今年最後ということで、今回はいつもより長くなっています。
それでは柱合会議編、楽しんでください。
良い天気なんだよね。雲も一つない快晴で、こんな日は洗濯物がよく乾きそうだ。
.......なんだけど、現在進行で嵐が来ているのは間違いない。矛盾だという人がいると思うが、これが正解だと私は思っている。
どうも。先程から現実逃避をしていました生野彩花です。これから、始まるのは柱合会議ですが、まだ始まっていないのに周りの空気はとんでもなく悪く、破壊音が響いています。
おっと、ここで禰豆雄選手が不死川選手に向けて拳を振り上げる。それを不死川選手が間一髪避けた。そこを狙って、七海選手が石を投げる。不死川選手、肩に思いっきり喰らった。
だが、不死川選手。肩を押さえながらもすぐに体勢を整えた。流石は柱だ。おっ。ここで禰豆雄選手が不死川選手に急接近し、再び拳を振り下ろした。
「彩花さん!何か固定できるものはありませんか!」
「おい!生野彩花と言ったな。鏑丸は無事か!それと、鏑丸。なんで俺を庇ったんだ...」
「伊黒さん、大丈夫よ!鏑丸君は元気になるって.....ぐすん。助かるんだよね、彩花ちゃん....」
「ねえ、早くあの破壊神と怨霊を止めてくれない?そろそろ屋敷が危ないんだけど」
「よもやよもやだ。あの二人を止めるのは俺には無理だ!柱として情けない!」
「いや、あいつらは人間でも鬼でもねェよ。あれは...地獄から這い出た化け物か怨霊か何かだろう。祭りの神でもあれを退治できねェ」
「南無阿弥陀仏。南無阿弥陀仏」
「彩花。......頑張れ」
状況がよく分からない方が多いと思いますので、そろそろ正気に戻りますね。すみません。
目の前の状況を認識しては気が遠くなりそうになるので、実況中継のような感じで語って、なんとか頭の中を整理しようとしていました。
ただ、この状況を一言で表すならカオスというべきであろう。これはなんとなく分かっていると思いますが。
大分現実を受け止めてきたので、そろそろ説明しようかな。
だけど、その前に.....。
「誰か筆を持っていませんか?筆なら細いですし、長さも結構あるので、鏑丸の体を固定させることはできるかもしれません!ですが、これは一時的なものですので、念のために治療した方がいいかもしれません」
「少し離れていますが、蝶屋敷より近い場所に蛇の治療もできる人がいます。そちらへ向かった方がいいかもしれませんね。私はその場所を知っているので、案内できます。伊黒さん、ついてきてください」
「あ、ああ...」
「甘露寺さんもできれば一緒にいてあげてください。あの様子だと心配です」
「わ、分かったわ!」
「七海と禰豆雄の件は鏑丸の治療が終わり次第に行います。
義勇さん!炭華を七海と禰豆雄の近くで、かつ日影の場所に連れて行ってください。あの二人の暴走を短時間で止めるには炭華の協力が必要です」
「ああ」
「ちょっと待て!その箱に入っているのって、鬼だがあの怨霊の姉だろう。出しても大丈夫かよ!」
「うむ!とてもじゃないが、化け「煉獄さん。それ以上言ったら貴方も標的になってしまうので、止めてください」.....うむ、そうだな」
「大丈夫です。炭華はあの二人と比べたら安全ですよ。
て。まだ出たら駄目だよ、炭華。そこは日が当たっているから、危ないよ」
.........とりあえず。一通り指示は出せたので、手を動かしながら説明しましょう。
このカオスな状況になったのは数刻前のことだ。
「義勇さん。それくらいで大丈夫です」
「.....もう少し緩めた方がいいと思うが」
「それ以上緩めてしまうと、縛っていることになりませんよ」
私は義勇さんに背を向け、義勇さんは腕を縛っている縄を何度も結んだり解いたりしていた。
何をしているのかというと、本部に連れて行くために私達を縛ったのですが、その中の私の縄だけを緩めて、解きやすくしているのだ。
私達を縄で縛っているのは御館様の身を守るためにやっているわけだが、それを破っていいのかと聞くと、安全のためだと返ってきた。
「あの二人は縄で縛ったくらいで大人しくならない。引きちぎるだろう。だから、彩花の拘束を解く方が安心できる」
「私と冨岡さんでは七海さんと禰豆雄君を止めることは難しいですから。縄で腕を縛っているのも御館様の身の安全のために拘束しているのですから、そのために拘束を緩めても同じですよ。
....できることなら、彩花さんがすぐに行動できるようにしたいのですが、他の皆さんに反対されたので無理でした。申し訳ございません」
「いえ、全然大丈夫ですよ」
義勇さんとしのぶさんの認識では七海と禰豆雄を拘束しても無駄だと思っているようだ。
...私はその認識が当たっていると思う。先程義勇さんが挙げた通りのことをやりかねないので。
しのぶさんは私の拘束を無しにしたかったようだが、それはできなかったと謝られた。
柱合会議があると聞いて、私は拘束されるだろうとは思っていた。何せ、鬼殺隊でありながら鬼を連れているということは鬼殺隊にとって裏切り者のようなものだ。そんな人物を連れてくるにしても、何をしてくるのか分からないから、何もできないように拘束しておこうと思うのは当然だ。
だけど、七海と禰豆雄のことを知っている人(私、義勇さん、しのぶさん)からしたら、それは悪手なんだよね。下手したら死人が出るかも......。
私は遠くを見ていたけど、義勇さんとしのぶさんの声で現実に戻った。ずっと現実逃避していたいけど、この確認は重要なので、なんとか堪えた。
何をしているのかというと、作戦会議ですね。この柱合会議を無事に終えるための。
私が義勇さんとしのぶさんに協力を頼んだ時は何事かと思ったらしいが、柱合会議で話し合いどころでは無くなる可能性があるというと、私の話を真剣に聞いてくれた。
最初は問題ない、大丈夫とか言っていたが、私が『鬼殺隊の人達って、鬼に家族を奪われたのでしょう。他の柱に会ったことはありませんが、全員が鬼を庇うような行動をした人を信じるとは限りありませんし、その鬼を殺そうとしてきませんか?』と聞くと、炭華の入っている背負い箱に近づかせないようにすると言ってくれた。
どうやら私の言う行動をしそうな人が思い浮かんだようだ。...おそらく私が思い浮かべた人も入っているだろう。
それ以外でも、持ち物が幾つか預けることになっても、吹き矢だけは義勇さんに持っていてもらい、いざという時に使用できるようにしたり、あの二人や私の心情から視界に入る方が安心できるので、精神安定のために隠へ預けずに二人の手元に置いてもらえるようにしたり、他の柱が炭華のことで何かを言えば不機嫌になり、後で色々大変なことをしそうなので、会議が始まるまでは他の柱が何か言う前に話題を逸らしてほしいと頼んだりした。
最後のが一番難しいというのは分かっているが、何の被害もなくこの会議を終わらせるにはこれが一番最適なんだよね。理想としては。
義勇さんもしのぶさんも流石に難しいらしいが、他の柱に何もしないようにとは言ってくれるそうだ。
