笹の葉の少女は幸せを願う   作:日々草

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昨日が短かったということで、今回は連続で投稿しました。今回から新たな章が始まり、この章は少し前の章と違う感じになっています。
是非、楽しんでもらえるとありがたいです。




第三章 苦労人の少女は今日も考える
苦労人の少女は戻ってしまった


 

 

 

「......えっ?」

 

 

雲一つない青空が見える。その下で私は何故か寝転がっていた。私はそのことに呆然として声を上げ、飛び起きた。

突然別の場所に移動したことも驚いたが、それ以上に驚くことがあった。信じられないという気持ちが湧いてきた。

 

 

「....なっ...何、これ.....」

 

 

私は起き上がってすぐにあることに気づいた。それは服装が変わっていることだ。記憶の最後で私は蝶屋敷で入院している最中であったため、病衣を着ていたはずだった。しかし、今の私は桃色の着物に笹の葉の羽織を着ていた。

 

あれ?いつの間に私は着物に着替えていたの?と現実逃避してしまったが、それよりも見ないといけないことがある。私の中では最も驚いているし、信じたくないことだ。

 

 

.......いい加減、現実を見ないと...。

 

そう言い聞かせながら、私は笹の葉の羽織の方に視線を動かした。

 

 

どうして羽織の方を見るのかって?

笹の葉の羽織は母親の形見であり、母親が亡くなってからずっと私が着ているものだ。いきなり着替えていることに驚いても、笹の葉の羽織に何も違和感はないと思うだろう。

まあ、この笹の葉の羽織は何の変哲もない羽織だよ。母親の形見であるから、私はいつもこれを着ているのであって、特別な力なんてない。

 

 

だが、問題は羽織の大きさだ。

笹の葉の羽織は母親の着ていた物であるため、大人が着られる大きさだ。だから、幼い頃の私は袖や裾を折って着れるようにしていたが、それでもかなりぶかぶかだった。

でも、成長していくうちに笹の葉の羽織を折らずに着ることができるようになり、炭治郎達と出会った時には笹の葉の羽織に着られている感じではなくなっていた。

 

 

....ここまで話をすれば察する人がいるでしょうか。その通り、私が驚いているのは、ぴったりの大きさになっていたはずの笹の葉の羽織がまたぶかぶかの状態に戻っていることである。しかも、その羽織は袖や裾を折っていて、昔の私がしたような感じだった。

 

私は現状に察し、現実を見たくないなと思い、本日二度目の現実逃避をしたくなった。

羽織が大きくなったのは痩せたからだと思いたい。入院生活で凄く痩せてしまったのだと。

だけど、そうは言っていられず、それを確信に変えるために手を確認することにした。室内でないのは間違いないため、この近くにはおそらく鏡がないだろう。だが、自分の手なら簡単に見ることができる。

 

 

私はおそるおそる自分の掌を見た。その手は小さくなっていて、刀を握り続けたことでできた剣だこも無くなっていた。

 

 

私はもう確信するしかなかった。幼い頃の、両親が亡くなったばかりの時に戻っているのだと。

 

私は少しの間この状況を嘆いていたが、いつまでもそうしているわけにはいかないため、一度立ち上がることにした。先程言っていたが、ここは空が見えることから室内ではなく、外なのだ。いつまでも地べたに座り込んでいるのは駄目なのだ。

 

 

立ち上がれば着物に砂がついていたので、私はその砂をはたき落とした。着物が綺麗になったのを確認した後、ここが何処なのか知ろうと思って辺りを見渡し、また驚愕した。

 

どうしてなのかって?

