように感じられた。一瞬にしか見えなかったが、振った感覚は確かに感じられたから間違いはないだろう。華ノ舞いでああなる時、体の自由は毎回奪われているけど、感覚は感じられるのだ。
「キャア!!ちょっと何よ!?炎!?」
私は後ろで堕姫が混乱している間に走り出した。そのまま頸を斬った方が良いかもしれないが、それは止めておこう。
確かに堕姫の頸を斬るチャンスではあるけど、上弦の陸である堕姫と妓夫太郎は堕姫と妓夫太郎の両方の頸を斬っておかないといけない。つまり、堕姫の頸が斬れても妓夫太郎の頸が斬れてないと駄目なのだ。そのため、妓夫太郎の頸が斬れるまでの間は堕姫の頸が戻らないようにしないといけない。しかし、今の私は新たに華ノ舞いを使った。覚えている方が居れば分かるはずだと思います。すなわち、私の体はその反動で動けなくなるのです。今はかろうじて走れるけど、だんだん体が重たくなってきているからそろそろ動けなくなる......。急がないと!
私は歩く度にだんだんと重たくなっていく体に焦りを感じながらも必死に走っていた。しかし体が動かしづらくなり始め、足も今にも動かなくなりそうだった。そろそろもう限界だと思い始めていたその時、目的の場所が見えた。
「あっ!見えてきた!」
私はそれを見て、今にも倒れそうな体に鞭を打ってその場所に向かって真っ直ぐに走り続けた。だが、気持ちとは裏腹に体はよろめき始め、今にも倒れそうになっていた。なんとか必死にバランスを取って走れていたけど、目的地までまだ距離がある。このままだと目的地に辿り着けなさそうだ。それに、後ろから堕姫が追いかけている。こうなったら.........一か八かだが、やらないよりは可能性がある。やってみるしかない。
「追いついたわ!あんた、一体何なのよ!?アタシは.....」
「華ノ舞い 日ノ花 日車」
堕姫の声が聞こえて振り返ると、堕姫が私に向かって帯を伸ばしていた。私は前方宙返りができる日車を使い、自分を中心に球を書くようにして縦や横などの向きに回りながら自身の近くまで迫っていた帯を斬った。それと同時に、今は自身の周囲に堕姫の帯がないことを確信し、私は最後の力を足に込め、思いっきり地面を蹴り、私は高く跳んだ。いや、飛んだという表現が合うのかもしれない。自惚れているように聞こえると思われるが、本当にそれくらい高く跳んだのだ。まあ、雷の呼吸の壱ノ型の踏み込みを使ったのだから当然なんだと思うけどね。高く跳んだ私は堕姫の攻撃を避け、堕姫との距離を広げることができた。しかし高く跳んだ反動のせいなのか、それとも重力のせいなのか体が重くなっていき、動かすこともできずにそのまま徐々に下に向かって落ちていく。私はそこで着地のことを考えていなかったことに気づき、なんとか着地する方法をと考えながら下の方を見てぎょっとした。
「あ、えっと、どうしよう!このままだと!ぶ、ぶつかる.......!?」
私は焦ってなんとか体を動かそうとするが、体は全く動かず、重力に任せて落ちていくことしかできなかった。
「わわっ!?....落下している私が一番大怪我すると思うけど、今は.....とにかく避けて!!」
体を動かせない状態で私が声を張り上げていると、だんだん地面に近づいていることに気がついた。私は目を瞑り、落下の衝撃が来るのを待った。しかし幾ら待っても衝撃は来ず、何故かちょっと何か固いものに絞められて宙に浮くような感覚がしたので、私は思わず目を開いた。すると、近くに善逸と伊之助が、二人から離れたところに禰豆子の姿が見えた。
そう。あの時、私が慌てていたのは着地のことを考えていなかったからではなく、丁度私の落下地点だと思われる場所に善逸達がいたからである。善逸達は禰豆子に、禰豆子は善逸達に集中していたので、上から降ってくる私のことに気づいていなかった。このままだと善逸達とぶつかるが、私は動くことができないので、声を張り上げて気づいてもらおうとしたのだ。今は私が上から落ちてきたことに驚き、禰豆子も善逸達も戦いを止めて私の方を見ている。当初の予定では禰豆子と宇髄さん達の間に滑り込み、そうすることで禰豆子と宇髄さん達の戦いを強制的に止めさせるはずだったのだけどね。堕姫を戦いの間に連れてくれば、禰豆子も本来の目的を思い出して止まるんじゃないかと思って、元からここを目指していた。まあ。色々と想定外だったが、今は互いに戦いを止めているから結果オーライだね。
