私達は義勇さんの勧めで鱗滝さんのところに向かった。その道中で色々トラブルが起きた(主に禰豆雄と七海が原因で)。
まず最初に炭華に太陽の光が当たらないように炭華の入る籠を探した時だった。あの二人はもっと大きくて綺麗な籠にしようと畑にいた男性に色々聞いていたが、炭華が待っているから早く行った方がいいと言ったら、二人は籠を作るための道具を持って、炭華のところへ行った。
私も二人が迷惑をかけた男性に謝罪してから追いかけた。私が着いた時には禰豆雄が籠を作っていて、私も途中で手伝った。
禰豆雄の指示に従いながら完成した籠はかなり大きくて、立派なものだったよ....。
ちなみに、あの二人にどの籠にするのか悩んでいたのに、どうしていきなり手作りすることになったのか聞いてみた。すると、これ以上姉さん(炭華)を待たせたくないが、良い物を使ってほしいので、自分で作るしかないと思ったそうだ。
あの二人らしいね。
ということが何回か起きた(炭華の姿を見たいと二人が駄々をこねたり、村の人達が周りにいる中で思いっきり炭華のことを呼ぶようなことをして、変な目で見られたり、たまに姉さん(炭華)補給したいと暴れたりなど)。.....まあ、それらは問題なかった。慣れていたし、色々あっても平気だった。
...ただ、狭霧山の麓に着いた時はそれ以上に大変だった。
何が大変だった?あの御堂にいた鬼でと思った方はいるでしょうか?
......当たらずとも遠からずと言うべきでしょう...。ご安心を。件の鬼は禰豆雄と七海の手で木に縫い付けられました。しかも、その鬼が炭華に反応してしまったことで、二人は拷問のようなことをしています。
御堂の鬼は家を襲撃する前に私達を見つけ、こちらに標的を変えたのだけど.....何を言いたいのか察している人はいると思うが、要は襲う相手を間違えたということだよ。
いや、そもそも誰かを襲わないでほしいのだけど...それは無理だね。
その間、私はどうしていたのかって?
炭華を連れて二人から離れ、鱗滝さんを探していました。
あっ。炭華はちょうど夜だったことで外に出していたのだけど...鱗滝さんに会うまで籠の中にいた方が良かったのかな?
....それと、ああいう時の禰豆雄と七海には私や炭華でもあまり近づかない方がいい。色々面倒なことになる。
二人が不利な状況になったり、犯罪に手を染めそうになったり、やり過ぎだと判断したりした時は間に入り、強制的に止めるけど、相手は鬼だから大丈夫だと思った。そのため、鬼を圧倒しているところを見たら放置することにした。
鬼を相手にして大丈夫だと言うのは不自然に思われるだろうが、あの二人は鬼を泣かす勢いでやっているため、平気なんだと思う。念のためにあの二人の様子をちらちら見ているが、今のところは問題がなさそうだ。
それに、鬼は回復するので、禰豆雄と七海の猛攻を受けても大丈夫でしょう。禰豆雄と七海もあれこれしていて、幾ら鬼が回復しようともすぐにボロボロにしているから、二人が返り討ちに合う可能性は低いと思う。
まあ、それでも警戒しているんだけどね。竈門家襲撃の時のことを考えると.....ね。
でも、それは鬼が可哀想だって?
...うん。私も同じことを思っている。二人がやられることはないし、殺人犯にもならないから、そちらは大丈夫だと思う。だけど、鬼は体の傷が癒えても精神の方はボロボロになっているだろう。
だからこそ、鱗滝さんを探しているの。今の私達は日輪刀を持っていないから。
鬼の弱点は日光と藤の花、日輪刀で頸を斬られることである。
今は夜になったばかりなので、日が昇るまでかなり時間がかかる。あの二人なら夜明けまで戦えそうだが、それまで耐えないといけない鬼が可哀想だ。
次に藤の花のことだが、手に入れることができなかったので、藤の花を持っていないのだ。
私の前の家には植えてあった藤の花の木は無くなり、雲取山やその周辺の村にも藤の花がなく、藤の花を手に入れる手段がなかった。そのため、私も毒は作らず、普通の薬ばかりを作っていた。
まあ、それでも禰豆雄と七海の対策やその麻酔のことで忙しかったけどね....。
となると、残るは日輪刀なのだが...先程言った通りに私達は持っていない。鬼殺隊に入っていないから当然だし、隊士にも一度も会わなかったし、刀鍛冶の里の場所も知らない(私は目隠しでの移動、七海も実際に行ったことがないから分からない)ので、日輪刀を手に入れることもできなかった。
だが、今なら日輪刀を借りることができる。
私達は日輪刀を持っていなくて当然だが、鱗滝さんは確実に日輪刀を持っている。育手だし、私達の修行でも使うことになるのだからね。
私が鱗滝さんを探しているのは日輪刀を借りるためでもある。
ちなみに、炭華を連れているのはあの鬼のためでもある。あの鬼が炭華を見ただけでも、あの二人は怒るからね。これ以上の恐怖を植え付けないためにも、一度離れた方がいい。
それに、鬼になってからどうなっているのかは知らないけど、炭華は鼻が良いから、鱗滝さんを見つけられるのではないかという期待もある。
......それにしても、鱗滝さんはまだ来ていないのかな。御堂の鬼が襲撃する前に来たことから、私達がかなり早くここに来たとは思うけど、そんなに早かったのかな...。
