笹の葉の少女は幸せを願う   作:日々草

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体調が安定してきたので、投稿を再開しようと思います。今回は長めであるため、明日も投稿しようと思います。
それでは楽しんで読んでいただけるとありがたいです。





苦労人の少女は決戦でも変わらない 前編

 

 

 

「お久しぶりです。刀鍛冶の里で会った時以来ですね」

「.....そうだな」

 

 

無限城の広い一つの部屋。その部屋は下に畳が敷いていて、周りは黒い柱がいくつかある。その中心で私は上弦の壱の黒死牟と対峙していた。

最初に声をかけたのは私の方である。黒死牟はボソボソという風な声を出して頷いた。

普通に会話をしているが、そうではない。黒死牟は刀を持っていて、

私も刀を握り締め、いつ攻撃が来てもいいように構えていた。

 

 

「....日の呼吸は極めたか」

「悪いですけど、私は縁壱さんではありません。縁壱さんには縁壱さんの戦い方があり、私には私の戦い方があるのです。勝手に押しつけられても困りますので、最初に言っておきますね。私は縁壱さんじゃないので、求められても私は縁壱さんにはなりませんよ。ですので、私は私のやり方で戦わせてもらいます。それに......」

 

 

黒死牟の言葉に私は首を横に振って否定した。そして、刀鍛冶の里で言えなかったことを今度ははっきり言った。あの時は咄嗟に日の呼吸を使ってしまったし、黒死牟のことを凄く気にしていた。

だが、今回は日の呼吸を使うが、私の戦い方で戦うのだという意志表示をした。縁壱さんは関係ないのだとはっきり伝えるためにこのことを伝えたのだが、それ以上になんとかして勝たないといけないという思いが強いのである。

何故そうなっているのかというと.....。

 

 

 

「七海!禰豆雄!待て!」

「七海さん!禰豆雄さん!あいつをボコボコしてくれるのは嬉しいですが、それはやり過ぎです!」

「うむ!あの二人なら跡形もなく吹き飛ばしそうだ!」

「そうです!だから、俺達がそれを止めなきゃいけねぇんですよ!今、ここを全部吹き飛ばしちまったら俺達も危ねぇんですから、もう少し危機感を覚えてください!」

「か、獪岳が敬語を使ってる...」

「当たり前だ!お前、柱は俺達の上司だ!普通なら敬わらないといけない人達なのに、お前は....。.....いや、ンなことよりアイツらを止めろ!」

「無理だろ。ああいう時の子分どもは何言っても意味がねぇ」

「私もそう思う。彩花と炭華しか止められないから...」

「彩花。早くそいつを倒して止めに来て!」

「いや、流石に彩花に負担がかかり過ぎですから」

「「..........」」

 

 

私達のいる部屋に穴が開いた場所から騒がしい声が聞こえてきた。それと、何か破壊音まで聞こえてくる。私も黒死牟もそれを聞いて、互いに無言になった。

 

 

「それに、私も貴方もそれどころではないようですので、さっさと終わらせましょう」

「そうだな.....」

 

 

私が沈黙を破ってそう言うと、黒死牟は頷いて刀を抜いた。私はその斬撃を避けながら刀を抜き、次々と向かってくる斬撃を流した。

こんな緊張感のない戦いはないと思いながら、私は避けながら一ヶ月くらい前のことを思い出していた。

 

現実逃避のようなものだ。付き合ってもらえるとありがたいと思っています。

 

 

 

 

 

 

刀鍛冶の里の騒動から数週間が過ぎた。上弦の肆と伍は原作の通りに倒すことができ、炭華は太陽を克服できたようだ。性別が違くても原作の炭治郎のように鬼としての才能があるなら、太陽の光も克服できるとは思うのだが、そうじゃなかった場合も考えて、実行はしなかった。

 

炭華が亡くなることを怖がったのもあるが、七海と禰豆雄がそれを見た瞬間に何をしてくるかと思ったらやれるわけがない。

理由だって七海には言えるけど、禰豆雄に説明できないし、そもそも七海でも色々大変なことになりそうだから。

 

 

と言っても、炭華が太陽の光で焼けるところ(この後、克服して治るにしても)を見たため、七海と禰豆雄が大変なことになった。

特に、七海は.........。

 

 

『不安で不安でしょうがないのに、まだ半天狗が倒せないから、追いかけなくちゃ駄目で。炭華はアタシと禰豆雄に大丈夫だから、行ってきてって言っているのよ!アタシ、炭華が言うから半天狗の頸を斬ってきたけど、炭華の無事が分からなくて。でも、炭華が無事でホントに良かったわ!火傷も無くなってホントに良かった!』

 

 

そう言うことを何度も何度も私の前で言う七海を落ち着かせていた。入院中の私を気遣って話をするだけにしているが、本当なら私の肩を掴んで強く揺さぶりたかったのだろうけど、私が入院中のために我慢してくれた。

それにしても...七海、余程怖かったんだね....。それに、原作を知らない禰豆雄はもっと不安だっただろうね。

 

 

その話題の炭華はというと、炭華はなほちゃん達と一緒に外で遊んでいる。

あっ。花冠を作っているよ...。

 

 

「姉さんが天使すぎる...」

「頑張ってきて良かった....」

「二人とも戻ってきなさい」

「.....お前らは元気だな」

 

 

炭華の様子を見ながら禰豆雄と七海が天を仰ぎ、私は二人が昇天する前に引き戻した。そんな様子を見て、獪岳は呆れた様子で見ていた。

 

 

七海と禰豆雄は入院していないが、私の見舞いと炭華の様子を見に蝶屋敷へ来ているのだ。一番の目的は炭華の笑顔を見ることなのだろうけどね。

 

私はそう思いながら炭華達の様子を見ていた。

炭華はなほちゃん達と協力して作った四つの花冠のうち三つをなはちゃん達の頭に乗せていた。最後の花冠を炭華の頭に乗せようとなほちゃん達が立ち上がった。炭華が乗せやすいように頭を下げていたので、なほちゃん達は容易に炭華の頭に被せられた。炭華は頭を上げた後、花冠に触れて笑顔を浮かべた。

