笹の葉の少女は幸せを願う   作:日々草

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笹の葉の少女は賭けに出る

私は妓夫太郎の斬撃によってできた地面の裂け目を見た。

 

妓夫太郎の斬撃で抉られてできたこの地面の裂け目。幅はそんなに大きくはないから私でも高く跳べば飛び越えられる。しかし、ここを飛び越えようとしたら、空中に少しの間だけどいることになる。空中だと避けるのは難しいし、避けれても着地の場所がズレて裂け目の中に落ちてしまうこともあり得る。そうなると、やっぱり両断されてこっちにいる人達で戦うしかない。

 

 

私はこの両断された状況をなんとかできないかと考えたが、それは難しいそうなので諦め、戦いの現状を確認することにした。

 

 

今の状況は妓夫太郎の方に炭治郎、獪岳、宇髄さんがいて、堕姫の方に禰豆子、私、善逸、伊之助がいる。炭治郎達の方を見てみると、炭治郎と獪岳が主に動いて、宇髄さんがさりげなく援護している。それに、宇髄さんは炭治郎のことを気にして、できるだけ視線に入らずに声をかけるにしても獪岳を経由している。流石は宇髄さん、煉獄さんみたいに真正面から行かずに配慮してくれている。炭治郎も特に息切れなどの症状はなくて大丈夫そうだ。だが、心配なのはこっちの方だ。

 

 

私は炭治郎達の方を見て少しほっとした後、禰豆子や善逸達の様子を見て頭を悩ませた。

 

 

禰豆子は未だに堕姫と単独で戦っている。禰豆子と堕姫の戦いは五分五分....いや、堕姫が妓夫太郎の目の力を使い始めたから堕姫の方が優勢ね。だが、私も善逸も伊之助もこっち側にいるから、加勢に入れば形勢逆転できる。特に、善逸と伊之助は二周目だし、戦った経験もあるからとても心強い。しかし、問題は禰豆子が善逸と伊之助と連携をとってくれるかなんだよね...。禰豆子が少しでも冷静になれたら連携をとれるかもしれないが、今の禰豆子は完全に暴走状態なので無理だと思う。善逸と伊之助もそれを察して加勢をしようにも躊躇ってしまっているようだから、禰豆子を落ち着かせて私の説得を聞ける状態にできれば良いんだけど、私の話を聞いてくれるかどうか分からない。

 

あと、個人的にあの禰豆子と堕姫の戦いに入りたくないな....。.....入らないといけないのだけど。それに、私の体の方も限界に近い。やはり華ノ舞いの陽日紅葉を使ったのが原因だと思う。華ノ舞いのあの現象は体がしばらく動かすことができなくなると同時に体力も奪われてしまう。妓夫太郎と戦い、その次に妓夫太郎と堕姫二体とも戦い、二手に分かれた時に堕姫と戦った。そして華ノ舞いの陽日紅葉を使い、宇髄さん達のところに着くまでも合わせて、かなりの体力を消費してしまっている。今の私に長期戦は無理だし、体力的に考えても少ししか戦えない。禰豆子と善逸達なら私がいなくても堕姫の頸を斬れるけど、戦いの途中に禰豆子と善逸達で喧嘩(禰豆子の一方的な)が始まったら仲裁することができない。いくら禰豆子でも戦いの最中はそんなことしないと思いたいが、はっきりと言えないんだよね。実際に堕姫との戦いでお構いなしに宇髄さん達に蹴りを入れているし。

 

 

「ううっ。今すぐに獪岳が二人になってくれないかな」

「無理ダロウ」

「ですよね。そんなことは分かっていますよ」

 

 

私はこの状況を一緒に止めてくれそうな獪岳が来てくれないかなと少しだけ現実逃避し、遠くを見てしまった。私のその言葉に鎹鴉は空気を読まずに現実を言い、私は不貞腐れたようにそう言った。

 

 

何故獪岳なのかって?炭治郎が来たら互いに微妙な空気になると思うし、宇髄さんが来たら禰豆子がますます怒るのは目に見えているからね。消去法で大丈夫なのは獪岳なんだよね。

 

 

「オイ、獪岳の伝言ハマダ終ワッテナイゾ」

「えっ?続き?」

「アア。『あの過保護な番犬とカス達がいるから、お前にとっては最悪な状況になっているだろうが、俺達にも迷惑をかけないようにしろよ』ト言ッテタゾ」

「いや、かなりの無茶ぶりですよ!」

 

 

もう獪岳の伝言は終わったのだろうと思っていた私に鎹鴉がそう言った。私はそのことに驚きながらも鎹鴉が話す獪岳の伝言の続きに耳を傾けた。だけど、獪岳の伝言を聞いてすぐに私は大声で言ってしまった。

 

 

「『無茶ぶりとかなんか言っている暇があったら、さっさと体を動かせ。あいつらが何かやる前に主導権ぐらいは握っておけ』」

「まったく。獪岳は獪岳で大変なのでしょうけど、こっちもこっちで色々と大変なのですよ...」

 

 

しかし、私の声なんて獪岳の伝言は聞いておらず、鎹鴉は獪岳の伝言を私に伝えていた。私はこっちの状況も知らない獪岳の伝言に文句を言っていた。まあ、私が今言っていることは獪岳に伝わってないのだろうが....。

 

 

「『俺にはお前達の状況は分からねえが、文句を言っている暇もねえぞ。そんなに悪い状況なら、お前がなんとかしろ』」

「うっ。そんななんとかしろと言われても.....」

「『俺達を相手に打ち合い稽古や鬼ごっこで必死に抗い続けるだろう。最悪な状況もそれでなんとかしろ』」

「うっ、....うん...」

 

 

私の考えていることを察したかのように言う獪岳の伝言に私は図星を突かれたて頷いてしまった。なんだかんだで獪岳は私に色々と教えてくれていたし、一応師弟関係のようなものだから、私の考えていることは大体分かるのかもしれない。

 

 

「『それと、お前は全員で協力とか考えているなら、その考えは今は無しだ』」

「.....えっ?」

 

