「聞きたいんだけど.....何で分かったの?アタシは貴女の前には一度も出ていないし、彼等にも会ったことがなかったのよ?」
「そうですね...。.....同じ前世の記憶を持つ貴女なら、ラノベのことを知っていますよね?」
「ラノベ?ライトノベルのことよね、小説の。....それが何なの?」
転生者であり、新上弦の伍となった彼女は私に質問してきた。私は刀に手を添えながらも刃を抜かず、その質問に答えることにした。私も聞きたいことがあるし、この話の流れならそれを聞き出すことも可能だと考え、私はそのまま話をすることにした。
この最終決戦の時に呑気に話すのかと言われそうだが、これは私の目的の一つだからね。
「転生ということが起きたら、ラノベと関連させてしまいませんか。私は転生してすぐにラノベのことを思い浮かびましたけど.....。
ラノベでよくあるテンプレの中に転生者が他にもいたという展開がありましたよね?転生したと気づいた時に、私はここが何処なのかとかどういう世界なのかとか状況を確認すると同時に、転生者が他にもいるのではないかと考えていました。
まあ、それを確認する方法なんてないので、それを調べようとは思いませんでしたけど....。
ですが、原作と変わっていることを知り、私は転生者が他にいるのかを調べようと思いました。私は原作が変わった原因に何の心当たりがありませんでしたから。その時、私はまだ何もしていませんでした。それなのに、原作と違うことが起きている。炭治郎達の行動が原作と変わったのは何かが既に起きたと考えましたよ。
私は明らかに原作とは関係のない場所にいたのに、炭治郎達と出会ったので、何者かの介入を疑いました。私という転生者がいるのですから、原作にはいない存在が他にいてもおかしくありませんし、可能性の一つとして挙げていました」
「...つまり、二年前にはアタシの存在に気づいていたのね」
「いえ、その時はまだ確証がありませんでした。ですが、炭治郎達から前回の話を聞けば聞くほど、その疑念が増していきました」
私は現実だと言い聞かせていたが、たまにラノベだとこういう展開とかありそうだと思うことがあった。それを今の状況に当てはめてみると、不思議と納得できたのだ。
とはいえ、本当に他の転生者がいるとは限らないので、本人に会うかその目撃情報があるかで判断しようと思っていた。
何故すぐに行動しなかったのかと言われるかもしれないが、あの時は本当に何がなんだかさっぱりだったので、慎重になっていた。大きく動くことも難しかったし。
「....お見事。アタシの存在に気づけるのは貴女くらいだと思っていたわ」
「貴女の存在に気づくには前回と今回のことだけでは辿り着けません。原作のことも知らなければいけませんからね。前回で貴女に何が起きたのかを知る術は貴女に直接聞くしかありませんが、貴女が関わっているのではないかと気づくことはできます。
そして、それは貴女も同じでしょう。貴女も私が転生者だと気づくことができた。
それでも、貴女が転生者なのか、それともこの世界の住人であり、周りに転生者のような原因がいたのかすら分かりませんでしたけど、貴女が私を排除しようとしたことから確信しました。
鬼殺隊は私を怪しむことがあっても、異物だからと私を排除しなかった。理由は全く知らない存在であるが、調べても普通の人間であったからです。二回目の鬼殺隊には前回にいなかった存在だと気づいても、私が転生者だというのは分かりません。だから、鬼殺隊は...この世界の住人は転生者だという結論にはいきませんでした。
だけど、貴女は同じ転生者なのですぐに分かりますよね」
彼女はまるで褒めるかのように手を叩いた。私はそれを無視して話を戻した。
なんだか楽しんでいるような感じがするな.....。...でも、それよりも話さないといけないことがある。
「貴女は私の存在を知った。だから、貴女は自分の存在に気づきそうな私を始末する気だった。童磨をわざわざ刀鍛冶の里に行かせ、私を殺そうとしたのですよね」
「あらあら。刀鍛冶の里に童磨も襲撃させたことにも気づいっちゃったのね」
「....何せ、刀鍛冶の里以外で鬼の動きが変わったことなんてありませんでしたからね。それによって、貴女が上弦の鬼になった時期も大体予想がつきました」
私は刀鍛冶の里の件について言及した。すると、彼女は何処か面白そうに私を見ていた。彼女の余裕な様子を見て、何か間違っていないかと一瞬思ったが、すぐに気を引き締めて話を続けた。
話をすると言いながら、彼女は本当のことを話してくれない気がする。それなら、こちらが問い詰める!
