笹の葉の少女は幸せを願う   作:日々草

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漸くスランプから脱出したため、投稿を再開することにしました。
毎週金曜日には投稿できることを目安にしていこうと思っています。
今回は久しぶりの投稿ということで、話が長くなりました。
楽しみに読んでくださるとありがたいです。




笹の葉の少女は柱稽古に参加する 前編

 

 

あはは....。.....どうしよう、これ...。

 

 

現在、私は苦笑いをしていた。何故苦笑いを浮かべているのか。.....それは目の前の光景が原因だった。私の前で隊服を着た人達が床に伏せ、気絶している。

 

私はそれを見ながら倒れている人達のことを考えつつ、自身も同じ目に合うことへの緊張や不安を感じていた。私はその緊張や不安に押し潰されないようにしながらも、これから目の前の人と同じことが起こるということを認めたくなくて、現実逃避でここまでのことを思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

刀鍛冶の里での戦いが終わり、私達は蝶屋敷に行って診察することになった。上弦の弐である童磨と戦い、私は肺のことが心配だったが、肺は壊死していなかった。獪岳や伊黒さん達も無事だったそうだ。その他にも凍傷があったが、治るのにそれほどの時間はかからなかった。

上弦の肆である半天狗と戦った炭治郎達はかすり傷などの軽い傷が幾つかあるくらいで、数日寝たらピンピンしていた(上弦の伍の玉壺とも戦っていたが、そちらはほとんど無傷であるため、その辺りは省略する)。

 

まあ、そういうことで誰も欠けておらず大きな怪我をしていなかったので、全員が一週間程度で全快することができた。

 

 

その後、伊黒さんや甘露寺さん達は刀鍛冶で起きたことを報告し、会議になった。前回とは違い、上弦の弐である童磨が刀鍛冶の里に現れたことで、今後の動きについて少し見直すことになった。

童磨の件は前回だけでなく、私の記憶(原作)の中でもなかった出来事であるため、また前とは違うことが起きるかもしれないと考え、警戒を怠らないようにと巡回する人が必ずいることになった。ちなみに、無限列車の時の猗窩座の件は前回の方ではなかった出来事だが、私の記憶(原作)の方ではあったということを報告している。

 

それと、柱稽古に関しても話し合ったようだ。柱稽古の順番は煉獄さんが一番最初で、呼吸法と全集中の呼吸・常中を見ることになっていて、その次が宇髄さんによる基礎体力向上の訓練、時透君による高速移動の稽古、甘露寺さんによる地獄の柔軟、伊黒さんによる太刀筋矯正の訓練、不死川さんによる無限打ち込み、悲鳴嶼さんによる筋肉強化訓練、義勇さんが個別で鍛練をつけるということになった。

柱稽古の最中の巡回は、最初の方では順番の遅い義勇さんがすることになり、隊士達が全員突破したら煉獄さんや宇髄さんと交代することになっているらしい。

 

 

痣の話は前回でも出ていたそうで、今回も柱全員が挑戦しているらしい。本当ならもっと早く痣の習得を始めたかったようだが、今回は寿命までに決着がつけられるかどうか分からないということで、痣を出している人はいない。痣とは体に浮かび上がる紋様であり、痣を発現した剣士は身体能力が大幅に向上する。

ただし、痣の発現は命の前借りにあたるため、基本的に二十五歳で死ぬらしい。

一応例外な人はいたが、その例外が継国縁壱という特殊な事例だからね.....。

縁壱さん自身が特殊な故に寿命を延ばす方法なんて期待できないだろう。仮に方法があったとしてもあの人のように二十五歳を超えても生きるという保証はない。早い段階で痣を出すのは時間尚早というわけだ。

何せ、悲鳴嶼さんとか痣を出したらその日に亡くなってしまう人がいるから、鬼舞辻無惨を倒すためにも温存しないといけない。原作でも悲鳴嶼さんは無惨を倒した後、痣の寿命で亡くなっていたからね。

 

 

前回の記憶持ちだというのが分かって、痣のことを気にしていた。というより、前回の記憶持ちなのかどうかの判断基準の一つにしていた。一番分かりやすいからね。このタイミングで痣が出るというのなら、間違いなく前回の記憶を持っていると確信できる。鬼殺隊の人達と深く関わるまではそうやって記憶の有無を知ろうと考えていた。だが、その前に善逸やしのぶさん達に出会ったので、その必要がなくなったけど....。

 

無惨と戦わないで死ぬことを後悔する人達だから、仕方がない時は痣を使用するだろう。

.......まあ、鬼殺隊は本当にその覚悟が凄いんだよね...。柱の人達は痣によって寿命が制限されることを恐れずに強くなって無惨を倒す方を選ぶくらいに悪鬼滅殺を掲げているのを知ると、本当に迷いなんてないんだなと実感するよ。

 

 

 

 

 

全部聞いた話と個人的な予想だから本当なのかどうか分からないけど、私の記憶にある原作とはそこまで流れは変わっていなさそうだ。原作と変わらない方が私的にはありがたい。私もこれ以上流れが変わらないでほしいと思っていたから、そうしてほしいんだよね。

流れが変わってしまうと、私がどう対処していいのか分からないし、それによって鬼舞辻無惨を倒せずに鬼はいなくならないで、戦いはまだまだ続くという展開になる可能性がある。いや、最悪な場合は鬼殺隊が全滅という展開も......いやいや、そんなの考えては駄目。鬼殺隊が全滅、それは私達にとってもバッドエンドだ。逆に鬼をパワーアップさせてしまう結果にもなるからね。

 

 

 

それで、戦いの後や肝心の私や炭治郎達の待遇のことなんだけど....向かう時から大変だったよ......。まず、炭治郎達が蝶屋敷に向かうところからが問題だった。炭治郎は鬼殺隊の人を見ると、拒否反応を起こしていた。前までは見るだけで発作が起きていたが、今ではそういうことは少なくなっていった。だが、誰かに触れられたり背負われたりされるのはどうなのか分からない。私は不安だったし、周りも黙っていた。今までのことから和気藹々とした空気にするのは無理だし、気楽に話すことも難しい。

 

 

私が何か流れを変えられたら良かったが、炭治郎の発作はどうなっているのか詳しく知らないし(手紙では書いてあったけど、実際にどんな様子だったか見ていないから)、炭治郎達と鬼殺隊の間で起きた出来事は聞いていても実際に見ていないからどう踏み込んでいいのか分からない。そのため、何を話題にしたらいいのかとか、どういうことを言わない方が良いのかなどで悩み、結局炭治郎達に声を掛けられず、隠が早く来ることを祈った。