私がそれを微笑ましく思っていると、すぐ近くで何かが倒れる音がした。私はその音が聞こえた瞬間、無視するかどうかで悩んだ。何となく予想がつくが、確認のためにも振り向くことにした。

 

 

そして、それは案の定のことだった。七海と禰豆雄がその場に崩れ落ちた。察しはつくが、念のために二人の様子を見ると、七海も禰豆雄も凄く幸せそうな顔をしていた。

うん。全然大丈夫そうだ。

 

 

とりあえず七海と禰豆雄をそのままにしておくわけにはいかないので、私が使っていたベッドに二人を寝かせた。一人ずつお姫様抱っこという形でなら運べるので。

私はベッドで寝なくても大丈夫だし、明日には退院しても大丈夫だと言われているから、このまま椅子に座って外を見ていても良いでしょう。

 

 

私はそう思いながら炭華達のほのぼのとした様子を見て、癒されようと思った時、

 

 

「きゃあああぁぁ!炭華ちゃんが外に出てる!大丈夫なの!」

「あっ。善逸が帰って来た」

 

 

甲高い声が外から出てきて、その声で善逸が帰って来たと分かった。勿論、隣にいる獪岳も気づいていて、嫌そうな顔をしている。

まあ、獪岳と善逸の関係から考えると、そうなるだろうね。獪岳と善逸は桑島慈悟郎に雷の呼吸を習った兄弟弟子であり、仲は悪いのである。と言っても、獪岳が一方的に嫌うので、善逸も不機嫌そうな音をする獪岳を嫌っていたんだよね。

善逸の方は獪岳の修行を真面目に取り組む姿を尊敬していたみたいだけどね。獪岳は桑島さんが善逸にかかりっきりになっていたことが不満だったうえに、自分のできなかった壱ノ型を善逸が修得していたことなどが重なったようだ。

 

 

だが、今の獪岳は善逸のことを嫌っているというより、なんだか面倒くさそうな感じがする。それに、不機嫌そうな顔をして、こちらを見ている。

そういえば、私は善逸のことを話題にしていなかったから、私達と善逸の関係は知らないよね。

 

 

「.....あのカスと知り合いか」

「うん。まあ、任務へ向かっている時に出会って、そこからの付き合いだね....」

 

 

獪岳の質問に私は笑って答える。少しでも善逸と獪岳の仲が良くなるようにと思い、私は獪岳に善逸の出会いとかそれまでに起きたことを話した。だが、話を聞いていくうちに獪岳は額に手を当ててため息を吐いた。

 

 

「あのカスが任務を嫌がるのは想定内だ。だが、一般人にまで迷惑をかけるのは予想外だ。あのカスは何やってんだ」

「でも、いざという時は体を張って守ろうとしていますよ」

 

 

獪岳が眉間に皺を寄せた顔で善逸を見ながらそう言うので、私は善逸を庇うように言った。私がその話をしたので、変な誤解などがないようにしないと。

 

 

「姉さんに何をしているんだ!」

「善逸、流石にそこまでにしなさいよ」

「えええぇぇぇ!いいでしょ!せっかく遠いところまで行ってきたのに、俺に優しくしてくれる気はないの!」

「それぐらいで姉さんに近づかせると思う?」

「そもそも善逸は怪我していないじゃない。なら、余裕だったというわけでしょ」

「いや、今回も死ぬかと思ったって!」

 

 

私と獪岳が話している間に、外から禰豆雄と七海の声が聞こえてきた。ベッドの方を見ると、先程まで横になっていた七海と禰豆雄の姿がない。

行動が速いし、気絶から目を覚ましたばかりなのに、元気に騒げているから、本当に元気なのだなと思った。

善逸も七海と禰豆雄と一緒にいるうちに慣れてきたから、前のように怖がるだけでなく、七海と禰豆雄に言い返すこともできるようになったんだよね。それに、先程の言っていた通り、善逸は長期任務に行っていて、今日帰って来たばかりなのである。そのため、気分的にいつもと違うのだと思う。

そこはお疲れ様だと思うけど、あのままだと七海と禰豆雄にやられるよ。せっかくの癒しみたいな空間を邪魔されて、二人ともかなり不機嫌そうな感じだから。

 

 

私はあの二人が善逸に何か行動する前に止めようと思い、部屋を出て玄関に向かった。

 

 

「お、おかえり!いのすけ!」

「「「はっ?」」」

 

 

屋敷から出た瞬間にその声が聞こえ、私は呼吸を使って炭華達のところへ向かった。

この声が誰のものなのかは分かると思うが、察しの通りに炭華である。原作の禰豆子のように、炭華も太陽の光を克服してからは喋れるため、辿々しくではあるが、いっぱい話してくれる。

それを知った(長期任務ではなかった)伊之助がそのことを知り、七海と禰豆雄のいない間に自分の名前を炭華に教えていたのである。

私もこれを微笑ましく思って見ていたのだが、今はとてもまずいことになった。

 

 

今、伊之助は蝶屋敷にいないが、ここに来たらまずい。絶対に原作のように善逸を伊之助と呼んだのだ。しかも、それに七海と禰豆雄まで反応している。

 

 

「姉さん。いつあの猪に教わったの?」

「アタシ達が任務に行っている間にこっそりと......」

「あんの...猪頭が!!」

 

 

禰豆雄は炭華に優しく聞き、七海は刀を握り締めながら察し、善逸は血の涙を流していた。

善逸はともかく、七海と禰豆雄が動いたら駄目だなと思い、とりあえず三人とも宥めることにした。

 

 