それはここが身に覚えのある場所だからだ。

 

 

周りには草木が生い茂っていて、その中にある家...いや、家だったものがある。だが、私にとって見覚えがありすぎるうえに、懐かしさを感じるところであり、身近に感じた場所でもあった。

どうやら私がいるこの場所は、私が炭治郎達と一緒に行く前まで暮らした私の家であった。前にも同じようなことが起きたが、これはあの時とは全く違う。

だって......。

 

 

「おかしい....。...私の家が鬼に壊されたのは二年前だった。その時の私は笹の葉の羽織の袖や裾を折らなくてもいいくらいの身長だった。だけど、今の私の姿はどう考えてもそれよりも幼い。

それに、周りに炭治郎も禰豆子もいないみたいだし.....」

 

 

私は炭治郎と禰豆子の姿がないかと周りを見渡しながら探していると、別のことにも気がつき、思わず叫んでしまった。

何せ、それも違和感のあることだったから。

 

 

「藤の花の木もない!」

 

 

私の家の近くに植えていたはずの藤の花の木が何処にもないのだ。私はそのことに困惑した。

 

 

藤の花の木は私が鬼対策として両親に頼んで植えてもらったものだ。家にいた頃は毎日世話をしていて、それを何年も行っていたために立派な木となっていた。鬼の襲撃の時も傷一つないくらいに。

私が炭治郎達と一緒に行ってからはここに戻ってくることはなかったが、あの立派な藤の花の木が枯れるなんて思えない。水やりや手入れも村の人に頼んだし。いや、例え枯れたとしても、何も残っていないのはおかしい。

辺りを見ても特に何もなかったから、土砂崩れなどの自然災害が起こったのでもないみたいだし。

 

 

両親の墓を探してみたら、そちらはすぐに見つかった。家の隣にあった。だが、その場所に関しても疑問が残る。

 

私が両親の墓を作った場所は藤の木の下であって、家から少し離れた場所のはずなのだから。藤の花の木が消えただけでなく、その近くにあった両親の墓は移動している。

明らか不自然だ。

 

 

「.....なんだか色々なことが起きすぎていて、頭が痛くなりそう...」

 

 

私は頭を抱えながらそう呟いた。

いきなり自分が小さくなって、自分の家があった場所に寝転んでいて、それも自分の記憶と違うものであったというようなことが起きたら、誰もが困惑するだろう。もう訳が分からない.....。

 

 

いや、本当にこれはどういう状況なの?

原作が終わって、鬼舞辻無惨も倒し、珠世さん達も人間に戻ったということで鬼は完全にいなくなったはずである。

だから、血鬼術をかけられたというのは流石にない。炭治郎達の件はまだ鬼が完全に消えていない時だったからその可能性があったが、私の場合はその数ヶ月経った後のことだ。このことから、今起きていることは血鬼術に関係ないのだと考えている。それなら、何が原因でこういうことになっているのか....。

 

.....だが、これは何度考えても答えが出ない。情報も少ないからね...。

 

 

私はこれから先のことを考えると、途方に暮れそうになるが、それよりも情報を集めて、現状を知っていくことが大事だと思い、気持ちを切り替えることにした。

 

 

 

....さて、現状を知るために行動しようということになったが、何からしていこうか......。

 

とりあえず、私の身に起きていることや分かっていることをまとめてみることにした。

まず....体が小さくなっているし、時間は.....おそらく戻っていると仮定しよう。そして、この時間ならまだ壊されていなかった家が何故か破壊された状態であり、その時と小さくなった体から考えられる年齢が全く噛み合わないうえに、植えていた藤の花がなくなっているということかな。

 

 

他も一応調べてみるけど、あまり期待できないかもしれない...。分かってはいたが、これだけでは情報が少なすぎる.....。

 

 

そうなると、次はその周りの情報が必要だよね。例えばこの山の近くにある町とか、炭治郎達がどうしているのかとかそういうのを知りたいかな。

となると、ここから動いた方が良さそうだね。どっちにしろ、ここで暮らすことは難しそうだから、私は別に構わないけどね。

 

 

ここから一番近いのは炭治郎の家があるところで、その次が鱗滝さんのところかな。どちらにするかというと...私は炭治郎の方に行こうと思っている。

 

何故かというと、炭治郎の方に行った方が現状を理解しやすいと思ったからだ。

炭治郎のところは原作の始まりの場所だからね。出発点だから、原作が始まっているかどうか分かるのだ。

 

