笹の葉の少女は幸せを願う   作:日々草

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今回は少しミスがあり、十分遅れの投稿となりました。
申し訳ありません。





苦労人の少女は柱に頭を下げる

 

 

 

七海と禰豆雄を宥めた後、善逸が私達と同じ任務だと分かり、一緒に行動することにした。と言っても、善逸は現在気絶していて、禰豆雄に背負われて運ばれたのだけどね。

 

 

どうしてそうなったのかというと、善逸は私達の鎹鴉が普通に話していることで大騒ぎしてしまい、禰豆雄にデコピンで気絶させられたのだ(禰豆雄となってもデコピンは凄い)。

それで、気絶した善逸を誰が運ぶのかということになり、気絶させた禰豆雄が運ぶことになったのだ。

 

私は気絶させなくても良かったと思うし、騒がしいと思っても穏便な対応があったのだから、反省の意味を込めてやらせることにした。

ちなみに、禰豆雄が善逸を背負うことになり、七海は炭華のいる背負い箱を背負うことができたので、七海がかなり上機嫌であった。

そのために七海が禰豆雄の責任にしたのである。

 

 

禰豆雄がかなり不満そうな顔で文句を言っていたが、気絶させたのは禰豆雄なのだから、これは自業自得だと思うよと言ったら静かになった。その代わりに禰豆雄が急に走り出し、私達は慌てて禰豆雄を追いかけた。

 

 

それにより、任務先である鼓屋敷に早く着いた。禰豆雄はすぐに善逸を下ろして、七海に炭華の入っている背負い箱を返すように言った。

そのためにさっさと目的地へ着こうと走ったんだね。

 

 

七海はそれに呆れていたが、それ以上に走らされたことが不満だったらしく、禰豆雄に文句を言っていた。私も呆れているけど、まずは善逸の様子を見ておこう。少し下ろし方が雑な感じがしたので、タンコブができていないか確認したが、特に何もなく、気絶しているだけのようだ。

 

 

私がそのことに安堵していたら、近くから物音がしたので振り向いた。すると、男の子と女の子がいた。私はその二人を見て、笑顔を浮かべた。二人が怯えているからというのはあるが、その二人のことを知っていたのもある。この二人は正一とてる子であり、原作で出ていた子達であり、前の時でも会ったことがある。

 

あの時は確か.....草笛を聞かせて、落ち着かせたな....。

 

 

その時のことを思い出しながら私は前の時と同じように草笛を吹き始めた。ただ、前回とは違うことも起きた。チュン太郎が私の肩に止まり、草笛の音色に合わせて鳴いたのだ。おそらく歌っているのだろう。

それと、チュン太郎が凄く可愛いくて、吹いている私がたぶん一番癒されている......。

 

 

私が吹き終えると、チュン太郎が正一とてる子の近くに行き、チュンチュンと鳴くと、二人は安心したらしく、その場に座り込んだ。

私は二人に視線を合わせて何が起きているのかを聞いてみたら、やはり二人の兄である清が鬼に連れ去られたようだ。

原作や前の時と同じだと確認し、私は二人の間に入って話し始めた。

....あの二人が言い合いするのは通常だから、もう省略するね。

 

 

私は鼓屋敷に生存者がいるみたいだから、早く屋敷に入ろうと言った。すると、背負う箱から炭華の引っ搔く音が聞こえた。炭華も早く行くように言っているよと私が言うと、二人は鼓屋敷に向かおうとした。だが、その前にまた炭華の引っ搔く音が聞こえた。しかも、先程の音と違うし、私も七海も禰豆雄も何を訴えているのかは理解した。

理解したのだが......。

 

 

「姉さん!駄目だよ!」

「そうよ、炭華!アタシ達は炭華を背負っていても、ここの鬼を全員倒せるし、助けられるから!何なら、彩花と禰豆雄だけでも全然平気なのよ!それなら、アタシはここで炭華と待っているわ!」

「狡い!俺が姉さんと残るから、七海が行ってこい!」

「ムー!」

「また喧嘩になっている...。.....しかも、七海も禰豆雄もそうだけど、炭華も譲る気が全くない....」

 

 

炭華の言ったことに禰豆雄も七海も反対した。そして、喧嘩にも発展した。また、炭華は炭華で自身の意見を変える気はない様子でムーと言っている。私はその三人の様子を見ながら溜息を吐きながら、箱と喧嘩しているようにしか見えない二人に怯えている正一とてる子を宥める。

 

 

普段あの二人は炭華の話に肯定的だが、例外なものもあるんだよね。炭華が危なくなることは流石にあの二人も止めるんだよ。場合によっては私も二人と一緒に炭華を説得する。

だけど.......今回の件、私はどっちに賛成した方がいいのか悩んでいる。

 

炭華が私達に何を伝えたのかというと...『私はここに置いていっていいから、早く助けに行くことを優先して』と。

 

 

....炭華の言い分は間違っていないんだよね。炭華を背負っている分、片方は少し遅くなるし、動きも少し鈍くなる。だから、炭華は少しでも多くの人を助けるためにも、ここに置いてほしいと言っているのだ。

鼓屋敷でまだ生きているであろう人達のことを思えば間違いではない。

 

 

だが、気がかりなことがあるんだよね。

......原作ではここで伊之助と出会うのだが、伊之助は背負い箱にいる禰豆子を斬ろうとするのだ。それを善逸が止めて禰豆子のことを守ってくれるという話なのだが....今回ではそれがどうなるのか分からない。

 

 

現在、善逸は気絶しているし、伊之助が鼓屋敷にいるかどうかも分からない。それに、炭華に万が一のことがあったら伊之助の命が危ないんだよね。あの二人が黙っているわけないし、私も炭華の身に何かあってほしくないし....。

.....でも、どうしたらいいのかな...。鼓屋敷での生存者はできれば全員助けたいけど、炭華を放置するのは不安だし.......。

....いや、でもそれなら.....。

 

 

 