「はい。そこまでだよ。三人ともすみちゃん達が怖がるから、一度落ち着きなさい」

「彩花。まさか知っていたの?」

「知っていたし、隣で見ていたよ。七海と禰豆雄だって分かるでしょう。炭華がずっと話せなかったの。それが話せると分かって、伊之助なりに喜んでいるのだよ。私達が普通に伊之助と呼んでいたのに、炭華には呼んでもらっていなかったのだから、炭華にもと思うの。間違われてもめげずに名前を何度も繰り返して、やっと覚えてもらったのだから、それを怒らないであげて」

 

 

私が七海と禰豆雄の肩を優しくポンっと叩くと、七海と禰豆雄はこちらを見た。二人とも私が伊之助のことを容認していたと察して、こちらを不満そうに見てきた。それは炭華がここにいて、私も入院しているから、炭華のことで私が知らないはずがないと考えているのだと思う。

まあ、実際に知っているわけだけど。

一方で、善逸もこちらに向いているが、こちらは安堵した様子を見せていた。これで、何か問題が起きれば私の助け船を期待できるからね。

 

 

「.......分かった」

「じゃあ、善逸ね」

「そうだな。姉さんに抱きついていたし」

 

 

伊之助に関しては許すが、善逸は別だということになり、今度は善逸の方を見た。善逸は顔を真っ青にしながら私の後ろに隠れた。私はそれに苦笑いしながら逃げ道を作ってあげようと思った。

 

 

「駄目だよ。善逸がここに来たのは獪岳のお見舞いなのだから、ボロボロにして入院させたらいけない」

「えっ?」

「....獪岳と善逸って、知り合いなんだ」

「そうみたいだよ。獪岳の弟弟子が善逸らしい」

「なら、仕方がないわね」

 

 

私が理由をつけて善逸に何もしないようにと説得すると、善逸は困惑した様子を見せていたが、私はそれを見なかったことにして七海と禰豆雄を見た。

禰豆雄は少し驚いた様子で善逸を見て、私が獪岳と兄弟弟子であることを話すと、七海と禰豆雄は諦めたようで、その後は炭華と話している。七海がすぐに納得したことで、禰豆雄もこれ以上は何も言わないことにしたのだろう。

と言っても、七海は既に善逸と獪岳のことを知っていて、私が何をしたいのかというのも分かり、何もしないと決めたんだと思う。

七海が空気を読んでくれたことに感謝しておかないと。

 

まあ、七海も禰豆雄もこういう場合は何も手を出してこないからね。炭華の身に危険なことが起きれば違うが、そうでなければ何か理由があり、考慮しながら行動してくれる。

 

 

私はその間に善逸の手を引き、獪岳の病室まで連れて行くことにした。

その間、善逸が無言だったので、少し心配になった。

 

 

「善逸。どうしたの?」

「さっき、獪岳の見舞いって言っていたけど、獪岳が怪我したの」

「...もしかして知らないの?上弦の壱に遭遇したのが私と獪岳だということを」

「.....獪岳の怪我は」

「五体満足で無事だよ。だけど、怪我が一つもないというわけではないから、入院はしているよ。今も入院しているけど、大きな怪我はなく、意識もはっきりしているから安心してね。それでも、まだ数日は入院生活のままだけどね」

 

 

私が善逸に聞いてみると、善逸は獪岳が怪我をしているということに困惑している様子だった。私は予想外で確認してしまった。すると、善逸は震える声で獪岳の容態を聞いてきた。私は善逸の声を聞き、罪悪感を感じたために安心させようと笑顔を浮かべてそう言った。善逸は無事だと分かり、安堵していた。

 

 

そうしているうちに獪岳の病室まで来ていた。私はその近くの壁を軽くコンコンと叩き、一言掛けてから部屋の中に入っていった。善逸も私の背中を追うようにおそるおそる中に入った。

獪岳は善逸に気づくと、面倒くさそうな顔をしていた。

 

 

「おい。カスまで連れてきたのかよ」

「その窓から聞こえていたでしょう。善逸が七海と禰豆雄に襲われそうなので、ここへ連れて来たのですよ。一度ここに避難させてあげてください。

それに、せっかくの機会なので二人で話し合ってみたらどうかと思ったのです。獪岳の怪我を善逸が知らなかったことからして、二人の仲がどういう感じなのかは察しがつきますが、善逸と少し話してみてください」

 

 

獪岳の言葉に私は善逸と話すように説得した。凄いごり押しのような感じであるが、私は今の獪岳なら善逸とそこそこ良い感じのところまで行くと考えたのだ。

まあ、仲良しというところまではいかないと思うけど。

 

 

「お前.....俺にカスの世話をさせる気か」

「....すみません。この後のことを考えると、私は七海と禰豆雄で手いっぱいになるので、せめて善逸が稽古を嫌がったり、逃げ出したりした時の対処をしてもらえたらいいのです」

 

 

獪岳は私の必死さから察したらしく、私を睨みながらそう言った。私はバレたのならと思い、正直に話して頭を下げた。

欲を言えば伊之助のことも頼みたかったが、獪岳にあまり関わりのなかった伊之助を頼むのは流石に申し訳なかったので、善逸のことだけは兄弟子の獪岳に任せようと思ったのだ。

 

 

「......次の見舞いに桃だ。それも高価なもんだ」

「ありがとうございます!」

 

 

獪岳はため息を吐き、了承してくれた。

獪岳は事情を知っているし、私が本当に困っているのも分かっているから、たぶん同情してくれたんだと思う。

一方、善逸は私と獪岳の顔を交互に見ながら口をポカンと開けた。

なんだか凄く驚いているみたいだ。

 

 

「えっ?えっ!?獪岳と彩花ちゃん、いつ仲良くなったの!」

「仲良くじゃねぇが、アイツらに巻き込まれたり、修行したり上弦と戦ったりしたらな....」

「まあ、仲間意識が芽生えますよね」

 

 

