笹の葉の少女は生きるために走る
「.....炭治郎。まだ先なの?」
私達は鱗滝さんのところを訪ねるために狭霧山に向かっていた。鬼と遭遇しないように一日で辿り着こうということで走ってきたが、私には結構きつい!荷物も重いし!炭治郎と禰豆子はまだまだ元気そうだ。さすがは主人公......。禰豆子は鬼だというのもあって疲れないし.....。
「もう少しだ。ほら、見えてきた。」
炭治郎の指差す方を見ると、数キロ先に大きな山が見えてきた。きっと、あれが狭霧山なんだろう。...でも、まだ距離がある。見えてきたから少し休みたい!....けど、もう日が沈みそう。.........もう少し....頑張ろう...。
「ここだ。ここに俺達の親代わりのような人で、俺に呼吸を教えてくれた....鱗滝さんが住んでいるんだ。」
「はあはあ......はあはあはあ...。」
炭治郎が説明してくれているけど.....ごめんね。息切れが凄くて全然頭に入ってこない!
数分後、辺りが少し暗くなってきた時に狭霧山の麓に着いた。私の暮らしていた山からこの狭霧山までの距離が遠くて、山の登り下りを走っただけでしか鍛えてない私には凄くきつかった。これから鱗滝さんの家に向かわないとと思うと、凄くつらい!今、この場に座り込みたいくらいよ!
「大丈夫か?」
「....はあはあ.......だ、大丈夫...。そ、それより、早く行こう。」
「ああ....いや、血の匂いがする!」
炭治郎と禰豆子が心配してくれているが、私は息を整えてそう言い、鱗滝さんの家まで歩こうとしたが、炭治郎の言葉で止まった。炭治郎の見ている方向には御堂があった。
........あっ!この御堂...ということは.....。
私がその御堂の方を凝視していると、その御堂に鬼らしき者が入ろうとしていた。
....やっぱり。
「どうするの?」
「俺が斬りかかって御堂から引き離すから、彩花は吹き矢で動きを止めてくれ。」
「分かった。」
それを見て、隣にいる炭治郎に聞くと、炭治郎はそう言って懐からナイフを出し、私は懐から吹き矢を出して、鬼用の薬が入った物を中に入れた。炭治郎がナイフで斬りかかり、鬼を前にして御堂を背に庇うように立った。その鬼が炭治郎の方を見ている隙に、私は鬼の後ろから吹き矢で狙撃した。吹き矢は見事に首元に命中し、鬼は私の薬で動けなくなった。
「禰豆子!頼む!」
「えい!」
鬼が動けなくなったのを見て、炭治郎は禰豆子を呼び、禰豆子は鬼を蹴った。蹴られた鬼は頭と胴体に分かれた。鬼の胴体は私の薬の効果で動かなかったが、頭は少しずつ再生し、動けるようになっていた。炭治郎が頭と戦い、禰豆子は動けない胴体を蹴り飛ばし、崖の下に落とした。
(相手は動けないのに容赦ないな......。)
私はそんなことを思いながらあの頭をどうしようかと考えた。あの頭にもこの薬を打ち込もうかなと考え.....
「鬼用の薬と害虫駆除用の毒薬を混ぜてみようかな.......。」
そんなことを考え、すぐに行動した。この場所だからか少し原作の場面を思い出した。判断が遅いと言われる前に動こうと思えた。鼠や害虫駆除用の毒薬は匂いと食べ物に入れるタイプのものの二種類があって、その二種類のうち、食べ物に入れるタイプのものを使ってみることにした。その毒薬と鬼用の薬、この二つの薬を混ぜ、さらに藤の花を少し足して注射器型の矢の中に入れた。それをすぐに吹き筒の中に入れ、鬼の頭に狙いを定めて眉間に当てた。さて、どんな結果が出るかな....。そう思っていると........
