「それは信じますよ。だって、私も前世の記憶を持っているのですから」
俺達の真ん中で正座している
生野彩花が前世の記憶を持ってるだと...!だが、それは炭治郎や俺達鬼殺隊だけに起きてることではなかったのか!?
「....君には前世の記憶があるんだね?」
「はい。そうですが...皆さんの持っている記憶とは違うものですけど」
御館様も一瞬驚いていたが、すぐに生野彩花に質問した。流石は御館様だ。生野彩花は御館様に返事をしながら周りを見渡していた。
俺達とは違う記憶?それは一体なんだ?俺には生野彩花が何を言いたいのか分からない。
「そうですね....。分かりやすく説明しますと、私の持っている記憶は未来のものなのです」
その言葉に俺は一瞬思考が停止したが、すぐに正気に戻り、生野彩花が言った言葉の意味を理解した。
未来だと?そんなこと.......。
「テメェ、何言ってやがる!」
「確かに、私の言っていることが信じられないと思います。.....しかし、私の言っていることは事実です」
「....ンなこと信じられるわけ...「信じられるわけがないと思いますし、そんな信じられないことは起きると貴方達は身を持って分かっているはずです。貴方達も炭治郎達と同じで二年前の時に戻ったのではありませんか。それなら、分かりますよね。普通では起こり得ないことが今、実際に起きているこの状況を。私が言ったようなことも起きている。そうとは考えられませんか?」....!?だが.....「証拠とか聞かれても出すことはできませんよ。それと、その証拠に関しては貴方達も私と同じですよ。逆に貴方達がその証明をするようにと言われた時、どうやってその証拠を見せますか?」........それは.....」
俺と同じことを考えたらしい不死川は生野彩花に言うが、生野彩花は不死川の言葉を遮り、俺達に起きている現象のことや証拠がどちらもないことなどを挙げてそう言った。不死川はそれを聞いて黙ってしまった。
確かに俺達に今起きていることを考えると、そのようなことが起きても不思議はない。
「....それは、本当なんだね?君に未来の記憶があると言うのは」
「はい、本当です。私には百年以上先の未来の記憶を持っています。先程も言いましたが、証拠はありません。これから先に昭和、平成、令和と年号が変わると言っても証明するには時間がかかり過ぎますし、他のことを言ってもすぐに証明できるわけないですから。私の言っていることが信じられないと思いますが、これだけは覚えておいてください。私は前世では未来にいた人間であり、その記憶を持ったまま百年前のこの世界に転生したということです」
「.....前世....転生か.....。....それは.......私達の身に起こっていることと何か関係があるのか.........」
「転生ということは、彩花さんは一度亡くなっているということですよね。ですが........」
御館様の質問に生野彩花は頷いて答えた。御館様の反応からして、流石にこれは御館様も予想外だったようだ。生野彩花の話を聞いて、悲鳴嶼と胡蝶が何か呟いて思案しているが、どうしたのだろうか。生野彩花も悲鳴嶼と胡蝶の声が聞こえたのか、首を傾げて二人を見ていた。
「...もしかして、貴方達は前回の時に亡くならず逆行したのですか?」
「逆行?」
「逆行が何を?」
「....あっ!この時代では...別のように捉えられてしまうのですね。.....えっと.......この時代では逆行とは順序や流れに逆らって進む、逆に方向に行くことなどの意味を持っていますよね。それを時間に当てはめてみますと、時間の流れが逆さになって過去に戻ることを指すことになるのです。つまり、皆さんの身に起きていることですね。私達の時代ではこのような現象を逆行と呼んでいます」
生野彩花の言った言葉の意味を俺は分からなかった。何人かの柱はその言葉が何なのか分かったようだが、何人かの柱は生野彩花が何故その言葉を言ったのかは分からないらしい。生野彩花はそんな周りの声を聞いて何やら理解したらしく声を上げ、俺達に説明した。
確かに今の俺達に起きている状況をそう言えるだろう。むしろぴったりな言葉だろう。ギャッコウ、とりあえず覚えておくか。
「彩花はその逆行について詳しいのかな?」
「詳しいというより...........小説などの本とかで読んだからなんとなく分かると言った方がいいかもしれません。私達の世界では、小説としての設定で逆行や転生などがよく使われますので。逆行や転生は普通に考えたら有り得ないことですし、始めの方の話の流れとして設定に使いやすく、私の世界にそういう現実的ではない話は結構多いです。私もそういった小説とかを読んでいたので、逆行や転生のことになんとなく知っているのです。...まあ。実際に起きた時は凄く驚いたのですが......鬼の存在を含めて....」
「.....もしかして、私達や鬼のことも...」