善逸の叫び声に獪岳は複雑そうな顔をしながら私に同意を求めたので、私も苦笑いしながら頷き、その時のことを思い出していた。

獪岳に前の時の記憶がないので、私も獪岳も最初は他人という立ち位置で始まった。私からその距離を急いで縮めようとはしなかった。前の時は獪岳と師弟関係のような感じで、気安く話しかければ怪しまれるし、下手に距離をどんどん縮めようとしても怪しまれると考えたからだ。

 

だが、七海と禰豆雄関連で色々なことが起き、そういったことを気にしている場合ではなく、気がついたら普通に会話するし、相談や愚痴も言うくらいの仲になった。

簡単に言えば柱合会議の後の柱達と同じ感じである。そのため、善逸からの同情の視線が痛い。

 

 

「七海と禰豆雄が色々巻き込んで申し訳ありません、本当に」

「いや、別に構わねぇよ。なんかアイツらを見たり、修行したりしてたら考えてたことが馬鹿らしくなってきてな。.....まあ、ふざけんなとは思ってたが、悪くはなかったかもな...」

「えっ?獪岳が!?」

 

 

私が思い返してみたら凄く迷惑をかけていたと感じ、何度目か分からない謝罪をすると、獪岳は謝らなくていいと言った。それと、獪岳はおそらく

善逸は獪岳の言葉に驚いて叫び、獪岳に拳骨をもらっていた。

 

 

「....なあ、コイツの世話するの止めていいか」

「駄目です。そういうのが全部私のところに来るので、お願いですからやってください。私が過労死しそうなので」

「さっきから二人とも何を話しているの!俺の世話とか言ってるけど、俺はそんな小さい子じゃないから!」

 

 

獪岳が本気で止めようとしていると察し、私は必死に止めないでほしいと懇願する。その様子を見て、善逸は不満そうに言っていたが、私も獪岳も何とも言えない顔をしていると思う。

幼い子どものような扱いをされていればそう言いたくなるだろうけど、私と獪岳はそういう風に思うことがあり、これからそれが起き、たぶん大当たりするのだと考えている。

 

 

「猪突猛進!」

「ぎゃああああぁぁぁ!」

 

 

その時、伊之助が窓を突き破って部屋の中に入っていった。善逸は悲鳴を上げ、私はその場から離れて割れた窓ガラスに当たらないように回避した。ちょうど窓の近くにいたから、気配に気づかなかったら危なかったよ。

安全な場所まで避難した後、私はため息を吐きながら伊之助に話しかけた。

 

 

「伊之助。窓から入ってきたら駄目だよ」

「そんなこと、どうでもいい」

 

 

私が注意しても伊之助はそれ以上に興奮しているみたいで、私の話を聞いてくれる気はないみたい。

いや、どうでもいいことじゃないからね。

 

 

「始まるらしいぜ。柱稽古が!」

「は、柱稽古?」

「おい。カス、知らねぇのか」

「全体的な組織力強化を図るため、柱が直々に稽古をつけてくれるみたいだよ。勿論、全員参加」

 

 

伊之助が柱稽古のことを嬉しそうに話していて、私はそれを微笑ましく見ていたが、善逸は顔を真っ青にしていた。困惑した様子であるが、なんとなく嫌な予感がするのだろう。

獪岳は呆れた目で善逸を見ている。私はそんな善逸に同情しながらも後で行くことになるのは確実だから、隠しても意味がないと思い、正直に話した。

 

 

善逸は私の話を聞いた瞬間に悲鳴を上げた。最後の言葉は余計なお世話だったかな。

善逸の逃げ出そうとするので、その前に私が善逸の羽織を掴んだ。

 

 

「いやあああぁぁぁぁ!彩花ちゃん!お願い!離して!」

「駄目だよ。この後、困るのは善逸なのだよ。柱稽古は鬼舞辻無惨との戦いのために必要だから行うのであって、それがなければ善逸が危ないよ。私は嫌だよ。善逸が亡くなるなんて」

「でも、戦う前に死んじゃうって!」

「はあ。柱が最低下弦の鬼を容易に倒せるくらいにまでするって言ってたから、参加すれば確実に強くなれると思うな」

「おお!」

「ぎゃああぁぁぁ!し、死ぬううぅぅぅ!てか、なんでそんなに詳しいわけ!」

 

 

泣いている善逸の頭を撫でながら宥めようとするが、善逸はすっかり後ろ向きになってしまっている。そんな善逸を見て、獪岳がため息を吐きながらそう言うと、隣で聞いていた伊之助は凄く嬉しそうにしていて、正反対に善逸はさらに泣き叫んだ。

だが、獪岳があまりに詳しいことを疑問に思ったらしく、それについて問い詰めてくる。

獪岳は頭を掻きながら私を見てきた。私はそれに苦笑いを浮かべた。

 

 

獪岳がそういった詳しい情報を知っているのは主に私経由なんだよね。正確に言うと、私に届いた手紙を獪岳も読んだことが原因である。

私に届いた手紙はあまね様からの手紙で、夫である御館様の代わりに連絡してくださったのだ。

どうして私に連絡が来るのかというと、怪我がなければ私は柱合会議に参加することになっていたから。

 

 

言っておくけど、私は柱ではない。階級は甲という柱の次だが、柱ではないので本来は参加できないはずである。

もう既に何度も柱合会議に参加しているが、炭華の裁判や上弦の参の討伐という特例の事態が起きたり、柱への昇格の話だったりという状況であったため、今までは参加していた。

それで、今回呼ばれた理由はというと、柱稽古における七海と禰豆雄の対応についてである。

 

 

最終決戦での無惨の狙いは確実に炭華である。そのため、炭華は別のところへ避難してもらう必要がある。だが、それをしたら問題になるのは七海と禰豆雄をその間どうするのかである。

 

 

私がやるべきなのは最初に二人の説得である。事情があるとはいえ、七海と禰豆雄は炭華と離れることに抵抗するだろう。炭華を遠くに連れて行かないように、あるいは七海と禰豆雄が炭華と一緒に行くかと言い出すだろう。

