笹の葉の少女は幸せを願う   作:日々草

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苦労人の少女は仕事をする

 

 

 

最終選別を生き残り、私達は鬼殺隊に入ることができた。炭華も目覚めることができて、今のところは順調だろう。

鬼舞辻無惨の襲撃が一年遅くなり、その代わりに修行期間が一年短くなってしまったことは少し心配だけど。

 

 

炭華が目覚めたことで禰豆雄と七海はかなりテンションが高い様子だ。だが、禰豆雄と七海が目を覚ました状態でも炭華から離れなかった。特に、七海は前で入れなかった鬼殺隊に合格したことで気分が凄く上がっていた。

鬼殺隊に入れたことで、二人の緊張の糸が切れたのだと思う。二人が凄く頑張っていたのは分かっているし、あまり突き詰めているのも駄目なので、最初は見逃していた。

だが、怪我をしていないのに、鍛練を休むのはあまり良いことではない。鍛練は重なれば重なるほどに実力がつくと同じように、鍛練を休めば休むほどに体が鈍ってしまうのだ。

 

 

なので、私は禰豆雄と七海をまた炭華から離して鍛練している。

文句を言われても、鬼殺隊の仕事で鬼を倒しに行く時にどんな鬼でもすぐに頸を斬れるようにしないと大変だよ、一人の鬼にかかる時間が長くなるほど、その日に斬ることができる鬼の人数が少なくなるし、炭華を人間に戻すのにますます時間をかけるよなどと言うと、文句を言うのは止めた。

さらに、炭華にも説明すると賛成してくれたので、二人は全力で頑張っている。

他にも、これからのためにも強くなった方がいいとか、鬼と多く出会えれば炭華を元に戻すことに繋がるのではないかとか、色々な人を助けたら炭華が喜ぶのではとか、そういうことを言ってみた。

私の言葉に、禰豆雄と七海は特に何も言わないで駄々をこねていた。だが、私の言っていることは炭華のことが多く、一理あると思ったようで、今では大人しく鍛練をしている。

 

 

そうやって鍛練をしているうちに、鋼鐡塚さんがやってきて、私達は日輪刀をもらった。

私は前の時と同じ無色透明に変わった。周りの反応もまた前と同じような感じであったが、全てというわけではなくても、既に幾つか知っている身としたら、あれこれ思案している鱗滝さんに申し訳ない気持ちになった。

それと、何も知らないふりをするのがとても大変だった。嘘をついたらバレるだろうし、そもそも私の場合はそんなの関係なしに気づかれる。七海がさりげなく話を逸らしてくれたこともあって、なんとか気づかれなかったと思う。

 

 

あと、七海と禰豆雄の日輪刀についても話しておこうかな。禰豆雄は炭治郎の立ち位置であるからか、黒色に変わった。これはある程度予想していたので、特に驚かなかった。

気になっていたのは七海かな。七海の日輪刀は藍色に変わった。七海の適正が海の呼吸(私が冗談で提案し、七海が採用した)であり、その呼吸が水の呼吸の派生でもあることから、この色になったのはおかしくない。

その藍色はとても濃く染まっていて、七海はこの色を気に入った。私も綺麗だと思ったし、見ていた鋼鐡塚さんも満足そうにしていた。

 

 

ちなみに、鋼鐡塚さんは禰豆雄が赫灼の子でなかったため、大暴れすることはなかったが、赤色がないことを残念そうにしていた。

そこは七海の日輪刀を見ても消えることがなかったみたいで、私には前の時と同じく、赤く染められるようになったら見せてくれと言われた。

私はそれに頷きながらまた申し訳ないと思った。

 

 

もう既にできるのだけど、どうやったのかという話になるので、できるとは言い出せなかった。

 

 

日輪刀を受け取った後、それぞれの鎹鴉から任務を言い渡された。どうやら任務先は別々のようだ。

そして、誰が炭華を背負って運ぶのかという話になった。私は薬やその道具を持っていくからと断ったが、禰豆雄と七海が全く譲る気配はなくて、時間がかかった。ただ、長時間もそこにいたわけではない。

私が二人にじゃんけんで決めるようにと言った後、私は自分の準備を終え、隊服にも着替えた。

それから、鱗滝さんから手作りの背負い箱を受け取り、その背負い箱の中に炭華を入れたり、七海と禰豆雄の荷物をまとめたりなどをして、二人が着替え終えたらすぐに出発できるようにした。

 

 