「....はい。物語として世に出ていて、私はそれを読んでいました。初めの私の認識は、鬼は物語の敵役として出る架空の生き物であり、現実世界では鬼がいないものだと鬼の存在を信じていませんでした。しかし、老人から話を聞いて大正時代.....百年前の時代ならまさか...と考え、鬼が出た時の対策をしました。備えあれば憂いなしと言うので、そして、炭治郎と禰豆子に会った時、鬼の存在は本当なのだと確信しました」
「.....そう、なんだね........」
御館様の質問に生野彩花は何故か俺達の方をチラチラ見て大きく息を吐いた後、何やら覚悟を決めたような顔をした。生野彩花は基本笑顔を浮かべているが、たまに動揺したり緊張したりすると、それが分かりやすく表情に出る。表情をあんなにころころ変えられて凄いな。ただ、今回は明らかに挙動不審な様子だ。御館様も俺も他の柱もそんな生野彩花の様子を疑問に思いながらも生野彩花の話に耳を傾ける。俺は生野彩花の話をまとめて生野彩花は一通り話を聞いた後、御館様は生野彩花に鬼殺隊や鬼のこともそうなのか聞いた。
すると、生野彩花は少し言いにくそうにしながらも未来でのことを話した。生野彩花の話を聞き、御館様は少し複雑そうな、残念そうな顔をしている。それは俺も他の柱も同じだった。特に不死川は我慢ならなかったのか生野彩花に詰め寄ろうとしていたが、周りがすぐにそれを止めた。
無理もない。俺達鬼殺隊の行動が作り物として書かれている、未来では俺達のことは伝わってもそれは作り物だと思われている。俺達鬼殺隊のことも鬼のことも架空のものだと思われ、俺達鬼殺隊は存在していないということになっている。それは少し残念だし、悔しい気持ちもあるが、生野彩花に詰め寄るのは見当違いだ。生野彩花はそのことには一切関係がない。
それに、生野彩花のいた前世は今から百年後の未来だ。この時代でも鬼に対して作り話や架空の生き物だと思う人はいる。今でもそうなのだから、百年後でも鬼のことを作り話だと考える人は多いのは当たり前だ。だから、俺達の感じた気持ちを生野彩花にぶつけるのは流石に可哀想だ。このことで生野彩花を責めることはできない。仕方がないことだ。
生野彩花に詰め寄ろうとした不死川もそのことを頭では理解しているのだろう。しかし、頭では分かっていても体が先に動いてしまった。そのことを理解していることや周りの柱達が抑えていたおかげもあり、今の不死川は落ち着くことができた様子で座り直していた。
「.....そういえば、彩花はさっきから逆行や転生と言った言葉を使っていたけど、それについて詳しく話してくれないかな?私達の中でもあまりよく分かってない子達がいるから」
「...そうですね....分かりました。物語とかで出てくる先程言った転生などで人生をやり直すような話の設定には色々種類があるのです。その数ある転生のうちの一つが異世界転生。過去や異世界という私達の今いる世界とは異なる世界に転生することを異世界転生と言います。これは私に当てはまりますね。もう一つは逆行。過去に戻りたいと願った人がその時までの精神や記憶のまま過去の自分に戻ることを逆行と呼ばれています。これは炭治郎や皆さんに当てはまることですね。他にも色々な設定がありますが、私や皆さんの今の状況と関係するこの二つの説明だけをいたします」
御館様が生野彩花が先程から言っている逆行や転生のことを聞くと、生野彩花は下を向いて少し悩んだ様子を見せた後、顔を上げて説明し始めた。
テンセイというものの設定だけでも多いのだな。確かに話を聞く限りテンセイというのは生野彩花に起きたことと確かに同じだ。それに、ギャッコウというのも炭治郎や禰豆子に起きていることと似ているな。......未来での物語はそういう話が多いのか?生野彩花の世界は不思議だな。
「それじゃあ、彩花は私達に起きているのはその逆行だと思っているのかい?」
「はい、少なくとも私はそう思っています。炭治郎達も皆さんも前の記憶を持っているようだし、過去に戻りたいと願うようなことも全員にありますし....」
御館様の質問に生野彩花は頷いて俺達の方に視線を向けた。
人生をやり直したい.....か。それはあの時に何度も思ったことだ。他の柱達もそう思っているのだろう。俺は....過去に戻った時、初めは何が起きたのか分からずに困惑していたが、炭治郎と禰豆子に出会う前に戻れたということに気づき、俺はやり直せるのではないかと思っていた。
しかし、俺が困惑している間に炭治郎達はもういなくなっていた。俺は炭治郎達の家に行った時、炭治郎達の家族は既に埋葬されていた。それを見て、炭治郎達が俺と同様に前の記憶を持っているのだと気がついた。そして、それと同時に絶望した。炭治郎と禰豆子はここにいないのは俺を避けたからだ。つまり、それは俺と関わりたくないということだ。炭治郎と禰豆子は謝っても俺達を許さない。いや、会うことすらできないのだから、謝ることもできない。