私は喧嘩する二人の方を見た。もはや二人とも炭華を説得するのではなく、どちらが炭華と一緒に残るのかを言い合っている。たぶん、炭華を説得するのは難しいから、残る方に話を変えたね。

あの二人はなかなか折れないが、それ以上に炭華は頑固だからね。原作で炭治郎が二重の意味で頭が固いと言われているように、こちらの炭華も一度言ったら自分の意志を曲げないんだよ。

 

....この中で一番その傾向が強いのはおそらく炭華なのだと思う。と言っても、本人が納得したら渋々、本当に渋々折れてくれるけど。

 

 

でも、今回は心配があるけど、炭華の話に一理あるのは確かなので、炭華を説得することは難しそうだ。かなりの人数がこの鼓屋敷にいるかもしれないので、できれば時間をそこで使いたくない。

なので........。

 

 

「七海。禰豆雄。二人は早く鼓屋敷に入って」

「彩花!?」

「ちょっと、彩花!だって.....」

 

 

私の言葉に禰豆雄は驚き、七海は戸惑いながら何かを訴えようとしていた。

まあ、何を言いたいのかは分かる。七海がここに炭華と一緒に残りたいのも伊之助が炭華を攻撃してくるからだ。今の伊之助は鬼なら誰でも構わず攻撃してくるため、七海が心配するのは分かる。

 

 

「七海の心配は分かるよ。だから、私がここに残るよ。二人には悪いけど、怪我人を運ぶのは私に難しいから、ここに残って助けた人達の手当てをするよ。それでも心配なら早く鬼の頸を斬って、この屋敷の中にいる人達を救出してきて。炭華から離れる時間を少しでも短くするためにもね。この屋敷に鬼が何人かいても、二人なら大丈夫でしょう。

もしかしたら、私が離れないといけない時があるかもしれないけど、念のために保険はかけておくから、少しの間なら大丈夫だと思う」

 

 

私は安心させるように笑顔を浮かべながらそう言うと、七海は納得してくれた。禰豆雄も文句は言わなかった。

 

 

鍛えたおかげで一応人を運ぶことはできるけど、速く動くことは難しくなるし、少しよたよた歩いているような感じになってしまうために止めた方がいいと思った。七海と禰豆雄に運んでもらった方が安全だし、助かる確率が高くなる。

普通に走る時は私の方が速いのだが、何か重い物を持つと身動きが難しくなり、七海と禰豆雄よりも遅くなるんだよね。

 

 

少しでも多くの人を助けるためには七海と禰豆雄に運んでもらった方がいいというのは分かっているけど、どうしても悔しいと思うんだよね。

ずっと鍛えていても私が筋肉のつきにくい体質であるのは変わらないため、腕力があまりないのだ。七海や禰豆雄達の方が重い物を持てる。あれこれ鍛練して、筋力向上も目指した。

その結果、前の時よりは重い物を持つことができるようになった。凄く小さくても一歩前進したことが大事なので、このまま少しでいいから筋力を上げたい。

 

 

七海と禰豆雄ならこの鼓屋敷の鬼を全員苦戦なく倒せると思うし、例え不都合が起きても対応できると信じている。なので、私は炭華の安全を確保したり屋敷の中にいる人達を助けたりする方を優先することにした。

 

 

私は応急処置ぐらいなら可能な布や薬品などを道具が入っているポーチを二人に渡した。七海と禰豆雄は私が医者の仕事を手伝っていると、たまに来ることがあり、その時に七海も禰豆雄も医者の人に簡単な治療を教わったのだ。そのため、応急処置はできる。

こういう怪我をした時はどう治療したらいいのかというのは頭に入っているため、私は大丈夫だと思っている。

 

 

ちなみに、これらの医療道具が入っているポーチは私が余った布から作った物だ。薬を売っている時は大量の薬を持っていくために籠などを背負っていたが、現代のポーチのように物を取り出しやすいバッグが欲しいと思ったのだ。

今では非常時にすぐ出せるようにしておきたいものを入れているため、救急箱のような扱いになっている。

 

 

今回の任務、少し大変かもしれない。鬼と戦う方の意味ではなく、炭華を傷つけず、負傷者を助け出し、七海と禰豆雄を暴走状態にさせないことがかなり難しいのだ。

炭華は伊之助が来るまで特に危険がないので、今のところは大丈夫だ。だが、問題は鼓屋敷に閉じ込められた人の救出だ。鼓屋敷にどのくらいの人が閉じ込められたのかは分からない。二人以上いるのは確かだが、正確な人数が分からないため、どの程度の人がいるのかが問題だ。

あまりに多すぎると、私たち三人では手に負えなくなる。

 

 

私は七海と禰豆雄が屋敷に入っていったのを確認した後、正一とてる子に話しかけた。

 

 

「大丈夫。私達がお兄さんを助けるから」

「本当に?」

「うん。それと、お願いがあるの。この背負い箱がたまに音が聞こえたり動いたりするかもしれないけど、この中にいる子は誰にも危害を加えないから。それからね.......」

 

 

 

 

 

しばらく時間が経った後、私はたまに鼓屋敷から聞こえていた鼓を叩く音が消えたことに気づき、私は鼓屋敷の戸を開けた。

鬼の気配は感じないし、七海と禰豆雄がこの鼓屋敷の鬼を全員倒したと見ていいだろう。

 

 

私は怪我人を運んできてもいいように、背負い箱の中にある塗り薬や包帯に、タオルなどの布を準備しておいた。

ポーチの中に入っているものでは限りがあるため、ここで治療したり補充したりするという意味で用意する必要がある。

 

 

「彩花。この人をお願いできる?」

「うん、任せて。....ところで、屋敷の中はどうなの?」

「鬼は原作にいた三匹の頸を斬ったし、前の時に彩花が遭遇したという鬼も禰豆雄が斬ったみたいよ。それと、他の鬼殺隊の隊士はいなかったわ。.....じゃあ、アタシは他の怪我人を連れてくるわね。この人が一番危なさそうだから、急いで連れてきたというわけよ」

 

 

