大変お待たせして申し訳ございません。またスランプ状態になった上に、最近の天候により体調不良になり、投稿が遅れました。次回を来週辺りにできれば出したいと思っています。
それと、次回の投稿を終えたらしばらくこの投稿をお休みしようと思います。体調が悪いのもありますが、別の話を書きたいと思い始めていて、執筆が進まなくなってきましたので.....。
ですが、終わりまでの流れはできているので、何ヶ月かしたら投稿を再開しようと思います。
度々休載してしまい、申し訳ございません。
「結構時間がかかるのね」
「ごめん。完全に傷が癒えるの遅くなって。彩花も何処も怪我していなかったのに、俺が機能回復訓練に行っている間は眠っている禰豆子のことを見てくれたし」
「いや、私も禰豆子があの後大丈夫だったか気になっていたからね。七海は全然平気だったけど、禰豆子もそうだとは限らないし。むしろ一緒に入れてもらって、私は楽しかったよ」
「彩花とカナヲの対決は凄かったね。俺達、最初は全く歯が立たなかったけど、やっとカナヲに追いつき始めたからな。でも、彩花にはまだ一勝もしてないから凄いよ」
「おい、彩芽!次は勝つからな!」
「彩花だよ。いや、炭治郎達は怪我していて、私は万全の状態でやっているから、有利な状況だったよ」
背負い箱に入った七海の一人言に炭治郎が謝るので、私はそれを止めようとして、蝶屋敷でのことを話す。七海も炭治郎に謝られてしまい、少し戸惑っているみたいだから、その援護はしておかないと。
柱合会議が終わり、私達は蝶屋敷に送られた。炭治郎は大怪我を負っていたので、そのまま入院した。私は念のために検査して、異常が何もなかった。
禰豆子と七海はというと、先程私が言ったように柱合会議の後、禰豆子は不死川さんによって負わされた傷を癒やし、その体力を回復するために眠り続けていた。一方で、七海は傷を治し、体力を回復するために眠ってはいたのだが、それは数時間しか経っておらず、本人も昼寝の感覚だと言っていた。なので、私と七海だけは普通に任務へ行っていた。
だが、炭治郎達のことが心配だからと言って滞在していた。本当の理由は原作の流れが分からず、気がついた時には過ぎていたということもありそうだし、一緒にいたら任務も合同になるのではないかと思ったからでもある。しばらくして、なほちゃん達とも仲良くなって、仕事の手伝いをしていくうちに炭治郎と伊之助の機能回復訓練にも参加した。
初めは見学しているだけだったが、炭治郎に誘われて気がつけば常連になっていた。その所為で善逸と伊之助の心が折れるのは前よりも早くなっていて、非常に申し訳なくなった。私が何かしてもトドメを刺すだけかもしれないので、私からは何も言わず、原作通りにしのぶさんがなんとかしてくれるのを待つことにした。
私は昼間には蝶屋敷に滞在して、炭治郎の機能回復訓練の相手をしたりカナヲとも対決したりした後、任務が来るまでの間になはちゃん達の手伝いをして、刀の手入れや薬作りなどの準備もして、空いた時間に鍛練していた。夜になったら任務があるが、早く帰ることができたらその近くの山で七海と稽古をしているのだ。七海は日が出ている間に行動できないので、夜しか時間がない。それと、山で行うのは蝶屋敷でやったら迷惑になるからであるし、七海との鍛練は激しいものとなるので、何処か壊してしまう可能性もある。それで、しのぶさんに許可を貰って行っていた。
ただ、予想外だったのはしのぶさんも私達について来たことかな。見張りかどうかは知らないけど、しのぶさんが見学すると言っていたので、私と七海はいつもの鍛練をした。
すると、その日から時々何故かしのぶさんも参加することになった。理由を聞かれても、それは私と七海が聞きたいことである。
あと、私と七海が鍛練を終えた後、しのぶさんが私達に話しかけてきたのだ。
『.....仲が良いのですね』
『まあ、なんだかんだ付き合いが長いので』
『昔からよく一緒に行動していて、こういったことでも相手になるのですよ』
『どれくらい一緒にいるのですか?』