それで、私達は本部に行くことにした。七海は炭華の背負い箱の前に立ち、警戒していたし、義勇さんとしのぶさんが他の柱を止めてくれたので、『斬首』と言われることはなかった。もし言ったらその瞬間にあの二人の餌食となっていたので、防げて良かったと心から思ったよ。
....できることなら、このまま何も起きなければいいと願っていたのだけどね........。
「できれば思い止まってほしかったです...」
「すみません。私も不死川さんがいきなりあんなことをするとは思っていませんでした」
「まさか、伊黒も手伝うとは思わなかった....」
「それなら、アイツらのことを先に言え。あんな危険な奴だと分かっていれば俺は何もしなかった」
「事情を説明している最中でしたので、それを最後まで聞いてほしかったですよ。質問されたら答えるつもりでしたので...」
私がため息を吐きながら目の前の惨状を見た。着いた時は綺麗な場所だと思っていた庭も今はあちこち荒れていて、砕けた石も周りにいっぱい落ちている。しのぶさんや義勇さんが申し訳なさそうにしていたが、なんとか私達から話題を逸らそうと頑張ってくださったのは知っているため、感謝している。
特に、義勇さんは何度か不死川さんに殴られそう(口下手で煽りのようになったから)になっていたので、体を張ってまで(本人は普通に説得しようとしているだけだと知っているが)やってくれたことを非難しようとは思わない。
伊黒さんの言葉にも話を最後まで聞いてほしかったという願望だけ言った。
一度他の柱に七海と禰豆雄の暴走のことを話そうと考えて止めた(話しても軽く受け取られる可能性があるから)ので、その負い目がある。その点を突かれると痛いが、一応まだ説明の途中であったことと、必要そうであったり聞かれたりした場合は本当に答えるつもりだったことから、そのように文句は言った。
あの順調だった状況が一気に悪化したのは不死川さんが耐えきらなくなってからだ。鬼殺隊の隊士でありながら鬼を連れていたことへの怒りやそのことをなかなか話さない苛立ちが頂点まで達し、遂に強硬手段を取った。
その苛立ちに義勇さんへの苛立ちも含んでいるのではないかと思いますが、義勇さんに悪気はないし、わざとではないことは確かなので、義勇さんは悪くないです。
七海は不死川さんが近づいてきたと分かり、警戒を強めたが、体を押さえつけられて地に伏すことになった。禰豆雄は七海が押さえ込まれる前に蹴り飛ばされ、炭華の背負い箱から離れることになった。
その時の七海と禰豆雄は大人しく縛られた状態のままだったので、抵抗しづらくて簡単にやられてしまった。それに、炭華に危害を加えようとしたのが不死川さん以外にもいたことが予想外だったのだろう。
私もそれは予想外だった。不死川さんが何処かで爆破するというのは想像できていたが、それを助太刀する人がいるとは思ってもいなかったのだ。
七海を地面に押さえつけたのは伊黒さんだった。伊黒さんが肺のところを思いっきり肘で押さえつけたため、七海も伊黒さんを押しのけることができなかった。そうしていくうちに、不死川さんが刀を抜きながら炭華に近づいていくため、私はすぐに緩められていた紐を解き、炭華の背負い箱を持ってその場を離れた。
本当に間一髪だったよ。私がちょうど背負い箱を掴んだ時に、不死川さんが刀で刺そうとしたのだから、私の手を少し掠ったくらいで炭華には怪我一つなかった。
ただ、炭華を傷つけようとした人をあの二人が許すのかというと、許すわけがないと言える。もしこの件を許すことができるなら、防げていたであろうことが多くある。
まあ、簡単に言うとあの二人が暴走してしまったというわけです。
不死川さんは炭華を庇う私に何か言っていたが、私はそれどころではなくてその内容を聞いていなかった(申し訳ありません、不死川さん)。というか、私が答える時間もなかったと思う。
だって、不死川さんが私達に近づこうとした瞬間、禰豆雄が不死川さんのいた場所へいたのだから。
不死川さんは禰豆雄の気配に気づき、その場から離れたらしい。私も巻き込まれないように後ろに下がったし。
一度避けたからと言っても、禰豆雄がそれで終わらすわけがなくて、その後も不死川さんへの攻撃は止まなかった。たぶん、禰豆雄が満足するまでは続くだろう。
一方、七海も伊黒さんに押さえつけられていたが、一気に押し返した挙句に拳を向けていた。だが、それは伊黒さんの首元にいる鏑丸が羽織を引っ張ったことによって回避できた。
.....その代わり、七海の起こした風圧によって鏑丸が吹き飛ばされ、思いっきり木にぶつかるという大怪我を負うことになったけどね。
伊黒さんが鏑丸の方に行ったのを確認した後、七海はもう邪魔しないだろうと判断して、不死川さんのところへ行き、石を投げ始めて今に至る。
「....あれが二人の通常運転ですから、皆さんも早く慣れた方がいいと思います」
「いや、無理だろ。あんなの慣れるか!」
「うむ。あれを無視することなどできまい!それにしても、見事な剛球であるな!この庭にあった石であそこまでの威力を、ぶつけられる石も投げた石もあの力では割れるのも無理はないが.....とにかく、あれは現実逃避したくなるな!」
私は手拭いを巻いた手で差しながら言うと、宇髄さんと煉獄さんが首を横に振った。
私が掠り傷で出てきた血を見て、その怪我を呼吸や手拭いで応急処置した後、他の柱が私の周りに集まってきて尋ねた。
あの二人は地獄から来たのかと。怨霊やら破壊神やらと色々言ってきたので、私は人間だと答えると、嘘だろうと言われた。
信じられないかもしれませんけど、本当なのですよね。まあ、一名だけは元上弦の伍がつきますが、それは前の時のことであるため、紛れもなく人間なのは間違いありませんよ。
あの二人を止めないといけないと分かっても、今は鏑丸の応急処置が先であるため、後回しにした。
とはいえ、藪をつついてヒドラを二匹も出したので、その責任を取ってくださいねという思いはある。本当なら伊黒さんにも不死川さんと一緒でと言いたいところですが、鏑丸に免じて許します。
今回のことは私も怒りを覚えている。だって、二人が余計なことをしなければもっと穏便に終わらせる予定だったのだ。
那田蜘蛛山の任務を終えてから、あまり休まずにこの会議をどう乗り切るのかを考えていて、全く休まないであれこれ考えていたのに、こうなってしまったので、流石に私もこれには我慢できなかった。
特に、義勇さんとしのぶさんが協力してくれていたし、その二人に頭を下げさせているのですから、私はその分を本人達が支払ってくださいという気持ちである。
なので、私が鏑丸の治療をしている間くらいはきちんと相手していてくださいね。
「彩花さん。何か固定できるものはありませんか」
しのぶさんも鏑丸の方を手伝ってくれている。その鏑丸の状態だが、叩きつけられた時に何かで切ったらしく、その傷口をガーゼや包帯で塞ぐことはできたが、少し出血しているため、あまり動かないようにするために固定したい。
しのぶさんも同じことを考えたらしく、固定できそうな物を私が持っているか聞いてきた。
その様子だとしのぶさんも持っていないらしいので、何か代用できそうなものを考えないと.....。
....でも、蛇の動きを制限できそうなものとなると......細長くて.....そうだ!