 

私は獪岳の伝言を聞いて驚いた。獪岳がそこまで気づいていたことも驚いたが、それよりも獪岳が突然善逸達と協力するのを諦めるように言われたことの方が驚いた。

 

 

「『お前も分かっていると思うが、そいつらの関係からして、今からすぐにそいつらが協力し合える関係になれると思ってねえだろう。そんなに上手く関係が修繕できるとは流石のお前も思っていないだろ。無理だと分かってたから、上弦の陸を使って強引に巻き込ませたんだろ』」

「で、でも........」

「『いいか。俺達はあの鎌の鬼の頸をさっさと斬る。だから、お前も早くその帯の鬼の頸を斬れ。それに集中しろ』」

「鬼の頸を斬る.....それだけに集中する.........」

「『それでもお前が止めないなら勝手にしていろ。だが、俺達の目的は上弦の陸の鬼の頸を斬ることだ。どんな方法でもいいから、終わらせろよ』」

 

 

獪岳に私の心の中を当たられて私は思わず動揺してしまったが、獪岳の言ったことが正論なのは分かる。体力を消耗している私は堕姫との戦いで足手まといになるのは確実だ。だから、禰豆子と善逸達に協力して戦ってほしかった....。しかし、善逸達は喜んでそうしてくれそうだが、禰豆子は違う。禰豆子の善逸達に対する怒りは私が想像するよりも強いのだろう。そんな禰豆子も状況によっては渋々善逸達の手助けをしてくれるが、本当はやりたくないのだろう。禰豆子にそれを曲げてもらうように頼んでいる私が酷いのは分かっている.....。...でも........。それに、そんな禰豆子があの興奮状態のまま善逸達と協力することは無理だということは分かっている...。だけど........。

 

 

「『まあ、お前が他に打つ手がないのかは分からねえが、一つだけ言うぞ。俺の速さには負けるだろうが、お前は俺から教わった雷の呼吸が使えるし、他の呼吸も使えるんだ。やろうと思えばやれるだろ。なんなら、さっきみたいに強引にあの番犬とあのカス達も利用してな。それら全部を使えばお前も速く鬼の頸を斬れるだろう』」

「速さ.....雷の呼吸....華ノ舞い.........他の呼吸も合わせて......。....そうだね。一度やってみるしかないよね...」

 

 

獪岳の伝言を聞き、私はそれを復唱していると、ある考えを思いつき、実行することを決意した。

 

いや、実はずっと考えていた。しかし、それを実行しなかった。これはとても可能性として低い....もしかしたらという思いつきのようなものであり、決定打は堕姫に追いかけられた時に発動したあの華ノ舞いだから。でも、これが上手く行けば.......この仮説が正しければ......。

 

 

「禰豆子ちゃん!?」

「おい!ねず公!」

 

 

善逸と伊之助の声が聞こえ、私は鎹鴉から視線を外してその方を見た。そこでは禰豆子が堕姫の帯によって両手両足を絡みとられ、動きを止められてしまっていた。堕姫は禰豆子の両手両足を引きちぎろうと帯がさらに巻きつかせ、善逸と伊之助が禰豆子を助けようとしていた。

 

時間もなさそうね....。

 

 

「『もしあのカス達と協力とか甘いことではなく、何か別の作戦があるなら、さっさと実行して終わらせろよ、アホ』」

「......分かっていますよ。...ありがとう、獪岳」

 

 

獪岳の伝言の続きを鎹鴉が言い、私は少し口角を上げてそれに答え、獪岳にお礼を言った。

 

どう転ぶかは分からないけど、こっちもしっかりやりますよ。

 

 

「伝言はこれで終わりかな」

「アア。ソウダ」

「それじゃあ、お願いがあるのだけど良い?私の背負い箱を持って戦いが終わるまでここから離れていてね。くれぐれも巻き込まれないように」

「分カッタ。ソッチモ気ヲツケロ」

「うん。ありがとうね」

 

 

私は鎹鴉に獪岳の伝言が終わりなのかを確認し、鎹鴉に自分の背負い箱を渡し、それを持って戦いに巻き込まれないように離れているように頼んだ。鎹鴉はそれに従いながらも私に気をつけるように言った。私はその気遣いに感謝した後、真っ直ぐに前を見た。一度手足を動かせない状態になったせいか、禰豆子も冷静になれたようだ。無闇矢鱈に暴れようとせずに手足に巻きついている帯をなんとかしようとしている。

 

とりあえずやってみようと思うが、これは本当にまだ仮定の段階だ。できれば事前に確かめておきたかったのだけど、今は時間がない。少しでも勝てる可能性を上げないと。背負い箱を預けたのだって勝てる可能性を上げるためだ。とにかく、この戦いをすぐに終わらせないと。

 

 

「善逸!伊之助!禰豆子の手足に巻きついている帯をすぐに斬れる?」

「あ?んなこと簡単だぁ!」

「彩花ちゃん?できるけど、何をする気なの?」

「まあ、内緒かな。できるだけ速く斬ってほしいの。禰豆子!手足が自由になったら、すぐにその場から離れて!もう冷静になれたでしょ!今はこの戦いをさっさと終わらせる方を優先するよ!」

「う、うん!」

 

 

私が善逸と伊之助に呼びかけると、伊之助は怒りながらも言い、善逸が何をする気かと聞いてくるので、とりあえずは内緒と言って誤魔化し、禰豆子に声をかけた。禰豆子は私の声がしっかり聞こえたらしく頷いていた。その後、善逸から『内緒って何!?それはそれで怖いんですけどおぉぉ!?』という声が聞こえた気がしたが、気のせいなのだろう。私は善逸と伊之助、禰豆子の全員が話を聞いてくれたことで次の行動に移れることに安心し、左手に持っていた刀を強く握って目を瞑った。

 

 

チャンスは一度だ。私の体力は殆ど消耗してしまっているため、やるとしたらチャンスはこの一度しかないだろう。失敗したら動けなくなってしまう。しかし、長時間も私は戦えない。どっちにしろ、ここで決めておかないと。

 

()()()()()()刀を抜く音が聞こえ、私は目を開けた。

 

 

そのためにも、しっかりと目に焼き付けておかないと!