「えっ!?彩花ちゃん!?なんで上から降ってきたの!?」
「あはは。話せば色々あるけど...えっと.......あれ?」
善逸が私が上から突然現れたことに困惑していた。まあ、いきなり上から見知った人が落ちてきたら、そりゃあ驚くよね。とりあえず事情はしないと。私は状況を説明することにして何から話そうかと考え、ある事に気がついた。
善逸と伊之助、禰豆子の姿は見えるけど、宇髄さんは何処に行ったのかな...。それに、目を開けて様子を見たのはちょっと固いものに締めつけられて宙に浮くような感覚がするから、可笑しいなと思って確認しようとして......。.........うん?そもそもお店とかの建物より高い位置から落下して衝撃がないのから明らかに可笑しいし、何より私が今感じているちょっと固いものが地面なわけないし、地面は締めつけることなんてできない。しかもよくよく考えて見ると、私の視線ってこんなに高かったっけ?体が動かせなくて立つことはできないからこんなに高いのは絶対に可笑しいし、今の私は寝そべっている状態でもないし、なんか担がれている感じに近いというか....まさか.........。
私はおそるおそる隣を見た。そこには........
「よお。また会ったな。しかも、上からド派手に登場とはな。一体何が降ってきたかと思って受け止めちまったが、テメェだったとはな」
宇髄さんがいた。どうやら今の私は宇髄さんに担がれている状態らしい。
「いえ、私も好きで上から降ってきたわけではありませんよ。受け止めてくれたことには感謝します。しかし、今はそれよりも.....うわっ!?」
「よっ、と」
「彩花、放せ!」
私が宇髄さんに受け止めてくれたことに感謝し、堕姫と今の事情を説明しようとした時、突然宇髄さんが動き出して私は驚いた。慌てて前の方を見ると、禰豆子が怒っていた。その近くで、先程まで宇髄さんがいたであろう場所に大きなクレーターみたいなものができていた。それは多分禰豆子の蹴りが原因だろう。
おそらく宇髄さんに担がれた私を助けようと禰豆子が宇髄さんに蹴りを入れ、宇髄さんはその禰豆子の攻撃を避けたということだろう。...いや、駄目でしょう!宇髄さんは私を助けてくれたのだから、宇髄さんを攻撃するのはおかしいって!前世のことで宇髄さん達の信用がマイナスにまで落ちているのは分かっているけど、今回は何も悪いことをしていないよ!それに、今は本当にそれどころじゃ.......そろそろ堕姫がここに来るし。
「禰豆子!今の相手はこっちじゃなくてあっちだよ!もう、すぐそこまで来ているから!」
「もうすぐそこというか、今目の前まで来てるぜ」
「えっ?」
私はなんとか腕を動かし、禰豆子が本来の目的を思い出してくれるように私が降ってきた方を指差した。すると、宇髄さんからそんな言葉が聞こえ、私は宇髄さんの言葉で先程私が指差した方向の状況を確認しようと体を動かそうとしたら、その前に宇髄さんが私の思ったことを察したらしく、宇髄さんが体をその方向に向けてくれた。私は心の中で宇髄さんに感謝して前を見ると、堕姫が不機嫌そうな顔で立っていた。どうやら追いついたようだ。そこまで距離を広げたわけではないから、堕姫がすぐに追いつくのは当たり前なのだろうが。
「はあ。まったく、逃げ足の速い餓鬼ね。やっと追いついたわって、鬼狩りと裏切り者の女の鬼じゃない。あんた、こいつらの仲間なわけ?」
あっ、訂正。堕姫は不機嫌そうなではなく、本当に不機嫌らしい。私がなかなか捕まらないことで完全に腹を立ててしまっているようだ。それと、禰豆子や宇髄さん達を見ても怒っている様子からして、勝手に堕姫のことを無視して互いに争っているのが気に入らなかったのだろう。これで、堕姫を禰豆子達の間に割り込ませることができたから、禰豆子と宇髄さん達の戦いは終わりになると思うけど、宇髄さん達は目の前の堕姫を倒すのを優先するだろうし、禰豆子も流石にこの状況で宇髄さん達を攻撃しないよね....。
そう思って私が禰豆子の方を見ると、禰豆子が堕姫を見て怒っている様子だった。
.....えっ!?どうしたの!?何があったの!?
