「....お前、凄えな。御館様や柱と対等に話したと聞いたぞ」
「...いえ、内心では凄く緊張したのですよ。それに私自身、動揺しないで話せた自分を褒めたくなるくらいです」
「自画自賛かよ」
「ははは.....。そうかもしれませんね。ただ、本当に緊張しすぎて疲れたので....」
柱合会議が終わり、私だけが先に部屋を出て蝶屋敷に戻ることになった。私はまだ怪我が完治していないからね。まあ、柱の皆さんは私のこと以外にも話し合うことがあるらしいし、どっちにしろ追い出されていたと思うけど...。
私が隠に背負われ蝶屋敷まで運ばれていると、隠が声をかけてきた。何度も隠が交代していたし、多分この人で最後だと思う。交代の回数からして、そろそろだろうし。この人がその時の行きと同じ人なのか違う人なのか分からない。隠は顔がよく分からないから声で判断するしかないんだよね。それで、その声が行きに運んでくれた人と似ているような気がするけど、似たような声の人なのかもしれないし、行きは緊張しすぎて気にしていられなかったし....。
.......そういえば...隠というと、後藤さんは今頃どうしているのかな。私が原作で名前を知っている隠は後藤さんと前田さんくらいだからね。前田さんは御裁縫係の仕事場にいると思うけど、後藤さんは何処かで仕事している真っ最中なのかな。まだ会ったことがないから、少し気になるなあ。原作では遊郭での戦いを終えた炭治郎のお見舞いをしてくれていたけど、今は炭治郎がいないから何処にいるか分からないなあ......。
私は隠との話に微笑みながら答え、原作にいた隠のことを少し考えた。そして、隠との会話で柱合会議でのことを思い出していた。
御館様も他の柱も前世の記憶を持っているみたい。いや厳密に言うと、御館様は前世の記憶という表現で良さそうだが、他は表現すると少し違うみたい。まあ、それは予想外だったけど...それよりも色々あった。本当に色々あったよ....。
.....それで、言いたいことは色々とありますが......まずは感想。...柱の威圧がハンパなかった!!確かに、私は前回にはいない存在だったから怪しむのは当然だけど、警戒されすぎて心臓が飛び出るかと思ったよ!不死川さんが私に近づいた時、心の中で叫んでいたからね。あと一歩で大きな叫び声を上げそうになったけど、そこはぐっと堪えて話せたのだから、あの時の自分を褒めたい。まあ、不死川さんの怒鳴り声を何度も聞いたら悲鳴が出そうだと考えて、失礼だということは理解していたが、不死川さんが何かを言う前にさっさと話していたところもあり、あまり怒鳴られないで終わった....。良かった......。
....ただ、不死川さんに叱られたのは予想外だったなあ。.....あっ、話した内容は全部私の本心だからね。柱合会議の最初に言ったので嘘は言えないし、そもそもバレるから言えない。まあ、一つ嘘はついたけどね。私の前世の世界ではある人によって作られた漫画の話だったということだ。それを話せないが、嘘をつく気はないと言ったので、そのことを隠して現実にあったことが御伽話のようになっていると思うように誘導した。御伽話になっている方が人に作られた話だと言うよりはマシだと思ったのだけど...どっちでもショックだよね....。
次に、冨岡さんの突然の切腹発言。あれは驚いた。柱合会議というから、自分が聞かれるであろう質問を予想して、どう答えるかというのは考えていたけど、冨岡さんのカミングアウトは本当に予想外すぎて悲鳴を上げなかったのは奇跡だったと思う。ただ、その時に私の中で何かが切れたような感覚がして、気がついたら立ち上がって冨岡さんの方へ向かい、頬を叩いていた。.....自分がしたことなのだけど、あの場で一番驚いたのは多分私だったと思う。冨岡さんの切腹発言に驚愕と同時に怒りを感じていたのは確かだし、止めたいと思っていたけど....まさか行動に移すとは...もっと耐えてよ、私!