 

 

「獣の呼吸 伍ノ牙 狂い裂き」

「雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃 神速」

 

 

伊之助と善逸が禰豆子に巻きついている帯を含めて全ての帯を斬り、禰豆子は帯が斬れた瞬間、地面を蹴って跳んだ。そこを善逸が受け止め、禰豆子を連れてそこから離れた。

 

流石に善逸の霹靂一閃 神速は目に追えなかった。私が目で追えないことは予想していたけど、目の前で見てみると圧倒されかけた。しかし、今は圧倒されている場合ではなかったので、なんとか踏み止まって集中した。

 

 

 

目にも追えない速さ......私にできるかどうかは分からないけど.....あれと同じくらい...いや、あれよりも速くできたら......。....刀を構えた場所から堕姫のところまで一瞬で移動した速さを.........。

 

 

 

私が善逸の霹靂一閃 神速と自分が霹靂一閃を使った時の感覚を思い出していたその時、熱が体中に巡ってくるような感覚がした。刀からパチパチという音が聞こえてくる。

 

 

「あ、彩花ちゃん!?音が....それに、刀が...いや、目も.......」

「おい!気配が雷のようにって....彩芽!なんか黄色くなっているぞ!変なもんでも食ったのか!」

 

 

善逸と伊之助が私の変化に驚いていた。

 

今はお面をしていないから、今回ははっきりこれを見られたな。まあ、華ノ舞いのことは言ったし、既に無色透明の刀も見られたのだから、もう隠さなくてもいいか。逆に、後で説明しやすくなったと思っておこう。それに、善逸と伊之助の言葉で私の今の状況を大体理解できたし。

 

 

私がそう思っていると、先程の善逸の霹靂一閃 神速が頭の中で繰り返された。しかも、繰り返される度に善逸の動きがだんだん遅くなり、私でも動きを認識できるくらいの速さになった。すると、私の体が勝手に動き出した。私はその時にやっと自身の刀を見ることができた。私の日輪刀は善逸と伊之助の言った黄色になっていた。模様も葉と形が変わって梔子の花が出てきた。時々刀に雷が走ることがあるので、私はこれがどういう型なのかすぐに確信できた。そんなことを頭の中で考えている私を他所に体の方は刀を構えていた。

 

 

「華ノ舞い 雷ノ花 梔子(しし)一閃」

 

 

私はそう言いながら一回その場で回り、ステップを踏んだ。次の瞬間、私の体は堕姫の前にいて回りながら頸を斬っていた。斬り終わった後、私は同じステップを踏んで元の場所に戻り、また一回その場で回った。

 

 

私は華ノ舞いを使えたことと堕姫の頸を斬ったことに喜ぶと同時に驚いた。

 

禰豆子を無事に救出して堕姫の頸を斬れたことは嬉しいが、成功したことに驚いた。華ノ舞いに関しては本当に確信なんてなかった。これを思いついたのはこれまで起きたあの変化のことを思い出してみて、ある事に気がついたからだ。それは私のあの変化が起こる前に、私が呼吸の型と原作の場面を思い出している時にあの変化が起きていることがあった。何回かはその状況の場合があったが、勿論そうじゃない場合があったために違う可能性もあった。しかし、バラバラなあの変化の発動条件の中で数少ない手がかりのようなものだったので、それに賭けてみることにした。結果、予想以上に上手く行ったうえに新しい型が使えるようになったのだから、無事に成功できたと言えるのだけど、何か引っかかるんだよね...。この方法で確かに使うことができたが、何かが違う気がしてならないのよね.....。何か一つでも分かったと思ったら、また別の謎が増えていったような....。華ノ舞いに関してはまだ分からないことだらけね.......。

 

 

「彩花!危ない!!」

「彩花ちゃん!早くそこから離れて!」

「えっ?」

 

 

私が華ノ舞いについて色々と思案していると、禰豆子と善逸の慌てた声が聞こえてきたので、私は考えるのを止めて顔を上げた。次の瞬間、目の前から強い衝撃を感じ、私はその衝撃によって吹き飛ばされた。

 

 

どうやら炭治郎達の方も終わったみたいね....。これは多分.....原作で炭治郎が妓夫太郎の頸を斬った時に起きた爆風だろう。こんな形で勝ったことを知るなんてね....。まあ、勝てたことは良かったのだけど、炭治郎と獪岳は無事かな......宇髄さんも.....。

 

 

「うぐっ!?」

 

 

私は自分が吹き飛ばされていることを忘れて炭治郎達のことを考えていた時、何かにぶつかったような衝撃を感じた後、そのまま意識を手放してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オイ、彩花!何処ダ!」

「うっ...うーん......」

 

 

遠くから誰かの声が聞こえた気がした。私の意識が浮上してその声が誰なのかを知ろうと目を開けた。目の前に広がったのは星がとても綺麗に見える夜空だった。

 

.........あれ?私、どうして倒れているのだろう.....?