「ぎゃああああアアァァァ!!?」
鬼がものすごい声を出して、体をビクビクと震わせるだけだった。どうやら薬のせいで体を動かせず、毒でめちゃくちゃ苦しい思いをしているのに何もできずに耐えるしかない状況のようだ。いわば、地獄に落ちているような目にあっているのだろう...。
「体がああああアァァ!!?」
「ごめんなさい!まさか、そんな薬ができるなんて思ってもいなかったんです!本当に申し訳ありません!」
鬼の苦しむ声に私は土下座する勢いで頭を下げて謝った。まさかの実験感覚で試した薬でめちゃくちゃ苦しまれて...もう罪悪感が凄くて.......私の方が悪いような気がしてきた。しかも、完全に殺せるまでいかないくらいの毒.....つまり致死量に満たない毒だったようで、その鬼はただ毒で苦しみ続けている状態で申し訳ないと思っています。苦しげな声がずっと辺りに響いて....精神が折れそう......。そのうち、毒を分解できると思うけど.......本当にごめんなさい!まさか、こんな毒ができるなんて本当に思わなかった.....。
「....彩花。気にしなくても大丈夫だ。」
「でも、実験感覚で試した毒が........。」
私が罪悪感でへこんでいると、炭治郎と禰豆子が慰めてくれた。その間にも鬼の悲鳴が聞こえて、私の心を抉った。
こんなに苦しませる原因は完全に私の作った毒薬なんだよね...。この毒薬の解毒薬を作ろうかな.....。......けど、この鬼は毒がなくなったら私達を襲うかもしれないんだよね....。
「わた、し、が、とどめ、さす。」
「禰豆子...大丈夫だ。それなら俺が.....。」
「だい、じょう、ぶ。」
私がどうしようかと悩んでいる間に、炭治郎と禰豆子がどっちがドドメを刺すかとなり、話し合っていた。話し合いの結果、禰豆子がドドメを刺すことになり........ものの数秒で鬼を倒した。
「ね....禰豆子.....。」
「す、すごい......。」
私の毒の効果もあると思うが...あまりに圧倒的に禰豆子が強かったので、炭治郎は驚き、私はもはや感心していた。鬼を倒した後、禰豆子は炭治郎に褒めてというように抱きつき、炭治郎は禰豆子の頭を撫でていた。私はあの鬼の顔を思い浮かべ、目を閉じて手を合わせ、謝罪と合掌をした。
「......この匂いは.....。」
少し時間が経ち、炭治郎が何かの匂いを嗅ぎ取ったようだ。私は炭治郎の声で目を開けて炭治郎と禰豆子の方を見ると、炭治郎と禰豆子は何かを見て、目を見開いていた。炭治郎と禰豆子の視線を辿ると、そこには天狗のお面をしたおじいさん.......
「鱗滝さん.....。」
炭治郎の言葉を聞き,私はやっぱりと思った。炭治郎と禰豆子が鱗滝さんに抱きつき、泣き出した。鱗滝さんも炭治郎と禰豆子を強く抱きしめ返した。
「良かった.....無事で...。」
お面でよく分からないが、おそらく鱗滝さんも泣いているのだろう......。..........あれ?良かった、無事で...って、鱗滝さんが言っていたけど.....そういえば......炭治郎が言っていた師と思える天狗のお面をした人って....あの時は天狗のお面って間違いなく鱗滝さんだって思っていて気づかなかったけど、原作では炭治郎はまだ鱗滝さんと会ってないはずなのに、どうして、もう師と思えるんだろう.....?
「.......君は?」
「へっ!?.....え...えーと....。」
さっきまで感動の再会のような感じになっていたから、急に話しかけられて驚いた。炭治郎と禰豆子と鱗滝さんが抱き合ったところで邪魔にならないように木の影に隠れていたけど、見つかってしまった....。そういえば...鱗滝さんも鼻が利くんだっけ?
「あっ!鱗滝さん!彼女は彩花。俺が倒れてたところを助けてくれたんだ。彩花。俺の呼吸の師範の鱗滝さんだ。」
「はじめまして。生野彩花と申します!」
炭治郎の紹介で、私は自己紹介をすることができた。
「儂は鱗滝左近次だ。とりあえず....ここで話すと鬼が来るかもしれないから、うちに来なさい。」
「「はい!」」
鱗滝さんの言葉で、私達は返事をして走った。
......って、また走るの!?