「お兄ちゃんを、醜いって言ってた!許さない!」
「ふん。何よ!醜いのを醜いって言って何が悪いのよ!」
「許さない!!」
禰豆子と堕姫の言い合いをした後、禰豆子は額に青筋を立てて、堕姫に突っ込むように蹴りを入れた。堕姫もそれに対応し、反撃する。....なんか先程の戦いよりも激しい戦いのような気がするけど、気のせいだと思おう。とりあえず禰豆子と宇髄さん達の戦いを止められて良かった。うんうん。
「いや。頷いているところ悪いが、状況を説明しろ。こっちは竈門妹と戦っていてそっちの状況が分からねえんだ」
「あっ。そういえばそうでしたね」
私が禰豆子と堕姫の戦いの様子を見た後、視線を遠くの方に向けて現実逃避していると、宇髄さんが声をかけてきた。
禰豆子と堕姫のことですっかり忘れていたよ。炭治郎と獪岳も妓夫太郎の相手をして待っててくれているのだから、早くその負担を減らさないと。そのためにも宇髄さん達の協力が必要なのだから、状況をしっかり伝えないと。
私は宇髄さん達に手短に状況を説明した。禰豆子と宇髄さん達が戦ってから状況が悪化したこと、私と炭治郎と獪岳の三人で上弦の陸二人と戦っていたけど、徐々にこっちが不利になってしまったこと、妓夫太郎と堕姫を引き離すことを考えて私が堕姫を惹きつけ、ついでに禰豆子と宇髄さん達の戦いを止めようとしたこと、今は炭治郎と獪岳が妓夫太郎と戦っていることを大雑把だが理解はできるように説明した。
「.......なるほどな。まあ、大体の状況は分かった。竈門妹のことはこっちも苦戦していたから助かった」
「いえ、こちらも禰豆子をなんとかしないといけませんでしたので」
「...ところでだ」
「何でしょうか?」
宇髄さんは私の話を聞いて納得した様子を見せた後、お礼を言った。どうやら禰豆子に関しては結構困っていたそうだ。私はそれに苦笑いしながら答えていると、宇髄さんが言葉を区切って今度は真剣な顔で言った。私は宇髄さんが真剣な顔をしたことに驚いたけど、すぐに返事をして続きを促した。
「テメェの日輪刀のことだ」
「私の日輪刀?」
宇髄さんが私の日輪刀を指差して言い、私はそれに一瞬何のことか疑問に思ったが、その時に初めて自分が堕姫と戦った時からずっと刀を鞘に仕舞ってしまっていなかったことに気づいた。
.....あっ。まずい....。
「ん?彩芽の刀、色が無くなってんぞ」
「本当だ。彩花ちゃんの刀って青や赤に色が変わっていたり模様も変わったりしていたけど、これも同じかな。今は......白かな?」
「いや、白ではねえな。白は霞の呼吸が適正の色だが、青や赤に色が変わるなんていう話は聞いたことねえ。それと、時透の刀で見ているからな。俺の目は誤魔化せねえよ。色は確かに時透の刀と少し似ているが、これは白というより....無色の方が近いな。しかも、良く見ると透明だな」
私は慌てて日輪刀を隠したが、もう遅かった。私の日輪刀は宇髄さんにも善逸達にもしっかり見られてしまった。