....二人に炭華を籠に長時間入れるのは可哀想だから、早めに鱗滝さんの家に行った方がいいんじゃないかとは言ったよ。
あの時の私は毎回炭華のことで二人があれこれ問題を起こすので、このままだと鱗滝さんのところに行けないのではないかと思って、そんなことを言ってみた。結果、かなり効果があったようだったけど。
でも、それが原因で鱗滝さんに会えないとなると、ここで日輪刀をもらうのは難しくなるな...。
私達は夜が明けてからも鱗滝さんを探しに行けるけど、あの鬼は.......。
「ギャアアアアァァ!!」
そう思いながら禰豆雄達の様子を見ようとしたが、鬼の悲鳴が聞こえてきたので、振り向くのを止めた。
後ろから『もう殺してくれ。頼む、許してくれ!』という声が聞こえてくるけど、禰豆雄はその言葉を無視しているし、七海は『本当なのかしら?』とか言っている。
.....うん、あの二人の反応が怖いね。
私は禰豆雄と七海の様子を見たくなくて、早足で離れていった。禰豆雄達から少し距離を取っておきたくてね。
ちなみに、炭華は禰豆雄と七海が何をしているのか分かっていないため、禰豆雄と七海の行動を見ても止めようともしない。離れたいと思っているわけでもないが、私と一緒にいる。いや、私が炭華の手を引いているから、炭華は私の引っ張る方向に進んでいるだけなのだけどね。
そうして、私が炭華の手を引きながら歩いていると、誰かの気配を感じた。炭華も匂いで気づいたらしく、その気配が感じる方を指差した。その方向を見ると、波のような模様の羽織を着て、天狗のお面で顔を隠している老人の姿があった。
間違いない、鱗滝さんだ。
「あっ!鱗滝さんですね。初めまして、生野彩花です。隣にいるのが竈門炭華です。
本当ならゆっくり自己紹介したかったのですが、この近くに鬼が来ています。いきなりすみませんが、日輪刀を貸してもらえませんか?」
「...日輪刀を.....。....日輪刀のことは義勇から聞いたのだな。だが、お前は日輪刀を使えるのか?鬼を斬ることはできるのか?」
「義勇さんから色々聞いています。ですが、今はそれどころではありません。詳しく説明したかったのですが、もう見てもらった方が早いと思いますので、あちらに向かいましょう」
私は鱗滝さんに近づき、自己紹介をした。歩きながら少し様子を見ていたが、前回のことを鱗滝さんも覚えていないようなので、何か余計なことを言って不自然に思われないようにと考えながら、平常心を保ちつつ話し出した。
鱗滝さんも鼻が効く人なので、私が何か動揺でもすれば不審に思われるだろう。
「あれは一体........」
「.....義勇さんの手紙に何と書かれていたのかは分かりませんが、あちらで鬼をボコボコにしているのが禰豆雄と七海です」
「いや、あれはボコボコというより...「いえ、分かっています。分かっていますが、ボコボコという言い方も間違ってはいないので....」......そうか........」
御堂の鬼を斧や小刀で斬りつけたり押さえつけたりする禰豆雄と七海を見て、鱗滝さんが絶句したのが分かった。
その気持ちは分かりますよ。
信じられない様子の鱗滝さんに、私は苦笑いしながら二人のことを紹介した。鱗滝さんは私の紹介の中にあった言葉が気になった様子だったが、私が途中で言葉を遮ることから、鱗滝さんも言葉にしたくないと察したらしく、それ以上は何も言わなかった。
まあ、あの二人は鬼をボコボコにするのに夢中で、私と鱗滝さんがここにいることに気づいていない様子なので、自己紹介は私がしないといけない。
「それで、私は早くあの鬼の頸を斬るために日輪刀を借りたいのです」
「....日輪刀で頸を斬らなくとも、あれでは抵抗もできまい」
「でも、流石にあの鬼が可哀想に見えませんか?」
「..........」
私が二人のことを指しながらそう言うと、鱗滝さんは遠い目をしていた。私が日輪刀を借りたい理由が分かったのだろう。
だが、鱗滝さんの目から見ると、その必要はないらしい。あの二人なら勝てるだろうという判断なようだ。
私がそう言った時、二人のいる方向から悲鳴が聞こえてきた。それを聞き、私はまた斧や小刀で刺しているのだなとか、鬼だから声がかれていないのかなとか、そういうことを考えていた。
鱗滝さんはそれを聞いて、何やら考え込んでいる様子を一瞬見せたが、鬼に近づきながら日輪刀を鞘から抜いていた。
鱗滝さんもあの鬼に同情したようで、すぐに鬼の頸を斬った。私は鱗滝さんが何をしようとしているのかに気づき、禰豆雄と七海にそこまでするようにと言い、二人を鬼から離した。その間に鱗滝さんは二人の手によってボロボロになり、抵抗する気力がない御堂の鬼の頸を斬った。
頸を斬られて、御堂の鬼は怒らず、悔しがることもせず、やっと解放されたと言っているような安堵の表情を浮かべていた。
苦しむ様子もなく消滅していったことから、あの二人にされたことが余程辛かったのだろう。
まあ、鱗滝さんが干天の慈雨を使っていたから、頸を斬られても苦しむことはなかったということもあったのだろうけど.....。
干天の慈雨のことを覚えていますか?