『あー.......』
『....うーん。かなり昔から、ですかね』
しのぶさんの呟き声に七海も私も笑顔で肯定した。だが、しのぶさんのどのくらいいるのかという質問にはどう答えるか少し悩んだが、互いに目で相談し合いながら曖昧な言葉で答えていけた。納得できるかはともかく。そんな私と七海の様子を見て、しのぶさんは微笑んだ。私と七海は一瞬それを見抜かれたかと思ったが、しのぶさんの表情を見て、違うのだと察すると同時に困惑した。
私達が顔を見合わせていると、しのぶさんが私達に声をかけてきた。
『実は彩花さんと炭治郎君には私の夢を託したいのです。鬼と仲良くする夢。きっと彩花さんと炭治郎君ならできると思うのです』
私と七海はその言葉で再び顔を見合わせる。まさか私にもその話が来るとは思ってもいなかったのだ。だが、よく考えてみたら私も鬼を連れた剣士である。それなら、しのぶさんにそう言われるかと気がついた。私と七海が困惑している様子を見て、しのぶさんがまた小さく笑った。
『息がぴったりですね。彩花さんと七海さんは本当に仲良しですね。その姿を見て、私はこの夢を実現させられるかもしれないと思えました』
『......大切なのですね。その夢が』
『.......?はい。だって、鬼と仲良くできたら良いんじゃ『いえ、そういうことではなくて!』.....どうしたのですか?』
しのぶさんの言葉を聞き、私は呟いてしまった。原作ではその夢はしのぶさんではなく、姉のカナエさんが語っていた夢だ。しのぶさんは姉の意思を受け継ごうとしているが、しのぶさんはどうしても鬼に嫌悪感を抱いている。自分では姉の夢を受け継ぐのは無理だと思っていて、炭治郎に夢を託したのだ。
そういった背景を私達は知っている。だが、この目で見てしまうと、反応してしまう。しのぶさんは相反する想いを抱いていたが、その夢自体に嫌悪感を抱いていないようだ。嫌悪感を抱いてしまう鬼と仲良くするであろうとも、最愛の姉であるカナエさんの夢は大切に思っていたのだと分かり、私は意図せずに言ってしまったのだ。
それにより、七海には頭を叩かれた。私は小声で謝る。しのぶさんは私と七海の様子のおかしさに首を傾げていた。でも、七海もその後のしのぶさんの言葉を遮ったので、それでますます事態を悪化させていた。
私と七海は顔を見合わせる。いや、七海は私の体をしのぶさんの方へ向けようとしている。おそらくこうなった原因は私だから、私がなんとかするべきだということだろう。
うん。私がきっかけなのは間違いないよ。だけど、相談ぐらいはしてもいいよね。
私は大きく息を吐いた後、しのぶさんの方を向いた。
『しのぶさんの言っていた夢って、しのぶさんがというよりも別の誰かの夢ではないかと思ったのですが....』
『どうしたそれを』
『しのぶさんが私の夢と言った時、何処か他人事のような感じがしたのです。私のと言いながら別の誰かを思い浮かべているような.......。...だから、その夢というのはしのぶさんではなく、元は別の人の夢であって、しのぶさんはその人の夢を継いでいるのではと思ったのです』
私は聞いてしまった方がいいのではないかと思って口を開いた。しのぶさんはそれに驚いていて、私はそれを当然だと受け止めながら答えた。
原作の炭治郎のように匂いで怒っているかどうかが分かるわけではないので、私はそれらしいことを言った。
でも、これは嘘ではない。僅かな声の調子だが、しのぶさんの言った私がしのぶさんを指しているようではない気がしたのだ。原作で知っているからなのかどうかは知らないけど、確かにそう聞こえたのだ。
しのぶさんは私の話を聞き、それを認めた。話してくれたことは原作と違っていた。それは炭治郎とは違うところを指摘したからだと思うが、要約した内容は同じではあった。
ただ......。
『彩花さんと七海さんを追いかけていた時、まさかとは思っていました。私を貶めようとしているわけではなく、協力し合っていただけでした。柱合会議の時も互いに互いを庇っていて、普通の友達のように見えました。そんな彩花さんと七海さんを見ていると、もしかしたらこの夢は叶えられるという希望を持てました。ですので、私は彩花さん達に託してみたいと思いました』
