笹の葉の少女は幸せを願う   作:日々草

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ここで皆さんにお詫びします。
この話を本来は二月二十四日に投稿するはずが三月二十四日に投稿するようになっていました。気づくのが遅れてしまい、申し訳ありませんでした。





苦労人の少女は気づかない

 

 

 

残りは無惨のみとなった最終決戦。無惨は太陽光でしか殺すことができないため、ここで日が昇るまで無惨を足止めしなければならない。無惨は死にたくないので、逃げるという手段を取る。なので、私達はそれを防がないといけない。

まあ.......。

 

 

「七海と禰豆雄が暴走しているから、無惨は全然余裕が無さそうだけど.....」

 

 

私は七海と禰豆雄の猛攻に後退りする無惨を見ると、なんだか大丈夫なような気がしてきた。私達以外は無惨の周りに立ち、逃がさないようにしている。

七海と禰豆雄が主に動き、他の人達は二人の援護をしている。それは七海と禰豆雄なら大丈夫だという信頼があると思うが、それと同時に二人について行けるかどうかという問題もあったのだろう。

あの二人は付き合いの長さから連携が取れるし、勢いも炭華関連だとほとんど同じだ。私もこれまでの経験から二人について行けるが、他の人達はその勢いについて行くことが難しい。

 

 

私は刀を持った状態で考え、とりあえず今のまま無惨が逃げないようにすることを優先し、隙ができたら攻撃してもらうことにした。無惨はラスボスという立ち位置にいるため、本当に強いし、厄介な血鬼術を使う。

それに、無惨の攻撃は相手が傷つけば自身の血を体内に入れるものであり、自らの血を大量に注入することで致命傷を与えられるのだ。その攻撃を受けないようにするために一番手っ取り早いのは、無惨に近づかないことや攻撃に当たらないことなのだが、近づかなければ無惨に攻撃できないし、無惨の攻撃って伸縮自在の腕と管であり、その腕と管はとても速いから、掠ってしまうのだよね。さらに、無惨は全身の口から急激に息を吸うことで相手を引き寄せて、上手く動けないようにしてしまうため、あまり近寄らないようにした方が良いと考えている。

その方が被害は減らせるから。

 

 

幸い、七海と禰豆雄は無惨の腕と管を全て斬っているし、息を吸うことで相手を引き寄せるのも逆にそれを利用して、無惨に近づいては壁を壊すほどの攻撃を放っているため、全身の口で息を吸うことは止めている。

あの無惨の様子からして、完全に七海と禰豆雄に怯えている。縁壱さんとは別の意味で怖いみたいだ。

 

 

ただ、私は心配でもある。ここまで順調なのだが、逆にそれは後で心配になる。今の私達は確実に無惨を追い詰めているのだが、追い詰めた後も厄介だ。

追い詰めた相手が何をしてくるか分からないからね。

 

 

そのため、私も七海と禰豆雄に加勢して、三人で追い詰めようかと考えている。七海と禰豆雄が暴走しているため、ここで作戦会議をするのは難しいのだ。話し合うためには一度二人を落ち着かせる必要があるが、今はそんな時間がない。なので、このまま二人は暴走させたままにした方が良い。怪我していないし、勢いも凄いため、無惨が押されている。これを止めてしまうのは勿体無い感じがした。

 

 

私が無惨の間合いに入ろうと思ったその時、とんでもない殺気を感じた。私は一度止まり、原作での無惨の攻撃を思い出し、すぐに近くにいた玄弥と致命傷を負いそうなカナヲの腕を掴み、二人を後ろに引っ張った。

二人とも驚いていたが、何かを言う前に無惨が衝撃波を放つのが早かった。鬼舞辻無惨は伸縮自在の腕と管や相手を引き寄せる吸引以外にも衝撃波を放つことができるのだ。

透き通る世界で無惨の体内の動きが変わったのを見て、もしかしてと思ったが、やはりそうだった。

 

 

それと、想像以上に衝撃波の範囲が広かった。咄嗟に距離を取ったのだが.....。

 

 

「華ノ舞い 炎ノ花 紅梅うねり渦」

 

 

私は二人の前に行き、無惨の攻撃を地面へと受け流した。ここにはたくさんの人がいるため、弾くのは駄目だ。できれば受け止める方が良いのだが、私にそれができる力はないので、私は受け流すことを選択した。

他の人達に当てないように.....いや、あれは避けるのが難しいから、全員が当たって吹き飛ぶかもしれない。そうなれば受け流した攻撃が当たるかもしれないので、私は受け流した攻撃を全て地面に向けることにした。

 

 

だが、それだけでは終わらなかった。透き通る世界に入っている私の目は無惨が腿から管を生やしたのを捉えた。無惨は見た感じでは人の形をしているのだが、その形を変えてしまうことが可能である。原作でもその形に捉われずに顔を縦に割って大きな口が出現するというように、自由に自分の姿を変化させることができる。さらに、この腿から生えた管波非常に動きが速いのだ。

なので、無惨の姿を人の形で固定して見ていた隊士達は倒されてしまったのだ。原作でもその場にいた全員が動けない状況に陥った。衝撃波で吹き飛ばされているか、それに耐えているところをさらに凄い速度の攻撃が来るわけである。

 

 

私はその管を止めるか受け流すために動いた。

 

 

「華ノ舞い 花ノ束 桜花しぐれ」

 

 

かなり広範囲での攻撃であるため、私はあちこち動き回りながら防いだ。

それにしても、腿から生えた管の数が予想以上に多くて困った。原作では具体的な数がなかったが、七人くらいを攻撃できたので、管の数は最高でその人数の七つくらいかなと思っていた。だが、それ以上の数の管が生えていて、私はその管を地面に向けるか、他の管に当てて狙いを逸らしていた。