 

例えば、その場所で炭治郎達は両親と一緒に暮らしていたら、私は幼い頃の私であるということが確定される。

父親を亡くなっていて他の家族が生きていたら、もうすぐでその家族は鬼舞辻無惨に殺され、原作が始まる二年前に戻ったのだということが分かる。

そして、家に誰もいない状態であり、家の近くで埋葬し終えた墓を見つけたら、もう既に原作が始まっている頃なのか、それとも時間は戻っておらず、ただ私が小さくなっているのかというところに絞ることができる。

 

まあ、もっと考えれば他にも幾つかの例が思い浮かびそうだが、それよりも現状を知るのを優先させた方が良さそう。

 

 

それに、私が炭治郎達の方へ向かってそれとなく接触し、私同様に記憶があるかどうかを確認しないとね。この現象が起きたのは私だけとは限らないし。

炭治郎達の記憶がなかった場合でも、遠目で見れば大体の状況は把握できるだろう。どっちにしろ、行った方が良い。

 

その後、鱗滝さんの家に向かえばいいからね。鱗滝さんのところに行って、そこで鱗滝さんに弟子がいるかどうか、記憶があるかどうかを確認する。その弟子によってはどのくらいの時期なのか分かるからね。

それと、記憶がなかった場合でもそこで修行しようと考えている。今の私は呼吸を覚える前に戻されているわけだし、狭霧山は修行する環境として良いと私は思っているから。

鬼がいたら鬼殺隊に入って現状をもっと詳しく調べられるし、鬼がいなくても体を鍛えることに損はないからね。いざという時に対応できるようになれるし。

 

 

とにかく、一番優先するのは現状の把握で、その次に炭治郎達への記憶の有無、この世界に鬼がいるかどうかの確認、もしものために体を鍛えること、かな。

 

大体これぐらいだと思う。今のところ、私がした方が良さそうなことって。

それと、記憶があるかどうかは分からないし、あると断定して接触したら不審に思われるから、あまり期待せずに他人として出会うことを覚悟しておかないと。

 

 

そう言い聞かせながら、私は近くの町に寄ってから炭治郎の家に向かうことにした。

 

町に行っても、今の私の現状くらいは知ることができそうだからね。炭治郎達の方より、ここで今の私の現状について聞いてから、その後で炭治郎の家に行こう。

場所は分かる。炭治郎の家の場所は入院している最中に聞いていたから、辿り着けるはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「....それで、貴女もどうしてここにいるのかな?」

「いや、それはこっちも聞きたいわよ!」

 

 

現在、私は山の麓まで来ていて、誰もいない場所で座るのにちょうど良さそうな丸太を見つけ、そこに腰掛けた体勢で隣にいる人物と話していた。

 

 

 

あの山から降りて、私は近くの町で情報を集めた。その町は私が出た時と何も変わらなくて、なんだか泣きそうになったが、それを堪えて話しかけた。

そこから得られた情報によると、どうやら今は両親に亡くなったばかりの頃らしい。

誰かに話しかける度に山から降りないのかと聞かれることが多く、まだ両親が亡くなってから間もない時期なのだと分かった。前も山から降りて来ないかと言われることがあり、その時には大丈夫ですと言い続け、だんだんそう言われることがなくなっていった。

だから、両親がなくなってからまだそこまで時間が経っていないのだというのはすぐに察した。

 

 

そのことが分かった後、私は炭治郎の家へ向かった。

もし時間が戻っているなら、この時の炭治郎はまだ雲取山にいる。これを確認できたら決定的だ。

 

 

そう考えてきたのだが、雲取山でまさかの人物と出会った。

 

 

「まさか、貴女がいるとは思わなかったよ。色々聞きたいことがあるけど、現状について何か知らない?

