笹の葉の少女は幸せを願う   作:日々草

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笹の葉の少女はその道を行く 後編

 

「「雷の呼吸 肆ノ型 遠雷」」

 

 

私と獪岳は同時に雷の呼吸を使い、童磨の注意をこちらに向けた。

 

かなり距離があるので、ここは遠距離での攻撃が可能の遠雷を使うことにした。獪岳と一緒だし、威嚇射撃のようなものだから、雷の呼吸を使うことにした。

 

 

「へえ、君達は雷の呼吸の使い手かな。男の方はなかなか速いけど、女の子の方はそれほどじゃないね」

 

 

私と獪岳の遠雷を避けた童磨はその雷の呼吸について冷静に分析した。

 

 

ええ、そんなの分かっていますよ。でも、華ノ舞いをここで使うのはリスクが高すぎる。童磨は分析力が高く、情報を集めるような戦い方をする。そのため、色々な型を使うのは危険だ。こちらの手を相手に見せるのはその後を不利にさせる。だから、童磨と遭遇した時はこの二択の選択をする必要があるだろう。

 

一つは童磨をここで倒すという方法だ。ここで童磨を倒してしまえば自身の手札を全て使っても、その後に対策を取られるという心配はない。もう一つは私達が自分の手札を見せないように戦うということである。そうすれば対策を取られず、次に戦った時に全力で戦うことができる。

 

 

ここで童磨の頸を斬るのは難しいため、後者の自分の手札を見せないようにして戦う方を選んだ方がいいと私は考えている。ただそれは口の言うのは簡単だが、実行するのはめちゃくちゃ難しいことなのだけどね......。でも、後々のことを考えると.....。

 

 

童磨は冷気の血鬼術を使う異能の鬼である。中でも特に厄介なのは粉凍りという血鬼術だ。粉凍りは自身の血を凍らせて霧状にしたものを扇で散布するというもので、もしその霧を吸い込んでしまえば肺が壊死するのだ。つまり、呼吸を使う私達と相性が悪い。しかも、よく目を凝らさないとその霧があるのかも分からないから、初見殺しの戦法である。

 

そのため、霧の範囲外から攻撃できる遠距離での型を使うか、息をあまり吸わないようにして戦うか、霧のない場所を見極めながら戦っていくかのどれかだ。

 

 

それで、遠雷を使ったのだ。威嚇射撃だからというのは理由の一つだったが、童磨の血の霧を警戒してというのもあった。

 

 

「そりゃまあ、上弦の弐にこの程度の攻撃が当たる筈ねえもんな。だが、上弦の壱と出会った時の絶望よりマシだ」

「いや、上弦の壱と比べればそうでしょ」

 

 

童磨の言葉を気にせず、獪岳と私はそんなことを話していた。この緊迫とした状況をどうするのかという時でも、こんな会話ができるくらいは落ち着いていた。

 

 

流石に何度も上弦の鬼と相対したから、変な耐性がついたんだよね。いや、耐性というより肝が据わってきたのかな。もう色々なところで強い人や鬼と出会うので、慣れてきたんだろうね。...あまり慣れたくなかったと思ったけど、最近ではこんなことを何回も経験したのだから、如何なることが起きても何をすればいいのかと気持ちを切り替え、開き直ってきたな....。

 

実際に上弦の弐が目の前にいても普通に会話しているからね。それくらいの度胸がついてきているのはもう分かる。.......勝てるかどうかは別として...。

 

 

「今はあっちが手加減しているからまだ平気だが、本気を出されたら困るな」

「そうですね。とにかく、相手を怒らせ過ぎないようにしないと」

「....その心配はしなくていい。あいつは「いや、するべきです!」」

 

 

獪岳は前回で上弦の鬼になったから、童磨の特徴や戦い方をある程度知っているのだろう。童磨は最初に全力を出さず相手に全力を出させてから仕留めようとする。だから、私達が手札を見せなければ童磨も全力を出さないままだ。

遊ばれているのは癪だが、ここで全力を出して童磨を取り逃がすよりはマシだと思うし、今の優先事項は炭治郎達が半天狗を討伐することであり、私達は時間稼ぎのようなものだ。

 

そのため、童磨が全力を出すという事態は避けておきたい。そう思って獪岳に声をかけると、早速獪岳が相手を怒らせそうなことを言いそうだったので、それを遮るように大声で言った。

 

 

獪岳の言おうとした言葉は大体察しがついている。上弦の弐の童磨は常に笑みを浮かべているが、それは表面上だけで、心の中では非常に無機質で快と不快以外の感情を持たない虚無的な性格である。それはある程度関われば分かることであり、原作で読んでいた私は知っていたし、獪岳も実際に鬼として関わっていたから分かっている。

 

だからこそ、獪岳は大丈夫だろうと言おうとしたのだろう。童磨には感情がないからと。

 

 

...だけど、獪岳は知らないだろうね。童磨がその言葉を聞いたらどんな反応をするのか。原作でカナヲが感情のないことを指摘し、童磨はその言葉を聞いて、常に浮かべていた笑みを消したんだよ。

感情がないと言えば絶対に私達を殺しに来る。『君みたいな意地の悪い子、初めてだよ。何でそんな酷いこと、言うのかな?』って。断言できる。

 

 