 

 

私が夜空を見上げながらもまだ目覚めたばかりの頭で思い出そうとしていると、誰かがこっちに向かっていることを気配で感じた。私は誰が来たのかを確認するために体を動かそうとしたが、体が重くて動かしづらかった。それで、無理に体を起き上がらせてみたら、肋の部分がとても痛くてまた倒れてしまった。その動きで木や板が何かに当たって折れていく音が聞こえた。その音で私が現在瓦礫の上にいることに気づくと同時に、爆風で吹き飛ばされたことを思い出した。

 

 

なんとか思い出せたのは良いけど、それよりも肋が痛い!体が重いのは華ノ舞いの反動なんだと思うが、肋は戦いの中で折っていなかった。おそらく...いや、絶対に気を失う直前に感じたあの衝撃が原因だと思う。まだ凄く痛いし、きっと折れているだろうね....。

 

私が痛みに悶え苦しんでいると、上から羽音が聞こえてきた。私はその音が聞こえる方を見て安堵した。

 

 

「ここだよ。.....あの爆風に巻き込まれなかったみたいね。無事で良かった」

「カアーッ!言ウ通リニ離レタカラナ。ホレ」

 

 

羽音の正体は獪岳の鎹鴉だった。鎹鴉は私の背負い箱を足で掴んだまま私の真上まで飛び、私の近くに背負い箱を下ろした。

 

 

「背負い箱を持っててくれてありがとう。ところで、炭治郎達はどう?無事?」

「炭治郎ト獪岳ハスグニ見ツカッタ。爆風カラ距離ヲトレテイタヨウデ怪我ハナカッタゾ。爆風ガ修マッタ後、二人トモ禰豆子ト彩花ヲ探スコトニシタ。アノ爆風ノ混乱ノ隙ニ善逸達ト離レタラシイ禰豆子トハ既ニ合流シテタ。禰豆子モ知ッテタカラ元気ソウダッタゾ。残ルハ爆風デ飛バサレタ彩花ノ行方ダケガ掴メテナカッタカラ、コウヤッテ皆デ探シ回ッテタ」

「ということは、私は炭治郎達とかなり離れてしまったのね」

「アア。カナリ見ツケルノガ大変ダッタゾ」

 

 

私は背負い箱を持ってきてくれたことにお礼を言い、気になっていた炭治郎達の様子を聞いてみた。鎹鴉は一度炭治郎達と会っていたらしく、炭治郎達の現状を知っていたので、色々話してくれた。私はとりあえず炭治郎達が無事だったことに安堵した後、炭治郎達とどうやって合流するか考えた。話からして炭治郎達と離れてしまっているようだし、鎹鴉もそう言って頷いている。

 

 

できれば鎹鴉に案内してもらいながら私が自分の足で歩いて向かえればいいのだけど、今の私はあの反動で体を上手く動かせなくて、しかも肋骨がおそらく折れている状態だ。そんな状態で一人で歩いていくのは難しい。肋骨が折れているだけなら、なんとか何かを支えにしながら歩くことができたと思うが、華ノ舞いの反動が想像より大きく、ここから起き上がることもできるかどうか....。

 

 

「.....そういえば、あの爆風が起きたということは、炭治郎達は無事に妓夫太郎の頸を斬れたということで良いね」

「アア。獪岳ガアノ毒ヲ使ッテ、隙ヲ作ッタカラナ」

「あら、獪岳が私の作った麻痺毒を使ってくれたの。まだ試作品段階だったけど、上弦の陸に一瞬の隙を作れるほどの効果はあったのね。うんうん」

「......少シハ自覚シテヤレ。効果ハ絶大ダッタソウダゾ」

「えっ?それって、私が妓夫太郎と戦った時に使った麻痺毒よりも効果は上だったということだよね。やったー!大成功!」

「マア、ソウナンダガ........」

 

 

私はあの爆風で分かってはいるが、鎹鴉に炭治郎達が妓夫太郎の頸を斬れたことを確認すると、鎹鴉から獪岳が私の麻痺毒を使用して隙を作ったことを聞き、内心とても驚いた。獪岳なら私の毒を使わなくても自分の力でと考えそうだけど、妓夫太郎が強すぎて使ったのかな...。まあ、何にせよ、獪岳が少しでも成長しているということが分かったから良かったのかな。それと、私のあの試作品の麻痺毒の効果も分かったし。

 

.....えっ?いつ獪岳に麻痺毒の試作品を渡したのかって?私が再び堕姫と妓夫太郎を分割するために動く前、納得していない獪岳の肩に左手を置いて頼んだ時にこっそりその試作品を渡して、『きっと何かの役に立つから』と耳打ちしたの。試作品の麻痺毒の入った注射器でそのまま投げて当たれば自動で毒を注入できるので、もしピンチに陥った等の緊急事態になった時に、この試作品でも何かしらの役には立つと思うからね。

 

 

私は試作品が炭治郎達の役に立ったことを喜んでいると、鎹鴉が呆れた目でこちらを見ている。私は首を傾げながらも試作品の麻痺毒の効果が前よりも上がったことを言っていると気づき、少しでも調合の技量が上がったことを喜んだ。しかし、鎹鴉はそんな私の様子を呆れたような目で見ていた。どうしたのかな?

 

 

「.....そういえば宇髄さん達は?炭治郎達は宇髄さん達と会っていない?それは大丈夫?」

「大丈夫ダ。音柱ハトモカク他ノ二人ガ彩花ヲ助ケヨウトシテアノ爆風デ少々巻キ込マレテシマッタヨウデ、音柱ハソノ二人ヲ探シニ行ッタゾ。炭治郎達ハ上弦ノ陸ト何ヤラ話ヲシテイタ」

「そうね....。それなら大丈夫そうかな.......」

 

 

私は鎹鴉と話をしながら炭治郎達が宇髄さん達と鉢合わせしないかが心配になった。鎹鴉に宇髄さん達について聞いてみると、どうやら宇髄さんはあの爆風に巻き込まれなかったが、動けない状態の私を助けようとした善逸と伊之助は私と一緒に巻き込まれてしまったようだ。善逸、伊之助、助けようとしてくれてありがとう。巻き込んでごめんね。

 

炭治郎達は妓夫太郎と堕姫の頸に用があるみたいだ。おそらく原作の時のように、炭治郎と禰豆子が言い合っている妓夫太郎と堕姫と話をして、妓夫太郎と堕姫は仲直りして仲良く地獄に向かう.....という流れになるのかな。

 

 

まあ、鎹鴉が炭治郎達と宇髄さん達との距離が離れているから会えないだろうと言うのなら、それは確かなのだろう。とりあえずは一安心。

 

 

「炭治郎達と合流したいけど、私の体が全く動かないんだよね。炭治郎達が来るのを待つしかないか....あるいは......「無理ダ」.....ですよね....」

 

 