ただ隠のことを考えると、そちらもそちらで問題があった。

 

 

 

理由は炭治郎と禰豆子が鬼殺隊に対して怒りや憎しみなどの感情を抱いているのは隊士だけではないからである。だが、炭治郎は鬼殺隊全員に対して発作が起きるわけではない。鬼殺隊といっても、隊士や隠、刀鍛冶の職人達などがいる。前は鬼殺隊関係者ではなくても、発作が起きることはあったが、今では一般人なら大丈夫なようになっている。ただ、その一般人の範囲が分からない。炭治郎の思っている一般人に隠や藤の家の人達などが入っているのかを私は知らない(禰豆子がどう思っているのかも分からないけど)。

今までの様子から、隊士は発作を起こしていたから範囲外だろう。育手は鱗滝さんが大丈夫だったから、その範囲内に入っているのだろう。...刀鍛冶の職人も.....鋼鐡塚さんが平気だったから大丈夫なのかな?そっちの情報は少ないんだよね。鬼殺隊関係者と遭遇しないようにしていたから。

 

 

どうやら私と離れている間に鋼鐡塚さんと再会したようだ。再会したのは上弦の肆と伍が襲撃した時らしい。その時、ちょうど炭治郎の刀が戦いで刃こぼれしていて、それを見た鋼鐡塚さんから刀を受け取ったそうだ。その刀は縁壱零式を壊したことで出てきた日輪刀である。しかも、その日輪刀は研ぎ直し終えた後のものである。つまり、ここも原作と変わった状況であるということだ。....まあ、その原因は私なのだけど...。

 

 

原作では鋼鐡塚さんは刀鍛冶の里の襲撃の最中、ずっと日輪刀を研ぎ直していた。上弦の伍の玉壺が現れても、その攻撃を受けて目を怪我しても、鋼鐡塚さんは意を介さずに刀を研ぎ続けていたのだ。玉壺との戦いの後に時透君がその研ぎ途中の刀を持ち出されて一度中断し(その結果、炭治郎はその刀を使って半天狗の頸を斬れたのだが...)、後日再び刀を研ぎ直して炭治郎に渡されるのだが、今回はそれが無くなった。

まあ、その理由は簡単だ。私が原作よりも前に(今回の刀鍛冶の里の襲撃よりも随分前に)縁壱零式を壊してしまったことで、襲撃の前に鋼鐡塚さんが日輪刀を研ぎ直す時間があり、刀の研ぎ直しが間に合ったのだ。

だから、私は蝶屋敷でその話を聞いた時、また原作と展開が変わったなと思った。

 

 

 

.......話が逸れたけど、私が気にしたのは炭治郎が隠に背負われても大丈夫かどうかということだ。

 

鬼殺隊関係者に会わないようにしていたから仕方がないけど、隠に対して発作が起きないか心配だ。刀鍛冶の里での移動は隠に背負われないといけないからね(炭治郎達の行きは自分の足で行ったけど)....。もし発作が起きてしまったら、炭治郎は自身の足で蝶屋敷に向かわないといけなくなる。でも、流石に上弦の鬼と夜明けまで戦い続けた炭治郎に自力で行かせるのはね...。疲労が蓄積しているだろうし....。

珠世さんのところなら治療ができるし、鬼殺隊と協力することに関して話し合いたかったから、一度珠世さん達のところに行って話し合うことも考えたが、それだと珠世さん達の拠点やその途中の道で無惨やその配下の鬼に襲われる可能性があるので、それは止めることにした。珠世さん達との話し合いは落ち着ける場所に行ってから考えることにした。

 

 

...珠世さんのところ以外に落ち着ける場所の候補となると、私達は蝶屋敷に滞在するのが良いと考えた。治療ができるし、部屋も幾つかある。炭治郎達に安心して蝶屋敷に滞在できるようにするため、その中の一つを貸してもらえるように頼んで、そこを炭治郎と禰豆子が使うのはどうかと私は隠が来るまでそんなことを考えていた。....まあ分かると思うが、現実逃避である。

 

 

そうしているうちに隠が刀鍛冶の里に着いた。やってきた隠は後藤さんだった。後藤さんが来たと知り、私は安堵すると同時に不安になった。顔見知りがいると分かって私は安心しているのだが、それでも炭治郎と禰豆子がどんな反応をするのか分からなかった。後藤さんは隠だから前線に出ないし、刀を持っていないので炭治郎と禰豆子を傷つけるということは起きないと思うけど.....そのために何が起こるか分からず心配だった。物理的に傷つけないとしても、精神的に傷つける可能性があるからとても不安だった。

だが、その心配はいらなかったようだ。

 

 

来た隠が後藤さんだと知り、炭治郎と禰豆子は警戒するでも威嚇するでもなく、ものすごく安堵していたのだ。

予想外の反応に私は驚き、炭治郎と禰豆子に後藤さんと何かあったのかとその場で聞いてしまった。炭治郎達も後藤さんも私の反応を見た後、そういえば言ってなかったなと呟いてから、私に説明してくれた。

 

 

後藤さんは前回のあの時の件で炭治郎を庇おうとしてくれたのだ。後藤さんも柱や善逸達同様に炭治郎のことが分からなかったそうだが、禰豆子の必死に守ろうとする様子を見て、何か可笑しいんじゃないか、少し話を聞いた方がいいんじゃないかと思い、話を聞いた方がいいんじゃないかと止めに入ってくれたそうだ。

しかし、柱や善逸達はその話を聞いてくれなかったそうだ。

鬼殺隊のほとんどは鬼に対して強い怒りや憎しみを抱いている。一部には鬼と関係ない目的で鬼殺隊に入った人間もいるが、その人達も鬼を無条件に許すような人間ではない。そういう人達であるため、不審な人物...ましてや鬼と関係がありそうな人が目の前にいるとなると、冷静さを失ってしまうのだろう。

それに、後藤さんは隠であるため、柱や継子などの立場の人達に強く言えない立場の人である。だから、後藤さんは柱を止めることができなかった。でも、それは立場の問題だから仕方がないことであり、責めることもできない。それよりも上の立場の人である柱に意見したことが凄いと思う。

 

 

もう感謝しかなかった。こんなに後藤さんに感謝した日はないと思う。

 

原作を読んだ時にこの人は良い人だなとは思っていたけど、止めようとしてくれたことを知って、やっぱり良い人なのだと確信した。おそらく隠という後処理などをしないといけない職業から、周りの状況とかをよく見ているのだろう。それは柱や善逸達もそうだと思うが、隠は非戦闘員であるため、柱や善逸達とは違った目線で物事を見ることができる。それが前回のあの時のことに違和感を覚えさせたのだろう。