「貴女が上弦の鬼になったのはきっと遊廓で妓夫太郎と堕姫が倒されてからだよね。私は那田蜘蛛山や無限列車などでも姿を現していたのに、貴女は私に気づいていなかった。鬼舞辻無惨や十二鬼月などの上位の鬼なら目から情報を共有することは可能だったが、それができなかった。
....それは、その当時は情報を得る手段がなかった。上弦の鬼ではなかったということでしょう」
私は童磨の件で彼女の存在に気づいたと同時に、鬼舞辻側にいる可能性にも気づいた。そこから、敵対することは容易に想像できた。なので、戦うことになるのなら、彼女の情報を集めようとした。
ただ彼女に会ったことはないので、どんな特徴の鬼とかで調べることはできない。だが、童磨に頼めることからそれなりの地位がある鬼だと考え、何かしらの情報があるのではないかと思って調べてみた。
しかしそれらしき情報はなく、それなら新たな上弦の鬼になったのではないかと考えた。原作で新しい上弦の陸になる獪岳は私達と一緒に行動していて、人間のままだ。つまり上弦の陸が空席になり、そこに別の鬼が代わりになる可能性はあった。
それに、刀鍛冶の里の戦いが今回で最も変化したところだ。時期的にも遊廓の戦いの後に上弦の鬼になったとしたら当てはまる。
だが、それでも彼女の情報はあまりなかった。姿形すらなく、何も見つからなかった。
後に不死川さんと獪岳の情報から、前回から目立った動きをしなかったし、今回もまたあまり大きな行動をしていないということが分かった。
どうやら彼女は大きな行動をすることがないようだ。おかげで、彼女の存在は実際に会わないと私の空想で終わるくらいのものだった。
「貴女なら私を見つけたらすぐに何かした筈。だけど、遊廓の戦いまでずっと何もしてこなかったということは、それまで私の存在を知らなかったというだと考えました。
......それで、遊廓の戦いの後に私の存在を知り、すぐに刀鍛冶の里に童磨を行かせ、私を排除しようとした」
「フフッ。でも、それじゃあアタシは遊廓の戦いを見ることができないのだから、アタシは気づけないんじゃないの?」
「いえ、その時は上弦の鬼になっているのですから、他の上弦の鬼からその情報を聞くことができます。
特に、原作を知る貴女は現状を知りたくなるでしょう。私のことは炭治郎達のことを聞けば話に出てくるので、炭治郎達と一緒にいる私を貴女は転生者だと怪しむ筈。そして、転生者の疑いがある私を貴女は放置できなかったのではないでしょうか」
私の話に彼女は笑いながらそう言うが、私はそれを否定し、自分の予想を話した。
彼女はきっと驚いただろう。前回のことを知る彼女なら、おそらく前回で他の転生者がいるかどうか探した筈だ。それなのに、今回は前回にはいなかった他の転生者がいた。
そして、同時に彼女は焦ったのだろう。鬼殺隊から前回のことを聞けば、原作を知る私がそれを怪しむのは確実だ。邪魔をされる可能性が高く、そんな不安要素であった私を彼女が放置するとは思えない。
「....なんか前世で見た推理小説を思い出すわ。まるで、犯人を追い詰めようとしているみたい」
「犯人を追い詰めようとしていませんよ。ただ、そろそろ教えてほしいので、問い詰めてはいますけど」
「.....そう。なら、推理小説のようにこう言っておくわ。...証拠はあるの?」
「....証拠ですか...。.........そうですね。童磨が私にこんなことを言っていましたよ」
私の話を聞き、彼女は推理小説みたいだと言った。私は推理しているつもりがないので否定したが、彼女はそれを面白そうにしていて、その話が本当だという証拠があるのかと聞いてきた。私は証拠と聞き、それを考えながらも証拠になりそうな童磨の言葉について話した。
私にとって、この言葉は疑念を確信に変えるには充分だったからね。これが証拠になるかは分からないけど.....。