.....まあ、そんなわけで童磨を怒らせず、ただ興味だけは持ってもらうように煽っていこうと考えているのだが、今更ながら人選に失敗したかもしれない。

 

私はもう二人の方を見ながら少し後悔した。

 

 

伊黒さんと時透君。伊黒さんはネチ柱と言われるくらいネチネチしたしつこく、責めるような話し方をし、時透君はその....辛辣な言葉遣いで容赦なく相手の心に言葉の刃を突き刺すからね。.......童磨の地雷を踏まないか凄く不安だ。だから、あまり話さないように.....いや、童磨は戦いの最中でも話しかけてくる鬼だ。そうやって相手を怒らせる。絶対に舐めプして怒らせる。その時に伊黒さんと時透君が感情のことを言えば童磨も怒る。

 

....何、その流れ。それは勘弁してくださいよ。

 

 

 

まあ、人選も何も炭治郎が禰豆子と玄弥と甘露寺さんに頼んだのだから、残った人達を選ぶしかないのだけど......。....村田さんに残っていてほしかったな...。サイコロステーキ先輩は.....煽って言いそうだから駄目ね...。

 

 

「とにかく!相手の血鬼術に気をつけながら重要な手札は見せずに戦うよ!あまり煽り過ぎないでね!」

「お、おう」

 

 

私は無理矢理思考を切り替え、獪岳にも周りにも私自身にも言い聞かすようにそう言った。獪岳は少し戸惑っていたが、とりあえず頷いてくれた。

 

うんうん、素直に頷いてくれたのはよろしい。ここで口に出せないことだし、その情報は何処からと思われるからね。

えっ?鬼殺隊に転生のことは話しているだろうって?いや獪岳と鬼殺隊の方ではなく、鬼側のことだよ。

 

 

鬼は私の転生のことも炭治郎達の逆行のことも知らない。それは童磨以外の鬼が原作の通りに現れていることから間違いない。知っていたら、流石に同じことをする筈がないからね。原作も炭治郎達の前回もその手順で負けているから、覚えているならあっちは別の行動をする。

猗窩座と童磨の件以外で前回と今回にそれほどの違いがないことから、あっちが前回の記憶を持っていないのは確かだ。

 

 

そのため、私達が出会ってもいないのに色々知っていたら、明らかに不自然に思われるし、さっさと殺そうとするだろう。特に、目の前にいる上弦の弐の童磨と上弦の壱の黒死牟の血鬼術は初見殺しだからね。相手が油断しているなら隙があるし、今後の戦いを有利にするためにも鬼の戦い方を知っていると悟らせないようにしておかないと。情報は鬼殺隊も鬼側も重要ですから。

若干一名そういうのを無視してパワハラをしそうなのがいますが.......。

 

 

「もう!これじゃあ、キリがない!」

「落ち着け。夜明けまではまだ時間がかかる。あっちも苦戦しているから、しばらく耐えろ」

 

 

私達は血鬼術の霧を吸わないように動きながらも童磨の頸を斬ろうと刀を握った。だが、童磨の頸を斬ることはやはり難しく、その場に止めるのが精一杯だ。私はそのことに苛立っていると、獪岳がそれに気づき、童磨に視線を向けながら私にそう言った。私は獪岳の言葉通りに落ち着かせることにした。

 

いや、分かっていますよ。今、焦ってもしょうがないということを。というか、私が慎重に行動しようと言っていたのに、その言った張本人の私が焦っては元も子もない。...だけど........。

 

 

「ねえねえ」

「............」

「ねえ、また無視するの。君、鬼狩りなの?なんか鬼狩りと服装は違うけど、持っているのは刀だよね。他の鬼の討伐の時も隊服じゃなくて着物を着ているから一般人かと思ったけど、日輪刀を持っているよね。

それなら鬼狩りなのかなと思ったけど、猗窩座殿や堕姫と妓夫太郎と戦った時もその格好だったから、君は鬼狩りではないよね」

「...............」

「鬼狩りじゃないのに、どうして戦うの?あっ、分かった。何か嫌なことか辛いことがあったのかな。

大丈夫。俺が救ってあげるよ。頼まれたからというのもあるけど、俺は優しいからね」

 

 

全然大丈夫じゃない!丁寧にお断りさせていただきます!

 

.....こんな感じで童磨にいっぱい話しかけられるため、そろそろ限界なんだよね。声を出してしまいそうで。....でも、私は血鬼術のことがあるのでずっと無視し続けるけど。

 

 

獪岳と伊黒さん、時透君もいるけど、童磨がよく話しかけるのは私だ。理由は分かる。女好きの童磨だからこそ、この中で唯一の女の子である私に話しかけるのは当然だ。ちなみに、一度時透君に男の子だよねと聞いて、時透君をキレさせるという事態が起きたが、それは置いておくことにしよう(時透君を宥めるのにとても苦労したが...)......。

 

 

童磨は他人の痛みや感情に無頓着で、無意識に相手の感情を逆撫ですることが多いということは分かっていたが、私の想像よりもかなりしつこくて、相手をイライラさせるのが上手みたいだ。

 

....いや、イライラしている場合じゃない。落ち着かないと。

それよりもこのままだと私達が負ける。現状は互角のように見えるが、少しずつこちらが押されている。童磨と戦う前からこちらは戦っていたからというのもあるが、今私が戦っている氷でできた童磨の人形が原因である。