だけど、七海と禰豆雄には最終決戦に参加してもらわないといけない。七海と禰豆雄は炭華を危険な場所へ連れて行こうとする気はなく、離そうとすれば間違いなく抵抗する。そのため、二人を説得してほしいと頼まれるのである。

まあ、私も炭華が狙いなのは明白な戦いが起きるのに、その炭華を放置するのは安全でないと分かるし、七海と禰豆雄が最終決戦に参加してくれたら心強いので、それに賛成している。

 

 

なので、私は七海と禰豆雄をきちんと説得してきた。炭華を狙ってきているから無惨達を倒そうとか、炭華の安全のためにも戦いの場所から離そうとか、炭華がそんなに心配ならさっさと戦いを終わらせたらいいなどと言えば、七海と禰豆雄は同意してくれた。

柱稽古に参加するのも、炭華を狙ってくる無惨をコテンパンにするために強くならないと駄目でしょうと言った。元から(炭華を傷つけて、血を体内に入れて鬼にしたという)地雷を踏んでいるので、こう言えば七海と禰豆雄が乗ってくると分かっていた。

同情する人がいるかどうかは分からないけど、最大の地雷を踏んだのが悪いと思うし、自業自得のところがある。

 

 

「......という感じで、七海と禰豆雄の説得をしたのだけど、説得するためには事情を知っておかないと難しかったから、私も知っているの。勿論、七海と禰豆雄もね」

「俺も知っているのはコイツらの説得をここでしていたからだ。コイツも俺も一応ここに入院しているからな」

「あー.....。....なんというか、お疲れ様...」

 

 

私が善逸に事情を全部話し、隣にいる獪岳もそれに補足した。善逸はなんか気の毒そうな目で私達を見ながら労った。

 

本当に大変だったんだよね....。入院中は体を休める時間のはずなのだけど、私は柱稽古のあれこれで全然休んでないと思う。いや、これは前の時と同じだから...そんなに気にしなくていいかな....。

 

 

「俺はまだ入院中だから、柱稽古に参加できねぇ。だが、数日後には退院できるから、それまでの間はサボったり逃げ出したりするんじゃねぇぞ」

「無理無理無理!死んじゃうって!俺、弱いもん!」

「だから、善逸が柱稽古に参加してもらおうと獪岳と一緒に話し合っていたの。最終決戦はこれまでと違って強い鬼と遭遇するのは確実だから、ここで鍛えておかないと」

「お前はあの二人と猪で手いっぱいだろうから、このカスだけでも見ておくかと思ったんだ。こんなカスでもお前らと行動したし、上弦の鬼とも戦えたんだから、鍛えれば使えるんだろ」

「そういうことなの!でも、俺は死んじゃうよおおぉぉぉ!」

 

 

獪岳の言葉に善逸は怯えた様子を見せた。私はその予想通りの様子に苦笑いを浮かべ、獪岳は呆れた顔をしてそう言った。

私も獪岳も善逸が柱稽古のことを聞けばそういった反応をすると分かっていた。なので、善逸のことを誰が見るかという話になっていたのだ。善逸は私と獪岳の反応でやっと理解できたらしいが、嫌なものは嫌なようで頭を抱えながら叫んでいる。

私も獪岳も善逸の相変わらずの様子に困り果てた。

 

 

「....俺が来るまではなんとかなるかと思ったが、その前に逃げ出しそうだな、これは」

「となると、伊之助に...も無理かな。私も初日は参加できないからね......」

「初日って、何かあるの?」

「明日から炭華は安全な場所に行くから、戦いが終わるまではお別れなの。だから、お見送りの時に七海と禰豆雄が駄々こねそうで....」

「あー、そうなんだ。いや、それなら俺も炭華ちゃんのお見送りしたい!」

 

 

獪岳はため息を吐きながら言い、私もどうしようかと考える。善逸は私の言葉で気になることを聞き、私はそれにも苦笑いしながら答えた。善逸は私の話に納得した後、自分も行きたいと駄々をこねた。

 

 

「...駄々こねる人が増えられたら困るのだけど.....」

「仕方がねぇが、先生に来てもらうしかねぇな」

「えっ?じいちゃん?なんで?」

「お前が逃げ出さねぇか心配だから、来てほしいと頼んだんだよ」

「私のところも鱗滝さんが来てくれて、炭華の警護につくの。それを知った獪岳も桑島さんに頼ることにしたらしいよ」

「できることなら先生の手を借りずに解決できれば良かったんだが、その調子だと無理なようだからな。ついでに、コイツから聞いた今までのことも既に報告しておいた」

「早いね」

「お前がアイツらを止めてる間に伝えてくれと頼んだ」

 

 

私は善逸の言葉に苦笑いを浮かべ、獪岳は窓を見ながらそう呟いた。かなり小さい声だったが、聴覚の鋭い善逸にははっきり聞こえたため、混乱していた。そんな善逸を見ながら、獪岳は突然だという表情をして言った。私がそのきっかけとなった出来事を話したが、余計なお世話だったかもしれない。

私と獪岳がそんな会話をしている間に善逸は顔を真っ青にしていた。そうしていると、鎹鴉が窓から入ってきた。その鎹鴉は獪岳のである。鎹鴉は桑島さんからの返事を聞いてきたらしく、私達にそれを伝えてきた。その返事は承諾で、今からそちらに行くというものだった。

これを聞き、善逸は泣き叫んだ。

 

 

「いやああああぁぁぁぁぁ!じいちゃんに殴られるうぅぅ!」

「なら、大人しく鍛練でもしてろ」

「なんか知らねぇが、そいつは強えのか」

「そりゃあ、柱を務めてた人だからな」

 

 

泣いている善逸を獪岳は冷めた目で見ながらそう言い、伊之助は桑島さんが強いのかと聞いている。

獪岳の言葉で伊之助は強そうな人が来ることを喜んでいるが、そろそろ現実を見てもらわないとと思い、伊之助に話しかける。

 

 