 

 

前回の件でのことを聞き、私の後藤さんへの好感度は大幅に上昇した。

 

 

 

後藤さんに運ばれ、無事に炭治郎達は蝶屋敷に着いた。しかし、炭治郎達が蝶屋敷に来た時は落ち着かない様子だった。やはり鬼殺隊に戻ってきたことに不安を感じているようだ。

だが、同時に懐かしさも感じているようで、発作が起きなかったのもそれが大きいだろう。

 

私が蝶屋敷に来る前に考えていた蝶屋敷の一部屋を使うことは、御館様もしのぶさんも同じことを考えていたようで、その後あっさり許可をもらえた。

 

 

アニメでは確か.....禰豆子が眠っていた部屋があったと思う。日当たりが悪く、ベッドが一つだけある部屋があるでしょう。

あの部屋を炭治郎達が使うことになった。

 

 

私もあの部屋なら炭治郎達が使っても大丈夫そうだと思っていた。普通の病室はベッドが幾つもあって、何人もの人達と一緒に過ごすとなると、炭治郎の精神に負担がかかる。なので、炭治郎と禰豆子の二人だけで過ごせる場所の方が良いと思った。

また、あの部屋は突き当たりのところにあって、人があまり通らない場所だ。人の出入りが多い場所では炭治郎達も落ち着かないだろうから、人通りの少ない部屋の方が良い。

アニメのシーンからこういう位置にある部屋なのかなとは思っていた。だが、はっきりと描かれていたわけではなかったため、私も分からなかったが、あの部屋はどうやら私の想像通りに端の方にある部屋だったらしくて良かった。

 

 

炭治郎達は最初の頃は緊張している様子だったが、次第に緊張が解けてきて、今はアオイさんやなほちゃん達の手伝いをするようになっている。どうやらアオイさん達は全然大丈夫みたいだ。

特に、禰豆子はなほちゃん達三人と遊んでいる。まあ、誰かが来る足音が聞こえると、なほちゃん達を守ろうとしているので、警戒対象ではなく保護対象として認識しているのかも.....。まあ、アオイさんやなほちゃん達は前回のあの時に関係がないからね。関係者じゃないアオイさん達を怖がる必要も怒る必要もないし、これで少しは炭治郎達も安心して体を休めるでしょ。

 

 

 

.......その後、色々問題が起きましたけどね。

 

まず、最初に起きたのは煉獄さん襲撃事件だね。一体何が起きたのかというと、単純に煉獄さんが炭治郎達に謝りに来たというだけです。こう言葉にすると、それの何処が事件なのか聞かれるだろうが、これが凄いことになっていたのよ。

無限列車の時に煉獄さんは炭治郎達に謝ろうとしていたのでしょう。炭治郎達が蝶屋敷にいると聞いて、真っ先に蝶屋敷に来られましたの。その時、私は一瞬嵐が来たのかと思ったよ。まあ、実際に嵐のようなものだったけど....。

煉獄さんは蝶屋敷に着いて早々、炭治郎のいる場所を聞き、その部屋に突撃しようとした。その時の炭治郎はまだ蝶屋敷に来たばかりで、まだ落ち着かない様子だったので、まだ落ち着いていない状態で会うのはマズイと思い、慌てて煉獄さんの前に立ってそれを止めた。

 

いや止まったのだけど、それは一時的なものでして...煉獄さんの勢いの所為か、それとも私と煉獄さんの体格差の所為か分からないが、煉獄さんに押し切られそうになった。もう、あの時は必死にこれ以上進ませるかと思って、手を伸ばして壁につき、足が後ろに下がらないように踏ん張り、説得していた。だが、それでも押し切られそうだったので、獪岳に助けを求め、二人掛りでなんとか煉獄さんを止めた。

 

 

その後、

 

『発作を起こさせる気ですか!違いますよね!それなら、少し待ってください!煉獄さんは煉獄さんのペース、進み具合があるように、炭治郎も炭治郎で歩み寄ろうとしているので、勝手に進ませないでください!

そういう行動力があるのは良いことですが、すぐに行動するのは我慢してください!

行動するなら、もう少し時間を置いてからでお願いします!ですので、いきなり突撃するのは止めてください!』

 

 

ということを言ったら、流石に煉獄さんも今は炭治郎に会うのを止めた方がいいと思ったらしく、突撃は止まった。

まあ、この後で煉獄さんといつなら大丈夫なのかというのを話し合うことになるのだけどね.....。

 

 

 

その次に起きたのは伊之助襲撃事件かな。これは煉獄さんの時のことがあったから、すぐに解決できた。説得も上手くいき、続いて来た善逸も諭して止めてもらった。

 

ちなみに、他の同期組であるカナヲは私に炭治郎と会って大丈夫なのか聞いてくれたし、玄弥は炭治郎達の様子をこの目で見たことでなんとなく気づいているらしく、落ち着いたら教えてほしいと言われた。

一緒にいた時透君は炭治郎の様子を見たし、私から説明を聞いたけど、

伊黒さんと甘露寺さんも玄弥達同様に察しているので、特に何も言ってこなかった。いや何日か経った後、甘露寺さんに良かったらこれをみんなで食べてと言い、パンケーキを渡されたことはあった。せっかく作ってもらったのだし、食べ物に罪はないからと思い、炭治郎に渡した。渡す前に私が一切れ食べて、美味しいよと言った後、普通になほちゃん達と食べていたので、私はほっとした。

 

しのぶさんや宇髄さん、不死川さん、悲鳴嶼さんは前回のあの時の気まずさから炭治郎達と距離を置いているので、そっちも問題はなかった。

 

 

だけど、この後の義勇さんの行動がちょっと大変なことに......。....いや、ちょっとどころではないのかもしれないけど.....。

 

義勇さんの件はいきなり起きた。突然のことだったというのもあるが、それに気づけたのが奇跡だと今も思っている。

 

 

どういうことかというと...話が急に変わりますが、原作では最初の頃の時透君は記憶障害を患っていて、何かあってもすぐに忘れてしまっていた。そんな時透君は柱を何かに例えて、どんな印象を持っていたのかという話になります。

義勇さんが時透君にどう覚えられていたのか知っていますか。置物みたいだという印象を持っていたそうです。他の柱は動物の印象を覚えているなか、義勇さんだけが無機物のものであることから、それくらい気配がないのだということが察せますよね。

 

 

そういうことで、炭治郎達に会いに来た義勇さんを止めるのがぎりぎりになるのですよね。たまたま私が炭治郎達の様子を見に行こうと来たら、義勇さんがちょうど炭治郎達の部屋の扉をノックしようとした時で、私が慌ててそれを止めて、義勇さんにちょっと庭の方に来てほしいと言ってそこから離れさせた。

その後で義勇さんを説得したんだけど、なんだか義勇さんは納得していない様子だった。だが、流石に正面で話し合うのは早いので、今はまだ我慢してほしい、順序というのがあるから少し耐えてくださいと言い、とりあえず帰ってもらいました。

 

 

ただ、その後も義勇さんが何度も蝶屋敷を尋ねて来るようになったのです。これは予想外です。

 

その度に何か問題でも起きたのかって?

