笹の葉の少女は幸せを願う   作:日々草

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笹の葉の少女はボコボコにされる

「..........」

「......おい、大丈夫か?」

「....頭と体の節々が痛いです」

 

 

えー。私は今、満身創痍で地面に突っ伏しています。そんな私に玄弥が声をかけてくれるが、今の私には答える気力だけは少し残っているが、それ以外の元気はない。...ただ、それでも私を休ませてくれる人がここにはいないんでよね....。

 

 

「まだ動きが甘いよ。足腰の動きをしっかり連動させて」

「は、はい!」

 

 

突っ伏している私に対して、時透君は容赦なく駄目出しをして立ち上がるように言った。私はそれに返事をしながら手足に力を込め、なんとか立ち上がった。そして、目の前の六つの手を持つからくり人形に向けて木刀を構えた。

 

 

 

 

 

一体何が起きているのか分からない人がいると思いますので、状況を説明します。と言っても、私も突然のことで少し混乱しているのですけど、実際に起きたことを順に説明していきますよ。

 

 

玄弥と時透君が刀鍛冶の里に来た次の日、私はここに来てからずっとやっていた伊黒さんとの稽古をするのだと思っていたのだけど、突然時透君に呼び出されて、今日は時透君と稽古することを初めて聞かされたの。それに驚いている間に、時透君が別の場所でやるからと言われ、とりあえず時透君の後をついて来たら、そこがこのからくり人形、縁壱零式のある場所だったんだよね。

 

 

縁壱零式というのは、鬼殺隊の歴代最強の剣士であり、呼吸の祖である継国縁壱をモデルにして作ったからくり人形である。このからくり人形が戦国時代に製造されたものであり、縁壱も戦国時代の人物であることから、縁壱零式は継国縁壱をモデルにしてできたものであることは間違いない。鋼鐡塚さんと話し合った刀の件もこの縁壱零式の中に継国縁壱が使ったと思われる日輪刀があるのだ。縁壱零式が何故腕を六本もあったのかは縁壱の動きを再現するのに、腕を六本にしないとできなかったらしい。まあ、それくらい最強の剣士と呼ばれる継国縁壱が強かったのは間違いない。

 

 

それで、この縁壱零式を使って鍛練をすることになったの。ちなみに、この縁壱零式を使えたのは、朝早くに時透君が現在の縁壱零式の所有者である小鉄君に頼んだそうだ。原作と違って、時透君は小鉄君と言い争うことにはならなかったが、時透君と小鉄君の間で一波乱はあったそうだ。しかし、時透君が説得した甲斐もあり、小鉄君も渋々貸してくれる上に、もしも壊れたら自分が直すと言ってくれた。

 

......ただ...。

 

 

「全く何をしているのですか?もう少し粘ってくださいよ。急に鍛練のために使うと言って、縁壱零式を貸して付き合っているんですよ。それなのに、貴女は頭を打たれて何度倒れるのですか?いい加減、学習してくださいよ」

「うぐっ.....」

 

 

小鉄君も私にかなり駄目出しをしてくる。この駄目出しが容赦なく私の心に突き刺さる。

 

この毒舌がきつい......。原作で読んでいたから、分かってはいたけどね...。

 

 

何故小鉄君がここにいるのかというと、縁壱零式が貸すから自分もそれを見たいと小鉄君が言ったからだ。小鉄君は最初大人しく見ているだけだったのだけど、途中から私の問題点を指摘し始め、今では容赦なく駄目出しをしてくるようになった。

 

おかげで、肉体的にも精神的にも辛い....。

 

 

「...............」

「......うん。今日はここまでにしようか」

「今日はって、明日もやるのですか?」

「そのつもりなんだけど、また使っても良いかな?」

「そうですか.......。.....ですが、この調子だと時間がかかると思いますよ」

「ううっ......」

 

 

もはや屍のように動かなくなった私は時透君と小鉄君の会話を聞いても、まともな返事もできなくなっていた。時透君はこの縁壱零式を使っての修行をする気満々だが、小鉄君はまだまだ時間がかかると言って、不安そうな顔をして私を見る。私はそれにすいませんと心の中で謝った。

 

私、本当に何度も同じようなミスばかりしてますからね。

 

 

「生きているか」

「大丈夫です。生きてはいます」

「....本当に大丈夫か?何度か脳震盪を起こして倒れていたが.....」

「あはは.......」

 

 

地面に寝転がっている私に玄弥がまた心配してくれて、私は起き上がることができず、その体勢のまま話していた。

 

 

玄弥の言葉に私は苦笑いを浮かべた。脳震盪が起こしているというのは、私がよく頭に木刀を当たるのです。私が遅いからというのもありそうですが、あまりにも頭に当たり過ぎているんだよね。

 

おそらく私の身長だと縁壱零式の腕の高さがちょうど頭に当たる位置にあったのだろう。炭治郎がどうだったのかは知らないけど、私よりも背が高いし、そもそも頭が石頭だから、当たったとしても全然大丈夫なんじゃないかと思った。.......うん。ピンピンしている様子しか思い浮かばない。

 

 

「......うん?」

 

 

そんなことを考えていた時、誰かがこっちに向かってくる気配を感じた。

 

誰だろう....。この気配は伊黒さんでも甘露寺さんでもないし、鋼鐡塚さんでもない...。

 

 

「.....誰かこっちに来ていますね」

「ん?....確かに、こっちに向かっているな。まだ日が昇っている時間だから鬼ではないのは間違いないが、こんな山に来るなんて珍しいな...」

 

 

私が気配を感じる方を見ながら言うと、玄弥も私に言われて、誰かが来ることに気がついた。私と玄弥はその気配がする草むらをじっと見つめた。

 

 

「.....おっ、餓鬼がこんなところで集まって、何かしてやがる」

「...どなたですか?」

 

 

近くの草むらから現れたのは男性の隊士だった。

 