「.....なるほど。草笛と吹き矢の息継ぎが呼吸法になっていたと....。その呼吸で鬼を腕を斬ったんだな。」
「はい。ですが、草笛と吹き矢の息継ぎが呼吸だとは知りませんでした。」
「俺もです。草笛や吹き矢を吹いている時は他の音も聞こえて、呼吸かどうか気づきませんでした。」
鱗滝さんの家に着き、私と炭治郎はこれまでのことを鱗滝さんに説明した。鱗滝さんは始めに炭治郎と禰豆子を助けてくれたことに感謝し頭を下げ、私はそれに戸惑いながらも頭を上げてくださるように言ったということがあったのは余談だ。その後から、私が使った呼吸と痣が出たことと左目の色が変わったことについて、私と炭治郎と鱗滝さんとで話し合った。ちなみに、禰豆子は疲れて寝ている。
「それは間違いなく呼吸だったんだな。」
「はい。独特な呼吸音でした。それに、炎を纏っていたので...。」
「......型のようなものは知らないんだな。華の舞いというのも.....。』
「はい。私が両親から教わったのは、薬のことと草笛と吹き矢のことだけです。呼吸の型らしきものは教わっていません。華の舞いのことも何故か口が勝手に動いただけで、私も何なのか分かりません。」
私自身、草笛と吹き矢の息継ぎが呼吸だったことに驚いている。私の両親は剣士だったの?....でも、昔から薬屋さんだって言っていたけど......。
「呼吸を使っていた時に左目の色が変わり、その近くに痣が出ていたんだな。」
「はい。気絶してすぐに痣は消え、左目も彩花が目を覚ました時には戻っていました。」
「痣のことも左目の色が変わったことも今までなかったんだな。」
「はい。そんなの初めてです。」
鱗滝さんが炭治郎と私に交互に確認している。私にだって意味が分からないことなんだから、こんなこと......きっと初めてよね....。左目の色が変わるなんて原作でもなかったからね...。
「.......すまない。儂にも分からん。華の舞いというのも...痣とともに左目の色が変わることも......。」
「そうですか.......。」
やっぱり鱗滝さんでも分からないよね....。他に知ってそうな人って........お館様なら知っているかも?でも、私がお館様を知っているのはおかしいから....
「すみません。他に知ってそうな人とかいますか?」
「知っているとしたら......やはりお館様だろうか.....。」
「そうですか。その人なら....。」
よし!名前が出てきた。
「駄目だ!」
「えっ!?」
私の予想通りに鱗滝さんからお館様の名前を出てきて、内心ガッツポーズをしていた時、炭治郎から大きな声で反対された。突然近くから大きな声が聞こえたことと炭治郎が反対したことに私は驚いた。
「ごめん。」
炭治郎は私を驚かせたことを謝り、真剣な顔で鱗滝さんと向き合った。
えっ?何?
「鱗滝さん。俺は鬼殺隊と関わるのは反対です。」
「た、炭治郎...?」
「.......そうか。仕方がない。あんなことがあったんだから....。鬼殺隊に関わることは儂も反対だしな。彩花。お館様のことは諦めなさい。」
「へっ?......は、はい。」
炭治郎が何故か鬼殺隊と関わることに反対したことに驚き、炭治郎の方を見てどういうことかと聞こうと思ったが、炭治郎の体が震えていることに気がついた。
.....鬼殺隊で何かあったの?
そう聞きたかったが、その前に鱗滝さんに話しかけられ、私は流れに流されて頷いた。鱗滝さんも反対しているっていうことは余程のことがあったのかもしれない......。
「....さて、これから彩花のことを試そうと思う。彩花。こっちに来なさい。」
「は、はい。」
鱗滝さんに呼ばれて、私は立ち上がった。
「彩花。鱗滝さんの鍛練は厳しいからな。」
立ち上がった私を見て、炭治郎がそう声をかけてくれた。しかし、私の頭には鬼殺隊の名前が出た時に体が震えていた炭治郎の姿が頭から離れず、炭治郎のことを心配しているが....
「うん。分かった。私、頑張ってくるから!炭治郎はもう寝ててね。禰豆子と仲良く隣で寝た方が良い夢を見れるんじゃない?炭治郎が熱を出して寝ていた時、禰豆子は気持ち良さそうに隣で寝ていたよ。」
「ははは。いや、まだ起きてるよ。彩花。大変だけど、頑張れ。」
「はーい。」
私はそれを感じさせないように笑顔を浮かべて、精いっぱい明るくそう言い、炭治郎と小さく笑い合った。私は炭治郎に手を振った後、外に出た。鱗滝さんは何も言わずに私を待っていてくれた。
「今から山を登る。儂の後をついて来い。」
「はい!」
私は鱗滝さんの後を追いかけ、狭霧山を登った。
「夜明けまでに山の麓まで降りて来い。」
「はい!」
目的の場所に着いてすぐに鱗滝さんはそう言った。私は原作と同じだなと思いながら返事をした。
それにしても.....狭霧山の空気は薄いって聞いていたけど、本当にそうね.......。私の暮らしていた山より比べられないほどに空気が薄い......。
「....感謝する。」
「へっ?」
「炭治郎と禰豆子が感情を表すようになったのは彩花のおかげだ。あんなことがあって、辛い思いを.....苦しい思いをしてきたはずだが.....本当に助かった。」
「い、いえ...。」
すぐに山を下りるはずの鱗滝さんに突然感謝され、私は戸惑いながらもそう返した。私を少し見た後、鱗滝さんは山を下りていった。
「.....一体、炭治郎達に何があったのだろう...。って、考えている場合じゃない!夜明けまでに山を下りないと......。」
炭治郎と禰豆子に何があったのかと考えていたが、それよりも山を下りる方が先だと考え直し、私は山を下り始めた。
確か.....落とし穴や投石機などの罠だらけだったよね......。炭治郎は匂いで避けていたけど...どうしよう....。いや、考えている場合じゃないよね。とにかく進まないと...って!?