「質問を変えていいかな?鬼殺隊に対してはどの程度知っているのかな?」
「そうですね......。鬼殺隊についての情報は大体知っていると思います。鬼殺隊は鬼の撲滅を目的とする政府非公認の組織であり、鬼殺隊の他に鬼狩りとも呼ばれる。構成員は日輪刀という日光を蓄えられた刀を持った数百人の剣士がいて、その剣士達は十干の階級が割り当てられている。さらに、その上に御館様と呼ばれる長、及び柱と呼ばれる幹部のような隊士がいて、他にも隊士達をサポートする隠と呼ばれる人達がいる。あと知っていることは.....鎹鴉が隊士に伝令を伝えていること、隊士は鬼を倒すための全集中の呼吸と呼ばれる呼吸法を使っていること、剣士を育てる育手のことなどですね」
「....それほどの情報が残っているんだね。...しかし、そこまで情報が残っていて.......。.....鬼についての情報も残っているのかな?」
「はい。鬼は人を食べる存在であること、鬼舞辻無惨という始祖がいて、その血によって人が鬼に変貌すること、血鬼術という術が使える鬼がいること、鬼の弱点は日光と日輪刀で、藤の花を嫌う習性があること、十二鬼月と呼ばれる強い鬼がいること...大体まとめるとそれぐらいですね」
「....そうなんだね」
御館様が質問を変えて生野彩花に何かを質問し、生野彩花がその質問に答えているようだが、俺の頭には入って来ない。炭治郎と禰豆子のことを考えると、ついぼーとしてしまいそれ以外のことは考えられなくなる。炭治郎と禰豆子のことも大事だが今は会議中だ。真剣に話を聞かねばならない...。
「御館様、話を遮ってしまい申し訳ありません。しかし生野彩花という者に一つ聞きたいことがあります。よろしいでしょうか」
「私は別に構わないが、彩花はいいかな?」
「大丈夫です。どうぞ」
俺が御館様と生野彩花のことを見て集中していると、不死川が御館様に聞いた。御館様はそれを許可して生野彩花に聞き、生野彩花もそれに頷いた後、不死川の方に体を向けた。すると、生野彩花が不死川の方を向いた瞬間、不死川は先程の落ち着いた様子から一転し、不死川の顔には青筋が立てていた。
「テメェ、その話を聞く限り、鬼について色々知ってんだよなァ。それなら、何故竈門炭治郎と竈門禰豆子に近づいたァ!鬼が人を食うのを知っていたなら、テメェは何故逃げなかったァ!」
不死川の突然の怒鳴り声に俺達も生野彩花も驚いた。だが、不死川の言うことは分かる。鬼のことを知っているはずの生野彩花が鬼である禰豆子に近づいたなのは危険な行動だ。鬼だと分かった段階で、普通ならすぐに逃げるはずだ。それなのに、何故逃げなかったのかと不死川が怒るのは当然だ。鬼のことを知らないならまだしも、鬼のことを知っていて一緒にいる生野彩花の行動は自殺行為に等しい。
「....それはですね。私は禰豆子を鬼とは思えなかったのです。........あの時、私はいつものように薬を売った帰りでした。そこで誰かが倒れているのを見つけました。その倒れた人の側にも一人いて、倒れているその人のことを心配そうにしていました。私はそれを見て、すぐにその二人のところに駆け寄りました。そして、それが炭治郎と禰豆子との出会いでした。
その時の私も今の皆さんのように禰豆子に警戒されていましたし、威嚇とかもされていました。ですが、その時の私には例え威嚇されていても禰豆子が炭治郎のことを必死に助けようとしている、妹がただ兄を心配して必死に守ろうとしているようにしか見えませんでした。私には例え禰豆子が鬼だったとしても炭治郎を、兄を守ろうと必死になっている妹としか思えなかったのです。ですから、その時の私には威嚇された戸惑いはあれど恐怖なんてなく、助けたいということしか思えませんでした。二人の様子から何かあるのは分かっていましたが、それでも禰豆子が鬼であろうとなかろうと、炭治郎に何があろうとなかろうとも私はこの二人を助けたいと確かにそう思いました。
...以上です。感情的なように感じる人もいるかもしれませんが、私はあの時の自分が感じたことを信じているのです。....それが私にとっては十分な理由なのですよ.....」
生野彩花は不死川の質問に少し迷った様子を見せたが、すぐに不死川の目を見て口を開いた。初めは何の話だろうかと思ったが、どうやら生野彩花と炭治郎達が会った時のことのようだ。話を聞き、生野彩花のした行動は命の危険があると思いながらも俺は生野彩花の感じたことに共感した。
俺も前回炭治郎と禰豆子に出会った時、禰豆子が炭治郎を守ろうとこちらを威嚇する姿を見て、こいつらは他とは違うと思った。生野彩花も炭治郎と禰豆子を見て、きっと似たようなことを感じたのだろう。二人の強い絆を、俺が禰豆子を他の鬼とは違うと感じたように、生野彩花もまた禰豆子は身体が鬼であろうと、心は人間のままだと感じ取ったのだろう。