....誰だろう?メインキャラクターではないのは間違いないが、なんか...何処かで見たような気が........。

 

 

「何だ、この人形。しかも何やら木刀を持っているし....ちょうど良い。俺が使ってやる」

「ちょっ!?何勝手なことを言ってんだ!」

「勝手に使うのは駄目ですって!」

 

 

私が記憶を辿っている間に、突然男の隊士が縁壱零式を見てそんなことを言い出した。それを聞き、玄弥と私は男の隊士を止めようと声をかけた。話し合っていた時透君と小鉄君も玄弥と私の声で気づいたのかこちらを見ていた。

 

 

「何、勝手に使おうとしてるのですか!そんな人に使わせるわけないでしょう!」

「邪魔すんじゃあねぇ!俺らが日々命懸けで鬼を狩ってるから、お前らは平和に生きてるんだろ!守られてる分際で俺の邪魔をするなぁ!」

 

 

縁壱零式を使おうとしていることに一早く気づいたらしい小鉄君が男の隊士に向けて怒るが、男の隊士は悪びれず逆に偉そうにそう言った。

 

私もなんだかイラッとしてきた。刀鍛冶の職人達を馬鹿にする態度にも何故だか偉そうにしている態度も....。

 

 

「......あの。さっきから気になりますけど、貴方は何をしたいのですか?突然現れて、あれこれ言ってから勝手に使おうとして....一体何なのですか?」

「うるせぇ!俺はなぁ!安全に出世したいんだよ!!そのために使えるもんは使うんだ!そのやたら多く木刀を持ってる人形も修行に使えるんだろ!だから、使ってやろうとしてるんだ!」

 

 

私の言葉に男の隊士はまた偉そうな態度でそう言った。その態度を見て、私は男の隊士に対してさらにイライラしてきた。

 

 

いや、勝手に使おうとするのは流石にまずいでしょ。他の人がまだ使っているものを許可なく使おうとして...。しかも子どもの小鉄君が言っていることの方が正しいのに、それを悪びれずに勝手に使おうとしているなんて.....大人として恥ずかしくないのかと言いたい....。

人の物を勝手に使おうとするのは良くないことでしょ!どんな理由があっても、何も言わずに使うのは駄目!使いたいなら、せめて許可くらいもらう!

 

 

.......一度落ち着こう....。感情のまま下手に刺激して、揉める展開にならないように...なるべく穏便に済ませないと......。

 

 

「...出世欲があるのもその為に努力しようとすることも悪いことではないですけど、そんなに強引に使おうとするのは駄目ですよ。刀鍛冶の職人さん達は確かに直接的に戦うことはしないけど、鬼殺隊のために必要な日輪刀を作ってくれている。その日輪刀を使って、私達は鬼と戦うことができる。

私達は刀鍛冶の職人さん達が作ってくれた日輪刀があるから戦うことができるし、刀鍛冶の職人さん達は戦える私達がいるから身を守ることができる。いわば私達と刀鍛冶の職人さん達は協力関係です。協力関係の相手にそんな言い方は駄目ですよ。使いたいのなら、しっかり誠意を示して頼むべきだと思います!」

 

 

私は自分の怒りを落ち着かせながらも、言葉を選んで男の隊士にそう言った。

 

別に出世したいと思うのは個人の自由だし、それを否定しようとは思わないけど......それと勝手に人の物を使おうとすることは違う。せめて貸してくださいと言ってほしい。

それに、刀鍛冶の人達をあんなに悪く言ったことも見過ごせない....。刀鍛冶の人達は刀鍛冶の人達で、隊士は隊士でお互いにやるべきことがある。それに優劣なんて付けられない。どっちも大切なことで、どっちも欠けてはいけないことなのだから、刀鍛冶の人達は守ってくれている隊士に感謝し、隊士は自分の命のように大事な日輪刀を作ってくれた刀鍛冶の人達に感謝しないといけない。私達は鬼と戦っているが、刀鍛冶の人達にも自分達なりの戦いがある。

だから、隊士と刀鍛冶は平等な関係なのだ。一方がそんな偉そうにするのは違う。

 

 

「はっ、さっきからそこで座り込んでる奴にそんなことを言われてもなぁ。とりあえず俺はこの人形の相手をそこそこしてから下山するぜ」

 

 

男の隊士は私の言葉を聞いても、鼻で笑うだけだった。しかし、私は怒りを感じなかった。

私は自分に対して言われた言葉に怒りを覚えるよりも『そこそこ』や『下山するぜ』という言葉の方に驚いた。それと、その前の『俺は安全に出世したい』という言葉も合わせて気がついた。

 

 

よくよく考えてみれば、確かにこんな容姿だったかもしれない。刀鍛冶の里と関わらないから気づけなかった......。

原作とあまりに変わってしまったし、炭治郎達の逆行や前回での原作崩壊という不可思議な事態の方に気を取られていたから、炭治郎達や柱というメインキャラクターの方を気にしてばかりで、他にはあまり目を向けていなかったな...。あの言葉を聞くまで、本当に気づくことができなかった。

 

 

うん。あの人、やっぱりサイコロステーキ先輩だ。

 

 

「さ、さい、ころすて?なんだそれは?」

「えっ!?もしかして私、声に出していたの?」

「あ、ああ....。意味の分かんない言葉だったが、確かに言っていたぞ」

「こっちも何を言ってるのか分からなかったんだけど、そのさいころすてーきって何なんですか?」

「あー.........」

 

 

玄弥に聞かれて、私はめちゃくちゃ驚いてしまった。口には出していないつもりだったから...。

 

玄弥は私の反応に少し戸惑っていたが、そう教えてくれた。近くにいた小鉄君も私の言葉が気になるらしく、玄弥と同じ質問をした。時透君も話を聞く態勢にしているところ、気になっているようだ。

 

 