「誰か筆を持っていませんか?筆なら細いですし、長さも結構あるので、鏑丸の体を固定させることはできるかもしれません!」
私は周りの人達に筆を持っているのかと尋ねた。すると、報告書のためなのか持っている人が多く、伊黒さんも持っていたため、本人の筆をお借りした。
「おい!生野彩花と言ったな。鏑丸は無事か!それと、鏑丸。なんで俺を庇ったんだ...」
「伊黒さん、大丈夫よ!鏑丸君は元気になるって.....ぐすん。助かるんだよね、彩花ちゃん....」
筆を受け取った時に伊黒さんが鏑丸の様子を聞いてきた。伊黒さんは鏑丸がぐったりしたところを見ていたので、とても心配しているようだ。しかも、自分が原因での怪我であるため、罪悪感があるみたい。そんな伊黒さんを甘露寺さんが慰めようとしているけど、その甘露寺さんが泣きそうになっている。
伊黒さんと一緒にあちこち行っていたくらいだから、鏑丸とも親しくしているだろう。その鏑丸が大怪我をしているため、凄く心配しているし、不安なのだと思う。
だが、鏑丸の体調が悪くなるのはいけないため、ここは本当のことを話そう。
「ですが、これは一時的なものですので、念のために治療した方がいいかもしれません」
「少し離れていますが、蝶屋敷より近い場所に蛇の治療もできる人がいます。そちらへ向かった方がいいかもしれませんね。私はその場所を知っているので、案内できます。伊黒さん、後でついてきてください」
「あ、ああ...」
「甘露寺さんもできれば一緒にいてあげてください。あの様子だと心配です」
「わ、分かったわ!」
私が病院のことを出すと、しのぶさんが蛇の治療のできるところに心当たりがあるらしく、そこに案内すると言っていた。
それにしても、そんなことまで知っているとは....。.....しのぶさんが医者であるため、そういった人達との交流をしているのかな。もしかして、鬼殺隊の中に蛇を連れている人(伊黒さん)がいるため、その蛇(鏑丸)が怪我をした時に備えていたのかな。
まあ、そういうちゃんとした場所が分かっているなら、鏑丸の体調が悪くなっても大丈夫そうだ。
ついでに、伊黒さんと甘露寺さんを落ち着かす意味も込めて、付き添わせることにした。
一番の目的?二人が結ばれるように応援することですよ。
「ねえ、早くあの破壊神と怨霊を止めてくれない?そろそろ屋敷が危ないんだけど」
「よもやよもやだ。あの二人を止めるのは俺には無理だ!柱として情けない!」
「いや、あいつらは人間でも鬼でもねェよ。あれは...地獄から這い出た化け物か怨霊か何かだろう。祭りの神でもあれを退治できねェ」
「南無阿弥陀仏。南無阿弥陀仏」
「彩花。......頑張れ」
私が鏑丸のことを考えていると、隣から声が聞こえてきた。
他の皆さんには避け続ける不死川さんとそれを追いかける七海と禰豆雄を見て、どうにか止めようと思っているらしいが、全く止まる気配がないし、諦めて私に尋ねてきた。
なので、まだ関わらないようにと言っておいた。
言っておくけど、これは不死川さんへの意地悪ではない。単純にあの間に入ることが危険だからである。七海も禰豆雄も途中で止めさせると不機嫌になる。それは暴走が酷ければ酷いほどに増していく。あの暴走ぐらいだと、中途半端に関わってしまえば確実に巻き添えを食らうことになると思う。なので、あの暴走を止めるにはまず自分が巻き込まれないようにするというのも意識しないといけない。
後半に関しては....。
悲鳴嶼さんは念仏を唱えているけど、これはどういう意味だろう。ただ単にいつものような感じなのだと思いたいけど、鎮める意味を込めて唱えているのかな...。....よく分からないですけど、鎮める方だとしたら七海も禰豆雄もそういう類いではありませんので、無意味ですよ。
あと、その念仏は不死川さんに向けてでも駄目だからね。あの二人を殺人犯にしないで。
義勇さんは......応援をしてくれているようです。私があの二人を止められると知っているので。
あの三人が私にあれこれ言っているのって、義勇さんが私ならできると話したのかな。
「七海と禰豆雄の件は鏑丸の治療が終わり次第に行います。
義勇さん!炭華を七海と禰豆雄の近くで、かつ日影の場所に連れて行ってください。あの二人の暴走を短時間で止めるには炭華の協力が必要です」
「ああ」
私の言葉に義勇さんは頷き、炭華の入っている背負い箱をこちらに持ってくる。それを見て、義勇さんとしのぶさん以外の柱が慌てた。
「ちょっと待て!その箱に入っているのって、鬼だがあの怨霊の姉だろう。出しても大丈夫かよ!」
「うむ!とてもじゃないが、化け「煉獄さん。それ以上言ったら貴方も標的になってしまうので、止めてください」.....うむ、そうだな」
宇髄さんと煉獄さんが炭華を出していいのかと心配する。義勇さんとしのぶさん以外は炭華に会ったことがないので、鬼でもどんな鬼なのか知らないし、その鬼が危険かも分からない。なので、私達がいきなりその鬼を出そうとすれば止めようとする。
特に、禰豆雄を見た後にその姉の炭華のことはどんな生き物なのかと思うでしょうし。
「大丈夫です。炭華はあの二人とは違って安全ですよ。
て。まだ出たら駄目だよ、炭華。そこは日が当たっているから、危ないよ」
私は煉獄さん達を安心させるように笑って宥めていると、背負い箱がガタガタ揺れた。私は炭華が二人を止めに行こうとしているのだと察し、まだ外に出ないようにと注意した。
ちなみに、義勇さんとしのぶさん以外の柱は炭華が背負い箱を揺らす度に怯えていた。
「よし、鏑丸はこれで大丈夫です。念のために病院は行かないといけませんけど、応急処置でできることはこれで全部だと思います」
「あ、ああ......」
私は鏑丸の応急処置を終えた後、伊黒さんに声をかけた。伊黒さんが返事をしたのを確認した後、すぐに七海と禰豆雄を止めるために動き出した。
まず最初にやったのは炭華のいる背負い箱を木陰まで運び、そこで炭華を外に出した。
炭華は外に出てすぐに七海と禰豆雄によって荒れた庭を見て、申し訳なさそうに顔を歪めながら義勇さん達の方を向き、頭を下げた。私も一緒に頭を下げる。ちゃんとした謝罪はこの騒動が終結してからもする気ではあるけどね。