それにしても.....最初のあの時の冨岡さんの言葉からして、冨岡さんが口下手なことが凄く実感した。原作で見てて知っていたけど、冨岡さんのあれは口下手というレベルを超えていると思う。主語とか色々抜けているものが多いし、最初の方は何を言っているのかが分からなかったので、原作での冨岡さんの会話を思い出して予想してから、冨岡さんにそれで正しいのかと確認を取っていた。まあ、次第に冨岡さんの言っていることがだんだん分かってきたので、確認を取らなくなってきたけど。おそらく、原作での冨岡さんの会話がどういうものなのかを分かっていたことと炭治郎の説明を必死に理解しようとしたことで、そういった会話の翻訳が上手くなったのだろうと私は予想している。
しのぶさんにどうして分かったのかと聞かれて、炭治郎の説明で苦労したことを話すとしのぶさんに納得され、「お疲れ様です」と労ってもらった。呼吸や薬と毒作りの次に苦労したことだから、労ってもらったことは嬉しかった。......いやいや、私は何を言っているの。柱合会議で色々ありすぎて、疲れているのかな?
「はあ......」
「おい。俺の背中で溜め息を吐くな」
「あっ、すみません。少し疲れているみたいで...」
私が柱合会議での出来事を思い出して溜め息を吐くと、隠にそう言われて私はすぐに謝った。
人の背中で溜め息を吐かれるのは嫌だもんね。これは背負われている私が間違いなく失礼だ。
「まあ。御館様や柱全員に囲まれていたら、そりゃあ疲れるよな」
「はい、
「あぁ?柱が九人いるっていうことを知らなかったのか?竈門に聞かなかったのか?」
「いえ、そういうことではありませんが....。......うん?もしかして炭治郎のことを知っているのですか?....えっ?ひょっとして、貴方も........」
「ああ。前回では竈門達とちょっと縁があってな。あいつらが俺達鬼殺隊の話をしないと思うが...俺は後藤という名前なんだがあいつらから聞いているか?」
「.....後藤さん....」
私が隠、後藤さんと話をしていた時、私を背負ってくれているのが後藤さんだと分かった上に、後藤さんも前回の記憶を持っていることを知らされ、私はそれに驚いて固まってしまった。
まさかの後藤さん本人だった!!後藤さんは原作と違うようになっているから、今頃どんな行動しているのかなと思っていた矢先に、その本人に背負われていたのは想定外だったよ。
「.....い。おい。おい!どうした?もう蝶屋敷に着いているぞ」
「えっ?あっ、はい。ありがとうございます」
「ああ。お大事にな」
後藤さんに何度も呼びかけられ、私は目を開いた。いつの間にか目隠しがとられいて、目の前には大きな屋敷が見えた。しかも、その周りを飛んでいる蝶が飛んでいるなあ。...うん。どうやら私が考え込んでいる間に蝶屋敷に着いていたようだ。
私は返事をしてすぐに後藤さんの背中から降り、運んできてくれたことに感謝した。後藤さんは私を送り届けた後、用事があるみたいですぐに別の場所に向かった。私は後藤さんの背中が遠くなっていくのを見送ってから蝶屋敷の中に入っていった。体は大分良くなっているから、本当なら今日から機能回復訓練をしても大丈夫の予定だったのだけど、柱合会議に参加することになって明日に延期されたことにより、この後の予定はない。蝶屋敷にいる皆も仕事をしている様子なので、私は一言かけてからそのまま部屋に戻って休むことにした。
部屋に戻ってすぐ、私は最近よくお世話になっているベッドに横になった。しかし、柱合会議で少し疲れていても眠気はなく、なかなか寝付けられなかった。なので、ベッドに横になった状態のまま柱合会議のことをもう一度振り返ることにした。
....柱合会議で冨岡さんを叩いてしまったのは流石にやり過ぎだとは私も思っているけど、後悔はあまりしていない。だって、冨岡さんが切腹することには個人的にどうしても納得がいかなかったんだよね。私は炭治郎と禰豆子の様子を見ているから分かる。確かに炭治郎も禰豆子も冨岡さんや善逸達に会いたくないと思っているけど、死んでくれとは思っていない。謝っても許されないことをしたという自覚は冨岡さんや善逸達もある。私がまだ無理だと思って止めたけど、善逸や伊之助、煉獄さん達は謝りに行こうとはしていた。だけど、冨岡さんは会うのも手紙を送るのも不快な思いをさせるだけだと思っていた。だから、炭治郎と禰豆子に会うのは駄目ではないかと考え始め、会わずに手紙を出すことをしないで炭治郎と禰豆子に謝る方法として切腹することを選んだのだろう。
