笹の葉の少女は柱合会議に参加する
えー。今日はなんという綺麗な青い空なのでしょう。雲が一つもない。空には雲は一つもないというのに.....私の心は憂鬱という名の雲で覆われています。何なのでしょう、これは。
....まあ、この挨拶は置いておきましょう。ちょっとした現実逃避で空を眺めていただけなので。数日前、私達は獪岳の手紙を受け取って吉原に行き、上弦の陸の討伐に成功した。しかし、戦いの中で華ノ舞いを何度も使った反動が大きくて動けなくなった私は宇髄さん達に捕まって鬼殺隊に連行されることになった。と言っても、途中からは私の意志で選んだものだったのだけど.....。しかし、御館様と柱が集まる柱合会議がすることが確定されて、今まさに鬼殺隊本部に着いたところなんですよ。
....それで、何で数日も時間が経ってから会議をするのかと疑問に思っている方は多分いると思う。一応、私は爆風に巻き込まれた影響で怪我をしてしまった上に一度気絶していたので、私は蝶屋敷で診察を受け、治療してもらった。折れたような感覚がしたから分かってはいたけど、やはり肋骨が折れていたそうで目を覚ました時には包帯がしっかり巻かれていた。数日間、私はあの戦いが終わって緊張の糸が切れたのか眠り続け、目覚めた後もベッドから動かずに蝶屋敷で大人しくしていた。
いや、私が逃げないようにずっとしのぶさんや隠の人達に見張られていて、ほぼ監禁状態に近い形だったので、大人しくするしかなかったのだ。その甲斐があってか、私の回復は早く、柱合会議に参加できるくらいには回復したので、トントン拍子に今日の柱合会議が決まった。私は大分回復してきたとはいえ、まだ完治していない怪我人なのに、次から次に予定が決まって本当に忙しい日々だったよ......。
「...ここが鬼殺隊本部です。中には御館様や他の柱の皆様が既にお待ちしています。それと、ここから先では貴女は刀を持つことはできませんので、刀をお持ちなら私達に預けてください」
「いえ、私は....「あっ、大丈夫ですよ。この子は武器なんて持っていませんから」.....は、はい...。そうです」
私を背中から下ろした隠が私に言い、私がそれについて話そうとした時、私の見張りや体調が悪化した時の対応をするためとして一緒にいるしのぶさんが先に言い、私はしのぶさんの言葉に頷いた。私がしのぶさんのところに連れて行かれる時に宇髄に刀や吹き矢、薬や毒類が入った背負い箱などの物を全て没収されてしまったのだ。そのため、今の私は丸腰になっているのです。しのぶさんの話を聞いて私が頷くのを確認すると、隠はそうですかとだけ言って、そのまま去っていった。
おそらく他の仕事があるのだろうね....。...ああ、私もできれば参加せずにここから去りたい.....。だけど、柱合会議をする原因である私が欠席することはできないんだよね.......。
「それでは、私達は御館様のところに向かいましょう」
「は、はい!?」
しのぶさんに声をかけられ、私はさっきまで別のことを考えていたことや緊張していたせいもあり、上擦った声で返事をしてしまった。
仕方がないじゃない。だって......これから柱合会議が始まるんだよ!御館様や柱全員勢揃いと話すことになるんだよ!これは凄く緊張するし、色々な気持ちになるでしょ!
今の私は御館様や柱全員勢揃いと会えることへの期待と柱全員からの視線というプレッシャーへの不安で心がいっぱいなのである。なんとか落ち着かせようとしているのだが、緊張や不安の方が強くて声が上擦ってしまうくらい緊張しているのだ。
声が上擦ってしまい、両手で口を塞いで俯いている私を見て、しのぶさんがくすくすと笑っていた。私はそれに顔が真っ赤になったのを感じた。
「そう緊張しなくても大丈夫ですよ。少しお話をするだけなのですから」
「は、はい......」
しのぶさんは歩きながら私にそう言い、私はしのぶさんの後を追いかけながら返事をした。私はため息を吐きそうになっていたが、ぎりぎり踏み止まった。
しのぶさんはそう言っているけど、私は全くそんな感じがしません!お話するだけと言ってますが、お話という名の尋問だと思います!