私は炭治郎達と合流しようと思っているのだが、体が全く動かないので、炭治郎達が来るのを待つか、それとも他の方法をと考えて鎹鴉を見て、ある事を思いついたが、鎹鴉はそれを察してすぐに拒否した。私も自分が思いついたことを実行するのは無理だなと冷静になってそう思った。

 

ちなみに、何を考えていたのかというと....あの背負い箱のように鎹鴉に少しでもいいから私を引っ張って、無理矢理に動かすことができるのではというものだ。......改めて思うと、私は何を考えているのだろう...。疲れているのかな....。上弦の陸との戦いと新たに二回の華ノ舞いを使ったことで思ったよりも疲れが溜まっているのだろうか.....。

 

 

「......はあ。仕方がない。炭治郎達がここに来るのを待つしかないのかな....。今のところ、炭治郎達と宇髄さん達が出会う可能性は低いようだし、このまま炭治郎達が宇髄さん達と会わないように祈って待っていよう......」

 

 

私は大きく息を吐いて寝っ転がったまま炭治郎達を待つことにした。私の頭の中は炭治郎達のことばかりで、炭治郎達が宇髄さん達に会わないように、炭治郎が無事でいるように、別の戦いが始まらないようにと祈っていた。...それらで頭がいっぱいだったのだろう。だからか、私は気づけなかった。

 

 

「よお。俺達が何だって?」

「........えっ?」

「エッ!?」

 

 

突然私達の近くから聞き覚えのある声が聞こえた。私達の近くに誰かがいる。私はこの聞き覚えのある声にまさかと思って目を見開き、鎹鴉は驚きながら忙しなく羽ばたかせ、辺りを見渡してきた。すると、上からその声の主、宇髄さんが降りてきた。

 

 

「えっ!?宇髄さん!?どうしてここに!?」

「あいつらが吹き飛ばされたから、探しに来ただけだ。そしたらテメェらを見つけて、そこから様子を見てた」

 

 

私は宇髄さんの登場に驚きながら聞き、宇髄さんが後ろにある壁のような大きな瓦礫を指差しながらそう言った。宇髄さんの話を聞いて、私は何で気がつかなかったのだろうと思った。

 

 

善逸と伊之助は私を助けようとしていた.....つまり、それは善逸と伊之助が私の近くにいたということだ。そして、近くにいた善逸と伊之助も吹き飛ばされたのなら、この近くにいるのも当然だ。

 

 

「......スマナイ。ソコマデ確認シテナカッタ」

「いや、私もそのことに関しては気づかなかったからお互い様だよ。それに、相手は宇髄さんだし、仕方がないよ」

「本当ニスマナイ....」

「だから、大丈夫だって!気にしてないよ」

 

 

鎹鴉は宇髄さんに気がつかなかったことにショックを受けて私に謝っている。だが、私はお互い様だから大丈夫だよ、気づかなくても仕方がないことだと言った。だって、私は鎹鴉が悪いとは思っていないし、そもそも獪岳の鎹鴉は働き過ぎだと思っている。私達との連絡や近状報告などをしてくれて凄く助かっているけど、本当にあれこれ動いてくれるから過労死しないか不安になる。しかし、獪岳の鎹鴉はとても真面目で仕事熱心な性格なので、こういった失敗があると後悔して落ち込むし、どんな仕事でも真剣に取り組んでいる。そういう性格なので、私達が休んでいるようにと言っても仕事をしている。

 

私が励まそうとしても鎹鴉は謝り続け、私は大丈夫だから、気にしないでとか言って鎹鴉を落ち着かせようとする。数分が経って鎹鴉が立ち直り、私はそれに安堵した後に宇髄さんの方を見た。宇髄さんは私達が落ち着くまで何も言わずに見ているだけだった。

 

 

...一体何が目的なのかな?

 

 

「......先程からこっちを見ていますけど、何か御用がありますか?」

「そうだな....。まあ、聞きたいことは色々あるが、簡単に言うとテメェらを御館様のところに連れてくるよう伝令が来たから、テメェらは大人しく俺達と来てもらう。特に、御館様はテメェに用があるみたいだからな」

「御館様が?」

「ああ」

 

 

私が宇髄さんに聞いてみると、宇髄さんから驚くべきことを言った。私は叫びそうになるのを耐えて普通の声でそう聞くと、宇髄さんに頷かれた。

 

 

御館様が私に用って何!?何があるの!?何か聞きたいことでも.......華ノ舞いのことかな?見たこともない呼吸について聞きたいのか、それとも華ノ舞いについて何か知っていて、そのことで何か話したいことがあるのか.....。私的には後者の方が華ノ舞いについての情報が少しでも分かるかもしれないから良いな。もしかしたら、炭治郎達のことを聞きたいとか他のことで用があるかもしれないけどね。ちょっと気になるが、今の炭治郎達を連れて行くのは駄目ね。鬼殺隊の考えは分かるけど、今の状態だと炭治郎はまだ駄目そうだし、禰豆子は大暴れしそうだからね....。.....でも、それはあっちも分かっているのに...。

 

 

「分かっていても、気がかりなんですね」

「ああ?何がだ?」

 

 

私の言葉に宇髄さんは反応した。私はそれを見て、やっぱりなのねと思いながら続きを話した。

 

 

「炭治郎と禰豆子の今の状態は分かっている。そっとしておいた方がいいというのも分かっている。だけど、炭治郎は鬼舞辻無惨に狙われていたし、禰豆子は太陽を克服した鬼だから、ほっとくことができない。何よりも、貴方達に起きた状況や前とは違うこと......これらがあるから、炭治郎達を見逃すことができない。知っていても、分かっていても、何かあってからでは遅いから....。あまり気乗りはしないけど、それでもやらなければならないことなのですね......」

「.....テメェ、ホントに何者だ?」

「ただ、話を聞いていて、その変化を知っているだけ......。炭治郎や禰豆子、鬼殺隊を知っているだけの人だよ...」

 