でも、私はその決断に断固反対です!本当に私の我儘なんだけど、私はどうしても納得することができなかった。だから、冨岡さんを説得しようと色々考えて話した。.....途中からカウンセリングに近いことをしているようなと思ったけど、前世の時に何時かに見た心理学の番組や本などを思い出して、なんとか答えていた。
切腹は自殺とも捉えることができるので、私は何処かで見た番組の内容を思い出しながら話すことにした。その番組によると、最初は相手の訴えに耳を傾ける。自分から何かしら自殺をとどませるような一言を言う前に聞き手となることで、相手の話やその話の背景にある感情を一生懸命に理解し、共感することが大事だそうで、私は冨岡さんの話をしっかり聞いた。足りないところもある可能性はあるので、そうした意味でも一言一句聞き逃さず、私なりに翻訳していた。原作で知っている冨岡さんの性格から色々予想してあれこれと言ったけど、あれは当たっていたのかな?
.......まあ、考えてみても分からないものは分からないし、私も途中で我慢ができなくなって話を途中で遮ってしまったから、あれは私が悪い。話を聞いていくうちになんだか言い訳のように感じて、ついやってしまった。何か言いたいという気持ちが強まりますが、そこは我慢してくださいと書いてあったのに、途中で色々と熱くなってその注意のことをすっかり忘れていたよ。論破はしない方がいいとも書いてあったのに、完全にやらかしたし。まあ、自尊心が強い人とかに悪いと書かれていたから、冨岡さんはセーフかな.....。冨岡さんの場合は押す時に押さないと抱え込みそうだとその時は思ったのだけど...。
一通り言った後には頭が少し冷えて注意のことを思い出し、そこからは聞き手にずっと回るように努めた。他の注意する点としては誠実な態度をとり、相手が黙り込んでしまっても話さないようにすることを守るようにというのをなるべく意識した。ただ一度、言い訳らしきものを考えているなあというのが分かった時はそれについて指摘しましたが、それ以外は冨岡さん本人が自分の気持ちを話すようになるのを待ちました。
それと、何と声をかけるべきなのかというのも凄く考えたよ。自殺を考える人に何を言ってあげたらいいのかというと、注意点は相手の気持ちを否定しない、安易で無責任な励ましはしないことである。そこが心配だ。色々と言っていたからね。切腹でけじめをつけようという気持ちを否定してしまったけど、今否定しないと切腹を止めてくれないと私は思ってそう言った。もしかしたら他に別の言い方があったかもしれないけど、あの時はそうとしか思えなかった。あと、安易に無責任なことを言わないようにして、全員で相談して決めてほしいと言ったけど、あれは大丈夫かな?変な方向に行っていなければいいのだけど......。
自殺しようとする人の励まし方の他にも、冨岡さんが切腹する理由は前回のことが原因であるから、過去の悲しみと向き合わせる方法、そしてその罪悪感で苦しんでいるから、罪悪感の解消方法も思い出して、それらを踏まえていたんだけどね。少し心配だなあ。根本的なものはこれだからね。
過去と向き合うためには本人が過去を受け入れることが大切だ。過去を受け入れるには過去の出来事から縛られている心を解放して、自分の気持ちを素直に感じられるようにする。
罪悪感の解消には、一つ目はその問題が自分だけの所為だと考えないこと。事実、炭治郎の件は冨岡さんだけでなくて他の柱や善逸達も原因だったから、私は一人の責任ではない、ちゃんと相談するようにと言ったけど、また抱え込まないか不安なんだよね...。
二つ目は罪悪感を抱いた人に謝ること。自分に非があると感じたなら、基本的に謝った方が良いと本では書いてあった。それに対しては私も同意見だったので、私も償うにはどうするかの前に謝る方を勧めた。償い方は私に聞かれてもどうしたらいいかなんて分からないけど、最初に謝っておかないと関係を修復することはできないと思ったので、それだけは言っておいた。心の中でどんなに罪悪感を抱いても、口にしないと本人には伝わらない。だから、許されるかどうかはともかく、一度はしっかり謝らないときっと後悔していくと思う。
ちなみに、謝る時に抑えておく重要なことはタイミングや場所を考える、誠実に素直に謝る、相手の話に耳を傾けるだそうだ。お互いに落ち着いて話せる時と場所を選び、誤魔化さないで謝罪の気持ちを真っ直ぐに伝え、自分の気持ちを伝えるだけでなく、相手の気持ちもしっかり受け止めないといけないと載っていた。さりげなく言っていたのだけど、伝わっているかな?