ちょうど私が準備を終えた時に七海が男の人を抱えてきた。私がカーペットくらいの大きさの青色の布を指差し、七海はその布の上に怪我している男性を横にした。その時に七海に鼓屋敷の状況を聞くと、そのように返事をされた。その後、すぐに七海は屋敷の中に戻った。

 

 

 

私は七海が屋敷に戻った後、男性を診た。

 

この男性、よく見たら原作で炭治郎達がここに来た時に二階から落とされて亡くなった人ね。前の時ではぎりぎり間に合ったそうで、鬼殺隊のところに行った後にお礼を言いに来ていたよ...。

 

 

この青色の布は村にいた時から使用しているものである。病院の手伝いの時に大怪我した人を横にさせようと思ったが、他の怪我人で場所が埋まっていて、地面ぐらいしかなかったが、流石にそのまま地べたというのは駄目だ。

この大怪我した人は背中にも傷がいくつもあり、地面で横にしたら砂や石などが傷口に入ってしまうため、そうするわけにはいかなかった。そこで、私は青色の布を地面に敷き、横にさせるということをした。

 

そのことがきっかけで、私はこの青色の布を使うようになった。ちなみに、この青色の布はたまたま布を売っている人にお金を叩きつけるような形で払って買い(緊急のために余裕がなかった)、その後からずっと使うようになった。勿論、使用したらきちんと洗っているし、消毒だってしているよ。清潔さを保つのは大事なことなので。

医者の人もこの件から下に敷く用の布が必要だと考えたらしく、後日何枚か布が置いてあるのを見たし、私の給料に布代が加算されていた。

 

 

私はその男性の容態を確認した。傷口がかなり深い。七海が上手く止血しているとはいえ、これは少し危ないかもしれない。病院に連れて行った方が良さそうだけど、私だけでは運ぶのが難しい。

それで、七海と禰豆雄にも手伝ってもらわないといけないから、二人が戻ってくるまではできる限りのことをしようと思い、色々処置していた。

 

 

そうしていると、二人がこの男性以外の怪我人を連れて戻ってきた。七海と禰豆雄が背負って来た二人のうち一人が正一とてる子の兄の清だったので、二人と再会してもらった。怪我はしているけど、命に関わるというほどではなく、足に消毒液をかけて布で押さえ、それを包帯で固定するだけで良かった。正一もてる子も安堵している様子で早く再会させることができて良かったと思った。

 

 

もう一人の方も出血がひどくないため、まだ大丈夫であろう。ただ骨折しているので、この人も病院に連れて行った方が良さそうだ。私は二人の方を診ている間、男性の容態が悪化しないかとそばにいてもらっている七海と禰豆雄に声をかけ、禰豆雄に男性を運ばせ、七海には骨折している人の方を背負ってもらった。私は重傷の男性の傷口を押さえたり容態が悪化した時のために一緒に行くということにした。

かなり危ない状況なので、何が起きてもいいようにしておかないと......。

 

それと同時に、私の鎹鴉の遠藤が空を飛び、七海と禰豆雄に何処が病院なのかを教えてくれた。

私は病院に連れて行く前に正一とてる子と少し話してから、病院の方へ向かった。

 

 

遠藤がこの近くの病院のことを知っているのは私が調べたからだ。鼓屋敷に行くことは知っていたので、事前に情報を集めた。それにより、遠藤も何処の病院が近く、どの道なら一番早く着くことができるのかというのが分かるのだ。

 

まあ、鬼殺隊に入って最初の任務の時も近辺の病院を調べていたから、遠藤も慣れたよね。怪我人がいたら放置することなんてできないので....。

 

 

その後、近くの病院に着いて怪我人の二人を預け、鼓屋敷に戻った。鼓屋敷ではちょうど善逸が伊之助から炭華の入る背負い箱を守ろうと覆い被さり、伊之助がその善逸を何度も蹴っていた。

 

 

これを見て、私はやはり原作の通りになってしまったのかと思うのと同時に、善逸が起きて炭華を守ってくれていることに安堵やら申し訳なさやら複雑な思いを抱いた。

 

 

善逸が起きているのは私が正一とてる子に起こしてくれるように頼んだからだ。緊急事態が起きたら、私もそれに対応しないといけなくなるから、いつまでも私がここに残るのは難しいと思った。そのため、二人に『私がここから離れるようなことがあったら、この人を起こしてね』と言っておいたのだ。

 

私が炭華や正一達から離れても、善逸がいてくれるなら安心だ。この時の善逸は眠っている状態じゃないと本領を発揮できないが、それでも何かが起きても三人を守ってくれると思った。

 

 

それと、気絶している善逸にも伝えておいた。

 

 

 

『私達がここを離れた時はそこにいる二人と近くに置いてある背負い箱のことをお願いね。あの背負い箱は私達にとって大切なものなの。大丈夫、味方だから。誰も傷つけないから。

.....頼んだよ』

 

 

 

私は善逸なら眠っている状態でも私の話を覚えているというのを知っているため、このように伝えた。なので、善逸に凄く申し訳ないと思っている。

これでもできるだけ離れないようにしていたのだけど......。

 

 

伊之助がまだいないことを七海から聞いた時に、既に嫌な予感がしていたけど、どうにもできなかった。炭華が無事なのは良かったけど、善逸に怪我をさせてしまったので、

 

 

私が一人で反省していたが、すぐに思考を切り替えた.....時には伊之助が禰豆雄と七海の手によって殴り飛ばされていた。

 

 

「さて、この猪をどう料理しようか」

「無難に鍋とかはどうかしら?沸騰したお湯の中に入れれば完成。簡単だし、今すぐ実行できるわよ」

「それもいいけど、俺は.........」

 

 

殴り飛ばし、鼓屋敷の壁にぶつかった伊之助の方に行って掴みながら、禰豆雄と七海が穏やかにそんな会話をしていた。ただし、会話の内容は穏やかではない。料理しようかと言っているが、伊之助を押さえていることから、どういう意味なのか分かる。

 

