.....うん?....ここは?
なんかまた真っ黒なところに来たけど.....。確か...あの後、お母さんとお父さんに言われて目が覚めたら炭治郎が危なかったから、咄嗟に近くにあった包丁を持って鬼のところに向かっている最中、お母さんとお父さんの言葉を思い出して、草笛を吹く時に使う息継ぎをしてみたら、炭治郎が使っていたヒノカミ神楽の火車が急に頭の中に流れてきて、包丁から突然炎が出て、体が勝手に動いて....気づけば鬼の腕を斬ってたんだよね......。口から出た『華ノ舞い 日ノ花 日車』というのも知らないし、というか口が勝手に動いた。教えてもらった草笛の時の息継ぎの仕方って何かの呼吸だったのって思ったが、私はそれらしき型を知らないし、あの時は体が勝手に動いたからよく分からない。....そういえば、あの時は妙に体が軽かったけど...一体どういうことなの?
......まあ、考えても分からないし、その時の私はそれよりもと思って、すぐに吹き矢を取り出した。家の中で鬼が来ると分かってすぐに鬼用に作った特製の薬が入った矢を入れておいた。その薬は私が育てた藤の花と他の毒草を調合して作った薬だ。といっても、あの薬は鬼にまだ未使用で使っていなかったので、鬼にちゃんと効くか分からないものだった。何故試さなかったのかって?それは鬼に全く遭遇しなかったからです!鬼に遭遇しないと、そもそも試すことができない。だけど、何故か今まで会ったことがなかったのよねー。どうなるか分からなかったから、あまり使いたくなかったけど...。まあ、あの薬が無事成功して良かったよ。....えっ?毒じゃないのかって?だって、毒だったら分解されるでしょ。強力な毒なら強い鬼以外は大丈夫だと思うが.......私はしのぶさん以上の.....いや、同等の毒を作れるとは思えないから、別の物を作ろうと思ったの。例えば、鬼を動けなくして、鬼の力をまともに使えないようにする薬とか......って考えて、あの薬ができました。何度も何度も薬の調合を変えたりして、その中でも一番自信がある薬を使うことにした。ちなみに、さすがに鬼を人間に戻す薬は無理なので、諦めました。
薬を打ち込まれ、思った通りに体を動かせない鬼を見て、ほっとして気を失ったのよね?私が気絶した後の鬼の様子はどんな感じだったのかは、後で炭治郎達に聞くことにしよう。
.......って、それよりもここはどこ?私は...確か気絶したはずだから......
『彩花。』
「えっ?」
私は声が聞こえた方を見た。そこにお父さんとお母さんがいた。
「お父さん!お母さん!やったよ!」
私が笑顔で報告すると、お父さんもお母さんも微笑んでいた。
『彩花。よく頑張ったね...。』
「うん!」
私が嬉しそうに答えるのを見て、お父さんもお母さんもなんか少し寂しそうな顔をしていた。私はそれに気づき、首を傾げた。
「お父さん?お母さん?」
『彩花。もう大丈夫だよ。』
「えっ?」
『彩花はもうここに留まらなくても大丈夫ということよ。』
両親の言葉に私は困惑した。
なんで.....?
「どうして!?私が家を守れなかったから?」
『まあ、家が壊れたからというのもあるが違う。彩花が思っていることとは違うんだ。』
『家が壊れたからこそ、彩花をここに縛るものも理由もないということよ。』
家が私を縛る....?