干天の慈雨とは水の呼吸の伍番目の型であり、この型で斬られても苦痛は一斎ないのだ。相手が自ら頸を差し出した時のみ使う慈悲の剣撃である。
あの鬼は禰豆雄と七海が離れ、鱗滝さんが刀を持っているのを見た瞬間、すぐに頸を差し出してきた。そのため、鱗滝さんはその型を使ったのだ。
なんだかますます申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
私は御堂の鬼が消滅していったのを見届けた後、静かに膝をつき、手を合わせた。
「何をしている?」
「少し黙祷を。......なんだか申し訳ない気持ちになって....」
「.....気持ちは分かるが、そういった情けはかけない方がいい」
私が御堂の鬼に対して黙祷を捧げていると、鱗滝さんが声をかけてきたので、正直に黙祷していることを言った。すると、鱗滝さんは私の言葉を聞いて、少し間を空けたが、そのようなことを言った。
気持ちは分かると言っていることから、やっぱり鱗滝さんも禰豆雄と七海の行動はやり過ぎだと感じでいるようだ。なので、私の行動を見て甘いとは言わず、むしろそれに理解を示してくれている。
だが、こうやって助言してくることからも私の行動を心配しているのだろう。
鬼を憐れみ、それが油断をするきっかけとならないのかと思っている。鬼に同情していれば迷いを生むことになる。鱗滝さんがそれを心配するのは分かる。
........なので、私はそれを間違いないように意識している。
「そこはしっかり分別をつけるつもりです。鬼のことを気にしすぎて、自分が怪我をしたり亡くなったりしたら、元も子もありませんから。私は流石に」
「...なら、いい.....」
私の言葉を聞いた後、鱗滝さんは特に何も言わなかった。私が分かっているのなら、そんなに言う気はない様子だ。
こうして、私達の修行が始まった。まあ、修行が始まる前にも色々あったけど、予想がついている人はいるでしょう。
簡単に言うと、最初に狭霧山から下る試練は誰から始めるかで禰豆雄と七海の間で喧嘩になりそうなので、私から始めることにした。
あのまま喧嘩したら鱗滝さんの家が壊れるから、そうなる前に自分から言ったのだけど、今度は次で喧嘩になると思うので、鱗滝さんと山を登っている間にどうするかを考え、その対応を鱗滝さんに話して実行してもらうことにした。
その後、鱗滝さんがあの二人を抑えられるのか分からないので、全速力で山を下りた。
一応、鍛えていて呼吸は既に使えたし、似たような罠を作って雲取山で同じことをしていたこともあり、早く鱗滝さんの家に着くことができた。
鱗滝さんは驚いていたが、二人を放置するのが心配だから急いで下りてきたと伝えると、心配するのは分かるが、それでも凄いことだと言われた。
まあ、本当のことは伝えられなかったので、禰豆雄と七海が今までにやってきたこととそれを止め続けていたことを話すと、それはそうなるかと納得された。
この二人がしてきたことの中には鱗滝さんが納得するようなものもあったからね。二人の起こす問題を止めていくうちにと思われているけど....正確に言うと、逆なんだよね。
私が呼吸を使えていたり鍛えていたりしていたから、最初から全部なんとかできていたのだけどね......。
ちなみに、禰豆雄と七海は私の言った方法で次に修行を受ける人を決めていた。
あの二人は最初に何の勝負をすればいいのか決めればその方法をしてくれるので、そうすれば物理的な争いにはならなくなる。
ただ、あの二人がその勝負に集中しすぎて、それがとんでもないことに発展するということがあるので、そこは要注意である。
と言っても、それを鱗滝さんに全部任せるのは申し訳ないので、私が急いで下りてきたのだけど.....どうやら遅かったみたいだ。
私の予想だともう少し保つかと思ったけど、どうやら勝敗が決まるのは早かったらしく、あの二人は別の喧嘩を始めていた。
何をって....炭華の取り合いだよ。
炭華と離れないといけないからとか、それよりも早く行く準備をしたらいいんじゃないかとか、そう言い合っていた。その言い合いが物理の方になる前に二人の間に入った。
そして、暴れて家が壊れたら私達も炭華も鱗滝さんも休めないとか、そんなに炭華と長くいたいなら、さっさと山を登って下りてきた方が早いなどとか言って、喧嘩を止めた。
鱗滝さんが疲れていたが(お面で表情が見えないが、なんとなくそういう気配を感じた)、とりあえず案内には行ってくれた。
勿論、鱗滝さんが帰った後にすぐに戻ってきたし、最後の人も同じようなやり取りをすることになった。その対応も私がしていて、また同じような流れになり、この試練は朝日が昇る前に三人とも終えることができた。
それで試練が終わって、本格的な修行になった時はとても大変だった。私と鱗滝さんで話し合い、禰豆雄と七海に炭華と会うのを禁止させるくらいにまでなった。
こうなった理由は簡単だ。禰豆雄と七海が炭華からなかなか離れないからである。
現在、炭華は眠ることで体力を回復をしている。そのため、炭華は全く目覚める気配がない。原作では禰豆子が二年間眠り続け、その間に体質を変えていた。今の炭華は原作の禰豆子と同じ立ち位置なのだと思うから、炭華も二年間眠り続けるのだと思う。
だけど、不安がある。この世界は原作と色々違っている。炭治郎と禰豆子の性別が違うことや主人公が変わっていること、原作の開始が変わっていることなどの変化が起きている。
だから、この世界で原作と同じように二年後に炭華が目を覚ますかも確信できないのである。
そういうこともあり、原作の知らない禰豆雄だけでなく、七海も炭華のことを心配して離れられないのだ。私も炭華のことが心配なので、その気持ちは分かる。だが、原作と同じように進むのかも分かっていないからこそ、修行をして早く強くなり、備えておかないといけないと思っている。
炭華のことを気にしていて、取り返しのつかないことになってしまったら駄目だ。この世界が本当に全体の流れが一年繰り上がったのかさえ分からない状況であるため、どんなことが起きてもいいようにしないとね。
そのためにも、禰豆雄と七海にはすぐにでも修行を始めて、さっさと終わらせてほしいのだけど.....この二人は炭華から全然離れようとしないの。
これから修行を始めようという時間になっても、炭華から離れようとしなくて、私が強制的にあの二人を(物理的に)離さないといけなくなる。
前回から言っているけど、私はあまり筋肉がつきにくい体質である。それは幾ら鍛練をしていても変わらなくて.......いや、私と一緒に七海はやるし、禰豆雄も参加することがあるから、あの二人との腕力の差は全く縮まらない。しかも、あの二人は完全に力で押し通す人達であるため、私と相性が最悪なのである。
特に、七海は前の時で上弦の伍に短期間でなるくらいの実力がある。
なので、私が毎回苦労することになるのだ。
鱗滝さんの待っている場所に連れて行こうとして、二人を力づくで立ち上がらせ、その後に押して行かないといけないのだ。途中で炭華のところに戻ろうとする時は着物の襟の部分を掴んで、地面に体重をかけて踏ん張って止めなければならない。
おかげで、私は疲れた状態で修行しないといけないのだ。それに、修行の時間が少し短くなる。鱗滝さんもこれを問題視していて、なんとかしようと共に解決策を考えている。
ちなみに、鱗滝さんもあの二人を修行に連れて行かせようとしてくれたが、あの二人の気迫に押され気味のため、私がほとんど対応している。
あの二人の相手をするには慣れが必要だからね。
かなり疲れている様子だが、村ではそんな感じだったのではなかったのかって?
