笹の葉の少女は幸せを願う   作:日々草

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笹の葉の少女はけじめをつけたい 前編

 

 

 

「水の呼吸 肆ノ型 打ち潮」

 

 

私は刀を構えて相手に近づき、水の呼吸を使った。私が使っているのが華ノ舞いではなく、水の呼吸を使っている時点で察していると思うが、これは小手調べである。

 

まずはこれをしておかないと.....。こんな時だからこそ、感情のままに行動するわけにはいかないからね....。

 

 

「あらあら。威勢は良かったけど、大したことはなさそうね」

「先程の煽りの返しですか。大丈夫ですよ。これは本当に当てる気なんてないので、安心してください」

 

 

上弦の伍である彼女はそれを容易く避けた。

これは予想していた。上弦の伍を相手に適正である華ノ舞いではなく、別の呼吸を使って勝てるとは流石に思っていない。

でも、今は華ノ舞いをいきなり使わずに他の呼吸を使って戦わないといけない。

 

 

前みたいに自分の手札を見せないようにしていると思っていませんか?

.....まあ正解ですが、前と理由は少し違う。

童磨の時は華ノ舞いを使わないようにしていたが、それは童磨の分析能力が優れている上に、その童磨を倒せずに次へ持ち越してしまうという可能性があったからだ。それで、次に持ち越してしまう場合を考え、華ノ舞いを使わないようにしていたのだ。

...まあ、それは全然できなかったのだけどね.....。

 

 

いや、それよりもどうして華ノ舞いを使わなかったのかだよね....。

それは単純に相手の出方を見ているだけである。だって、彼女の情報はあまりないのだから。

 

 

今までは原作の情報で事前にどんな血鬼術を使うとかどんな戦いをするのかというのを知っていた。

だが、今回はそれができない。上弦の伍である彼女は転生者であり、原作には登場していないからその知識は使えない。

また、彼女は上弦の鬼になったばかりで現在の情報が何もない。

いや、おそらく彼女の存在に気づいているのが本当に私だけなんだと思う。

そのため、今までの上弦の鬼とは別の意味で難しい相手だということだ。他の上弦の鬼は原作や前回で情報があり、事前に対策ができたが、彼女相手にはそれが不可能だということだ。

 

 

唯一、情報となりそうなのは炭治郎達の記憶やその認識を変えたという血鬼術と思われるものだ。それを考えると、戦闘向きではない血鬼術かなと思う。

だが、その血鬼術だけで上弦の鬼になれるかと言われると、それは難しいのではないかとも思っている。彼女の使う血鬼術はおそらく記憶や認識する力を操る以外のこともできるのではないかと考えているのだ。

あるいは、記憶などを操れるのは副産物であり、本来の血鬼術とはまた別のものではないかとも考えている。

 

どちらなのか、それともどちらも外れなのかは分からないが、彼女の血鬼術に関してはこの場で情報を集める必要がある。それが分かるまで、相手に自分の手札を全て見せるわけにはいかない。

 

 

情報は力になる。この世界に来てから、そういった情報や知識がどれだけ重要なのかを実感した。この戦いは今までのようにはいかない。

彼女の動きを一瞬でも見過ごさないようによく見て、彼女と戦わないと......。

 

 

上弦の伍の彼女がどのくらい強いのかということも血鬼術についても知らないのだから、何の情報もなしに戦わないといけないということだ。彼女は上弦の伍になれる実力を持っている。普通に戦って勝てる相手ではない。

彼女の動きをしっかり見て、その動きを予測しないと、勝つことは難しいだろう。

 

 

私は彼女の間合いに入った後すぐに距離をとり、彼女の動きを見た。彼女がすぐ反撃してくるのではないかと思い、彼女から少し離れて様子を見ようとした。

しかし、彼女は何も攻撃せずに避けただけだった。私はそんな彼女の様子を怪訝に思ったが、気持ちを切り替えてもう一度仕掛けることにした。

 

 

「雷の呼吸 参ノ型 聚蚊成雷」

 

 

私は水の呼吸で駄目ならと思い、次は先程よりも速く動ける雷の呼吸を使ってみた。だが、彼女はこれも避けただけで何もしてこなかった。

 

 

....おかしい。まさか.....彼女の使う血鬼術は本当に戦闘向きではないのかもしれないのかな...。

.....いや、まだそう判断するのは早い。もう少し様子を見ておかないと....。.......雷の呼吸の速さでも普通に避けられていた...。.....となると、今度はさっきよりも威力を上げれば........。

 

 

「ヒノカミ神楽 灼骨炎陽」

 

 

私はヒノカミ神楽で先程よりも早く、力強く刀を振った。しかし、この攻撃も彼女に避けられてしまった。私は再び彼女から距離をとり、彼女を警戒した。

 

 

私は少し焦った。一番体に合っている華ノ舞いじゃなくても、使っているのは呼吸だ。これまでの鍛練で私は華ノ舞い以外の呼吸も特訓していた。

それなのに、擦ることもなく、その攻撃はあっさり避けられた。そのことに危機感を感じた。全く攻撃を当てることができないとなると、何の策も浮かばない。

 

前にも言ったけど、私の戦い方は力に力でぶつかるような戦い方ではない。状況をこちら側へ優位に持っていき、さらに有利になるように考えて戦う。それが私の戦い方だ。

 

 

だけど、そういう戦い方でも自分にそれなりの力が必要だ。どんなに力が強くても、相手の攻撃する動きが見えなければ、相手が何処にいるのかも次にどう動くかも分からない。

相手の動きを予測できても、動きが速くなければ逆に殺されてしまう。有利な状況にするためにはその最低限のことができなければならない。

 

 