「私は縛られてないよ!私はここに残りたくて...。」
『そうだ。彩花が他の家で他の人達と暮らすのを断ってまで、暮らしたかった家だ。』
「....だって.......。」
『私達との約束のこともあったけど、私達がいなくなったことが寂しくて、私達と暮らした物がある場所で、私達との思い出を支えに暮らしていた。だから、彩花はここから離れようとしない。』
「うっ......。」
両親に図星をつかれ、私は何も言えなかった。
心の底では分かっていた.....。けど、私は離れることができなかった。
『だけど、もう立ち止まる場所はないよ。』
「でも......。」
『そもそも私達が悪いのよね...。』
私は両親に抱きしめられていた。両親の顔を見ると、両親は泣いていた。
『ごめんなさい。もとはと言えば、私達が帰って来なかったのが原因だよね。』
『すぐに帰って来るって言ったのに、帰って来なくて....ごめんな。』
謝罪をしてくる両親を見て、私の中で何かが切れたような感じがした。
「本当にそうよ!どうして帰って来なかったの!私、ずっと待っていたんだよ!まだかな、もう少しで帰って来るかな、今日は帰って来るかなって期待して......お仕事が大変なのかな、何かに巻き込まれてないかなって心配して......今日も帰って来なかったって悲しんで...でも、ずっと待っていたんだよ!それなのに.....。」
私は言いたいことを全て言い、涙が出てきた。両親も黙って私のことを見ている。....しばらくして、先に落ち着いたのは彩花だった。
「大丈夫.....。私はもう気にしてないから。」
『彩花....。』
私は涙を拭い、前を向いた。両親も涙を拭い、私のことを見ていた。
『そうね.....。それに、やりたいことを見つけたのでしょう?』
「うん。」
やっぱり両親には私の考えていることは分かるらしい。
「私、炭治郎と禰豆子と一緒に行く!」
『うん。友達の手助けをしたいのよね。』
「もちろん!禰豆子を人間に戻すという炭治郎の願いを叶えるのを手伝う!」
そう。私は決めた。炭治郎から話を聞いたの。炭治郎が禰豆子を人間に戻したいという理由で鬼狩りを始めるのは原作で知っていたが、実際に目の前で言われると、何か手伝いたいと思えない?私にこのことを話してくれるのは、私を信頼してくれているということかなと思うと、余計に何かしてあげたいと思うんだよね。それに、もう一つ、ついて行きたい理由がある。
それは、何故この世界は原作と変わってしまったのかということだ。炭治郎達からはまだ何があったのかは聞いてない。つまり、どこから原作と変わってしまったのかはまだ分かっていない。だって、その話を聞こうと思ったが、体が震えてしまうくらいのものを無理して聞くわけにはいかないからね。ただ.....そこまでになってしまうほどの何かがあるということは確かだ。だから、炭治郎達の近くにいて原因を探ろうと思う。炭治郎達の近くにいれば、何が起きたのか分かるかもしれない。原作とは全く違う......何かが.......。
「.....だから大丈夫だよ。私は平気よ。私はもうあの家には囚われないから。」
私にはやることができた。だから、壊れた家に囚われないで前を向けるよ。
私の顔を見て、両親は安心したような表情をした。
『頑張ってね、彩花。』
『楽な道ではないし、むしろ修羅のような道だ。だけど、途中で諦めては駄目だよ。前を向いてしっかり進むんだ。』
「うん!」
両親の言葉に私はしっかり頷いた。
『出口はあっちだよ。』
『早く行ってあげなさい。』
「ありがとう。お父さん。お母さん。」
両親が私に道を教え、私は両親にお礼を言い、すぐに両親に背を向けて走り出した。
早く行こう!炭治郎と禰豆子のところに!
『ごめんなさい。』
「えっ?」
私が走っていると、途中で声が聞こえた。両親の声ではなかったが、聞き覚えのある声だった。振り返ると、そこには先程いた両親は居ず、別の男の人と女の人がいた。しかも、その男の人と女の人がめっちゃ見覚えが......
(炭治郎と禰豆子の両親、炭十郎さんと癸枝さんではありませんか!?)
えっ!?なんでここに!?
『ごめんなさい。任せてしまって。』
『炭治郎と禰豆子のことをよろしく頼む。』
.......えーと...もしかして、炭治郎と禰豆子のことでわざわざ私に声をかけてくれたの!?
「はい!任せてください!」
そこまでされたら頷くしかないでしょ!もとよりそのつもりです!
私は炭十郎さんと癸枝さんが安心したような表情をしたのを見て、私は背を向けて再び走り出した。
「...うーん......。」
「彩花!」
「あやか!」
「炭治郎?禰豆子?」
私が目を開けると、炭治郎と禰豆子が目の前にいた。炭治郎と禰豆子は目を覚ました私を見て、片や安心したような表情を、片や驚いたような表情をした。
何に驚いているのかは後で聞こう。.......それよりも聞きたいことがある。
「あの鬼達は?」
「日光に焼かれて灰になってしまったよ。」
日光に焼かれたということは...あの薬は成功したっていうことかな?炭治郎も禰豆子も怪我してないようだし.....。
「....実は.......。」
「うん?」
炭治郎と禰豆子が言いにくそうにしているので、私はどうしたのかと首を傾げた。
「あや、かの、いえ、もっと、こわれ、ちゃっ、た.......。」
「すまない....。」
炭治郎と禰豆子が体を動かして私の家を見せてくれた。私が気絶する前より、家はさらに壊れていた。家はもうボロボロになり、このまま住むのは無理そうだ。私は家を見て少し悲しいような、寂しいような感情が込み上げてきたが、夢の中での両親の言葉を思い出し、首を横に振って気持ちを切り替えた。
それより、どうして炭治郎と禰豆子が謝っているのかな......?炭治郎と禰豆子が壊したわけじゃないし。
「別に平気よ。なんか吹っ切れたからね。それより、どうして炭治郎と禰豆子が謝るのよ。炭治郎と禰豆子は悪くない。壊したのはあの鬼達でしょ。」
「いや、それとは話が変わって....。」
私がそう言うと、炭治郎はますます言いにくそうにしていた。もしかして、あの時のこと?