あっ。隊服と言えば、私の着る隊服はズボンで、七海は膝下のスカートらしい。まあ、スカートと言っても見た目はスカートに見えるズボン、キュロットである。私は動きやすいという理由でズボンだが、七海がこの服装になったのは前田さんという隠が原因で、その前田さんに短いスカートを渡し、七海がそれを見た瞬間に話し合いをしてくると言って、何処かへ行った。たぶん前田さんのところに行ったと思うし、七海が満面の笑みで帰って来たので、色々あってこうなったのだと想像がつく。そこは省略しておこう。

 

 

私?私のもそうだったけど、気づいてすぐに鱗滝さんへ報告したため、出発前には間に合った。

 

 

準備を終えた時に、この二人の炭華争奪戦は七海の勝利で終わり、悔しそうな顔をしている禰豆雄を慰め、任務が終わったら集まろうと言った。

その結果、禰豆雄は任務先で沼の入る三人に分身した鬼を瞬殺し、その近くにいたカップルの若者達を助けることになったのだが、詳しくは禰豆雄があまり覚えていないので、私もはっきりとしたことは分からない。

 

 

禰豆雄がすぐに任務を終えたように、私と七海も任務を問題なく終わらせた。

まあ、早かった方だと思う。

七海は炭華が後ろにいたことで、いつも以上にやる気が出たみたいで、すぐに終わらせたようだし、私は二人とも早く終わらせるのだろうと思って、急いでいたからね。

幸いにも次の任務は私達三人とも同じ場所らしいだから、合流することは可能だろう。だが、見つけ出すのは大変だと思うけどね。

 

何せ、場所はあの浅草だから。鬼舞辻無惨や珠世さん達の出会いの方が印象に残っているが、私はそもそも人の出入りが多い場所だとも思っている。あの人混みの中で上手く合流できるかという心配があった。

 

 

でも、その心配も杞憂で終えたみたいだったよ。互いに運が良かったらしく、ばったり出会うことができたんだよね。しかも、四人ともうどん屋さんの前で。

七海が炭華を背負い箱から出して、手を繋いで歩いていたことで、禰豆雄から凄い批判があったが、七海はいつまでも閉じ込めておく方が可哀想だと言って譲らなかった。

 

 

その後は炭華を巡って、また二人が言い争いになっていた。喧嘩にならないようにとは先に言っておいたし、ここはうどん屋さん以外にはいなかったこともあり、うどん屋さんに謝罪するくらいでそれ以上は何もせず、炭華と少し話していた。

ただ、迷惑をかけることは間違いないので、私はうどんを頼み、二人が落ち着くまで待つことにした。炭華は二人の様子をにこにこと見ていたので、二人のところに行ってみるのかと聞いたら、二人に近づいていった。私はそれを見ながらうどんを食べ始めた。

 

 

申し訳ないという気持ちになったのは確かだけど、ここのうどんがとても美味しくて、せっかくの機会だからと思って、食べることにした。 だけど、食べるのに夢中になってしまい、気づくのが少し遅れてしまったのだ。

 

 

私が異変に気づいた時には炭華が大通りに向けて走り出し、七海と禰豆雄がそれを追いかけていた。

それを見て、私は何が起きているのかに気づいた。急いでうどんの汁を流し込むように飲み干し、店主にご馳走様と一言告げてから、私も三人を追いかけた。

 

急いでいるのに、全部食べた理由?

あの店主が怖いからである。

 

 

私は炭華がどうして勝手に動いたのかを知っている。おそらく鬼舞辻無惨の匂いに気づいたのだ。原作では浅草で鬼舞辻無惨と遭遇するところがあったが、それは炭治郎が匂いに気づいたからである。

だが、この世界の禰豆雄は匂いに敏感な方であるが、炭華は禰豆雄よりも鼻が利くのだ。

つまり、炭華の方がとても優れている嗅覚を持っているということになる。しかも、炭華はあの場にいたことから、鬼舞辻無惨の匂いを覚えている。

 

 

もう分かっている方がいるでしょうが、炭華は鬼舞辻無惨を見つけて追いかけたということだ。

さらに、七海も浅草に無惨がいることを知っているし、少し考えれば炭華が誰を追いかけているのかというのにも気づいているのだろう。

既に知っているとなると、七海が何をするのか分からないね。こんなところで騒ぎを起こしたら大変なことになる。ここはたくさんの人がいるから、下手したら大勢の人の命が危険に晒される。なるべく、穏便に解決してすることを祈ろう。

 

 

 

それで、私が三人に追いついた時には炭華達以外にも別の人がいた。その人は私が来たことに気づき、振り向いた。その人の顔を見て、私はそれ以上に驚いて声を上げそうになった。

 

 

(兪史郎さん!?えっ!?今、何処まで進んでいるの?兪史郎さんがいるということは既に鬼舞辻無惨と接触して、鬼になってしまった人を抑えて、そこで珠世さんと兪史郎さんに出会ったということ?いや、珠世さんがここにいないからもっと先まで進んだの!