いつの間にか心の声が漏れていたことには驚いたし、少しヒヤッとしたが、サイコロステーキ先輩とは何かの説明で大丈夫そうだ。まずい情報を漏らさなくて良かったよ.....。

 

 

「サイコロステーキとかいうのは呼称というか....フラグ乱立士と言った方がいいのか.......」

「........それって、彩花の世界にある言葉のことか?」

「そうなんだよね......。.....ただ、説明するのがとても難しくて...。.....フラグとかそういう細かい説明は後回しにして、簡単に説明すると....先程あの人が言ったようなことを言い、その行動をして......」

「はっ、こんなの楽勝だろ」

「そうそう。ああいうことを言った後....」

 

 

私はサイコロステーキ先輩という言葉について説明しようとするが、どう説明すれば分かりやすいかと考え、凄く悩んだ。そんな私の様子を見て、玄弥が察してそう言ってくれた。私はそれに頷き、悩みながらもなんとか説明しようとした。その時、ちょうどサイコロステーキ先輩が縁壱零式に刀を構えながらそう言っているのを見て、分かりやすい例になりそうだと考え、私がサイコロステーキ先輩を例にしながら説明し始めた。そして、

 

 

 

バキッ!!!...ドサッ.....。

 

 

 

私の話を聞いて玄弥達がその方を見た時、縁壱零式がサイコロステーキ先輩の刀を弾き飛ばし、その勢いのままサイコロステーキ先輩の顎に直撃した。返り討ちにあったサイコロステーキ先輩は吹っ飛ばされ、私達の前に落下した。

 

 

「「「..............」」」

「.......あのように音速でボコボコにやられる人のことを指すのです...」

「「「ああ.....」」」

 

 

その様子を見て、私も玄弥達もどう反応すればいいのか分からなかったが、とりあえず私は続きを説明することにした。玄弥達もあれを見て、どういうことなのか納得したらしい。

 

 

まあ、これで理解してもらえただけ良かったかな....。サイコロステーキ先輩のあれは自業自得だし.....。

 

 

「......気絶しているだけですね」

「向かってきたのはあっちだし、放置しておきましょうよ。この人、起きたら起きたで面倒そうですし」

「まあまあ....」

 

 

失神しているのを確認し、私が玄弥達にそう伝えると、かなり苛ついていたらしい小鉄君がすぐに放置しようと言ってきた。私はそんな小鉄君を宥めていた。

自業自得とはいえ、ほっとくのは可哀想ですからね。できれば何処かに寝かせておきたい......。

 

 

その時、またもや誰かが来る気配を感じた。

 

今度は誰だろう......?また知らない気配だな。そう思いながら草むらから姿を現したのは...。

 

 

「.......おっ、ここにも人がいたんだ」

 

今度は村田さんですか!

 

 

サイコロステーキ先輩の次に現れたのは村田さんだった。私は次から次に原作で見知った人達が現れることに内心驚いていた。

 

えっ!?今日って、何かの記念日ですか!それくらい今日の遭遇率が高いのですけど!

 

 

「なあ、この辺に男が来なかったか?」

「男?...もしかして、その人は隊士ですか?」

「ああ、そうだな....特徴はこんな「それって、この人のことなんじゃないかな」あっ、どうもありが.....か、かか霞柱様!!?」

 

 

村田さんが私と玄弥と小鉄君に尋ねた。私達はなんだか村田さんが探している人が誰なのか薄々気づいていたが、念のために確認しようとした。だが、既に誰のことか気づいた時透君が村田さんの話を遮って聞いた。村田さんはお礼を言おうとして振り返り、時透君を見て驚いた。

 

 

「ど、どうしてこちらに!?」

「ちょっとここで稽古をつけていたんだ。それより、この人は君の探している人なのかな?」

「えっ?は、はい。そうですが...何故倒れているのですか?」

 

 

村田さんはガチガチに緊張しながら時透君に聞いた。時透君はそんな村田さんの様子を気にせず、サイコロステーキ先輩を指差しながら気になったことを質問した。村田さんはそれに答えながらも倒れていることが気になったそうで、時透君に質問していた。

 

まあ、流石に倒れているのを見たら驚いて聞くよね。ただ、こうなったのはサイコロステーキ先輩の自業自得だから......。

 

 

「稽古の時に急に現れたと思ったら、勝手にその人形を使い始めて、その人形にボコボコにやられて気絶してるんだよ」

「そ、そうですか....。...すみません!」

 

 

時透君の話を聞き、村田さんは勢いよく頭を下げた。

 

 

いや、村田さんは悪くないよ。さっきも言ったけど、サイコロステーキ先輩が勝手にしたことだから、村田さんに責任はない。

 

 

「あ、あの......。そういえば、サイ....あの人とはどのような関係なのですか?親しい方なのですか?」

「いや親しいというか、ちょっと縁があったというか.....。...任務でたまたま同じところだったんだ。その時の任務で突然周りが炎に包まれて、俺も一緒にいた仲間も気絶しちまったんだ。そいつも炎から逃げてた時に会って、俺達が気がついた時にはそいつの姿が見えなかったから少し気にしてたが、偶然ここで再会してな。

ちょっと会話してそいつは宿を出たんだけど、いくら何でも遅いから様子を見にきたんだ」

「なるほど。そういうことですか....」

 

 

私は村田さんとサイコロステーキ先輩の関係が気になり、村田さんに聞いてみた。村田さんとサイコロステーキ先輩の仲が良いという話は聞いたこともなかったから。

 

 

村田さんは私の質問に苦笑いしながら答えてくれた。私は村田さん、サイコロステーキ先輩、炎という単語で何処かの山のことが頭に浮かんだが、知らないフリをすることにした。

 

 

まあ、もう原作の面影があまり残っていないし、サイコロステーキ先輩が生き残っても可笑しくないよね!というか、何が起きても可笑しくない状態なんだよね!だから、仕方がない!