『大丈夫。俺が救ってあげるよ。頼まれたからというのもあるけど、俺は優しいからね』
「童磨は頼まれたと言っていました。でも、それでは誰に頼まれたのか?無惨なら童磨は頼まれたではなく、命令されたと言う筈。他の上弦はそもそも童磨に頼もうとしないと思います。たった一人を殺すだけなら、自分でやればいいのですから。事実、原作では上弦の鬼が助けを求めたり、助けに来たりすることはありませんでした」
私はそう言いながら原作で見た上弦の鬼の姿を思い浮かべた。
黒死牟はそんなことを頼まないだろうし、猗窩座は童磨を嫌っているから話しかけることすらしなさそうだし、半天狗と玉壺もあの性格から頼ろうと思わないだろう。そもそも鬼同士が助け合うところなんて滅多になかった。唯一堕姫が妓夫太郎に助けを求めたことはあったが、堕姫と妓夫太郎の場合は兄妹であり、二人で一つの鬼なのでそれは例外だ。
そもそも上弦の鬼って、直前になるまで自分が負けるというのを全然想像していないからね。多分、自分達が捕食する側であり、優位に立っているという考えからだと思う。まあ、上弦の鬼は百年以上も変わっていなかったのだから、異次元の強さを持っているのは確かである。なので、私を始末するくらい一人で楽勝なのでしょう。
でもそうなると、その鬼に挑んで勝てている鬼殺隊は一体何者なのかということになるのだが、それは一先ず置いておくとして....。
ごほん。それで、鬼舞辻無惨や上弦の鬼の可能性がないなら、他の鬼ではないかと思う人がいるかもしれないが、その可能性も低いと考えている。何故なら........。
「鬼はそもそも共食いする性質を持っているので群れないようになっています。
一部例外があるとしても、童磨が普通の鬼達の頼みを引き受けるとは思えません。無惨は確実に一方的な命令なので除外して、可能性として高いのはやはり上弦の鬼ですけど...私の知っている上弦は頼むなんてしないと思います。むしろ、童磨に頼まず自分の力でやるでしょう。私を始末するくらい容易いと思う筈。....それなら、誰が頼んだのでしょうか」
「......鳴女の可能性は考えなかったの?」
「いえ、鳴女も簡単に私を始末できると考える筈です。鳴女なら血鬼術で私を高い場所から落とせばいいのですから、わざわざ童磨に頼む必要はありません。
鳴女の血鬼術はそれだけ神出鬼没で厄介なのは貴女も知っているでしょう」
私が鬼の習性のことを言うと、彼女は鳴女の名前を出してきた。だが、私はそれも否定した。
鳴女も強さがどうとかではなく、血鬼術で不意をつけるので童磨に頼まず、自らの手でやった方が早い。実際に、あれはやられる側からしたら死を覚悟するものだと思う。だって、神出鬼没なのだから。
「そもそも無惨も上弦の鬼達も私を誰かに頼んでまで殺す動機がありません。先程も言った通り、鬼殺隊に怪しまれたことはありましたけど、それは前回の記憶があったからです。鬼側には記憶がないのですから、私が炭治郎達といても何も不思議に思いません。
それなのに、私を狙うということは原作や前回を知っている者ということになります。まあ、原作を知っているかはともかく、前回のことを知っているからこその行動なら、確実に鬼舞辻無惨や上弦の鬼ではありません。
私が個人的に調べた結果、前回の最終決戦で鬼舞辻無惨が亡くなった後、あの場所にいたというのが前回の記憶を持つ人達の共通点です。鬼舞辻無惨も上弦の鬼もその時は既にいないから、鬼側には前回の記憶がないのです」
「....それなら、アタシも除外されるんじゃないの。鬼はあの方が死んだら全て消えるの、忘れてない?」
「いえ。鬼舞辻無惨が倒されても、消えるまでに時間がかかる筈だと私は考えています。流石に一瞬で消えるわけではないと思いますから、条件に当てはまるのではないでしょうか?