私は、ただ原作を読んでいたから....少し違いがあっても、炭治郎と禰豆子のことを、鬼殺隊のことを知っているから、どんな思いを抱いているかなんとなく分かっているだけなんだ.....。

 

 

私は心の中でその続きを言った。原作の知識でなんとなくだけど、炭治郎達のことを考えると鬼殺隊側の気持ちは理解できる。例え、炭治郎達が会いたくないと思っているのが分かっていても、炭治郎達が鬼舞辻無惨に狙われる状況を見過ごすわけにはいかない。前回と違って、今回の炭治郎達は鬼殺隊に入っていない。私や鱗滝さん、珠世さん、兪史郎さん、獪岳がいるけど、少人数なので限りがある。こんなどう転ぶか分からない状況であるから、ほっとくことができない。......複雑な気持ちだな...。いや、複雑なのは私よりも.....。

 

 

「分かっていてもやらないといけない、そういう立場だと、とても複雑な気持ちなのでしょうね」

「うるせぇ....」

 

 

私が宇髄さんを見ながら言うと、宇髄さんはそう言った。ただその声からでも、炭治郎達を捕まえるのは乗り気ではないことが分かる。

 

 

.....こういった意味でも捕まりたくないな...。でも、反動で動くことができない私が宇髄さんを撒いて逃げることはできないし........。.......ここで炭治郎達が来るのを待っていたら...宇髄さんを相手に、お荷物の私を抱えて逃げるとなると.......。....炭治郎達に後であれこれと言われると思うけど...今はじっくり話し合って決める時間がないからね。.....よし。

 

 

「...ねえ、鎹鴉。ちょっと、いい?」

「......何ダ?」

 

 

私は意を決して鎹鴉に声をかけた。鎹鴉は私が動けないことを考慮して近づいてきてくれた。

 

 

「今からすぐに炭治郎達のところに行って、このことを伝えに行ってくれる?そして、すぐにここから離れてって伝えて」

「ソ、ソレハ......!?」

「炭治郎達だって上弦の陸との戦いで疲れているでしょう。今から宇髄さんと鬼ごっこしながら追っ手含めた鬼殺隊の人達を撒くとなると大変なのは目に見えているからね。その上、反動で動けない私も連れて行くとなると、すぐに捕まってしまうと思う。今なら宇髄さんは私の近くにいるし、善逸も伊之助もおそらく近くにいるだろうから、ここから逃げやすいと思う。しかしそうなると、私を置いていくことになるのだけど、その方が炭治郎達も逃げやすいだろう。.......後で色々と言われると思うけど。それに、私もさっきの話を聞いて鬼殺隊に少し用ができたから、いい機会だと思う。炭治郎達には私にも考えがあるから、行ってくると伝えて」

 

 

私は手短に鎹鴉に伝言を頼んだ。鎹鴉は私が何を考えているのかが分かって驚いていたが、私は鎹鴉の動揺を無視して説得した。

 

 

鎹鴉は反対するだろうし、この場に炭治郎と禰豆子がいたら絶対に駄目だと言うし、獪岳にも勝手に何無茶しているんだと頭を抱えて言いそうだが、これが一番良いと思っている。今の私は動けない状態だ。そんな私は走るどころか歩くことすらできない。そして、私の近くには宇髄さん達鬼殺隊がいて私も連れて行こうとすると、宇髄さん達に見つかるのは確実だ。さらに、動けない私を抱えてそのまま逃げるとなると、私達が逃げきれる可能性よりも捕まってしまう可能性の方が高い。それなら.........。それに、どうせなら捕まるというより別の視点で考えようと思う。

 

御館様が聞きたいことが華ノ舞いのことかどうかは分からないけど、御館様と話ができるのなら、その時に華ノ舞いのことも聞こう。華ノ舞いのことを知らない可能性があるが、聞かないよりも一度聞いてみた方がいいし、もしかしたら何か情報があるかもしれないし......まあ、他にも色々理由があるけど、せっかくの機会だと思って行こうかな。

 

 

「.....大丈夫ナノカ」

「大丈夫よ。御館様直々にそう伝令が来たのだから、鬼殺隊の人達が私を殺すことはないよ。御館様は私と何か話をしたいと言っていたからね」

 

 

鎹鴉はまだ心配している様子だが、私はそう言いきった。

 

鬼殺隊の人達が私に疑いの目を向けても私を害そうとは考えないと思っている。特に御館様が話をしたいと言っているのだから、それは絶対にない。何故そう言いきれるのかと疑問に持つ方がいると思う。これは私の勝手な想像だが、おそらく御館様は前世の炭治郎の件には関わっていないと考えている。少し前、炭治郎達と前世のことを詳しく聞いた時に私はそう感じた。私はとりあえず自分が感じたことを信じようと思う。

 

 

「........分カッタ。気ヲツケテナ」

「そっちもね。あと、ついでに私の懐から色々取ってくれないかな?」

「.....ウン?アア、構ワナイゾ」

 

 

私が折れる気がないことを察して鎹鴉は私を説得するのは諦めたようで私に気をつけるように言い、私はそれに笑って返事をした後、鎹鴉が炭治郎達のところに行く前に頼み事をした。鎹鴉は私の頼みに何をするか分からずに疑問符を浮かべていたが、私に近づいて懐にある物を出した。私はそれを確認して鎹鴉に小声で話した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい。何をする気だ」

 

 

宇髄さんは私達の謎の行動を疑問に思い、私達に声をかけて近づいてくる。宇髄さんがすぐそこまで近づいてきた時、鎹鴉がバサッという音がはっきり聞こえるくらい翼を羽ばたかせ、それによって鎹鴉が上に飛び、視界に宇髄さんの姿が見えた私は咥えている吹き矢を吹き、矢を飛ばした。宇髄さんはそれに驚きながらもその矢を避け、私の方を見て鎹鴉の方を見ようとした瞬間、宇髄さんの後ろからシューッという音が聞こえ、辺りが煙に包まれた。

 

 

「...チッ。こいつが胡蝶と煉獄が言っていたものか」

 

 