不死川は生野彩花の話を聞いて何か言いたそうにしていたが、生野彩花が笑顔ではっきり言い切ってしまったので、おそらく言うに言えないのだろう。それにしても.......。
「.....羨ましい限りだ」
「えっ?」
俺は気づいていたら生野彩花にそう言っていた。生野彩花は困惑した表情で俺の方を見た。
俺は炭治郎を裏切り、禰豆子を斬ってしまった。あの時のことは俺達が完全に悪いのだから許されないとは分かっているし、炭治郎達が俺達と会う気はないことは十分承知だが、それでも謝りに行きたい。そんな気持ちが残っているからこそ、俺は今回炭治郎達と出会った生野彩花に嫉妬しているのだろう。生野彩花はあの時にいなかったから、炭治郎と禰豆子は最初こそ警戒しても、俺達と違って嫌悪までしていない。また報告で出た獪岳という隊士も炭治郎達と連絡を取っていることから、炭治郎と禰豆子は二人に心を許している。
だが、俺が生野彩花に嫉妬しているのはそれだけではない。俺は前回で最初に炭治郎と禰豆子と出会い、二人の様子を見て気づいた、生野彩花も最初に炭治郎と禰豆子と出会い、二人の様子を見て分かった.....俺も生野彩花も最初に炭治郎と禰豆子と出会ったが、前回のあの時に俺は守るべきであった炭治郎を裏切り、殺してしまった。一方で、生野彩花はあの時のことで精神的に苦しむ炭治郎達を助けた。この違いだ。
.......俺が生野彩花に嫉妬するのは筋違いだというのは分かっている。俺は炭治郎達が苦しんでいた時、手を差し伸べず逆に苦しませた。そして生野彩花は前回では鬼殺隊にいないどころか、おそらくこの時代には存在しなかった人間だ。さらに、生野彩花は二年前から炭治郎達と行動していたのだから、そのまま鱗滝さんのところに行ったのだろう。水の呼吸も使っていたそうだから、それは間違いない。つまり、生野彩花は俺の妹弟子だ。その妹弟子を俺は負の感情を抱いている。....情けない...。
「えっと.....それは....炭治郎と禰豆子のことを言っているのですよね...?」
「ん?.....ああ、そうだ。それがどうした?」
「いえ、主語が色々と抜けていて....」
生野彩花は悩みながら俺に聞いてきた。俺は何故そんなことを聞いてきたのかと思いながらも返事し、今度は俺が聞いた。すると、生野彩花は苦笑いしながら答えた。
......どうしたんだ?
俺が疑問に思っていると、胡蝶が生野彩花に小声で何かを話しかけ、生野彩花は胡蝶に体を近づけて何かを話していた。耳を澄ましてみると、『良く分かりましたね』とか『なんとなくですが。修行の時の炭治郎の説明を解読するために色々と聞いていたらそういったことがなんとなく分かるようになってきましたよ』や『なるほど。お疲れ様です』とかそんな話が聞こえた気がしたが、よく分からない。
何の話をしているのだろう?炭治郎のことと何か関係があるのか?それにしても、胡蝶は生野彩花と仲が良さそうだな。確か、療養中は蝶屋敷にいたはずだから、話すことが多かったのだろう。
生野彩花は胡蝶と少し何かを話した後、姿勢を戻して俺の方を見た。
「すみません。....続きを話してくださいませんか?まだ炭治郎と禰豆子のことで何やら羨ましいということしか伝わっていませんので、用件やその理由をはっきり話してください。いや、せめて主語は言ってください。主語があれば何とか理解できます」
「あ、ああ...」
生野彩花が謝った後に真剣な様子でそう言い、俺は少し戸惑ったが頷いた。生野彩花と胡蝶が何を話していたのかは知らないが、今はそれよりも話すことにした。
用件やその理由だったか?主語を言うようにと言っているが.......。
「.....俺はあの時のことを謝罪したい。あの時のことを謝罪して、また一緒に過ごしたいと思っている。だが、炭治郎も禰豆子も俺を許さないし、俺に会いたくもないだろう。今の俺は炭治郎達を探しているが、とても複雑な気持ちだ。会いたくもない相手に謝罪されても許すわけがない。しかも、あの時のことが起きた理由が何であれ悪いのは俺なのは分かっているが、あの時と関係のない、ただ炭治郎達といるだけでそれを羨んでしまっている。......そんな俺では炭治郎と禰豆子は絶対に許さない」
「........それで、一体どうするつもりなのですか?」
俺の話を生野彩花は相槌を打ちながら俺が嫉妬していることを非難せずに続きを促した。
「どうすれば炭治郎と禰豆子に許してもらえるか分からなかった。会うことが無理なら、せめて炭治郎と禰豆子の居場所が分かり次第に手紙を送りたいと思っていた。だが、手紙を送っても許されない。それをしても炭治郎と禰豆子に不快な思いをさせるだけだ。だから、俺は俺のしたことにけじめをつけることにした。俺はあの時に炭治郎を裏切り、禰豆子を斬ったことへのけじめとして切腹するつもりだ。そして、そのことを炭治郎と禰豆子に知らせたい。それで、頼みが........!?」
パシッ!!