 

 

「それで、この人のことなんだけど.....」

「お、俺が宿に運びますので、お気になさらずに......」

「はっ!」

「わっ!?」

 

 

サイコロステーキ先輩のことは村田さんが運んでくれると言ってくれたので、私達はその言葉に甘えることにした。その時、サイコロステーキ先輩が目を覚まして飛び起きた。私はそれに驚き、声を上げてしまった。

 

だって、いきなり目の前で飛び起きられたら驚くでしょ。

 

 

「何だあぁぁ!この人形、巫山戯やがって!!化け物だろっ!この人形を作った奴、頭可笑しいだろうがッ!!!」

「何、逆ギレしてるんですか!勝手に使った上にボロ負けしたからって酷過ぎじゃないですか!!この人形は俺の先祖が作った最強の人形なんですから、強いのは当然ですよ!」

「ハッ!こんなオンボロの人形、どうせ欠陥品か何かだろっ!」

 

 

目を覚ましたサイコロステーキ先輩は縁壱零式に逆ギレしていた。ご先祖様の作った縁壱零式を馬鹿にされた小鉄君は怒って、そう言い返した。しかし、サイコロステーキ先輩は反省した様子を見せず、さらに暴言を吐いた。

 

 

 

ブチッ!!

 

 

 

その時、小鉄君の堪忍袋の緒が切れた音がした。私は嫌な予感がして、すぐに小鉄君を落ち着かせようと肩に手を置き、サイコロステーキ先輩に掴みかかろうとする小鉄君を止めた。

 

 

 

「巫山戯てんのはそっちだろ!!縁壱零式にやられるくらい力ねえのに、何でテメェが威張ってんだ!腹立ちたいのはこっちの方だ!!」

「こ、小鉄くん!御先祖様の作った人形を馬鹿にされて怒りたいのは分かるよ。でも、一旦落ち着こう?ねっ」

「二人とも少し頭を冷やせ!」

 

 

サイコロステーキ先輩の言葉に小鉄君は完全にキレていた。私と玄弥は二人に落ち着くように言った。

 

このままだと殴り合いの喧嘩になる。できるだけ穏便に済ませないと。

 

 

「ハッ。興が冷めたし、俺はもう下山するぜ。じゃあ「ガシッ!」....アァ?何だ、この手?」

「お、おい、相手は霞柱様だぞ!」

「ハァ〜!?この餓鬼が柱だと?ンな冗談...「ねえ」ゲッ!?」

「ヒッ!」

 

 

サイコロステーキ先輩がその場を去ろうとしたその時、時透君がサイコロステーキ先輩の肩を掴んで止めた。サイコロステーキ先輩は時透君を睨み、村田さんは慌ててそう言って止まさせようとした。サイコロステーキ先輩はそれを鼻で笑おうとしたが、時透君の声の冷たさに動きを止めた。声をかけられていない村田さんも時透君の声を聞き、顔が真っ青になっていた。

私も玄弥も小鉄君も時透君の冷たい声で空気が一気に冷えたことを感じ、村田さん同様に顔を真っ青にし、息を潜めながら時透君とサイコロステーキ先輩の様子を見ていた。

 

いや、もしかしてサイコロステーキ先輩、柱の顔を覚えてないの?

 

 

「ねえ。君、確か強くなりたいんだよね?それなら、ちょうど良かったよ。僕の日輪刀は今、預けている最中だったから、しばらくの間は暇だったんだ。僕が特別に稽古をつけてあげるよ」

「お、おお、おい。や、止めろ.......」

 

 

時透君が冷たすぎる声でそうサイコロステーキ先輩に詰め寄り、サイコロステーキ先輩は逃げようとするが、その前に時透君によって気絶させられた。

 

 

これは.....柱の顔を覚えていないサイコロステーキ先輩が悪いよね。柱とは滅多に会わなかったのかもしれないけど、サイコロステーキ先輩って結構長い間いるだろうし...。......私の勝手な予想ですが.....。

 

 

「それじゃあ、僕は行ってくるよ!」

「お、おう。そうか....」

「ど、どうぞ.....」

「い、いってらっしゃい...」

「お気をつけて........」

 

 

時透君はいい笑顔でそう言ってサイコロステーキ先輩を引き摺っていき、私達はそれを見送りながら手を合わせた。

 

自業自得とはいえ、死なないことを祈ります.....。

 

 

 

 

 

「ま、まあ。今回のことはあいつが悪いし、仕方がないよな」

「そ、そうですね....。自業自得ですからね。しばらくの間、あの人は戻ってこないと思いますけど、どうするのですか?」

「流石に霞柱様が相手だと俺も何もできないし、ここでやることもなさそうだから、一晩宿に泊まったら任務に行こうと思ってる」

「そうですか。それでは、またお会いできる機会がありましたら会いましょう」

 

 

時透君とサイコロステーキ先輩の姿が見えなくなった後、村田さんがそう言い、私もそれに頷き、話題を変えるためにこれからどうするのか聞いてみた。

 

村田さんもここで戦うことになると、更なる原作崩壊が起きるな...。いや既に起きているのだし、これ以上原作崩壊しても問題ないか.....?

 

 

そう思っていたが、どうやら明日にはここを出るらしく、その心配はなさそうだ。

 

 

「......前回は刀鍛冶の里が襲撃されることがあったから様子を見に来たけど、宿で恋柱様と蛇柱様がいたのを見たし、霞柱様にも会ったし、柱が三人いるなら大丈夫だな.....」

 

 

村田さんの一人言が聞こえ、私は思わず村田さんのことを見た。村田さんは私の視線に気づかず、そのまま山を下りていった。

 

 

.......えっ?村田さんも逆行していたの!