しかも、私達を連れて来た隠は御館様と他の柱の皆様と言っていたのだから、目の前には御館様で私の周囲を柱全員が囲んでいる図がすぐに頭に浮かびますよ!足が重いな....。こんなに足取りが重くなるのは初めての経験だよ...。
「ふふふ。それにしても、初めてお会いした時は私達が目の前にいても落ち着いた様子でしたので、あまり動揺しない方だと私は思ったのですが.....」
「いえ、そうでもありませんよ。正直に言いますと、内心ではかなり動揺していましたよ」
しのぶさんの言葉に私は正直に答えながらしのぶさんや煉獄さん、宇髄さんと会った時のことを思い出していた。
しのぶさんから見て、私は落ち着いていたように見えていたらしい。だけど、しのぶさんや宇髄さんが突然現れた時はあと一歩で叫ぶところだったし、煉獄さんの時は動揺する前に煉獄さんが炭治郎のところに行こうとするので、慌ててそれを止めるのに精一杯で........うん?煉獄さんの場合は炭治郎と禰豆子のことで頭の中がいっぱいだったから、早く説得することしか考えていなかったな.....。
改めて考えてみると、しのぶさんや宇髄さんの時も炭治郎と禰豆子と鉢合わせしたらとか、炭治郎と禰豆子の様子はどうだろうとか炭治郎と禰豆子のことを考えていたような.......。...つまり、私が色々な場面で冷静でいられたのって炭治郎と禰豆子のことで頭の中がいっぱいだったからだね....。.....それは....なんだか少し恥ずかしい...。
「....ぼーとしているところ悪いのですが、もうすぐ着きますよ」
「へっ?そ、そうですか...」
私が過去のことを思い出して恥ずかしがっていると、しのぶさんが声をかけてきた。私はそれに変な声が出ながらも驚き、目の前を見た。私としのぶさんは襖の前に立っていた。おそらくこの襖を開けたら御館様と柱全員がいるのだろう。行かないといけないのだけど....緊張しすぎて...まだ心の準備が.......。
「......入る前に少し深呼吸をしてきてもいいですか?」
「どうぞ」
私は少しでもいいから気持ちを整理する時間が欲しくてしのぶさんに聞いてみると、しのぶさんはにこやかに承諾してくれた。私は気持ちを落ち着かせる時間をくれたことに感謝と安堵を覚えて縁側に立ち、深呼吸をしながら心を落ち着かせることに集中した。それと同時に、さっきまで考えていたことを思い出し、気が紛れるならと思ってそのまま考え込むことにした。
今まで炭治郎と禰豆子を理由にして冷静でいたことに気づいたのだけど、他にもしのぶさんや煉獄さん、宇髄さんと出会った時って、大体はその場から離れることを中心に考えていたような.....いや、真っ先にそっちを考えていたよ。....臆病者だと言いたい人がいるなら言っても構いません。でも、考えてみてください。二年修行して数ヶ月間鬼と戦った経験しかない人が鬼を五十体以上も狩った柱プラス二周目に勝てると思いますか!時透無一郎さんのような才能がある人ならともかく、私は凡人ですよ!何か華ノ舞いや痣、左目の変化とか色々なおかしなところがありますが、それ以外は普通ですよ!