 

前のことでもいいから教えてほしいの、七海」

 

 

私はそう言って隣にいる人間、七海に声をかけた。

 

だが、この七海は前の時とは違う。前の時の七海は鬼であったが、今の七海は人間だ。爪は長くないし、牙も生えていない。目の方も上弦の伍という文字が消え、青緑色(その中でも少し青っぽい色)の瞳になっていた。

そして、背丈は今の私と同じくらいで、背中まである水色の髪が日光を浴びて輝いていた。

日光を浴びても大丈夫だから、もう鬼ではないということは間違いない。

 

 

私の質問に七海はいじけていたが、私の方をちゃんと見ている。

 

 

「アタシも何も知らないわよ。貴女に頸を斬られて終わったと思ったら、何故かここにいたのよ。しかも、人間に戻っていて、もう訳が分からないから、情報を集めようとしてここに来て、そしたら貴女と出会ったというわけよ」

「....あの件から戻った時はどうだったの?」

「.......アタシもよく分からないわ。気がついたらそこにいたんだから」

 

 

七海の話を聞いて、私はその経験からどうかとも尋ねてみたが、七海は首を横に振った。その反応から、分からないというのは本当らしい。

 

つまり、やり直しに七海は全く関係がないということね。...だけど、それなら何が原因なの?血鬼術は関係がないのは間違いないし....。

 

 

「七海も私も気づいたら時間が巻き戻ったということは分かったよ。...それで、七海にもう一つ聞きたいことがあるのだけど.....」

「....言いたいことは分かるわ。あれはなかったわよ。今回が初めてだと断言できるわ...」

「そうなんだ.....。じゃあ、どうしてあんなことになっているのだろう...」

「ホントにそれよ!」

 

 

知りたかったやり直しのことは一度まとめて話を終わらせ、私はもう一つ聞きたかったことについて言及した。七海もそのことについて話したかったらしく、私の言葉に食い気味に乗ってきた。

まあ、気持ちは分かる。

 

私と七海が叫びたくなるほどに言いたいことがある。

それは......。

 

 

「「なんで炭治郎と禰豆子の性別が変わっているの(よ)!!」」

 

 

そう、これである。私と七海が出会えたのはこの世界の炭治郎と禰豆子を見つけたことがきっかけなのだ。

 

 

私が竈門家の様子を調べにその近くの村を訪れた時、たまたま炭治郎と禰豆子が山から炭を売りに降りてきたところだったのだ。それで、私はこっそり二人を追いかけて確認したのだけど、私はその姿に驚いた。

 

何せ炭治郎が女の子に、禰豆子が男の子になっていたのだから。これが二次創作にある性転換というものなのかと現実逃避して、頭の中が真っ白になってしまったよ。

 

 

 

『『はあ!?....えっ?』』

 

 

 

まあ。そのおかげでうっかり出てしまった声によって、互いに気づけたのだけどね。

偶然とはいえ、七海も同じタイミングで炭治郎と禰豆子を見つけるなんてね...。.....二人の性転換への衝撃から固まり、正気に戻るところまでぴったりとはと思うけど....そこは置いておこう。

 

 

その後、炭治郎と禰豆子の性転換や七海がここにいることへの混乱で頭の中がぐちゃぐちゃになったけど、とりあえず一旦落ち着くことができた。

そういうことがあり、二人で話し合いたいので、この場所まで来たのだ。この場所は人目がつかないようだから、思う存分話せる。

 

 

「どうして炭治郎と禰豆子が性転換する事態になるの!」

「それはアタシも知りたいわ!前の時に原作キャラのことを調べたけど、その時は誰も性転換なんてしていなかったわよ!彩花こそ、何か心当たりがないの?」

「私もないから!一体何があって、炭治郎と禰豆子の性別が変わることになるのか考えているけど、それらしいものも出来事もないの!」

「それはアタシもよ!もう何なのよ!」

 

 

私が頭を抱えながらそう言うと、七海は頭がいっぱいになっているらしく、私にもそう聞いてきた。それで、私は七海の言葉に言い返しというやり取りを繰り返し、私と七海は互いが納得するまで言い合い続けた。

 

 

