笹の葉の少女は幸せを願う   作:日々草

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前回の投稿からかなり待たせてしまい、申し訳ございません。ここ最近の寒暖差で体調が悪くなり、また投稿までに時間がかかってしまいました。





三度目の少女は近づき出す 後編

 

 

「どうしたの、彩花」

「いや....。...起こってはほしくないけど、ここでは他の鬼が来るということがないね」

「.....フラグを立てないでよ」

「ごめんね。フラグを立てるつもりはなかったけど、どうしても気になって...」

「まあ、確かに良いことだけど、不気味にも感じられるわね」

 

 

七海と二人で四両を守っていたが、私が浮かない顔をしていることに気づき、七海が聞いていた。私は少し迷ったが、正直に伝えた。それに対して七海が文句を言い、私も同じことを考えていたので謝った。

ただ、七海も私と同じように感じていたらしい。

 

 

原作と違うことが起きないのは良いことだ。私達の知っている道筋の通りに進んでくれた方がありがたいし、原作以上のことが起きて被害を出してほしくない。ただ、それはそれでおかしいとも感じてしまう。鼓屋敷と那田蜘蛛山で起きていたのに、その次の無限列車には何もない。

拍子抜けしたというのもあるけど、不可解に感じるというのが強い。

 

 

「何かあるのでは勘繰ってしまうけど、もうこれ以上は起きないと思うわよ。さっき、悲鳴みたいなのが聞こえたし」

「そうだよね。炭治郎達の戦いも終盤まで.......あっ」

「どうしたのよ?」

 

 

七海と話し合いながら、私は原作での炭治郎達の戦いを思い返してみて、あることを思い出し、近くの窓を開けた。七海は私の行動に困惑していたが、私はそれに答える暇がなく、窓から身を乗り出し、外を見た。先頭の車両を見上げた時、上に誰かがいることに気がついた。そして、その人の手には刃物らしいものを持っていた。

 

原作で炭治郎が一般の人に刺されることがあった。

 

 

私は咄嗟に吹き矢で刃物を弾き飛ばした。刃物がその人から離れ、林の方へ落ちていったのを確認した。私はそれを見届けた後、列車の中へ戻った。

 

 

「いや、説明して!さっきから何をしてたの!」

 

 

戻った瞬間に七海からのツッコミが待っていた。だが、ずっと無視して進んでいたし、それは当たり前のことなので、私は苦笑いを浮かべたまま口を開いた。

 

 

「原作で炭治郎達が戦っている最中に刺されることがあったでしょう」

「あー。そういえばあったわね。もう原作の知識が少し曖昧になってきたけど.......もしかしてそれで!」

「うん。それで、窓から顔を出したら刃物を持っている列車の上に立っているところを見つけたの。すぐに駆け出そうとしていたから、その刃物をさっき吹き矢で弾いたの」

「でも、あまり晴れた顔をしていないわね」

 

 

私が途中までを伝えたら七海は気づいたらしい。私は頷きながら続きを話した。七海もそれで納得したようだ。だけど、それにしては私の様子がおかしいと思ったらしくて聞いてきた。

鬼の攻撃から乗客を守っている現状でも私の様子に気づけるって、七海は随分余裕だなと思ってしまうくらいだ。けれども、私も七海も戦っている最中ということもあり、あまり深くは聞いてこなかった。

 

 

私も刃物を弾いたら大丈夫だと思ったのだけど、何か違和感みたいなのを感じているのだよね。どうしてかは分からないけど、何かまだ違和感が残っている。些細なことだと思っていたけど、顔に出るくらいに気になるようだ。

まさかあの人が他にも何か持っていたりして.......。

 

 

その時、叫び声と同時に列車が揺れていた。考え事をしていた私は一瞬対応に遅れたが、すぐに体勢を整え、列車の床を滑りながら乗客に一気に襲いかかる鬼の攻撃を斬った。七海も血鬼術の波で鬼の攻撃を防いでいた。私はその攻撃も斬った。

 

 

「七海。この血鬼術の範囲を広げて。このまま行けば列車が横転するのは間違いないから、水で周りを囲んで、クッションのようにして衝撃を吸収させて」

「分かったわよ」

 

 

七海に頼むと、すぐに鬼の攻撃に対抗しようと形を変えた血鬼術の水が窓から外に出た。私は七海が血鬼術の方へ集中できるように鬼が攻撃してくる四両を守っていた。最期の抵抗のためにその数は多いが、捌ききれないというほどではない。それに、この四両の乗客の配置は覚えたし、ここで華ノ舞いを使えばなんとかできる。

 

 

全部外に出た血鬼術の水がそこから円になるように水が列車の周りを囲み、輪になった後にまた形を変え出した。その時、抵抗で膨張した鬼の肉により、列車が線路からズレて、宙に飛んだ。その瞬間を逃さず、形を変えようとしていた水が球の形まで広がり、列車を包み込んだ。水で包んだら列車内の空気は無くなるのではと思うかもしれないが、列車と水のクッションの間に気泡があり、その気泡も線路から脱線した衝撃を和らげるものである。