ただ、指導者が二周目の炭治郎や獪岳であり、しかも二人ともかなりのスパルタな訓練であるうえに禰豆子も嬉々として参加するので、成長速度は通常よりも速いと思いますが........。挫けそうになりながらもこの世界で生きるためにはこの訓練を熟せるようにならないとと前向きに考えていたから、なんとか頑張って熟せていた。
炭治郎達との鍛練のことを思い出し、私は苦労したけど楽しかったことを思い浮かべ、肩の力が抜けて少し前向きな気持ちになってきた。私はは肩の力が抜けて自分の考えが前向きになってきたことに気づき、それならこの状態のままポジティブに考えてみようと思い、そのままの思考で考えてみることにした。
そうやって来たのだから、これも何かの試練だと思って前向きに望んでいこう。ここまで来たからには逃げることはできない。というか、そもそも刀や薬類が入った背負い箱がなければすぐに捕まるからね。今回は逃げるという選択肢すらない。逃げるという選択肢がないのだから、今は目の前にあることからなんとかしないとね.....。
「......はあ」
私は縁側から見える青空を見て、大きく息を吐いた。
最初に言っていたけど、今日に限って雲なんて一つもない澄んだ青空なんだよね。いつもなら、今頃は炭治郎と禰豆子と一緒に鬼ごっこしたり何処かの野原に腰掛けて空を見上げながら刀の手入れをしたり薬を調合していたりしていたのにな....。...今はそんなことはできないけどね.....。
...だけど、今はこの状況を受け止めて、前向きに考えて乗り越えないとね。それに、私は御館様や柱を前にしても
「......よし」
私は両手で頬を軽く叩いて気合を入れた。正直に言うと、この先にあることに対しての不安はまだある。これから待ち受けるのは柱全員に囲まれて尋問するようなものだと思うけど、うじうじとしていても時間が延びてしまうだけだからね。ここで覚悟を決めないと。
「もう大丈夫です」
「分かりました。それでは入りますよ」
「はい」
私は振り返って大丈夫だと言ってしのぶさんの隣に立った。しのぶさんの言葉に今度はちゃんと返事することができた。しのぶさんが襖に手をかけて私の方を一喝して開けると、部屋の中では既に御館様としのぶさん以外の柱全員が座ってこちらに視線を向けていた。私はその視線に一瞬固まったが、すぐに一礼して柱全員が座っているところの真ん中に座った。
どうして真ん中って?しのぶさんに座るように促された場所が真ん中だったからだよ!今の私、たくさんの人達に視線を向けられている上にその視線の圧が凄すぎて、感覚が鋭く敏感になってきているような気がするよ!囲まれているせいなのか、向けられている視線が強いせいなのか隣の部屋にも誰かいるような気もしてくるんだけど!入って早々、この部屋から早く出たくなってきた。
....だけど、怖気付いちゃダメ......ポジティブ.....ポジティブ思考.........。
「...君が生野彩花だね」
「はい、御館様ですね。お初にお目にかかります。生野彩花と申します」
私が自分に言い聞かせていると、御館様が私に話しかけた。私はそれに動揺せずに一礼して御館様に挨拶した。
とりあえず失礼がないように振る舞っているつもりだけど、ちゃんと礼儀正しくできているかな.....。それにしても...アニメとかで見ていたから知ってはいたけど、本当に御館様の声は聞く相手を安らぎを与え、さらに心が落ち着くと共に高揚させるんだね....。
アニメで聞いた時は落ち着いた声だな、確かにこの声だとそんな効果があるかもしれないねとしか思っていなかったけど、実際に聞くのとは全然違う!正直、今の私は色々な気持ちがこみ上がってくるのを抑えるのに精一杯だ。生で聞いた声は予想以上の威力だった....。....すみません!なめていました!
「それで、今回は何か私に尋ねたいことがあるとお聞きしてこちらに伺ったのですが、どのようなことなのでしょうか?」
「まあ、...色々かな」
私は気持ちを引き締めて御館様に聞いた。御館様は私を見て曖昧にそう言った。間を空けて御館様に色々と言われ、私はとても不安になった。
えっ?御館様、私に聞くことがもしかして山ほどあるの!?それとも、私達が何かやっちゃったの!?任務に関しては知っていたため、割り込むように参加したけど、電車とかは切符を買ったのだから不法侵入はしていないと.....いや、した!藤襲山に無断で入った!あれ、バレているのかな?バレてなければいいのだけど....。
それに、考えてみると那田蜘蛛山の件もあるし、隊士を怪我させたり、獪岳をこっちに巻き込ませたりと色々やっているね、私達!...もうこの際、何を聞かれても動揺しないようにしよう!