なので、これは非常にまずいことなのだ。彼女に何度刀を振っても当たらないというのは有利な状況に持っていけず、そうしているうちにこっちが殺されてしまうということだ。

何せ、何度も呼吸を使って戦い続けていれば体力が無くなる。さらに、鬼は疲れることがないため、疲労していくのは私だけだ。

 

 

相手が転生者かもしれないと思って、つい一人で来ちゃったけど、上弦の伍と戦うのは流石に無謀だったのかもしれない....。

 

それに、華ノ舞いや反復動作の習得には成功したけど、他は駄目だ。一応、透き通る世界に少し入ることはできたが、できる確率が低いので、あまり頼らない方がいいと考えている。赫刀の方はできなかった。

つまり、痣と呼吸のみで戦うということになる。

上弦の壱などを相手にするわけではないから、無理というわけではないと思っていたが.........やはり奥の手として、透き通る世界と赫刀が使えないのは痛手だった。

 

 

私は一人で来たことを少し後悔したが、それでも勝つと決めてここに来たのだから、負けるわけにはいかない。

例え力の差があり過ぎだとしても、どんな些細なことでも見過ごさないようにしないと.....。

 

ゲームや漫画とかだったら、これは諦めるしかないだろうなと思うが、実際にそれが自分の身に起きてしまうとなると、そう簡単に諦めようとは思わない。

いや、思えない。だって自分の命がかかっているし、貴女に殺される気はないと言っておきながら、結局負けるのは流石に嫌だからね。

とにかく、諦めるつもりは一切ない。絶対にここを生き延びないと....。

 

 

私は気を引き締めて刀を握り直した。他の呼吸が駄目なら、もう華ノ舞いを使うしかない。

一番体に合っている華ノ舞いも当たるかどうかは分からないけど...何もしないよりはマシだ。やってみるしかない。

 

 

「華ノ舞い 雷ノ花 梔子一閃 六重」

 

 

私は華ノ舞いを使って彼女の懐に入り、角度を変えながら連続で刀を振ってみることにした。水の呼吸などの呼吸を使った時は全く当たらなくても、一番体に合っている華ノ舞いをそれも連続で使った方が当たる確率は高くなるだろう。

 

それに、下手な鉄砲も数撃てば当たるとも言うからね。

下手でも数多く試みれば紛れ当たりで成功することもあるだろうということで、例えどんなに実力不足であっても、連続で攻撃し続けていればどれかが当たるのではないかと思い、そう行動してみることにした。

 

 

しかし、この華ノ舞いも彼女に避けられてしまった。だが、その時の彼女の様子に何か違和感を感じた。何だか少し彼女の姿がブレたというかなんというか......。....それと、刀を振った時に刃先に何かが僅かに当たったような気もしたような.....。

 

 

そう思いながら、私は一瞬だけ持っている日輪刀の刃先に視線を動かした。そして、それを見た時に少し驚きそうになったが、彼女の動きに警戒しないといけないので、すぐに彼女の方へ視線を戻し、先程見たものについて考えた。

 

 

.....もしかして、彼女の血鬼術って......。

....やってみようかな...。まだ見せるのは早いかもしれないけど、ちょうど良いものであるし、少し試すことにもなりそうだ。

 

 

「華ノ舞い 岩ノ花 野蘭咲き」

 

 

私は灰色に変わった刀を下に向けて振った。その刃の模様が鈴蘭になっている刀を高速で回転させた状態で、前に出て力強く踏み込み、上半身を捻りながら円を描く。それにより床が抉れ、私は空中に飛んだ。

 

 

この型は岩の呼吸が主とした呼吸が頭の中に浮かんだので、岩の呼吸を中心に他の呼吸が色々混ざっている呼吸なのかなと思う。

しかも、岩の呼吸が威力が凄そうな感じだった所為なのか、この型は私の使う型の中で最も威力が高いのだ。ただし、回転を重ねて力強く踏み込むなどの勢いを利用して威力を強いものにしている所為か、刀を振った後に何故か体が逆方向に自然と引っ張られ、反動の強さによっては吹き飛ばされることもある。

 

今回は下に向けて刀を振ったので、私の体は上に引っ張られ、そのまま上に跳ぶことになった。

 

 

この型もまた彼女に当たらなかった。いや、地面に向けて刀を振っている地点で察している人はいると思うが、私は当てるつもりなんてなかった。

私は元から彼女に当てる気なんてなく、ただ私の想像が合っているかを確かめたくてやったのだ。上に跳ぶことになったのも今は好都合だ。

 

 

宙に浮かんだ状態で私は下を見た。そこから見えたものは私の予想した通りのものだった。

 

 

「それが貴女の血鬼術ですか。

....まあ正確にいうと、その現象は貴女の使う血鬼術の一種なのでしょうけど」

「.....驚いたわ。まさかこれに気づくなんて....」

 

 

それを見た私は確信し、彼女に声をかけた。彼女は私の視線の先を確認し、何を察したのかに気づいたらしい。

 

 

彼女の想像通り、それは目の前にある抉れた地面がそれを証明してくれた。地面に向けて振ったその斬撃が地面を割り、その亀裂は彼女の方へ行くが、途中で何回か曲がり、彼女の横を通り過ぎているように見えるのだろう。

だが、上からだと最初から彼女のいる方とは別の方向へ真っ直ぐに亀裂が走っている。そして、この現象を.....私は知っている。

 

 

「これは...光の屈折ですね。まさか大正時代で科学の勉強をすることになるとは思いませんでしたよ」

 

 

そう。彼女に攻撃が全く当たらなかった原因はこの光の屈折を利用とした血鬼術なのだろう。

 

光の屈折とは、斜めに置かれたガラスを通して、物を見ると実際に置かれている位置からズレて見える現象である。

彼女はこの現象を上手い具合に利用した血鬼術を持ち、その血鬼術を使って相手の視覚などの感覚を惑わせていたのだと考えている。

 