三つ目は過ちを糧にすること。過ちを糧にすることで、自分の中での過ちの意味が変わっていくのだそうだ。そして、前を向くことができるようにとも書かれていたし、私もこの意見に共感したので、前回で犯した罪を背負いながらこれからを生きてほしいと言った。
......ただ、私は前世の時に何処かで見た番組や本、インターネットのサイトから共感していたものを思い出して、それらを参考にして言っていたのだけど、これで少しは切腹する気持ちが和らいだかな?というか、色々なものを参考にしたから、滅茶苦茶なことを言ってないかな。
.....そういえば、自殺を止めるために一番効果的な言葉は生きてほしいという素直な言葉だと書いてあったような...。柱合会議での私の言葉は紛れもない本心で言ったけど.....。でも、頑張ってきたことを労ってもらい、頑張っていることを相手が共感していると分かってもらった後で生きてほしい、死んだら悲しいと言うことで、相手も自分は生きてもいい、自分の死で悲しむ人がいるという自殺を踏み止めるような気持ちにさせるらしいけど、初対面の私が言ってもあまり効果はないよね。それでも、切腹しないでほしい、死なないでほしいというのは紛れもない私の本心なのだけど......。
まあ。私は絶対に冨岡さんの切腹を阻止しようと思っているから、わざと錆兎のあの繋ぐという言葉を思い出させるような言い回しをしたわけだしね。原作の中で冨岡さんの琴線にふれるあの場面を思い出させた方が一番効果的だもの。ここで命を捨てるのは止めて未来を生きてほしいという要約するとそうなる言葉を、錆兎とのやり取りを思い出すような繋ぐを使った言い回しにした。錆兎には悪いけど....。
それと、冨岡さんの頬を叩く前、私は冨岡さんから切腹の話を聞いた時に錆兎のあのやり取りを思い出したんだよね......。....錆兎のあのやり取りと同じような感じだな、これは同じようにしないと止まらないのではと思ってはいたのだけど......行動に移してしまったんだよね、私。しかも、錆兎と同じ左頬を.....。
....錆兎、ごめんね......本当にごめんね、勝手に同じ行動しちゃって...。......でも、私の言葉よりも錆兎とのやり取りの方が冨岡さんの心に響いたと思う....。
.....それでも、私も自分なりに色々考えて言ったんだけどね...。冨岡さんの場合だと何度も悩んで抱え込むから、抱え込まないようにその悩みを口に出せるようにした方がいいと思って、また相談に乗ると言った。他の自殺を止める方法として、次の約束をした方がいいと書いてあったこともそうだけど.......その時まで生きようと思えるようにしたのは本当だ。原作で知っているからというのもあるかもしれないが、私は本心から冨岡さんに生きてほしいと思った。
いや、冨岡さんだけでなく、他の柱や善逸達にも前回の炭治郎の件での罪を背負いながらも諦めずにその罪を償って生き続けてほしいと思った。冨岡さん達がそう思えるようにするためにも、私は自分の言葉に気を配った。
言葉は口に出したり書いたりしたらできる簡単なものだけど、時に刃物のように人を傷つけてしまう上に口に出したら仕舞うことができない。それに、自分の気持ちを思い通りに相手に伝えられないことがある。だから、使うのは難しいし、使い方を間違えればとても恐ろしい。違う意味で捉えられてしまうことがあるから、本当に重要な時に伝えたいことがあるなら、それが相手に伝わるようにするために、言葉には気をつけないといけない。中でも、今回のような事態には...ね。