私が少し目を離した隙にそこまで進んだのかな。それとも、いくつか抜けたところとかあるのかな....?)

「彩花....」

 

 

私は兪史郎さんがいることに混乱しながらも、今は原作のどの辺りにいるのかと考えていた。

すると、私が凄く混乱しているのだと察し、七海が簡潔に説明してくれた。

 

 

炭華が私達から離れたのはやはり鬼舞辻無惨を見つけたからだったみたい。鬼舞辻無惨まで真っ直ぐに行って、そのまま突っ込んでいきそうだったため、七海がその前に炭華を捕まえてくれたそうだ。

 

 

七海が止めたのは周りの被害を考えたからというのもあるが、それ以上に炭華と無惨を会わせたくなかったみたい。炭華が逃れ鬼だとバレたら、炭華の身が危ないからね。無惨なら炭華を一目見れば自分の支配から解放されていると見抜けるだろうし、刺客を送り込んでくるのは間違いない。

何せ、原作でも前の時でも花札の耳飾りをしている炭治郎の命を狙っているからね。かつて自分をバラバラにして、殺す一歩前まで追い詰めた剣士の関係者かもしれないと考えても、凄い怖がっているよねと思ったよ。

鬼同士が協力できないようになっているのも、無惨が下剋上を恐れているからだし、反乱の火種は早く消したいと思うよね。

 

 

まあ、七海もそういうことを予想したから、炭華と無惨を会わせないようにしたようだし、炭華が振り解こうとしても離さなかったらしい。いくら炭華に甘い七海でも、流石に炭華が危ない目に合うのを分かっていて、離そうとは思わなかったようだ。

ただ、それを見た禰豆雄と口論になってしまったらしい。

禰豆雄はこちらの事情を知らないので、炭華を離すように言うが、七海はそれを拒否する。そんなことを言い合っているうちに、ついに互いが掴みかかり、喧嘩に発展しそうになったそうだ。

そこで炭華も我に返り、喧嘩を止めようとして助けを求めた人が珠世さん達だったらしい。

 

......いや、どんな偶然なの!

 

 

そう内心で叫びながらも私は兪史郎さんに向けて頭を下げた。

 

 

「三人がご迷惑をお掛けしました」

「まったくだ。珠世様に苦労をかけて」

 

 

私が謝ると、兪史郎さんは不機嫌な様子でそう言った。何かイライラしているようにも見えるし、二人が何かしたのだろう。

何をしたのか具体的には分からないけど、余程のことをしたのは確実だ。

兪史郎さん、ごめんなさい。後で珠世さんにも謝罪しないといけないね。

 

 

「それで、炭華を連れて貴方達の屋敷に行くことになったのですね」

「ああ。珠世様が言うには鬼舞辻の呪いを解いてるらしいからな。しかも、こいつらから話によると、人間どころか血すらも飲んでないそうだから調べたいそうだ」

「なるほど。私達の方も貴方達より詳しくないと思いますので、専門に任せたいと思っています。炭華を見て、呪いの区別がつくということはかなり知っているということで間違いなさそうですし」

「そうか...。......おい。こいつが行くと言ったから、早く行くぞ」

「.....ああ」

 

 

私が確認の意味を兼ねてそう聞くと、兪史郎さんは珠世さんの言葉を話してくれた。無惨は気づくだろうと思っていたけど、珠世さんも呪いのことが分かるのは予想外だった。でも、こちらには好都合でもあるし、せっかくの機会だからこの流れに乗ろうと思う。

私の答えを聞くと、兪史郎さんが禰豆雄に近づいてそう言った。禰豆雄は何故か不満そうな顔をしていた。

私は兪史郎さんの言葉と禰豆雄の反応に首を傾げた。

 

どういうこと?既に決まっていたのではなかったの?

 

 

すると、七海が小声でその説明してくれた。

 

 

「アタシは原作を知っていたから大賛成だったんだけど、何も知らない禰豆雄はとてつもなく反対したのよ。禰豆雄からしたら、会って間もないから仕方がないけど。炭華が懐いているから大丈夫じゃないのと言ったら少し大人しくなったけど、それでも珠世さん達への不信感が残っているから、どうしたらいいのかと考えて、彩花にも聞くことにしようと言ったのよ。

彩花ならアタシ達とは違った視線で何か言うかもしれないし、アタシ達の中で彩花が一番炭華の状態を知っているからって。彩花って、炭華の主治医みたいなところがあるもの。そう言えば禰豆雄も納得したし、珠世さん達にはもう一人いるから、その子にも話をしたいと言ったらそれならということで、現在に至るというわけよ」

「........七海も禰豆雄も、私を医者だと思っていない?一応手伝いはしているけど、私の本職は薬屋だよ。それと....七海。それは私に丸投げしたということじゃない?」

「いえ、アタシはそんなことしていないわ。むしろ、アタシはよくやった方よ。炭華と無惨が出会わないようにして、無惨が誰も鬼化させなかったし、珠世さん達とも会えたのよ。上出来だと思えない?