最後はもう互いに自分の思っていることを叫んでいた。というか、色々なことが起こりすぎて、互いに困惑していたし、八つ当たりのような感じだったので、ストレス発散の意味もあるだろう。

 

 

「「はあはあ.....」」

 

 

数十分後、私と七海は叫ぶのを止め、荒くなった息を整えていた。

 

とりあえず言いたいことを全て叫び終えたおかげで、互いにすっきりできたと思う。

それと、今回ので肺が昔の時に戻っているのだと実感したから、最終決戦ぐらいまで鍛えたい。正直、せっかくあんなに鍛えたのに、それがまた鍛え直しになったことがかなりショックであった。

 

 

「....ごめんね、怒鳴っちゃって。何がなんだかさっぱりだけど、こういう不測な事態が起きるのは何度もあったわ。

たぶん...彩花の時と同じかもしれないわね。貴女のこともアタシからしたら、突然出現したんだもの」

「突然出現したって、私は一応その前でちゃんと生まれて育った人間なのですけどね......。

....でも、そうだよね。七海や鬼殺隊の人達から見たら、私がいきなり現れたように感じるよね。

...それと、私もごめんなさい。色々あり過ぎて誰かにぶつけたかったんだと思う」

 

 

七海も一通り叫んだことで落ち着いたらしい。ただ、七海の言葉に少し物申したい気分だったが、私も納得することだったので同意した。

 

 

実際に宇髄さんには怪しまれて尋問されたし、それによって柱合会議が開かれたし、七海にも困惑され、すぐに殺されかけるということになったからね。

私が炭治郎達の性転換を不自然に思うように、宇髄さん達も私の存在を怪しいと思ったのだろう。私達の存在は余程不自然に感じられると思う。

 

 

「ところで、七海の髪って元から水色だったんだね。それは前世からなの?」

「違うわよ。この世界のアタシの髪は何故か水色だったのよね。前世のアタシの髪は普通の黒髪だったわよ。アタシの通ってた学校は髪を染めるの禁止だったから、この水色に縁なんてないわ。

それに....これ、貰い物だけど、何の縁なのか着物まで水色なのよ!しかも、無地で模様がないし!贅沢を言って申し訳ないけど...。

.....というか、それは彩花も一緒じゃないの?彩花の髪だって前世からそんな黒に緑を混ぜたような色ではなかったはずでしょ」

「うん。まあ、そうだね。私も生まれた時からこの色だからね。というか、その着物はどうしたの?」

「アタシはこの世界に来た時は制服を着たって言っていたでしょ。小さくなっても制服だったのは変わらなかったのよ。水色の髪の子どもがぶかぶかな見慣れない服を着ているなんて、余計に可笑しく見えたわ。

.......だから、感謝はしているのよ。遠巻きにしないで、さっきまで着ていた制服があまりに体のサイズに合っていないからって、親切な人にこの水色の着物をもらったわよ!ついでにご飯までもらったわ」

「それは.....大変だったね。親切な人と会えたのは幸いだったかな」

 

 

私と七海は髪の色や着物などのことを話し合っていた。そのことに私は喜びと楽しさを感じていた。

 

あの時はこんな話をできる場合じゃなかったから、なんだか嬉しい。こういう感じになりたかったんだと思う。それに、良かったとも思っている。本当にゆっくり話す時間なんてあまりなかったからね。

 

そんな話をしていて、なんだか良い感じに肩の力が抜けた気がする。

 

 

今になってから、何か目標を考えていた。情報を集めようとか、炭治郎達の様子を見ようとかそういうことを決めてから行動していた。そうすることで、不安や寂しさが和らいだ気がした。

少し心細かったからね。

 

だけど、気を抜くことはできなかった。何が起きているのかと私にはさっぱりだったから、安心することはできなかった。

なので、ここでかつて敵対していたとはいえ、知っている人に...それも前回の記憶を持っていて、かつ同じ転生者である仲間に出会えたことで、気を張る必要が少なくなったからであろう。