まあ、あの二人の暴走具合は村にいた時と似たような感じだよ。だけど、今までと少し違うようになっちゃったんだよね。
村では喧嘩を止める時は両方を宥め、機嫌が悪くなった時は話題を変えて忘れさせ、暴走した時は間に入って落ち着かせていた。最悪の場合は炭華のことを出して説得したり、麻酔で眠らせていたので、私が物理的で対処することはなく、基本は会話で平和に和解?させていた。
だが、今は二人とも心の平穏である炭華がいないため、私も制御するのが難しいのである。今までは言葉で説得できたものの、今回は私の話に納得できるが、それでも炭華から離れたくないということになってしまうのだ。
でも、あまり修行期間を長くするわけにもいかない。
そう考えた結果、もう禰豆雄と七海を炭華と接触禁止にして、修行を全て終えなければ炭華と会わせないということにした。
あの二人には悪いけど、今回は心を鬼にすることにした。あの二人を炭華から離すことを何週間もしないといけなかったため、私もそろそろ我慢の限界だった。いや、もうすぐで一ヶ月も経とうとなると、いい加減にしてほしいと思うよ。
でも、あの二人は暴走するのではないかって?
うん。だって、これは暴走することを前提にしているからね。だけど、これで解決できるなら、全然大丈夫だよ。この中途半端な暴走の対応よりも、思いっきり暴走してしまった方がやりやすい。
狭霧山を破壊していく可能性はあるけど、それはもう致し方のない犠牲だと思っている。
ちなみに、鱗滝さんは狭霧山を崩壊させる可能性があると聞いた時、遠い目をしていたが、仕方がないことだと言ってくれた。
まあ、なるべくあの二人が山を壊さないように、私が気を配りますから。
えっ?なんかテンションがおかしくなっていないかって?
うん、もう色々限界なんだよね。あの二人が動かないことで、ここまで疲れが溜まるとは思ってもいなかったよ。
なんとなく分かっている人はいると思うが、半分ヤケになっていました。今ではもっと良い方法を考えられたのではないかと思っていますし、反省もしています。
鱗滝さんに多大な心労をかけてしまったことを申し訳ないと思っています。二人が寝ている間に炭華を別の場所に移すのも手伝ってもらいましたから。
それで、炭華の接触禁止なんだけど、とても効果があった。禰豆雄も七海も修行を終えるスピードが一気に速くなったからね。
もう大成功ですよ。
呼吸の方もあっという間に習得し、その後に呼吸を極めていた。原作知識のあった七海は全集中の呼吸・常中の習得に取り組んでいた。
七海が一度躓いていたが、私が少し相談に乗ったらすぐに解決していた。
言っておくけど、私は的確なことを言ったわけではないよ。その時の私達の会話は..........。
『七海、どうしたの?』
『彩花。とりあえず水の呼吸を習得できたのはいいけど、水の呼吸は何か違う気がするのよ』
『うーん。もしかして、水の呼吸が体に合っていないのかな?
....でも、私は先に華ノ舞いという体に合う呼吸を知っていたから、その違和感に気づけたのだよね。.....七海に何かそんな動きがあったの?』
当時の私は七海が悩んでいるところを見つけて話を聞いてみると、七海は呼吸について考えていた。
呼吸が体に合っているのか云々は私も前で同じことを悩んでいたので、私は自分の時のことを思い出しながら七海に尋ねた。
今回の中で七海が呼吸らしきものを使ったことはなかったから、心当たりがあるとしたら前の時だろう。
『分からないわよ。だけど、何かが違う気がするのよね...。アタシは全く心当たりがないけど、これって別の呼吸の習得したり新しい呼吸を作ったりする必要があるのかしら?』
『新しい呼吸って....私は何故か華ノ舞いを使えて、それが体に合っていたけど、オリジナルの呼吸を作るのって難しいと思う。
まあ、オリジナルの呼吸に関しては私も興味があるよ。もし作るとしたら『海の呼吸』なんてどうかな?
血鬼術は水だったけど、あの水の勢いは海のようにも感じていたし、七海には海が似合うと思うよ。せっかくだから、型を七つ作ってみない?』
七海は心当たりがない様子で首を横に振った。七海は前の時に何かなかったかと思い返していたが、本当に心当たりがないようだ。
『それは「七海」だけにということかしら?鬼だった時のことはアタシにとって黒歴史みたいなものだけど、でも気分展開にはなったわね。
それに、少しヒントになったわ。......『海の呼吸』ね.....。....いいわ。七つ作ってあげるわよ、『海の呼吸』を』
『...えっ!?ちょっと待って!それは冗談のつもりで言っただけで、本気にするとは......』
.....というような感じである。そして、七海は水の呼吸の型をベースに、前の時に使った水の血鬼術を再現したのだった。
本人は既にイメージがあったし、水の呼吸の型でどうしたら似たような感じになるのかを考えるのが楽しかったと言っていた。
型の名前も血鬼術の名前を少し変えないといけなかったけど、それも面白いと言っていたし、厨二病が刺激されたとも満足そうに言っていた。
七海。もしかして、前も血鬼術を決める時は楽しんでいたのかな...。....まあ、本人が楽しければいいと思うよ。
そんな感じで前の時の血鬼術を基に、七海は海の呼吸を完成させた。しかも、ちょうどその血鬼術が七つあったから、ぴったりだとも思ったらしい。
私が血鬼術のことを言ってくれたおかげで、呼吸のイメージとその時の感覚があって、
いや、私はそんなつもりで言ったわけではないのだけどね。...でも、七海の悩みが解決して良かったよ。
そういえば七海は血鬼術を自分の体の一部のように動かしていたよね。
......そうなると、あの血鬼術は七海と相性が良く、それと同じ動きをする型が体に合っているのは当然なのだろうね。
七海は海の呼吸を完成させてから、本当にもう絶好調で次々と修行を終え、一気に岩の試練に入った。
岩の試練は予想外のことが多く起きた。だけど、七海なら大丈夫だろうと思う人がいるでしょう。
はい、その通りです。七海は岩の試練を普通に突破できました。
だが.......。
『海の呼吸 弐ノ型 篠突き』
これは水の呼吸の雫波紋突きに七海が使っていた血鬼術「鉄砲水」というイメージを加えた突きの型である。
雫波紋突きは最速の突き技だ。刀で直線的に突きを繰り出すため、血鬼術の鉄砲水とは重なるところがあった。
七海はその型で岩を叩き斬ろうとしていた。あの試練で使う岩はかなり大きいものを使うため、七海は自分がどれほどの力を持っているのかを確かめるという意味もあって、この型を使ったのだ。
私は叩き斬ると言っている七海を見ながら叩き割るの間違いではないかと思っていた。
だが、どちらにも予想外なことが起きた。七海が突き技で真っ直ぐに岩を刺した。その瞬間、岩に亀裂が入り、木っ端微塵になった。