特に、貴女は逃れ鬼。貴女は無惨に従っていないのだから、上弦の鬼のように鬼殺隊と戦うことなんてないし、呪いを解いているのなら無惨に命令されることも殺されることもありません。他の上弦の鬼は鬼殺隊に倒されたり、無惨に殺されたりするけど、貴女なら最終決戦の終わりまで生き残ると思います。...いや、生き残りましたよね。
まあ、条件を満たすためにはあの場所にいた関係者でないといけないのですけど、前回の記憶を持っていることから、どうやらその場にいたようですね」
私は鬼側が私を狙う理由がないことを指摘すると、彼女は別のことを出して反論したが、それも否定した。
これは私が原作を読んでいた時に思ったことだ。鬼舞辻無惨を倒したら、鬼は全部消えると言っていたけど、どうやって消えていくのだろうと。どうなるのだろうと思っていたが、原作では鬼舞辻無惨を倒し、鬼も兪史郎さん以外はいなくなりましたという感じで、そういったところは描写されていなかった。
でも、鬼が消えるまでに時間はかかると思ったのだよね。原作でも矢琶羽や鬼舞辻無惨が血鬼術を使ったりなどして抵抗し続けていたから、消えるまでなら血鬼術を使えるのではないかと考えた。それで、あの時の鬼殺隊に血鬼術がかかっていた可能性が出てきたのだ。
「.....最も貴女が今回もいるのかどうかと悩みましたけど、童磨の言葉からいる可能性が高まりましたよ。貴女が今回いることを、そして鬼舞辻側にいるのだということを」
「...へえ。それまではアタシの存在は半信半疑だったのね」
「そうですね。前回いたからといって、今回もいるとも限りませんでしたから」
私の言葉を聞き、彼女は目を細めてそう言い、私はそれに頷きながら言った。
それからしばらく、辺りを沈黙が支配した。私はじっと見ながら彼女の反応を伺っていた。そして、この沈黙を破ったのは彼女だった。
「......あーあ」
先程まで色々指摘していた彼女から諦めたような声を出した。どうやら話してくれる気になったようだ。
「確認するわ。貴女は前回では見かけなかったけど....本当に前回にはいなかったのよね?」
「そうですよ。前回では私はいませんでした」
「そうよね...。だって、アタシも前回で原作と変わっているところがないかちゃんと調べていたわ。で、転生者らしき人物は見つからなかった。.....だからこそ、油断したわね。貴女の存在は想定外だったわ」
彼女が確認するように聞いてきたので、私は正直に答えた。何せ、黙っておく必要はないからね。それを聞き、彼女はため息を吐き、私を睨みつけた。
もう惚ける気も推理ごっこを楽しむ気もないみたいだ。
「察しの通り、アタシは転生者よ。そして、前回の件の黒幕であり、貴女を殺そうとした元凶でもあるわ」
「....認めるのですね、貴女が関与していることを」
「ええ。もう驚いたわよ。前回でアタシ以外に転生者らしき人はいなかったのに、今回は貴女という転生者がいたのだから。逆行したのが原因かしら?前回では目覚めなかった前世の記憶が今回で思い出したのかもね」
「....それはないと思いますよ。逆行したのは二年前だと聞いております。ですが、私はそれよりも前に前世の記憶を思い出したので、逆行は関係ないと思いますよ」
「あら、そうなの?それじゃあ、アタシも何がなんだかさっぱりだわ。貴女の存在が原因で原作はメチャクチャになっちゃったし」
「いや、炭治郎達と出会ったのは偶然なのですけど。前回の記憶を思い出した炭治郎達が原作と違う行動を取り、私はたまたまそんな炭治郎達と出会って、一緒に行くことになったので。
.....まあ、原作よりも早く行動したことで色々変わりましたし、無限列車の件は私も深く関わりましたけど........」
彼女の言葉を私は色々な意味で否定した。
私は物心ついた時には前世の記憶を持っていたため、逆行が起きた二年前よりも前であり、逆行とは関係がないと考えた。私は前世の記憶を思い出した時期と逆行が起きた時期が重なれば関係がありそうだったが、そうではないので可能性は低いと思う。