宇髄は煙を見て舌打ちした後、すぐに口と鼻を塞いで彩花と鎹鴉の居場所を探ろうと耳を澄ました。しかし、シューッという煙の音が大きく居場所を上手く特定できなかった。宇髄は彩花達の居場所を特定するのを諦め、煙の外に出る方を優先した。この煙には何らかの薬やら毒が使われているらしいから、この中に長くいるのは危険だと判断したからだ。だが、煙は広範囲まで広がっていて、なかなか煙の外には出られなかった。あっちこっち走ったり屋根の上に登ったりして漸く外に出れた後、宇髄は煙が充満している場所の周りを見た。

 

 

胡蝶と煉獄の話によると、あいつらはこの煙の混乱に乗じて逃げるらしいからな。煙が広範囲にまで広がってるということは、逃げるとしたらあいつらも俺と同時かそれより遅く外に出るしな。あいつは爆風に巻き込まれてボロボロだったし、鎹鴉は飛んでたらここから見えるしな。

 

 

 

宇髄が辺りを見渡して彩花と鎹鴉が外に出るのを待ったが、彩花も鎹鴉も姿を見せなかった。しばらくして煙が晴れ、煙の中の様子が見れるようになった。煙の中から見えたのは横たわっている彩花の姿と近くに置いてある背負い箱だけで鎹鴉の姿は既になかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、さっきまでテメェの近くにいた鎹鴉はどうした?」

「もういませんよ」

「そういうことじゃねぇよ」

 

 

そう私に尋ねる宇髄さんに私は笑みを浮かべて答えた。宇髄さんはそんな私の様子を見て聞き出すのを諦めて辺りを見渡した。

 

 

「......チッ。なるほどな。これから煙が出たんだな」

「流石ですね。気づくのが早い」

「そこから音が聞こえれば、すぐに察せられるぜ」

 

 

宇髄さんはある一点を見た後、舌打ちしてから私の方に視線を向け、私は予想通りに宇髄さんが気づいたので、特に動じずに答えた。そんな私に宇髄さんはそれを指差してそう言った。宇髄さんが指差したのは木屑に刺さった吹き矢だった。実はあの吹き矢は他のとは違う構造をしている。あの吹き矢は刺さった瞬間に液体を注入するタイプの物ではなく、刺さった瞬間に気体や煙を放出するタイプだ。上弦の壱の時のことがあってから気体を放出する投げる球のようなタイプの物だけでなく、吹き矢でもできるタイプの物を作った方がいいと考え、兪史郎さんに相談して作ってもらったのだ。狙ったところに吹き矢が当たれば、その衝撃で吹き矢の側面が開き、そこから凝縮された気体を放出できるようになっている。兪史郎さん、本当に手先が器用だよね。それにしても、兪史郎さんに作ってもらったばかりのこれがこんなに早く使うことになるなんてね。体を動かすことはできなくても吹くことはできそうだったので、鎹鴉に懐から出してもらったのだ。それが上手く使えて想像通りに無事成功することができた。

 

 

「テメェはその様子だと動けねえようだな。だから、テメェはここに残ったということか」

「私を連れて行くとなると、炭治郎達と鬼殺隊が鉢合わせするのは避けられませんからね。貴方達も上弦の陸の次に禰豆子と戦うことになるよりはマシでしょう」

「.....テメェはどっちについているんだ?」

「それは勿論炭治郎達の方ですよ。ただ、争い事はあまり好きではないので、避けられるものはできる限り避けれるように動いているのです」

 

 

宇髄さんが少しも動かない私を見て、私の状態を察した様子で言うので、私は正直に思っていることを答えた。すると、宇髄さんからどっちの味方だと聞かれたので、私は苦笑しながらもまた正直に答えた。

 

まあ、宇髄さんにそう言われても仕方がない。私は立ち位置的に言うと炭治郎達側なのだけど、なんだかんだで炭治郎達と鬼殺隊との仲を取りなしてもいるのよね...。そうなると、どっちの味方なのかと聞きたくなる気持ちは分かる。

 

 

「そういえば、テメェと一緒にいた鎹鴉はどうした?」

「鎹鴉なら煙の時の混乱に乗じて逃がしましたよ。それは宇髄さんも分かっているでしょう」

「いや....そうだがよ........」

 

 

宇髄さんが次に鎹鴉のことを聞いてきたので、私は具体的なことは特に何も喋らずにそう言うと、宇髄さんが納得していないような目で何か言いたげだった。.....まあ、何を聞きたいかは分かっているけどね。

 

種明かしをすると、鎹鴉に吹き矢を取ってもらった時に兪史郎さんの札も一緒に出してもらったのだ。私は吹き矢と兪史郎さんの札を出してもらってからすぐに鎹鴉に言った。

 

 

『いい?宇髄さんが近づいてきたら羽音で私に知らせて。そうしたら私はそれを合図に吹き矢を吹いて宇髄さんの注意を逸らすから、そのまま真っ直ぐに炭治郎達のところに飛んで私のメッセージを伝えてね。煙が突然出てくるけど、それに動揺しないで逆にそれを利用して誰にもバレないように札を使って姿を消して。煙のことは無視して炭治郎達のところに行くことだけを考えてね』

 

 

私は鎹鴉に小声でそう言って吹き矢を咥え、鎹鴉に兪史郎さんの札を持たせた。鎹鴉は少し迷った様子を見せたが、私の言葉にしっかり頷いた。

 

 

兪史郎さんの札は身につけた者を見えなくすることができる。宇髄さんや他の鬼殺隊の人達が鎹鴉を見つけてしまったら炭治郎達の居場所がバレてしまうので、鎹鴉の姿を煙や兪史郎さんの札で隠してしまえば鬼殺隊には見つからない。宇髄さんも煙の音で鎹鴉の羽音を上手く聞き取れないと思う。しかも、この煙の中では気配を感じづらくなっているの。なんか煙が絡みついてくるような感じがしてね......。.......これ、本当は善逸と伊之助対策に色々改造したものだったのだけど、こんなすぐに役に立つことになるなんてね....。