頭を上げた瞬間、私と炭華は顔を見合わせ、互いに頷き合った。そして、私は動き出した。一応吹き矢を持っているけど、吹き矢は最終手段にするつもりだ。
後遺症が残ったら困るというのもあるが、吹き矢はたった一本しか持っていないのだ。吹き矢を持ってきて良いと言われても、その吹き矢自体は渡されたんだけど、替えの注射器型の矢は貰えなかったのだ。これは伝達ミスである。ここに来る前に一度荷物を預けて、その後で吹き矢は返してもらうことになっていた。だが、その中に替えの吹き矢が入っていなかった。私達の荷物はもう既に蝶屋敷へ送られた後らしく、今から吹き矢を取りに行くことはできず、柱合会議も始まってしまうため、吹き矢は中に入っている矢が一本あるくらいである。
裁判を受ける身であることを考えると、吹き矢が一つでもあるだけでも良い方だ。
だが、吹き矢を一本しか使えないので、七海と禰豆雄のどちらかを眠らせて、もう片方は自力で押さえることになる、
でも、それよりも良い方法があるため、それを使うことにした。駄目だった場合はあの吹き矢を使うしかないけどね。
私は憂鬱な気持ちになりながらも気を引き締め、七海と禰豆雄の間合いに入った。
そして......。
「(禰豆子直伝の)蹴り!」
不死川さんに攻撃している二人の間まで行き、脚を振り上げた。それにより、禰豆雄は後ろに跳んで距離を取ったし、七海の持っていた石は私が遠くに蹴り飛ばした。
ちなみに、この蹴りは前の時に禰豆子に何故か教えられたものであり、今ではそれが七海とこの世界の禰豆雄の暴走を止めるのに役立つとは予想外だったな....。
「彩花。何を.....」
「二人ともやり過ぎだよ。他人の庭をこんなに荒らして....。...七海と禰豆雄が怒るのは分かるけど、とりあえず攻撃はもう止めようね」
「でも......」
「そこまでやると、どっちが被害者なのか加害者なのかも分からなくなるから。それと、炭華も話があるみたいだから、あの木陰に行こうね」
「「行きます」」
不死川さんを庇うように立つ私を見て、七海も禰豆雄も不満そうな顔をしていたが、私はそれを無視して話しかける。それでも二人は止める気がないみたいなので、私は炭華の名前を出した。
何を始めるのかって?
説教です。流石にやり過ぎの場合は私と炭華が叱っている。特に、今回は被害が出ているので、遠慮なく言うよ。
「これで治療は終わりですけど、大丈夫ですか?」
「...あァ。それと、お前の『死ぬ気ですか』の意味がよォく分かったァ」
騒動が落ち着いた後、私は不死川さんの怪我の治療をしていた。あの七海と禰豆雄の攻撃を受けて、不死川さんは隊服がすっかりボロボロになっていたし、掠り傷も多かった。
禰豆雄のあれは風圧がなのだけど、それでも擦れば傷になるからね。七海は石を思いっきり投げていたことから、それは怪我になる。
しかも、七海もたまに拳を使っていた。七海の拳も下手したら禰豆雄同様かそれ以上の威力を持っているかもしれないのである。
まあ、何を言いたいのかというと、不死川さんの傷が多いのも無理はないと思っている。
とりあえず不死川さんの怪我にガーゼで消毒液を塗って、そこに新しいガーゼを貼るというのをしのぶさんと一緒にやった。治療を終えた後、不死川さんに声をかけてみたが、それによって出た言葉があれである。
詳しく聞いてみると、私が炭華を助けた時に言っていたことを指しているらしい。あの時の私はその後の対応のことで頭がいっぱいになっていた。なので、不死川さんに何を言ったのか覚えていなかったのだが.....『止めてください。貴方、死にたいのですか』と叫んでいたようだ。
どうやら完全に本音が漏れていたらしい。あの二人のことを知っている私からしたら、自殺志願のような行動をしていると思ったからね。
最初は馬鹿にしているのかと思ったようだが、あれを知れば納得したらしい。
確かにオメェからしたら死に急ぎ野郎にしか見えねェなと言われて、私は苦笑いしかできなかった。
ちなみに、炭華はまだ七海と禰豆雄に説教している最中である。
「にしても、よくあいつらと一緒にいるな。普通避けねェかァ」
「慣れれば平気ですよ。私、適応力は凄いですから。それに、あの段階はまだ大丈夫なので」
「オイ!まさか、あれは本気じゃねェのかよォ?」
「はい。未遂で済みましたので、あの二人もそこまで暴走させていませんでしたよ。と言っても、炭華に刀を向けてしまったことで相手が気絶するまでやりかねませんでしたけど、傷を一つでもつけてしまった場合はもっと大変なことになっていたと思いますよ。
具体的に言うと....庭が割れた石だらけでは済まず、地面のあちこちをボコボコに凹ませるのは間違いないでしょう」
「.....ああ...。そうなるな....」
不死川さんの言葉に私は笑って答えた。不死川さんは私の言葉に驚いていたが、事実なので嘘偽りなく言った。さらに、私があり得そうだと思ったことを挙げると、義勇さんに遠い目をしながら頷いていた。
そういえば義勇さんも那田蜘蛛山に行っていたから、あの暴走を見ていたね。あれはおそらく炭華を欲しがったことが原因だけど、それくらいは確実にやるため、否定しなかった。
周りの皆さんは頷いた義勇さんの方を見た。
「そういえば、冨岡さんはあの三人と知り合いなの?その鬼の女の子を逃していたから、何か関係があるのかな?」
「私達は義勇さんの弟弟子と妹弟子ですよ」
「ああ、そうだな」
甘露寺さんの質問に私が答え、義勇さんが頷くと、周りの人達は全員驚いた。それと同時に、義勇さんから一歩引いた。
「冨岡。一人は人間だが、他は妖怪やらそういう類いの者と鬼だ。一体何処で拾ってきたんだ」
「雲取山だ」
「なるほど。その山が妖怪の巣なのか。知らなかった!」
煉獄さんが真顔で義勇さんに聞いてきた。私は拾ってきたという言葉にツッコミたかったが、義勇さんが答えているので、声に出すのは止めた。
ただ、雲取山に変な誤解ができたので、そこは訂正しておきたいのだけど。
それと...もう一度言うが、七海と禰豆雄は人間である。あれこれ問題は起こすが、れっきとした人間なのだ。祈祷やら色々やっても意味がない。
「「御館様の御成です」」
私が訂正する前に二人の女の子の声が聞こえた。その言葉を聞いて、私は思い出した。