「伊之助。柱稽古を楽しみにしているのは分かったから、とりあえず周りを見よう」

「なんだよ......」

 

 

私は扉の方を指しながら言い、伊之助は不満そうな顔をしながらその方向を見て、ものすごく後悔した。

それはそうだろうね。しのぶさんがゴゴゴッ...という音が聞こえてくるような雰囲気を出していながら笑顔を浮かべているのだから。

伊之助はそれを見て、すっかり固まってしまったので、私は肩に手を置いて正気に戻した。

 

 

「...一緒に謝ろうか」

「ウン....」

 

 

私が優しくそう言うと、伊之助は素直に頷いた。

 

 

 

 

 

その後、炭華のお見送りは特に問題なく?一日で終わり、私達は次の日から参加できた。柱稽古の順番も内容も前の時と変わらなかった。なので、煉獄さんのところはすぐに終わり、宇髄さんの稽古から始まった。

宇髄さんのところは走り込みであり、そこにいる人達と一斉に走り出すはずだが、その人達よりも早く動くのだ。しかも、七海と禰豆雄が威圧しているから、他の隊士達は怯えている。炭華と離れたばかりだから、やる気も充分なんだよね...。

どんなやる気かって?

正確にいうと殺る気だよ。鬼舞辻無惨を殺る気。

おかげでめちゃくちゃに暴れそうになっていたけど、なんとか抑えさせた。

 

 

だが相当な力を脚に込めているようで、踏み込んだ際に足跡ができた。その足跡で転ぶ人が続出したため、休憩時間に足跡を無くそうと鍬を使ったり、レーキやトンボなどのような道具も使ったりした。

走り込みの稽古のはずだが、足腰だけでなく腕も鍛えられたと思う。ちなみに、私達三人で手分けしてやったから、休憩時間が終わる前には平らな地面に戻ったよ。

 

 

その日から私達は隊士達と離れたところで稽古をした。しっかり宇髄さんと話した結果ね。

足跡の問題は解決できなかったけど、怯えて何もできなくなっている隊士達への問題を解決することはできた。

ただ、足跡をそのまま放置することは危険なので、休憩時間や一日の終わりには三人で元通りにする。

私は七海と禰豆雄を追いかけ、二人と同じくらいの速度で走りながら他の隊士達のいる場所に近づかないように誘導し、昼飯を食べる前には地面に平らにし、配られた昼飯を食べ、終わりまではひたすら走り続け、その日の稽古が終われば地面をまた戻すを繰り返した。

その宇髄さんの稽古は一週間で終わった。時々様子を見に来てくれて、これなら次に行っていいと言われた。

適当にせず、ちゃんと見てくださりありがとうございます。

 

 

私は宇髄さんに頭を下げた後、時透君のところへ行った。私と時透君は刀鍛冶の里の件ですっかり仲良くなっていて、来た時は最近のことを話し出してしまった。その所為で七海と禰豆雄の機嫌が悪い。

時透君は私だけでなく、炭華とも仲良くなっていて、七海と禰豆雄は凄くそのことを不満に思っているのだ。

今回の稽古でその不満が爆発しないようにと思っていたのだけど、もう爆発寸前みたいだ。

すぐに宥めたのだけど、時透君が七海と禰豆雄を煽るので、全然安心できない。二人と時透君はもしかして相性が悪いのかな。

 

 

時透君のところは時透君に何度も打ち込みをする打ち込み稽古であるため、下手をしたら思いっきり時透君に木刀を打ち込みそうだ。それでも稽古はしないといけないため、私と時透が組んで七海と禰豆雄の相手をすることになった。

その間も時透君は二人を煽るので、七海と禰豆雄の怒りの熱が上がるので、私は凄く困るのだ。何せ、来た隊士達がここでも七海と禰豆雄に怯えるから。

そのことに頭を抱えたくなりながらも私は時透君を怪我させないように二人の攻撃を流している。

 

時透君のところは五日で次の場所へ行く許可をもらえた。あの二人、煽れば煽るほどに動きが洗練されていくからね。....たまにめちゃくちゃな動きをしてくる時があるけど。

 

 

甘露寺さんのところは全く問題なかった。時透君のように煽ることなんてないし、逆に少し浄化されて大人しくパンケーキを食べていた。私も今回はここが一番安全だと思っているのだが、次の稽古に行かないといけないので、稽古に真剣に取り組んだ。

 

 

それで、次の伊黒さんのところへ行ってみたのだけど、ここで予想外なことが起きた。

伊黒さんが七海と禰豆雄と仲良くなった。

 

 

何が起きたのかというと.....少し説明が難しくなるかもしれない。

その一、伊黒さんが甘露寺さんと仲良くしていたことに関して言う。さらに、甘露寺さんを褒める。

その二、それを聞いた七海と禰豆雄が甘露寺さんの良いところを認めるが、炭華の良いところを言う。

その三、伊黒さんが負けじと甘露寺さんの良いところを言い、それを繰り返して言い合いに発展する。

その四、私はしばらくの間、これを傍観する。ただ、おろおろして三人の言い争いを見ている隠を宥めてもいる。この時に止めなくていいのかと聞かれるが、今の段階で止めたらとばっちりがこちらに向かうため、少し落ち着く機会になったら間に入ることを話す。隠は納得したので、二人で下がるという流れである。

まあ正確にいうと、この展開からして予想がつくので、放置しておいた。

 

 

その結果、七海と禰豆雄は伊黒さんと仲良くなりました。仲良くというわけではないが、互いに推している人の良いところを認め合い、それに共感しながらその人をより輝かすための方法を話し合っている。

 

皆さんはこの流れに聞き覚えの方がいるでしょう。

その通りです。兪史郎さんと同じ流れです。私も伊黒さんとのやり取りを見た時に既視感を覚え、それが兪史郎さんと会った時だと思い出し、傍観した方がいいのではないかと思ったのだ。

なんだか兪史郎さんの時みたいになりそうだと思ってね......。

 

 