私は内心では叫んでいながらも表面では「そうですか......」と言うだけで止めた。本当に叫んだら、周りから殺気が飛んでくるとも思うからね....。...これは御館様に失礼なことをしないようにするのを優先した方がいいよね.......。
「彩花、君が私達のことを警戒しているのは分かるよ。善逸や伊之助、しのぶ、杏寿朗達の話は聞いているよ。炭治郎達から私達鬼殺隊のことは話を聞いているんだね」
「.......はい」
私があれこれと考えていたことが分かっているらしく、御館様は私にそう言った。私は御館様の確認に緊張しながらも頷いた。
やっぱり善逸やしのぶさん達から私についての報告は全員に伝達されていると見て間違いないね。.......それと...すみません、御館様。私が周りの様子に注意を払っているのは確かにそうなのですが、私が最も警戒しているのは御館様に失礼なことをしていないかどうかなのですよね.....。
勿論、鬼殺隊の人達が原作とかなり色々と違うのではと思い、特にまだ会ったことがない柱六名を警戒はしているのですが、それ以上に私が注意を払わないといけないのは御館様に何か粗相をしてしまい、柱全員に睨まれたくないからです。私が自分勝手なことを言っているのは分かるが、考えてみてくださいよ!この柱全員に囲まれた状況の中で、柱全員の視線が私に向いている今の状況で、私が何かして柱全員の怒らせてしまうとなると、柱が私に向ける視線に殺気が加わってしまうことになり.......考えただけで意識が飛びかけた。これ以上は想像するのを止めよう。....ただ、この状態の中で何が一番柱全員の怒りを買うのかというのを考えると.....御館様に何か粗相してしまえば確実に全員がキレる。
.......そういうわけで、私が一番警戒しないといけないのです。今のところは柱全員が私のことで誰も怒ってはいないようだ。
「私は彩花に色々聞きたいことがあるんだ。だから、彩花と正直に話をしたいんだ」
「正直に....ですか?」
「私は本当のことが知りたいんだ。今、私達にとって予想外のことが起きている。それはきっと彩花達も同じなんだと思う。彩花達の方もこの状況に困惑していた。だからこそ、彩花も情報が欲しかったんじゃないかな」
「えっ!?」
御館様の言葉に私は正直にとわざわざ言ったことに首を傾げながら聞いた。御館様は私の反応に気にした様子もなく、そのまま話を続けた。御館様の話の中に私の考えていたことを言い当てられ、私は声を上げてしまった。心臓がバクバクしている。しかし、御館様はそんな私の様子を気にせずに話を進める。その話に私の心臓がさらにバクバクした。
「彩花も思ったんじゃないかな。この状況を放っておけないと。状況はかなり複雑になってきているからね......。それに、おそらくこの後のことも知っていて、なんとか対策を練りたかった。だが、情報が少なく判断するのが難しいから、情報を集めるために私達に会いに行きたかったが、炭治郎と禰豆子のことがあり、私達のことも警戒していたから、会いに行けなかったということだと思うんだけど」
「せ...正解です.....」
「獪岳と連絡を取っていたことを考えて、私達の動きを知りたかったのは炭治郎と鉢合わせしないようにするためなのと、私達のことを知るためだったんじゃないかなと思っただけだから、そう警戒しないで」
いや、警戒しますって!獪岳と連絡していたことで私が情報を欲しがっていることはバレても、鬼殺隊の動きを知りたいことがバレるということは予想していましたけれど......。...流石は御館様ですね。油断なりませんよ....。
実は、私が獪岳に頼んだ情報は鬼殺隊の動きだけではないのだ。獪岳には鬼殺隊の中で何か怪しい動きがあるのか、前世と何か違いがあるのか、柱の反応の方はどうかなどのことを聞いていた。獪岳はそういったことは全て手紙に書いているし、読んだら獪岳はすぐに処分するみたいだし、鎹鴉もその手紙を運ぶだけで中身は見ないから、あまり知らないと思う。別に鎹鴉のことを信じてないわけではない。
ただ、私達の協力関係がバレないように私達のことは口に出さずに手紙のやり取りをしているだけだ。何処で誰が聞いているかも分からないからね。用心しておかないと。
「大丈夫。私達は彩花に何もしないよ。炭治郎達のことで警戒していると思うけど、今は私達のことを信じてほしい。それに、私は感謝しているんだ」
「感謝?私に?」
「炭治郎と禰豆子と一緒にいてくれたことだよ。炭治郎と禰豆子のことは私達の責任だけど、二人のことは心配だった。鬼舞辻に狙われていることもそうだが、一番は心が問題だったからね。しかし、私達が手を出すことはできなくて、どうしようかと困った時に彩花が来たんだ。多分だけど、彩花のおかげで二人の心も救われているんだと思う。二人の側にいてくれてありがとう」
御館様に感謝していると言われ、私は首を傾げていたが、御館様の話を聞いて納得した。私が一人で納得していると、御館様が突然私に頭を下げてきた。それを見て、私は一瞬思考が固まって呆気に取られたが、すぐに正気を取り戻ることができた。そして、今の状況を客観的に考え、叫びそうになるくらい驚愕した。あまりに予想外だった。
だって、いきなり御館様に頭を下げられるなんて驚くでしょう!!?えっ!?何なの!?叫び声を上げかけたけど、ぎりぎり口を両手で抑えたから声は少ししか漏れてないはずだ。周りには口に手を当てて驚いているようにしか見えないからね。それに、目が限界まで見開いていると思うし。
それにしても、もう突然のこと過ぎて、頭の中が混乱してもう爆発寸前だよ!!でも、今はなんとか冷静にならないと!御館様が頭を下げている相手は私なんだから、私がなんとかしないと!だけど、そのことを考えると、私の頭の中がグチャグチャになる!なんという悪循環なの!!?って、頭を抱えたいけど、この状況を終わらせるには私が何か言わないと終わらない!なんとか声を出さないと!