....本当にそういう風に色々考えて、冨岡さんの自殺を止めようとしたのだけど、これで思い止まってくれるかなという不安がある。そのために、駄目押しとして全員と話し合うことを言っておいたのだけどね...。三人寄れば文殊の知恵という言葉があるように、三人、いやたくさんの人達が集まって相談すればきっと納得できる答えを見つけることができると思うし、自殺しようとする意志がまだあることが分かれば周りがそれに気づきやすくなる。そうすれば、しのぶさんが診てくれるだろう。
しのぶさんが精神面の方も診れる医者なのかは分からないけど、そうでなかった場合は知り合いの精神科医を呼んでくれると思う。最終的には専門家の治療を受けた方がいいらしいから、ちゃんとしたところで相談してもらえれば切腹は止めてくれるだろう。
どんな方法を使っても、冨岡さんの切腹を止められるならと私の思い出せること全てを思い出して言ったけど....それで止まるかは分からないし、しばらくはここにいることになると思うから、様子を見ていようかな。.......あっちが私の話をどう判断するのかは分からないけど、少しは思い止まってくれると嬉しいな.....。あと、これで冨岡さんのコミュニケーション能力もできれば上がってくれると良いな....。
今、冨岡さんとの話は考えても結果が出るわけではないし、この話は一旦置いておこう。次はあの後のことを考えてみようかな。こっちも色々とあったし......。というか、私が特に衝撃を受けたことなんだよね。御館様と色々話してみた時に華ノ舞いについて聞いてみたのだけど.........
『ごめんね。私も華ノ舞いという呼吸のことは知らないんだ』
...そう答えられてしまったんだよね。御館様なら知っているかもしれないと期待していたんだけど、華ノ舞いについての情報が何もなかったのは残念だな。僅かな情報ならあると思ったのだけどね....。......まあ、なかったものはないのだから仕方ないか。ただ、これで華ノ舞いについての謎が深まってきたな...。原作にもない、御館様も知らないなんて華ノ舞いって一体何なのかな......。華ノ舞いについて唯一知っているのって、現時点ではカナエさんだけなんだよね.....。
.......ここなら、蝶屋敷なら何か華ノ舞いについて分かるかな....?でも、しのぶさんは知らない様子だったし、カナエさんの遺品とかに残っているということなのかな?.....そもそもカナエさんの遺品がまだ残っているのかな........探してみるしかないよね.....。明日から機能回復訓練が始まるけど、その合間に調べてみるしかないね....。時間はまだあると思うし、ゆっくり調べていこう.....。せっかくここに来たのだから、やっぱり何か情報は欲しいよね....。
..........なんだか眠たくなってきたな...。何となく次の方針がまとまったからかな....。......疲れてきたし、もう寝よう...。.....明日から起きる時間が少し早まると思うし........。
私は柱合会議や華ノ舞いのことを考えているうちに眠気が来て、その眠気に流されるような形で眠りについた。
「....うん。御館様が華ノ舞いについて何も知らないって言うくらいだから、そんな簡単に分かるわけがないと思っていたのだけど、本当に何一つ情報がない!」
私は縁側に座って本を一通り読んだ後、そう言って溜め息を吐いた。本を閉じると、横に置いてある積み上げている本の山の上に置いた。私はその何冊も積み上げた本の山を見ながら悩んでいた。