 

 

列車を包む水の球はシャボン玉のように浮き、広い場所で地面に降りた。ふわりと列車が着地し、七海は手を下ろした。鬼の攻撃はすっかり無くなった。これは鬼が抵抗する力もないくらいに弱まったというより、七海が何かしたのだろう。

案の定、七海が血鬼術で列車を包んだ際に少し洗車をしたらしい。血鬼術の水で行ったため、攻撃にもなっただろうね。七海の使う血鬼術の水って、

 

 

「ねえ、彩花。あの違和感、合ってたみたいよ」

「炭治郎達に何かあったの」

「炭治郎。腹を刺されていたわ。それと、一番先頭の列車にいた一般人が二人になってたわよ」

「えっ?」

 

 

七海の言葉から嫌な予感しかしなかったが、続きを促してみると、炭治郎が腹を刺されたことと運転手だけだったはずが一人増えていたのだと知り、点と点が繋がり、頭を抱えた。何も起きてないのに、嫌な予感はすると思っていたけど、まさか鬼が増えるのではなく、鬼の協力者の人間が増えたのは予想外だった。それなら、運転手から刃物を奪うだけでは駄目だ。まだもう一人いるから。

 

 

「彩花。怪我はたぶん原作と同じ感じよ。完全に止血できていないみたいだから、治療してくれない?」

「うん。そもそもあの時にもう一人いたことに気づけなかったのだから、責任を持って手当てするよ」

「いや、アタシもこれは予想外のことだったわよ。彩花の責任じゃないわ」

 

 

七海の言葉で私は走りながら傷薬と包帯を出した。止血できてもしっかり薬を塗り、傷口を塞いだ方が治療として正しいだろう。内心で運転手の存在を確認しただけで安堵するのではなく、周りをよく見ておく必要があったのだという後悔か残っていた。七海はその様子に気づいたようで、私を慰めようとしてくる。

ただ、それだけでは気持ちが晴れなかった。

 

 

私と七海が炭治郎達のところに着き、私は炭治郎の治療をして、七海は禰豆子達を連れ、乗客を避難させた。幾ら鬼の頸を斬ったからって、鬼に支配されていたところにいつまでも一般人がいるのは危ないし、この後のことを考えると、乗客を列車から離れた場所に避難させた方がいい。

 

 

「はい。これで大丈夫だよ」

「ありがとう、彩花」

「竈門少年!水野少女!」

「煉獄さん!」

「私は生野ですよ」

 

 

炭治郎の治療を終えた時、煉獄さんが私達のところへ来た。炭治郎は驚き、私は変わらずに訂正した。

 

 

「いや、すまん!水野少女はあっちか!」

「いえ、どちらも生野なのですが.....」

 

 

炭治郎と煉獄さんが会話する様子を見ながら、私は七海への呼び方も訂正し、辺りを警戒し出した。その時、私達のところへと向かう気配を感じ、腰にある刀に手を添える。炭治郎が私の様子の変化に気づき、口を開いたが、その前に何かが降ってくるのと、砂埃が舞う方が早かった。

 

 

私は立ち上がり、前にいる鬼に集中した。砂埃が完全に晴れ、見えた鬼の目に上弦の参という文字があった。やはり無限列車には上弦の参の猗窩座が来た。猗窩座はこちらに視線を向けたと思えば、次の瞬間には炭治郎を狙って、拳を振り上げていた。私が刀を抜き、その攻撃を受け流す前に既に刀を抜いていた煉獄さんが動いた。

猗窩座は煉獄さんに攻撃を弾かれ、元の位置へと戻っていった。その後で煉獄さんにつけられた傷を見て、原作通りのことを話し出した。その間に七海が戻ってきた。七海が猗窩座に気づき、私にも視線を向けてきくるので、その意図を察して頷き、煉獄さんと猗窩座の戦いを見た。

 

 

私と七海が目で会話している時には話を終え(というより、強制的に終わらせたのかな)、煉獄さんの刀と猗窩座の拳がぶつかり合っていた。今の私と七海にできることは煉獄さんの援護であり、間に入るというのは難しいだろう。猗窩座は煉獄さんに話しかけながら戦いを楽しんでいて、煉獄さんの方はだんだん体力が削れ、猗窩座の攻撃を受けそうになっている。

 

私が七海に視線を向けて頷くと、七海は腕を真横に上げた。

 

 

「血鬼術 波浪壁」

 

 

煉獄さんと猗窩座の間に水の壁ができ、猗窩座の拳を受け止めた。煉獄さんと猗窩座がそれに一瞬動揺した。

 

 

「華ノ舞い 日ノ花 日車」

 

 