そういえばまだ柱合会議が始まっていなかった。
「七海。禰豆雄。御館様がいらしたみたいだから、一度炭華から離れようね」
「........」
「嫌だ」
「....できれば私はやりたくないけど、やっぱり注射してほし......それなら、早く行動してよ」
私が炭華に引っ付く七海と禰豆雄に声をかけるが、禰豆雄は拒否した。七海は分かっていると思うけど、乗り気ではないんだね。私に視線でどうにか説得できないのかと言っているけど、私達の立場的にそんなことを言えるわけないでしょう、
というか、七海もどういう立場なのか理解しているよね。それで、駄々をこねて.....。
私は御館様が部屋から出てきたところが見え、二人にすぐに行動してもらおうと思い、吹き矢を見せながら口にすると、七海も禰豆雄も炭華から離れ、炭華を背負い箱に戻した後に屋敷の前まで行った。あの二人、こういう時は本当に速いからね。
私も見てばかりではいられないので、二人の後を追うように屋敷の前に行き、ひざまづいた。柱達も割れた石の上を上手く避けていた。
私の場合は七海と禰豆雄の勢いで石が幾つか飛んでいっていたので、あまり気にしなかった。七海も禰豆雄も何の問題なしだったし。
「ところで、庭が大変なことになっているね。みんな、上に上がった方がいい」
御館様。ありがとうございます。正直に言うと、困っていたのです。
私達は屋敷の中に入り、そこで柱合会議を始めることにした。禰豆雄は炭華の入っている背負い箱にべったりで、七海はきちんと正座をしているが、視線が七海の方に行くことが多い。
七海と禰豆雄の暴走事件の後はこれね。次はこの交渉を乗り越えないといけない。御館様に対しての駆け引きは難しいけど、御館様が炭華を容認してくれているなら、柱の説得だけで済んだ。
おかげで、柱合会議は無事に終えたし、凄く疲れたよ。
何をしたのかって?まあ、私がやったことは原作と似ているようで違うことをしたんだよね。どういうことかと思うでしょうから、順に説明していきますね。
私達は屋敷に上がり、柱に囲まれた状態で裁判が始まった。私は前に一度経験したので、あの時よりも平気だ。それに、私以外にもいるというのが心強い。
七海と禰豆雄の方も炭華に話しかけることに夢中で、周りの視線を気にしていない。
まあ、柱もあまり関わらない方がいいと思っているので、あの二人に話しかける人はいないし、近づかない。
私はあの二人の行動に苦笑いしたが、このままの方が安全だと分かっているので、七海と禰豆雄に何も言わず、御館様も鱗滝さんから聞いているのか知らないが、背負い箱に話しかける二人のことは気にした様子を見せなかった。ただ、質問に答えるのは私になっているのだけどね。
話を振られる私からしたら、かなり大変だった。
まず原作のような流れで進めるのは難しいので、私はどう説得していけばいいのかを考えたよ。
どうして原作と同じ流れにしないのかって?確かに、原作で柱合会議で認められるという形になっていた。なので、原作と同じことをすれば炭華のことを認めてくれると思われるが、私は同じ流れにならないと思ったのだ。
どういうことかというと、問題はこれまでにやってきたことが原因である。既に原作と違うところが幾つかあるでしょう。炭華と禰豆雄という性別の違いや私達の存在が大きいが、それと同じくらい重要な違いがある。それはこの世界ではまだ私達は鬼舞辻無惨に会っていないというところだ。
原作では炭治郎が鬼舞辻無惨と接触した上に追手まで放っていたから何かあるということや御館様が認めたこと、禰豆子に三人の命が賭けられたことなどで首の皮一枚繋がったのよね。
でも、こちらは違う。私達は鬼舞辻無惨と出会っていない。御館様がこのような話をしたということは認めているということだろうし、命を賭けるところはどっちか分からない。仮にそちらも原作と同じなのだとしても、鬼舞辻無惨と出会っていないことが原因で柱に炭華の存在が認められない可能性もある。そのため、原作の流れと同じことを言っても、同じ流れになるとは限らないと思った。
義勇さんとしのぶさんは炭華を庇ってくれそうだし、他の柱も先程の七海と禰豆雄の暴走で連帯感があるけど、念には念を入れておかないと。
それで、私は原作の流れを思い出しながら口を開いた。
「炭華のことで色々言いたいと思いますが、この事実だけは確かなので言います。炭華は二年間人を襲っていません。というより、炭華は二年も眠り続けていました。
これを確認したのが私達と育手だと言っても信用されないと思いますが、それは私達がいた場所やその近くの村を調べてみたらどうですか?調べたら分かるのではありませんか」
私は反論される前に全部言ってしまおうと思った。原作で禰豆子は二年間人を食べなかったと炭治郎が言っても、誰も信じなかった。それは柱がずっと色々な鬼と戦ってきたからあり得ないことだと知っていたからである。禰豆子は人を食べない特例であるということを知らない。
なら、どうしたらいいのかというと、それらを全て証明してしまえばいいのだ。
原作でも禰豆子が不死川さんの稀血を耐えたことで、柱は納得せざるを得ない状況になった。だから、こちらも内心不満に思っていても、反論できないように納得させた方がいいと考えたのだ。
私は自身満々にそう言うので、柱の人達は後で調べてみると言っていた。今思いついたことなので、その証拠となる情報を持っていないが、この方が良いと思う。
私が用意したら捏造を疑われそうだし、自力で調べた結果の方が納得できそうだからね。
それでも今を乗り越えなければならないので、私は現在ある証拠を提示することにした。
「炭華が食べないという証明なら、もう既にできていると思いますよ」
「....どういうことだ」
「気づいていなかったかもしれないけど、七海と禰豆雄の暴走で不死川さんは怪我をしました。血だって出ていましたのに、炭華は不死川さんを襲いませんでしたよ。
それに、私もその前に擦り傷を負いましたし、それで血が出ましたけど、あの時も炭華は何もしませんでしたよ。逆に心配してくれましたし」
「あア!?」