私以外にも悲鳴嶼さんとかが管を防いでくれたおかげで助かった。なんとか無惨を管を戻すまで耐えられた。

 

 

「あ、彩花ちゃん!大丈夫!?ごめんねえぇぇ!俺達が吹き飛ばされたから!」

「大丈夫だよ。ちょっと掠り傷ができただけだから。それより、善逸と伊之助が無事で良かったよ。.....いや、ちょっと打撲があるみたいだね...」

「おい、彩芽!血、出てるぞ!」

「まあ掠り傷とはいえ、少し切れたみたいだから...ね。それは血が出るよ。でも、中和剤は必要かな。兪史郎さんか隠の誰かに貰わないと.....」

 

 

善逸と伊之助が心配してくれるので、私は安心してもらおうと思い、二人に大丈夫だと言っているが、善逸と伊之助は泣きそうな顔をしている。いや、伊之助は猪の被り物をしているので、声の感じから予想しているだけだけどね。....しかも、善逸は既に泣いているね。

 

 

善逸と伊之助がどうして私にこう言っているのかというと、私が無惨の攻撃を防いでいる時に善逸と伊之助が衝撃波の影響で吹き飛ばされていたからである。さらに、そんな善逸と伊之助を無惨の管が追い打ちをかけるように狙っていたため、私は善逸と伊之助の腕を掴み、その管を受け流した。だが、善逸と伊之助を庇った時に少し動きが遅くなったみたいで、私は少し当たってしまったのだよ。

と言っても、掠り傷であるために何処も無くなっていないし、動くことに支障はない。

ただ、血を流しているために心配していた。

 

 

そういえば私は前の時の経験や七海と禰豆雄の暴走を止めているおかげで、今回は全く怪我していないのだよね。前の時は怪我が多かったけど.....。

その怪我と比べると、今回の怪我は大したことではないし、何なら呼吸の止血でもう止まっている。動くのが難しいというほどではないし、立ち上がっても全然平気なので、大丈夫でしょう。

 

 

「いや、彩花。怪我以上に髪が.......」

「髪?」

 

 

私が善逸と伊之助を落ち着かせようとしていると、玄弥が来て私の頭を指差す。なんだか動揺している様子の玄弥に首を傾げながら私が髪に触れると、一つの結んでいた赤い紐が地面に落ちた。赤い紐についている花札の耳飾り(片方)がシャンッという音を立てた。

 

 

私は驚きながらもその赤い紐を手に取って見た。赤い紐は切れていない。切り傷もないし、長さも元のままだ。一緒につけていた花札の耳飾りも何処も破損していない。地面に落ちた所為で土が少しついていたので、私は持っていた手拭いで綺麗にした。

それを確認して、私は安堵した。赤い紐は父親の形見であるため、それが切れてしまうのは嫌だ。それに、花札の耳飾りも縁壱さんの持ち物であったとか、竈門家に代々受け継いできた物とか、日の呼吸の後継者とか色々な意味を持っているが、私には炭華達の父親の炭十郎さんの形見や炭華達から預かっている物という印象の方が強い。炭十郎さんは炭華の父親であり、私も七海もお世話になった人であるため、その炭十郎さんの物が壊れてしまったら悲しく感じる。

 

 

何処も傷ついていないことを知り、次に私の髪や頭の方を触れた。どうやらちょうど結んでいた辺りの髪が切れたようで、髪の長さはバラバラだが、何処もかなり短くなっていた。

髪を下ろしても、その髪が肩につかない時点で凄く短くなっているのは分かっていたけど。

それで、頭をちょっと触っただけで赤い紐も髪飾りにしていた花札の耳飾りも外れたわけだ。本当にぎりぎりのところであの攻撃が掠ったらしい。その辺りから首の方を触っていくと、何か液体に触れた。なんとなく予想はついていたが、その液体がついた掌を見ると、真っ赤になっていた。

あー、血が出ている。けど、おそらくそんなに深い傷ではないと思う。なので、止血だけはしておこう。

 

 

怪我したことに関してはそれくらいしか思わないのは前の時に骨折したりもっと重傷だったりしたことがあったため、そんなに気にしていないし、私には赤い紐と花札の耳飾りが無事なことの方を良かったと思っている。周りが髪のことで色々言っているのを見て、私は苦笑いを浮かべていた。

今回は怪我をすることがなかったから、余計に心配をかけてしまったみたいだ。

 

 

そういえば、前にも似たようなことがあったような......。.....確か、まだ炭十郎さん達が生きていた頃、お金が足りなくて困っていたので、私が自分の髪の毛を売ると言ったことがあった。ちょうど髪も大分伸びていて短く切ろうと思っていたし、捨てる髪の毛がお金になるなら一石二鳥だと考えたのだ。

まあ、高く売るためにかなり短く切ることになるが、それでも構わないと思っていた。前の時も両親が亡くなったばかりは髪の毛を売ったことがあったから、私は特に何とも思っていなかった。

 

 

だけど、竈門家の人達全員に止められたのだよね。流石に自分より幼い子達に泣かれたらできないし、炭華や炭十郎さん達にも説教されてしまったのだよね。

それに、その後で炭華達は節約して食べ物がほとんど山で採れたものになったり、七海と禰豆雄が仕事の数を増やしたりして、お金が一気に貯まったのだよ。特に七海と禰豆雄の勢いが凄くて、その時の仕事量は今までの倍だった。私も手伝う仕事を増やしたけど、七海と禰豆雄の方が多かった。

私の髪の毛を売る発言で一番それを防ごうとしていたのは炭華なので、七海と禰豆雄のやる気が凄かったよ。

 

 

ちなみに、お金が貯まって、生活に余裕が出た後、みんなにはお詫びとして少し高い魚介類を買った。お金が必要なことは確かなのだが、それに火をつけたのは私だと思うので...。