私が山を下りていると、何かが来る予感がして避けると、石が飛んできた。私はそれを避けるが、避けた先が落とし穴だった。落とし穴に落ちかけたが、すぐにジャンプして回避できた。しかし、その先に丸太やら石やらが飛んできた。丸太は避けれたが、石に当たってしまい、さらに縄にも引っかかり、少しよろけたところに別の落とし穴に落ちかけ、慌てて両手を使ってなんとか回避し、近くの地面に転がり込んだ。
「....はあはあ.....ここに来るまでずっと走っていたし...ここは空気が薄いし....疲れてきている...。それに、罠も多くて、進むのが大変!...はあはあ.....でも、夜明けまでに戻らないと......。」
私はあまりの罠の多さに現実逃避したが、それでも頑張らないとと気持ちを切り替えた。私は炭治郎のように匂いで罠がどこから来るか分からないから、どうにかあの罠を避けれる方法を考えないと...。うーん、姿勢をできる限り低くして罠に当たりにくくするのはどうかな?でも、走りにくいから駄目ね。...うーん.......。他に何か....炭治郎のような鼻の代わりに、勘を信じて五感もフルに使って避けよう(代わりになるとは思えないが...。)....!気を抜かずに最後まで....当たっても立ち止まらずに走り続けよう.....。いわば、気力と根性の勝負だ!!
私は最後の方は完全にヤケになりながら走り続けた。
「....話は分かったが、本当に大丈夫か?」
「彩花は信用できると思います。」
「確かに良い子のようだが、.....優しすぎるのが問題だ。あの子は鬼に謝罪をするような子だ。お前が行く道は修羅の道だ。本当にそんな子を一緒に連れて行って、何かあったらどうするんだ?」
「....それは.......。」
「判断が遅い!」
一方、彩花が山を下りている最中、炭治郎と鱗滝さんは話し合っていた。鱗滝さんの質問に炭治郎は迷いなく答えていたが、彩花を連れて行って、何かあったらどうするんだという質問に炭治郎は迷い、鱗滝さんに頰を叩かれていた。
「....そろそろ夜明けだ。もっとも、あの子がこの試練を越えることができたらの話だが...。」
鱗滝さんが外を見ながらそう言っていると、炭治郎と鱗滝さんの鼻がある匂いを捉えた。次の瞬間、家の戸が開いた。炭治郎と鱗滝さんがその方向を見ると、着物が泥だらけで、下を向いて息切れしている彩花の姿があった。
「はあはあ...はあはあ.....。や...山を下りました....。はあはあ........。ぎりぎり....間に合いましたよ.....。」
僅かに山から日の光が見え始めた。...ちょうど日が登る時間帯のようだ。
「......生野彩花。お前を認める。」
大正こそこそ話
彩花は炭治郎に負けず劣らずの天然で、無自覚なところがある。おまけに、たまに抜けているところもある。薬に関しても村の人達が認めるほどの素晴らしい薬を作れるが、本人はお世辞だと思い、薬のことはまだまだだと思っている。特に毒薬はたまにポンコツ思考が入って、エグい薬が出来上がることがある。昔、害虫駆除の毒薬を頼んだら、自分で調合を変えてみた薬だと言い、その毒薬を使った。そうしたら、その毒薬が結構広範囲で効くうえに即効性だったらしく、虫が全て地面に落ちて亡くなっている地獄絵のようなものが出来上がった。ちなみに、その地獄絵を彩花は見てない(というより、子どもには見せてはいけないもの)し、彩花は殺意など全くない(むしろお試し的な感覚の)状態でそのエグい毒薬が出来上がっている。(彩花は悪気は本当にない。むしろ自分が作った毒は弱いかもしれない、効くかなと思っているくらいだ。)
この件で彩花が作った毒薬のエグさを村の人達は知っているので、彩花に自覚してほしいらしい。病院の手伝いを勧めたのも彩花に自覚してほしかったかららしい。旅に出る時も外に出れば自覚してくれるのではと思って応援したらしい。まあ、可愛い子には旅をさせろと言うからというのも理由だ。幸い、彩花は毒薬を作る気はあんまりない。さらに、今回の鬼の件で、しばらくは毒薬を作らないようだ。