私の言葉を聞いて、全員(七海と禰豆雄と御館様以外)が怪訝そうな様子で見てくるので、私は正直に答えた。それを聞き、不死川さんは目を見開いて立ち上がった。他の人達も動揺している様子だ。
どうやら誰も気づいていなかったみたい。七海と禰豆雄のことでそちらを見ていなかったようだ。
まあ、あんな被害が起きたのを見たら仕方がないかもしれませんけど。
私が言ったことは全て事実である。
七海と禰豆雄が暴走する前、不死川さんから炭華を守るために、背負い箱を不死川さんから取り戻した時に少し掠って、手の甲から血が出てきたことを言ったよね。
鬼なら血の匂いに敏感である。しかも、私は背負い箱を持っていたので、炭華との距離は全然ない。なので、普通の鬼なら襲いかかって来てもおかしくない状況のはずだった。だが、私は五体満足であるし、逆に心配された。
日光があるから、外に出れなかったという言葉があったが、それなら日影に移動した時に何もなかったのはどうしてかと聞いてみた。すると、相手は困ってしまった。何せ、炭華は私を襲わず、七海と禰豆雄の方に真っ直ぐ向かっていた。私が止血していたとはいえ、巻いている手拭いには血がついているため、匂いがあるはずだ。
誰かが反論したくても、私が襲われていないことがそれを証明しているのだ。
さらに、不死川さんのことも例として出されていたから、不死川さんがああやって動揺するのも無理がないと思った。不死川さんは稀血なのである。それも稀血の中でも特別なものであり、希少な匂いをかいだ鬼を酔わせることが可能なのである。そのため、大抵の鬼は不死川さんの稀血を前に理性を保つことができない。
不死川さんはそれをずっと見ていたので、炭華が自身の血を耐えたということに動揺しているのだろう。それで何か言いたそうにしているので、言いたいことがあるなら聞こうと思っているが、不死川さん自身がそれを否定できないのだ。
嘘だと言いたいが、炭華が怪我を負っている不死川さんを襲わず、七海と禰豆雄を宥めていたことから、理性があるというのは分かるのだ。
これで、証明できたはずだ。原作では不死川さんに三度刺されても、禰豆子は不死川さんの稀血に耐え、それで人を襲わないという証明ができた。この人を襲わないという証明は重要であるし、鬼である炭華の処罰を求める声が無くなるようにするためにも、きちんとやっておく必要があったので、私はこれで代用した。
流石に不死川に証明してもらうためにやってくれとは言えない。それをやってしまえば不死川さんの命が危ない。
それでも、この証明をしなかったら色々大変なことになる。七海と禰豆雄がその声を聞いた時、その人はもう終わりになる。
私もいつも隣にいるわけではないので、それを防げるとは思えない。村にいた時も、私が薬の材料を採りに山へ行っている間に、炭華に懸想している男性がいて、今度告白すると友人に話していたところを、偶然七海と禰豆雄に聞かれ、それはもう大変なことになった。
村の人が私のところまで来て(念のために私が何処へ行くのかは共有している)、そのことを知った私がすぐに山を下りて、村の人達にどの方向へ連れて行ったかを聞いて追いかけた。
あの二人の行動がどう行動するのか分かるため、場所を特定してなんとか危ういところを助け出すことができた。
あの後、二人に説教したけど、懲りずに何度も同じことを繰り返した。しかも、私にバレないようにという隠蔽の方向へ力を注いでいるため、私は毎回苦労する。
おかげで、私はこのことがきっかけで足が速くなった。本当に前よりも速くなったんだよ.....。
それは良いことと言ったら良いことなのだろうけど、内心とても複雑なんだよね...。
話を戻すけど、炭華に何か恋心でも悪意でもそういう思いを抱けば七海と禰豆雄が容赦なく襲いかかる。そんなことをこの鬼殺隊でも行われたら、私は止めきれない。特に、別々の任務がある時に起きたら間に合わない可能性の方が高い。任務の場所が近くならともかく、逆方向だった場合は無理だ。
ただでさえ、雲取山と村とその周囲だけでも大変だったのに、その範囲が東京府、いや全国にまで広がったら私の手に負えない。
なので、私はここで御館様や柱が認めてくれないと困る。まあ、それでもいなくなるわけがないと思うけど、人数が少しでも減ってくれればいいから。
私の言葉に他の人達も反論しないみたいだし、これで証明したことになったと思う。
というか、私と不死川さんが血を流していても炭華は全く反応していないと誰も気づかなかったのかな。いや、それくらい七海と禰豆雄の方に視線が向いていたということだよね。流石に炭華の方にも考えが回らなかったみたいね。
「だが、生かすことで俺達に何も「はい、そこまで」.....すまない。助かった」
伊黒さんが話しているのを私が遮ったのに、何故か伊黒さんが文句を言わずに感謝したことに疑問を持つ方がいるでしょう。
伊黒さんが私に文句を言わなかったのは七海と禰豆雄が殺気を出したからである。
伊黒さんの言葉で炭華のことを非難していると思った七海と禰豆雄が、炭華に何かある前にと思って、伊黒さんに攻撃しようとしたけど、私が二人の前に出て制止したため、一歩前に出た体勢で二人は止まった。
伊黒さんは私達の様子を見て、何が起ころうとしたのか察したらしく、顔を真っ青にしながら私に礼を言ったということだ。
私からしたら、伊黒さんがこのまま倒れないかという点が心配なのだが、それよりも七海と禰豆雄を宥める方を優先した方がいいので、七海と禰豆雄と向き合う。周りには誰もいない。
二人が殺気を放った瞬間、ただでさえ距離を置いていた義勇さん達がさらに離れたからね。でも、距離が離れようと御館様を守ろうとしているのは流石というべきかな。
私は屋敷を庭のような惨状にしないためにも七海と禰豆雄に話しかけた。
「七海。禰豆雄。そんな殺気を向けないの。今は炭華の身の安全のためにも穏便な関係を築いた方がいいから。だから、そう暴れたら駄目だよ」
「でも......」
「けど....」
「はあ。分かった、ね」
「「...はい」」
私が二人を説得するのだが、七海も禰豆雄も何やらぶつぶつ言っていた。二人には鬼殺隊に入って得る利点(鬼を見つけやすくなる=炭華が人間に戻れる)を話したし、ここにいる人達に認められたら良いこと(炭華の身の安全の確保)だとも言った。二人もこれに頷いていたから、賛成したことは間違いないけど、納得がいかないらしい。凄い矛盾である。