しのぶさんにとっては私と七海がやっていたことはかなり衝撃的だったようだ。私と七海はいつものことと認識していたけど、周りからは...特に色々な鬼を見てきた鬼殺隊側からしたらかなり驚くことだったらしい。
想像以上に影響があったのだと分かり、困惑した私と七海の様子を見て、しのぶさんは微笑んでいた。
それから、炭治郎達が復活するまでは私と七海としのぶさんの三人で鍛練をしていた。たまに、女の子同士でと甘露寺さんも参加することになった時は驚いたし、バレた時に命がないとも察知した。でも、甘露寺さんに罪はないし、私もしのぶさんや甘露寺さんという柱に稽古をつけてもらえたのは助かった。昼間も実戦形式での鍛練もできたし。
ただ、問題は私が目の前で華ノ舞いを使ってしまったことかな。いや、華ノ舞いを鍛練したくてね。七海との鍛練では思いっきり使えていたのだけど、しのぶさんと甘露寺さんがいる時は水仙流舞しか使えなくて、できれば他の華ノ舞いの型も練習したかった私はついにやってしまった。一応言及された時のことを考えて、恋の呼吸に似ている桜花しぐれにしていたのだけど、それでは誤魔化しが効かなかったようだ。
それと、刀が桃色に変化したことも言及された。それで、私は漸く思い出した。私の刀も結構特殊だったことを。
普通に刀の色が変わることに慣れ過ぎて、そちらを意識していなかった。水仙流舞は水の呼吸の型と似たようなところがあったし、刀も青色のままだから、バレなくて済んだが、今回は完全にバレた。
色々言われたし、聞かれたが、なんとか乗り切ったよ。ただ大騒ぎになってしまい、今回のことは柱の間で広まったらしく、しのぶさんや甘露寺さん以外の柱にも話しかけられることとなった。
...あの時は本当に疲れたよ。
そういえば、前に水仙流舞ではなく、水仙龍舞ってなったよね。しのぶさんや甘露寺さんとの鍛練で物にして分かったんだけど、水仙龍舞は水仙流舞よりも威力の高い型だと判明した。それに、素早く動きやすく、水仙流舞の動きも取り入れているため、相手の懐に入りやすくなっていた。何故一段階上がったのかは分からない。あの時は無我夢中にしのぶさんから逃げていたし、水仙流舞の方も何度も使っていたから、それらが原因?......なんだかゲームでのレベルアップを思い出すよ。
あと、刀の模様が水仙龍舞の時は変わっていた。水仙の模様のところが黄色になっていて、この変化もよく分からない。
その後も色々あったが、炭治郎達の怪我も治り、任務に行けるようになったと診断され、私達に任務が来た。
その任務が無限列車だ。
現在、善逸は無限列車の切符を買いに行っている。やはり止められなかったのだよ、伊之助が主だと言って列車に突撃するのを。私と炭治郎で必死になって止めようとしたけど、逆に目立って駅の人達に見つかり、結局追いかけられた。大人数になると目立つからと善逸だけは別行動になった。
善逸にはどうしてとか言われていたけど、あの駅員達は善逸の姿を見えてなかったらしく、子どもが三人と言っていて、その特徴も聞いてみたら炭治郎と伊之助のことだったんだよね。
特徴的だから、炭治郎達だってめちゃくちゃ分かりやすかったし、私の場合は女の子という言葉で確定した。完全に目をつけられた私達では買えないと思うので、善逸に全員分買ってもらうために分かれてもらったのだ。
「そもそもアタシとも何度もやっているんだから、勝てなくて当然よ」
「.....まあね」
善逸が聞こえない位置にいないことを確認してから、七海は私にそう言った。私はそれに苦笑いしながら同意した。
七海、昼間は動けないから凄く元気なんだよね。その分、私との鍛練に力が入っているんだよ。しかも、七海は鬼となって体力が減らなくなっているため、全力の七海と常に戦っているのだ。凄く良い鍛練になるが、割とキツいものなんだよね。
「いた!切符全員分買えたよ!」