 

私の時もおそらく光の屈折を上手く使い、私が彼女をいると認識した場所と本来いる場所に誤差が出るように見せ、私の攻撃が空振りになるように仕向けたのだろう。しかも、私が動き回っても分からないように広範囲に仕掛けていたようだ。

だが、真上はその範囲外だったらしく、こうして見ることができた。

それに、それでもがむしゃらに攻撃すれば当たるので、その場から少し動いて避けていたのだろう。それで、ますます攻撃を当てるのが難しかったのだと思う。私も刀に二、三本の髪の毛や糸くずがついていなかったら、気づけなかった。

 

 

彼女は私が光の屈折のことを話している間、何やら焦っているような、困惑したような顔をしていた。私は光の屈折のことをバレたのが予想外だったのかなと思ったが、それとはまた違った様子だった。私の言葉ではなく、別のものに反応している。

 

私は首を傾げ、どうしたのかなと思いながら彼女が何か言うのを待った。しばらくして、彼女は私に質問してきた。

 

 

「.......ねえ。貴女は何者なの?」

「何者かと言われましても、私は鬼殺隊に入っていない転生者ですよ」

「....なら、転生特典なのかしら?さっきから貴女に血鬼術をかけているのに、貴女は全く何も反応がなく、ピンピンしているじゃない!」

「えっ?」

 

 

私は彼女の質問にまた首を傾げながら答えると、彼女はそんなことを呟いた。私のその言葉に驚き、その場で固まってしまった。

少し経って正気に戻ったけど......それよりも気になることがいっぱいあった。一度整理しておかないと.....。

 

 

光の屈折と似たような効果がある血鬼術、これは当たっている筈だ。光の屈折を利用していることを否定していないので、この血鬼術に関しては私の予想通りだと思う。問題は彼女が言ったことだ。

 

転生特典。彼女はそう言っていた。

 

 

転生特典とは、転生とかの際にチートのような凄い能力を貰うことだ。こういうのって、大体は神様から貰っていたと思う。

少なくとも、私が読んでいたライトノベルではほとんどがそうだった。

 

 

私は動揺した。転生特典のことなんて忘れていたから。

そもそもあまり縁がなかったというか、私は自身の死因も覚えていないし、亡くなった時に神様と会ったのかすら分からない。ただ高校三年生の受験後からの記憶がないから、多分そのくらいの時に亡くなっているのだと思うけど......。

 

.....それよりも、彼女が転生特典って言ったのだから、彼女はその転生特典を持っている可能性がある。そうなると....少し厄介なことになるかもしれない。彼女が血鬼術の他に転生特典を持っていたら、私の想像以上に激しい戦いになりそうだ。何をしてくるのか分からないけど、気を抜かずに警戒していないと......。

 

 

次の問題は彼女が私に血鬼術をかけていたということだ。これにはやはり彼女の血鬼術が精神的な攻撃をするものなのかと思うと同時にこう思ってしまう。

 

 

『いつから血鬼術をかけていたのかな。私は全然平気ですけど』と。

 

 

嫌味ではないのですよ。本当に私は血鬼術をかけられていたという自覚が一切なかったのです。いや、前回のあの時の善逸達の様子から血鬼術の影響だという自覚がなさそうだったから、血鬼術に気がつくことができなかったということかもしれないけど...。......そんなことをされているなんて、全く気づけなかった。体に特に異常はなかったし。

 

それと、さっきの言葉は口に出していない。火に油を注ぐ結果にしかならないからね。

 

 

あと、彼女とその血鬼術のことをもう少し考えてみよう。何も変化がないから大丈夫だし、本当に血鬼術がかかったのかと疑問に思うけど、彼女の困惑した様子から嘘ではなさそうだ。

また、これによって彼女の血鬼術が精神的な攻撃をするものであることは確定した。そして、おそらくそれは記憶や五感などをおかしくしたり、認識にズレを出したりすることができるのだと思う。

 

前回のあの時の件や今回の光の屈折から、この可能性が高いと私は考えている。もしかしたら違うのかもしれないが、今はこれを仮定にして行動していこう。違っていたらまた考え直せばいいから......。

 

 

まあ、彼女の血鬼術に関してはこのくらいにしよう。

少し考えておかないといけないのは私のこともだよね。血鬼術が効かなかったのは良いことではあるが、その原因が分かっていないと次も効かないとは限らない。だって、私が血鬼術のことに気づかなかったのは効かなかったからというのもあるが、それ以上に彼女は血鬼術を誰にも気づかれずにそれを行うことができるのだ。つまり、私は血鬼術に効いていたら危なかったということだ。

 

 

彼女は前回で誰にも気づかれず、行動できたうえに鬼殺隊へ血鬼術をかけることができた。そのことからも分かるが、彼女の血鬼術は非常に厄介すぎる。それはなんとなく分かっていたが、ここまでとは思わなかった。目の前にいたのに、その行動をしたことに気づけなかった。

 

目の前の敵があまりに想像以上に強敵すぎて、心が折れそうになるが、とにかくできることをしよう。また次の血鬼術が襲ってきてもそれをもう一度防げるかどうか分からない。何も見過ごさないようにしながら自分の身を守らないと。

 

 

....でも、彼女の使う血鬼術は本当に対策しづらいし、精神的な攻撃をするような血鬼術なのではないかとは思っても確証はないから、手探りでいかなければならなかった。

そんな私がどうやって彼女の血鬼術を防ぐというのだろう。...いや、何故か防げちゃっているけど......。

 

 

......そういえば、前にもこれと似たようなことがあった気が.....。

....確か、無限列車の時にも切符を使った血鬼術で眠ったは眠ったけど、すぐに解けていたし、その後も列車の上で魘夢と戦った時も何度も血鬼術をかけられていたけど、私は眠らずに平気だったし...。