 

 

童磨の血鬼術は粉凍り以外も厄介なものが多い。その一つが目の前にあるこの小さな童磨人形である。これは結晶ノ御子というものであり、大きさは本体の童磨よりも小さいのだが、童磨と同じ強さの血鬼術を使用し、自動で戦闘を行うのである。

しかも、この結晶ノ御子がどんなにダメージを負っても本体には全く影響がないため、童磨はただでさえ回復できて疲れない身体でありながら自分から手を下す必要すらないのだ。さらに、童磨は結晶ノ御子を複数生み出せるので、こっちは上弦の弐を何体も相手することになり、体力が消耗しやすいのだ。

 

 

現在結晶ノ御子は三体出されていて、私達は本体の童磨自身に傷一つつけられず、ボロボロの状態だ(童磨に傷をつけることができても、すぐに回復されるのだけどね!)。獪岳や伊黒さん、時透君はまだまだ大丈夫そうだけど、いずれ限界が来る。一番最初に体力が尽きるのは確実に私だろうけどね。

いや、それよりも....このままでは全員ここで殺される!しかも、私も獪岳達も童磨の血鬼術を少し吸ってしまったから、あまり長く保たない。なんとかしないと.......。

 

 

「考え事かな?」

「...!雷の呼吸 弐ノ型 稲魂」

 

 

そんな考え事をしている私の目の前に童磨が現れた。どうやら私を標的と定めたようだ。時間的にも夜明けが近くなっているし、早く終わらせたいのだろう。

弱い人から倒していった方が良いものね。そりゃあ、この中だと真っ先に私を狙いますよ。

 

 

私は童磨の接近に気づいてすぐに雷の呼吸を使い、童磨に向けて攻撃して後ろに飛んだ。童磨は両手に鉄の扇を持っている。鉄の扇、普通に人を斬れる品物だ。それで切り裂かれたら一溜りもないから、先に攻撃した方が良いと考えた。だが、上弦の弐だから反射速度も半端ないというのは知っているので、速度の速い雷の呼吸であり、少しでも長く距離をとる時間が欲しく、瞬きの間に五連撃できる弐ノ型を選んだ。五連撃なら反撃でも対応でき、童磨の動きをなんとか止められるのではという可能性に賭けて....。

 

 

...だが、流石に速さで童磨に勝てるわけはなく、一撃当たりそうになった。うん、まともに戦ったら駄目だ。

 

危なかった。本能で体勢を低くしたおかげで髪が少し短くなったくらいで済んだ。あの攻撃から掠っただけなのは奇跡だ。

ただ、童磨に近づく時に少し吸ってしまったかも.....。呼吸が使えないというのは本当にキツい。何回か血鬼術の霧を吸いそうになるのだけど、今回は吸ってしまったのかもしれない...。いきなり童磨が近づいてきたことに動揺して焦っていたから、血鬼術の霧がないかしっかり確認できなかった。こんな時に肺を駄目にするわけには....。

 

 

ここは華ノ舞いを使って、早くこの状況をなんとかするしかなさそうね。華ノ舞いは誰も知らない型だから、その詳細を知られていない。十二鬼月との戦い以外の時は華ノ舞いをなるべく使わないようにしていたので、情報もそんなになく、不意打ちをするのに良かった。どんな戦いでも情報は鍵となる。これは私の数少ないアドバンテージだ。

 

私が二回目である炭治郎達と肩を並べて戦うのなんて普通ではできないことだ。だけど、あちら側に情報があまりない華ノ舞いで不意をつくことで、なんとか一緒に戦える。華ノ舞いがなければ私は途中でリタイアしていた。なので、華ノ舞いのことで対策を練られることは避けたかった。

 

 

「でも、そんなことを言っている場合ではないよね」

 

 

無限列車や遊廓での戦いで華ノ舞いのことを知っていると思うが、詳しいことが分からないように、念には念を入れて隠しておきたかった。でも、そんな出し惜しみができる余裕はない。命がないと次も何もないのだから。

 

......ただ、それでも悔しいな....。私には華ノ舞いを使わずに上弦の弐と戦うのは無理だと、まだまだ弱いのだということを痛感する。

でも、今ここで使わないと.....。

 

 

「華ノ舞い 炎ノ花 紅梅うねり渦」

 

 

私は氷と相性の良い炎の型で童磨の攻撃から身を守り、距離を取ることにした。それに、この型は防御にも優れているため、童磨の血鬼術も防げると思った。予想通り、童磨の血鬼術を防ぐことはできた。まあ、童磨に本気を出されても耐えられるかというと、それは難し過ぎるとしか....。

 

 

「見たことない呼吸だねー。その目、堕姫と妓夫太郎の時に使っていたものだね。もしかして、他にもあるのかな。しかも、さっきまで使っていた雷の呼吸とは全然違うね」

 

 

しかし、これもやはり童磨に避けられてしまった。今の私に童磨の頸を斬ることはできない。それは分かっている。それでも、童磨の攻撃を防げるのなら遠慮なく使おう。

 

予想した通り、童磨は私の華ノ舞いを分析している。ただ、先程の童磨の言葉で狐面を外していた(遊廓で狐面をしたままだと怪しまれるからと思って)時のことを見られているのが分かった。華ノ舞いのことは鬼側で興味がなくても、瞳の色が変わるのは珍しかったようだ。