それに、最後に和解できたし、友達にもなれたので、かつて敵対していたとはいえ大丈夫だろう。

 

 

「....それで、これからのことよね?」

「うん。私も今の状況を知りたくて...。.....それで、ここに来たの」

「なるほどね。それなら、やることは........」

 

 

しばらく他愛もない話をした後、七海が本題に入った。それは私にとっても重要なことだったので、七海の話に耳を傾けた。

 

 

 

 

 

 

「....お前ら。さっきから俺達のことを見てるけど、一体何なんだ?」

 

 

えー。只今、私と七海は男の子の禰豆子(もう略して『禰豆子?』と表記する)に睨みつけられていた。

 

 

あれから、私と七海は今後の方針について話し合った。

誰か仲間がいると分かって安心できたが、これからどう動くかというのを決めておかないと危ないと思ったのだ。

 

 

そういうわけで、私達はやるべきことを二つ決めた。

一つは情報を集めることだ。私と七海が情報交換しても、分からないことだらけだ。

特に、炭治郎と禰豆子の性転換の原因も何も知らない。前でもなかったことだから、どうして今で起きているのかも分からないのだ。あと、このやり直しの原因も分かっていないことから、これはずっと続けるべきなのだと思う。

前にも起きたことだが、いまだに原因が不明だ。私は七海が関係していると考えていたけど、どうやら違うみたいだからね。

 

 

もう一つは炭治郎と禰豆子の他に性別やそれ以外の変化がある者がいるのかだ。炭治郎達が性転換したのなら、他の人達も性転換している可能性がある。炭治郎達以外にも性転換した人がいるなら、そこから何か共通点を見つけられるかもしれない。

それと、記憶の有無についても確認しておきたい。禰豆子?達の様子を見るからして、おそらく記憶はないだろうとは思うけど、まだ確定したわけではないから、もう少し様子を見ておきたい。

何らかのきっかけで記憶が戻る可能性だってあるから、それを視野に入れて考えたのだ。

 

 

それで、最初に竈門家の様子を見ることにした。

禰豆子?達の記憶の有無を確認したいというのもあったが、竈門家全体か一部で性転換している可能性があったし、他の変化もあるかもしれないので、それを確かめたくて禰豆子?達の姿を見ていたのだ。

 

 

その結果、禰豆子?達以外に性別が違う人はいなかったし、禰豆子?達の性別以外の変化は特に何もなさそうだった。私も七海もそのことに安堵していたが、ちょっと見ただけで分かる程度の違いはなく、じっくり見てから判断しないといけないと考え直した。

 

大丈夫。あの様子だと、原作が始まるまで時間がある。すぐに決めないといけないわけではない。

幸い、ここは山だ。狭霧山より空気が薄くなっていなくても、少しは麓よりも空気が薄くなっていると思う。

それに、山の中は険しいので、ここで鍛えておくのも良いだろうと思った。

 

 

そうして、私と七海は竈門家の様子を見ていたのだが、そんな私達に向けて声をかけられたのだ。しかも、私達とばっちり視線を合わして。私と七海はそのことに驚きながらも隠れるのを止め、声をかけてきた人物である禰豆子?の前に姿を現した。

禰豆子?は私達に対して凄く警戒していた。

 

 

どうやら私達が禰豆子?達家族のことを見ていると気づかれたようで、完全に不審者を見るような目で私達を見ている。

まあ、当然だよね。私達がやっていることって、傍から見ればストーカーのようなものだからね。どんな事情があろうと、それだからね。

 

 

私と七海は顔を見合わせた。

これは予想外だった。しばらく様子を見ていて、禰豆子?達に前の記憶がないという可能性が高くなり、前の記憶がないのなら遠くから見れば気づかれないと思って、完全に油断していた。

 

 

「そもそもお前らは誰だ。村の人間とは違うだろうな。村の人間はこんな山に来ることなんてないし、何の用があってここに来ているんだ」

 

 

禰豆子?が私達を疑っている。七海は前で会ったことがないからともかく、私にもこういう対応をするということは、この禰豆子?に前の記憶がないというのは確定だ。

 