それに、その会話を聞いて、捕まっている伊之助は震えているし、張本人ではない善逸達も顔を真っ青にさせている。

まあ、無理もない。あの二人の様子からして、本気だというのは分かるからね。

....そろそろ止めなければと思うので、私も動かないとね。

 

 

とりあえず、炭華が無事なのかどうかの確認をしないと。あの二人を止めるためには一番重要なことだ。善逸の怪我の方も診ないとね。

 

 

「大丈夫?」

「う、うん、大丈夫」

「今はこれで冷やしていて。あの二人を止めた時くらいには少し腫れが引くと思うから、その後で薬を塗るからね」

 

 

私がが善逸に声をかけて診てみると、顔が腫れていて青くもなっている。頭にもタンコブができている様子なので、これは冷やしておかないといけないと思い、氷水の入った袋を渡した。

善逸が戸惑いながらも氷水の袋を受け取ったのを確認した後、炭華からも返事が来た。

 

あの質問が善逸だけでなく、炭華にも聞いているのだということに気づいたらしく、炭華はカリカリと引っ掻いて、怪我をしていないから大丈夫だと私に伝えた。

 

 

私はそれを聞いた後、七海と禰豆雄のところに真っ直ぐに行き、二人の腕を掴んだ。

 

 

「はい、そこまで。炭華は全く怪我してないよ。だから、落ち着こうね」

「彩花、この猪が何をしたのかは分かるだろう。それなのに......」

「同じ鬼殺隊の隊士ならあの反応が当然。私達はそれを覚悟して、それでもと思ってここに来たんだよ。

でも...善逸を蹴るのはやり過ぎだから、そこはきちんと謝ってもらうけど。ほら、二人がそんなに殺気立っているから、すっかり怯えているじゃない。

....いや、七海。まだ不満そうにしているけど、手ぐらいは離してあげよう。そんなところを持ったら流石に息がしづらいと思うから」

 

 

私が二人にそう話しかけると、禰豆雄が睨みながら言ってくるので、鬼殺隊に入る前に話し合ったことを出した。七海と禰豆雄とこのことは覚えているはずだ。私が何度も言ったのだから、忘れられたら困る。私にそのことを出されたら禰豆雄は何も言えなかったらしく、これ以上反論することはなかった。

それと、七海にも伊之助を離すように言った。最初に伊之助を見た時は二人が怖いのかと思ったが、七海が伊之助の首根っこを思いっきり掴んでいるので、もしかしたら酸欠しているのではないかと思って、解放してもらった。

その瞬間、伊之助が私の後ろに隠れ、『ゴメンナサイ』と片言で言っていたので、余程怖かったようだ。それとも、命の危機を感じたこともあるのだろうけど.....。

いくら何でも七海も手加減くらいはしてくれていると思うので、大丈夫だと思いたいが.......。

 

 

「とにかく、そんなに心配ならこの任務を終えた後、安全な場所で大丈夫かどうかを自分の目で確かめてみたらどう?そうすれば安心するでしょう」

 

 

私がそう言うと、禰豆雄も七海も渋々頷いた。

 

あの二人の優先度が一番高いのは炭華の安全確保だからね。炭華が無事であるみたいだが、どうしても不安が残っているらしいので、どうしても自分の目で確認したいと思うだろう。それを出されては二人とも勝手に行動するのは控えるはずだ。

 

 

私は善逸と伊之助の怪我の手当てをするから、七海と禰豆雄は先に屋敷の中にいる亡くなった人達の死体を外に運んできてほしいと頼んだ。

七海と禰豆雄がここに全て運び終える前に、私は善逸と伊之助の手当てをした。

善逸の方は冷やしたおかげで腫れが少し引いたけど、それでもあちこち殴られたり蹴られたりしたそうで、肌が青くなっている。

伊之助の方は禰豆雄と七海に壁まで吹き飛ばされた所為で打身ができている。

まあ、骨は折っていないと思うので、善逸と伊之助には湿布薬を塗った。

何かスースーするとか言っていたが、私はそれが怪我に効くから我慢してねと言って、穴掘りの手伝いをしてもらった。

 

 

禰豆雄と七海が戻ってくる前に埋める用の穴を掘らないといけないので、早く全員分の穴を掘っておかないと。何人分必要なのかは知らないけど、原作のあの様子だとかなり大変なのは分かる。

 

二人が塗り薬を塗る時に少し暴れてしまったので、時間が想像以上に減ったために、善逸と伊之助にも少し手伝ってもらった。正一とてる子達も手伝うと言ってくれたので、石集めなどの簡単なものをしてもらった。そのおかげで、どうにか禰豆雄と七海が来るまでに準備を終えられた。

 

 

禰豆雄と七海が運んできた死体を全部埋めた(ぎりぎり穴の数は足りた)後、みんなで手を合わせて黙祷し、正一達を村に送った。

ちなみに、これらのことをしている間、伊之助は私の羽織の袖を掴んで離れなかった。理由はなんとなく理解しているので、私は何も言わなかった。

何せ、あの二人が炭華のいる背負い箱をどっちが背負うかで争っていた時、その殺気で伊之助が震えていたからね(この時は善逸達も私の後ろに隠れていた)。

 

 

その後、私達は鎹鴉の案内で藤の花の家紋の家に着いた。私と七海と禰豆雄は怪我していないので、何も問題はなかった。善逸も数日で腫れが引くと言われていて、そこまで大怪我をしているわけではない。伊之助の方も善逸と同じく数日で治るらしい。

 

 

 

診察を終えてから、善逸が炭華の入る背負い箱のことを聞いた(禰豆雄が殺気を出したために、途中から私の後ろに隠れながら言っていたけど)。禰豆雄が大反対していたけど、私が炭華のことを分かっていて守ったことと、炭華が会いたいと引っ掻いた音を出していたことにより、善逸と伊之助に炭華のことを教えた。

七海が暴走しないなんておかしいと思うかもしれないが、七海もまた原作を知っているため、善逸なら炭華に危害を加えないというのは分かっていた。

なので、今回の七海は非常に大人しかった。だが、いざという時に動けるようにはしていた。

 