ああ....それで村田さんがここに来ていたのか。そういえば、村田さんもあの条件に当てはまりそうな人物だものね。よくよく考えてみれば。それなら、逆行者であっても可笑しくないな。

あと、また後藤さんの言ったことが合っていたから、これで一応確定にしておこうかな。

 

 

「........おい、どうした?」

「あっ。ううん、何でもないよ。それより、時透君がいなくなっちゃったけど、私達はどうする?」

「あの様子だと当分は戻ってこないと思うし、とりあえず宿に戻るか」

「そうだよね。それが良さそ「何を言ってるんですか?これから修行を続けるに決まってますよ」.....えっ?」

「はっ?」

 

 

玄弥が私に声をかけてきたので、私は村田さんについて考えるのを止め、これからどうしようかと話し合い、時透君がここまでと言っていたから宿に戻ろうという話になったが、小鉄君に止められてしまった。私は突然止めた小鉄君に困惑した。玄弥も隣で困惑していた。

 

 

「あの。どうして修行を?もう日が沈みますよ?」

「何を言ってるんですか?まだ緑壱零式を使う気ですよね?緑壱零式を馬鹿したあいつよりも強くなって、あいつをギャフンと言わせてください!」

「いや、それは時透さんがやってくれてるんじゃ....」

「時透さんはあいつの勝手な行動への固めの説教で、これは緑壱零式を馬鹿にしたことへの俺の復讐です!!」

「え、ええー.....」

 

 

私は嫌な予感を感じ、なんとか止めようとするが、小鉄君はサイコロステーキ先輩への怒りですっかり熱くなっていた。玄弥が時透君が懲らしめるからと言うが、小鉄君の怒りはそれでも収まらないらしい。

 

 

「ですから、緑壱零式での修行の成果を見せて、あいつが土下座して謝らせましょう!!あいつが上司なのかなんて知りませんが、強くなればあのムカつく奴を扱き使うことができますよ!!」

「いえ、そもそも私は鬼殺隊には入って「緑壱零式に一撃を喰らわすことができるまで飯抜きですからね!!寝るのも駄目です!!!」...あの「ほら、やりますよ!!!」......は、はい....」

 

 

熱く語る小鉄君には悪いが、私は小鉄君の特訓がどんなものなのか原作で知っているため、時透君の冷たい声を聞いた時よりも顔を真っ青にしながら断ろうとしたが、小鉄君の勢いに負けてこっちが折れてしまった。

 

しかも、話の中で縁壱零式に一撃喰らわすまで食事も寝るのも禁止にすると言っているため、原作の炭治郎と同じことになるのは確定だ。いや、下手すれば炭治郎以上に大変なことになるかもしれない.......。

 

 

 

サイコロステーキ先輩!今回のことは恨みますよ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「.................」

「.....おい!これ、大丈夫か!?生きてるか?」

「あっ、大丈夫です。一応動いているので、息はしていますよ」

 

 

そして、あの日から何も食べれない飲めない、寝れない日々を過ごし、私は地面と仲良くすることになった。そんな私の様子を見て、玄弥が声をかけるが、小鉄君は大丈夫だと言った。それでも、玄弥は私を心配そうに見ていて、私も玄弥に助けてもらいたかった。

 

 

原作で知っていたのだけど....小鉄君は分析能力が非常に高く、その指摘は的確だ。しかし、小鉄君は人間の限界を知らないため、気絶しようが倒れようが関係なく続けられる。だから、小鉄君の修行だけは避けたかった.....。

 

...もう、無理.......。

 

 

「ほら、早く動いてください。まだ一撃も喰らわしていないのですから、休むのは早いですよ」

「....さ、三途の川が見えた.......」

「そうですか。それなら、次はその反省を活かして当ててください!」

「...............」

 

 

急かす小鉄君に私は少し休めてほしいという願いからそう言うが、小鉄君は全く気にせずに続行される。

 

本当に三途の川が見えたのに....。......というか、実際にいた!渡りかけた!

 

 

強くならないといけないのは確かだけど、もう限界!少し休ませて!せめてゆっくり寝る時間だけでも!!気絶した少しの時間しか休めないから!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「や、やっと当てられた!!」

「あまりに弱い一撃でしたが、確かに当たりましたね。はい、おにぎりです」

 

 

それからしばらくして、私は遂に縁壱零式に一撃当たることができた。

 

ここまでに長い時間が経過した。縁壱零式によって三途の川を渡りかけたのは何回だったか....。

まあそれによって、前よりも五感が鋭くなったし、動作を見たり音を聞いたりして、相手の次の動きを予測するのが早くできるようになったし、一手先のその先も予測できるようになった。おかげで、前のように縁壱零式に頭を叩かれることはなくなった。

 

 

私が縁壱零式に一撃を当てたところを見た小鉄君は私におにぎりを渡してくれた。私は迷わずそれを受け取って食べ始めた。

 

 

「おおっ。遂に一撃入れることができたのか?」

「玄弥...。.....うん。やっとです!やっとご飯に辿り着けました!!」

 

 

私がおにぎりを食べていると、毎回様子を見に来てくれる玄弥が安堵した様子で近寄ってきた。

 

来る度にボロボロの私を心配そうに見ていたからね。私が気絶したら小鉄君に容赦なく水をかけられて目を覚ますのを見ると、手拭いを渡してくれたり、私の体が少しふらふら揺れてきたら小鉄君に話しかけて、その間に水筒を貰って水分補給をさせてくれたため、なんとか生きながられた。

....原作の炭治郎と違って、少し早く来たのが原因なのか雨が降らなかったから、玄弥がいてくれて助かったよ。

 

 

「.......そういえば甘露寺さんと伊黒さん、時透君はどうしていますか?」

「ああ.....。あの時の奴、覚えてるだろ?時透さんは俺達に言った通り、あいつの修行をつけているそうだ。だがあいつ、その厳しさに嫌気を差して逃げ出し、そこで甘露寺さんと伊黒さんとも鉢合わせしたらしい。時透さんから話を聞いた二人は時透さんに協力し、三人であいつの修行をつけてるそうだ。伊黒さんと時透さんが心を折り、甘露寺さんが骨を折ってるらしく、あいつはもう心身共にボロボロらしい」