そうなると、事情は説明できないね。説明しても、ふざけているのかとか意味が分からないとか言われる。

 

 

目の前の禰豆子?は答えない私達に苛立っていた。

 

 

「俺達家族を見ている目的は何だ?まさか姉さんが狙いじゃないだろうな!」

「待って、禰豆雄。その二人は悪い人達じゃないから」

 

 

私達が禰豆子?の勢いに押されていると、その禰豆子?の前に女の子が現れ、禰豆子?を止めてくれた。

禰豆子?に詰め寄られていた私達を助けてくれたのは女の子の炭治郎(仮に略して『炭治郎?』と表記しておく)だった。

 

あの炭治郎?が呼んでいることから、あの男の子の禰豆子は禰豆雄という名前らしい。

 

 

「姉さんはそう言ってるけど、どう考えても、見慣れない奴等だし、明らかに怪しい」

「大丈夫。この子達は私達を見たけど、嫌な匂いはしなかったよ。むしろ優しい匂いをしていた。それに、何か心配とか不安とかそういう匂いがあったけど、私達に悪意のある匂いはしなかったよ。

それに、あの子達は私達を見ている間、ずっと優しい匂いがしていた。

たぶん、私達のことを見守っていたんだと思う」

 

 

あの、炭治郎?

幾ら何でも私達をそんな簡単に受け入れるのは駄目だと思うよ。私達、完全に不審者ようなことをしていたから。そういう行動をする人を簡単に信じない方がいいって。

私達にとってありがたいことなのだけど、これは禰豆雄さん?の意見に賛成したい。

 

 

「姉さん。だけど.......」

「禰豆雄。禰豆雄が私達のことを心配しているのは分かっているよ。でも、私はあの子達が悪い人だとは思えない。たぶんあの子達は何も悪いことをしていない。それに、この子は私が話している間、ずっと心配している匂いをさせている。そんな子が私達に何かするわけないよ。

事情があるかもしれないんだから、無理に話させるのも良くないよ」

「.....姉さんがそう言うなら....」

 

 

禰豆雄が炭治郎?を姉さんと呼んでいたことから、この炭治郎?はやはり女の子になった炭治郎なのだと確信した。その目を見れば禰豆雄が炭治郎?を心配しているのだということが読み取れる。

だが、その炭治郎?は私達のことを悪い人間じゃないと言い、禰豆雄は炭治郎?に説得され、それ以上言うのを止めて渋々頷いた。

 

 

少し不安があるけど、あの炭治郎?のおかげで不審者として捕まるという事態は避けられたので、とても感謝した。

 

 

もしその人が危険な人だったらどうするのかという不安はあるけど、助かったのでありがとうございます。

 

 

「あの炭治郎?に感謝ね」

「..........」

「.....うん?七海?」

「....はっ!」

 

 

私が七海に小声でそう言うが、七海はそれに何も反応してくれなかった。私が心配して七海の目の前で手を振ると、七海は正気に戻った様子で声を上げた。突然声を上げたことに私は少し驚き、どうしたのかと七海の様子を窺った。

 

 

「あの子は天使か」

「えっ?」

「何を当たり前なことを言ってるんだ。姉さんが天使、いや女神なのは当然のことだろう」

 

 

七海の言葉に私が困惑していると、禰豆雄が淡々とした声でそう言った。

 

えっ?私、ついていけないのですけど......。

 

 

「アタシ、七海っていうの。お姉さんの名前は何という名前でいらっしゃるのかしら?」

「駄目だ。お前に教えたら減る。絶対に教えないからな」

「いや、別に教えても構わないよ」

「だそうだ。それで、姉さんは.....」

 

 

七海と禰豆雄は教えるか教えないのかという言い合いをしていた。だが、あの炭治郎?の言葉を聞くと、禰豆雄は掌を返したようで炭治郎?のことを教え始めた。

 

なんか仲良くなっているな、あの二人....。

 