 

私はもう大丈夫だろうと思っていたので、それとは別の方の対応をしておこうと思い、そちらを意識した。

 

 

そして、案の定.....善逸が炭華に求婚し、禰豆雄と七海が動く前に引き止めた。

 

危なかった...。善逸ならやりかねないと思っていたので、すぐに動けるようにしたけど、本当にぎりぎりだった。

禰豆雄の反応は予想した通りだが、七海も同じことをするとは.....。....いや、予想したからこそ、禰豆雄よりも早く動けたのだろう。七海の拳に迷いも遠慮もなかったからね。

その風圧で少し掠って、善逸の髪が二、三本抜けたけど、直接当たらなかったから大丈夫だろう。

...善逸の顔は真っ青になって、体もガタガタ震えているけど。

 

 

その夜は七海と禰豆雄を宥めたり、怯える善逸を落ち着かせたりと忙しかった。

正直、すぐに寝た伊之助が羨ましかったよ.....。

 

 

 

 

 

それから、私達はこの近辺での任務が多く、善逸と伊之助のいる藤の花の家紋の家を拠点として動いたため、善逸と伊之助と一緒にいることが多かった。そのおかげで、禰豆雄も善逸と伊之助に気を許すようになってきた。ただし、炭華に近寄ろうとする場合は牽制している。

私と七海は原作から二人なら大丈夫だと思っているので、特に警戒はしなかった(七海は今でも善逸が炭華に近づいたら引き離しているけど)。

 

 

善逸も炭華に関わると、七海と禰豆雄が暴走するということを理解しているので、炭華に花を渡す時は二人がいないことを確認してから行動している。

ただ、あの二人は炭華のことに関してレーダーでも付いているのかと思うくらい敏感なので、見つかる確率が高い。見つかったら追いかけっこが始まるので、私がよくそれを補助しているし、追いかけっこが始まったらすぐに間に入って宥めている。

流石に人の家で騒ぎを起こすのは申し訳ないからね。

 

 

伊之助も炭華と一緒にいるのが落ち着くらしく、炭華と一緒にいることが多くなった。七海と禰豆雄はそれを引き離したいようだが、私がそれを毎回止めているので、我慢してくれている。

だって、炭華と伊之助の間に流れる空気が凄く和やかなので、それを途切れさせるようなことをしたくないと思った。それに、今の伊之助は炭華を子分ということで大切にしてくれると思うので、安心して任せられる。

 

七海も禰豆雄も伊之助に下心がないのは分かるため、少し躊躇するみたい。しかも、炭華が楽しんでいるため、どうしても離すことが難しいみたい。

 

 

ただ、その勢いで炭華を日の下に連れて行きそうになったのは焦った。体が燃える前に炭華を止めることができて良かったよ...。ちなみに、その後で伊之助にはきちんと炭華を日の下に連れ歩かないようにと言い聞かせておいた。不満そうにしたけど、七海と禰豆雄のことを出したらすぐに頷いてくれた。

伊之助もあの二人のことを大分理解しているみたい....。

 

 

 

 

そして、善逸と伊之助の怪我が治り、私達五人に任務が来た。その任務はお察しの通りの那田蜘蛛山である。

那田蜘蛛山に関しては前の時で禰豆子が丸ごと燃やすという行動をしたため、それ以上のことは起きないだろうと思っていた。

 

 

ただ、これは予想外だったよ。最初に出会う隊士に繋がる糸を斬った時に、標的を私に定められたのは。

糸がずっと私に向かってくるので、私は結果的にみんなと離れることになった。

これが分断の目的なのはなんとなく察していたが、攻撃があまりに多くて、仕方なく別行動せざるを得なくなった。

 

と言っても、善逸は原作の通りに動かなかったので、そのまま放置することにした。一応励ましたのだけど、あの様子では全く動きそうもなかったので、無理に連れて行くのは止めた。

なので、逆にここで待っているようにと言ってみたけど、たぶん原作のように那田蜘蛛山に入ると思う。

そのまま原作と同じ結果になりそうなので、善逸の方は大丈夫だろう。

 

 

 

おそらく禰豆雄と伊之助は原作と同じようなことになると思うし、七海がいることもあって、そちらは特に心配ない。

なので、私はこちらを解決しようと考えている。

何をって、この糸で体を縫ってこようとする血鬼術とその血鬼術を使っている鬼を。

 

 

私が別行動したのは攻撃が私に集中したからというのもあるが、この血鬼術を使う鬼の頸を斬るためでもある。

原作の中でここにいる鬼が使う血鬼術は人を操ったり、蜘蛛にしたり、凄い馬鹿力を発揮したり、糸玉に閉じ込めて毒で溶かしたりなどというような血鬼術を使っている。

原作やこれらの例で分かるかもしれないが、この血鬼術とは別物だというのは分かるだろう。こういった糸の使い方をする血鬼術の使い手は、下弦の伍である累の「家族」にはいなかった。

 

 

そのため、私と七海は原作で見たことのない鬼がいると思い、別々に動くことにしたのだ。私は山の中を走り回ってその鬼を探し、七海は禰豆雄と伊之助が鉢合わせた場合を考え、二人の近くにいることにした。

 

 

結果、その鬼は前世とかに関係のなかった。その鬼の姿を見つけ、仕掛けが分かれば頸を斬ることは可能だった。少し話をしてみたが、ただ人を食べてしまったことに後悔して、私に十二鬼月がいることを話してくれたので、違うと判断した。

 

炭華と禰豆雄の性転換のことから、これもその類いのものかもしれないと思い、とりあえず七海達と合流することにした。

 

 

そうして七海達を探していたら、七海と禰豆雄が凄い顔をしながら累を追い詰めているところを見て、それで色々察した。

 

 

下弦の伍は家族の絆を欲していて、原作では鬼でありながら兄の炭治郎を守る禰豆子を見て、本物の家族の絆に感動するのだけど、それで禰豆子を欲しがるという展開になる。

だが、ここで鬼になっているのは炭華である。つまり、累が欲しがるのは炭華ということになり、おそらく君の姉さんを頂戴とでも言ったのだろう。

 