 

 

なんだか凄く複雑なのですが、遊廓での戦いは見られていたという情報が手に入っただけでも良かったと思おう。あちらに何かがバレてもこちらが情報を得ることができたのなら、それは痛み分けと考えることにしよう。

 

 

て、今はそんなことよりもこの状況をなんとかしないと。狙われているのに、離れて避けて防ぐだけでは何も変わらない。獪岳も伊黒さん達も氷人形の相手をしていて、こちらに加勢できない状態だ。この状況を突破するには私が自力でなんとかしないと。

 

.....童磨の血鬼術や反射速度を考えて、私の使える型の中で一番速いものを...。

 

 

「華ノ舞い 雷ノ花 梔子一閃 六重」

 

 

私は自身の使える型の中で最も速く、なおかつ童磨の血鬼術を防げるように連続でできる型で童磨の間合いに入り刀を振った。しかし、この攻撃も童磨に受け止められ、私はすぐに童磨から離れた。

 

何もないかと自身の体を見ると、黄緑色の着物が斬られていた。血は出ていないことから皮膚までは届いていないようだ。あともう少し離れるのが遅かったら、鉄の翁で着物どころか真っ二つになっていただろう。やはり受け止められたことに気づいた時にその場から離れたのは良かったみたいだ。お陰様で掠っただけで済んだ。

なんとか血鬼術の霧も吸わなかったけど、童磨の近づいた時に呼吸が使えないのはやっぱりキツい。童磨の血鬼術って、本当に呼吸を使う鬼殺隊にとって相性最悪なんだよね。

 

 

でも、これは一時凌ぎだ。今が危険な状況であることは変わらない。

だが、私の使える範囲の華ノ舞いを使っても、この状況は変わらない。生き延びるために少しでも可能性が高い方をと思い、華ノ舞いを使ったが、それは少しだけ確率を上げるのであって、確実だというわけではない。何か他に私ができることとしたら.......。.....あまり良い手ではないし、ほとんど賭けだ。

成功する確率が低いのは分かっているし、仮に成功してもリスクしかない。....それでも、試してみるしかない。このまま戦い続けても負けそうなのだから、せめて何かしらの抵抗はしたい。持てる手段は全て使わないと。

 

 

私は一か八か自身の知っている呼吸を思い浮かべながら強く念じることにした。

 

もしかしたら新しい型を使えば、この状況をなんとかできるのではないかと思ったのだ。華ノ舞いの新しい型を初めて使った時は明らかに動きのキレが違うからね。できるだけ再現はしていたけど、無限列車で猗窩座に闘気が変わったと言われるくらいに、私の普段の動きとは全然違う。それに任せてしまうような感じだけど、それくらいの動きでないとこの流れをなんとかできない。そう思った。

 

 

 

.....ザザッ...ザザッー.......プツンッ!

 

 

 

だが、頭の中で雑音のような音が聞こえ、思い浮かべていた呼吸の動きが鈍くなり出した。そして、その動きがゆっくりになった瞬間、何かが途切れるような音がして完全に動きが止まり、思い浮かべていたものが見えなくなった。

 

 

「.......やっぱり駄目か...」

 

 

その音が聞こえて私は少し気を落とすが、今はそんな暇がないので、切り替えて童磨の血鬼術を避けることに集中した。

 

ある程度覚悟していたが、実際に起こると結構落ち込む。何回もやっていたので、分かってはいたが....。

 

 

実は華ノ舞いの他の型を知るためにあれこれしていたので、随分前には分かっていた。華ノ舞いは私がどうしたいのかと強く願うのと同時に見知っている呼吸の型を全て思い浮かべると、新しい型が分かる。その法則で試して、分かったのが桜花しぐれなのだが、それだけしか分からなかった。

 

桜花しぐれが完成した後、他の型も思って試してみたが、どれだけ強く願おうと型を思い浮かべようと、型を知ることができなかった。色々考えてみた結果、私の願った型がないのか、見知っている型を足りないのではないかと思った。

 

 

発動条件から考えて、この二つのどちらかが足りないからと見て間違いないだろう。呼吸それぞれで特徴があるのだから、華ノ舞いに遠距離の型とかがなくてもおかしくない。それに、私は呼吸を全て見ていないのである。原作の知識で呼吸は全部知っているのだが、それは知識として知っているだけで、実物をこの目で見ていない。しっかりとした動きを見ないといけないのだろう。.....普通は体に叩き込めと言うが、それだと無限列車での時の件の説明がつかないため、体に叩き込まないといけないということではないと思う。

柱合会議の前に水の呼吸やヒノカミ神楽、雷の呼吸はきちんと教わり、花の呼吸と炎の呼吸は見た。蝶屋敷にいた時は獣の呼吸と音の呼吸を見たし、ここでは恋の呼吸と蛇の呼吸と霞の呼吸を見た。

 

 

確信はないが、桜花しぐれができた時は基本となった恋の呼吸を甘露寺さんに見せてもらった後のことなので、法則としては間違いないだろう。ちなみに、蝶屋敷では遊廓での戦いで華ノ舞いが二つ分かったので、そちらに集中していて、華ノ舞いの新しい型が分かるか試せなかったのだ。そのため、試し始めたのは刀鍛冶の里に来てからだった。まあ、カナヲや義勇さん、伊之助などのことで色々あり、そういう時間があまりとれなかったというのもあるけど....。