俺が切腹のことを話すと、生野彩花や周りが動揺したのが分かった。御館様だけは特に表情を変えていなかった。おそらく御館様は俺の考えに気がつかれていたのだろう。俺はそのまま話を続け、炭治郎と禰豆子に切腹のことを知らせたいと口にした時、それまで黙って座っていた生野彩花が立ち上がった。俺も他の柱達も御館様もその行動に驚いていたが、生野彩花は俺達の様子を気にせずにそのまま歩いて俺の前で立ち止まった。俺がどうしたのかと聞こうとした次の瞬間、俺の左頬から痛みを感じた。乾いた音が辺りに響いた。俺は少し遅れて左頬を触り、目の前を見た。そこには生野彩花が無言で立っていた。目がどこか潤んでいるように感じる。もしや....泣いているのか......?それに、この状況はどう見ても、生野彩花が俺の頬を叩いたようにしか見えない。だが何故叩いたのかも、何故泣いているのかも見当がつかない.....。
「.........どうした?」
「......................」
俺が目の前にいる生野彩花に聞くが、生野彩花は無言のままだった。辺りが沈黙に包まれた。少し時間が経つと、生野彩花は大きく深呼吸をして目を擦り、俺や御館様、周りに視線を向けた。そして.........
「....すみません。色々な感情が込み上げてきて、少し混乱してしまいました。突然立ち上がり、そして叩いてしまい...申し訳ありませんでした。......少し落ち着くことはできました。ですが、本当に申し訳ありません..........」
生野彩花は俺達に対しての謝罪を口にして頭を下げた。俺達は少し困惑した。どうやら冷静さを無くしていたようだ。まだ少し混乱している様子だが、大丈夫そうだ。.....しかし、何故そこまで動揺したのか....?
「先程の言葉は........頬を叩いたことを指していますか?」
「それもあるが..........泣いていたことも気になる」
「あれは先程説明した通りですよ。ただ、色々な感情が込み上げただけです」
生野彩花は俺が聞いたことについて確認した。俺は頬を叩かれたこともそうだが、泣いていたのも気になっていたため、そのまま思ったことを口にした。しかし、生野彩花は先程と同じことを話していた。もしかしたら生野彩花が何か隠しているのか、本当に知らないのかもしれないな.....。....これ以上聞いても仕方がなさそうだから、もう一つの方を聞くとしよう。
「もう一つの方も頼む......」
「えっと....何故頬を叩いたのか、ですね。それでは駄目だと私が思ったからです」
俺が続きを話してくれるよう頼むと、生野彩花は俺に一度確認してそう言った。俺は一瞬呆気に取られた。
.....駄目だと思ったから?また生野彩花のいう勘なのか?
「...また勘か」
「まあ、勘に近いものですかね」
「何が駄目だと思った」
「そうですね。...........はっきり申し上げますと、切腹しても炭治郎と禰豆子は許さないと思います」
俺が少しムッとして言うが、生野彩花は動じずに頷いた。俺がまた新たに質問すると、生野彩花は少し悩んだ様子を見せた後、はっきりとした声でそう言った。
....そうだな。しかし、それは俺も分かっている。分かっていてやるつもりだ。ただけじめをつける...それだけだ。
「......分かっている」
「けじめをつけるために切腹する....少し違うのではないでしょうか。確かに、けじめをつけたいと思っているのでしょうね。でも、炭治郎と禰豆子に許してほしいとも心の何処かで思っているのでしょう」
俺の言葉に生野彩花は俺の目を真っ直ぐ見たままそう言った。俺は生野彩花の言葉に動揺した。何故?
「謝っても許されないというのは頭の中では分かっているけど、もし切腹したら炭治郎と禰豆子は許してくれるんじゃないかって、心の何処かで思っている!だけど、炭治郎と禰豆子は切腹なんかしても許さないよ!」
「けじめをつけるだけだ。それ以外に「じゃあ、炭治郎と禰豆子が切腹のことを聞いて心が晴れると思っているの!けじめをつければ、本当に炭治郎と禰豆子が喜ぶと!」.....それは...!?」
生野彩花は俺の様子を見て、どこか泣きそうな顔をしながら怒ったように言い、俺はそれに反論して本当にけじめをつけるだけなのだと言おうとしたが、生野彩花に炭治郎と禰豆子は俺が切腹したことを喜ぶのかと聞かれ、言葉に詰まった。
炭治郎と禰豆子は俺が切腹したことを喜ぶのか.....それは....喜ぶだろう。自分達を死に追いやったんだから。...だが、炭治郎と禰豆子は本当に喜ぶ?あの炭治郎が?前回二年後に再会した時、鬼に同情していた炭治郎が.....?....しかし............。
「炭治郎と禰豆子は切腹したことを喜ばない。例え相手が心に深い傷を負わされた人間であろうと、強い怒りや恨みを抱いていても、あの二人が人の死に喜びを感じるわけがない。それに、切腹でけじめをつけるの意味は自身の命をもってして、その過ちの責任を取って償うと言っていることですよね。覚悟をしていようと、そんな形で償おうとしても許さないと思う。......少なくとも、私は切腹のことを聞いてそう思ったよ」
生野彩花は悲しそうにしていたが、俺から視線を逸らさずに断言していた。それと同時に気になることを言った。
.....少なくとも私は?どういうことだ?生野彩花が切腹のことを許さないと?何故?