.....これって、何か関係があるのかな?まさか、これが彼女の言う転生特典だったりして......。

....いや、まだ決まったわけではないし、私が転生特典を持っているのかどうかも微妙だ。確信がないのに、あると思い込む方が危険だ。

 

 

それに、もし転生特典だとしたら言いたいことがある。だって、それが転生特典なら鬼と遭遇することが前提だよね。血鬼術が効かないのって、鬼と戦うことが目的なのと言いたい。鬼と遭遇した場合を考えてとか、もしもの時の自衛とかの可能性もあるけど、それなら鬼と全く出会わないという転生特典の方が良い。

 

 

.....まあ、転生特典に関してはあまり深く考えない方が良いのかもしれない。彼女の転生特典のことは考える必要があるけど、私はそもそも転生特典があるか分からないからね。気になるけど、それは後で考えた方が良さそうだ。

 

今はこれを深く考えてしまうと、しばらくは戻って来れないような気がする....。戦いはまだ終わってないから...彼女の転生特典のことはこのまま探りつつ、気をつけて戦おう。

 

 

転生特典のことは少し不安だけど、何があってもこの戦いに勝たないといけない。何度も言っているが、そう言い聞かせておかないとね。自分に何度も言い聞かせて、それを忘れずに立ち上がれるように......。

 

 

「転生特典のことはまだよく分かりませんが、光の屈折のことは分かりましたので、今度はこちらから行きますよ」

「...フフッ。幾らこの仕掛けが分かったからと言っても、アタシに勝てるわけがないわよ。.....さて、楽しい理科の実験でもしましょうね」

「そうですね。受けて立ちます!」

 

 

私は気合いを入れるように大きな声を出した。ここからが本番なのだから、気を引き締めないといけないからね。

 

光の屈折を利用したことが分かっても、彼女に勝てるかどうかは分からないし、私の転生特典のことはともかく、彼女の転生特典のことは考えておかないとね。

彼女はまだ余裕があるみたいだし、ここで逃げるという選択肢はないのだから、受けて立たないと!

 

 

「華ノ舞い 花ノ束 桜花しぐれ」

 

 

私は光の屈折の対策のため、広範囲に移動しながら刀を振った。しかし、それが彼女に当たることはなかった。それでも、私は刀を振りながら彼女に近づき、彼女の行動を観察していて気がついた。

 

光の屈折の時とは動きが違うのだ。私が広範囲で動き回り、光の屈折のことを考えながらも刀を振るので、彼女もあちこち動き回り、跳び回ることで回避している。それに、私が嫌な予感や殺気を感じた方に刀を振ると、何かに当たったような音と感覚がした。これにより、彼女の血鬼術は認識を誤魔化すだけでなく、攻撃手段にも使えるというのが分かった。

 

 

ただ攻撃手段が分かったのは良かったが、一つ問題があった。それは彼女の血鬼術でどう攻撃しているのかというのが分からないのだ。

 

どういうことかというと、彼女が攻撃してきた血鬼術の形が見えていないのだ。音と感覚があるが、その血鬼術は見えていない。

まるで幽霊や怪奇現象のようだと思うが、私にはなんとなく分かった。光の屈折を利用していたのだから、おそらく他の現象も利用しているのだろう。

彼女の血鬼術の仮定から可能であり、何も見えなくなるものというと、私は全反射を利用しているのではと考えている。

 

全反射とは、光の入射角がある角度になると、全ての光が反射される現象のことである。全反射したものはその角度から動かない限り見ることはできない。

それなら見える位置に動いた方が良いのではとも思ったが、光の屈折の時はあちこち動いていて、真上から見るまで分からなかったし、今もどんなに動いてもそれが見えないとなると、そこは血鬼術で何かをしていると考えてもいい。先程見えた真上も既に対策されているだろう。

それに、何でもありな鬼の血鬼術なら何が起きてもおかしくない。

 

 

「華ノ舞い 水ノ花 水仙流舞」

 

 

私は華ノ舞いで彼女の血鬼術を受け流しつつ、刀を振っていた。彼女の見えない血鬼術は勘や殺気を感じ取ることで避けていくしかない。

 

でも、このままだと体力が危ないと思って、状況を変えるために彼女へ近づこうとするが、彼女の警戒心が強くてすぐに距離をとられる。そもそもこの型は攻撃や防御、スピードとかに特化しているとかではない。この型の特徴は主に回避や変幻自在な動きなのだ。

彼女の血鬼術を警戒してこの型を使ったのだが、どうやらその選択は正しかったようだ。

彼女の見えない血鬼術に対して、受け流せるこの型は相性が良い。

 

 

彼女の血鬼術を受け流しながら、私は彼女の行動を見た。

 

 

.....やっぱり彼女の使う血鬼術は遠距離での攻撃が得意なのだろう。そうでなければここまで距離を取ろうとはしないはずだ。頸を斬られるのを恐れて、私から離れているという可能性もなくはないけど、それは低いと考えている。

 

何故そんな風に考えたのかって?...それは........。

 

 

そこまで考えた時、私はとんでもなく嫌な予感がした。それと同時に、強い殺気も感じた。だが、振り向いてもそこには何もなかった。いや、見えなかった。

 

私はただ殺気の感じる方に向けて刀を振った。

 

 

「華ノ舞い 炎ノ花 紅梅うねり渦」

 

 

殺気の強さから私は防御に徹することにし、彼女の見えない血鬼術が止むまで刀を振り続けた。彼女の血鬼術は何度も私を襲ってきた。

 