 

 

この中でまだ見ていないのは風の呼吸と岩の呼吸だ。見知っている型の中で足りなかったと考えると、この二つの中で新しい華ノ舞いの型に繋がるものがあるのだろう。と言っても、日の呼吸は拾参の型があり、水の呼吸には拾壱の型があるというように、呼吸によって型の数はバラバラである。

そのため、華ノ舞いが現在分かっている型しかないのか、他にもあるのか分からない。型があの六つしかない可能性はあるが、他にも型がある可能性もあるので、できることは全部試そうと思っている。

 

とりあえず最初に呼吸を全て.......あれ?...日の呼吸が最初で、そこから派生して基本の呼吸である水と炎と雷と風と岩と.....あっ!

 

忘れてた!まだあの呼吸があったんだ!

 

 

私はそのことに気づき、もう一度強く念じながら頭の中に知っている呼吸とその型を思い浮かべた。すると、私の意志とは関係なく体が勝手に動き始めた。

 

間違いない。体の主導権が移った。

 

 

私は成功したことに安堵した。いや、自分の体を乗っ取られることを喜んでは駄目だと思うけど...。

 

そんなことを考えながらも、私の頭の中では月の呼吸の陸ノ型の常闇孤月・無間、音の呼吸の肆ノ型の響斬無間、霞の呼吸の伍ノ型の霞雲の海などが形となって浮かび上がり、何かが歯車のように噛み合うのを感じた。その時、私の日輪刀は紫色に変わり、刃の模様が月見草の形になっていた。

 

 

「華ノ舞い 月ノ花 月光華・草奏」

 

 

私は刀を高速回転させ、葉が(その葉の形が三日月に似ているように)舞っているかのような斬撃を描く。それを大量に舞っているように見せるため、私の体は何度も刀を振るう。その大量の葉の形をした斬撃はササーっという音が聞こえ、童磨の体を何度も斬りつけた。

 

 

私は覚えている限りの呼吸を全部思い浮かべたと思っていたが、まだ一つ忘れていたものがあった。

それはは月の呼吸だ。盲点だった。黒死牟が使った呼吸であるため、無意識に除外していた。呼吸の派生を図として改めて考えてそれに気づき、月の呼吸を追加してもう一度試してみた。そうしたら、先程の通りのことが起きた。ちなみに、月の呼吸は黒死牟と遭遇した時に一度だけ使っていて、私はそれを獪岳に引っ張られながら見ていた。

 

 

だが、このことからあの現象は条件を満たさないと発動しないのだと確信できた。

 

とにかく華ノ舞いの型を知るためにも全ての呼吸を見る必要がある。これが分かったのは良かった。次に活かせ......て、いやいや。次も何も生き残らないと意味がない!あの現象のおかげで華ノ舞いの新しい型が分かったし、漸く童磨に反撃できた。.....だけど、私の状況は良い方向に変わらず、危機的な状況のままだ。

 

 

どうしてまだ危険なのか?皆さん、お忘れですか。この現象が起きると、私はしばらく動けなくなるということを。それを防ぐために、先に華ノ舞いの型を知ろうとしていたということを。それを覚悟してこの賭けをした。行き当たりばったりなことだと思うが、童磨に追い詰められて、

 

 

 

私は懐に何かないかと思い探してみた。その時、焦り過ぎた所為か何かを押したような感触を感じた。それと同時に嫌な予感がした。

私はおそるおそる手にした物を懐から出した。それは一つのカプセルのようなものであり、その中から何かが流れて混ざる音が聞こえてきた。

カプセルを見て、さらにその音を聞いた私はこう思った。

 

あっ、これはマズイ。

 

 

私は咄嗟にカプセルを投げ、脱兎の如く離れた。動けなくなる前に少しでも遠くに行こうとした。私はその場から離れることに精一杯で、そのカプセルをちょうど童磨の前に投げたことに気づいていなかった。

 

 

「あれ?何かな、これ?」

 

 

しかも、童磨はそう言って鉄の翁を振り、そのカプセルを真っ二つに斬ろうとした。だが、童磨の鉄の翁がカプセルに当たる瞬間、

 

 

 

ズドーーーン!!

 

 

 

爆発が起き、辺りはに包まれた。あの距離だと童磨は確実に巻き込まれているだろう。

 

私?爆発で少し吹き飛ばされたけど、受け身をとったので大きな怪我はしていない。地面に転がっているくらいだったから。いや、それよりもその爆発が問題だ。爆発により、近くにあった木がいくつか折れたり燃えて黒くなったりしていた。

 

 

吹き飛ばされて受け身はとれたが、あの現象の影響で動けなくなり、しばらくその場に座り込んだ。顔を上げた時、私はその惨状を見て絶句した。

 

あれのことは知っていたが、こんなことになるとは思ってもいなかったのだ。だから、別解させてほしい。私もこれは予想外。

 

 

「.........」

「............」

「......えっ。何あれ」

 

 

気配を感じて振り向くと、獪岳達がいた。獪岳と伊黒さんは爆発の方を見て無言だった。その反応が一番怖い。時透君の反応の方がまだ良い。

 

それと、時透君の言っていたことは私も同意する。というか言いたい!作った本人だけど、あれは何って私が聞きたい!