問題はあるのですけど、それ以上に私が疲れるのですよ。扉を開けたら義勇さんがいたり、気づけば背後に義勇さんがいたりと私の心臓が持ちませんの。いつ何処で話しかけてくるのか分からないから、こちらはそれを気にしながら稀に起きる柱同士のトラブルを対処し、色々予定を組むことになったのですよ。

 

 

これが三日も続き、私の胃が大変なことになりかけた。獪岳に胃薬を作った方が良いと言われ、胃薬を作ることを考えた。まあ、私の胃はまだ大丈夫そうなので、調合を考えている段階であり、行動には移していない。それよりもやることが多いのだ。

 

 

 

柱や善逸達のトラブルは大変であったが、そちらをどうにか説得できても、その後の交渉を上手くやらないといけなくて本当に疲れましたよ。

その場をどうにかできても、根本的に大勢で来るようなことを減らしてもらわないといけないのですよね。

 

トラブルが現在進行で行われているのはここ、蝶屋敷なのですよ。蝶屋敷は病院であるため、隊士達がここで療養しているわけです。隊士達は怪我や体調を治すためにここで休息しています。

そんな時に柱や善逸達が突撃して大騒ぎしていたら困りますよね。しかも、柱は最も位の高い剣士達であり、隊士達にとっては雲の上のような存在ですよ。その人達が頻繁に蝶屋敷に出入りされて、ゆっくり休めるわけがないと思いませんか。

 

 

そういうわけで、私は緊張して顔を真っ青にしている隊士達に毎回謝りに行くようになった。一応私も柱が蝶屋敷に来る件について関係がありますからね。

頭を下げたり、お詫びの品を渡したりした。そして、柱には隊士達が緊張して休めないからもう少し控えてほしいと頼んだ。まあ、この注意は全く効果がなく、隊士達に何度も心の中で謝ったよ。

なんだか今回のことで頭を下げるのが上手くなってきたんじゃないかと思っているよ、正直。ちなみに、謝りに行く時はアオイさんも一緒に頭を下げてくれました。

 

ありがとうございます、本当に。

 

 

炭治郎達が蝶屋敷に慣れてからは皆さん手紙やお見舞いの品を頻繁に届けるようになりました。まあ、その配達は全部私がしていますし、お見舞いの品が食べ物の場合は私が一口食べることになっていますが(炭治郎ではなく、禰豆子の方が警戒していて)......。

...ま、まあ、炭治郎が大丈夫ならそれで良いんだよ。炭治郎も柱や善逸達の手紙を読んでも、特に発作みたいなものは起きていない。大丈夫かどうか確認したけど、平気だと答えていた。炭治郎達のように鋭くないが、それに嘘はないと思った。.....さりげなく、異常がないか確認するために脈を測ったから、大丈夫だろう(無理をしていたら体調が悪くなると思うので、それを確認すると言っていた。でも、嘘ではない)。

 

 

勝手に手紙を読むことは悪いと思ったけど、何かが原因で発作を起こし、距離が広がってしまう可能性があったので、心の中で謝りながら読み、大丈夫そうだと判断したものを渡していた(まあ、流石に私が何度も何度も注意点を言っていたから、手紙の内容に関しては全然大丈夫だった)。

ただ、あまりにその手紙の数が多かったため、次から次に来たら炭治郎が読むのが大変だから、もう少し時間が経ってから手紙を送ってほしいと言った。それに、手紙がたくさん来ても、それはそれで威圧みたいなものをかけられているような感じだからというようなことも言えば、手紙の数も制限してくれた。

 

 

その手紙の内容や炭治郎の様子から、私は次の段階の衝立や扉越しでの面会をすることに始めた。これは炭治郎と話し合って決めたことだ。まだ目を合わせて話せるかどうか難しいけど、声だけを聞いて話すことはできそうだと。それで、時間を設定して誰となら話すのかというのも考え、大丈夫かどうか確認しながら決まった。念のため、何かが起きた時に駆けつけられるように私は近くに待機していた。

まあ、今のところはそんなことがなくて順調だ。

 

ちなみに、そのお見舞いの品には村田さんや後藤さんからのものもある。この二人とはすぐに面会した。この二人はあの時の件で炭治郎達を傷つけていない人達であるため、柱や善逸達以上に何度も面会をしている(一、二回の手紙の反応で柱や善逸達よりも大丈夫だと判断したから)。

 

 

それ以外でも私にはやることがあった。療養している最中(もうこれを療養と言っていいのか怪しいが)、炭治郎達との問題の他に私はしのぶさんと珠世さんの手伝いをすることになった。......と言っても、私が怪我をしている期間中だけどね...。一応私も薬作りはできるので、鬼舞辻無惨に使う薬の開発を手伝うことになった。

どうやら前回よりももっと効力のある薬を作りたいそうで、人手を増やしたかったらしい。さらに、薬の種類も増やしたいということもあり、私に声をかけたらしい。

 

 

私の作った薬の中で何か良いものがないかと聞かれたが、私は良さそうなものが思いつかなくて、とりあえず今までに作った薬や毒を全部出して、その効果の説明をしたところ、珠世さんとしのぶさんが私の薬を手に取りながら何か話し合っていた。

ちなみに、その時の珠世さんとしのぶさんの顔はなんだか生き生きしていた。

 

いや、どうして?

 

 

私が兪史郎さんに珠世さん達はどうしたのかと聞くと、兪史郎さんは珠世様が喜んでくださるならとだけ言っていた。私は一体どうなるのか分からなかったが、とりあえず無惨に黙祷を捧げておいた。

 

 

だけど、ここまで恨まれている無惨が悪いんだよ....。

 

 

 

 

 

 

そして、怪我が完治して退院した後.......何故だか知らないけど、私は柱稽古に参加しています。

 

どうしてそうなっているのかって?