「そ、そうなんだ........」

 

 

私はあの日から一度も見かけない甘露寺さんや伊黒さん、時透君のことを聞いた。あの三人はこの後の上弦の鬼との戦いでここに来たが、同時に私の見張りも兼任している。

それなのに、私をこのまま放置しているのは少し不自然に感じられた。だけど、私は小鉄君の修行で休む時間すら一切ないから、宿まで様子を見ることができない。だから、修行を始める前に玄弥に事情を説明するように頼んだ。

 

 

今まではゆっくり話す時間がなかったから聞けなかったけど、この時間に漸く聞けそうだと思い、聞いてみることにした。すると、時透君がつけているあのサイコロステーキ先輩の稽古に甘露寺さんと伊黒さんも加わっているということだそうだ。つまり、サイコロステーキ先輩は現在柱三人に指導されているということだ。

 

 

甘露寺さんと伊黒さんと鉢合わせたということは、おそらく甘露寺さんと伊黒さんがデートしているところを邪魔したのかな?

それなら納得がいくかな。甘露寺さんは張り切っているだけだと思うけど、伊黒さんは邪魔されて八つ当たりのような形でサイコロステーキ先輩に毒舌を浴びせながら稽古をつけているのではないかな。

まあ、それが正解かどうかはともかく、サイコロステーキ先輩は大変なことになったな...。これも自業自得だけど....。

 

 

「ところで、私の方は放置で大丈夫なの?」

「修行は別の奴がつけてるし、俺や鎹鴉が時々様子を見に行ってるから、それで問題ないということになってる」

「も、問題ないんだ.....」

 

 

それと、私は放置が確定したそうだ。まあ、この修行をしていたら逃げ出す暇なんてないものね。気絶した時しか休めないのだから、そんな隙があるわけない。

 

 

「あいつが酷い目にあっていると聞けて、良い気分になりますね。さて、彩花さん!続きを始めますよ!」

「えっ!?もう少しだけ......せめて普通に仮眠をとるくらい...「さあ、行きますよ!!」....わっ!わわっ!?」

「うおっ!?あ、危な!!」

 

 

小鉄君はサイコロステーキ先輩がどうなっているのかを聞き、とても上機嫌になり、鍛練を再開させようとする。ゆっくり仮眠もしたかった私はもう少し休憩時間を欲しいと頼もうとしたが、小鉄君は私の頼みを聞こうとせずに縁壱零式を動かせ、私はすぐにその場から離れた。

ちなみに、玄弥も巻き込まれそうになったが、上手く避けることができて無事だった。

 

 

 

 

そして、遂に......

 

 

「彩花さん!力の足りなさを補うために回転していると言ってましたが、もう少し動きを最低限にしてください!それに、癖にもなってますので、なるべく小さく!しかし、勢いよく振ってください!」

「分かってますよ。......それ!!」

 

 

今日も縁壱零式を相手に打ち合いをして、小鉄君に容赦ない指摘を受けながらも縁壱零式の攻撃を避けたり受け流したりしていた。そうして縁壱零式に近づき、胴に目がけて刀を振って当てた。

 

何度も使っているので、縁壱零式がもう限界なのは分かっていた。しかし、小鉄君が壊れても直すと言っていたので、私は思いっきり刀を振っていた。

 

 

 

パキッ!!

 

 

すると、壊れかけていた縁壱零式はその衝撃によって胴の部分が一部割れた。割れたところからヒビもできていた。

 

 

 

「....えっ...?.....わ、わっ!?」

 

 

私は驚きながらもその様子に既視感を感じた。それと同時に、中途半端な体勢で動きを止めたことからバランスを崩してしまい、私は尻もちをついて座り込んだ。

 

 

「大丈夫か?彩花」

「う、うん。平気だよ。だけど........」

 

 

座り込んでいる私に玄弥が声をかけてくれた。私は玄弥に平気だと言い、縁壱零式の方を見た。私の視線を追い、玄弥も縁壱零式を見ていた。

 

 

 

ピキッ!....ピキパキッ!!.......パキンッ!!!

 

 

私達が見ている間に縁壱零式のヒビがどんどん広がり、最後には大きな音を立てて真っ二つに割れた。そして、その中から柄の部分がボロボロになっている漆黒の日輪刀が現れた。

 

 

 

「あっ!?」

「えっ!?これは!!?」

「.......ああ....」

 

 

玄弥と小鉄君は縁壱零式の中から出てきた刀に驚いたが、原作で知っていた私は感嘆の声を上げながらその日輪刀を見た。

 

 

これが呼吸の祖である縁壱零式の使っていた日輪刀なんだね......。炭治郎の日輪刀よりも濃い黒色だったそうだが、漫画でしか見たことがなかったから少し違いがあるなと思うくらいだったので、実際に呼吸の祖が使った日輪刀をこの目で見られたのは嬉しいと思っている。これが見れて良かったな....。

 

 

「刀ですね...」

「ああ、刀だな.....」

「これは間違いなく日輪刀ですね....」

 

 

小鉄君と玄弥と私は互いに頷き合いながら日輪刀をじっと見ていた。

その後、小鉄君が世紀の大発見だと言って興奮していたが、玄弥と私は冷静にその日輪刀から視線を外さずに見ていた。

 

 

私は原作で知っていたし、玄弥も炭治郎から話を聞いていたから、それと当てはめているんだね。小鉄君ほど興奮することはない。だけど、知らなかった小鉄君からしたらその反応になるのは当然だろうね。

 

 

「これって、前回の時に炭治郎から聞いたあの刀か?」

「私もマン.....絵でしか見たことはなかったけど、多分そうだと思う」

「これは......凄い発見ですよ!早く確認しましょうよ!!」

「あっ、うん....。...だけど......」

 