このまま防ぎ続けるのは駄目ね。いつか押し切られる。それならその前にこちらが押し返さないと。

その手立ては.....一応それができそうな型はある。ただ、成功するかどうかは微妙だ。まだ実戦に使っていないから、押し返すことができる程度の勢いがあるかは不明だが、この状況をなんとかするためにもやってみないと。

 

 

「華ノ舞い 風ノ花 衝羽根旋風」

 

 

私は刀全体の色が緑色に変わった日輪刀を振った。刃の模様が衝羽根朝顔に変わった刀を高速で回転させて旋風を巻き起こした状態で、正面に渦巻くような円を描きながら広範囲を弾き飛ばし、突進していった。

ちなみに、刃の模様の衝羽根朝顔はペチュニアとも言うそうだ。

 

 

これも野蘭咲きの時と同様に風ノ花と緑色で分かると思うが、この型は風の呼吸を基本としている型である。風の呼吸は不死川さんの柱稽古で見ていたので、それを見て覚えたのである。

さらにこの型は霞の呼吸や獣の呼吸も合わさっている。風の呼吸とその派生で相性が良かったのか知らないが、その組み合わせでできた型は全身を強い風が包んでいるようなエフェクトであり、相手に近づいて弾き飛ばすような感じだ。

この型も義勇さんの稽古の時に完成させた型である。今回の場合にはとても便利な型だ。

 

 

この型を使った瞬間、刀に何か当たり、それを弾き飛ばしたような感覚がした。私はそれが血鬼術だと思い、その隙に彼女との距離を詰めた。

 

 

彼女がまた血鬼術を使う前に、懐に入ることができれば、状況は好転できる。最も血鬼術を弾いてもすぐに元に戻ったり、例え見えている彼女が偽者であったりしても大丈夫だ。

 

連続でやれば押し返せるでしょう。

 

 

「華ノ舞い 紅ノ葉 陽日紅葉」

 

 

私は連撃で彼女を追い詰めようとする。彼女は焦ったような顔をしながら腕を振った。刀はまた見えない何かに当たったが、それでも勢いをつけた状態で彼女との距離を一気に詰める。彼女は手を大きく振り上げた。

 

 

その時、

 

 

「お、丁度いいくらいの鬼がいるじゃねえか。こんな女の餓鬼の鬼なら俺でも殺れるぜ」

「えっ?」

「はっ?」

 

 

突然襖が開いてそんな声が聞こえた。私と彼女はそれに驚き、その声が聞こえた方を見た。襖を開けて部屋に入ってきたのはサイコロステーキ先輩だった。

 

 

いや、何で!?何でここにサイコロステーキ先輩が来ているの!

しかも、このタイミングで現れるなんて....。......他のところに行っても、サイコロステーキ先輩は殺されていそうなので、ここだったのはある意味救いなのかな?上弦の壱から肆のところに行ったら即殺されそうだし...。

....一方で、彼女の方は.........。

 

 

「えっ?えっ!えっ!?サイコロステーキ先輩!!?嘘!こんなところで会えるなんて!」

 

 

なんか上弦の伍である彼女は凄く嬉しそうにしている。サイコロステーキ先輩に丁度いいくらいの鬼とか俺でも殺れるとか言われている張本人なのに.....全く気にしていないな。

それより、サイコロステーキ先輩に会えて、少し喜んでいない?

 

 

先程まで緊迫した雰囲気だったので、この変化に少し戸惑う。というか、サイコロステーキ先輩って最終決戦に参加していたのですね。柱稽古で見かけなかったから、最終決戦に出ないのかと思っていたけど、しっかり参加しているのですね。

ただ単にタイミングが合わなかっただけなのかな?

 

 

「お前はひっこんでろ、俺は安全に出世したいんだよ。 出世すりゃあ上から支給される金も多くなるからな」

 

 

私と彼女がサイコロステーキ先輩の登場に驚いている間に、サイコロステーキ先輩はそんなことを言い出した。私は戦いの最中であろうが、頭を抱えたくなった。

 

 

いや、この人の出世欲は一体何なの!?それともお金がそんなに好きなの!?

失礼かもしれないけど、この最終決戦でもその目的がブレていないって凄いよ!

 

それと、サイコロステーキ先輩!確かに上弦の伍の頸を斬れたら出世すると思うけど、止めた方がいいですよ!彼女、サイコロステーキ先輩が勝てる相手とはとても思えませんよ!本当に失礼かもしれませんが!

 

 

「他の隊がいなくなっちまって、どうするかと思ってたが、まあいい。とりあえず俺はそこの鬼一匹を倒してここから出るぜ」

 

 

つまり、サイコロステーキ先輩は仲間の隊士達と逸れたのね。

まあ、この無限城は鳴女によって管理されていて、原作でも鳴女の血鬼術で炭治郎達を分断しようとしていたから、何人かの隊士が仲間の隊士達と離れることになっても可笑しくない。

 

ただ、なんでサイコロステーキ先輩がその逸れた隊士になって、私と彼女のところに来るのかな!

本当にどうして!!

 

 

もうサイコロステーキ先輩の言葉にツッコミしか思い浮かばなかった。でも、このままサイコロステーキ先輩が普通に彼女の方へ向かっても返り討ちに合うだけだよね。

とにかく止めないと....。

 

 

「すみませんが、相手は上弦の伍ですよ!いくら成り立ての上弦の鬼だからとはいえ、そんな...「うるせえ!邪魔するな!」ちょっと!」

 

 

私がサイコロステーキ先輩に止めようと声をかけたが、サイコロステーキ先輩は私の忠告を聞かずに彼女の方へ行ってしまった。

 

少しは人の言うことを聞いてくださいよ!全く!