.....まあ、多少のトラブルはあったけど、結果的に禰豆雄も納得してくれたみたいだから結果オーライよ」

「いや、確かになんとかすることはできたけど...。....でも、できれば私に一言でいいから言ってほしかったよ...」

 

 

七海の話に私は医者ではないと否定しながら聞いてみると、七海は目を泳がしながらそう言った。普通なら禰豆雄を誤魔化せるけど、今回は完全に原作知識のことから賛成しまったため、言い訳を思いつかなかったみたい。

 

私は手伝いをしていても、医者というほどのことはしていない。一応薬屋であることが正しいのだから。

だって、資格とかを何も持っていないからね。医療資格を持っていないのに、医者を名乗るのはちょっと......。

 

 

「おい。貴様らはいつまでそこで油を売っているんだ」

「あっ。ごめんなさい。すぐにそっちへ行きます」

「流石にちょっと長すぎたかしら?」

「ったく。もう寝そうだぞ、そこの醜....」

 

 

私と七海が小声で話している間に、兪史郎さん達が進んでいたらしく、かなり間が空いていた。私が謝りながら近づき、七海も歩いて追いかけていると、兪史郎さんが炭華を見ながらあの言葉を言おうとした。その瞬間、強い風が兪史郎さんを襲った。しかも、その風で何かに当たったらしく、両方の頬から血が流れ出した。だが、出血量はそれほど多くなく、掠っただけで済んだようだ。

 

 

まあ、それ以上に兪史郎さんは驚いただろうね。だって、少し近くにいた禰豆雄はともかく、かなり離れたはずの七海が一気に自分のところまで来たのだから。その上、二人とも自分の目の前に拳を向けていたら、凄く驚くと思う。

 

何せ、この二人は本当に凄い勢いで兪史郎さんを殴ろうとしていたからね。.....私がぎりぎり二人の隊服を掴んで引っ張らなければ確実に...。

結構こんなことが起きそうだからと反射神経を前の時以上に鍛えることになり、今回のようなことが起きても二人が問題を起こす前に止められたのだ。

 

 

「七海!禰豆雄!落ち着いて!」

「ふふふっ.....。そういえば確かに言っていたわね。もう全然違うから、あまり頼りにしない方がいいと思っていたけど、まさか炭華に言うとは思わなかったわ...」

「彩花、止めるな。いくら何でも姉さんをあの扱いにしようとした罪は重い。今、ここで......」

「二人ともお願いだから、それは止めて!」

 

 

私が二人の隊服を引っ張って必死に止めるが、七海も禰豆雄も完全に兪史郎さんの言葉でキレているみたいで、私の手を振り解こうとしている。だが、私は強く握り締め、二人を離さないようにしながら二人を宥めていた。

しかし、私が何度も落ち着かせようとしても、二人は兪史郎さんを攻撃するのを諦めていないようで、凄い力で前に進もうとしている。私は地面を踏み締め、体重をかけていたが、二人がもの凄い力と速さで兪史郎さんの方へ向かっているらしく、少しずつであるが、引き摺られ始めていた。

 

こういう時だ。私の力が二人より弱いことを恨むのは。

 

 

「行くぞ」

「この状況で!?」

 

 

それ以上に私が驚いたことは兪史郎さんが七海と兪史郎さんの殺気を浴びながらも普通に話を進めていくところだ。私は兪史郎さんの態度に驚愕しながらも二人から手を離さなかった。

だが、力が少し抜けたようで、先程よりも私を引き摺る速さが速くなり出した。私はなんとか止めようと地面を踏み締めているが、一度進んでしまったものを止めるのは難しく、それはできなかった。

ただ、それでも少しは動く速さを抑えていることになるらしく、普通に歩いているくらいの速さで収まった。

私達の様子を見て、炭華がおろおろしていたが、しばらくして一緒にいた方が良いと考えたらしく、私達を追いかけ始めた。

 

ちなみに、私はずっとこの間も二人から手を離さなかった。私が隊服を掴むのを止めた瞬間、七海と禰豆雄が兪史郎さんに襲いかかるのは目に見えていたからだ。

 

 