私は兪史郎さんと同じ流れが起きそうだと思っていたので、七海と禰豆雄が言い合っているのを見て、こうなると予想していなかった隠が凄く驚いていた。

そういう流れになったから、伊黒さんとの稽古は割と平和なものだった。度が過ぎると思ったものは私が止めているので、そこまでの騒ぎではない。周りが混乱していたが、私はもう流す方がいいと分かっているので、七海達の話についていけなくても大丈夫だ。

隠は少し困惑している様子だったが、それ以上に可哀想だったのは隊士達である。この隊士達は障害物に括られている人達であり、攻撃が掠る度にとんでもない音が聞こえ、衝撃をあるために稽古の最中はずっと気絶していた。私は同情して七海と禰豆雄がいる間は止めておいた方がいいと意見したが、それは却下された。

その時の隊士達の涙は鮮明に覚えているよ。

 

 

ただ一つ、伊黒さんと意見が合ったこともある。それは三日経ち、次の稽古へ行く許可をもらった時のことだ。

次の稽古は何なのかという話になり、次の稽古をつけてくれるのが不死川さんだと分かった。

 

 

 

『不死川実弥?.....ああ...。玄弥のお兄さんで、姉さんを刺した....』

『.....そうよね。早く不死川さんのところへ行かないと....』

『おい!『伊黒さん。私が不死川さんのところへゆっくり歩いているので、その間に不死川さんへ連絡を。それと、不死川さんに何か防具でも身につけておいた方がいいとも伝えてください』...分かった』

 

 

 

不死川さんの名前を聞き、禰豆雄と七海は不死川さんが炭華を刺していたことを思い出した。これには私も伊黒さんも面倒なことになったと思った。すぐにでも不死川さんのところへ向かう二人を伊黒さんは止めようとした。

この二人にとって不死川さんは下手人のように、あるいはそれ以上のものと感じているようだが、伊黒さんからしたら不死川さんは同僚であり、友人でもある。なので、伊黒さんは不死川さんの元へ行く二人を止めようとしていた。

 

 

だか、その前に私が動くことにした。

不死川さんに何かあったら玄弥も悲しみますからね。ある程度の時間稼ぎくらいはできるはずだ。

私はそう思い、七海と禰豆雄に怪しまれないくらいに遠回りした。私が遠藤(自分の鎹鴉)に合図を送り、それに従ってくれたおかげである。後で遠藤に何か欲しいものを買おうと思いながら、私は自分の指した道に対して頷いてくれる遠藤を見ていた。

 

 

不死川さんの屋敷に着き、七海と禰豆雄が扉を蹴り破って入ろうとするのを押さえ、私は玄関の前で中に入っていいかと尋ねた。

七海と禰豆雄は不満そうにしていたが、それが普通の礼儀だと伝えて大人しく待ってもらった。ついでに扉は蹴って開けないようにということも伝えたので、扉を壊してまでは入ろうとしなくなるはずだ。

それと、七海と禰豆雄がここに来ているのだということを伝え、心の準備をできるようにしようと思ったのだ。あと、しっかり準備ができたかどうかという確認もしたかったのだ。

 

私の声に反応し、屋敷の中から『入れェ』という声が聞こえた。その瞬間、七海と禰豆雄が扉を開け、屋敷の中に入っていった。私もその後を追いかけながら不死川さんを探していて、なんとなく稽古場にいると思った。

 

 

そのことに違和感を感じながらも私達が稽古場への扉を開くと、目の前に見えたのは剣道防具の面のところだけを身につけた不死川さんであった。

いや、どうして頭の部分しかないの!防具を身につけておいた方がいいと私は言ったよ!それとも私が言ったから、面だけはつけておこうという気になったの!私は面だけではなく、甲手や胴、垂といった部分も身につけてほしかったのだけど、どうして他の防具を身につけなかったのだろう。柱合会議の時に七海と禰豆雄にボロボロにされたのを忘れていないでしょうに。

 

 

そういうことを考えていると、不死川さんが七海と禰豆雄に向けて木刀を投げ渡す。『かかってこいィ』なんて言いながら木刀を構えている姿を見て、私は漸く不死川さんが何をしたいのかを察し、遠い目をしてしまった。

 

 

不死川さん、完全に七海と禰豆雄に再挑戦する気だ。本当に七海と禰豆雄に一方的にやられたことを忘れなかったのだろう。そのために七海と禰豆雄に勝負を申し込もうとしている。不死川さんは伊黒さんから連絡が来た時に準備したのは戦うための準備ということで間違いない。

面だけしか防具を身につけていないのは体を動かすため。動きが制限されそうなものは邪魔でしかないから。これだけでも七海と禰豆雄と本気で戦う気なのだということははっきり分かる。

その上、七海と禰豆雄に木刀を渡して、私の分はない時点で七海と禰豆雄との勝負のことで頭がいっぱいだったのだとも分かる。

 

さらに、七海と禰豆雄も不死川さんと戦う気で来たため、やる気は凄くあるのだ。なので、木刀を受け取った瞬間には不死川さんに向かっていった。

 

 

七海と禰豆雄が不死川さんと戦う様子を見て、私は頭を抱えたが、とりあえず木刀を探しに行くことにした。

こんな状況になったが、私達は柱稽古でここに来たのだ。さらに、不死川さんの稽古は持久力を向上させる稽古であり、内容は不死川さんに何度も打ち込み続けるというものである。本気具合が違うが、大体似たような感じになっているため、もうこれを稽古ということにした方がいいんじゃないかと思い始めた。

そのためにも、私はあの三人の戦いに参加することにした。どちら側につくというわけでもなく、ただ全員が再起不能の怪我などをしないようにした。

 

余談だが、不死川さんのところに玄弥が訪れたことがあった。実は原作でもが玄弥は不死川さんのところに訪れ、玄弥が不死川さんに鬼を喰ったことを言ってしまい、目を潰されかけた。こっちでも同じことが起き、それを私達三人で止めた。だが、それによって七海と禰豆雄の怒りがますます強くなり、打ち込み合いがどんどん激しくなっていった。