「お、おおお、おお御館様!?わ、私なんかのために、ああ、あ頭を下げないでくださいませ!?た、炭治郎と禰豆子のことは当然のことをしただけですし、しょ、しょ、正直に話し合いしますので、ですから、頭を上げてくださいまし!?それで.....お願いします!!!」
私は突然のことで焦りや驚愕、困惑などで混乱したままそう言った。何を言っているのかも自分では分からないくらい言葉が滅茶苦茶になったうえに何を言ったかの記憶もすぐに忘れてしまい、どうすればいいか分からなくなった私はお願いしますとはっきり言って土下座してしまった。
もはや、私の行動は色々滅茶苦茶過ぎると思っているし、そもそも自分でもどんな行動をしているかも分かっていない。とにかくこの状況をなんとかすることだけを考えていた。
「....分かった。私が頭を上げるから彩花も頭を上げて。この状態では話ができそうもないからね」
「......はい。分かりました。すみません....」
御館様は私の言葉や気配で察してくれたらしく、私にそう言ってくれたおかげで私も安堵して漸く落ち着くことができた。私が顔を上げると、御館様は既に顔を上げてこちらを見ていた。どうやら私は御館様が顔を上げたことすら分からないくらい動揺していたようだ。
「そんなに動揺しなくても良かったんだよ」
「いえ、動揺しますよ。わざわざ私なんかに土下座しなくても良いですから。それに、貴方様が頭を下げなくても私は正直に話してます」
「本当かな?」
「はい、本当です」
御館様は私に笑いかけたが、私はそれに頷かずにそう言った。御館様に頭を下げられて動揺しない人がいますか!!とそう叫びそうになるのを必死に耐えた。状況がなんとかなったことに少し安堵したこともあってまた叫びそうになったが、ぎりぎり踏ん張ることができた。でも、次は耐えられるか分からないから、少し深呼吸して息を整えよう。
私は少し深呼吸をして、御館様に聞かれたことに動揺することなく答えることができた。
さっきの私の話は本当だ。私が御館様に嘘をついてもすぐに見破られるからね。御館様に嘘をついて騙し通せるなんて想像もできない。炭治郎にも滅茶苦茶分かりやすいと言われているくらいだから、私が御館様を騙せるわけがない。まあ、言葉を濁すつもりではある。言葉を濁すのなら大丈夫だし、嘘をついたわけではない。それに、私は鬼殺隊に関しては警戒しているが、御館様にはそこまで警戒していない。
いや正確に言うと、御館様に先を読まれたり嘘を言って見破られたりすることに関しては警戒しているが、御館様は信頼できる方の人だと思っている。確信はあったのだけど、まだ炭治郎達に直接聞いていないから憶測の段階だけど、私はそう思っている。炭治郎に聞くべきかを悩んで結局聞いていなかったが、この際だから御館様に直接聞いてみようかな。
「それは何故かな?」
「....これは勝手な憶測なのですが、御館様はあの場...前世の炭治郎の件が起きた場所にはいなかったのではないでしょうか」
「炭治郎から詳しいことは聞いていないんだね」
「話すのが辛そうなのです。その時のことを思い出してしまうようで。ですから、あの件のことは一回大雑把に聞いたくらいです」
「.......それなら、どうしてそう思うのかな。炭治郎達からはそんなに詳しく聞いていないのだろう」
「あの件のことは確かに一度しか聞いておりません。ですが、炭治郎の様子から御館様はあの件と無関係なのではないかと考えました」
御館様に理由を聞かれ、私は炭治郎に聞こうと考えていたことをここで言えば納得されるのではないと思って言った。だが、私の言葉に反応した御館様に追及され、私は聞いた後に誤魔化すことができないことに気づき、安易に聞こうとしたことを後悔しながらも正直に答えた。その後も御館様を誤魔化すことは無理だからと考えて、御館様の質問にはなるべく正直に答え続けた。