「善逸、ありがとう。流石に四人分は大変だっただろうし、お金もかかったでしょう。はい、電車代だよ」
「いや、大丈夫だよ。俺の奢りだと思って」
「それは駄目だよ」
電車代を全員分買ってきた善逸が戻ってきて、私はお礼を言いながら善逸に電車代を渡した。善逸は大丈夫だと言っていたが、それは良くないと言って、しっかり切符と交換した。
「いよいよね。これは無事に生き残れるかどうか分からないわよ。最初に体力を大きく消費しないようにしてよね」
「そうだね。ぎりぎり頑張っていたけど、あまりこの戦いで疲れていたら駄目だものね」
列車が動くまでに待っていた時に七海が私に話しかけてきた。その声は固く、緊張しているのだと分かる。私も肩に力が入っていて、そのことに気がつき、力を抜いた。だが、心臓の鼓動が速くなっていくのは感じていた。
私と七海がこれほどまで緊張しているのは今回の戦いのことが原因だ。列車の鬼は十二鬼月だが下弦の壱であり、厄介な血鬼術を使う鬼なのは確かである。しかし、私と七海が不安になるのはその鬼との戦いの方ではなく、その次に現れる鬼の方だ。
原作でも前からもあった上弦の参の猗窩座の襲撃だ。前も猗窩座と戦い、余裕で勝ったという印象を持っているかもしれないが、あの時は一応作戦みたいなのは練っていたし、前とは違って私も七海もそこまで強くない。猗窩座の頸をあの時に斬れたのは修行期間がそもそも違うのだ。今の私と七海では猗窩座の頸を斬れる実力であるとは思っていない。私達ができるのは煉獄さんの補助だろうね。
列車が出発し、私達は最終車両から列車に乗った。善逸が落ちそうになっていたけど、三人で引っ張って乗せた。その後は煉獄さんと合流した。煉獄さんの声の大きさに対して、七海がこれでは寝れないと文句を言っていた。
戦いの前に仮眠をとりたかったみたいだ。まあ、窓が壊れそうなくらい揺れる煉獄さんの声なのだから、仕方がないと同意する気持ちはある。それと同時に、炭治郎達が血鬼術にかかるまで眠り続けていた禰豆子は凄いという感想も抱いた。
その後は原作通りに進めた。まあ、それは私が普通に切符を受け取っているところからも分かるだろう。七海は鬼だし、血鬼術で眠るかどうかも分かっていないので、七海の分は買うようには言っていない。七海は禰豆子と一緒に私達が起きるまで待機することになっている。それと、予想外なことが起きても対応できるようにという意味もある。鼓屋敷と那田蜘蛛山の件があるし、不測の事態が起きると想定しておいた方がいいと思ったのだ。
「水町少女は刀の色が確か透明だったな!」
「私は生野ですよ。刀の色に関してはそうですけど。しのぶさん達に聞いたのですか?」
「うむ!今までにない色で、それも甘露寺の恋の呼吸と似た型が使えたのだろう!なら、炎の呼吸でも可能なはずだ!恋の呼吸は炎の呼吸の派生だからな!」
「はははは.....」
煉獄さんに話しかけられ、私は自分の名字を訂正しつつ、聞かれたことには答える。それと...予想はつくが、一応煉獄さんに聞いてみた。案の定そうだったし、煉獄さんが興味を持った理由もだった。やはりあの時のことが原因だった。
私は苦笑いを浮かべた。
もう既にありますとは答えられず、どうにかこの状況をなんとかしようと思った。
「彩花。もう顔を背けてるわよ。いつも取り繕ってるけど、今回は完全にバレバレよ」
「いや、七海。貴女もどうして背負い箱から顔を出しているの。上にいる鬼にバレたら大変だよ」
「はいはい、分かってるわよ。でも、これで煉獄さんから離れられたでしょ」
その時、七海が背負い箱から顔を出し、私に声をかけてきた。私は七海に近づき、小声で言い返した。七海は顔を引っ込めながら背負い箱を閉じる前に言った。
確かに助かったけどね。
ちなみに、善逸は伊之助の方を押さえるのに必死で私達の会話を聞こえていない。だから、私も七海も普通に話しているわけだし。
私が席に戻った時にちょうど車掌さんが来た。私は車掌さんを見て、いよいよかと思い、息を呑んだ。この車掌さんが切符を切ったら血鬼術が発動し、私達は眠ることになる。