七海も禰豆雄も刀鍛冶の里の件で玄弥とも話していたわけなので、玄弥の目を潰そうとしたことにかなり怒っている。乱闘は私と玄弥で間に入り、その時に流れで不死川さんと玄弥の兄弟喧嘩になり、七海と禰豆雄が玄弥の味方について過剰暴力になったが、なんとか仲直りさせることができた。

後に悲鳴嶼さんの稽古よりも疲れたと私は思った。

 

 

不死川さんのところでは色々なことが起きたが、一応許可はもらえたので、次の悲鳴嶼さんの稽古に行った。

悲鳴嶼さんの稽古は筋力強化の訓練であり、柱稽古の中で最も過酷な稽古とも言われる。その内容はというと、最初に異様に冷たい川で念仏を唱えながら一刻の間滝に打たれ続け、次に丸太を三本担いで、最後に人の背丈程もある岩を一町先まで押すという課題を全てこなせた人が合格となり、最後の義勇さんの稽古に行けるのですよ。

 

 

ここでは七海も禰豆雄も特に暴れることはなかった。何故かというと、最初に滝に打たれるため、そこで二人とも少し冷静さを取り戻すことができたようだ。だが、問題は起きたのだ。

誰かと揉めたわけではないよ。滝行も頭を冷やすという意味で効果があったし、丸太だって余裕で持ち上げていた。

というか、あの二人は私よりも力があるので、私が持ち上げられたものを持ってなかったということはあり得ない。それなら岩も押すことができるのではないかと思うが、それが難しかったのだよね。

 

 

私は岩を押すことができたよ。何故と思うかもしれないが、二人が岩を押せないのはそれ故にということもある。

七海と禰豆雄が岩を押すのに失敗した理由は岩が粉砕してしまうからである。要は七海と禰豆雄の押す力があまりに強すぎるため、押される岩の方が耐えきれずに壊れてしまうのだ。

これには私も驚いたし、七海と禰豆雄はもっと頑丈な岩がないかと探し始めた。悲鳴嶼さんは盲目だから岩が粉々に崩れていくところを見ていないが、その音で察しているのだと思う。粉砕された後に念仏を唱えていた。いつものことだとも感じるが、なんとなく岩に対して唱えたように感じた。おそらく私もその岩に念仏やら謝罪などをやった方がいいのではないかと思ったからかもしれない。

 

 

それと、あの二人が岩を探すのは止めておいた。七海も禰豆雄も悲鳴嶼さんも不思議そうにしていたが、もう自分の力を制御できるようにしてほしいから、この岩で練習しようと言ったら納得された。

今までは七海と禰豆雄が大暴れするため、私達は遠まきにするかそれに加勢するしかできなかった。理由は七海と禰豆雄の攻撃があまりに強く、それを中心にせざるを得ない状況になるのだ。これまでの戦いはそれで通用したが、最終決戦でも通じるかどうかは分からない。

それに、これは私と七海しか知らないことだが、最終決戦の時に私達鬼殺隊は全員が無限城に閉じ込められる。無限城はかなり広い空間のようだが、閉じられた空間で七海と禰豆雄が大暴れすれば無限城はボロボロになり、その無限城で何か起きてしまえば中に閉じ込められている自分達も無事では済まないかもしれないし、何人かの人と行動するような事態になって戦闘中にその人達を巻き込んでしまうこともあり得る。

なので、七海と禰豆雄には最終決戦で連携を取れるように力加減を覚えてほしいと思うのだ。

 

 

このことを七海と禰豆雄に話すと納得してくれたし、悲鳴嶼さんも協力してくれた。だが、七海と禰豆雄の力の制御はなかなか難しく、訓練を全て終えても私はここで鍛練することになった。

七海と禰豆雄がここで暴れる可能性が少しでもあるなら、それを放置するというわけにはいかないからね。

押す岩の大きさを変えたりその距離も離したりしながら私は二人を待った。五日経って、漸く七海と禰豆雄は岩を一町先まで押すことができた。かなり時間がかかったのはおそらく反復動作をしながらであったからだと思う。

 

 

反復動作は集中力を極限に高めるために、予め決めておいた動作を行うことであり、七海と禰豆雄の集中力を高められるものといったら炭華の存在は間違いない。なので、炭華への思いで爆発してしまい、七海と禰豆雄は岩を粉砕してしまうらしい。

それで、七海と禰豆雄がその状態で加減できるようになったのかというと、炭華の怒った顔や悲しそうな顔をしたら不思議と力が抑えられるのだそうだ。やはり七海と禰豆雄は炭華が関わると色々なことを可能にするのだと再確認できた。

私も自分の訓練に取り組む中で、あれこれ悩みながら二人の訓練を見ていたのだけどね....。

 

 

 

私は七海と禰豆雄の訓練を終えた後、少し悲鳴嶼さんと話した。今回は悲鳴嶼さんとかなり関わりがあったので、前の時よりも気安い関係になっている。それに、ここにいる間に相談されたのだよね。何をというと、獪岳のことで。今回も私は獪岳と知り合いであるわけだし、悲鳴嶼さんも刀鍛冶の里の件で獪岳のことを知って気になっているようだった。

私はこれにも悩んだのだよね。前の時は踏み込んで色々口に出していたけど、今回も同じことをすればいいと思っていない。というか、これは私の問題ではないからと思い、獪岳にも悲鳴嶼さんと会ってみないかと手紙を送った。何回か手紙でのやり取りをして、少し渋った様子の獪岳を説得していき、悲鳴嶼さんと獪岳の二人で話す時間を設けるという話になった。これは一度腹を割って話した方がいいと思ったからね。

ちなみに、それを行うのは獪岳が悲鳴嶼さんの稽古まで終えた時に、次の稽古へ行く前に話し合おうということになっている。

 

 

 

 

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