 

三人の様子を見ながら、私は困惑しながらも何か面倒なことが起きそうだと思い、私の頭はこれからのことを考えていた。正直に言えば、これはおそらく現実逃避なのだろう。

ちなみに、女の子の炭治郎は炭華という名前だと後で判明した。

 

 

それから、私と七海は竈門家で暮らすことになった。炭華が私達のことを家族に話したら、何故か一緒にこの家で暮らすことが確定したのだ。

 

これも予想外だった。流石にこれをされたら信頼されているのだと分かり、嬉しく思えるのは思えるのだが、私は流石に駄目だろうと思った。

まあこの時代だし、竈門家の人達はみんな優しいから、私達を快く受け入れてくれるのだろう。

でも、幾ら何でもまだ会ったこともない人を、子どもだとしても素性の知らないのに、すぐに受け入れるのは不用心だと思ってしまった。これは私達の前世の方の価値観で考えてしまうが、せめて何か事情があるのか聞いておく必要はあると個人的に思う。

 

 

別に迷惑というわけではなく、この人達に何かあったらどうしようと不安になる。私達を拾ってくれたことに感謝しているので、その優しさが原因で酷い目に合わないか心配になるのだよね。

 

 

禰豆雄が問題は起こすけど、そういったところではしっかりしているので、私は信用しているし、七海も頑張っている。

そういえば、七海が瓦を割れたとか腕力が上がったとか言っていたような。この世界に来てから、七海は強くならないといけないと言って、筋トレをよくするようになった。その結果、今の七海は力がとても強い。私を軽々持ち上げるくらいにね!

 

 

前は遠距離での攻撃しかなかったけど、今回はすっかり物理で戦っても全然大丈夫なようだった。七海曰く、前世から割と筋肉質だそうで、ムキムキというわけではないが、触るとかなり固い。私はそのことに不貞腐れてしまった。私は鍛えても筋肉があまりつかないのだよ。

七海に筋肉を見えてもらった時、凄く不機嫌だったらしい。表面ではなんともないように振る舞っていたつもりだけど、凄い顔に出ていたそうだ。その日に笹団子を渡されるくらい。

 

 

......まあ、悔しかったんだよ....。

 

 

というように心配や大変なことがあったが、私は楽しいことも多かった。炭華達と家の手伝いをすることもあったし、家族で遊ぶこともあった。買い物だって炭華と七海の三人で行って、互いに似合いそうなものを選ぶというのをしていた。

私も炭華も遠慮していて、それなら数ヶ月に一回はご褒美という形でその人の物を選び合うのはどうかと七海が提案し、それからは恒例となっている。

 

 

特に七海の羽織や髪飾りを買いに行った時も、私と炭華は嬉々として選んでいた。七海は私と炭華が選んでくれるならと言い、任された私と炭華は真剣に悩みながらも選んでいた。

 

 

羽織はすぐに決まった。青色や紫色の菖蒲が描かれた羽織が七海にとても似合っていたからだ。これには全員が賛成した。だが、髪飾りの方は凄く迷った。

 

髪飾りは良いのが二つあり、私は朱色の紐(端に白色のビーズがついている)が良いと言い、炭華は若草色の紐(端に空色のビーズがついている)を選んだため、意見が分かれてしまったのだ。

だけど、どっちも似合っていたので、どうしようかと私達が悩んでいたら、七海が両方ともつけると言った。

 

 

その結果、七海は耳の後ろで二つに結んでいる。右は若草色の紐を、左は朱色の紐を使っている。

 

 

これが七海の今の姿である。少し違和感があるが、七海は気に入っている様子なので、私からは何も言わない。誰かの格好をとやかく言うのはおかしいからね。本人も満足しているみたいだし。

 

 

 

 

そうやって過ごしていくうちに、私と七海が竈門家に来てから、約五年ぐらいの年月が経った。

 

 

.....だが炭華や私達が原作開始の年齢になっても、鬼舞辻無惨は現れなかった。

 

 

 

 

 

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