「彩花。あの時、何か呼吸を使っていなかったか?」
「ううん...。困った時は草笛を吹く時に使う息継ぎをするようにって両親が言っていたことを思い出して、その息継ぎをしたよ。なんだか知らないけど、体が勝手に動いたんだよね......。」
あの時というとお父さんとお母さんに助言されて、包丁を持って草笛を吹く時に使う息継ぎをしたら、何故か包丁が炎を纏って、そのまま鬼の腕を斬っちゃった時のことだとしか思えなかった。
「体が勝手に動いた?」
「うん。炭治郎のヒノカミ神楽の火車というのが頭の中に浮かんで、その後、体が何故か勝手に動いて、鬼の腕を斬っちゃったんだよね.......。私もあれには驚いたよ。」
「あの型は両親から教えてもらってないということか!?」
「私もあれに関してはどういうことか分からないの....。」
私の話を聞き、炭治郎と禰豆子は驚いていた。
ごめんね......。でも、私も本当に分からないんだよね.....。普通に草笛を吹く時に使っている息継ぎが....まさか........って感じなの。こっちがどういうことか聞きたいくらいなのよね.....。
「...あの時、彩花から困惑の匂いがしたのはやっぱりそういうことか.....。本当なんだな?」
「うん。」
炭治郎は納得した様子で私に確認し、私は頷いた。
「....分かった。嘘の匂いもしないからな。」
どうやら炭治郎も禰豆子も信じてくれたみたい。
「それで、彩花はその時のことを何か覚えている?」
「うーん...。あるとしたら、なんか体が何故か軽かったということと.......そういえば、妙に体が暑くなった気がしたんだよね.....。」
炭治郎の質問に、私は必死にその時のことを思い出そうと振り返り、体が妙に暑くなったことを思い出した。私の話を聞き、炭治郎と禰豆子は顔を見合わせた後、また言いにくそうにしていた。....もしかして、まだ何かあるの?
「あやか、あざが、でてた。」
「へっ?」
禰豆子の言葉に私は首を傾げた。
えっ?痣?私、痣なんてなかったはずだけど.....。
「彩花が呼吸を使っていた時に痣が出ていたんだ。葉と蔦の模様の...こんな感じの。」
「ごめん。分からない。」
炭治郎は私に説明しようと絵まで描いてくれたが、その絵に描かれたものはとんでもないもので....私はその絵でますます混乱してきた。とりあえず私は炭治郎の話を頭で理解することにして、それを整理して内心驚いていた。
痣って...そっちの痣!?確かに体が妙に暑かったけど....そういうことなの!?というか、何でいきなりそんな痣が出るの!?
「えっ!?今、私に痣があるの!?」
「いや、今はない。彩花が気絶してから痣は消えたんだ。」
それって......私、痣者確定ですね....。
「痣ってどこにあったの?」
「左目の近くから左耳の近くまで葉と蔦の模様の痣があった。」
左目の近くから左耳の近くまである葉と蔦の模様の痣か.....。原作では出て来なかったな...。
「それと、その時に左目の色が緋色に変わったんだ。その目も気絶した後は元に戻っているんだが、心当たりはないか?」
「えっ!?......痣が出たと同時に、左目の色が変わったの?」
「ああ。」
えっ?....痣の発現と同時に左目の色が変わった!?しかも、気絶したら元に戻った!?えっ!?確かにそりゃ、私が起きた時に炭治郎も禰豆子も左目の色が戻っていたら驚きますよね!?でも、私には全く心当たりがありませんよ!?これに関しては原作でもなかったことだし!
私は勢い良く首を横に振った。
「そうか....。それで...そのことで彩花に話があるんだ。」
「話?」
匂いで分かってると思うけど、本当に私はそんなの全く知らないからね!...あるいは、別のことで話があるとか?
「彩花の力は俺達もよく分からないんだ。それをあの鬼達に見られたということは、彩花を狙ってここに他の鬼が来るかもしれないんだ。」
あー!確かに!他の鬼の目を覗いて鬼舞辻無惨とか童磨とか状況を確認していたよね。......うん?それって、私、危ないっていうことじゃないかな?