 

玄弥は古びた刀を見てそう呟き、私はそれに頷きながら答えた。これは原作で見たあの日輪刀と同じだから、間違いないと思う。

 

小鉄君は早く縁壱零式の中から見つかった刀を確認したいらしく、日輪刀の鞘を抜いた。日輪刀がどういう状態か知っていた私はそれを止めようとしたが、既に遅かった。

 

 

「....やっぱり錆びてますよね」

「だよな......」

「これじゃ、使えませんね」

 

 

やはり原作通りに錆びていて使えないみたいだ。私達全員が見て、すぐに使えないと判断するくらい錆びている。

 

 

小鉄君は凄く落ち込んでいたが、知っていた私と玄弥は苦笑いしながら小鉄君を励まし、この日輪刀をどうするのか考えた。このまま日輪刀を放っておくわけにはいかないからね。この日輪刀は錆びていても、最強の剣士である継国縁壱が使ったものであり、最終決戦で炭治郎が使ったものだ。炭治郎が使わない可能性があっても、この日輪刀が重要なものであるのは確かだ。

 

さて、これをどうするか.....。

 

 

ガサガサ!

 

 

私達が困っていたその時、草むらが激しく揺れた。誰かが近づいてくる気配も感じる。どうやら誰かがこちら向かってきているようだ。

 

いやここに来てから、草むらから誰か出てくるのが多くなっていない?

 

 

そんなツッコミを心の中でしながら誰が来るのかと思い、その草むらを見た。すると、草むらから現れたのは鋼鐡塚さんだった。

 

 

「......鋼鐡塚さん!?」

「俺に任せろ」

 

 

私が鋼鐡塚さんが現れたことに驚いていると、鋼鐡塚さんはそう言って錆びている日輪刀を私から奪っていってしまった。日輪刀を持って走り去っていく鋼鐡塚さんの姿を見ながら、私達はこの後をどうするのか話し合った。

 

 

縁壱零式は壊れちゃったし、分からないことが起きているからね....。まあ、私は鋼鐡塚さんがあの日輪刀を研いでくれるんだということが分かっているのだけど、小鉄君と玄弥は分からないものね。いや、玄弥は気づくかも...。.....とりあえず説明はしておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「.......それで?」

「その後、小鉄君と鋼鐡塚さんと話し合うことになって、とりあえず鋼鐡塚さんにその日輪刀を研いでもらうことになりました」

「そうなんだー!....でも、その日輪刀って、前回の時に炭治郎君が使っていたものなんだよね?」

「はい。そのため、誰が使うのかはまだ決まっていませんが.......」

 

 

現在、私達は甘露寺さん達に事情を説明していた。

 

 

鋼鐡塚さんがいなくなった後、私達は一度宿に戻ることにした。縁壱零式が壊れたので、このまま続けることはできないし、もう既に日も暮れてきたということもあり、一旦宿に戻ることにした。宿に戻った私は用意された夕食をいっぱい食べ、ゆっくり温泉に浸かることができた。

 

だって、やっとのんびりできるんだよ。凄く嬉しいの!

 

 

温泉から戻ってくると、ちょうど甘露寺さん達がいたため、そのまま互いに何をしていたのか話すことになった。途中から伊黒さんと時透君のサイコロステーキ先輩への愚痴になっていたが.....。

 

 

「......炭治郎君はここにも来るのかな?」

「それは分からない。ここは鬼殺隊の隠れ里だ。普通なら見つけられない。だが、元鬼殺隊の隊士のあいつらなら場所を把握することが可能かもしれないし、そいつが手引きすればさらに簡単なことだ」

「あはは......」

 

 

甘露寺さんの質問に伊黒さんが首を横に振って答えた後、私の方を見た。私はその視線に笑うことしかできなかった。

 

うん、その通りです。炭治郎達の鼻と私の情報でここに来ますよ。もしかしたら既に来ている可能性もあるけど....。

 

 

「そ、そうよね!炭治郎君達が来るかもしれないし、ここが襲われるから戦わないといけないし、とにかく頑張らないとね!」

「そうですね。....色々と言いたいことなどがあると思いますが、まずは戦いの方に集中しないといけませんからね。話したいことがあっても、やるべきことを優先しましょう」

 

 

甘露寺さんがそう明るく取り繕っていたが、何処か不安そうであった。

 

まあ、無理もない。ここにいる人達は全員まだ炭治郎に会っていない。報告でどんな状態か聞いたこともあり、会って前回のことを思い出させ、炭治郎を苦しませてしまうのではないかと不安に感じてしまうのは可笑しくない。だけど、これから上弦の鬼との戦いがあるのに、その気持ちのままでいるのは駄目だと思うので、少し口を出させてもらうことにした。

 

 

「.....複雑な思いでしょうが、これだけは言ってもよろしいですか。重要なのは謝ることもそうですが、自分のやったことをしっかり受け止め、その責任を背負うことも大切なことです。謝るだけでなく、一方的に行動するのでもない、自分と相手の両方の気持ちを尊重するようにした方がいいと思います」

「わ、私の気持ちも?」

「はい。自分のことを気にせずに苦しみ続けるのを見るのは私も炭治郎も辛いですから。ですが謝らないといけないし、炭治郎の心の方も心配なので、炭治郎のことを気遣ってほしいというのが私の素直な気持ちです」

 

 

私は炭治郎のことを尊重してほしいが、自分のことも大切にしてほしい。自分を顧みずに炭治郎のことを尊重し過ぎて、それが原因で体を壊されても困る。それに、炭治郎も自分だけが圧倒的に有利に尊重されるのを心地良く思わない(まあ、鬼殺隊はそれくらいしないといけないことをしているけど)。

 

 

「それでは、私は部屋に戻ります。小鉄君との修行が終わって、久々にぐっすり眠りたいのです。もう既にご飯を思いっきり食べたり温泉でゆっくりしたりしたので、そろそろ寝ます。おやすみなさい」