私の日輪刀は華ノ舞いや日の呼吸などを使う時は色が変わるが、全集中の呼吸では無色透明の状態なのだ。つまり、今の私は全集中の呼吸はしていても華ノ舞いなどの呼吸は使っていないので、刀の色は無色透明のままだ。確か無色透明の刀なんて初めてだと鱗滝さんが言っていたよね。今まで鬼殺隊に会った時は鬼と戦う時しか刀を抜かなかったから知らなかったことだけど、知ってしまったからにはどういうことかと色々と聞かれそうだな。でも、これに関しては私も良く分からないことだし、色々と聞かれても私は答えられないのだけど、宇髄さん達は納得できないと思うからしつこく聞いてきそうだな。刀の色に関しては私もよく分からないし、何故刀の色が変わるのかも分からないと言っても質問攻めになりそうな気をする。丁度堕姫がそこにいるし、私も動けるようになったし、回復したから戦いに行ってくることを理由に炭治郎や禰豆子達の手伝いをしてくると言って逃げよう。そうしましょう。
私は宇髄さんから離れるために体を動かそうとしたら、その前に宇髄さんに首の後ろの方を掴まれ、そのまま持ち上げられた。なんか猫扱いされている気がする。
「おっと。逃げようとすんじゃねえぞ」
「いや、私もこの刀の色に関しては良く分かっていないのです。詳しく説明しろと言われても説明できません」
「それなら、テメェが今使っている呼吸は何だ?これなら答えられるだろう」
「私が使っている呼吸は水の呼吸とヒノカミ神楽と、先程宇髄さんに言った華ノ舞いです。何故かは知りませんが、水の呼吸やヒノカミ神楽を使うと刀の色が変わりますし、華ノ舞いを使うと刀の色も模様も変わるので、聞きたいのは私もです。どうしてそういうことが起こるのかは私にも分かりません。特に華ノ舞いについては私も調べていますが、全く進展がありません」
宇髄さんが私を逃がさないように目の前まで持ってきて言うので、私は正直に刀の色のことは何も知りませんと言った。すると、宇髄さんは言い方を変えてそう聞いてきたので、私は質問攻めされたそうだと思いながら半端ヤケクソに華ノ舞いのことを話した。まあ、この話をしても疑いの念は持たれるだろう。何せ華ノ舞いは使っている私でも使える型以外で他にどんな型なのかは分からないし、しかも体が勝手に動くことでやっと分かるという嘘っぽい話だ。嘘はついていないから善逸と伊之助は分かってくれると思うけど....宇髄さんは少し疑うよね.....。ちなみに、私が雷の呼吸と花の呼吸について言わなかったのは、雷の呼吸の話をすると誰に教わったのかと思われ、獪岳に教わったことがバレる可能性があるし、花の呼吸は夢の中でカナエさんに教わったと言うしかないし、言っても疑われるから話さない方が面倒事を回避できる。
私が色々考えていた時、突然上から殺気を感じた。宇髄さんも殺気を感じてすぐに放してくれて、私は後ろに跳んだ。宇髄さんも善逸も伊之助もその場から離れた瞬間、先程私達がいたところを斬撃が通った。その斬撃は地面を深く抉り、私と宇髄さん達のいたところを両断させた。私はそれに驚きながらも辺りを見渡した。
さっきは宇髄さんと離れるきっかけになったからとてもありがたかったけど、この状況はまずいかもね....。あの斬撃には間違いなく殺意があった。つまりあれは鬼によるものだ。となると...........