「ここには藤の花があるが、強い鬼に藤の花だけで勝つのは難しい。だから.......彩花。俺達と一緒に行かないか?」
「えっ?」
「ここにいるより俺達と一緒にいる方が安全だし、禰豆子も懐いているしな。彩花はここを離れたくないかもしれないが...。」
.......ううん。まあここを出て、炭治郎達と一緒に行こうって既に決めているし、一人でいるよりも炭治郎達と一緒に行動した方が安全なのは事実だからね。私には帰る家はないし、ここを出て炭治郎達と一緒に行くのはもう覚悟している。どんなに大変なことになろうと....。
「...大丈夫。家が壊れて、なんか吹っ切れちゃったから。私はここを離れるよ。炭治郎達と一緒に行くよ。」
「.....本当にいいのか?」
「うん。もう決めたから。」
私は壊れた家を見つめながらそう言った。炭治郎が確認するので、私ははっきりと頷いて答えた。
「じゃあ、ちょっと準備するね。少し時間がかかるけど.....。そういえば、炭治郎の熱は大丈夫?」
「......大丈夫だ。彩花もゆっくり準備していいからな。」
「ありがとう。」
私は準備をするために炭治郎達に声をかけ、炭治郎の熱のことも思い出してそう聞いた。炭治郎は大丈夫だと言って、彩花に荷物を纏める時間をあげた。彩花はお礼を言って壊れた家の中から無事な物を探した。
皿とか器とかはほとんど壊れてしまったが、薬を作る時に使う道具やできた薬を入れる専用の器、いくつかの薬は無事だった。どうやら薬とかを閉まっていた場所に物が落ちて、それがクッションのような役割になって無事だったようだ。私は無事だった物を籠の中に入れて持って行くことにして、壊れた物は地面を掘って土の中に埋めることにした。
「お父さん。お母さん。行ってくるね。」
私は藤の花の世話と藤の花を少し採った後、藤の花の根元にある墓の前で手を合わせ、両親に挨拶した。
「...終わったよー。」
「もういいのか?」
「うん。」
私は準備を終え、両親の挨拶も終えて炭治郎に話しかけると、炭治郎が確認してきたので頷いた。私達は山を下りることにした。山を下りると、ちょうど村の人達が外に出始めた時間帯だった。
「........ごめん。最後にちょっとだけ.....。」
「ああ。」
私は最後にどうしても村の人達に挨拶してたくて頼むと、炭治郎と禰豆子は待ってくれると言ってくれた。
「おばちゃん!」
「おー!彩花ちゃん!ちょうど良かった!」
私が声をかけると、ちょうど村の人達も私に用があるそうだった。
「どうしたのですか?」
「あのね。そこの家の高橋のお兄ちゃんのことを覚えている?」
「あのお兄ちゃん、医者になったらしいのよ。」
「それは凄いですね!」
高橋のお兄ちゃんのことは覚えている。よく遊んでくれた優しい人だった。そうか。医者になったのか....。
「それでね。高橋のお兄ちゃんはここで病院を始めるらしいのよ。彩花ちゃん!高橋のお兄ちゃんのところで働くのはどう?彩花ちゃんの薬なら絶対に大丈夫よ!」
そうか......。この村にも病院ができるのか.....。それなら、この村は大丈夫ね。お父さんとお母さんがここにいなくても大丈夫って言っていたのは、このことも関係あるかも....。本当に私がいなくても大丈夫そうだ。
「すみません。せっかくのお話ですが、実は私.....今日からここを出て、旅に出ようと思っているんです。......ですので、病院で働くことはできません。」
私が丁寧に断ると、村の人達から興奮した声が聞こえた。
「彩花ちゃん!今から旅に出るって!」
「それなら、何か持たせてやらないと!」
「おい!何か食べ物を!」
「わわっ!?」
村の人達が私の旅立ちを喜び、私はその様子に戸惑っていた。
「...えーと......。」
「彩花ちゃん!この服なんてどうか!生地もしっかりしていて、丈夫で軽いし、暑さにも寒さにも負けない服だ!」
「彩花ちゃん!このタラの芽、たくさんあるからあげるわ!」
「ほれ!彩花ちゃん!好物の笹団子だ!いっぱい持ってけ!」
私が戸惑っている間に、村の人達が次々と私に色々な物を渡し、気がつけば私の腕にいっぱい物がある状態だった。返そうと思ったが、村の人達の勢いに圧され、そのまま受け取ってしまった。
「村の皆さん!本当に色々ありがとうございました!」
私は最後に大声で村の人達にお礼を言い、村の人達は私に手を振ってくれた。
「...凄い荷物だね....。」
私は走って炭治郎と禰豆子のところまで来て、炭治郎と禰豆子がすぐに私の腕にいっぱいある物を見て苦笑いした。私もつられて苦笑いしてしまった。
鬼滅の刃に関わる気なんて.......これぽっちもなかった....。関わらずに普通に暮らしていようと思っていた.....。でも、閉じこもっているわけにはいかないし、原作とは全く違う展開になっているから、一体何があったのか調べる必要がある......。あの鬼に家を壊してくれたこと、今では感謝したいな.....。壊された時はショックだったけど....。
「彩花。それはタラの芽か?」
「うん。これは炭治郎にあげるよ。けど、私の笹団子は駄目よ。笹団子は私の大好物だから。」
.....だけど、今は炭治郎と禰豆子とこの楽しい旅路を楽しみたいな.......。まだ何が起こるか分からない....この旅路を........。