戦いの始まりだから緊張しているのかと聞かれたら、半分正解と答える。もう一つ理由があって、それは私の夢の中でカナエさんや有一郎君と会える可能性があるからだ。
私はこの夢の中でカナエさんと有一郎君に出会った。そして、二人は華ノ舞いのことを知っていた。
......いい加減、華ノ舞いについて教えてください。使えるようになっているけど、それについて何も知らなくて、周りからの言及にも答えられなくて、そろそろ限界なのですよ。私もかなりモヤモヤしていますし。
私は内心祈るような気持ちで車掌さんに切符を渡し、切符が切られる音が聞こえたと思った瞬間に意識が遠くなった。
次に目を開けた時には目の前に花畑が広がっていた。私は周りを見渡し、この花畑に見覚えがあり、前にも来た...カナエさんと有一郎君と出会った花畑だと分かった。私は花畑の中を進んだ。カナエさんと有一郎君がいた方向に歩き出し、周りを見渡した。
この花畑はカナエさんが言うには私の無意識領域だと言っていた。花畑が広がる空間が私の無意識領域だと言われてもどう反応したらいいのか分からないんだよね。
下は水仙や梔子、鈴蘭、衝羽根草に朝顔、月見草が咲いていて、黄色や白色、緑色などで彩っている。季節感がおかしい。だが、上よりはマシだ。木に梅や桜が咲いていて、紅葉も赤くなり、それによって桃色の桜の花びらや赤い梅の花、真っ赤な紅葉が降ってきて.....季節が崩壊しているのは間違いない。おまけに前を見てもちょうど私の目に向日葵が現れるので、ますます頭がおかしくなってくる。
本当に私の無意識領域はどうなっているのだ。春、夏、秋、冬と咲く季節がバラバラなものがここで一斉に咲いていて、その統一の無さに私は一つにしてほしいと正直に思った。いや、そもそも自分の無意識領域に入れている時点でおかしいのだけどね。
カナエさんは何も教えてくれなかったけど、何故この現象が起きているのかは知っているみたい。それは有一郎君もだけど、有一郎君は私にそれらを話してくれなさそうなのだよね。だけど、カナエさんは話してくれそうな感じがしたから、カナエさんに聞こう。そうしよう。
「あれ?森?」
私が考えながら歩いていたらいつの間にか辺りに木がいっぱい生えていた。一面に咲いていた花もない。だが、その木には桜や梅が咲いていて、木の根元辺りにも花が咲いているのが見え、広けた道のようなところに出ただけでここが無意識領域であることは間違いない。まだ鮮やかな光景であるが、先程よりはマシである。
私がそのまま進んでいけばいくほどに生えている木が大きくなり、上がその木の枝で見えなくなっていった。
私はなんとなく最奥部に入っているのだと察した。最奥部には精神の核があるだろう。思えば私は二度ここに訪れたが、精神の核は見ていなかった。それよりも自分が無意識領域に入れたことやカナエさんと有一郎君がいることの方に驚いていて、あまり気にしていなかった。
私はカナエさんと有一郎君に会うことを目的にしていたけど、精神の核を見ることも目的にしていいかな。たぶんどちらも同じところなのだと思うし。
私が足を動かし続けていると、森を抜けて今度は湖のような場所に辿り着いた。湖の周りには彼岸花が咲いていて、私は目を見開いた。先程まで色々な花が咲いていたけど、ここだけは彼岸花のみだ。一瞬、死んでしまったのではないかと自分を疑ってしまった。だが、振り向けば通った道があり、無意識領域の中であることは間違いない。
「やあ。よくここまで来たね。だけど、一度ここで止まろうな」
聞き覚えのない男の人の声が聞こえ、私は正面を向いた。すると、先程まで誰もいなかったところに明るく屈託のない笑顔を浮かべる男が立っていた。声が聞こえた時は驚いたが、すぐに警戒を解いた。声は知らなかったが、その容姿は誰なのか知っていた。
「......すみません。自信がないですし、初対面だとも思いますので聞きますが...貴方の名前は匡近さんと言いませんか?粂野匡近と」