魚介類の購入の時は私の小遣いから出したため、そこは安心してほしい。

 

 

 

あれから、髪は必ず炭華達のお母さんの癸枝さんと炭華に髪を切られるようになったのだよね。竈門家襲撃が起きた後は七海が切ってくれた。三人とも髪を結べるくらいの長さにして、この長さより短くなっては駄目だと言っていたし、約束させられた。特に炭華と七海、禰豆雄の念押しが効いた。炭華は泣きそうな顔をしていたから罪悪感が凄く、七海と禰豆雄は圧が凄かった。

これは確実にそれより短くなっているし、炭華に怒られるのは確定だよ。七海も禰豆雄もどんな顔をするか......。

 

 

 

それを想像して、私は顔が真っ青になった。

これ、七海と禰豆雄にバレたら私がまずい。どうしよう。でも、短くなった髪を誤魔化すなんて無理だ。

 

 

私が内心焦っていると、背後で物音が聞こえた。善逸達がそちらを見たが、私は振り返らなかった。勘でそれが誰なのかなんとなく気づいていたし、気配でも分かっていた。

....理由は顔を見たくないからである。

だが、顔を見なくても相手は私のことに気づくだろう。笹の葉の羽織なんて着ているのは私だけだし、その人の髪にいつもの一つに結んだ赤い紐と花札の耳飾りが無いことで、いや短い髪でもうバレてしまうだろう。

 

 

「....彩花。怪我しているの?」

「掠り傷はあるけど、大きな怪我はないよ。それより、七海と禰豆雄は大丈夫なの?あの管に当たっていないけど、衝撃波で吹き飛ばされたでしょう」

「平気だ。彩花が管を全部受け流してくれたからな。......それで、彩花の髪はあの攻撃でそうなったんだな」

 

 

私は振り返らずに七海と禰豆雄と会話した。七海が怪我をしていないかと心配してくれたので、私はそれを大丈夫だと伝えた。それと、七海と禰豆雄は大丈夫だったのかも聞いた。自分の目で確認した方が良かったが、今の私にはそれをするのができないために。

まあ、無事かどうかを聞いている時点で七海と禰豆雄が私の髪に気づいているのは察していたよ。もう私の髪がどうして短くなっているのかも確信しているし。

 

 

「...うん、そうだよ。ごめんね、約束を破っちゃって」

「いや、別にいい」

「彩花が炭華とアタシ達の約束を破るわけがないもの。それに、さっきまで短くなったのを見てたわ。.....鬼舞辻無惨がやったというのはすぐに分かるわよ」

「ああ、そうだな。全部鬼舞辻無惨が悪い」

「ひっ!」

 

 

二人がもう断定しているし、それが事実であるため、私は素直に肯定した。私が謝ると、七海と禰豆雄は怒りの矛先を無惨に向けていた。私はそれに少し拍子抜けした。

いや、髪が短くなったのは無惨の攻撃が原因であるため、それは間違いではない。だが、私にも何か言うと思っていた。それと、善逸の悲鳴も気になる。善逸達の表情を見ると、顔を真っ青にしていて、後退りしていた。

 

 

そこで、私は漸く振り返り、七海と禰豆雄の顔を見た。すぐに善逸達が七海と禰豆雄にあれほど怯えていたのか分かった。七海と禰豆雄が暴走する時、七海も禰豆雄も笑顔を浮かべているのだ。いや、笑顔?というのが正しいのかもしれない。禰豆雄は口が耳辺りまで裂けているように見えるくらいに口角が上げ、相手を睨みつけている。七海の場合は禰豆雄と違ってそこまで口角が上がらないし、口元を隠しているのだが、首を傾げていて、その目が飛び出そうなくらい大きく見開いている。

さらに、二人とも目が完全に正気ではないし、声にも雰囲気にも威圧が凄くあるのだ。

 

 

だが、今回は笑ってすらないのである。無である。七海も禰豆雄も虚無の顔をしている。しかも、静かなのだ。暴走時は必ず何か壊してもその相手を一刻も早く始末しようと動くのだが、何もせずに歩いているだけだ。

ただ、その威圧は暴走時よりも重いのだ。ずっしりとのしかかるように乗っかってくるし、その圧がまとわりついてくるようにも感じられる。

それが善逸達には酷く不気味に感じたのだろう。

 

 

だが、私は前に一度見たことがあるため、久しぶりに見たなと思うくらいである。と言っても、私も一回しか見たことがないのだよね。

それなのに、私があまり動揺しないのは......慣れ、ですかね。あの二人は色々なことを起こすため、その対応をしていくうちに何が起きても大丈夫だと感じるようになったのだ。

 

 

私がそう考えている間に七海と禰豆雄は私達の横を通り過ぎ、真っ直ぐに無惨のところへ向かっていった。私達はそれを見送った。

 

 

「えっ?何?今までと全然違うし、音だって凄いミシミシッとかピキピキッとか何かヤバい音しか聞こえないんですけど!」

「ナニ.....アレ」

「表情は何もなかったのに、目は血走ってるのが見えた....」

「彩花。あいつら、どうしたんだ!鬼みたいに第二形態でもあったのか!」

「...あー、とりあえず落ち着こうか。戦っている最中だから。七海と禰豆雄のことが気になって、それどころではないと思うけど、今は無惨との戦いが終わっていないからね!だから、無惨の方を警戒しないと....」

「「「「そんなことよりも七海と禰豆雄!!」」」」

「そ、そうなんだよね.....。でも前に見た時のことを考えると、凄く警戒する必要はないと思うよ...」

 

 

七海と禰豆雄が通り過ぎた後、それまで静かにしていた善逸達が一斉に騒ぎ出した。正確に言うと、善逸と玄弥が大声で叫び、伊之助は片言で震え、カナヲが唖然とした様子でそう言っていた。私は一度落ち着かそうと思って声をかけるが、善逸達はそういう場合ではなかったみたいだ。