何故って?それは華ノ舞いの情報が何もなかったのだ。しのぶさんに頼んで色々見せてもらったのだけど、華ノ舞いの情報らしきものがなさ過ぎて困った。カナエさんから何か聞かされていないかなどをしのぶさんにも聞いてみたけど、心当たりはなさそうだった。ちなみに、無限列車でカナエさんが夢の中に現れて、華ノ舞いについて知っている様子だったことは柱合会議の時に話しているため、しのぶさんも大体の事情は知っているので、協力はしてくれる。
「調べていても何も情報がないし、また後で調べることにしよう。カナエさん、華ノ舞いのことは口伝で知っていたのかな。......そもそもカナエさんは何処で華ノ舞いを知ったのだろう?」
私は縁側から立って積み上げた本を両手で持って返しに行くことにした。歩いている最中に私はカナエさんと華ノ舞いのことを考えていた時、ふと疑問が沸いてきた。御館様ですら知らない華ノ舞いのことを、どうしてカナエさんが知っているのだろうと。
柱合会議から帰った後は疲れていたから気づかなかったけど、御館様が知らないことをカナエさんが知っているのは幾ら何でも可笑しい。御館様が知らないことをカナエさんは何処で知ることができたのか。.......いや、それよりもカナエさんは何故華ノ舞いのことを誰にも話さなかったの?少なくとも、御館様には何かしらの報告はすると思うのだけど....。
......御館様は本当に知らないのかな?....華ノ舞いについて御館様が嘘をついているのか、それともカナエさんが御館様にも黙っていないといけない事情があるのか.....。.......ああ!考えれば考えるほど分からなくなっていく...!
......というか、御館様が嘘をついているにしても、それは華ノ舞いのことを話さない方がいいと判断されたということだよね....。華ノ舞いってそんな他言無用の呼吸なの!?
私は本を元の場所に戻した後、そのまま歩いたまま考え続けていた。
「華ノ舞いってそんなに秘匿されているものなのかな?でも、原作にない華ノ舞いがそんな重要な筈が.......」
「.....あ、あの....」
「いや、どうして私は華ノ舞いという呼吸を使えているのかな?両親が使っていたわけでもないし、初めて華ノ舞いを使った時にだって、それらしき鍛練すらしてなかったんだよ。そもそも........」
「あの!」
「うん?誰かの声が聞こえたような.....」
「あの、ね...」
「はい.....?」
私は華ノ舞いについて考え込んでいると、声が聞こえたような気がした。その声を聞き、私が周りを見渡していると、先程聞こえた声と同じだが少し震えていることが伝わる声が後ろから聞こえた。私が後ろを振り返った瞬間、固まってしまった。勇気を出して私に声をかけたであろう栗花落カナヲの姿があった。
.......えっ?何で?
「..........」
「...........」
私とカナヲは縁側に座っていた。互いに特に話さずに黙っている様子だった。
「.....スゥ...........バンッッ!!...........」
「.............」
いや正確に言うと、私だけは機能回復訓練の一環として瓢箪を吹いている。原作の物と同じくらいの大きさの瓢箪だ。炭治郎と獪岳との鍛練のおかげで最初からこの瓢箪を吹いて割ることができるようになるまでに成長していた。何故瓢箪を吹いているのかは簡単だ。カナヲに勝てないからだ。アオイさんには勝てたけど、カナヲには勝てなかった。
カナヲは前回の記憶を持っているので、原作よりも強くなっている。そのため、全集中の呼吸・常中が使えるだけでは絶対に勝てない。ちなみに、アオイさんなどの他の蝶屋敷の子達は前回の記憶を持っていないらしい。
それで、今の私はこの瓢箪を吹いて呼吸器を鍛え、カナヲに勝つのを目指して体を鍛えているのだが.....今はそれよりもカナヲとのこの微妙な空気をなんとかしたい!