 

 

「.......おい」

「はい...」

 

 

しばらくすると、獪岳が私を呼んだ。獪岳の低い声を聞き、私は素直に返事をして獪岳の方に体を向けた。獪岳を見ることが怖いために視線は別の方に向けたけどね。

だが、それもすぐに後悔した。視線を逸らしたところに伊黒さんがいて、目が合ってしまった。伊黒さんもあの爆発に言いたいことがあるみたいだ。

 

 

まあ、無理もない。この爆発については誰も知らないからね。いつの間にこんなものを作っていたのかと聞きたくなるのは当然だ。

まあ、獪岳は爆薬をいつ作ったのかということを、伊黒さんは私が作る薬品や毒のことを柱合会議で聞いていたが、これに関して何も言っていなかったことを、それぞれ言及したいのだと思う。

 

何を言われるのか大体察しがつくけど、大人しく聞きましょう。

 

 

「これはどういうことだ?前とは違って、あの丸いのから爆発が起きてるが。複数の薬品が混じった爆発じゃねぇよな?」

「あははは.....。確かに前とは違いますけど...一応薬品が混ざったものではありますよ.....」

「しかも、爆発の威力が上がってねぇか!」

「それはそうですよ。だって、あれは爆薬ですから」

「はあ?お前、前までそんなの作ってなかっただろう。大体爆薬は専門外で、作っていたのは薬や毒くらいなもんだって言ってただろう」

 

 

獪岳の尋問に私は正直に答えた。私が間違えてボタンを押してしまったカプセルに入っていたのは爆薬だったのだ。

 

前にも爆発させたことはあったけど、あの時は複数の化学物質や液体、気体などが混ざってしまったことで起きたものであり、今回は正真正銘の爆薬だ。爆発させるために作られたものだ。偶然のものとは違うので、爆発の威力が上がるのは当たり前だ。

 

 

「...それなら、あの爆薬はいつ作った?」

「....蝶屋敷で.....。...蝶屋敷での病養中に訪ねてきた宇髄さんに.......。色々話をして、その中で薬関連で爆薬のことを教えてもらって.....。私も少しその話があったので、詳しく聞いてみまして...。....その流れで爆薬を作る機会がありまして「いや、ねえよ!」あったのですよ!それでできたのがこれです」

「宇髄.......」

 

 

伊黒さんは私と獪岳のやり取りを聞き、私が爆薬を作ったのは最近の可能性、つまり鬼殺隊に来てからだということに気づき、そう尋ねてきた。私は正直に爆薬を作った経緯なども全て話した。途中で獪岳からツッコミがあったけど、これ以上そのツッコミに答えていると、色々根掘り葉掘り聞かれると思うし、話も脱線しそうなので無理に話を通した。

 

見張られている状態で爆薬を作っていたのなら、いつ何処で作ったのかというのは気になるだろう。特に伊黒さんは刀鍛冶の里で私のことを監視していたので、その期間に爆薬を作っていたことで私が嘘をついていたのかとか自分の責任とか考えているだろう。

 

 

でも、大丈夫です。この爆薬を作ったのは蝶屋敷にいた時であって、伊黒さんは心配しなくてもいいです。爆薬なんて作れなかったし、作る予定もありませんでしたよ。

 

ただ宇髄さんが見張りとして来た時に色々話していて、その会話から薬や毒の調合の話題になりまして.....。

 

 

『お前、よくあんなの作ってるな。俺は藤の毒を苦無に塗ってたことがあったが、最近ではあまり使わないな。爆発なら派手に使うが』

『でも、爆薬と言っても薬のように色々あるのでしょう。作り方とか火薬の扱い方とか....』

『おう。と言っても、俺は派手なら別に構わないから何種類もと作っていないんだが...なんだ。聞きたいか?』

『はい!聞かせてください!気になります』

『よし!そんじゃ.....』

 

 

という流れで、宇髄さんが爆薬に関して教えてくれた上に、頭だけじゃなくて体にも叩き込まないといけないと言われ、爆薬作りを実践することになった。それから作り方を覚え、その調合や機能で私があれこれ実験してみて、投げたあの爆薬が完成したというわけだ。

でも、爆薬が危険だというのは分かっているので、投げたあの爆薬しか持っていないし(練習用と実験用の爆薬は宇髄さんに渡していたが、完成した爆薬は宇髄さんに自衛で使えるかもしれないからと言われ、そのまま持たされた)、その爆薬が背負い箱の揺れで発動しないように懐に入れていた。あの時、指に当たって起動してしまうのは想定外だったが....。

 

 

ちなみに、完成した爆薬はカプセルの中で二つに分け、ボタン一つでそれが合わさって調合するタイプのものだ。時間差があるようにしているのは、爆薬を投げたりその場から自身が離れたりする時間が必要だからである。

 

 

「......お前、あの爆発の威力は何だ。普通がどれくらいか知らねぇが、まさかこの爆薬も改良とかしてねぇか」

「....えーと.....」

「おい、視線逸らすな!やったんだな!」

「好奇心であれを多く入れるとどうなるか、別の物を代用したり入れたりしてみたらどうなるか試してみたくて.......。...宇髄さんもノリノリで色々助言してくれるから、だんだん楽しくなっちゃって」