 

 

私は心の中でそう叫びながらもサイコロステーキ先輩のことをほっとけなかったので、私はサイコロステーキ先輩を追いかけた。

 

サイコロステーキ先輩が彼女に近づいた瞬間、周りから殺気を感じた。私はそれが彼女の血鬼術であることを気づき、すぐにサイコロステーキ先輩の襟を掴んで引っ張り、呼吸を使いながら刀を振った。

何かに当たった感覚が刀から伝わったので、とりあえず血鬼術を防ぎ切ったと思いたい。

 

 

「何しやがる!」

「貴方こそ何をしているのですか!そんな目の前に出たら危ないですよ!血鬼術を警戒しないで不用心に近づいたら....」

「だから、うるせえぞ!そんなに手柄が欲しいなら...「私はそもそも鬼殺隊に入っていないので、手柄も何も関係ありませんし、興味すらないですよ!いい加減、話を聞いてください!」」

 

 

サイコロステーキ先輩が暴れ出し、私はサイコロステーキ先輩に忠告しようとしたが、サイコロステーキ先輩は全く聞く耳を持たず、自分と同じかと思っているようで、私は強く言い返した。

 

というか、そんなことを考えている場合じゃないでしょう!

 

 

それよりも、サイコロステーキ先輩にむやみに鬼へ近づかないようにと言わないと。

サイコロステーキ先輩がこの忠告を聞いてくれないと、また同じことをしそうだからね。他の場所に行けば突っ込んで瞬殺されるだろうから、なんとかここで鬼を見つけたら、見た目だけで判断して飛び出そうとするのを自重させないと.....。

 

私はそんなことを考えて口を開いたのだが........。

 

 

 

 

ブスッ

 

 

鈍い音は突然聞こえてきた。

 

本当に急で、ブスッという音がはっきり聞こえて......それが私の腹から聞こえてきて.....えっ。

 

私はおそるおそる自分の腹に視線を向けた。そんな筈はないと思いたかった。だって、腹に違和感があるだけで.......。

 

 

そんなことを考えて現実逃避していたが、現実はそう甘くなかった。私の視線には自分の腹を尖った氷が貫いていた。

 

いつの間に血鬼術が.....。....さっき防ぎ切ったと思ったのに.......。

 

 

そう思いながら貫いた氷が伸びてきた方向を見て、すぐにこの血鬼術が何処から来たか察した。

 

 

血鬼術の氷は斜め下から私を貫いている。つまり、この血鬼術は下からゆっくり私に近づき、私の隙をついて氷が勢いよく突出するようになっていたのだ。私は刀を振りながら周りを警戒していたが、サイコロステーキ先輩への説得に意識を向けていて、下への注意を怠った。刀を振っても、下なら射程圏内にはぎりぎり入らない。

 

やられたね....。

 

 

「........うゔっ」

 

 

ボタッ...

 

 

 

私が貫いた氷を確認しながらその思った瞬間、私の腹から鋭い痛みを感じた。それと同時に、腹から血が流れ、それは床に零れ落ち、畳に染み込んでいった。その様子を見ているうちに、足に力が入らなくなってきた。

しばらくすると、私の腹に刺さっていた氷は私から抜かれ、塞いでいたものがなくなった腹からさらに血が流れてきた。

私は立っていられなくなり、膝をついて倒れてしまった。

 

ああ、このままだとマズいなと思いながら呼吸で止血を試みるが、流石に貫かれた腹から流れる血を止めることができない。持っていた手拭いで圧迫しても駄目だ。それでも血は止まらない。

 

 

だが、私はこんな危険な状態でも頭の中は冷静だった。血が広がって畳に染み込む様を見ながら、彼女の血鬼術のことを考えた。

 

彼女の使ったあの血鬼術。あれは間違いなく氷だった。だが、それではあの認識阻害が何なのかという話になる。あれを血鬼術だと仮定して、私はあれこれ予測しながら行動していた。こっちが本当の血鬼術だとなると、その前提が崩れる。それなら考え方を変えて、彼女の話をもう一度思い返そう。

 

 

....血鬼術.....光の屈折...全反射......認識阻害と転生特典.....見えない血鬼術..........!?

 

 

そこで私はある推測に辿り着き、無理やり顔を上げて彼女のことを見た。そんな私の様子を見て、彼女は笑った。まるで正解だと言っているかのような、もう遅いよとでも言っているかのような顔をしていた。

 

 

「まさか....これって......」

「ヒッ!」

 

 

彼女の血鬼術によって腹を貫かれて倒れた私を見て、動けなかったサイコロステーキ先輩は私が顔を上げたことで我に返った様子で顔を真っ青にしたまま部屋から出ていった。私を置き去りにして.....。

 

...別にいいけどね。彼女は私だけに用があるみたいだし、私を連れて逃げることになるのは大変だろうから。

私を抱えた状態でサイコロステーキ先輩が逃げ切れるかどうかというと、それは無理だろうし。彼女、新米とはいえ上弦の伍だから。

 

 

.......でもできれば、もっと早くここから逃げてほしかったよ。それと、今度から鬼の瞳を確認してほしい。相手は上弦の鬼なのに、見た目だけで弱いと判断していたらすぐに死ぬからね。というか、気配とかであの鬼は強いと気づいてほしい。炭治郎達みたいな鋭い五感がなくても、鬼狩りをしているなら強い鬼の気配は分かるでしょう。

 

だから、原作で累にサイコロステーキにされるのですよ!柱稽古で強くなったからと言って、調子に乗らないでほしかったです!それから...もうここまで来たのだから、絶対に生き残ってくださいよ!!