あの後、カナヲに呼び止められた時に何か用があるのかと思って声をかけたのだけど、カナヲはまごまごしている様子で何も話してくれなかった。私はそれに少しほっこりしながらもカナヲが話すのを待っていたのだけど、しばらく経ってもカナヲは話す気配がないため、流石に困ったんだよね。ずっと互いに無言なので、なんだか気まずい空気が流れ始めていたからね。
それで、私が『縁側で瓢箪を吹いているから、落ち着いて話せるようになったらまた話そう』と言い、とりあえずカナヲが落ち着いて話せるようになるまで時間が必要だなあと考えていたのだけど、何故かカナヲは無言のままついて来て、そのまま縁側で私の隣にそわそわした様子で座っていた。
私が瓢箪を吹くと言ったからかどうかは知らないけど、カナヲはずっと無言だった。私もなんだか気まずくて、瓢箪を吹いて割っても互いに何も言わず、さらに重く気まずい空気が流れる。その空気があまりに重くて瓢箪を吹くことにも躊躇してしまう。しかし、この空気で話すのもまたやりづらい。これは困った。....でも、ずっとこの空気でいる方が嫌だし、頑張って話しかけよう。
「あの......」
「あっ、う、うん....」
私は少し躊躇しながらもカナヲに声をかけてみると、カナヲは戸惑いながらも返事をした。
さて、ここからが問題だ。カナヲに声をかけることができたのは良いけど、私がカナヲに何か話題を振ってもまた無言に戻ってしまう可能性がある。個人的にもこの気まずい空気が長続きするのは嫌だしらカナヲになんとか話してもらいたい。ただ、このままだとカナヲはまた無言になってしまいそうだと思うから、普通に話してもらえるように誘導しないと。よくは分からないけど、カナヲが聞きたいことは大体見当がついているからね。
「カナヲが聞きたいのって、柱合会議でのことが関係しているのかな?」
「う、うん!?どうして分かったの?」
「隣の部屋から何人かの気配があるのは分かっていたし、たまに部屋から声が漏れていたからね」
主に善逸と伊之助の声でね...。
私が柱合会議のことを出すと、カナヲは驚いた様子で聞くので、私は柱合会議での隣の部屋のことを思い出しながら言った。
初めは隠が隣の部屋で控えているのかなと思っていたのだけど、会議が始まって数分経ってから、隣の部屋から誰かの話し声が聞こえ始めた。柱の誰かが気づくと、さりげなく知らせていたけど、私は御館様や冨岡さんなどの話を聞いたり話したりしながらも耳を澄まして聞いていた。
正確な話の内容は分からないけど、聞き覚えがある声だったからすぐに分かった。それに、大体の隣の部屋の様子はなんとなくだけど勘づいた。善逸が何か叫ぼうとしていたり伊之助が何かを聞いたりしているのを玄弥が止め、カナヲも静かにするようにと声をかけていたという感じなことが起きているのかなと思って、私が指摘した方がいいのか困った。声の感じからなんとなくそう思ったのだけど......。
「す、凄い....」
私がカナヲに隣の部屋での様子の予想を言ってみると、カナヲにそう言われた。
どうやら当たっているみたいだ。嬉しい。
「カナヲはあの柱合会議で私の話を聞いたんだよね。それで、その時のことで私に何か言いたい、もしくは聞きたいことがあると思ったのだけど......「彩花って、やっぱり心の中が読めるの?」...えっ?やっぱり?」
私は予想が当たっていたことに少し得意気になりながら話し続けていると、カナヲに突然そう言われて固まってしまった。しかし、すぐに冷静になって柱合会議から今までの自身の言動を振り返った。
カナヲに何が原因でそう思われたのかなと振り返ってみて、すぐにこの勘違いの原因に気がついた。柱合会議の時、私はカナヲとは話していなかったけど、冨岡さんとの会話を聞いていた。
まあ、あの時は原作の知識から冨岡さんがおそらく省略している箇所を予想して、こう言っているのではないかと思って聞いてみたり、冨岡さんの性格や過去からこう考えているんじゃないか、こう言えば思い止まってくれるんじゃないかと予想したりして、内心ドギマギしながら話していたんだけど、カナヲは隣の部屋で私達の会話を聞くだけで見ていたわけではないからね.....。
私達の様子を見ていなかったし、勘違いしているということだよね....。それで、心が読めているように思えてしまったと......。