「........どういうことだ」
「....そのどういうには色々な意味がありそうですね。私はけじめをつけるために切腹することに反対しています。私が言うことはとても失礼だと思っていますが、はっきり言わせてもらいます。もしかしたら時代による考え方の違いなのかは分かりませんが、私には切腹することがまるで逃げるようなものに感じたのです」
「逃げる.....だと?」
俺が生野彩花に聞くと、生野彩花は先程から乱れ始めていた呼吸を整えてから話し出した。口調が丁寧になったので、落ち着くことができたのだろうか。......だが、俺はさらに生野彩花の言っていることが良く分からない。逃げるだと.....何故そう言うのか、さっぱり分からない。
「俺は逃げていない。俺はただ...」
「けじめをつけるだけと言うつもりですね....」
「.....そうだ」
「確かにけじめをつけようとしているのだと思います。しかし、私にはけじめをつけると言って、自己満足すると同時に自分のやったことから逃げているように思えるのです」
「自己満足?やったことから....逃げる?それは一体、どういうことだ.....」
「自分は命をもって償えたと満足することはできるけど、相手がそれで喜ぶなんて確証はないように思います。それに自分の命で償う.....言いかえれば、これから歩むであろう人生を捨てるということです。それでいいのですか?これからの人生を捨てるということは大きく受け止めている、覚悟を決めていると捉えられますが、これからも感じ続けるであろう苦しみや罪悪感を終わらせ、自分が犯した罪からも逃げるということにもなるのですよ。償いたい、許されたいと思っているのに、自分だけが満足して逃げることで本当に許されると思っていますか?」
「それは......!?」
俺が反論しようとするが、生野彩花は俺が何を言うのか分かるらしく言い当てられてしまい、俺は生野彩花の言葉に頷いた後、何も言えずに黙ってしまった。生野彩花のはっきりとした声とその勢いに、俺は口惜しくも押されていたが、生野彩花の話の中で疑問に思ったことは聞くことができた。生野彩花は俺の目を見て、語りかけるようにそう言った。俺は生野彩花の話を聞き、驚きのあまり言葉にできなかった。
そんなこと....俺は考えもしなかった...。.....いや、もしくは心の何処かで......。
「切腹しようとするのは償い意味だけではないですよね。冨岡さん自身が自分のやったことを、罪を犯した自分を消したいとも思っているからでしょう。ですが、自分の命を絶つことで自分の罪をなかったことにしないでください。それに、どうして一人で背負おうとしているのですか。前回のあの時の件は冨岡さんだけでなく、他の柱や善逸達もやったことですよ。冨岡さんは炭治郎の兄弟子だからと言うかもしれませんが、その流れだと善逸達は炭治郎の同期だからと言って切腹するということが成立してしまいますよ。炭治郎の兄弟子だからと言って、冨岡さん一人が切腹する理由にはなりません。あの時の件は鬼殺隊全体での責任ですから、一人で背負う必要はありません。炭治郎の件は皆さんも苦しんでいるのです。切腹のことを考えるまで一人で抱え込まないでください」
「..............」
俺は無言で聞いていることしかできない。生野彩花は先程まで俺が考えていたことも分かるらしい。俺が言う前に先に言われてしまった。それと、生野彩花が一人で背負うつもりなのかとも言われてしまった。炭治郎のことは俺だけではなく、他の柱もやったから俺だけの責任ではない。炭治郎の兄弟子だからと言っても、俺一人の責任にならない。そう言われたことに俺はまた驚きのあまり言葉が出て来なかった。
それは....確かにその通りなのかもしれない。...だが、俺は水柱に相応しくない.....俺は未熟だ......。
「....兄弟子だからという言い訳は使えないなら、今度は水柱に相応しくないからとか未熟だからとかいう他の言い訳を考えていませんか。悪いですけど、今の貴方は紛れもない鬼殺隊の水柱です!資格がないと言っていても、資格があると認められているから水柱に任命されているのです!しかも、何年も柱として仕事をしているのですよね!もう何年も経っているのですから、今更水柱に相応しいか相応しくないか悩まないでください!いや、そもそも炭治郎のことで切腹するのに、水柱に相応しいかどうかも資格があるかどうかも関係ありません!それと、未熟だというのは当たり前ですよ!誰しも未熟だと私は思っています!人間は日々成長していく生き物なのです。子供も大人も何かを知って成長していきます。ですから、大人であろうと人間は完全に熟しているわけではないのです。貴方も私もこの場にいる人達もまだまだ成長できる未熟な人間なのです。未熟だからというのもまた切腹する理由に全くなりません」
「.....怒っているのか?」
「...少しだけですが怒ってますよ。自分はこういう人間だからと一人で背負って切腹しようとしているのですから。あの時の件は冨岡さんを含めて柱全員と善逸達が悪いです。それなのに、冨岡さんだけが罪の意識で切腹するのは可笑しいです。本当に一人で背負い込むのではなく、あの場にいた全員であの時の責任を背負ってください!死を正当化しないでください!」
生野彩花は何故俺の考えていることを何度も当てるんだ。それと、何故か少し怒ったような顔をしている。俺が聞くと、生野彩花は小さく溜息を吐いてから先程よりも大きな声で俺にそう言った。俺は生野彩花のその勢いに負けて黙った。
......生野彩花の勢いに負けてしまい、俺はこれ以上何も言うことができなかった。....もし生野彩花の言う通りだとしたら.....それなら.............