 

 

「あらあら。置いていかれちゃったわね。それにしても...まさか彼も生きていたなんて.....。....まあ、彼のあのセリフを生で聞けたのは嬉しかったわ」

「言っておきますけど...私は助けてませんからね。禰豆子が山を丸ごと焼いてしまったので、あの人は今も生きているのです」

 

 

彼女は逃げていくサイコロステーキ先輩の背中を眺めた後、私の方に視線を向けた。その目は間違いなく救済したのかと聞いているかのようだった。だが、サイコロステーキ先輩の生存は私も予想外で驚いたし、私は何もやっていないので、そこは訂正した。

 

 

本当に私はサイコロステーキ先輩を救済していない。救済したのは禰豆子。頑張って山を燃やしたのも禰豆子だ。

....まあ、できれば山を燃やすのは頑張ってほしくなかったけど.....。

 

 

 

「そうなんだ....。...でも、それで貴女はピンチになってるじゃない。まあ、アタシはサイコロステーキ先輩のあのセリフが聞けて良かったわ」

「この怪我に関しては......私も悪いと思っていますよ。光の屈折や全反射とかが出てきて、勝手にそう思い込んでいたのだから、そこは私が悪いと思っているよ」

「フフッ。何?強がりなの?」

 

 

彼女の言葉に対して、私はそう言った。私の言葉を聞いて彼女は笑った。強がりのように聞こえるが、これは私の正直な気持ちだ。

 

まあ、強がりと言ったら強がりなのは確かなんだよね...。

....でも、私の思い込みがこの怪我を招いたのは事実だから、サイコロステーキ先輩の所為にしてはならない。

彼女の血鬼術のことがそれだと確定したわけではないのだから、完全にこうなると思って行動しちゃ駄目だった。今までの大きな戦いでは事前に知っていたし、その情報が間違いなく当たっているというのを確信していたため、対策が取りやすかった。

しかし、今回は確実に正しいという情報なんてなく、これまでの戦いと同じように考えてはいけなかった。

 

 

考えが甘かった.....。...でも、あの血鬼術を受けて、彼女の血鬼術やら転生特典やらの正体がうっすら見えてきたと思う.....。

 

 

「....貴女の血鬼術は認識を操作するだけではない。他にもあった。貴女には直接的に攻撃できる血鬼術も使えた。

だけど、その血鬼術は習得したばかりのものであり、まだ調整中という段階だったのでしょう。そうでなければ刀鍛冶の里の時に貴女が童磨に頼む必要はありませんからね。

あの氷を突出させるような血鬼術は上弦の鬼になってからできるようになったことで、今もまだ完全には使いこなしていない。

それが使えるなら、もっと前にこの血鬼術を使う機会があったはず。あのタイミングでこの血鬼術を使うということは、その氷の血鬼術を使うのには時間がかかるということ...かな.....」

 

 

私は自分を刺した血鬼術を含めて今までの彼女の行動からその予想を話した。

 

呼吸で止血をしていても、話していることで腹から血が流れてきている。だが、私は話すのを止めることができなかった。止血に集中したくても、彼女が血鬼術で攻撃してきたらそれどころではなくなる。彼女の血鬼術は全反射の所為か見えない。この怪我でその攻撃を避けられるかというと難しいだろう。

それなら、少しでも体を休めておいた方がいい。

 

 

「アタシはね。この世界に来て、鬼になったすぐの時にはもう血鬼術が使えたのよ。鬼が血鬼術を使えるようになるには人間を食べる必要があるし、人を食べない場合は禰豆子や兪史郎のように血鬼術が使えるまで時間がかかるはずなのよ。

それなのに、アタシは鬼になって間もない頃に既に血鬼術が使えていたわ。アタシはそれを疑問に思っていたけど、すぐにどういうことか分かったわ。アタシのこの血鬼術は転生特典なんだって。それが人の認識を変えたり、光の屈折や全反射のように視覚を惑わせたりすることができるあの血鬼術よ。

せっかくだから、見せてあげるわ」

 

 

彼女は自身の血鬼術、いや転生特典のことを話しながら手を横に出した。彼女が見せると言った瞬間、彼女の周りを囲むように水が出てきた。しかも、その水は彼女が腕を動かすと、身に纏う衣のような感じに思いのままに動かしていた。

 

 

それを見て、私は色々察した。光の屈折や全反射はあの水の衣でできたことだったのだろう。光の屈折や全反射はガラスや水中で可能だ。彼女はきっと自身を守る盾のように周りにあったため、彼女は戦っている最中にずっと光の屈折を起こすことができていたのだ。全反射に関しても攻撃をあの水に包むようにすれば見えなくなる。血鬼術の水も彼女の認識阻害の力があればそれを隠すことは可能だ。

あの氷の血鬼術も水の温度を操れるというのなら、水を氷に変えることは可能だ。

 

 

「.....腹を貫かれているし、貴女はもう助からないわね。でも、同じ転生者のよしみとして、特別に教えてあげる。アタシの血鬼術はこういう水を操るものよ。一度目の時は血鬼術を使えなかったけど、今回は血鬼術を使えるように頑張ったから、この通りに使えるのよ」

「....やっぱり、認識を操作できた方は転生特典であって、私の腹を刺して攻撃してきた方が血鬼術だったということ、だね。...そして、光の屈折や全反射はこの二つを合わせてできたもの....」

「ご明察。その通りよ」

 

 

血鬼術なら炭治郎達が分からない筈がない。あの時、私に言われるまで炭治郎達が血鬼術の所為だと考えなかったのは鬼が全員消えたからではない。おそらく血鬼術の匂いも音も気配も感じなかったから、血鬼術のことを考えていなかった。

前回のあの時の件があまりに衝撃だったのか、それとも思い出さないようにしていたのかは分からないが、あの時に起こったことは血鬼術ではなかったという判断を無意識にしていたのかもしれない。

 

 