それは分からないよ。怪我が治って、しのぶさんに診てもらったんですよ。

その後、何故か柱稽古に行くことになっていたんだよ。もう驚いたよ。

しのぶさんに隊士じゃないのにどうしてかと聞いてみたら、機能回復訓練として柔軟や反射訓練はしているけど、療養している間に体力が落ちているし、柱から稽古をつけてもらうことは良い経験になるというようなことを言われ、柱稽古に参加することになった。

 

 

柱稽古には何故か獪岳も一緒だった。どうして獪岳も柱稽古に参加するのかは知らないが、柱稽古自体は隊士の能力の底上げであるため、参加することには確かに利点がある。しのぶさんが言った通り、私達にも良いことがあるため、断る理由がない。唯一の心配事は炭治郎と禰豆子のことなのだが、そこはアオイさん達がなんとかしてくれるだろう。

アオイさん達も慣れてきて、任せてくださいと言っていたし、炭治郎達も行ってもいいと言ってくれたので、少し不安が残るが行くことにした。

 

 

それで柱稽古に参加することにしたのだけど、私はすぐに蝶屋敷に戻りたくなった。

何故かというと、私の格好が想像以上に目立ったからだ。

鬼殺隊の柱稽古なのだから、参加するのは隊士だ。隊士は隊服を着ている。その中で私だけが着物と袴で、しかも色が緑色である。そのため、周りが黒色の隊服の中に緑色の着物と袴というのはかなり目立った。

でも、それは獪岳も同じなのではと言われそうだが、残念ながら獪岳は全く目立っていなかった。何故なら獪岳は鬼殺隊から離れても隊服のまま行動していたので、着物ではないのだ。なので、獪岳は私と違って浮いてしまうことはなかったが、おかげで私だけが居心地が凄く悪かった。

 

まあ、そもそも色の云々よりもあの学生服のような隊服の中に着物があれば、目立つのは当然なんだけどね。

 

 

予想外のことで目立ってしまい、私は蝶屋敷に戻りたいなと何度も考えたけど、これからの最終決戦のために少しでも強くなりたいので、周りの視線に耐えながら稽古をしていた。

 

 

 

最初の煉獄さんの呼吸法と全集中の呼吸・常中のことであったため、それができている私と獪岳はすぐに次へ行くことができた。

ただ、私は個人的にもう少し煉獄さんのところにいたかったな。煉獄さんの弟の千寿郎君の作る料理は美味しいし、煉獄さんのお父さんは隊士達を厳しく指導しているしね。家族の仲も悪くなく、和気藹々としていて、最初に見た時は感極まって泣きそうになったし、もうちょっとその姿を見たかったなと私は今でも思っている。

 

 

次の宇髄さんの訓練は初日に体力が前よりも低下していることや動きが遅くなっていることを実感したが、十日くらいで次に行く許可をもらえた。

獪岳は蝶屋敷でしばらく治療してもらうほどの怪我はしていないので、すぐにこの訓練も突破していた。

それにしても、獪岳は次の稽古に進むのが早いよね。その次の時透君の訓練も私が着いた後にはもう次に進む許可をもらっていたし。

 

 

その次の時透君の訓練では私は刀鍛冶の里で時透君に似たような稽古をつけてもらっていたので、あまり苦戦はしなかった。

ただ、その所為か周りにいる隊士より少し厳しくなっていなかったかなと思ったのだけど、それは気のせいだよね.....。...うん。きっと私の思い込みね。何か呟いたと思ったら、それから速くなったような気がしたのは....。

 

 

八つ当たりじゃないよね?義勇さんが頻繁に来すぎていた結果、面会をした数が柱の中で一番多くなったのは義勇さんになり、時透君がそれを不満そうにしていたのは知っていたよ。

けど、...まさかそれに嫉妬したんじゃないよね!面会を提案したのは私だし、それらを用意したのも私だけど、義勇さんに会うと決めたのは炭治郎だから!あと、タイミング的に義勇さんが先だったことが多いだけだから!......でも、少しそのバランスを取るようにしようかな...。

 

 

 

その次の甘露寺さんの訓練は原作と同じようにレオタードを着ての柔軟だった。レオタードは前世でも着たことがなかったから、着るのは少し恥ずかしかった。

ちなみに、獪岳は私がいた時にはもう既に突破していた。甘露寺さんが無表情だったけど、真面目にやってくれたと言っていた。私はその話を聞いて苦笑いをした。その時の様子が目に浮かんだからだ。

おそらく獪岳は死んだ目をしながらも、踊ったり体を柔らかくしたりと真剣に取り組んでいたのだろう。獪岳がさっさと突破しようとするのは察しがつくので、もうこれには納得すると同時に笑っちゃったよ。

 

 

....まあ、すぐに私も笑っていられる場合じゃないということに気づき、早くこの訓練を突破しようと思った。

私からしてパンケーキは蝶屋敷で(前世を含めて)久々に食べたので、またパンケーキを食べられるというのは嬉しいことだけど、それでも早く次の稽古に向かいたいという思いが強い。

 

私もレオタードを着るのが恥ずかしいというのもあるが、他にも理由がある。.....言い方が悪いけど、甘露寺さんの柔軟が少し怖いのである。別に厳しいというわけではない。ただ、甘露寺さんの柔軟は力技なのである。

踊るのはまだいいが、骨が折れることを覚悟するあのほぐしはできればされたくない。

蝶屋敷で柔軟をしたとはいえ、先に進んでもいいと言われるくらい体が柔らかくなっているのではないからだ。甘露寺さんの手で骨折になるなら自分で痛い思いをした方がいいと考え、無理やり体を倒したり足を上げたりした。その結果、甘露寺さんには凄いと褒められたけど、それを喜んだ方が良いのかと悩んでしまい、少し複雑な顔をしてしまった。

 

 

 

その次の伊黒さんの訓練もまた原作通りで、人が縄で括り付けられている障害物があった。刀鍛冶の里での伊黒さんの訓練も似たようなことをしていたのだが、その時の障害物は木や箱などの物だけで、それに人が括り付けられてはいなかった。

そのため、柱稽古の時の方が緊張した。人に当たってしまうのではないかと思うと、木刀を持つ手が震えた。障害物が人であるかどうかでこんなに緊張感が違うのだと実感した。

この訓練を突破するのに、まずはこの緊張感に慣れることから始め、その後は慣れたと判断されてから、前よりも複雑なものに挑戦することになった。

まあ、無事に次に進めたから良いけど。

 