そうしているうちに、兪史郎さんがある塀をすり抜けるように入っていき、原作を知っている私はあそこが入り口なのだなと思ったくらいだ。この塀をすり抜けるところを見たら少しは冷静になるかなと思ったが、あの二人は私の想像以上に怒っているらしく、そのまま兪史郎さんを追いかけて塀の中に入っていった。

私は二人とも躊躇がないと思いながら、炭華がここに入ってくるかと心配になった。原作ではあまりに突然兪史郎さんが壁を通り抜けていったから、炭治郎が信じられなくて固まっていたのだ。炭華もこの壁に驚いて固まってなければいいのだけど。

炭華の様子を見に行きたいけど、七海と禰豆雄を掴む手を離すことができなかったので、炭華が数分しても来なかったらここから出て、炭華の無事を確認しようと思う。

まあ、炭華もすぐに塀をすり抜けてきたけどね。ただ、いきなり私達がいなくなって心細かったそうで、ここに来た時に不安な表情をしていたうえに、私達の姿を見つけた後はずっとくっついていたからね。

 

 

その後、七海と禰豆雄を落ち着かせようと何度か別の話を振っていたら漸く大人しくなった。いや、大人しいとか冷静とかそういうのではないね。...むしろ兪史郎さんと楽しく話していて、賑やかな感じだから。

 

 

何を言ったのかって?

何か話を変えようと思ってたまたま見えた化粧道具のことを話題にしてみたら.....。

 

 

『それは俺が珠世様にプレゼントしたものだ。俺の贈った物で珠世様はまた一段と美しくなられた。......お前達はそいつを褒めているだけのようだが、そいつの美しさを磨こうとしないのか』

『『はっ』』

 

 

........なんて言うことがあってから、それからは三人で化粧用品の話をし始め、なんだか意気投合したんだよね。

私は途中から三人についていけなくなったが、とりあえず仲良くなっているみたいだからいいかな。

 

 

三人が談義している間に珠世さんに炭華の血を調べてもらい、少し珠世さんと話し合った後、手伝いもすると言った。

手伝いとは何かと思った人がいるかもしれないが、鬼の血を集めることである。話内容は大体原作と似たような感じだと思う。ただ、それを聞いているのが禰豆雄ではなく私であることは少しおかしいのだが、あの三人の邪魔をしたくないので、特に気にしないことにした。

後で私が説明すればいいし、鬼の血を集める手伝いも炭華を人間に戻すために必要だからと言えば協力するのは間違いないからね。

 

 

そんな感じで穏便に終わると思ったのだが、珠世さんの屋敷を何者かが襲撃してきた。私は原作通りになったのかと思いながら困惑していた。この追っ手は無惨が放つのだが、その原因は自分を追い詰めた剣士と同じ耳飾りをしている人間を見つけ、恐れて殺そうとしたのだ。

だが、原作と違って炭華達が無惨と出会っていないみたいだから、この襲撃は発生しないかなと思っていた。なので、原作通りに襲撃が起きたことに驚いた。

 

 

ところで、耳飾りをしているのは誰かって?

そういえば言っていなかったね。片方は炭華がつけているよ。いや、なんで片方なのと思う人がいると思うが、少し考えてみてほしい。耳飾りは耳に小さな穴を開けないといけない。耳に穴を開ける、つまり傷つけるような行為をあの二人が許すと思うかな。

 

 

.....うん。耳を傷つけるなんてと言って止めていたけど、炭華がどうしてもつけるのだと聞かなくて、何度も言い合った後に片方だけはつけていいということになった。

私は耳に穴が開くのが嫌と言っていたのに、それならもう両方ともにした方がと思ったけど、みんなが納得している様子なので、何も言わなかった。

 

 

まあ、それでもまだ問題が残っていたんだよね。もう片方の耳飾りは誰がつけることになるのかという問題が。

この花札の耳飾りはただ耳飾りではない。最強の剣士である継国縁壱が身につけていたものであり、日の呼吸の継承者である証のようなものでもあった。

竈門家ではその長子が受け継ぐことになり、炭華がつけるのは当然という感じだったのだが、禰豆雄が駄々をこねてしまい、炭華が片方だけをつけることになって、困ったのは二人のお父さん(炭十郎さん)だ。

 

 

代々受け継いでいる耳飾りを片方とはつけているので、約束を破ったことにはならないが、もう片方をどうするのかが問題だった。何処かに保管しておくにしても、失くしてしまったらもっての外だからね。大正時代であまり裕福でないことからなのだが、安全性は皆無だと思う。

誰かがつけている方が安心なのだが、ここで誰がつけるのかと争いになったのが禰豆雄と七海である。何故と思うかもしれないが、二人が言うには炭華とお揃いだからだそうだ。

まあ、確かに片方は炭華がつけているよね。もう片方を炭華と同じようにつければお揃いになるのか...?