「ったく。あいつ、目的をすっかり忘れてねえか。帰りが遅くて心配して来てみりゃあ、何遊んでるんだ」
私が抉れた地面の切り口を見ていると、上から声が聞こえた。私はまさかと思いながら上を見ると、屋根の上に炭治郎と獪岳が戦っていたはずの妓夫太郎がいた。
「どうしてここに!?炭治郎と獪岳は!?どうしたの!?」
私は妓夫太郎がそこにいることに驚いたが、それよりも炭治郎と獪岳の無事の方が心配でそう聞いた。妓夫太郎が私の言葉に何か言おうと口を開いた時、
「ヒノカミ神楽 円舞」
「雷の呼吸 弐ノ型 稲魂」
二つの影が妓夫太郎に近寄って刀を振り上げ、妓夫太郎はそれらを持っている二つの鎌を駆使して受け流し、後ろに下がった。二つの影、炭治郎と獪岳は深追いはせずに妓夫太郎を警戒している。
「彩花、すまない!一瞬の隙をつかれてここまで逃げられてしまったんだ」
「上弦の陸ってヤツは逃げ足が速いんだな」
「炭治郎!獪岳!無事だったのね!良かった」
炭治郎が私に気づいて、視線を妓夫太郎に向けた状態のまま声をかけ、獪岳は妓夫太郎を煽っていた。私は炭治郎と獪岳の無事な様子を見てほっとした。本当に良かった。
「彩花の方こそ大丈夫か?それに禰豆子も!」
「大丈夫。怪我はないから安心してね。禰豆子は元気に堕姫と戦っているから大丈夫だと思うよ」
炭治郎は私と禰豆子のことを心配して聞いてくるので、私は大丈夫だと答えた。ただ、禰豆子のことを答える時に苦笑いしてしまったのは仕方がないよね....。炭治郎のことで暴走して大暴れしていますなんて.......言える?炭治郎の前で。
「おい」
「か、獪岳!?どうしたの?えっ、わっ!?」
「詳しくはそいつに聞け」
私が禰豆子の様子を思い浮かべていると、獪岳に突然声をかけられた。私はそれに驚いてしまったが、それでも獪岳に声をかけられたので、用件を聞こうとした時、上から気配がしてきたから上を見た。ちょうどタイミング的にも悪くかったのか、目の前に鴉のドアップが見え、羽音が聞こえるくらい近かったタイミングで見てしまい、私はまた驚いてしまった。獪岳は私のその驚いた声を聞いた後、そう言い残して妓夫太郎に向かって走り出してしまった。
「な、何なの....?獪岳はどうして鎹鴉を置いていったのかな...。この鎹鴉、獪岳の鎹鴉だよね。詳しくは鎹鴉に聞けっていうことは何か伝言とか残しているのかな」
「カァー!ソノ通リ!」
「やっぱり......。それで、獪岳は何のメッセージを残しているのかな」
私は獪岳が鎹鴉を私のところに送ったことに困惑しながらも鎹鴉に尋ねた。鎹鴉はそれを肯定し、私は鎹鴉に獪岳は伝言を話してくれるように促した。鎹鴉は一鳴きして私の右腕に止まると、獪岳の伝言を語り始めた。
「言イカ。聞キ逃スナヨ。『手短に説明するぞ。俺との協力関係が音柱にバレた。お前達が俺と「ときと屋」で会ったことを音柱のネズミ達が伝えたらしい』」
「あー、バレちゃったのね。まあ、確かに宇髄さんのことは警戒していたけど、ネズミ達のことは抜けていたからね」
獪岳のメッセージを聞いてすぐに私は額に手を当ててそう言った。
獪岳と会うようになってから、私はよく辺りを警戒するようにしていた。鬼殺隊の中でも、特に善逸達や鎹鴉、宇髄さんのことを一番警戒していた。善逸達は炭治郎と同様に感覚が鋭いのでバレやすいし、鎹鴉は飛べるので、空からの追跡には気づきづらい。炭治郎も空からでは匂いが分かりづらく気づけないのだ。宇髄さんは元忍なので、神出鬼没で自分では気づかないうちに尾行されているかもしれない。というか、私はもう既に背後をとられて首元に小刀を突きつけられたんだよね。それで、獪岳に会う時も宇髄さんに見つからないようにしていたんだけど...ネズミ達のことは想定外だった。原作では刀を持って来させて炭治郎や伊之助達に渡すことをしていたが、見張りとかもしていたのと驚いたよ。