 

ここも獪岳は先に突破したようで、伊黒さんの屋敷に獪岳の姿はなかった。次に進むのが早かったというのもあるだろうけど、甘露寺さんの柔軟を突破したのが私の想像以上に早かったのかもしれない...。

 

 

 

 

 

 

 

.........それで、現在いるのが風柱である不死川実弥さんの訓練であり、目の前で倒れているのがその不死川さんの稽古によって気絶した隊士達である。

 

 

不死川さんの稽古の内容は木刀での斬り合いなのだが、失神するまでが一区切りなのである。

突破するには不死川さんに一発当てないといけない。目の前の隊士達は不死川さんに斬りかかり、逆に返り討ちに遭った人達である。

 

原作で知っていたけど、想像以上に地獄図だった。屋敷の中では隊士があちこちに倒れていて、その隊士達は顔や体に大きなタンコブや痣ができていた。

それを見ながら、私もこれからああなるんだなと思った。

 

 

「....やっと来たか。今、風柱様は休憩中だ」

「あっ、獪岳」

 

 

私が気絶した隊士達を凝視していると、後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。その声を聞き、私は後ろを振り向いた。そこには獪岳が立っていた。近くには何やら物があり、それを閉まっている最中のようだ。

その様子を見て、私は獪岳が次の稽古に向かおうと準備しているのだということに気づいた。

それと、獪岳の言葉から不死川さんがこの場にいないことにも気がついた。

 

.....いや、目の前の地獄図を見たらそういうのが吹き飛んでしまって...。

 

 

そう心の中で言い訳をしながら、私は獪岳と話をすることにした。獪岳は荷物をまとめていたが、次の稽古でまた会えるかどうか分からないので、そのまま話をすることにした。

 

 

「だが、遅かったな。俺は風柱様に一発当てたから、次に行くように言われた」

「そうなんだね。......追いついたかなと思ったけど、追いつくまではまだまだなのね....。不死川さんの稽古が終わるとなると、残りは悲鳴嶼さんと義勇さんの稽古だけだから、それまでに追いつけるかな...」

「.......だといいな.....」

 

 

獪岳の話を聞き、私は少し残念に思いながら何気なくそう言った。だが、獪岳は私の言葉を聞き、何だか様子が少し可笑しくなった。

私は獪岳の様子に気づき、どうしたのだろうと疑問に思いながら先程の自分の言ったことを思い出して気づいた。

獪岳が何に反応したのかを。

 

私が先程の話の中に出てきた悲鳴嶼さんは岩柱の悲鳴嶼行冥のことである。

 

 

悲鳴嶼さんと獪岳には過去に関係があったのだ。

鬼殺隊に入る前の悲鳴嶼さんはある寺で子ども達と一緒に暮らしていた。その子どもの中の一人が獪岳だったのだ。そして、獪岳は鬼と遭遇し、自分が助かるために寺にいる8人の子供と悲鳴嶼行冥を食べさせるという約束を鬼と交わし、獪岳は鬼を寺に招き入れてしまった。

それにより、生き残ったのは悲鳴嶼さんと一番年下の少女のみであり、さらにその少女は事件のショックでまともに話せず、真相を上手く伝えることができなかった。

少女はあの人が皆殺したと言ったが、あの人は鬼のことだったのに、悲鳴嶼さんだと誤解され、悲鳴嶼さんは牢獄に閉じ込められることになった。この事件がきっかけで、裏切られたと思った悲鳴嶼さんは子ども嫌いになった。

 

 

獪岳が鬼が寺に訪れた後のことを知っているのか分からなかった。

でも、この反応からして、獪岳は悲鳴嶼さんが昔鬼に売った寺の人であることや鬼を招き入れてしまったことで起こってしまった惨劇を知っているのかもしれない。

 

 

私は獪岳のことを見た。獪岳は荷物をまとめる手を止め、何かを考えている様子だった。その顔は居心地が悪いというか、ばつが悪そうな顔をしていた。

 

まあ、そうだろうね。この過去のことを考えると、悲鳴嶼さんに顔を合わせるのは気まずいよね...。

 

 

「.......獪岳....。...獪岳が今、どう思っているのかは分からない。どうしようとしているのかも.....」

 

 

私は気づけば獪岳に声をかけていた。私が何か言っても変わらないかもしれない。というか、私が口を出すのは駄目な気がする。

....でも、なんとかしたいと思ってしまう。獪岳は炭治郎達と一緒にあれこれ教えてくれている、私にとって先生や師範というような立ち位置の人だ。お世話になっているし、頼りにもしている。だから、何かしたいと思ってしまう。

 

 

どうやら私は獪岳に絆されているみたいで、想像以上にお節介な性格らしい。

 

私は原作を読んでいるから獪岳と悲鳴嶼さんとの間に何が起きたのかを知っている。だけど、あの時のことを獪岳がどう思っているのか、何を考えてあんな行動をしたのかは知らない。

だからあまり踏み込まない方が良さそうだけど、もう口を出してしまった。この件は私が言っても何も変わらないと思うけど、私の思っていることを話そう。少し気持ちが軽くなる可能性があるし。

 

 

 

「でもね...。私は獪岳がそれを悪いことだと思っているのなら謝った方が良いよ。それを良いことだと思っているなら謝らなくてもいいけど」

「....は?」

「おそらくなんだけど.....獪岳は生き残りたいと思ったのでしょう。生き残りたくてやってしまった。......その時の行動を獪岳が後悔しているのかどうかはともかく、気にはしているんだよね。....忘れてはいないんだよね」

「...何処で知った」

「.......まあ、色々ね....。鬼になった時の話とか...そういう話を知っているからかな......」

 

 

私の言葉に獪岳は口をあんぐりさせていた。そんな驚いているみたいだけど、どれに驚いたのかな?