でも、それでは代々受け継いできた耳飾りがなんだか可哀想だ。

 

 

それで、禰豆雄と七海の長い喧嘩の結果、私がこの耳飾りをつけることになった。

....何でと思う方がいると思いますが、私はもう慣れているので特に気にしていません。

あの二人の問題は大体私に行くことでなんとかなったものが多いからね。この時の件も私はまたかと思ったよ。

ちなみに、私はこの耳飾りをいつも結んでいる赤い紐に通して、髪飾りのようにして身につけている。

 

 

まあ話が逸れてしまいましたが、その襲撃者がどうなったのかというと.....七海と禰豆雄の手で瞬殺されていたよ。二人の行動は本当に早かった。二人が早く動いたのは家を攻撃されて炭華の上から瓦礫が降っているからという理由だった。

と言っても、その瓦礫は小さな物だったが、それでも炭華の肌に傷がつくと言って、兪史郎さんと協力して二人の鬼の頸を斬ったのは凄かったよ。兪史郎さんも珠世さんと暮らしていた家が壊されたことに怒っている様子だった。

そのため、禰豆雄と七海に協力的だった。

 

 

私は特にやることもなく、炭華と珠世さんと一緒に屋敷の地下に行った。時間的に日が昇りそうだったから、話し合うためにも日が当たらない地下の方がゆっくり話せた。

 

 

「彩花さん。炭華さんを私達に預けてみませんか?」

「えっ?」

「鬼との戦いがありますし、鬼殺隊として動いていれば炭華さんの身に危険が及ぶ可能性が高くなっていきます。それに、彩花さんはあの二人のことでも大変なはずです。炭華さんだけでも安全な場所にいて、手紙で近況報告もできますので、安心できるのではないでしょうか?」

 

 

私が珠世さんの提案にどうしようかと考えた時、私の手を誰かが握った。私が驚いて見ると、私の右手を両手で握りしめていたのは炭華だった。炭華は私をじっと見つめていて、私はその視線で炭華が何を言いたいのかが分かり、大きく息を吐いた。

 

 

私は禰豆雄と同様に炭華とも付き合いが長い。そのため、その視線で炭華が何を言いたいのかは分かる。

 

 

「珠世さんの気持ちはありがたいです。確かに炭華が安全なところにいると分かれば私も安心できます。ですが、私の個人的な願いでは炭華がそばにいてくれる方が嬉しいです。それに、炭華の好きにしてあげたいと私は思っています」

 

 

私は炭華に応えるように手を握り返した後、珠世さんに向けてそう言った。珠世さんは私の答えを聞いた後、私と炭華を見て微笑んでいた。

 

 

「ですが、七海さんと禰豆雄さんと一緒にいて、本当に大丈夫なのですか?」

「大丈夫です。あの二人とは炭華と同じように付き合いが長いですし、これからも私は一緒にいようと思っています。

色々問題は起こしますけど、それでもあの二人は悪いことをしませんから。.....たまに暴走することはありますが、それで見捨てるような関係ではありませんよ」

「...彩花さん達が大丈夫なら構いませんが......」

 

 

珠世さんの質問に私は大丈夫だとはっきり伝えた。七海も禰豆雄も炭華のことで暴走しても、そういう悪いところを補えるくらい良いところがあるので、私はあの二人と絶縁する気がないですし、むしろその繋がりを強化したいと思っている。

あの二人に絆されているのですよ。

 

 

 

 

その後、珠世さん達は新しい拠点を探しに行き、私達は鬼殺隊の仕事へと向かい........。

 

 

「とりあえず落ち着こう」

「無理無理ー!!イヤー!なんでこんなところにいるの。ここに何しに来たの。最終選別を終わった時、始まる前に微かに聞こえていた音がとんでもなく大きくなるし、周りも何故か怯えてる音をさせていたし、もうなんなの!男の方はなんか凄え怖い音がしてくるんだよ!しかも、ゴゴゴ...なんて音!もうヤダ!