「......それなら...俺はどうすればいいんだ....」
「.........それを私が断言することはできませんよ。私は炭治郎ではないので、どうすれば許してもらえるかなんて分かりませんし、私はあの時、その場所にいませんでした。私が先程から言ったことは冨岡さんの話から私が思ったこと、感じたことを言っただけです。無責任だと思われるかもしれませんが、あくまで私は思ったことをそのまま正直に言っただけなので、私の言ったことを鵜呑みにするかどうかは自分達で判断して決めてください。私の意見は聞くにしても参考程度で良いです。ですが、これだけは言います。それを参考にするかしないか関係なく、自身も他の人達も炭治郎も禰豆子も全員が納得できる償い方を見つけてください。おそらくそれを必死で考えたのが切腹だったのだと思いますが、個人的には他の方法を改めて考えてくださるとありがたいです」
俺は切腹することが一番の償いだと思っていた。しかし、生野彩花に言われ、何をしたらいいのか分からなくなってきた。それが無意識に口に出てしまった。俺はそれに驚いたが、同時に随分頼りない声が出たなと自分で思った。
生野彩花は俺の声に一瞬目を見開きながらもすぐに俺に向けて安心させるような微笑みを浮かべた。すると、生野彩花はずっと立ち続けていた状態から急に俺と向き合うようにして正座して優しい声で話し始めた。
「それに...お恥ずかしながら....色々なことを言って、冨岡さんの切腹を止めていましたが、一番の理由は私の我儘からなのです。私が冨岡さんに死んでほしくないと思ったからです。今まで罪悪感に耐えて頑張ってきたのだと思います。それなのに、私の身勝手な思いで切腹を止めてしまっているのは申し訳ありませんが、私は切腹して未来を諦めてほしくないのです。私が冨岡さんにとって、とても残酷で勝手なことを言っているのは分かっています。それでも、私は例え今がどんなに苦しくても、罪悪感に押し潰されそうになっていても耐えてほしいと思ってしまうのです。その苦しみや罪悪感に耐え、炭治郎と禰豆子に謝って、あの時のことを償い続けてほしいのです」
「謝る?」
「まあタイミングや場所は必ず考えてほしいのですが、まずは謝らないといけないと思います。炭治郎は匂いで分かりますが、言葉にしないと正確に伝わらないことだってあります。そんなことをしても不愉快になるだけだと言って謝らないより、誠実で率直に謝る方が良いと思っています。必ず何処かで謝罪しないといけなくなるのですから、心が折れることを恐れないで当たって砕けろの精神でぶつかっていってください。向き合ってください。ただ今はまだ難しいと思いますので、互いに相手の話をしっかり聞き合い、タイミングと場所を絶対に考えて話し合ってください」
生野彩花は少し申し訳なさそうな様子でそう言った。しかし、俺は謝るという言葉に驚いた。謝らないといけないということは俺も分かっていた。だが、謝っても炭治郎と禰豆子を不快にさせるだけだというのは分かっているのに、それでも謝るべきだ、分かっていてもそれに向き合えという生野彩花の言葉には驚くと同時に目から鱗が落ちるような衝撃を受けた。
「.....これは私の願望ですよ。今は無理でも...もし炭治郎に謝ることができたなら、また元の関係に戻ることができるならという希望を少し持っているのです。人生山あり谷ありですから、良いこともあれば悪いこともあります。....人生山あり谷ありにはトラブルの連続という意味もありますけど.......。まあ、そういう言葉があるくらい人生は良いこともあれば悪いこともあるし、トラブルだっていっぱい起きます。ですが考え方を変えてみれば、今は悪いことが起きてトラブルが多くても、いつかはきっと良いことが起きるとも考えられます。何が起こるか予想できず、明日のことは明日にならないと分からない、それが人生なのですから。悪いことだけを見て人生に絶望し、その先が分からないままで終わらせるのではなく、良いことも悪いことも両方を見据え、希望を持って前に進んで明るい未来へ繋げていってほしいのです」
「....繋げていく...?」
「そうです。明日は何が起こるのかが分からないなら、私は進みたいと思います。進んでその明日をこの目で見た方が良いと思っています。死んではそこで終わってしまいます。その先を全く見ないで終わらせてしまうよりも私は何か行動してほしいのです。何か行動をすることで変わる可能性があります。行動することで、生き続けることで何か分かり、何かに繋げていくかもしれません。そして、それらは巡り巡って未来へと繋がっていきます。繋げてきたものは何も無駄にはなりません。だから、今までの人生で繋げてきたものもこれから先の人生で繋がっていくはずのものも全て無駄にしないでください」
生野彩花は微笑みながらそう言った。その話の中に出た繋げるという言葉に、気づけば俺の体は反応していた。いや、体が反応したというよりは衝撃と痛みを感じた。左頬に......かつて錆兎に張り飛ばされた時の衝撃と痛みが蘇ってくる....。