「まあ、あの修行の後だからな。ちゃんと休憩はとれ」

「あっ、おやすみなさい!」

 

 

かなり疲れが溜まっていたので、そろそろ休みたかった。タイミング的にも話を終わらせるにはちょうど良いと思い、退出することにした。伊黒さんに何か文句を言われるかと思ったが、あっさり退出させてくれた。

やっぱり修行内容を知ったいたみたいね...。できれば止めてほしかった。

 

 

先程よりも表情が柔らかくなった甘露寺さんを見て、私はそれに安堵しながら部屋に戻った。部屋に戻ると、茶々丸が机の上にいた。

 

 

「えっ?茶々丸!どうして......」

 

 

私は茶々丸がいることに驚きながらもすぐに襖を閉め、茶々丸に駆け寄った。すると、茶々丸は私に手紙を渡し、私はそれを開いて読んだ。

 

 

 

『拝啓

 

生野彩花様

 

彩花、そっちは大丈夫か?こっちは刀鍛冶の里に着けた。後は鬼の襲撃を待つだけだ。その間、何もなかったか?何もない方が良いのだが、俺達がここに着いた連絡を送っても、彩花からの返事が来ないからこっちは不安だ。もし今、身の危険を感じているのなら、すぐに俺達と合流しよう。

 

敬具

 

竈門炭治郎』

 

 

 

手紙を読み終え、私は頭を抱えた。そのまま大声を上げそうになったが、そこは必死に耐えた。

 

 

小鉄君の修行ですっかり忘れてた。いや、そもそもそんな時間もなかったのだけど....。...とにかく弁解しないと。私が原因で炭治郎達と鬼殺隊の関係を悪化させるわけにはいかない。

 

 

「小鉄君の修行をしている間に炭治郎達はここに着いたみたいなんだね。だけど、私からの連絡が来ないから凄く心配していると.....。........炭治郎達がここに着いてからどれくらい経っているのかな....。この手紙は最近の物だと思うけど...私に届く手紙はこれ以外にもある?」

「ニャおー」

 

 

私は炭治郎達がどのくらい前にここに着いたのか気になり、茶々丸に私が修行している間に届いた手紙を全部確認することにした。茶々丸はそれに返事をして、持っていた手紙を全て出してくれた。私の目の前には先程貰った手紙以外にも三、四枚が置かれた。

 

あっ.....ヤバい。これ、しばらく音信不通になっていると認識されているな。

 

 

「複数もあるということは、結構前にここに着いていたんだね....。まあ、これくらい連絡が来なかったら心配するよね。.....実際にあの修行で身の危険は感じていたけど...」

 

 

私は手紙の量に苦笑いしながら心の中で謝罪していた。修行で死にかけてはいたけど、危害は一応加えられていないから、全然大丈夫ですよ。

 

 

「すぐに返事を書くね。あっちが何時私の様子を見に来るのかは分からないし、手短に分かりやすく書こう。.....炭治郎には小鉄君の修行と書けば察してくれるかもしれないけど、念のために不眠不休で食べたり飲んだりすることのできない小鉄君の修行をしたと書いておこうかな。

だから、連絡を取れなくなったのは鬼殺隊と関係ない...いや、関係ないのかな?きっかけはサイコロステーキ先輩だし、小鉄君も一応鬼殺隊の関係者だし......」

 

 

私は他の人達に見つかる前に短い文章で返事を書いた。なるべく分かりやすく書いておいたが、一度伝わるかどうか読んでみて確認し、なんとなく分かるのではないかと納得し、それで筆を置いた。

 

 

「はい、これを炭治郎達に渡してね」

「ニャおニャあ」

 

 

私は茶々丸に手紙を背中の箱の中に入れ、茶々丸が姿を消したのを確認した後、布団の上に横になった。

 

 

「後は上弦の肆と伍の襲撃を待つだけ、か....。前回での記憶を私達も鬼殺隊側も持っているから被害は最小限に抑えられると思うし、さらに伊黒さんと獪岳がこの戦いに加わるし、こっちが有利なのは確かだ。......だけど、原作は既に崩壊しているから何が起きるか分からなくて不安だな....」

 

 

私は布団に包まった状態でそう呟き、ため息を吐いた。

 

原作では予想もつかない展開を楽しんでいたが、実際にそこで生きてみると、そのことで頭を悩ませないといけないし、凄く疲れるな。

 

 

「......まあ、何が起きても大丈夫なように心構えはしておこう。とにかく、今は上弦の肆と伍を倒すことに集中しないとね....。炭治郎のことも合流した時に大丈夫そうかどうか確認しておかないと......」

 

 

戦いに予想外なことが起きるのは当然として考えないとね。原作崩壊の影響がどう出るか、炭治郎が甘露寺さん達と会って大丈夫なのかで変わっていくからね。心構えが必要だ。どっちにしろ、私達の共通の目標は上弦の鬼撃破だから。

 

 

 

 

 

「そういえば、サイコロステーキ先輩はどうなるのかな?このままだとサイコロステーキ先輩も巻き込まれるよね?サイコロステーキ先輩も巻き込まれるとなると、サイコロステーキ先輩は真っ先にやられてしまう気がしてならないのだけど.....大丈夫かな...」

 

 

次の日、サイコロステーキ先輩が刀鍛冶の里から逃げていったという話を聞いた。

 

どうやら相当嫌だったらしい。

 

 

 




大正コソコソ話

彩花の時透君呼びも義勇さんの時同様にいつの間にかしていたそうだよ。彩花も時透君もあまり気にしていなかったが、それに気づいた玄弥にツッコミをもらっていたよ。




悩みましたが、今年中にもう一話を投稿するのは難しそうだと判断しました。来年になったらその一話を投稿しようと思っています。
それでは、良いお年を。




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