前回のあの時に彼女が炭治郎達に使った力、それが転生特典だったんだ。だから、炭治郎達はあの時に起きたことを血鬼術と思わなかったし、外部からやられたことだとも思わなかった。私は少し勘違いをしていた。彼女の転生特典は血鬼術だったのだ。私は無意識に血鬼術とは別のものだと思っていた。彼女は元々持っていた転生特典に加え、その後に鬼になり、血鬼術を使えるようになったと。

 

 

だけど、それは間違いだった。一度目の時の彼女はずっと転生特典しか使えなかったのだ。私はここが漫画とかそういう風に考えないようにしようと思っていたが、転生系の小説の中には自分が特別というようなことが起きた。だから、私は彼女が転生特典を持った状態で血鬼術も使えていたと思い込んでいた。特に、転生特典という言葉を彼女から聞いてから、そう強く思うようになった。

 

それが今回の油断に繋がった。サイコロステーキ先輩を責める理由にならない。まさかここでまた会えるとは思ってもみなかったから....。

 

 

「貴女を貫いたのは何だと思う?て、もうそろそろ限界よね。貴女がこれを知ってるかどうか、アタシには分からないけど......御神渡りって知っている?」

 

 

彼女は私に質問しておきながら答えることはできないだろうと確信していた。実際に私はもう話せそうもない状況だったけどね。体の感覚がどんどん感じられなくなっていき、意識が遠のいていく。口もまともに動かせそうにないので、彼女の言う通り話すことはできないだろう。

でも、彼女の言ったことが何なのか聞き取れたし、内容も理解できた。よし、耳と脳は正常なようだ。

 

 

御神渡り......ああ、あれか。

 

御神渡りとは、確か湖の上に不思議と盛り上がった氷の山脈が発生する自然現象のことだったはず。湖が全面凍結し、昼と夜の温度変化により氷が収縮したり膨張したりして、湖面に収まらなくなった氷が表面を割って突出するために、山脈のように盛り上がると何かのテレビ番組でやっていた。

条件によっては御神渡りを見れない年があるとか言っていたような....。

...いや、あの神秘的な光景からよくこの血鬼術に辿り着きましたね。

私はそこに驚きますよ。

 

 

まあ、それはさておき彼女の血鬼術は水を操る。氷もあることから、おそらく彼女は血鬼術の水の温度を変え、収縮させたり膨張させたりして突出する氷の大きさを調整し、それが私の体に届くように操作していたのだろう。ご丁寧にその氷の先を鋭利にしているし.....。

...つまり、彼女は水の温度も自由に操作できるということみたい。

....でもね........。

 

 

私は手の平に視線を向けた。目の前が少しボヤけていたが、かろうじて赤色が見えた。きっと、止血しようと傷口を押さえていた手は真っ赤になっているのだろう。もうかなりの量の血が流れた。体も視線を動かすのがやっとで、もう痛みも何も感じなくなった。意識もぼんやりし始めてきた。

 

ああ、このままだと死んじゃうかもな...。

 

 

私は他人事のようにそう思った。けど、まだやらないといけないことがあると思い出し、なんとか必死に目を開けて呼吸でもう一度止血を試みる。

 

例え止血ができても、血が流れすぎているから貧血になるだろう。しかし、それでも何かしないといけないと.....。少しでも生きられる可能性にかけないと....。

 

 

私がそんな風に少しでも時間を延ばそうと色々していると.......突然体が浮いたような感覚がした。

 

 

「........へ.....え....?」

 

 

私はそれに驚いたが、体は全然動かず状況が全く分からなかった。私は最初大量出血による浮遊感のある眩暈なのかなと思ったが、彼女の声が聞こえて違うのだということに気づいた。

 

 

「このタイミングで鳴女が殺られたのね....。...運がないわ」

 

 

彼女のその言葉で私はこの状況が眩暈ではなく、鳴女や鬼舞辻無惨、鬼殺隊の行動によるものだということを察した。

 

 

原作では無限城で鳴女は兪史郎さんに脳を乗っ取られ、鬼舞辻無惨と兪史郎さんは鳴女の支配権を取り合う。だが、無惨は鳴女の支配権を奪われて無限城を乗っ取られるよりも鳴女を殺した方がいいと考え、鳴女の頭部を破壊してしまう。

それにより、無限城は崩壊して兪史郎さんが鳴女の細胞を操って鬼殺隊を全員無限城の外に出し、鬼舞辻無惨も一緒に出たことから戦いの舞台は地上へと移る。

 

 

そういう感じだったかな....。つまり、今は鳴女が無惨の手によって殺され、無限城が崩壊するので全員外に出されたというところかな。

......うん。確かに運が悪い。

 

 

どういうことかって?外に出されたということは、今の私は空中にいるのです。浮遊感どころではなく、実際に宙に浮いているのですよ!

つまり、しっかり着地しないと怪我をするということである。

 

だが、私は腹から血を出して体が上手く動かせない状況だ。そんな状態で着地することができるかというと、できるわけがないのですね。

というか、下に瓦礫やら何かがないと墜落死するかも....。

いや、それ以前に出血多量で亡くなるのが先なのかな.....。...さっきまでわざと明るく考えていたけど、あれは現実逃避だし....もう意識が持たないし.......。

 

 

 

..........ああ。でも.......

 

 

まだ死にたくない...。....こんなところで諦めたくない.....なあ.......。

 

 

 

 

 






華ノ舞い 

岩ノ花 野蘭咲き

刀を高速で回転させた状態で足を前に出し、力強く踏み込み、上半身を捻りながら円を描くように振る。
ただし、その反動がある。



風ノ花 衝羽根旋風

刀を高速で回転させて旋風を巻き起こし、その状態で正面に渦巻くような円を描きながら広範囲を弾き飛ばし、突進していく斬撃である。野蘭咲きと比べたら威力が小さいが、全体的に高い威力ではある。

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