それと、原作でメチャクチャにしたことは一部以外を否定した。炭治郎達の件は不可抗力であるため。まあ、私が無限列車の原作改変に関わっているのは確かなので、私は素直にそこを原作改変したことを認めた。
ただ私がいなくても、炭治郎達が前回の記憶を持っている時点でメチャクチャになっていると思いますよ。
「理由や原因が何せよ、貴女は原作に関わった。そして、原作もどんどんアタシの知っている話と変わっていった。このまま行けば原作のような展開にならなくなる。だから、少しでも元の形に戻すために貴女を消そうと思ったわ。けど、アタシが貴女の存在を知った時には既に遊廓の戦いが終わった後だった。
その後は...全て貴女が先程話した通りよ。その時のアタシは妓夫太郎と堕姫が倒されたことで欠けた上弦の陸になり、童磨から邪魔をしている人間の話を聞いた。その人間の中に原作にはいない子がいて、アタシは驚いたし、焦ったわ。
既に吉原遊廓編まで終わっていたため、時間はもう残り少なかった。アタシはすぐに貴女を消さないといけないと思い、貴女の話をした童磨に頼み、刀鍛冶の里に行って貴女を殺すようにしたのよ。刀鍛冶の里編は主要キャラが誰も亡くならずに上弦の鬼二体の頸を斬ったという展開だったから、あの二体では駄目だもの。このままだと貴女は生き残る。遊廓の戦いを実際に見ていないけど、あの戦いから生き残っているくらいなんだから、そう簡単には死なないと分かっていたわ。
でも、それなら他の...いや、もっと強い敵をぶつければいいと思ったのよ。童磨は上弦の弐だから、並大抵のことでやられる心配はない。しかも、女しか食べない童磨なら貴女に喰いつくと思ったわ。猗窩座だと女を殺すことはできないし、黒死牟は強い相手なら戦ってくれると思うけど、貴女がどれほどの強さか分からないし、刀鍛冶の里には無一郎がいるから、そっちを優先する可能性があったんだもの。それを考えると、あの二体には頼めなかったわ」
彼女の言葉は予想したものも納得したところもあったので、特に何も疑問を持たなかった。
まあ、彼女の人選....いや、鬼選?は間違いない。あの童磨だから、刀鍛冶の里に来たのだと思うし、原作でも情報を教えたら行きそうだった感じもするからね。そう考えると、童磨はかなり適任だったのだろう。
「本当はアタシがあの時に出ることができたら良かったわ。ただ、アタシはまだ上弦になったばかりの鬼で実戦経験も少ない。そんなアタシが刀鍛冶の里に来ても、貴女を殺す前にアタシが柱に殺されるだけ。だから、アタシは柱と戦ってもそう簡単に死ぬことがなく、貴女を確実に殺せそうな童磨に頼んだのに、貴女は生き延びたわ。
本当に貴女の存在は予想外なことしか起こさないわね。目を通して戦いの様子を見たけど、色々な手を使ってくるんだもの。獪岳のことも童磨の話で知っていたけど、何故か柱が一人増えているし」
「それは.....私もいきなり来て驚きましたよ。でも、甘露寺さんがいるなら伊黒さんも来ると思うのは予想できませんか?」
「...そう言われると、想像できるわ」
伊黒さんがついて来るかの話は甘露寺さんと一緒に来るとは思えないかと聞くと、彼女は同意して頷いた。
どうやら伊黒さんが甘露寺さんを心配して参加したと聞き、すぐにその様子が思い浮かんだらしい。
「.......刀鍛冶の里編が終わり、残るは柱稽古編と無限城編のみ。けど、柱稽古編は互いの準備期間のようなもの。鬼は無限城に全員集められ、鬼殺隊も柱稽古で柱の屋敷に集まっているわ。鬼殺隊も鬼もそれぞれ集まっているけど、一つだけ違うところがあるのは分かっているわよね?」
「....鬼殺隊は柱の屋敷に集まり幾つかの集団になっているが、鎹鴉で連絡を取り合うことでいざという時に助け合えるようになっている。一方で、鬼は無限城に集まっているが、鳴女や無惨の意思がないと外に出ることができない。なので、鬼が誰もいない状態で一人で戦うことになったら、貴女は増援のないまま多くの隊士達と戦うことになる。