あんな状態でも七海と禰豆雄は味方であるし、二人とも標的を鬼舞辻無惨にしているから、無惨の方を気にした方が良いかなと私は思ったのだけど、他はそうではないみたいだ。

 

 

私は善逸達の様子に苦笑いを浮かべながらなんとか宥めようとしていた。すると、玄弥が話していくうちに何かを思い至ったらしく、私に聞いてきた。

 

 

「.....なあ、彩花。前に見た時って、どんな状況だった?」

「えっ?えーと....前に起きたのは三、四年くらい前の時だったかな。炭華が老人を庇って男の人達に囲まれていて、それを私達が駆けつけたの。そういったことは既に何度かあったのだけど、この時は相手の人数があまりに多くて、しかもかなり体型の良い人達だったのだよ。私達は全員子どもだったわけで、その人達に押されかけたの。でも、私達の後ろには人がいて、その人は足を悪くしている人だから、私達は逃げることができなかった。背負って運ぶということができたかもしれないけど、その隙を男の人達が見せなかった。

私達が劣勢になっていき、その勢いで老人を殴ろうと拳を上げる人が近づいてきたの。炭華が前に出るが、その人は炭華ごと殴る気でいて、私はそれに気づいて、慌てて炭華の前に立ってその人の拳を受け止めた。できることなら別の方向に受け流したかったのだけど、それができる時間がなかったので、狙いを逸らすくらいしかできなかったの」

「ウン?どういうことだ?言ってること、同じじゃねぇか」

「伊之助。話は最後まで聞こうよ。それに、私はさっき受け止めたと言ったでしょう。受け流すとなると、逸らすという意味があるのは確かだけどね。私が言っていた狙いを逸らすは当たる場所を変えるという意味なの。本来は真っ直ぐに私の腹の真ん中に当たるはずのものを脇腹辺りにして、その攻撃を受け止めたということなんだ。何処でも当たれば痛いのだけど、腹の真ん中に当たるよりはマシかなと思ってね。

まあ結局痛くて、立つことはできていたのだけど、周りの男の人達が私に狙いを定めたの。

その時、七海と禰豆雄が今まで苦戦していた人達を全員吹き飛ばしたのだよ。その時の様子が今と似ているのだよね」

 

 

玄弥の質問に私は当時のことを思い出しながら説明した。ただ、その当時を思い返してみて、あれこれ思うところがあり、その説明が少しおかしくなっていた。善逸達はなんとなく分かったようだが、伊之助はよく分からなかった様子で、私はそれを宥めて話し続けた。

 

 

あの時は私も驚いていたから、記憶にはっきり残っている。七海と禰豆雄の行動を大体知っている私でも、あれはかなり衝撃を受けた。初めてのことだったし、いつもの暴走時とは全然違かったのだよね。

その特徴は先程少し話していたが、それだけではない。いつもの暴走時と比べたら静かだったと言ったが、あれは冷静に考えて行動しているように感じられた。

暴走時の二人はとにかく相手(敵)に真っ直ぐに攻撃していき、それによって何が破壊されても気にしないで相手に攻撃を当てることを優先し、邪魔をするならその障害は壊していくという戦法をしている。

だが、あの状態の七海と禰豆雄はそんな破壊行動をせず、最低限の動きと力で相手に攻撃していったのだ。その所為か動きが速くなっていた。

 

 

それと、七海と禰豆雄が素直に私の言う通りに動いてくれたんだよね。今までの暴走時は七海と禰豆雄が止まるとなると、主に炭華の関係のことだったり、二人が納得するものだったりした時に止まっていた。

だが、その時は二人とも私がそういう理由とかを説明する前に止まったり動いたりしてくれた。七海と禰豆雄が暴走している時でそんなことは一度もなかったから、私はそれに最初凄い戸惑った。だけど、それどころではなかったので、その時は男の人達の対処を優先した。

説明する時間がないため、指示する時間が短縮できたし、連携もいつもよりやりやすかったからね。

 

 

「おかげで、男の人達を追い返すことができたの。流石に七海と禰豆雄もそんな暇がないと思っていたから、私の言うことを素直に聞いてくれたと思うの。だから、今の七海と禰豆雄なら暴走時より大変なことにならないと考えたのだけど.....」

「......いや、七海ちゃんも禰豆雄も無視して動いてるよ」

 

 

私が当時のことを話し終え、自分の見解を伝えてみたのだが、どうやら違ったらしい。

無表情で攻撃する七海と禰豆雄に対して、宇髄さんや不死川さんが前に下がるように言ったり、そこに吹き飛ばすなと言ったりしているが、七海と禰豆雄はそれら全てを無視して、無惨を追い詰めることを最優先にしている。

 

あれ?おかしいな。あの時は何も反論なんてせず、私の指示に従って動いてくれたのに、どうして今回は駄目なのかな?まだ一回しか見たことがなかったから、あまり確証がなかったけど、これは結構自信があったのに.....。

 

 

「しかも、あいつらの暴走がいつもより酷くなってねぇか」

「....確かに七海と禰豆雄が全くの無反応なのは珍しいね。暴走時はあれこれ壊すけど、それは行動だけであって、誰かの声は聞こえている。...まあ、重要なこと(炭華関連)以外は特に聞く必要がないと思っているため、無視しているけどね。

でも、義勇さんにも一言も返事していないところを見ると、それはおかしいのだよね。不死川さんはともかく、義勇さんは炭華を見逃してくれた上に鱗滝さんという育手を紹介してくれてもいるので、二人とも義勇さんに感謝しているから、暴走時でも義勇さんには必ず返事をしているのだけど....。今回は義勇さんにも無反応ということは......完全に頭に血が上っているのね」