これには近くにいた鱗滝さんも、見ていた私も、それをやった張本人の七海も驚愕した。唯一、禰豆雄だけはその様子を見て対抗心を抱き、あのくらいはやらないといけないと思い、やる気を出していた。
ちなみに、七海のあれは岩を斬ったというより、岩を粉砕したの方が正しいため、もう一度別の岩でやってみることになった。これは七海の強い要望も関係していて、粉砕したものよりも大きな岩で試してみることにした。
あっ。篠突きは岩に使わないということになった。
粉砕したとしか言っていないが、粉砕した岩がどうなったのかを詳しく説明しておこう。
岩が粉砕した様子はまるで爆発したような感じで、岩は砕けて小さくなった石や砂となって、私達の上から降ってきた。おかげで、私達は石が当たって擦り傷を負ったり、目に砂が入ったりというような被害にあった。七海も全身が砂塗れになったので、また同じことはしないと思うけどね。
その後、七海があっさり岩を真っ二つに斬った。岩を粉砕したり、簡単に真っ二つに斬ったりなどの
禰豆雄がそれに触発されて、少し暴走した。
具体的に何をしたのかというと、はりきりすぎたようで、岩を斬る前に準備運動としてか、周りの木を斬りまくったのである。
何をしているのかと言いたいだろう。私もはりきっているのは分かるけど、近くの木を巻き込まないでほしいと思ったよ。
禰豆雄はよく一回斧を振っただけで木を斬っていたから、別に驚くことではなかった。.....言っておくけど、禰豆雄が一回で木を斬られるようになったのは炭華と一緒にいる時間を減らさないためだった。
特に、竈門家は炭焼き業をしているので、薪がいっぱい必要なのだ。そのため、禰豆雄はよく薪を作っているのだ。昔は弟達が幼かったこともあり、男手は禰豆雄だけだった。
禰豆雄は薪を作るために一人で何回も木を斬り倒さないといけなくなった。私も七海もその様子を見て、手伝うようになった。手伝い始めた時は邪魔するなとか、あっちに行けとか言っていたが、しばらくしてからはそう言わなくなり、そこの木を斬るようにとか、斬るのは何本だとかそういう風に指示するようになった。
今では自分から七海を引っ張っていくようになったし、弟達も成長したことから、人手が足りないということにはなっていない。
そのおかげで、私も時々手伝うことはあるが、基本的に薬屋の仕事をするようになった。
ちなみに、炭華を手伝おうとしていたらしいが、それは禰豆雄が止めたそうだ。姉は女の子だから、力仕事は自分がやると言っていたみたい。
私も七海も...一応女の子なのですけどね......。....まあ、鍛練になりそうだからと普通に参加していたのは私達だが.....。
禰豆雄は斧とはいえ、木を一回で斬ることができるため、刀を持っている今では肩慣らしに木を斬れてしまう。
鱗滝さんは禰豆雄が木を次々と斬り倒していくところを見て、巻き込まれる前に距離を取ったよ。
勿論、私も七海もその場から離れた。その時、岩の近くに人影が見えた。しかも一つではなく、複数あるのだ。
一瞬だったのではっきりと見ていないが、その人影は全員狐のお面を身につけていたんだよね....。
...一体誰なのかは少し心当たりがあるけど.....。
あれ?私の方はどうしたのかって?
私は七海が岩を粉砕する前に試練を受けたよ。
だって、禰豆雄と七海が暴走しないように見るとなると、どうしても二人と一緒に行動しなければならないのだ。つまり、あの二人と同じかそれ以上の速さで修行を終わらせないといけないということになる。
まあ、一度同じ修行を受けたし、この世界に来てから鍛練をしていて、呼吸を習得できたこともあり、私もあの二人と一緒に岩の修行を受けた。それで、じゃんけんで順番を決めることになり、私が最初でその次に七海と禰豆雄という順番になった。
私は前の時に岩を斬った経験から、何処から斬り込めばいいのかとか、どのくらい鍛えていればいいのかとかが分かっていた。
と言っても、本当に斬れるかどうかは分からないから、直前まで鍛練を怠らなかった。岩が何故か前の時より大きくなっているように感じていたし、これからの戦いを考えて強くなろうと思っていたのもあるだろう。
その結果、私はあっさり岩を斬り、修行を終えることになった。
最初に私が岩を真っ二つに斬れたことで、七海も気合いを入れたのだろうね。そのため、力が入ってあんなことになったのだと思う。
修行を終えた後、鱗滝さんが私達に何か言おうとしたが、その前に禰豆雄と七海が動くのが速かった。
修行を終えたので、禰豆雄と七海が炭華に会うことができるようになったのだ。早く炭華のところに行きたかったのだろう。
二人が走り去っていく背中を見ながら、私と鱗滝さんは無言で顔を見合わせ、首を横に振った。その後、鱗滝さんは私にゆっくり歩いて近づき、よくやったと言われて頭を撫でられた。
私は少し気恥ずかしい気持ちになっていた。こうも褒められると、とても嬉しく感じるのだが、顔が真っ赤になっていると思う。
本当に恥ずかしいのだから。
しばらくして、鱗滝さんが禰豆雄と七海の様子を見るためにあの二人のところへと移動しようとしていたが、私は少し寄りたいことがあるから先に言っていてほしいと言うと、鱗滝さんはすぐに山を降りていった。
あの二人が喧嘩しないか心配している様子だけど、喧嘩にはならないと思っている。炭華に久しぶりに会えることだし、互いにそちらの方を優先すると思うから、おそらく家を破壊するほどの喧嘩はしないから。
あの二人は本当に喧嘩するほど仲が良いよね。こういう時によく息が合うし。
そんなことを考えながら私は真っ二つに割れた岩に近づき、その辺りを見渡した。そして、少し離れた木影に誰かがいることに気づいた。
「.....少し話を聞かせてくれませんか?さっきから私達の方を見ていたから、少し気になってしまいまして。ここにはもう私しかいませんので、姿を見せてくれませんか?」
私がその木へ声をかけると、木影から二人が出てきた。その二人は原作で炭治郎に稽古をつけてくれていて、前でも私に色々なことを教えてくれた錆兎と真菰だった。
「.......何かすみません。色々壊してしまいましたし、ご迷惑でしたよね....」
「.....いや、少し驚いたが、平気だ。それにしても...岩を粉砕したり周りの木を倒したりと、俺達の中で(被害が)最も凄いことをした男と女だ」
「大丈夫。私達はずっと見てきたから、最終選別で生き残れる。彩花達なら勝てるよ、あいつに」
「少なくとも、生命力は強そうだからな」
「あははは......」
私が早速あの二人の行動を謝ると、錆兎と真菰は遠い目をしながらそう言った。私はその言葉を聞いて、苦笑いしかできなかった。
錆兎も真菰もあの二人が絶対に生き残ると確信している。まあ、当然だよね。あんなに被害を出しているのだから。そのため、私は申し訳ないと思って謝罪しているのだ。
どうして謝罪をするのかって?