.......これが違いですかね。こうなってしまうと、下手すれば柱全員と戦うことになるかもしれません。鬼は貴女以外いないのだから、誰も途中で鬼と戦わずにここへ来られます。どんなに遠くにいても足止めになる者がいないのなら、長い時間その場所にいればいるほど人は集まりますからね。
また、鬼舞辻無惨が命令すれば増援が来る可能性はありますが、あの鬼舞辻無惨がそのようなことをするとは思いませんので、望みは薄いです。
それに、鬼は集団になって無惨に歯向かおうとするのを防ぐために、共喰いをする習性がありますから、そもそも助け合うことができるかというと、私は難しいと思いますね」
上弦の伍の彼女の質問に私は鬼の習性と原作での状況を思い返しながら、頭に浮かんだことを正直に言った。
私も彼女も鬼の習性を知っているため、鬼同士が協力するというのは想像できない。那田蜘蛛山の件や二人で一つの鬼である妓夫太郎と堕姫は例外だが、大抵の鬼は互いに殺し合う。特に、強い鬼はその傾向が強い。だから、彼女のとれる手段は限られてしまった。
私もそういったところが複数人で連携をとって戦う鬼殺隊との違いであり、敗因のようなものだとも思っている。
そうやって自分一人でも大丈夫だと慢心したから、負けてしまうのですよ。
まあ、私はそれを容赦なく突く気ですし、ただでさえ強く、一人を相手に大勢の死人が出る上弦の鬼が連携をとったら鬼殺隊が負けるので、それは止めてほしいのですが....。
「その通りよ。鬼殺隊はあちこちで集まっているけど、鬼が襲ってきたとなればすぐに駆けつけることができる。
一方、鬼は無限城にいて、鳴女が神出鬼没に鬼を出したり無限城に落としたりすることはできるけど、あの方の命令がなければアタシの助けにはならない。そんな状況でアタシだけで襲うのは自殺行為としか言いようがないわ。アタシが貴女を殺そうとしても、応援を呼ばれてしまえばそれはできない。
鬼は皆無限城にいて、仮に来ても助けなんて期待できない。だから、アタシは柱稽古の最中に貴女を殺すのを諦め、この最終決戦で無限城に落ちてきた時にアタシのところへ呼び、確実に貴女を殺すことにした」
「......随分と私を警戒していますね。原作では上弦の鬼は上から三人が残っていたから、順番はそのままでした。そこに鳴女と獪岳を新たな上弦の鬼として加えていましたが、獪岳が鬼になっていないので、貴女がその代わりになっているということでしょう。
ただ、予想外のことはありましたよ。原作では鳴女が上弦の肆に、獪岳が上弦の陸になってましたので、貴女は上弦の陸として現れると思っていました。しかし、貴女は上弦の伍としてここに現れた。......それは上弦の伍になり得る力を持っているということですよね。
これは私が今、ここで思っていることなのですが....貴女は私を殺すために上弦の陸から上弦の伍に上がったのでしょうか?」
彼女は私の言葉に同意し、そう言い放った。その様子は切羽詰まっているように見えて、私は彼女のことが敵対関係でありながら心配になった。それと同時に、確認せざるを得なくなった。
と言っても、私にそんな余裕はないのだけどね。
もしもその鬼が転生者なら私と戦うことになるだろうとは予想していたけど、それは上弦の陸なのだと思っていた。だが、彼女は上弦の陸ではなく、上弦の伍だった。あの鬼舞辻無惨がすぐに上弦の陸を上弦の伍に繰り上げるとは思わなかったが、どうやら想像以上に彼女は強いようだ。
「だって、貴女は遊廓でも刀鍛冶の里でも死なず、童磨と戦っても生き残っているから、そりゃあ警戒するわよ。貴女を殺すためにはもっと強くなる必要があるわ。鬼は強いほどあの方の血が濃いのは知っているわよね?つまり、あの方の血が濃いほど強くなるのよ。
.....アタシは完結まで読んでいないけど、原作では上弦の伍が空席だった筈。だから、アタシはその上弦の伍になることにしたのよ。空席なら入れ替わりの血戦をする必要がないから、上の階級に入れ替わられる可能性が高くなるわ」