「うん。確かに凄い怒りの音が二人からしてくるから、彩花ちゃんの髪が切られたことは相当駄目なことだったみたいだね」

「まあ、炭華に髪を短くしたら駄目だと涙目で訴えられていたのに、こんなことになってしまったら、ね。無惨は元から炭華を狙っていたという地雷を踏んでいるうえに、さらに炭華を泣かすことをしたのだから、あの二人が黙っているとは思えないよ。

...それなら、怒りも通り越したら無になったという感じなのかな」

「えっ?........やっぱり彩花ちゃんは気づいていなかったんだ」

「うん?何が?」

 

 

伊之助の言葉には私も同意せざるを得ないので、隣で頷いた。私も七海と禰豆雄の様子をよく見てみると、不審な点がいくつもあると分かる。その見解を挙げると、善逸がそれに同意してくれたのだが、その後に続いた言葉には首を横に振ると同時に、何処か納得した様子で私を見ていた。私はその言葉がどういうことか分からずに聞き返した。

 

私、何か間違えたの?七海と禰豆雄のあれは地雷をいっぱい踏まれたため、それによって怒りを通り越してしまったのだと思ったのだけど.....。

 

 

「彩花ちゃん。俺がよく笹団子をお土産に買ってくるのは知っているでしょ」

「うん。笹団子は私の大好物だからね。だから、いっぱい買ってきてもらえて凄く嬉しかったよ。いつもありがとうね」

「確かに彩花ちゃんが凄く美味そうに食べているよね。.....て、いやそうじゃなくて、あれは俺が遠いところでの任務でお土産を買おうかと言った時、七海と禰豆雄にどうしてかタラの芽と笹団子があったら買ってきてくれと頼むんだよ」

「あー。タラの芽は炭華(炭治郎の時と好みは同じ)の大好物だから、例え今の炭華が食べられなくてもと思っても用意していたのだと思う。それと....笹団子はさっきも私の好物だけど...あの二人がわざわざ頼むなんて.....日頃のことで労ってくれているのかな...?」

 

 

善逸の話に私は首を傾げながらも答えた。善逸は私達や蝶屋敷の子達にお土産を買ってきてくれる。その中に必ず笹団子が入っているのだよね。私は毎回そのお土産を楽しみにしていたけど、七海と禰豆雄がお土産に笹団子を買ってきてくれるように頼んでいたとは予想外だった。

.....あの二人、自身の任務の際も笹団子を買ってきてくれるから、日頃の礼のようなものなのかなと思っていたけど、流石に多いと思う。

 

 

「なあ、彩芽」

「何度も言うけど、私の名前は彩花だよ。それで、どうしたの?」

「彩芽が原因だと思うぜ。あいつらがキレてんの」

「うん。炭華のことを狙っているのに、その上で炭華が泣かすことをしたらそれは....「違ぇ」.......えっ?」

「彩花。あの二人は彩花の髪を切る原因だから、怒っているのだと思う」

「そうだろうね。だってね......」

 

 

伊之助の言葉に私はいつものような会話をしていたが、少し様子が違った。私はそれを疑問に思っていると、カナヲが補足するようにそう言った。

私はそれを聞き、前にあった髪の騒動のことを話した。

 

 

今回のことで、炭華は私の髪が勝手に短くなっているのを悲しむからね。炭華を狙っているという地雷を踏んでいて、その上で炭華を悲しませるという地雷も踏めばああなるだろうという予測がつくよ。

 

 

「......彩花ちゃん。とりあえず、その髪をまずなんとかした方がいいと思う」

「うん?この髪型になっても戦うのに不便なことはないと思うのだけど.....。....でも、この紐と髪飾りを落としたくないし、分かりやすく頭につけておいた方がいいかもね。

分かった。ちょっと髪を整えてくるよ。戦いの最中だから、あまり時間をかけず、すぐに戻ってくるね」

 

 

善逸の言葉に私は少し悩んだが、その言葉に甘えて髪を整えることにした。戦いの最中だから、そこまで時間をかけないつもりだ。なるべく早く終わらせようと思っている。

 

 

紐と花札の髪飾りを落とさないようにするためにも、髪につけておいた方がいいよね。私は懐とかに閉まっておいた方がいいかもしれないが、無惨を相手だとあちこち動き回るため、何処かで落とす可能性がありそうだ。戦いの最中にそのことを気にする余裕はない。すぐに髪を整えようと思う。

それに、あの状態だと何をするのか予想がつかないというのもある。なので、早く七海と禰豆雄を止めに戻る必要がある。

 

この時、私はそう考えていたので気づかなかった。

 

 

 

「あいつ、全然分かってねぇぞ」

「たぶん、彩花ちゃんは七海ちゃん達と距離が近かったから、気づけていないんだと思う」

「それに、俺達も確信を持ったのはあれだからな。.....彩花のあの話を聞くと、彩花の言うことも納得できるが、それは理由の一つなんだろうな」

「仕方がない。彩花は怪我をしていなかったから、二人がこうなることを見ていなかった。彩花もあまり見ていないから、分からなくてもしょうがない」

 

 

善逸達がそのような会話をしていたとは知らなかった。善逸達は話し合いながら七海と禰豆雄、私のことで悩んでいた。

私が戻ってくると、善逸達は私に近づいて言ってきた。

 

 

「あいつら、彩芽のことが好きだから、怒ってるんだと思うぜ」

「好物を買ってくるところからして、彩花ちゃんのことを大切に思っているのは音でめちゃくちゃ伝わるよ!」

「お前。炭華のことで暴走するあの二人をよく見ているから、どうしても暴走に炭華が関係していると思うんだろ。まあ、それも原因なのかもしれないがな」

「でも、あれは間違いなく彩花のことで怒っているんだと思う」

 

 

その言葉に私は正直にいうと半信半疑である。七海と禰豆雄が私のことをそこまで大切に思っているのかと言われると、その素振りが全然なかったためにどう受け取ったらいいのか分からない。