 

 

 

「にしても、随分とド派手なことをしたな。テメェごとあの煙をぶっ放すとは無謀だろ。よく無事だったな。動けねえテメェはあの煙をモロに喰らって普通なら無事ではないだろ。テメェはそういうのに耐性でもあるのか?」

 

 

宇髄さんが体を動かすことができない私に向けてそう言った。観察するように私を見ている。私が毒や薬に対しての耐性があると知ったら、元忍の宇髄さんが怪しむだろうな。忍とかならそういった耐性があってもおかしくないけど.....私は自分で毒や薬の実験をしていたら、いつの間にか耐性がついていましたからね。本当のことなんだけど、嘘だと疑われる可能性があるし、耐性については誤魔化して別のことを話そう。

 

 

「.......流石の宇髄さんもこれには気づかなかったようですね...。私が使ったのは、果たして薬の入った煙なのでしょうか?」

「...........はあっ?」

「少なくとも今回、私はそれを使ったとは一度も言っていませんよ」

 

 

私の放った言葉に宇髄さんは少し間が空いたが、やがて私に視線を向けて声を出した。私は宇髄さんの視線を気にせずにそのまま話を続けた。

 

 

私が毒や薬に対しての耐性を持っていることは誤魔化すが、しかしさっき話したこともまた事実なのだ。那田蜘蛛山で最初に薬の入った煙を使い、無限列車ではそれを改良した物を使用した。二度もその煙を使ったのなら、三度目も同じと思ってしまうのは当然だ。一応あの煙は二度使った薬の気体よりも範囲が広く、煙の色も濃いものだったし、気体の薬は全部無臭だから、そう勘違いしてしまうのも無理はないと思う。ちなみに、この煙を作ったのは一般人が多くいる場所で鬼殺隊と鉢合わせした時のための煙幕として作ったのだ。私達が鬼殺隊を撒くために薬の入った煙を使って、一般人に何か被害があったら大変だからね。煙幕でも迷惑なのは分かっているけど、できる限り一般人が巻き込まれないようにしたい。

 

 

「テメェ....」

「那田蜘蛛山では薬が入った煙は使いましたし、無限列車でも使いました。しかし、同じ煙を今回も使うとは確定していませんから。現に今回の煙は誰もこの中にいて体調が悪くなった人はいませんし、鎹鴉にだって影響はなかったでしょう」

 

 

宇髄さんが私の方をじっと見ていたが、私はまたそれに動じずに言った。

 

まあ、私が今回は薬の入った煙を使わなかったのは一度目と二度目がそうなら三度目もという心理を利用して宇髄さん達を出し抜くことを考えたから、鎹鴉の安全を考えたから、宇髄さんにバレずに鎹鴉を逃がせるのはこの煙を使うしかなかったからの三つの理由があったからだ。私はともかく鎹鴉のことを考えると、薬の入った煙を使うわけにはいかなかった。それに、煙を広範囲に撒くものは煙幕として使う普通の煙しかなく、今持っている毒や薬の入った煙はこれから改造しようとした段階だったので、この煙幕用の煙を使うしかなかったのだ。

 

 

「........テメェ、やるじゃねぇか!」

 

 

私の話を聞いてしばらく黙っていた宇髄さんがそう言った。私が宇髄さんの方を見ると、宇髄さんはとても面白いものを見つけたかのように笑っていた。私はそれに驚いた。それくらい宇髄さんは心底愉快そうに笑っていた。

 

 

「.....どうかしたのですか?」

「面白いじゃねぇか!俺を出し抜くなんてなぁ!こんな面白れぇもん、笑うしかねぇよ!テメェ、確か生野だったよな?」

「えっ、はい。そうですけど....」

 

 

私が宇髄さんに尋ねてみると、宇髄さんはニヤニヤしたまま私の頭を強引に撫でてそう言った。私はそれに戸惑いながら宇髄さんを見ていた。

 

 

宇髄さんが何でこんなに笑っているのかはよく分からないけど、このまま私は鬼殺隊本部のところに連れて行かれることになるのかな。......少し不安だな。原作を見ているから知っているとはいえ、少ししか話していない人や全く話したことも会ったこともない人達のところに一人だけ連れて行かれるのだから、少し心細いよ....。でも、知りたいことも気になることもあるし、何よりも私自身が行くと決めたのだから、ここは腹を括らないとね!逆に連れて行かれると考えるのではなく、こっちから乗り込むという心境で行こう!よし!.........うん?でも、御館様と私の二人きりで話すのはできないよね....それってつまり......。

 

 

「よし!生野!テメェを鬼殺隊本部に連行するぜ!これからテメェらのことで話し合わなきゃいけねぇからな!」

 

 

宇髄さんの言葉を聞いて、私は血の気が引いた。

 

話し合うということは柱が全員集まるんだよね。つまり、それって柱合会議ということだよね!えっ!?私、村田さんが震え上がるあのプレッシャーに耐えないといけないの!?さっきまで乗り込むという心境で行こうと気合を入れていたけど、なんだか凄く不安になってきた。.....だけど、行くしかないのだから、腹を括ると決めたからにはもう行くしか選択肢がない!滅茶苦茶不安しかないのだけど......。炭治郎達のことを考えて気分を紛らわそうかな.....。炭治郎達、無事にここから逃げれたかな....。あっちは大丈夫そうだと思うし、逃げられているよね...。

 

 

 

 

 




華ノ舞い

雷ノ花 梔子一閃

雷を纏った刀を持ったまま、一度回転をつけ、ステップを踏むようにして神速の踏み込みをし、鬼の懐まで飛び込む。鬼の懐に踏み込み、円を描くように回転して刀を振り、またステップを踏むようにして神速の踏み込みで元の場所に戻る。ちなみに、その場に戻った時にも回るのはもう一度同じことを繰り返せるように準備をしているからだ。




次回は「刀鍛冶の里編」ではなく、「鬼殺隊編」です。投稿まで少し時間がかかると思いますが、楽しみにしてもらえるとありがたいです。


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