「なるほど。それで、貴女は刀鍛冶の里の襲撃の後、確実に上弦の陸よりも上の階級になることを目指したのですね」
「その通りよ。アタシが入れ替わりの血戦を申し込んでも、黒死牟達に勝てるわけがない。時間はあまりなかったし、黒死牟達よりも上になるというイメージも浮かばなかったから、既にいる場所になろうとは思わなかったわ。
それに、入れ替わりの血戦のことはよく知らないし、戦う相手がいない方を選べば負けることを考えなくていいもの。
本当なら鳴女が十二鬼月になる前に階級の昇進を頼んで、上弦の肆になりたかったんだけど、それはできなかった。それなら、鳴女に血戦を申し込むかとも考えたけど....鳴女が相手だとね......」
「あー...うん....。そうですね。鳴女はね.....強いかどうかとかそういう問題じゃなくて、血鬼術が厄介過ぎますからね...」
彼女は私の質問に笑みを浮かべながら答えた。彼女の話を聞き、私は納得すると同時に少し同情してしまったし、戸惑いも感じた。
彼女が想像以上に私を殺すことに力を入れているのだ。ここまで力を入れられると、なんだか動揺してしまうというか.....。....いや、それだけの覚悟を決めているのは分かるのだけどね...。
入れ替わりの血戦のことも分かりますし、彼女も色々考えて行動しているのね。
入れ替わりの血戦とは鬼舞辻無惨の許可制のもと、下の階級の鬼が上の階級の鬼に血戦を申し込みシステムのようなものだ。この血戦に関しては彼女同様に私も詳しく知らない。
確かに少しでも前より強くなるためには、飛び級するためによく分からない血戦をするよりも、無惨に認めてもらえて誰もいない階級になる方が確実だ。
それも少ない時間で強くなるとかして、無惨に認めてもらう必要がある。一気に上弦の壱のような無惨に近い階級になろうとするよりも一つ上を目指した方が成功する確率は高い。
一気に頂上に近い階級になるために、上弦の壱の黒死牟や上弦の参の猗窩座などの強い鬼と戦うことになっても、あの三人は強さもそうだが、百年以上も鬼として生きていたので、経験の差から勝つのは難しいだろう。
上弦の肆となった鳴女もおそらくかなりの古株だろう。無限城という空間を作れているのだから、上弦の鬼と同じくらい前に鬼になっている。ただでさえ血鬼術が神出鬼没で厄介過ぎるのに、経験の差からしても勝率は低い。
まあそれを知っているから、鳴女が上弦の肆になる前に彼女が上弦の肆になろうとしたみたいだけど、それは駄目だったらしいからね....。
それらのことから、上弦の壱から上弦の肆になることはできないというのが分かる。上弦の壱から上弦の肆までが無理となると、空いている上弦の伍になった方が良いと私でもそう考える。最も、私は上弦の伍が本当にいないのかという確証がなかったので、ここまで想像できなかった。
というか、彼女も私と同じように原作の最後を知ることができなかったんだね...。
「..........柱稽古の時は貴女達を強くする時間だった。だけど、それはアタシ達も同じことよ。このために、アタシは上弦の伍になった。このために、アタシは鳴女に頼んで貴女をここに連れてきた。......だから、悪く思わないでよ。ここで貴女を殺すことを」
そう言った彼女の目には殺気が迸っていた。威圧も凄い。その殺気と威圧を浴びて、私の心臓がバクバク音を立てている。
勝つためには少しでも強くなる...その気持ちは分かるけど、そうまでしないといけない相手が私だということには納得できない。どうしてそんなに私にこだわるのかもよく分かっていない。
...でも、これだけは言わせてほしい。
「私は.......貴女に殺されるためにここへ来たわけではありませんよ。貴女が上弦の伍になるのは想定外でしたが、私は貴女に勝つ気でいます」
「何を言ってるの?現に貴女はここに一人でいるじゃないのよ。アタシは上弦の伍よ。まだ鬼になってから長い年月が経っていないけど、少なくとも上から六番目の鬼なのは間違いないわ。そんなアタシに貴女が勝てるの?