原作とどこまで違いがあるのかを確かめるために炭治郎には悪いと思ったけど、時々前世でどんなことがあったのかを少しずつ聞いていた。その時に炭治郎の様子を何回か見て気づいたのだ。炭治郎の様子を見ると、鬼殺隊に対してはあまり詳しく話そうとしないのだが、御館様個人に対しては特に嫌悪感も何もなさそうに普通に話していたので、御館様は前世のあの事件の時はいなかったのではないかと考え始めた。
でも、これは私がそう感じただけなので、この段階では確信がなかった。鬼殺隊のことを少しでも話題になれば即座に反応する禰豆子が御館様のことが話題になった時、特に何もしないで話を聞いていたのを見るまでは.....。いや、禰豆子がただ御館様に対しては無関心だった可能性もあるかもしれないが....。どっちの可能性が高いのかと聞かれると、やっぱり........と思っても、誰にも肯定されていないからまだ憶測の段階であるが.....。
「それで判断したのかな」
「そう思いますよね。ですが、私はそう感じましたので、この勘を信じてみようと思います。......それに、鬼殺隊の行動に私は怒りを感じていません。これまでの鬼殺隊の動きも納得できるところはありますし、仕方がないとも思っていますので」
御館様の言葉に私は正直にはっきりそう言った。
御館様があの事件にいないことには確信がある。禰豆子の態度もそうだが、原作のことを思い出すと有り得そうだなと思ってしまうのですよね。はあ....。今は原作と違うことが起こるから、何か原作と似たものがほしかったけど、御館様達が自爆して亡くなったのはやっぱり嫌だな。でも、炭治郎の反応からして可能性は高いんだよね。なんとなくなんだけど......。
それに、鬼殺隊の行動には納得できるところがある。炭治郎と禰豆子は前世でも鬼舞辻無惨に狙われていたみたいだから、...できれば保護したいが、それは無理だし、だからといってほっとくことはできないし、上弦の鬼と戦いを見過ごすことだってできないし、炭治郎達に任せるのも申し訳ないし.....。
....まあ、その気持ちは分かるし、私にとってはありがたいことだけどね...。今までのことを考えると、原作や炭治郎達の情報でも知らないことが起きる可能性がある。炭治郎達なら対処できるかもしれないけど、念には念を入れておかないと.....。...私が足を引っ張る可能性もあるし、鬼殺隊も一緒に戦ってくれた方が心強い。
「....分かった。とりあえずそれで納得するね」
御館様はしばらく私を見た後、これ以上聞いても仕方がないと思ったそうで、とりあえず納得はしてくれるそうだ。
ううっ.....。ごめんなさい。本当に炭治郎と禰豆子の様子と原作の知識と繋げてそう感じただけなので、あまり深い理由はないのです。
「じゃあ、他のことを聞いてもいいかな」
「はい、大丈夫です」
御館様の言葉に私はしっかり頷いた。
ここからが本番だからね。何を聞かれても動揺しないように気を引き締めないと!
「彩花はどうして炭治郎と禰豆子の話を信じたのかな?この先のことや前世のことを聞いても普通は信じないよね?」
御館様の質問を聞いて、私はやっぱりその質問からだよねと思った。
ベッドの上で考えていた。何を質問されるかを......その質問にどう答えるかを柱合会議が開かれると聞いた時から今日までずっと考えていた。いくつかのパターンを考えて何度も脳内でシミュレーションした。何を言うかは分かっている。
大丈夫だ。私は考えていた答えを動じずに
私は心の中で自分にそう言い聞かせながら口を開いた。
「...それは信じますよ。だって.....私も前世の記憶を持っているのですから」
次回は彩花とは別の視点で書こうと思っているのですが、言葉使いのことで悩んでいるため、次の投稿に時間がかかると思います。首を長くして待っていただけるとありがたいです。次回をお楽しみに。