私は七海と禰豆雄が不満そうにしているのを大きく吐いた後、吹き矢を見せながらもう一度言った。最後の方は声を低くして、そこに威圧感も加え、本気だということを表すと、二人は渋々頷いた。
私はそれを確認して、これで大丈夫だろうと思って振り向いた時、柱同士が集まって、何やら話していた。私が耳を澄ましてみると.....。
「冨岡!よく破壊神と亡霊を拾ったな!」
「まったく。確かに戦力になるが、あの二人は問題しか起こさないぞ。弟弟子と妹弟子ならそういった教育しろ。まあ、しっかり制御できる奴も入れたのは良かったが...」
「いや、余計なもんまで入れてるだろォ。あいつらだけでもヤベェのに、隊律違反までしやがって」
「今は使い手が抑えているからいいが、これからどうする気だ?冨岡」
「.........」
話の内容は明らかに私達のことだった。煉獄さんはすっかり七海と禰豆雄のことを破壊神と亡霊と呼んでいるし、伊黒さんは義勇さんのところ(鱗滝さん)の教育はどうなっているのかとネチネチ言っているし、不死川さんは遠回しの言い方で炭華のことを言っているし、宇髄さんは義勇さんに尋ねている。
その話を聞くと、煉獄さん達の位置からして、義勇さんを取り囲んで尋問しているような感じになっていることに気がついた。他の柱達に質問されるが、義勇さんは何も話さなかった。
ちなみに、何人か質問しなかった他の柱達は煉獄さんのようによくあの二人を入れたなと思っていた。
私は義勇さんが口下手なことを知っているし、それなのに尋問されて、変なことを言ったら何か目的のためにやっているのではないかと思われると困るので、私は助け船を出すことにした。
「隊律違反については私も悪いので、義勇さんばかりを責めないでほしいです」
私は義勇さんの弁護をしながら義勇さんの近くに座った。
最終的に義勇さんが決定したけど、私がそう誘導したために義勇さんだけに責任があるわけではないからね。
あと、もう既に分かっている人がいるかもしれないけど、念のために他の人にも牽制した方がいいかな。
「炭華がいないと、あの二人が暴走してしまうから止めてくださいと言ったのは私なのですよ」
「南無阿弥陀仏。だが、鬼は斬っておかなければならなかった。幾ら何でも鬼殺隊の柱が鬼を生かすことは問題だ」
「......そうしたら、七海と禰豆雄が鬼殺隊に狙いを定めたらどうしますか?」
「何?」
「七海も禰豆雄も炭華のことを大切に思っています。その炭華の頸を斬ったとなると、二人は義勇さんを地の果てまで追いかけます。そして、その義勇さんの仲間だということで鬼殺隊も狙います。おそらく一人残さずやる気だと思いますよ」
私の言葉に悲鳴嶼さんがそう言うので、私は直球に言った。悲鳴嶼さんは眉を顰めて気配が変わったが、私はそれに動揺せず、淡々と二人がするであろう行動を話した。
すると、他の柱が一斉に義勇さんを見た。義勇さんは一斉に見られたことで少しビクッと揺れた。
私がこうもはっきり言えるのはその前例があるのだが、これを話すのは止めておこう。あれは結構色々あり過ぎだから、話せる時があったら話そうと思う。
柱は何か言おうとして口を開くが、すぐに閉じてしまった。反論したいが、七海と禰豆雄ならやりかねないと分かっているみたいだ。
「酷いな。俺達がそうするって決めつけて」
「そうそう」
「それなら、もし炭華が殺されたら二人はどうするの?」
禰豆雄と七海は何か言いたげに反論するので、私が聞き返してみた。その瞬間、空気が凍ったのを感じた。
あまりに強い殺気に義勇さん達は固まったが、私はなかなか返事が来ないのでもう一度聞いた。すると、禰豆雄がフッと笑い、七海は口に手を当てた。
「貴方達なら隊士は標的になるでしょう」
「うん、そうだな。隊士は絶対にやるよ。だけど、ちょっと違うんだな。隊士で済むわけがないじゃないか。隠とかいう奴等も仲間なんだろう?なら、敵だな。
あっ。そういえば藤の花の屋敷の人達もそうだっけ。そうだとしたらまた増えるな」
「禰豆雄、藤の花の屋敷の人達は良いじゃない。あの人達は隊士に助けられたから泊めてくれているのだから。アタシは藤の花の屋敷の人に手を出す気はないわ。まあ、隊士以外に出すとしたら隠は確定で、他には....ああ。育手と刀鍛冶を忘れたら駄目だわ。育手と刀鍛冶がいるから鬼殺隊は増えるし、戦うこともできるわ。なら、先に潰すとしたらまずはそこからよ...」
「はい、そこまでにしてね。そう言ったのは悪かったけど、一度落ち着いてほしい」
私の言葉に禰豆雄は頷いた後、指を折りながら数え出し、七海は一見笑っているように感じるが、その口から出てくる言葉は鬼殺隊を滅ぼそうとすることしか言わない。
私は七海と禰豆雄の肩を軽く叩いて正気に戻した後、再び義勇さん達に向き合った。
「以上のことから、鬼殺隊に莫大な被害があるから止めた方がいいと申しました。それで、義勇さんも七海と禰豆雄ならそれを行うと確信したので、炭華は鬼でありますが、人を食べようという素振りはないが、鬼であるためにどうすればいいのかと悩んでいました。
その結果、私達は鬼殺隊へ入った方がいいということになりました」
「その結果って何?」
「えーと、ですね。鬼の炭華を放置することはできないし、七海と禰豆雄をこのまま普通?に生活しても、炭華を人間に戻すために所構わず暴れそうなので、鬼殺隊という鬼のことが専門のところに行ったら少しはマシになるのではないかという話になり、鬼殺隊に入ることになりました」
私の言葉に時透君が聞いてきた。省略したという自覚がある。けど、色々あり過ぎたから、何を説明した方がいいのか悩むのだよね。とりあえず義勇さんと顔を見合わせながら話している。
と言っても、話しているのは私だけなんだよね。まあ、義勇さんがちゃんと説明できるかというと、そこは微妙なところであるし、逆に言葉が足りずに不死川さんとかを煽りそうなので、説明は私がしているよ。この話し合いで不死川さんと義勇さんの喧嘩(不死川さんが一方的であるが...)まで仲裁しないといけなくなるのは嫌だからね。
えっ?私と義勇さん、全く会話していないだろうって?