 

......だからこそ、この状況になっているのだよね、きっと。

 

 

私がそう思いながらも放置することにした。

止めない理由は相手が鬼だからとか敵だからとかそういうのもあるが、そろそろあの二人のストレスをぶつけた方が良いとも思ったのですよね。

 

 

ここ最近、私は七海と禰豆雄の怒りが爆発させても、途中で止めていた。そのため、あの二人はその怒りを最後まで発散することができていなかったので、不満が少し残っているのだ。

そのため、そろそろ発散させておかないとまずいと思ったのだ。

昔、ちょっとした事件が起きてね。大暴れすることができなくなった結果、七海と禰豆雄の沸点がどんどん低くなっていくうえに、二人で何処であろうと喧嘩するようになってしまい、ついに何気ないことで他人の家を巻き込むという事態になり、それ以来何処かで七海と禰豆雄を思いっきり暴れさせるようにした。

 

 

だけど、竈門家の襲撃事件からはその余裕がなくなった。そのため、七海と禰豆雄は溜まったストレスを解消させる機会がなかったのだ。

 

 

それに、私が累の方を庇うと、それはそれで迷惑なことが起こると思うので止めておきたい。一応敵同士であるため、攻撃してくる可能性もある。

.....とにかく、そういった理由があるので、私は累を庇わず、二人を思いっきり暴れさせているというわけです。

 

そう思いながら、とりあえず炭華は回収しておいた。今のところは地面に凹みを作るくらいだから、まだ大丈夫である。木が幾つか吹き飛びそうであり、これ以上に酷い展開になりそうだと判断したら行動しようと思う。

下手すれば巻き込まれるかもしれないので...。

 

 

「お前達は....」

「あっ。義勇さん」

 

 

私が炭華と一緒にあの二人の暴走している姿を眺めていると、誰かが近づいてくる気配がした。私がその気配の感じる方を見ると、義勇さんがいた。こちらに向かってきた義勇さんは私と炭華に気づいたらしく、その場で止まった。

 

 

「お久しぶりです。元気でしたか?」

「ああ、お前達も元気そうで良かった。

........ところで、あの二人は......」

 

 

私が挨拶をすると、義勇さんは私達を見て少し安心した表情を見せた。だが、すぐに周りを見渡し出した。

まあ、七海と禰豆雄が近くにいないのは不自然に思うよね。あの二人が炭華にべったりなのは義勇さんも二年前のあの時だけで分かっているから、二人が離れようとしないということを察せた。

というより、炭華のことが気がかりであるが、あの二人がどうなっているのかも気にしているということでしょうね。

 

 

私は無言で後ろを指差し、義勇さんはその方向を見て、顔を真っ青にさせた。

これで、今がどういう状況なのかというのは分かってもらえたようだ。

 

 

「今動くと色々危ないので、ここに待機していました。義勇さんもこちらにした方がいいと思いますけど、如何でしょうか?」

「....分かった。そうすることにしよう」

 

 

私がここで一緒に待たないかと提案すると、義勇さんは即座に頷いた。

ここは七海と禰豆雄に任せてくれるという意味はあると思うが、単純に七海と禰豆雄が怖いと意味もあると考えている。

 

 

まあ、一度殺されそうになっているし、そこは仕方がないと思う。あの二人の暴走を知っている身からしたら、命を大事にしてもらえて良かったと思っている。

 

 

 

しばらくして、七海と禰豆雄が累の頸を斬った。その喜びで禰豆雄は雄叫びを上げ、七海は思いっきりガッツポーズしていた。

私は二人の様子を見て、あれだけ暴れればストレスも解消されたかなと思っていたが、義勇さんは手で顔を覆い、天を仰いだ。

 

 

「義勇さん、どうしたのですか?」

「.....前よりも強くなってる....」

「それはそうですよ。強くなるために修行したのですから」

「いや、そうではなくて.....想像以上に.........」

 

 

私が天を仰ぐ義勇さんに聞いてみると、義勇さんは静かにそう呟いた。私は最初に首を傾げていたが、漸く何が言いたいのかが少し分かったと思う。

 

義勇さんは呼吸を覚えて、鬼と戦えるようにしてくれたけど、ここまで強くなるのは予想外だったということなのは間違いない。だって、最初の時は凄い勢いで義勇さんに攻撃してきても、地面が可哀想なことにならなかったので、それが義勇さんにとってかなり予想外のことだったようだ。

 

 

まあ、私はいずれあの二人ならそれくらいできるようになりそうだと思っていたので、特に気にしていなかった。

鱗滝さんも『...すっかり強くなったんだな』と言っていて、なんだかげっそりしていたような.....。

あの時、私は七海と禰豆雄に稽古をつけていたから、かなりお疲れなのだなと思っていたけど、こっちの意味もあったのかもしれない。

 

 

私と義勇さんが話している間に近くが明るくなっていることに気づき、そちらの方を向くと、炭華から白い光が出てきて、その光が七海と禰豆雄を包み込み、光が収まった時には七海と禰豆雄の怪我が治っていた。

 

大きな怪我はなかったが、擦り傷が幾つかあり、土にクレーターを作っ?ていたために土埃で汚れていたはずなのに、それらは無くなり、綺麗になっていた。

 

 

これには七海も禰豆雄も、見ていた私と義勇さんも驚いた。

どうやら禰豆子の爆血ではなく、別の血鬼術を使うらしい。ここまで禰豆子と同じ立場ということで、炭華も禰豆子と同じ血鬼術なのだと思っていたのだけど、全て同じというわけではないみたいだ。

 

 

「炭華!この血鬼術、アタシ達を助けるために!」

「流石、姉さん。やっぱり姉さんは天使だ。いや、大天使に昇格したに違いない。はっ!それじゃあ、ついに姉さんが天に帰ってしまうのか。だけど、俺がそんなことをさせ....」