上弦の鬼は普通複数人が戦って、漸く勝てる鬼なのよ。一人で上弦の鬼に勝てた例なんて、二つしかなかったじゃない。一つは今のアタシと同じ上弦の伍で、戦ったのは霞柱の時透無一郎。もう一つは成り立ての上弦の陸の獪岳で、戦ったのは善逸だよね。一つ目の例では上弦の伍に単体で勝てたと言っているけど、それは柱だからだもの。だけど、貴女は柱じゃない。もう一つの例では一般隊士である善逸が単体で勝ったけど、その鬼は上弦の陸よ。しかも、上弦になったばかりのね」
私は正直に答えた。その答えを彼女はお気に召さなかったようで、原作の知識を交えて私にそう言い放った。
この戦いが私にとって厳しい戦いであるのは間違いない。それは覚悟している。だけど......。
「確かに、上弦の鬼に単体で勝つことなんて難しい。特にそれを私にできるかと聞かれると、できないと思ってしまいますよ。貴女が上弦の陸から上弦の伍になったことから、相当強いのだということは察しています。....ですが、私はここで死ぬ気はありませんよ。何を言われても、私は決着を着けるためにここに来ることにしたのですから」
「全く...馬鹿なことを......」
「それと、貴女は獪岳が上弦になったばかりだから、一般隊士の善逸でも勝てたと言いたいそうですけど、貴女もまだ新人ですよね。さらに、この前まで上弦の陸だったのでしょう?」
私は彼女の言葉に同意しながらも殺される気がないとはっきり伝えた。
何回も倒せないとか無理とか言われたら、なんだか少しムッとするので、私は彼女を煽ることにした。そして、私の煽りに彼女もカチンときたようだ。
彼女は強く拳を握っていた。爪がさっきよりも伸びている。
本気でいくことは間違いなさそうだ。
「....それは貴女も同じよね?幾らここまで生き残ってきたからといっても、貴女は柱じゃないし、そもそも鬼殺隊の隊士でもない。調子に乗らないでくれる?」
「調子に乗っているつもりはありませんよ。ただ私は負ける気なんてないので、そう簡単に死にません。例え、これまでの戦いよりも厳しいものになるとしても、私にはまだやることがあるので、絶対に生き延びます」
最後の方はもう言い合いのような雰囲気になりながら、彼女は立ち上がり、私は刀を握り締めた。
この世界が原作と変わったのは私達転生者が原因だ。私達が干渉したことによって流れが変わり、ここまで変わってしまった。そのことを知っているのは
だから、私達のことは私達でけじめをつけないと。
私は転生して炭治郎達と出会う前、この世界に他の転生者がいるのかなと考えていた。もしいたら嬉しいなと思ったこともあった。
....だけど、その時の私は知らなかった。もう一人の転生者の存在が本当にいると、転生者同士で戦うことになるとも考えてもいなかった.....。
同じ転生者でありながら何処で道を違えてしまったのか...そんなの私も分からない。それでも、私達は戦わないといけない。決着を着けないといけない。まだまだ気になることはあるけど、今はそれよりもやらなければならないことがある。
さあ、始めよう。この転生者同士の戦いを。終止符を打つために...。
.........それがきっと貴女の望みなのだろうから。