それくらい思われているのは嬉しいと感じられるが、実感が全くないのだ。七海と禰豆雄が暴れる原因は主に炭華関連であり、それをずっと近くで見てきた私からすると、その対象に私も入っていたということを頭が受け入れるのを拒否するのだ。

 

 

「それなら、私はどうすればいい?」

 

 

困った私は善逸達に聞いた。なんとなく善逸達と私とで認識に差があるみたいなので、私はどう行動した方がいいのか分からず、善逸達の意見も聞いてみた。

善逸達の話を無視してはいけない気がするので。

 

 

 

私の言葉を聞き、善逸達は互いに顔を見合わせた後、

 

 

「彩花ちゃん。とりあえず彩花ちゃんの無事だということを言った方がいいと思う」

「彩芽に何ともなかったらあいつらも戻るぜ。絶対」

「怪我は平気だと言っておかないと。髪だって短くなっているけど、さっきよりも大丈夫になっているから、二人とも落ち着くはず」

「一応髪に関しても何か言っておいた方がいい。今回は彩花の髪がきっかけだから、髪のことが解決すればなんとかなるんじゃないか」

 

 

四人とも少し似たようなことを私に言った。善逸と伊之助とカナヲは私が無事だということを真っ先に言った方がいいのだというのは共通であり、玄弥は髪のことも伝えた方がいいと言っている。

 

 

今の私は髪の長さを顎くらいまでに揃え、ハーフアップにして花札の耳飾りを通した赤い紐で結んでいた。しっかり硬く縛ったので、外れることはないだろう。

 

 

私は善逸達の言葉に従い、七海と禰豆雄のところに行った。七海と禰豆雄は無惨を追い詰めていた。近くにあった建物類や地面などの破壊は最小限に留めているが、その時に出る被害が突然であるうえに大きいのだ。

それに、周りの人達もどう動けばいいのか分からなくなっている。連携が全くない状態になっているのだ。七海と禰豆雄は互いにどう動けばいいのか分かっていて、無言でも相手の行動が理解できるが、周りの人達はそういかない。下手に動けば足を引っ張ったり巻き込まれたりする可能性があるからね。

 

 

「七海!禰豆雄!聞こえる?聞こえたなら一度無惨から距離を取って!」

 

 

私が七海と禰豆雄に声をかけると、七海と禰豆雄は無惨の前から姿を消し、私の隣に来た。

うん、あの時と同じね。さっき見た時は義勇さんの言葉が耳に届いていなかったけど、今は普通に聞こえているみたいだ。

 

 

「少し離れていてごめんね。私はもう平気だから」

「........彩花。髪は大丈夫か」

「髪?短くはなったけど、特に気にしていない。むしろ長い髪が切れたということで、願掛けのように願いが叶ったからとも捉えられるでしょう。炭華に色々言われるかもしれないけど、約束を破ったことになるために私が怒られるよ。...それに、またすぐに伸びるだろうから。赤い紐は切れていないし、髪飾りも壊れていなかったから、私は良かったと思っているよ」

「怪我の方は?」

「どれも擦り傷だったから、呼吸で止血すれば大丈夫だったよ。だから、安心して。それより無惨が逃げないようにしないとね」

 

 

私が七海と禰豆雄に謝罪すると、禰豆雄が髪のことを聞いてきた。私は玄弥の言っていたことを思い出しながら平気だと伝え、次の七海の質問にも答えた。

そうしているうちに無惨が逃走しようとしているのを気配で感じたうえに、その素振りが視界に入った。

 

 

私の言葉に七海と禰豆雄が反応し、無惨の方を見た。無惨は顔を真っ白にさせながらその場から逃げ出し、私達は走って追いかけた。

 

 

「七海。禰豆雄。私が先回りするから、七海と禰豆雄は無惨を攻撃し続け、少しでも注意を別の方へ向けて。私が刀を振ったら禰豆雄はそれを援護してほしいの。その後、七海が追撃して」

 

 

私は七海と禰豆雄にそう言った後、先回りしようと裏道のようなところを通ったり建物の上に移動したりした。その間、禰豆雄は隠や他の隊士達から受け取った刀を投げていて、七海は呼吸の型で対応している。

 

 

「海の呼吸 弐ノ型 篠突き・雨」

 

 

この海の呼吸の型は突きを連続で放つ型である。雨のように一秒で何粒も降ってくるものであり、勢いよく刀で突くため、遠いところでも衝撃波みたいに放つことができる。

無惨は次々と来る刀と水の衝撃波を避け、時に当たりながらも足を止めずに逃げ続ける。

 

生きることへの執念、凄いですね。そう思いながらも私は無惨を追い越し、逃げ道を塞ぐことにした。

 

 

「華ノ舞い 岩ノ花 野蘭咲き」

 

 

私はその型を無惨が通ろうとする道に放った。その衝撃で砂埃が舞い、無惨は一度その場で足を止めた。

 

 

「ヒノカミ神楽 円舞」

「海の呼吸 参ノ型 飛泉万波」

 

 

その隙を逃さず、禰豆雄と七海が攻撃してくる。禰豆雄は無惨に少しでも効く斬撃にするためにヒノカミ神楽を使い、七海はこの隙に斬り刻みたいのか連続で刀を振れる型を使っていた。飛泉万波は水の呼吸の流流舞いの型から流れる水のような動きを取り入れ、さらに血鬼術の千波帯を基にしているため、波が幾重も押し寄せるみたいに何度も刀を振ることができる。

無惨は禰豆雄と七海の刀によって触手が斬れたが、すぐに触手を生やした。だが、無惨に疲れがある様子から年を取る薬が効いていると分かる。原作のように使われているのは珠世さんに直接聞いたので、それは間違いない。