女の子の方も凄え強いみたいだし、聞こえてくる音も雨が凄い降ったような音だったり、風が吹き荒れた音だったり、雷が鳴る音だったり、他にも色々な音があって、それらがいっぱい重なったような、不協和音みたいな音がする!でも、たまに穏やかな音がするんだよね。波のような音がして....」

「うるさい奴だな」

「今は眠いから、もう少し低くしてほしい」

「ギャアアアアァァ!!」

 

 

私は相手の頭を撫でながら宥めているのだが、相手が落ち着く気配は全くなかった。禰豆雄は泣き喚く相手を冷たい目で見つめていたし、七海は相手の高音が寝不足の頭に響くらしく、すっかり不機嫌だ。

 

 

なんとなく分かる人はいるかもしれないが、ここで誰なのか正解を発表をしましょう。正解は.......。

 

 

「善逸、七海も禰豆雄も不機嫌になっているだけで何もしてこないから」

 

 

善逸です。

 

 

私が七海と禰豆雄は何もしないと伝えているのだが、善逸は聞こえていない様子でまだ叫び続けている。

 

 

善逸と出会ったのは原作通りの流れだ。私達が次の任務のために歩いていると、道の真ん中で一般人の女の子に縋りつく善逸と出会った。

私は善逸がいるのを見つけた時、善逸の雀が飛んできた。

この雀は鎹鴉の代わりである。どうして善逸は雀なのか知らないけど、私はこの雀のことが可愛くて好きである。ちなみに、この雀の名前は『うこぎ』であるが、善逸は『チュン太郎』と呼んでいる。私も心の中ではチュン太郎と呼んでいるのだけどね。

 

 

私は両手で飛んでくるチュン太郎を受け止め、必死に善逸のことを伝えようとするチュン太郎の姿を見て、口元が緩みそうになるが、それでもチュン太郎の伝えようとしていることを聞き取ろうとした。

 

 

まあ、大方原作通りなのだと思う。チュン太郎の動きからして、そんな感じだからね。

 

えっ?どうして分かるのかって?

前の時に炭治郎のあの擬音語ばっかりで身振り手振りの激しい説明から聞き取ろうとしていたので、そういったことを理解するのに慣れてしまいました。チュン太郎のジェスチャーが簡潔で分かりやすかったというのもあるけど。

 

 

チュン太郎から大体が原作通りに進んだと分かり、私が善逸を一般人の女の子から引き離そうと前に出た瞬間、善逸が勢いよくこちらを振り向き、叫び声を上げた。

 

今度は何なの?

 

 

私は善逸が何を見たのかと思って振り向いたが、そこにいるのは七海と禰豆雄だけで後は誰もいなかった。

強いて言うなら、七海と禰豆雄が炭華の入っている背負い箱をどっちが背負うかで言い合っているくらいだ。

まあ、やりかねないと思っていたけど、それを今するのね。確かに、良さそうな

 

 

珠世さん達と離れる時は禰豆雄が背負っていた。浅草に行くまでは七海が背負っていたので、公平的に次は禰豆雄ということになった。

 

それなら、何故このような言い合いになっているのかって?

それは七海が交代するかと聞いて、禰豆雄がそれを断るということになっているのだ。ちょうど立ち止まっているから、交代するには良い機会だと思って言い出したのだろう。禰豆雄がすぐに断ったみたいだけど....。

その結果、互いに譲らない状況になり、今の状態に至るのだろう。

 

 

善逸を落ち着かせた後にあの二人の言い合いを止めないとね。まだ大丈夫そうだけど、そのうちに喧嘩に発展すると思う。

幸い、ここは周辺が田んぼばかりで人がいない様子だから、巻き込まれるのは私と善逸達の三人だ。ただ善逸達は私が庇えば平気だと思うけど、田んぼに被害が及ぶのは駄目ね。食べ物はいつの時代も大切なものだから。

 

そのためにも、早めに善逸をあの女の子から引き離さないとね。その後、七海と禰豆雄の喧嘩の仲裁をしよう。

 

 

私はそう思いながら何かに怯えている善逸と女の子に近づいた時......。

 

 

「もうヤダ!何でいるの、あの二人!なんか音がどんどん大きくなってるし!しかも、メチャクチャ怖い!

なんかヤバイの目覚めてない!」

 

 

ただ善逸のこの言葉を聞いた瞬間、私は漸く察した。善逸が怯えているのは禰豆雄と七海が原因だと。

 

 

いや、ごめんね。私、あの二人の喧嘩にあまりに慣れすぎているうえに、もっとまずい喧嘩を知っているため、今の段階は大丈夫だなとか、そろそろ危ないかなとかそういうのが分かるようになってしまっている。さらに、今までは村という閉鎖空間にいたり、修行中に山へ引きこもったりしていたから、あまり気づく機会がなかった。村の人達は七海と禰豆雄の暴走を全員知っているし、対処方法を大体理解できるくらいだ。狭霧山の修行の時もそもそも人の出入りがあまりなく、鱗滝さんは私とどう対処するかを決めていて、あまり動揺も見られないことから、特に問題はなかった。どんな行動をするのかは私が大体説明していたので、すぐに判断して対応していた。

 

 