だって、錆兎達は狭霧山に幽霊としてここにいるのだ。その山を禰豆雄と七海が思いっきり荒らしているのだから、迷惑だったと思うんだよね。自分のいる場所をめちゃくちゃにされたら怒りを覚える
私が苦笑いしていると、突然辺りが霧に包まれた。すぐにその霧は晴れたが、晴れた時にはもう錆兎と真菰の姿はなかった。
たぶん私達が苦戦していたら手助けしてくれようと思っていたのだろう。原作と前のように。だけど、その必要がなさそうで安心したのだと思う。あの二人は疲れたような表情をしていたが、なんだか安心感はあるようだ。
一応期待してくれているのかな。怒ってはいなかったし。
二人の姿が見えなくなり、私は最後に一度割れた岩の方を振り返った後、山から降りた。
錆兎や真菰の言う通り、たぶん負けないと思う。少なくとも期待には応えられるかな。
えっ?どうしてそんなに余裕そうなのかって?
まあ、前に手鬼に勝てたからというのもあるけど.......一番の理由は......。
「姉さんー!!」
「あと三日!半分になったわ!だけど、時間が経つのが遅すぎるのよ!!」
場面が切り替わって、現在は藤襲山にいます。どうやら私達が終えた時期から、数日後の最終選別に行けそうだということになり、すぐに藤襲山へと出発した。
まあ、例によっては禰豆雄と七海が炭華と離れたくないと駄々をこねたが、それは私が説得して終わらせ、渋々あの二人は頷いた。だが、その不満は藤襲山に来た辺りで限界に近づき、鬼との戦いで遂に爆破してしまった。
「相変わらず元気だね...。
.....七海。確かにこの一週間が長く感じるのは分かるけど、あともう少しの辛抱だから頑張ろうね。だから、二人とも藤襲山を鬼諸共に攻撃しようとするのは止めよう!
........あっ、怪我をしていますね。その怪我が鬼との戦いで負った傷なのか、あの二人に巻き込まれたのかは知りませんが、ご迷惑をお掛けして申し訳ありません。お詫びといいますか、その怪我の簡単な処置をさせてください。......これで大丈夫だと思います。それではあの二人を追わないといけないので、失礼します」
私はそんな禰豆雄と七海の様子を見ながら苦笑いを浮かべたり、禰豆雄と七海が山を壊さないように時々宥めたり、途中で出会う怪我人を手当てしたりというようなことをしていた。
特に、最後の怪我人に関しては鬼に襲われた時の怪我をした人、禰豆雄と七海の刀を振った風圧が原因で怪我をした人、または両方だという人などがいる。
どちらにせよ、怪我人を見つけたことに変わりはないため、私は持っていた道具で応急処置をしていた。
私は二人から離れることがないようにしながら、二人を追いかけていた。禰豆雄と七海が大暴れをするから、私は何が起きても二人を止められるようにしている。実際に木を幾つも倒そうとしたり、地面を突きで穴だらけにしたりなどをやったので、このまま放置してはいけないというのがよく分かるだろう。
うん?手鬼はどうしたって?
ああ....。.....もう最初の方で禰豆雄と七海によって手を全部斬られたり、体中を穴だらけにされたりということがあり、年号の下りは一切なく、ぶるぶる震えていたため、なんだか可哀想に感じたので、すぐに頸を斬った。禰豆雄と七海が追撃しそうだったから。
斬った後、腕が震えていることに気づき、右手でその手を握り、腕の方は優しく撫でた。完全に消滅した時、腕の震えは止まっていたから、少しは恐怖を和らげることができたかな...。
.....まあ、一番の問題は私がそうしているうちに二人がどんどん奥に進んでいったことだね。あの二人のいるところはものすごい音がしてくるから、すぐに何処にいるのかは分かったけど。
そんなわけで、襲ってくる鬼の大体は禰豆雄と七海によって倒されていった。その中には手鬼のように頸は斬られていないが、ボロボロになっている鬼がいて、また二人に中途半端な攻撃をされる前に私がその鬼の頸を斬っていた。
勿論、ちゃんと五体満足の鬼も斬ったよ。その後にどちらの鬼にも黙祷を捧げた。あんまり斬った後に放置することが申し訳ないと感じ、黙祷だけは自己満足でやっている。
それと、怪我人も放置することができなかった。特に、禰豆雄と七海が大暴れした所為で動けなくなった人に関しては申し訳なさしかないし、邪魔したことには変わりないため、謝りながら治療している。
そして、治療が終わった後にあの二人を追うというのを繰り返していた。途中で何度か引き止められたり、魔王に挑む勇者のような扱いをされたりということなどがあり、私は苦笑いしていた。
禰豆雄と七海は山を駆け回り、あちこち移動していた。それは二人について行っている私も同じだ。その結果、おそらくほとんどの場所に行ったと思う。ただ、気になることがある。それは善逸達に全く会えないことである。
えっ?それは時期がズレているからではないかって?