私が問い詰めてこないことなのか、獪岳の過去を知っていることなのか、謝らなくていいと言ったことなのか。

 

.....よく分からないけど、私はそのまま話し続けた。話を聞いているうちに獪岳は冷静になったらしく私に質問してきたが、私は言葉を濁しながらそれに答えた。

 

 

一応獪岳にも前世や原作という物語の本のことを話していたが、ここには隊士達がいるので、そのことをはっきり言えない。私の前世や原作のことは鬼殺隊の中で柱や善逸達という少数しか知らないようになっている。

こんなことが鬼殺隊全体に広がっても、混乱するだけだからね。大騒ぎになられると困るし、私もそのことで目立ちたくないし。だから、この情報をあまり言いたくない。

 

 

獪岳も私が言葉を濁したのがそのことだからだということに気づき、あまり深く聞かなかった。

 

ありがとう。

 

 

「獪岳の行動に関して、私は私で思うところがある。けど、生きたいと思うことは悪いことじゃないからね。それに、そこで死んだ方が良いとも思わない。やり方はどうであれ、生き残りたいという思いは間違いじゃないし、そこで死んでとも言いたくない。だから、私は攻める気はない。

私は獪岳がそのことで気にしていないなら、その行動に不満を感じても掘り返さないつもりだったし、普通に接しようとは思っていたけど、獪岳は自分のしたその行動のことを気にしているんだよね。私の勘だけど」

「............」

「別に私は謝るようにとは言わないよ。その時の行動について獪岳が良いことだと思っているなら、そう思っているのに謝ることは謝られる側にも失礼だからね。

 

謝るというのは自分の悪い行いを認め、それによって相手を傷つけたことへの後悔の念を示すことなのだから、そうではないとその謝罪は相手に失礼なこと。だから、私は謝れとは言わない。相手を不愉快にする謝罪をするくらいなら、そんな謝罪をしない方がいいからね。

......まあ、獪岳が悪いと思っている場合も自分の言葉で謝罪しないと。

強制ではなく、作られた言葉でもない方が誠意がこもっているからね。そうじゃなければ自分がどう思っていても、上っ面だけの言葉や用意された言葉では受け取ってくれない。その言葉を信じてくれない。

.....獪岳のしたことから、何を言っても信じてくれない可能性はあるけど、それでも獪岳の言葉で言った方がいいと思う。と言っても、どっちに転んだ場合でも獪岳が精神的に色々なことが起きていそうだけどね....。

...やったことは問題なのだけど、私は起きてしまったことを今更責める気もないよ。

 

 

.....ただ...まあ、何があっても当たって砕けろの精神だよ」

「うるせぇ」

 

 

私は獪岳に原作で読んで思ったことを、その事実を知って今の私が思ったことを正直に話した。獪岳は私の話を黙って聞いてくれた。

 

ただ、最後の言葉には反応したけどね。まあ、確かに砕けたら駄目だろうけど、それくらいの心意気ではないと謝ることはできないからね。かえって傷つくのが目に見えているし、許してもらえるかどうかというのは難しいことだと思う。

 

 

だって、獪岳がやったことってそう簡単に許せるようなものではないからね。やったことを否定しないと言ったけど、それとこれとは別だからね。

 

 

さっきも言ったけど、原作で獪岳がやったことを私は否定しない。あの時の獪岳はただ生きたかった。死にたくないと思ったから、獪岳は生き残るために悲鳴嶼さん達を鬼に売った。生き残ろうとすることは悪いことではないし、そう思うのは仕方がないと思う。ましてや、いきなり未知の生き物と出会い、その生き物に食べられそうになったのだから、死にたくないと思うのは当たり前。そして、死なないために何か行動しようとするのも当然だと思う。

だけど、問題はその手段なんだよね。

 

....他にも何か理由があったのかもしれないが、根本的なのは生きたいという思いからの行動だったのだと私は考えている。生きたいと思うのは悪いことではない。そう思ったことを否定してはいけない。謝れとも強制しない。謝ることが必ずしも良いことであるとは限らないから。謝罪をすることで事態が悪化するなんてこともある。

 

 

柱合会議の時は義勇さんの切腹を止めるために、その方向へ思考がいくように口を出した。しかし、それはその方向に持っていったのであって、私は強制していない。選択肢を与えたのだから、それを選んだのが義勇さんであり、義勇さんの意思で決めたことだ。

言い訳のように思えるが、あくまで私は別の選択肢を与えただけであって、それを強制したつもりなんてない。まあ、生きるという選択肢は私が強制的に決めたけどね...。

 

 

それよりも獪岳の様子を見ていると、悲鳴嶼さんのことでまだ何か揺れているような感じがした。これは私もどうしたらいいのか分からないから、こうすればいいなんて断定でできない。私が言えるのは提案くらいだ。

 

獪岳が明確にどうするのかをはっきり決めているのなら何も言わないつもりだったけど、今の獪岳の様子を見るとまだ迷いがあるみたい。かえって悩ます可能性があるし、お節介であることは間違いないが、それが少しでも獪岳の悩みを解決することができたら.....。せめて、悲鳴嶼さんのところに行く獪岳の気を少しでも軽くすることができるように....。

 

 

「だから、私は責めるつもりなんてないよ。けど、これだけは聞いていい?」

「......なんだ」

「獪岳はどうしたいの?かつてのことで悲鳴嶼さんに対して、獪岳はどうする気でいるの?」

 

 

私は獪岳に聞きたいことを尋ねることにした。獪岳はその質問に少し身構えていたが、私の質問には答える気ではいるらしく続きを言うように促してくる。

なので、私はそのまま直球に聞くことにした。その言葉を聞き、獪岳は私があまりに直球で聞いてきたことに驚いた様子だった。

 

 

「私は実際に獪岳がどうだったとか想像することしかできない。だから、私に獪岳のことで何か言うなんてできない。でも、これだけは言わせてほしい。私や周りの意見よりも重要なのは、獪岳がどうしたいかなんだと思うよ。

相手のことを考えて何もしない方がいいとか、避けておいた方がいいとかそんなことを考えていたとしても、獪岳が本当は何をしたいと思ったの?もしあれこれ考えることがなかったら、獪岳が何か行動するつもりだった?」

「.........」

「....どっちか分からないけど、これだけは言っておきたいから言うね。

獪岳。自分の気持ちは口に出さないと、行動で示さないと伝わらないことがあるんだよ。例えどんなに長い時間一緒にいても、自分から手を差し伸べないとそれを分かってもらえないことだってある。その人がどんなに大切に思っていたとしても、全てを分かっているわけではないから。

獪岳だって、相手の考えていることを全て分かっているのかと聞かれると、はっきり頷けないでしょう?

例え言わなくても気づいてほしいとか思っていたら申し訳ないけど、それは簡単なことではないの。分かるよね?