それと、私達は無惨が疲れているのを見逃さなかった。特に七海は原作で知っているため、無惨に何が起きているのかを正確に理解できる。

なので、行動は一番早かった。

 

 

「海の呼吸 肆ノ型 春霖氷楔」

 

 

七海が水の中に氷が混ざったようなものを刀に纏いながら突く型である。それでは篠突きと似ているが、篠突きよりも威力も速さを上がるし、深く突き刺せる。だが、あまりに深く刺さるため、抜くのに少し時間がかかる。

まあ、前の時に私の腹を貫いた血鬼術の氷棚針だから、その鋭さは凄いよ。最初は七海が私のいる時に使おうとすると、凄く使いづらいそうにしていたし、私も見ていて少し複雑だったけど、今ではもう笑い話に済むくらいだ。

 

 

「ヒノカミ神楽 碧羅の天」

「華ノ舞い 水ノ花 水仙流舞」

「海の呼吸 壱ノ型 蒼海環流」

 

 

禰豆雄も私も七海が無惨から刀を抜く時間を作るため、無惨の触手や手足を斬る。その間に刀を抜いた七海がそのまま刀を振った。

七海の蒼海環流は水の呼吸の水面斬りを基にし、血鬼術の水の扱いによってできた最初の海の呼吸の型である。そのため、七海の中ではこの型が特に正確に狙うことができ、肝心な時に使っている。

 

今回も至近距離で刀を振り、当てたことで無惨は胴を真っ二つに斬ることができた。それを見て、私と禰豆雄が同時に動いた。すぐにくっついて復活するだろうが、私と禰豆雄は追撃することを優先した。

 

 

「華ノ舞い 紅ノ葉 陽日紅葉」

「ヒノカミ神楽 烈日紅鏡」

 

 

私も禰豆雄も連続で放てる型で攻撃していく。すると........。

 

 

「水の呼吸 参ノ型 流流舞い」

「風の呼吸 肆ノ型 昇上砂塵嵐」

「蛇の呼吸 参ノ型 塒締め」

「恋の呼吸 弐ノ型 懊悩巡る恋」

 

 

柱達も加わり、それぞれ無惨の触手や腕を斬った。私達が連携していくところを見て、だんだん私達の動きについて行けるようになったようだ。私も七海も禰豆雄も柱達の動きに合わせながらも無惨を再び追い詰めていく。全体的にいうと、禰豆雄が中心という感じで、それを私と七海が補助し、そんな私達を柱や善逸達が援護してくれるという感じになっている。

えっ?七海は補助ができるのかって?

 

 

できるよ。一応七海はそういうことに特化した型を持っている。それは........。

 

 

「海の呼吸 伍ノ型 行雲流水」

 

 

行雲流水とは血鬼術の水魔奔流を基にした型であり、広範囲に動けるものである。また、行雲流水とは空行く雲や流れる水のように、深く物事に執着しないで自然の成り行きに任せて行動する例えという意味や、一定の形をもたず、自然に移り変わってよどみがないことの例えという意味があり、その言葉の通りにどんなに多くの人や多方向から攻撃が来ても刀を振りながら避けたり斬ったりすることができ、臨機応変に動けそうな型だと私は思った。

炭華のことで何かあったら暴走する姿から、七海には使いにくいのではないかと思われるかもしれないが、暴走すると突っ込みがちな七海にとっては非常に助かるし、私も安心する。

この型があれば自動で回避できるため。

 

 

とにかく、七海はその型で迫ってくる攻撃を避け、攻撃する準備をする。

 

 

「海の呼吸 陸ノ型 暁雨白浪」

「ヒノカミ神楽 火車」

「華ノ舞い 日ノ花 日車」

 

 

七海が血鬼術の砕氷雨の時のように氷(時々水も)を発射するというわけではないが、それと同じくらいの勢いで突撃できる

またそれは氷の混じった水ではなく、白い波のエフェクトである。白い波が押し寄せる感じで突進し、間合いに入って斬撃を放つ。波という言葉がある通り、押し寄せた後に戻るようになっている。だが、無惨を相手に攻撃した後で後ろに下がるという行動ができるとは思わない。

 

そのため、間合いに入った七海が攻撃を受けないように、私が左側にある触手と腕を、禰豆雄が右側の触手と腕を斬った。その時、空を見上げると、少しずつ明るくなっていることに気づいた。

もうすぐ夜明けだと。

 

 

「海の呼吸 肆ノ型 春霖氷楔」

「ヒノカミ神楽 陽華突」

 

 

七海もそれに気づいたらしく、無惨を固定するために突き技を使った。しかも春霖氷楔であるので、壁を突き破る勢いであった。それほどまでに無惨を逃がす気はないと分かる。

だが、無惨も夜明けと七海の狙いを察しているらしく、無惨の顔が縦に割れそうなところで原作の時みたいに七海を食べようとしていると分かり、防ぐために動こうとしたが、その前に禰豆雄が突きで無惨の顔を串刺しにするのが早かった。それにより、七海は助かった。

 

 

しかし、私はそれでも気を抜かなかった。いや、気を抜くわけにはいかなかった。無惨がどういう足掻きをするのか知っているため、警戒していた。七海と禰豆雄がいてくれるし、義勇さん達が援護してくれるので、再起不能になるほどの怪我は負っていないが、擦り傷だらけで血も出ている。刀に付着している血は無惨のであるが、私のも混ざっているだろう。でも、刀を手入れする余裕がないため、そのままにしている。

 

 

それくらい疲れているが、私は気を引き締めながら刀を握り、少しでも無惨の抵抗やその後に起きるであろう被害を減らすために自分のできることをしようと思っている。

そう思いながら刀を振った瞬間、なんだか体の奥から強く熱を感じ、同時に力が湧いてきた。そして、今ならできるという謎の自信があった。

 