私はてっきり宇髄さんとずっと一緒に行動していると思っていたんだけど......。ネズミ達をあちこちに派遣したのは、前世でこの後の展開が分かっているから少し余裕を持ててその配慮をしていたのか、あるいは獪岳のことを最初から獪岳のことを怪しいと思っていたのか。.....それとも、ただ刀をすぐに運べるように近くにいただけなのか、原作でも裏でネズミ達が見張っていたとかなのかな.......。もし最後のだったら、そんな裏設定をあったのかと初めて知ることになるな....。って、今はそれよりも獪岳の伝言を全部聞かないと...。まだ続きがありそうだからね。
「ごめんね。続きを.....あれ?そういえば、獪岳はどうしてそれに気づいたの?」
「アア。ココニ来ル途中デ、音柱ノ鎹鴉ガポーズヲ決メナガラ言ッテタカラナ。聞イテスグニ獪岳ニ頼マレタ」
「なるほど、そういうことね。では、続きをお願いします」
私は宇髄さんのネズミ達のことを答えるのを止めて、獪岳の伝言を全部聞くことにした。その時、獪岳がどうやってそれを知ったのかが気になって尋ねてみると、そう返事が返ってきた。宇髄さんの鎹鴉は確か派手で着飾るのが好きなんだよね。獪岳に話したのは私達に後できっちり話してもらうからなという意味か、それとも鎹鴉が勝手に喋っただけなのか.......。..........どっちもありえそうかな。もしかしたら別の意図があるかもしれないけど、宇髄さんの鎹鴉のことも置いておこう。先に獪岳の伝言を全部聞いておかないと。
私は獪岳の鎹鴉の言葉に納得して先を促した。
「オウ。『どうやら音柱達に俺達のことはもう分かっているようだ。この戦いが終わったら俺を捕まえる気らしいから、とりあえず俺は鬼殺隊を抜けてお前達のところに行くぞ』」
「....えっ。確定ですか」
決定事項のように言う獪岳の伝言に私はツッコミを入れてしまった。
まあ。なんか獪岳らしいですし、鬼殺隊にバレてしまったのなら仕方がない。獪岳は元々私達と行動する気だったところを私が獪岳に頼んだからね。危ない橋を獪岳に渡らせたのは私が原因だ。獪岳は情報を私達に漏らしたことで何かしらの処罰があるかもしれないし、何処かに匿った方が良さそうよね.......。
「まあ、仕方がないですよね。それで、この戦いが終わったら獪岳と貴方も一緒に来るということね」
「流石。話ガ分カル。『それと、他の柱も向かってるようだ。あの姿を消せる術の紙を持っているが、柱が何人も来たら逃げるのは困難だ。だから、他の柱がここに来る前に終わらせるぞ』」
「あ、うん。....って、それはつまり........」
「『俺達が鎌の鬼の頸を斬るから、お前達もさっさとあの帯を使う鬼の頸を斬れ』」
「や、やっぱり.....。そういうことだよね....。今はそれが効率的には良いんだよね.......。でも..........」
私はとりあえず獪岳と鎹鴉がそのまま一緒に行動することを承諾し、鎹鴉はそれに頷いて獪岳の伝言の続きを話し始めた。私は獪岳の伝言の前半部分で何を言いたいかを察し、その続きが予想通りのことをだったで苦笑いしてしまった。
まあ、確かにそれができればすぐにこの戦いは終わる。さっきの妓夫太郎の斬撃で両断されてしまったから、その方が良いだろう。獪岳と炭治郎なら大丈夫だろう。だけど.............
こっちはどうしよう......。禰豆子は堕姫と白熱した戦いをしているし、両断された時に宇髄さんとは離れたけど、少し離れたところに善逸と伊之助がいるし、この状況でどうすればいいのだろう.....。先が思いやられるよ....。
華ノ舞い
紅の葉 陽日紅葉
炎を纏った刀で円を描くように振る連続斬撃。一息で瞬きの間に前方多斬撃ができる。その斬撃の軌跡はまるで紅葉が舞うように見える。