.......ああ。そういえば言っていなかったね。この藤襲山に着き、最終選別の説明が始まるまでの間に周りを見渡したら、善逸とカナヲ、玄弥の姿を見つけたのだ。この三人がいるということは伊之助もいると思うから、たぶん原作と同じ時期なんだと思う。
おそらく竈門家襲撃事件が一年遅れ、修行期間が一年短くなったことで原作と同じようになったのだろう。そう考えると、何が起こるか分からないからと早く修行を終わらせておいたのは正解だったみたいだ。
私達が鬼殺隊に入る頃には原作で起きることが全て終わっていた可能性があるし、もしかしたら鬼殺隊そのものが無くなっていた可能性もあった。
それを知った時、私は凄く安堵した。原作と違う流れになったら、この先でどうなるのか分からないからね。まあ、普通の人生なら分からないのが当然なのだけど、今はそうも言っていられない事態だから。
特に、その改変が原因で炭華の身に何か起こればあの二人が.......。....原作通りなら、炭華の身に起こりそうなことを事前に防ごうと考えている。私の手に負える範囲内で.....。
その後も色々なことがあったが、私達は七日間を生き残ることができた。生き残ったから終わりだとすぐに帰ろうとする二人を抑えながら、私達は最初の場所に戻った。最初の場所に戻ると、既にたくさんの人がいた。数えていなかったが、おそらく全員がここに戻って来れたということだろう。
だが、原作では炭治郎と善逸、伊之助、カナヲ、玄弥の五人しか生き残っていないはずだ。なのに、ここには善逸達以外にも多くの人達がいる。
私はそれに驚きながらも心の何処かで納得していた。何故この人達が生き残っているのかに気づいたからだ。
私達の行動を思い出せばその原因も簡単に分かった。では、何のことを指しているのか。
それは禰豆雄と七海があちこちで大暴れしていたからである。木を斬り倒し、地面を抉ったりしていたが、鬼を斬っていたのは確かだ。他の参加者と何回も出会っていたことから、彼らの試験を邪魔していると同時に、彼らを助けていたのだろう。
それに、禰豆雄と七海が通った後はあまり鬼がいないし、例え鬼がいても私が斬ってしまうから、これも原因の一つであろう。だって、鬼に遭遇する確率が低くなっていただろうから。
私が辺りを見渡すと、やっぱりそこにいたのは藤襲山て見た人達だった。その人達は私を見て、駆け寄ろうとしたり話しかけようとしたりしていたが、禰豆雄と七海を見たら顔を引き攣らせて離れて行った。
なんだか凄く申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
ごめんなさい。今、あの二人は炭華に会いたいという気持ちが強くて......。
私が周りの人達に心の中で謝っている間に、話が進んでいた。話によると、今回の最終選別で全員が生き残ったらしい。だが、そのうちの殆どが隊士になることを辞退した。
ちなみに、その理由が自分はまだまだとか、あの二人と同じにはなれない等々である。
皆さんはもう誰のことを指しているのか分かりますよね?
その通りです。辞退した人達は全員こちらを見ていました。当の本人達はその視線を全く気にしていませんが、私は苦笑いを浮かべてしまった。
そんなことがあって、生き残った人達はどんどん辞退し、私達を含めて六人になった。察している人はいると思うが、私達以外に辞退しなかったのは善逸、カナヲ、玄弥である。ここにいないけど、おそらく伊之助もいると思うから、隊士になったのは七人というのが正確だろう。
全員が生き残ったけど、鬼殺隊に入ったのは禰豆雄達(+イレギュラーの私達)というのは変わらなかったようだ。
その後、私達は鎹鴉をもらった。前は鬼殺隊に入っていなかったので、自分専用の鎹鴉がいなかったんだよね。獪岳の鎹鴉やその友達とは仲良くさせてもらったけど.....。
それで、私のところに来たのは前の時に特に仲良くなった雌の鎹鴉の遠藤だった。私はまた遠藤と出会えたことを純粋に喜んだ。七海も自分専用の鎹鴉をもらったことに興奮しているようだ。そのおかげで、七海の雰囲気が和らいでいた。七海のところに来た鎹鴉は雄らしく、禰豆雄の鎹鴉と仲が良かった。
ちなみに、禰豆雄の鎹鴉は天王寺松衛門だ。原作では炭治郎の鎹鴉であった。炭治郎の立場に禰豆雄が来たのだから、禰豆雄のところに行く天王寺松衛門が行くのは納得だった。
鎹鴉が来たことで、少し空気が穏やかになった時、玄弥が刀は何処だと聞いてきた。それを聞いて、私は玄弥の方を見た。玄弥は前で私達に説明している二人、輝利哉様とかなた様に近づいていた。
私はそれを見て、原作通りに進みそうだと思い、こちらも玄弥達に近づいた。
原作では刀が欲しいと気が立っていた玄弥がかなた様を殴ってしまうということが起きるのだ。流石に目の前で年下の女の子が殴られると分かっていて、それを知らないふりをする気はない。その前に止めないと。
だが、私が止める前に動いた人がいた。それは禰豆雄だった。
驚いた人がいるでしょう。私も驚いた。七海もかなり動揺していた。まさか禰豆雄が玄弥を止めるとは思ってもみなかったのだ。しかし、その後の禰豆雄の言葉を聞き、私は納得すると同時に呆気に取られた。
だって....