「はいはい。二人とも落ち着こうね」

 

 

全快したことに驚きながらも炭華が七海と禰豆雄を助けるために使ったので、七海はそのことに感動し、禰豆雄は炭華を褒め称えながら黒い何かを出していた。

 

大体、この後でそれが七海にも感染するので、そうなって暴走する前に止めた。

相変わらず、二人とも想像の斜め上の思考をしてくる.....。

 

 

そんなやり取りをしながらも少し穏やかな空気が流れ始めた瞬間、殺気を感じた。私はすぐに炭華の前に立ち、その攻撃を刀で逸らした。

 

 

「あら」

 

 

その声が聞こえ、私は炭華に攻撃してきた人物が義勇さんと同じ柱である胡蝶しのぶだと気づいた。それと同時に、原作でも禰豆子に攻撃してきたことを思い出し、私は頭を抱えたくなった。

 

原作にいない鬼のことがあってすっかり忘れていたけど、これがあったのだ。

 

 

「君達が庇っているのは鬼ですよ。どうして庇うのですか?それと、冨岡さんもどうしてそこの鬼の頸を斬らないのですか。鬼とは仲良くできないというのに、そんなんだから、みんなに嫌われるんですよ」

 

 

しのぶさんが私達に声をかけてくるが、私達(正確にいうと、私と義勇さん)はそれどころではなかった。

 

 

「義勇さん。あの人とはお知り合い....なのですよね?」

「ああ。......ここは俺に任せて、三人を連れて遠くに離れてろ」

「分かりました。...ほら、三人とも行くよ。緊急事態だから喧嘩をしている場合じゃない。禰豆雄が炭華を抱えて、七海は背負い箱を持って」

「もしもし。もしもーし」

「義勇さん、御武運を」

「ああ。そっちも」

 

 

私と義勇さんはそんな会話をしながらこの状況をどうするのか考えていた。とりあえずここから炭華達を離した方がいいので、しのぶさんの相手は義勇さんに任せることにした。

すぐに離れないといけないので、二人が喧嘩しないようにと私が先に決めておいた。七海に後で文句を言われるかもしれないけど、それ以上にここから離れることの方が重要だ。

 

幸いにも、二人ともこの状況が分かっているのか、禰豆雄はすぐに炭華をお姫様抱っこし、七海は近くにあった背負い箱を肩に背負い、私はその七海の手を引いて、義勇さんとしのぶさんから背を向けた。

 

 

背を向く前に義勇さんに一言かけると、義勇さんも同じことを返していた。私はその言葉を聞いて、この後の出来事を思い出した。

 

確か、この後でしのぶさんの継子であるカナヲも炭華を狙って攻撃してくる。でも、それはただ単に任務を遂行するためなのだからね。事情がどうであれ、隊律違反しているのは私達だし....。

 

 

そんなことを考えている間に上から誰かの気配を感じた。私が見上げると、カナヲが炭華を攻撃しようとしているところで、私は『ごめんね』と謝って七海の手を離した後、近くの木を足場に跳び、カナヲの服を掴んで引き寄せた。

その瞬間、先程までカナヲがいた場所に強く突風が吹き、その先の進路にあった木の枝が折れた。

 

 

ぎりぎりだったけど、何処も怪我していなかったかなと思い、カナヲの様子を見ると、カナヲは血の気が引いたような顔をして、『最終選別にいた』と呟いていた。その先はあまりに小さくて聞こえなかったが、私達のことを思い出したらしい。

 

......とりあえず怪我がなくて良かったよ。

 

 

「禰豆雄。この子を攻撃するのは止めて」

「だけど、そいつは姉さんに.....」

「彼女はただ任務に従っただけだから、責めるのは駄目だよ」

 

 

私はカナヲの無事を確認した後、カナヲを背に庇って、禰豆雄を説得する。あの様子だと追撃する気満々だったらしく、止めることができて良かったとほっとする。

 

伊之助の時と同様に、鬼殺隊なのだから鬼の頸を斬ろうとするのは当然だということを出し、それで宥めようとした。

...だが.......。

 

 

「そうか、そうだね。なら、あの女の方か」

 

 

禰豆雄がそう言って炭華を下ろした後、来た道を戻っていった。

 

あれ。....いや、そうではなくて......。

 

 

「ちょっと。禰豆雄!」

「あいつ、たぶん偉い人なんだよね!なら、きちんと責任を取ってもらわないと!」

「なんでそっちの方向に考えるの!」

 

 

私が慌てて禰豆雄を引き止めようと声を上げると、禰豆雄はかなり興奮した様子でそう言って走り出した。私は禰豆雄の斜め上の思考に頭が痛くなってきたが、あの禰豆雄を放置することができず、追いかけようとした時、腕を掴まれた。誰だろうと思って振り向いたら、カナヲが体を震わせながら私の腕に縋りついていた。

 

 

「ね、姉さんが...このままじゃ......お願い、姉さんを助けて.....」

 

 

カナヲが泣きそうな顔をしながら私に懇願してきた。私はとてつもない罪悪感を覚えた。

そういえば禰豆雄が行く前に殺気を放っていたし、顔を血走った目が飛び出るかというくらい開いていたから、それにやられたのかな。

 

 

私は何度も見ているので、暴走していると感じるくらいだけど、初めての人はやっぱりそうだよね。鼓屋敷で善逸と伊之助の反応がああだったのに、それ以上だとこうなると予想していなかったよ。

ごめんね、カナヲ。この時のカナヲは感情がまだ乏しい状態なのに、こんな表情をしているとはそうさせてしまうくらいだというのを知ったよ。

 

 

「分かった。禰豆雄はちゃんと止めるから、ここで待っていてね。炭華、ここで一緒に残ってあげて。七海は私と一緒に止めに行くよ。できることなら麻酔は使いたくないけど、あれだと止めるのは大変だから、強引な方を使わないといけなくなると思うから」

「...はあ......。分かったよ。禰豆雄が実行する方は色々まずいから、止めないといけないのは分かるわ」

 