「うん。そうだな。会ったことはないだろうし、すぐに思い出してくれてありがとうな」
私が謝りながら聞くと、その男は笑顔で肯定した。やはり匡近さんだったようだ。カナエさん達と違って、まだアニメで出てきていなかったから、声だけでは判別できない。それは有一郎君も同じだが、少し時透君(無一郎の方)に似ていて、なんとなく気づけた。自信はなかったが、匡近さんだと分かり、私は肩の力を抜いた。
粂野匡近は鬼殺隊の隊員であり、風の呼吸の使い手の剣士でもある。さらに、風柱の不死川さんの先輩であり、兄弟子に当たる人物でもあり、命の恩人でもあり、親友.....簡潔に言えば不死川さんに深く関わっている人物だ。
そして、この人も原作前に亡くなっている。カナエさんと有一郎君と同じだ。それなら、この人も知っているはずだ。
「どうして貴方も私の無意識領域にいるのかと聞きたいところですが、他にも聞きたいことがあるので、まずはそちらから聞きますね。貴方は知っていますか?華ノ舞いのことも、カナエさん達と同じことを知っていますか」
私の質問に匡近さんは困ったような顔をしていた。
「まあ、知っていると言ったら知っているけど、彩花よりは知らないな」
「いえ、華ノ舞いのことを知っているのですよね。それだけでも知っているなら、具体的に何を知っているのかを答えてほしいです。私よりも知らないと言ってもその通りなのかは分かりません。ですので、その詳細を知りたいのです。それと、何処で知ったのかというのも。.......もし私の知っている内容を本当に知っているのだとしても、それは無意識領域にいるからなのですか?無意識領域の中では私の思考がバレてしまうのですか!」
私は匡近さんに華ノ舞いのことを聞こうと近づく。肝心なところで目が覚めるのは困るため、何が何でも聞きたい。もう何度もカナエさんと有一郎君と錆兎にやられているから、すぐに知る必要があるのだ。それに、気になることもあり、色々質問してしまったし、つい大声も上げてしまったけど、匡近さんは笑ったままだった。
「彩花は何でそこまで知ろうとしているのかな?」
「....はい?」
「華ノ舞いが気になっているようだけど、それはどうしてかな。原作というのを違うとか、自分が使っているからとか言ってみたけど、本当にそうなのかな。確かに彩花って、割と好奇心旺盛だったり探究心を持っていたりしている。特に最後の方は好奇心で聞いているみたいだったし。けど、それにしては気にしすぎている。完全に無意識だったようだから、指摘させてもらうね。.....それで、答えは見つかった?」
匡近さんの質問に私は呆気に取られた。私は匡近さんに他に理由はないのかと聞かれても答えられなかった。
私はずっと華ノ舞いについて知りたかった。華ノ舞いなんて原作に出ていないものだったし、教わってもいないのに使えたというのがどうしても不可解だった。そのことが気になるのだと思った。それは確かだとは分かる。でも、それ以外にもあるかと聞かれたらどうだろうか。
正直な話、それはないと否定できないのだよね。私もよく分かっていないし、何より匡近さんの指摘を聞いた時に私の心臓が反応した。それがどうしてなのかは分からない。でも、たぶん動揺したのだと思う。心当たりがないのに......。
...匡近さんの質問に答えられない。
「..........」
「.....まあ、分からなくて当然だよな。けど、覚えていてほしいんだ。そのことを忘れずに考えろ。いつか気づける時が来るから」
「そうなのですか?」
「うん。脳裏をよぎるくらいでいいんだ。そうすれば何気ないことがきっかけで分かることだってあるだろ」
答えられず、無言になってしまう私に匡近さんはそう言って頭を撫でた。何か隠しているようだけど、匡近さんの言っていることは嘘でない。それは分かる。
なんだけどね.......。
「なんだか誤魔化された気がするのですが...。結局、私の質問にはっきり答えていませんよね」
「そうかもしれないな。けど、これだけは言える。俺達は彩花の敵じゃない。味方でいるのは間違いないから。俺達は死人だから、直接助けることはできないけどね」