 

私はそれに従い、前の時のことを思い返しながら体を動かす。あれから全く再現することができなかったが、今はそれができるという確信があった。

 

 

「華ノ舞い 天陽ノ花 珠沙炎天」

 

 

私は彼岸花の模様の赫刀を振ると、前の時で七海との戦いで出たあの型を使うことができた。私はできたというのを見て確認したが、それをもう一度使えるようにすることができるのかとなると、そこは微妙である。

刻まれた腕や脚、触手は再生できない状態であり、無惨は自分の姿を保てずに危機感を覚えていたが、自分の思う通りに動かせない。原作では最期の最後まで自分の姿が原型のないほど変わっても生きようとしていたが、今回はその抵抗すらできない。赫刀で斬られたところが上手く再生できないうえに、かなり痛そうにしている。これでは衝撃波を出すのも難しいだろう。

どうやら無惨はもう弱り果てているようで、原作よりも限界が近いみたいだ。さらに、そんな状態の無惨を悲鳴嶼さんが鎖で拘束し、無惨はますます身動きが取れず、日光に当てられた。

これで、私は戦いが終わると思ったのだが、そうは問屋が卸さなかった。

 

 

日光に当たり、火傷を負い、灰になっていきながらも無惨はぎりぎりのところで肉鎧を出し、それで身を守ったうえに近くにいた人達を呑み込もうとした。

私は流石にまずいと思い、懐からカプセルを取り出し、無惨に投げつけた。呼吸を使いたかったが、先程のあれで体力が無くなってきたし、あのカプセルはこの時のために作り出したものなので、大丈夫だと思ったのだ。

カプセルが当たり、中の液体が無惨の肉鎧に取り込まれると、無惨の肉鎧が溶け出し、そこから火が出て、燃え広がっていく。

 

 

何をしたのかというと、触れたら一発で肌を崩す毒を投げただけである。藤の花を使い、様々な毒草も混ぜたあの毒は鬼が触れたらその場所から毒がじわじわ広がり、体が崩れていくような毒である。

注射型の毒は前の時から何度も使っていたが、今ではあまり使わなくなった。理由は簡単だ。毒を注入するより、日輪刀で頸を斬った方が確実に倒せるからである。原作でしのぶさんが悔しがっていたことだが、私も痛いほどそれが分かった。

前の時の私は毒も使っていた。それは強い鬼との戦いで私が勝てるかどうか、いやちゃんと互角に渡り合えるほどの実力を持っているかどうかも微妙であったため、その穴を私は自身の毒で埋めていた。だが、今回はそれを使わない。昔から鍛練をしていて、毒を使わなくても上弦の鬼の頸を斬れるほどの実力を持っていたため、その必要がなかったからだ。

 

 

それにより、私は毒を使うよりも頸を斬った方が早いと実感するようになった。だが、私は薬の調合と同時に毒の研究も続けた。透き通る世界に入れるようになったとはいえ、私は赫刀が使えないので、その代わりになるもので補うことにした。代わりとして一番に思い浮かんだのは薬や毒を使うことだ。実際に私は刀を振ることよりも長くやっていることであるため、真っ先に思いついた。

この毒も無惨用に作ってきたものである。無惨の情報は前の時でしのぶさんと珠世さんの手伝いをしていたので、ある程度知っていた。だが、しのぶさんと珠世さんのような強力なものを作れると思えないため、私は呼吸と同じくらいの長い年月を注いだ。

 

 

その結果、完成したのは触れた瞬間に腐食する藤の花を混ぜた毒である。原作の時にしのぶさんと珠世さんが無惨に対して行った、複数の薬を使い、一つ目の薬が分析して無効化された後、他の薬が強い効果を出していくということを私もしたのだ。私の場合は単純に藤の花を使った毒を最初に出てくるようにし、その後で神経毒で体を麻痺らせ、その上で腐食する毒の効果が出るようになっている。さらに、おまけに着火剤も入れていたため、日が当たって無惨の体が少しでも燃えればその炎を大きくし、炎の勢いも上がるように油を少し混ぜていた。その上、カプセルが着火材の炭や薪で作られたものであり、それによって燃え移るのを早くし、ますます燃えやすくした。

 

 

それくらい色々工夫して作り、結果は私の予想通りになった。頸を斬れない場合であり、それでいて追い詰めることができているなら、これを使えば確実に日光で殺すことができると思った。刀鍛冶の里での黒死牟の時はそんな余裕がなかったから使用しなかったけど、今回は使うことになった。

正直、これを最終決戦で使うことになるとは思わなかったよ。

 

 

 

 

そういうわけで無惨は原作よりも早く消滅し、その後の足掻きも全くできなかったため、最終決戦は無惨が灰になった時点で終わることになった。

最終決戦が終わり、その事後処理で色々ドタバタしたが、戦いに参加した主要人物達は生き残ることができ、炭華も人間に戻れた。

炭華が私の髪を見て、それで凄く悲しそうな顔をしたことで少しトラブルが起きたが、そこは省略しておこう。

.....おそらく、なんとなく予想がつくと思うので...。

 

 

御館様(正確にいうと先代の)の葬式が終わり、私達も鬼と戦うことが無くなり、元の日常に戻ることになっていた。

 

 

 

そう、なっていたのだ。

 

 

 

「なんで.....また戻っているの?」

 

 

 

 

それに、

 

 

 

この違和感は、何なの?

 

 

 

 

 

 






第三章はこれで終わりです。次は第四章と行きたいところですが、しばらくの間はこの話の投稿をお休みすることになりました。この作品はpixivにも投稿しているのですが、そちらが少し疎かになっていて、さらにスランプ気味にもなっているため、次回の投稿を四月辺りまで休もうと思っています。
楽しみにしている方には大変申し訳ありませんが、気長に待っていただけるとありがたいです。


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