「宇髄!」

 

 

獪岳は私の行動からなんとなく何をしていたのか分かっていたが、確認のために聞いた。それで、私が別の方向を見ているので、獪岳は私のしたことを確信したようだ。私は怒られるなら全部言っておこうと思い、爆薬作りでのことを何もかも話した。獪岳はそれを聞き、呆れたような溜息を吐いていた。

一方で、伊黒さんは同僚が積極的に関わっていたことに頭を抱えていた。

 

 

「全く何やってんだ!教える奴も馬鹿だが、お前はもっと馬鹿だ。教えられたからって実践するか!」

「先程も言った通り、好奇心が刺激されまして.....」

「おい!」

 

 

獪岳の説教に私は好奇心でやったとしか言えなかった。私の言葉を聞き、獪岳は低い声を出してさらに威圧してくるので、私は萎縮した。

 

はい、分かっています。好奇心のままやった私が悪いです。

 

 

「....あっ。逃げた」

「えっ!?」

 

 

時透君の言葉で私達は一斉に童磨のいた方に視線を向けた。そこはもう爆発の黒い煙は無くなり、童磨の姿も消えていた。

 

 

私はそのことに困惑しながらも童磨が油断させるために逃げたフリをしていないかと思い、辺りを見渡した。だが、すぐにその警戒を解いた。冷静に周りを見れば気づけたことだ。

 

 

「朝日か......」

「きっと日が昇るから逃げたのでしょうね」

 

 

空を見上げると、太陽が顔を出していた。日が昇る時間になり、童磨も逃げたのだろう。

 

私は朝日を見ながら肩の力を抜いた。この世界に転生してから太陽が空に昇っていることに凄い安心感を抱くようになったな。起きた時にある太陽へのありがたみは昔から感じていたけど、鬼と戦うようになってからはその思いがさらに強くなったんだよね。

 

 

とりあえず戦いはこれで終わった。全員、大きな怪我はしていない。肺の方は少し心配だが、五体満足で生きている。この戦いで童磨の頸を斬ることができなかったのは残念だが、ここで誰も欠けずに生き残っただけでも幸いだ。

 

 

とにかく戦いは終わった。これで、一息つくことができる。

 

 

「うん?日が昇っているのなら、炭治郎達は.....」

「みんな!やったわよー!」

「....あっちは大丈夫そうだな」

「ですね...」

 

 

戦いが終わったということで一安心したが、炭治郎達のことを思い出した。それで、私はそちらの戦いがどうなったのか気になり、炭治郎達の様子を見に行こうとした時、甘露寺さんの声が聞こえた。その声を聞き、獪岳も私も無事だということが分かって安堵した。

だが、炭治郎達の方を見た時に一瞬でその気持ちは消え去った。炭治郎の表情が暗かったのだ。

 

一体何があったの?まさか半天狗にも逃げられたの?それとも玄弥達と何かトラブルが.......。

 

 

「炭治郎。半天狗、上弦の肆の頸は斬れたの?」

「ああ、それは大丈夫だ。ただ.....」

「...ただ?」

 

 

私がおそるおそる炭治郎に聞いてみた。半天狗の頸は斬れたと言っていた。それなら、玄弥達との間で何かトラブルが起きたのか.....。...私はそのように考えて不安になった。

だが、話の続きを聞き、その心配は杞憂だったとすぐに分かった。

 

 

「上弦の肆の頸を斬ることはできたんだが、その時にちょうど日が昇ってきて....禰豆子の姿を見られてしまったんだ」

「あっ...」

 

 

私は炭治郎の話を聞き、どうして炭治郎の表情が暗いのか察した。

 

 

鬼舞辻無惨は太陽を克服しようと鬼を増やし続けている。原作では禰豆子が太陽の光を浴びても体が焼けないところを半天狗の目から見て、禰豆子が太陽を克服していると知り、禰豆子を巡って最終決戦が始まった。

そして、禰豆子は今回も太陽を克服していて、前回と同様に最終決戦のような戦いが勃発するのは分かっていた。鬼舞辻無惨は全ての鬼を使ってでも禰豆子を手に入れようとする筈だ。幾ら何でも全ての鬼と戦うのは私達少人数で勝つのは難しい。なので、禰豆子は昼に外で出てもらわないように背負い箱に入っていた。

 

だが、半天狗に禰豆子のことを見られた。つまり、原作や前回と同じように禰豆子を巡る戦いが近いうちに始まるということだ。

最終決戦までのカウントダウンが始まってしまった今、鬼との総力戦に色々備える必要があるのだ。しかし、その準備できる期間は限られているし、何より禰豆子に何処かに隠れてもらうかという問題が起きる。禰豆子を見つけて吸収されるという事態になれば、弱点のない敵に私達が勝てるわけがないからだ。そのため、禰豆子を絶対に誰にも見つからない場所にいてもらわなければならない。

 

 

でも、その場所を見つけるのは容易ではない。何故なら長い黒髪と単眼に琵琶を持つ鬼、鳴女の存在があるからだ。

新上弦の肆である鳴女は眼球の形をした鬼を外に放ち、それが見たものを通して居場所を特定することができる。だから、禰豆子にはその血鬼術でも分からない場所にいないといけない。だが、鳴女の血鬼術の範囲は広い。兪史郎さんの血鬼術を使うということも考えたが、兪史郎さんの血鬼術は万能ではない。万能ならば鬼の襲撃なんて起きるはずがない。それに、私達は常に移動している。そんな状態で禰豆子を守りきれないだろう。

 

......あー...。何でこんなにも問題ばかり起きるの!