不貞腐れた様子の私に匡近さんは苦笑いを浮かべた。けど、何処か寂しげな様子に聞くのを躊躇してしまいそうなくらいだ。
「......それなら、華ノ舞いについて何でもいいから教えてくださいよ。情報が少しでもあった方がいいのは知っているでしょう。これから戦いも激しくなります。それなら、私にそれを教えてもいいのではないのですか。せめて助言のような感じでも」
「うーん。できることなら教えてあげたいと思っているけど、それは錆兎と有一郎に止められているんだよな。だから、はっきりしたことは言えない。けど、これはまあ言っても大丈夫だろ」
ただ、私もそれで引き返すわけにはいかないので、もう一度聞いた。匡近さんは引く気がないだと察したらしく、苦笑いを浮かべていた。だが、少し何かを考えたようで、私に耳打ちしてきた。
「最初に言った彩花よりも知らないという言葉は合っているんだ。俺達はそこまで知らない。一番知っているのは彩花なんだ」
「それはどういう....て、起きちゃった!」
匡近さんの言葉を聞き、私は詳しく聞こうとしたが、声を上げた時には電車の中に戻ってしまっていた。しかも、ちょうど縄を結ぼうとした時だったようで、私の声に周りにいた人達が驚いた様子で振り返った。
周りにいたのは鬼に協力している人達であり、私が目覚めたことで混乱し、私に襲いかかってきた。私はそれを避け、気絶させた。ただ、私も動揺している最中で、加減に失敗しているかもしれない。
私も困惑したままで、すぐに落ち着くことができなかったのだ。何の前振りもなく戻り、その最後には何か意味深みたいなことを言っていたし、続きを聞く方法はないかな。
「....ねえ、彩花。いつまでそうしてるのよ。夢の中.....彩花の場合は無意識領域よね。そこで何があったの?」
「うん。実は........」
動かない私を心配し、七海が声をかけてきた。私は七海に無意識領域でのことを話した。それを聞き、七海も考えてくれた。
「それは.....確かに色々思うところがあるわね。彩花の無意識領域に匡近さんもって...今のところ、その人達の共通点は全員が既に亡くなっていることよね。しかも、確実に何かを隠しているのは間違いないわよ」
「だよね」
「それと、少なくとも無意識領域に入っている人達が原作の記憶を知っているのも当たりみたいよ。彩花の頭の中にいるなら当然といえば当然だものね。それなら、アタシのことも知ってるでしょうね。思考が読まれてしまうのは仕方がないわ。死人だもの。...あと、華ノ舞いのことは彩花よりも詳しく知らないというのも......嘘じゃないけど、何かを隠しているわ」
七海はあれこれ指摘してくれるので、私も大分落ち着いてきた。まとめてもくれるので、私は頷いているだけで良かった。私と七海の出す意見が合うが、分からないことがあまりに多くて整理していた。
とりあえず、大きくまとめてみた。
気になることとして挙げられるのはカナエさん達が何処まで知っているのかということだ。華ノ舞いのこともあったが、私の記憶から原作についても知っているはずだ。だけど、カナエさん達が私の記憶をどれくらいまで見ているのかは分かっていない。一部なのか全てなのか、そういったことも確認しておかないと。あと、色々知っていると思うので、華ノ舞いのことを含めても聞きたいことが多い。
それと、無意識領域にいる理由もだ。これは色々起き過ぎていて、後回しにしていたけど、こちらにも目を向けていかないとね。カナエさん達は全員亡くなった人達であり、幽体となっていて、無意識領域を自由に行き来できると考えればそういうところは納得できるが、私の無意識領域にいる理由は不明だ。味方だと言っていて、それは本当なのだと思うが、カナエさん達がしのぶさん達から離れて、私といるのはおかしいと感じるのだよね。
いや、幽体となって見えないだけで、しのぶさん達のところへ頻繁に帰っているのかな。私は色々な人と出会っているし、特に今回はしのぶさんと一緒に鍛練するようになっているし、喜んでいるのかな。だが、生前知り合っていなかった私に、どうしてカナエさん達はついて来るようになったのは疑問なのだ。