「お前が何かしたら姉さんに会うのが遅くなるだろう。七日も会ってないんだぞ。ホントなら今すぐ帰りたいんだ!」
と言ったからね。理由がもう禰豆雄らしくて、なんだか笑えてきた。
周りは呆れたまま動けていなかった。その一方で、禰豆雄は真面目な顔をして顔を傾げ、七海は禰豆雄の言葉を理解し、それに同意した。そして、私はその様子に苦笑いしていた。
しばらくして、玄弥が我に返った。玄弥は矛先を禰豆雄に変更したらしく、禰豆雄を睨みつけた。
「邪魔をするな!」
「邪魔?それはこっちの台詞だ。姉さんに会えないこの地獄からよく解放される時なんだよ!」
玄弥はそう言って、禰豆雄の胸元を掴んだ。だが、胸元を掴んだ玄弥よりも禰豆雄の方がイライラしている。もうすぐ帰れると思ったのに、時間が延びてしまったのが駄目だったようだ。
禰豆雄の殺気を感じ、周りは禰豆雄から距離をとった。特に、善逸なんて体をガタガタ震わせていて、今はまだ自分の意志で行動できないカナヲも顔を真っ青にして、その場から離れた。
玄弥と伊之助を含めたこの四人とはあちこち移動しても、会うことはなかった。それによって、禰豆雄の暴走を知らないのだ。そのため、禰豆雄の雰囲気にすっかり呑まれている。
...いや、会っていなかったのが良かったのかな。禰豆雄の暴走を知らないから、このくらいで済んだのかも.....。
実際に見たことのある他の人達は最終選別の時のことを思い出して、恐怖で震えている人がいれば、腰を抜かしてその場から動けない人もいて、失神している人までいた。
ちなみに、そんな感じで全員が禰豆雄の行動に注目している中、私と七海はいつもの調子でいたよ。もうこうやって殺気を放っているのには慣れているからね。
慣れていることを少し複雑に思うけど....。
.......さて、その殺気を至近距離で受けている玄弥はどうなっているのでしょうか?
はい。真っ青を通り越して真っ白になっています。
玄弥はもう禰豆雄の胸元から手を離していたが、今度は禰豆雄が玄弥の腕を離さない。
流石に止めた方が良さそうだね。原作では炭治郎が玄弥の腕を折っていたが、ここでは腕を折るくらいで済まないかもしれない。
そう思って、私は二人に近づき、禰豆雄の手を玄弥の腕から離させ、禰豆雄を説得した。すると、禰豆雄は渋々大人しくなり、殺気を放つのを止めた。
えっ?どうやって止めたのって?
これ以上やると、炭華との時間をまた短くすることになるよと言えば止まったんだよ。
禰豆雄が炭華関連で暴走している時には炭華のことを出せば大人しくなるからね。
でも、それで悪く言ってしまえば更なる怒りを買うことになるし、使い方を間違えれば完全に脅しだと思われ、本気で禰豆雄と喧嘩することになるので、時と場合、言い方などをよく考えないと駄目だ。
.....まあ、私は何年も禰豆雄と一緒にいて、こういうことへの対応をどうすれば良いのかは分かっているけどね。禰豆雄って、結構地雷があちこちあるから、慣れないと上手く対応するのが難しくなるんだよね。
禰豆雄が大人しくなった瞬間、輝利哉様は話を進めた。禰豆雄が殺気を放っている中、輝利哉様とかなた様はその場で静かに待っていられたのだ。
善逸達はその場から離れたのに、腕を掴まれて逃げられなかった玄弥以外で、二人だけはそこに立ったまま禰豆雄達をじっと見ていた。
しかし、二人の手が震えていることから、恐怖はあるのだろう。それでもこの場でその態度を表に出さず、私達の前に立っているのだから、本当に凄いと思う。
しかも、私達より年下なんだよ。
私が輝利哉様とかなた様の姿に感動している間に日輪刀の玉鋼を選ぶところまで話が進んでいた。
禰豆雄は本当に早く帰りたいので、説明が終わってすぐに手前の玉鋼を掴んだ。
そのまま離れようとする禰豆雄は私が止めたけどね。私達が見ない間に、禰豆雄が何か行動したら困るので。禰豆雄には悪いけど、待ってもらうことにした。
...すぐには無理だよ。私はせっかくの機会なので、じっくりそれを選ぶことにした。
私は視線に入って、これが良いと直感的に思ったものを掴んだし、七海も一通り玉鋼を見た後に選んでいた。私も七海も勘で選んでいる。
まあ、玉鋼はどれも似たような物だったから、ほとんど勘で選んでいるのだけどね。
それにしても、今は七海が落ち着いているね....。炭華に早く会いたいとは思っているが、それ以上にアニメで見たように玉鋼を選ぶことができて興奮しているようだ。......それに、自分の日輪刀が手に入るということを嬉しく思っているのもあるだろう。
前はそういったことができなかったからね....。
玉鋼を選び終え、隊服などの準備も全て終えた後、私達は狭霧山に帰った。七日間戦い続けたことで疲労はあったが、それ以上にあの二人は炭華に早く会いたいみたい。
ただ、炭華が目覚めているのかは分からないけどね...。だって、原作開始と修行期間を考えると、ここからは全て原作や前の時と同じ流れになるのではないかと思われるかもしれないが、炭華が私達の戻った時に目覚めるのかは確信できない。
そんなことを考えながら鱗滝さんの家に行くと......
「.....あっ」
「...おお。帰ってきたのか....」
「うー!」
「姉さん!!」
「炭華!!」
鱗滝さんが薪を持ち、炭華が料理の手伝いをしていた。
.....この様子だと、私達がここに来る前には...もしかしたら最終選別中に目を覚ましたのかもしれない。炭華、かなり馴染んでいる....。
私が目を覚ました炭華に驚いている間に、禰豆雄と七海が炭華に抱きつく。私はその様子を見て、炭華達のところに近づいた。
禰豆雄と七海が抱きついているから、炭華の手は塞がれているようだし、先に鱗滝さんに挨拶をしようかな。
「鱗滝さん、只今戻りました。......藤襲山の木をいくつか倒したりしていましたが、山は無くなっていません」
「....そうか...。.......よくぞ、戻ってきた」
私が鱗滝さんに藤襲山での出来事を報告すると、鱗滝さんは私を抱き締めてくれた。
おそらく抱き締めてくれたのは色々意味があるのだろうけど...今は私達が鬼殺隊に入れたことや炭華が目を覚ましたことを素直に喜ぼう。
たぶん.......この先で大変なことがいっぱい起きると思うけど....今は、ね.....。