 

 

炭治郎達と鬼殺隊の間で問題が起きなかったことを喜ぶべきか、それとも新たな問題が起こったと頭を悩ませるべきか....。

 

 

「それで、考えてみたんだが.....」

「うん?」

「彩花の言う通り、今後の無惨との戦いを考えると、禰豆子を守りきれない。俺がどうしたいかというのはまだ分からないが、それでも禰豆子を守れるなら鬼殺隊と協力してもいいと思う...」

「炭治郎....」

 

 

私は頭を悩ませたが、一度そのことについて考えるのを止め、炭治郎の話を聞いた。私はその話に喜びと心配で頭の中がいっぱいだった。

 

禰豆子を隠す場所として最適なのは原作や前回と同じところが良いと思うし、鬼殺隊と協力することでできることも増える。私としては禰豆子を守れるし、鬼舞辻無惨への勝率も上げられるので、鬼殺隊と協力することには賛成であるし、こちらに利点がある。

 

 

ただ、問題があった。問題というのは炭治郎達と鬼殺隊のことだ。

炭治郎は前回のことで心に深い傷を負った。その原因は鬼殺隊にある。その原因の鬼殺隊と協力関係になるのだから、今までのように関わらないという選択は取れない。

特に最終決戦で共に戦うことになるから、連携のために積極的に手合わせをした方がいい。会う機会が多くなるので、炭治郎が精神的に大丈夫なのか不安だ。今はまだ平気であっても、何処かで発作が起きるかもしれない。

 

 

「ありがとう。.....でも、無理はしないでね。提案した私が言うのも可笑しな話だけど......」

「分かった」

 

 

そのため、私は炭治郎の判断に感謝しながらも炭治郎のことを心配した。

 

私が鬼殺隊との協力を受け入れることを勧めたけど、炭治郎の気持ちを無視してまでとは思っていない。鬼と全面戦争するのに、少人数では心許なくても、炭治郎が辛い思いをするのなら別の方法を考えようと思っていた。

私が優先しているのは最終決戦への備えと炭治郎と禰豆子の安全だ。鬼殺隊との関係を改善することも大事だが、それよりもこれは大切なことだ。炭治郎達が肉体的にも精神的にも無事じゃないよね。炭治郎達のことを無視した和解は意味がないもの。無理をして倒れられるなんて以ての外。

 

 

私は炭治郎の方を見た。少し表情がこわばっていたが、それでも歩み寄ろうとしている。前進しようとしている炭治郎を見て、私は心配があるけど、サポートしていこうと思った。

 

 

まだまだ不安なことは多いけど、一歩進めていることが重要だ。とりあえず様子を見ながら無理だと思ったら、距離を離すようにしようかな。距離感を見誤らないように....慎重に........。

 

 

 

 

 

「おい」

「どうしたの?」

「お前....何をしたか分からねぇが、柱と爆薬を作れるんなら仲が良いんだよな」

 

 

獪岳に声をかけられ、私は獪岳の方を向いた。すると、獪岳は悪そうな笑みを浮かべて私の肩を掴んだ。私はすぐに逃げ道を塞がれたということを察した。

 

なんだか嫌な予感がする.....。

 

 

「俺はそういうの無理だから、お前がやれ」

「やっぱり!」

 

 

獪岳の言葉に私は頭を抱えた。

 

つまり、私が炭治郎達と鬼殺隊との仲を取り持てということだよね。まあ、炭治郎達と鬼殺隊の前回のことを考えると、いきなり話し合うことは難しい。誰かが間に入った方が大きなトラブルに発展しないし、揉めることがあっても仲裁できる。それができるのは....私ぐらいか。

 

 

炭治郎は鬼殺隊の人達とまともに話せるか微妙だし、禰豆子は威嚇していて話になるかと思うし、獪岳は前回で鬼側につき、今回では私達の味方をするというように二回も鬼殺隊を裏切っているし、悲鳴嶼さんの件の問題もあるので、鬼殺隊と関わるのに苦労するだろう。私も怪しいと思われているが、この中でマシなのはおそらく私だと思う。

それは分かっている。...だけど......だけど!

 

 

獪岳、私が何かした?爆薬は作ったけどさ......。

 

 

なんだか順調だと喜ぶべきなのか、それとも新たに問題が増えたと頭を抱えるべきなのか....。.......最終決戦が近いのに、どうして問題は減らずに増え続けていくのかな...。いや、最後の戦いだからこそ、問題が次々と起きていくのかな.....。.....どっちにしろ、最終決戦が終わるまでは安心することなんてできなさそうだ。

 

 

 

.........仕方がない。できる限りのことはしよう。

 

 

 




華ノ舞い


月ノ花

月光華・草奏

刀を高速回転させた状態で葉のような形の斬撃を放ち、何度も振ることで大量の葉が舞っているかのような斬撃になる。多重範囲攻撃である。



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