『自分が死ねば良かったなんて二度と言うなよ。もし言ったらお前とはそれまでだ。友達を止める』
『お前は絶対死ぬんじゃない。姉が命をかけて繋いでくれた命を、託された未来をお前も繋ぐんだ、義勇』
......また、俺は忘れていたのか...蔦子姉さんが鬼に襲われて亡くなり、自分が死ねば良かったと言った時の錆兎とのあのやり取りを。大事なことだろう、何故また....。俺は炭治郎と禰豆子に酷いことをした。その罪はこの命をもって償わなければいけない。それほどの罪を犯したと俺は自覚している。しかし、かつて俺に死ぬなと錆兎が言ったあのやり取りを思い出すと、切腹はできない。蔦子姉さんと錆兎が命をかけて繋いでくれた命を、託された未来に繋ぐことを俺はできていない。例え炭治郎と禰豆子にしてしまった罪を償うために切腹したとしても、命を絶ったことを錆兎は怒るだろう。いや、そもそも炭治郎と禰豆子にしたことから錆兎に許されないだろう。炭治郎と禰豆子は俺が切腹することを喜ばないし、望んでもいない。錆兎は繋いだ命をそんな形で絶ったことを怒るだろうし、男なら自分のやったことの後始末をしろ、途中で投げ出すなと言いそうだ。蔦子姉さんも悲しむ。.......すまない、炭治郎、禰豆子、錆兎、蔦子姉さん。....俺はまた間違った行動をしようとしていた...。
「自分の罪を背負い続けることで苦しいこともあると思いますが、いつかは良いことがあると希望を持ってほしいのです。諦めて死を選ぶのではなく、諦めずに生きて自分の罪もその背負い続ける苦しみにも逃げず向き合い、自分の責任を全うできる行動をしていってほしいのです。今のままだと、炭治郎も禰豆子も冨岡さんも全員が後悔する結末を迎えると私は思っています。私はその後悔する結末にしたくない、明るい結末にしたいのです。これは本当に私の勝手な考えなのですけどね........」
生野彩花は周りを見ながら俺達に自分の罪とその罪悪感を背負いながらも希望を持って耐えてほしいと言い励ましている。生野彩花は自分勝手な考えだと言っているが、後悔のない行動をしてほしいという俺達のことを思っての言葉なんだと思う。
「私はこんな我儘や偉そうなことしか言えませんが、許してもらえるかどうかは本当に冨岡さん達の行動次第だと思っています。炭治郎達からの話しか聞いていない私よりも、実際にそこにいた貴方達の方がどう行動した方がいいのかは分かっていると思います。それでも、私は暗い方へ行くのではなくて明るい方に行ってほしいのです。ですから、ゆっくりで良いのです。焦らずに無理もせずに前回で起きたことを互いに背負い合い、これからを生きていってください。何かありましたら、また相談に乗ります」
生野彩花はそう微笑んで言う。俺はそんな生野彩花の様子を見て、疑問に思った。
生野彩花は何故俺達を気にして、こんなことを言ってくれるのだろうか。俺達が炭治郎達にしたことを知っているはずなのに俺達を励ましてくれている。俺には生野彩花の行動が分からない。
「......そうか。よくそんなことを言えるんだな」
「...私は純粋に思ったことを言っただけですよ。それに、私は見た目が十五歳なのですが、中身は前世と今世を合わせると冨岡さん達よりは年上なので、少し視野が広いのですよ。....というよりも、こういうことを言えるのは年上だからというよりよおそらく前世の影響が強いのだと思いますけど」
俺の言葉に生野彩花は苦笑いしながらもそう答えた。前世、未来の世界で一体何があったのだろうか?未来は平和だと言ってるが.....。
その後、数分だけ沈黙が続いた。生野彩花は周りを見渡し、俺と向き合っていた状態から体の向きを御館様のいる方に変え、少し前に移動して座った。座った後に姿勢を整え、御館様や俺達の方を見た。
「....それでは、続きを話し合いましょうか。そちらはまだまだ聞きたいことがあるのだと思いますし」
しばらく周りの様子を見た後、生野彩花は沈黙を破って御館様に声をかけた。
俺が切腹すると言ったことで話が脱線してしまったが、今は柱合会議を行っている。炭治郎と禰豆子の件で色々と思うことはあるが、今は柱合会議に集中しよう。生野彩花と炭治郎と禰豆子のことを話してから、少し気持ちが軽くなった気がする...。
「.....うん、そうだね。続きを話し合おうか」
生野彩花の言葉を聞き、御館様が頷いた。御館様が頷くのを合図に柱合会議は再開し、御館様と生野彩花の話し合いは続いていった.........。
.......それにしても.....十五歳....。.....炭治郎と同い年だったのか...。年下だと思っていたのだが........。
.....そういうところですよ、冨岡さん。
次回は彩花の視点に戻ります。
コソコソ話
彩花は前世から嘘が大の苦手で、嘘をついたらすぐにバレてしまう。何度も一瞬で嘘がバレるため、嘘をつくことは諦めているそうだ。その代わり、この経験から嘘はつかない話をすることができるようになった。