「彩花!先に起きていたんだ」
「あっ、うん。少し前にね。今、整理していたところ」
「そうか。...この人達は?」
「その人達はね.....」
七海と考えている間に炭治郎が目を覚ました。七海と一緒に外へ出た禰豆子が炭治郎の縄と切符を血鬼術で燃やしたようだ。私は炭治郎が目を覚ましたことに動揺しながらも誤魔化せた。七海は隣で私の言葉に頷いていた。
炭治郎に華ノ舞いやカナエさん達のことは話せないからね。カナエさん達の話も繰り返しのことを含めて話さないといけないことだから、私の相談相手は七海だけだ。七海と目で戦いが終わってから話そうと伝え、炭治郎に現状を説明した。
襲ってきた人達のことと、事情があって鬼にその弱みをつけ込まれて協力していることを話した。
すると、炭治郎は気絶している人達に声をかけていた。その言葉は原作のと同じものだった。
炭治郎と私は話し合い、炭治郎が列車の上に登り、私は起きた煉獄さん達に状況を説明することになった。私と七海もこの配置の方がありがたい。あの鬼は列車と一体化してくるから、すぐに分かれて対応できるようにしたい。
「...そういえば、七海も血鬼術を解除とかできないの?」
切符と縄を燃やす禰豆子を見ながら、私は七海に聞いた。七海は首を横に振った。
「無理よ。禰豆子が特殊なのよ。アタシも鬼になった当初、禰豆子と同じことができないかやってみたけど、全然駄目だったわ。そもそも禰豆子は炎で、アタシは水。禰豆子のように鬼の体だけを燃やすみたいなことはできなかったわよ」
「それなら洗い流すみたいに....」
「もうあれこれ試したわよ。それでも、できなかったわ。その代わりに、あの分身みたいなものや氷などもできたわよ」
「七海の血鬼術って、水を使うから、色々な方法があるよね」
七海の言葉に私が思ったことを言ったが、それは実践済みだったようだ。でも七海の話を聞いていると、七海の血鬼術は使い方を変えてみれば他にも色々使い道がありそうだ。
その時、列車内の空気が変わった。
「...煉獄さん達が起きるよりもやっぱり早いね。七海、一人で二両行ける?」
「八両全部行けると言いたいけど、細かい作業も多いし、コントロールが大変だから、二両半かな」
「二両半って、かなり中途半端だね。.....でも、私も二両半かな。今の私ではこれが限界だと思う。七海と私で五両は守れるけど、残りの三両は.......」
私と七海が奥の車両へと向かいながら相談していると、何か壊された音が聞こえた。私が窓を開けて耳を澄ましたら伊之助の声が聞こえてきた。どうやらあの音は伊之助が列車を突き破った音だったようだ。
私と七海は顔を見合わした後、列車にいる乗客を守る方を優先した。炭治郎と禰豆子がいて、そこに伊之助も加わった。一人一両となれば乗客全員を守れる。
だが、乗客を守り続けるだけではこちらの体力が尽きるだけだ。私達だけのままならね......。
その時、また音が聞こえてきた。さっきみたいに確認しなくても大丈夫だ。この音と向かってくる気配だけで分かる。
「生野少女!無事のようだな!」
「はい、大丈夫ですよ。煉獄さんも血鬼術が解けて良かったです」
「今は互いの無事を喜ぶのは後だ!この車両は八両編成。俺が目覚めるまで協力して五両を守ってくれていたようだが、四両で構わない!俺が残りの四両をやるから、生野少女達はこの四両を守りながら、余裕があれば鬼の頸を探す竈門少年達の援護もしてくれ!」
「分かりました」
夢から覚めた煉獄さんがこの車両に来て、私はこの状況であるが、とりあえず挨拶した。煉獄さんは冷静に指示をし、私はそれに頷いた。すると、煉獄さんは別の車両へと向かった。七海にも伝えて、私と七海は四両を守りながら隠れている鬼の気配を探した。
と言っても、私も七海もその場所は知っているし、炭治郎達も向かっているところだ。万が一の場合に行動できるようにしておこう。