まあ、私が目を見て勝手に判断しているだけだからね。そのため、私が義勇さんの考えていることを全部言っているわけではないし、当たっているとも限らない。
ただ、今のところは義勇さんが反論しないから、一応その答えで良いのだと思うことにしよう。
「炭華は鬼舞辻の呪いを解いているみたいだからね。他の鬼と違うようだ。きっと炭華には鬼舞辻にも予想外なことが起きていると思うんだ。炭華の血鬼術はとても珍しいものだし、炭華が元気なら七海と禰豆雄の機嫌もいいからね。それに......」
御館様が最後に七海と禰豆雄をちらりと見た。七海も禰豆雄もその前に殺気を放ったとは思えないほど、満面の笑みを浮かべて炭華に話しかけている。
「十二鬼月を倒しているからね」
御館様の言葉に義勇さん達は納得した様子で返事をした。
どうやらこれで裁判は終わったみたい。まあ、御館様の言葉だからというわけではなく、あの実力なら十二鬼月を倒していてもおかしくないと思っていたり、これ以上関わりたくないと思っていたりするのだろうけど。
鬼殺隊って、実力主義のようなところがあるからね。七海と禰豆雄が鬼の中でも強い鬼を二人でとはいえ、倒すことができたのだ。柱が強い鬼達をいっぱい斬ってきたから、尊敬されているし、優遇もされている。下弦の鬼であれど、十二鬼月の頸を斬ったことで、七海も禰豆雄もその実力を認められたことになるから、不死川さん達は反論しづらくなる。
それと、同時に七海と禰豆雄を暴走させないためにも炭華は必要であるということで、炭華の存在もまた認められることになった。
それと、私と柱の間でなんだか変な絆ができたような気がする.....。
炭華のことを認めるという結論になったため、柱合会議の裁判は終わりとなった。その後の内容に私達は関係がないので、私達は原作のように蝶屋敷に滞在することになった。
と言っても、私達は怪我とかないので、普通に任務へ行っている。ただ、滞在する場所を蝶屋敷にしているという感じかな。
蝶屋敷に戻るのは炭華の検査のためである。珠世さんに血を渡しているけど、知っている人が他にもいたら心強いので、しのぶさんにもお願いしているのだ。
ちなみに、善逸と伊之助は原作通りに大怪我を負っているから、入院している。
「.....それで、義勇さんはどうしたのですか?」
「胡蝶に会いに来た」
私は蝶屋敷の前で義勇さんと話していた。任務を終えて蝶屋敷に戻った時になんだか予感がしたので、その場に立っていたら義勇さんが来た。
うん。大分正確になってきたよ。前の時に突然やって来て炭治郎と会おうとする義勇さんの相手をしていたから、もう勘でここに義勇さんが来ることを察せられるようになった。
「しのぶさんに何か御用でも?」
「ああ。少し診てもらいに来た」
「冨岡さん。どうしたのですか?」
「しのぶさん!」
「実は鳩尾が痛い。食事している時やその後に起こる。何か食べ物にあたったのだろうか」
私と義勇さんが会話していると、しのぶさんが来た。義勇さんは頭を下げた後に本題に移った。近くに私がいたのだが、義勇さんが構わずに話すところを見ると、余程の緊急事態なのだと察した。
それと、義勇さんの言う症状に心当たりがある。
「「それは胃潰瘍ですね」」
「胃潰瘍?」
「はい。胃液が何らかの原因で、胃の組織も溶かしてしまう疾患のことです」
「主にストレスが原因になるそうですが、何か心当たりがありますか?」
私もしのぶさんも同じことが頭に浮かんだらしく、ほぼ同時にその症状の名前を言った。義勇さんは知らない様子だったので、私が簡単にどんな症状なのか話し、しのぶさんは胃潰瘍になった心当たりがないかと尋ねた。義勇さんは少し考えた後、顔を上げた。心当たりはあるみたい。
「七海と禰豆雄が何かしたいかと思うと、腹が痛い」
「「...........」」
義勇さんのその言葉を聞いた瞬間、周囲の時間が止まった気がした。私もしのぶさんも何も言えない。それと同時に、私は頭を抱えた。
義勇さんの胃潰瘍になった原因は確実に私達である。
うん。間違いなく私達だ。....いつかこうなる予感はしていたんだよ!あー!義勇さん、本当に申し訳ありません!責任は取ります!
私は心の中で善逸のように叫びながら懐から薬の入った瓶を出し、義勇さんに渡した。
「本当に色々迷惑をお掛けして申し訳ありません!!
これ、胃薬です!」
ついに出番になっちゃったな...。
今年の投稿はこれで最後です。
次回は一月七日に投稿しようと思います。
それでは良いお年を。