 

私はカナヲの頭を撫でながらそう言った後、カナヲを炭華に預け、七海に声をかけて禰豆雄を止めに向かった。七海も禰豆雄の大暴れでしのぶさんに何かあるのはまずいと思っているので、協力的である。

まあ、炭華に何かあったら困るので、行く前に刀を奪っていたけどね。

 

後で七海を説得して返させようと思いながら、私達は禰豆雄を追いかけた。

 

 

すると、そこで見たのはしのぶさんに斧を投げて襲いかかる禰豆雄と、その斧を避けるしのぶさんと斧の狙いを逸らす義勇さんの姿だった。

 

 

「ちょっと、冨岡さん!これの何処かが人間ですか!鬼とは違いますけど、人間とも違いますよね」

「耐えろ。もうすぐ......」

「義勇さん、すみません!禰豆雄がそっちに行ってしまって。すぐに止めます」

 

 

私が七海に合図を送ると、七海は私の腕を掴み、私は呼吸を使って足に力を込めて踏み込み、近づいた時に思いっきり腕を振った。その瞬間、七海が私の腕から手を放し、今度は禰豆雄を羽交い締めして押さえ込んだ。禰豆雄が暴れているが、七海も力が強いため、すぐには振り解けない。その隙に私は薬を打った。

 

 

麻酔薬ではなく、少しの時間だけ体が動かなくなる薬だ。この薬はあまり害がないのだが、薬が切れた後の禰豆雄の暴れっぷりから使わないようにしている。体を思うように動かせなかったことがイライラしたらしい。

だけど、今回は仕方がないために使うことにした。.....後が色々怖くてもね。

 

 

「これで、禰豆雄はしばらく動けない、と。ありがとう、七海。暴走を止めてくれて」

「どういたしまして。今、禰豆雄に暴れられると困るからね......」

「あはは........」

 

 

私は七海に礼を言うと、七海は笑って返事をした。ただ、最後の小声で呟いた言葉には私は苦笑いを浮かぶしかなかった。

 

 

 

 

「禰豆雄がご迷惑をお掛けしました」

「い、いえ...」

 

 

私が頭を下げると、しのぶさんは戸惑った様子で頭を下げている。色々混乱しているというのが分かり、私は苦笑いを浮かべながら禰豆雄の説明をした。それで、なんとなく理解していただけたようで顔を真っ青にしていたので、炭華に手を出さない限り大丈夫だと言っておいた。

全然大丈夫そうではないけど.....。

 

 

あと、七海が炭華に手を出したらアタシを容赦はしないと宣言して、しのぶさんがそれを聞いて、私の方を見てくるので、私は静かに首を横に振った。

 

そういうやり取りを繰り返していくうちに、ガサガサという音を立てて、炭華とカナヲが草むらから出てきた。しかも、手を繋いで。

 

 

「姉さん!」

「ムー!」

 

 

すっかり仲良くなったんだと私が呑気にそんなことを考えていると、禰豆雄が炭華に駆け寄ってくる。どうやら炭華を見て、薬の効果を吹き飛ばしたようだ。

 

えっ?何でもありなのではって?

...それが禰豆雄なのだよ。

 

 

禰豆雄が炭華に抱きつこうとする前に炭華が地面を指差した。すると、禰豆雄がその場に正座した。その後、ムームーと炭華が説教をして、禰豆雄がそれを弁解しようとするが、炭華にそっぽを向かれ、禰豆雄は大泣きした。

地面を叩いているため、少し辺りが揺れているが、あまり問題はない。

 

 

炭華は禰豆雄を放置して、しのぶさんに頭を下げた後、血鬼術で怪我を治した。そして、おそらく慰める意味でしのぶさんを抱きしめ、近くにいるカナヲの頭を撫でる。そこに七海も入っていき、炭華がカナヲと七海を順番に撫でていく。

そこに義勇さんも入ろうとしたが、炭華が大変そうなので、止めておいた。

 

 

「伝令あり!!竈門禰豆雄!竈門炭華!生野彩花!生野七海!コノ四人.....エッ?何コレ?」

 

 

その時、鎹鴉が伝令を私達に伝えようとしたが、突然言葉を止めた。

まあ、無理もない。目の前で鬼の女の子が柱の一人が抱きしめ、二人の女の子の頭を撫でていて、その近くの足元で男が地面を叩き割っていて(次第に叩く力が強くなり、地面を割るほどになった)、その遠くで女の子がもう一人の柱の頭を撫でて(止めたら拗ねたので、代わりに私が撫でることになった)いたという状況だ。

結構カオスである。困惑するのも無理はない。

 

ちなみに、七海が生野と名乗っているのは竈門と名乗るのが畏れ多いという理由で辞退したからである。

まあ、それで生野を名乗るのかって聞いたのは私だけど....。

 

 

「ああ。鎹鴉さん、これが通常なので気にしないでください」

「ツ、通常?」

「はい、そうです。ところで、鎹鴉さんは私達に何か伝えることがあるのでは?」

「ハッ!伝令!竈門禰豆雄、竈門炭華、生野彩花、生野七海ヲ本部ニ連レテイケ!」

「そうですか。....本部ということはもう炭華のことで用があるのですね」

 

 

私が唖然とした様子の鎹鴉に話しかけると、鎹鴉は混乱していた。なので、私は頷きながら正気を戻すためにも尋ねてみた。それによって、鎹鴉は目的を思い出したらしく、漸くいつもの調子で伝令を言った。私はそれを聞いて、顔を引き攣りながらそう呟いた。

 

 

これから始まるのは柱合会議だ。それも柱合裁判だ。炭華に関してのね。私は原作でどういう展開になるか知っているため、この会議で何が起き、どんな結果となるのかは分かる。

.....だからこそ、凄い不安なのですよ。

 

 

私はため息を吐いた後、義勇さんに話しかけた。

 

 

 

 

何をするのかって?

 

 

作戦会議だよ!この後のための!何か行動しないと、胃に穴が開きそうだから!

 

 

 

 

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