.....断じて、私には心を読むような悟りの力を持っていないし、あの時の柱合会議って、原作の知識や冨岡さんの性格と過去を上手く利用したようなものであり、私がそういう超能力を持っているというわけではない!...これは個人的にも絶対に誤解を解きたい....。解かないと、後でプレッシャーになる気がする。
「ははは、そんな力は私にないよ。私は本当にただ知っていることを思い出して、それらを基に予想しているだけだから。カナヲが聞こうとしていることを当てたのは最近起きたこととその心当たりからそうじゃないかと思ったの」
「そ、そうなんだ.....」
私が心を読む力はなくて予想しているだけと言うと、カナヲは少し恥ずかしそうにしていた。私はその様子を見て、なんとなくまた互いに沈黙する流れになるのを察した。
また互いに無言になると、日が沈むまで話し合うことになりそう。柱合会議関連で話したいことがあるというのは分かったから、こっちがカナヲに柱合会議でのことで何か言いたいことや聞きたいことがあるのかと質問してみよう。勿論、カナヲに答えやすくするために簡潔な質問をしないとね....。
「カナヲは私に柱合会議でのことで何か言いたいことがあるの?それとも、何か聞きたいことがあるの?」
「き、聞きたいことがあるの」
「そうなんだね。.....カナヲが聞きたいことは柱合会議での私の話のことで何か質問があるということなのね」
私はカナヲが答えやすいようにと質問を二択方式にして聞いてみた。カナヲがそれに答えてくれれば、私もなんとなく何を聞きたいのか予想しながら会話を進めることができる。カナヲの答えを聞いて、私は柱合会議での私が話したことの中で何か聞きたいことがあるのだと考えた。
私の話したことに納得する人がいれば、納得しない人だっているからね。その時は相手が納得するまで話そうと思っていたし。....さてと、何を聞きたいのかな...?
しかし、カナヲは私の言葉に首を横に振って否定した。
「ううん、違う」
「えっ?違うの?」
カナヲの反応に私は驚いた。
えっ!?それじゃあ.....カナヲは私に何を聞きたいのかな?柱合会議に関係していることって言っていたけど........。うーん....。
「.....じゃあ、質問ではなくて、柱合会議で関係していることで何か聞きたいのかな...?」
私はカナヲが何を聞きたいのかと考えていたが、少しでも間を空けたらまた気まずい空気になるため、そこまで長く考えることができず、とりあえずカナヲに聞くことにした。もしこの質問でカナヲがまた無言になったら、もっと答えやすいような他の質問をしようと思っている。
「.......私は...あの時の.....水柱様と同じことをしてくれるのか聞きたくて....」
「......へっ?」
....今、なんて言ったの...?
私はおそるおそる言ったカナヲの言葉に思考が停止したが、すぐに正気に戻り、カナヲの言葉の意味を理解すると同時に柱合会議での記憶を辿った。
水柱様と言うと、確実に冨岡さんのことだよね.....。柱合会議での冨岡さんにしたことね....心当たりしかない。というか、色々とやらかしていますからね。
「...冨岡さんに......柱合会議でしたこと....ですか....」
「うん。あの時、水柱様に言っていた。何かあったら、また相談に乗るって言っていたから、私も相談に乗ってもらいたいと思って.........」
私が確認すると、カナヲは頷きながらそう言った。私は頭を抱えそうになった。
確かに心の中で抱え込むようならと思って、冨岡さんにそう言ったから、冨岡さんがもしかしたら来るかもしれないとは思っていたけど......カナヲに相談してもいいかと聞きに来るのは予想外だったよ.....。
うーん...。どうしよう....。
「だ、駄目かな......」
「うっ....」
私はカナヲに少し泣きそうな顔で見られて、とても困った。凄く断りづらい.........。
「.....うん、分かったよ。相談に乗るから......だから、そんな顔をしないで」
私はカナヲにそう言って頷くしかなかった。そんな顔をされたら断ることなんてできないよ....。
...こうなったら、誰の相談でも乗ろうじゃない!何処からでもかかってきなさい!