だから、互いに手を差し伸べる必要がある。そうではないと、その関係は一方通行になるからね。

 

許されたいと思っているのか、許されなくてもいいと思っているのか、謝りたいと思っているのか、許されないとしても謝罪するだけでいいと思っているのかは分からないけど、もしも何か心残りとか気にしていたことがあるならそれを解消しておいた方がいいよ。

まあ、解消してもまた別の心残りができる可能性はあるけど、それでも獪岳が心残りのない、後悔がないように行動した方がいいよ。後先のことを考えるのは大事だけど、時には自分の気持ちに正直になるのも大切だよ。

自分から行動してね。周りのことは後回しでいいから。

....ただ願望を言うなら、あまり被害とかが出ないくらいにしてほしいのだけどね...」

 

 

 

私は自分の考えていたこと、思っていたことを話し続けていた。というか、私はずっと自分の見解しか話していないと思う。けど、私の話せることはこれくらいなんだよね。炭治郎達はある程度私に色々話してくれたけど、獪岳は話したくなさそうだし。あまり無理に聞きたくないから、こうして情報が原作と獪岳の反応だけで話しているわけだし.....。

...と言っても、獪岳から話を聞いても所詮は私の想像なのだから、見当違いだってあるし、確実に当たるわけじゃない。

 

 

それに、私は元々獪岳と悲鳴嶼さんのどちらかが相談したり問題が起きたりするまではこの件に関わる気なんて一切なかった。

 

炭治郎と鬼殺隊の問題は互いに歩み寄りたいと思っていることを知っていた。だから、炭治郎と鬼殺隊の仲を取り持とうとした。だけど、悲鳴嶼さんと獪岳は違う。互いに互いをどう思っているのか分からない。 どうしたいのかを分かっていないのに、二人の仲を取り持とうとすればただの迷惑なことをしただけだし、逆に悪化する可能性だってある。

 

 

なので、私は悲鳴嶼さんと獪岳の問題に手を出そうとはしない。意志が決まっていないなら、無理に強制なんてさせないし、逃げることも一つの手段だから、私がどうこう言うのはおかしい。それは分かっている。 

でも、獪岳が私達のことで何か行動を止めてしまうのは駄目だと思う。

別の理由で止めておこうとするのは違う。私達の所為で獪岳の行動を止めてしまうのは駄目。.....まあ、これも一応獪岳が決めたことではあるから、私がとやかく言う必要はないだろうけどね。

 

つまり私の我儘ですね。知っています。というより、ほとんど私が好き勝手に言っているだけです。

そんなことは自分でも分かっていますよ。

 

 

獪岳は根が真面目であることは知っている。原作での善逸の言葉から、稽古に対する真剣さがある。善逸に冷たく当たったり、お金を盗んだりしたことはあったけど、獪岳は基本修行や仕事をきちんとする人であるから、あまり悪い人ではないと思う。

盗みとかは悪いことだろうけど、それが生きるために必要だった、そうしないと生きていけないという人もいる。

 

私は現代での...未来の価値観を持っているから、盗みという行為は悪いことだし、それをどんな理由があろうとやってほしくないと思う。だけど、それをこの時代に当てはめてしまうのは少し酷だ。今と現代では色々違いがありすぎる。

 

 

獪岳にだってプライドがあったのだろうけど、もしもあの時に自分の気持ちを誰かに伝えようとすれば、何か変わったのではないかと私は思うんだよね。

この世界で獪岳と一緒に行動していると、獪岳と話をしたりその様子を見たりしていると、その思いは強くなった。

というか、そもそも『鬼滅の刃』を読んでいて、コミュニケーションをしっかり取ってと思ったところが結構あるんだよね。おかげで、私はこの世界で何度きちんと話し合うようにと言ったことか....。

 

 

「.....お前、俺のしたことを知ってる癖によくそんなことを言えるな」

「だって、獪岳と悲鳴嶼さんなら私は一緒にいた時間の長い獪岳の方を優先するに決まっているでしょう」

「.............」

「獪岳?」

 

 

今まで無言だった獪岳が真剣な表情で私にそう聞いてきたので、私は獪岳の言葉にあっけらかんと答えた。すると、獪岳は何故かまた黙ってしまった。私が不思議に思って声をかけたが、獪岳は返事をしてくれなかった。

 

 

獪岳にそんなことを言われても、獪岳と悲鳴嶼さんなら獪岳の方が知っていると思っている。

だが、それなら悲鳴嶼さんの方が原作で過去とかその時の心情とか色々出ているから、獪岳より知っているのではないかと思われるでしょう?

 

 

....まあ、確かに獪岳は悲鳴嶼さんと比べたら原作での情報が少ない。でも、一緒にいた時間は獪岳の方が長い。原作で知っているとしても、その情報が全て合っているとは限らない。

 

前回から原作と流れが変わっているのは分かっているんだから、私は原作通りなのか全く別なのかというのを知るために警戒していた。

実際に情報とは全く違ったということがあるでしょう。情報は必要なものではあるが、全てを鵜呑みにしてはいけない。幾つもの情報を集めても、それはその情報が正確なのだという可能性を高めるのであって、絶対に正しいということにはならない。情報や噂よりも自分の目で見ないと分からないことだってあるし、その方が信頼ができる。

会って話すだけでその人が噂と違ったり知らない一面を知ったりすることだってあるから、情報や噂だけでは判断できないと私は思っている。

 

 

原作で知識として詳しく知っているのは多分悲鳴嶼さんの方だと思うが、実際に話した時間はそんなにない。獪岳は何度も話したり稽古をしたりした。原作で知っている悲鳴嶼さんよりも、雷の呼吸を教えてくれたり稽古をつけてくれたりする獪岳の方が私は信頼できると考えている。

 

原作で色々な人達を裏切ったとしても、私はこの世界にいる獪岳のことを信じたいと思っている。

 

 

 

「私達のことは気にしなくていいから、獪岳は自分のしたかったことをやってみて。どうなるのか分からなくても、一度やってみることに意味があると思うから」

「.........そうかよ」

 

 

私の言葉に獪岳はそれだけを言って屋敷から出ていった。いつの間にか荷物をまとめ終えていたようだ。獪岳は屋敷から出る時に私の顔を見なかった。

だが、獪岳とすれ違った時、一瞬だけ見えた獪岳の表情は心なしか和らいでいたし、少し口元が緩んだような気がした。

 

....少し気が楽になったのかな...。

 

 

「.....獪岳は大丈夫かな。でも、私は私でやることがあるし....頑張らないと!」

 

 

私は屋敷から出ていった獪岳の背中を見て心配しながらそう呟いた。だがこの後のことを考え、気持ちを切り替えることにして、私は最後の言葉で自分を鼓舞し、行動することにした。

 

 

とりあえず、目の前の隊士達の手当てからかな。こんな時のために、傷薬や塗り薬を大量に用意していたから、全員の手当てはできる。不死川さんが戻ってくるまでに終わらせておかないとね。

 

 

 

 

 

 

 

 

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