なので、他の人が七海と禰豆雄の様子を見て、どう感じるのかというのをすっかり失念していた。例え私が慣れていたとしても、他の人は初めて知ることだし、全く慣れていないことであり、恐怖を感じてしまうくらいなのだということに気づけなかった。

 

 

私は善逸の様子を見て、どうするべきなのかと考えながら行動することにした。とりあえず最初に女の子に縋り付いた状態の善逸を引き剥がすことから始めた。

一応、これが当初の目的だったので。

 

 

「あ、あの.......」

「ごめんなさい。あの二人を含めて私がなんとかしますので、貴女はどうぞ行ってください。ご迷惑をお掛けして申し訳ありません」

「い、いえ。ありがとうございます」

 

 

戸惑っている女の子に、私は声をかけてこの場から離れるように言った。それと、色々迷惑をかけてしまったのは間違いないので、謝罪もしていた。女の子は私に頭を下げた後、すぐに走り去っていった。

 

 

急ぎの用事があったのか、七海と禰豆雄の喧嘩が怖いのかは分からないけど、どうやらこの場から早く離れたかったみたい。

....本当に彼女には申し訳ないことをしてしまったね。おそらく原作と同じ展開なのだろうから、任務に行くのを怖がって蹲る善逸に声をかけただけで巻き込まれたんだよね。彼女には何の非もないから、ますます罪悪感を感じる....。

 

 

......それにしても、さっきから善逸が静かだけど、どうしたのかな?私が女の子から引き離すまで騒いでいたのに。

 

 

「あの。さっきから静かだけど、大丈夫なのかな?私、そろそろあの二人を宥めないといけないから」

「はっ!」

 

 

私が善逸にそう声をかけた時、善逸が漸く正気を取り戻した?らしく、顔を上げて私の方を見た。そして、私の手を握り.....。

 

 

「ねえ!君って、最終選別の時にいたよね。なんか近くにヤバイ奴がいたし、怖い音をさせる子もいたけど、あそこにいたってことは君も鬼殺隊にいるんだよね!まさかこんなところで再会するなんて...!

これって、運命だよね!もう絶対に運命だよね!もう結婚するしかないでしょ!」

「ええ.......」

 

 

近寄ってそう捲し立てる善逸に私は非常に困った。善逸が女の子に対してこういうことをするのは、原作からも前の時からも知っていたけど、やっぱり自分がその対象になると、どうしたらいいのか分からなくなる。

 

 

どう対応するのが正しいのかと考えていると、善逸がまた悲鳴を上げた。善逸が怯えた目をしていたため、まさかと思って二人の方を見ると、七海と禰豆雄が善逸のことを睨みつけていた。

 

わあ、二人とも凄い不機嫌だ。七海と禰豆雄がイライラしていて、もはや周りに八つ当たりしてもおかしくない段階に来ている。確かに善逸がかなり大声で叫んでいたから、うるさかったと思うけど、そんな殺気を込めて睨まなくてもいいと思うよ。

それにしても、もう少し保つかと思ったのだけど....どうやら何か変なスイッチをどちらか押しちゃったのかな...。

.....考えるのは後回しにして、今は二人を落ち着かせることにしよう。

 

 

「とりあえず、少し離れてほしいかな。あの二人を宥めないといけないから」

「ええ!?あっち行くの!?駄目だよ!あの二人、凄い目で睨んでくるし!」

「....だからこそだよ。それに、私はあの二人と何年もいるから落ち着かせるのは得意だよ。大丈夫だから、ね」

 

 

私が善逸に離れるように言うが、善逸は手を離さないで私を止めてきた。

まあ、殺気が飛ばしてくるような相手のところに行かせたくないと思うのは普通だけど.....。

 

 

私はあの二人とは知り合いだから大丈夫だと言うが、善逸がなかなか手を離してくれず、どうにか善逸を宥めながら説得し、手を離してもらった。

その後、すぐに七海と禰豆雄も宥めて、機嫌を直してもらった。

 

 

あれ?なんだか宥める相手が増えてない?....まさか、これから善逸の宥め役もしないといけなくなるのかな.......。

 

 

 

 

よし。胃薬を作ろう。

 

 

 

 






大正コソコソ話

最初に隊服をもらった時、彩花と七海の隊服は短いスカートだったらしい。隊服を確認してすぐにそのことに気づいた彩花が鱗滝さんに報告したそうです。
その時の彩花は事前にズボンがいいと言っていた。理由は簡単。動きやすいからだそうですよ。
七海も彩花同様に動きやすいものでいいが、見た目でも可愛いのが良かったみたいで、カナヲと同じものが来たらそれを着たいと思っていたらしいけど、ミニスカだったので、少し前田さんと話し合ったようです。その結果、スカートを履かないことにして可愛いキュロットにしたらしい。

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