その隙に私が猗窩座の腕を斬って離れた。猗窩座の反応が遅れていて、私だけでなく煉獄さんも猗窩座から難なく距離を取れた。この斬撃は鬼に痛みを感じさせないものだ。そのため、鬼が気づくのにズレが生じる。これは慈悲で頸を斬るのに使用していたが、使い方によっては別のものがあると分かった。

水仙流舞が水仙龍舞となった時に他の華ノ舞いも(柱の目から逃れながら)試してみて、何かしらの変化がないかと試してみたのだ。水仙流舞くらいしか変わったものはなかったが、日車に関してはこの使い方ができないかと思ったのだ。

 

 

ちなみに、日車のことで後に問い詰められるのではないかと考えるだろうが、その心配はない。七海の血鬼術で煉獄さん達からは見えなくなっているからだ。猗窩座の攻撃を防ぐために煉獄さんの前には波浪壁があり、その波を通して見ることになるが、光の屈折や反射を利用して、私の刀の色が青色で、炎ではなく水を纏っているように見せたのだ。

七海の血鬼術って、本当に便利だよね。

 

 

まあ、これを行っても猗窩座には位置的にその範囲外なのだが、あくまで鬼殺隊にバレなければいいため、猗窩座に見られても問題はない。

 

 

「煉獄さん!せめて援護くらいはさせてください」

「いざという時にはアタシが防げるから」

 

 

私が猗窩座に向けて刀を構え直しながら言うと、七海も隣に来た。今の私達では上弦の参を倒せない。前の時なら私も七海も上弦の鬼と遭遇しても生き残れるくらいの力はあった。いや、頸を斬れていたよねと言われそうだが、あれは運が良かったのだ。七海と禰豆雄で追い詰められて弱っていたところを、私が透き通る世界に入って隙をついたという感じだ。前の時と今は全然違う。

可能性があるとしたら煉獄さんだ。だけど、原作で煉獄さんは亡くなった。それなら私達が煉獄さんを全力で援護し、死なせないようにする。

 

 

「...七海。お願いね」

「分かってるわよ。流石に今の彩花に何もしないで、そのまま上弦の鬼と戦わせるなんてやらないわ」

「鍛練の時はそれくらいやっているでしょう」

「そのくらいがいいって、彩花も思ってるよね。でも、今回はしないわよ。命がけの稽古をしたり、たまに任務でも制限時間や条件をつけたりしてるのはこういった時のためによ。これは同じじゃないわ」

 

 

私の声で緊張していることに気づいたのか、七海は私に軽口を叩いた。私はそれに反応し、文句を言ってしまい、七海は呆れた顔をして私を見ていた。

 

そこまではしないかなと思っているけど、やりそうだなとも思うのだよね。まあ、これらは互いの合意の上でやっていることであるとしても、今回は勘弁してほしかった。

 

 

ただ、七海のおかげで緊張が解けた。それは感謝している。そういう意味で七海に向けて笑みを浮かべると、七海は頷いて猗窩座の方を向いた。

 

 

「血鬼術 氷柱剣・蒼海」

 

 

七海が両手を伸ばすと、氷柱が二本現れ、次の瞬間には氷柱が刀へと形を変えた。さらに、その刀は刃の部分が水を纏っていて、青く光るものだった。

 

 

どうしてこの刀ができたのかというと、七海が呼吸を使いたかったからだそうだ。日輪刀ではないから、例え鬼の頸を斬ってもその鬼は死なないが、近接戦では刀を使う方が合っているのだと本人が言っていた。

....だけど、七海は拳でも割と行けるのではないかと思っている。前の時は禰豆雄と拳で喧嘩していて、刀などの武器よりも経験があるのではないかな。

 

まあ、それを本人に言う気はないけどね。

 

 

「七海。今回は華ノ舞いを惜しみなく使うから、きちんと合わせてね」

「そっちもよ。アタシも呼吸を使うのだから、ちゃんと連携を取ってよね」

 

 

私と七海は互いに手を上げ、ハイタッチした後、刀を構えて猗窩座に向かった。

 

猗窩座は相手にする気がなさそうだけど、そうは言っていられないようにしないとね。猗窩座が女性に手を出さないようにしているのは分かっているし、その理由も知っているけど、優先しないといけないことがある。

 

 

「華ノ舞い 水ノ花 水仙流舞」

「海の呼吸 参ノ型 飛泉万波」

 

 

私が猗窩座の攻撃に対応できるようにしていて、七海も同じ行動を取った。連携が一番取りやすいのはこの組み合わせだ。どちらも変幻自在に動くという面で最適だ。ただ、両方とも最も攻撃力のあるものではない。だけど、火力が煉獄さんが主なので、私達がそちらを心配することがない。あくまで猗窩座の攻撃を防いだり、煉獄さんを援護したりできたらいいのだから。

 

 

「炎の呼吸 弐ノ型 昇り炎天」

「破壊殺 空式」

 

 

煉獄さんが猗窩座に近づき、刀を振ったところで猗窩座も拳を向けた。だけど、流れるような動きで移動していた私達はそれを受け流したり

 

 

「破壊殺 乱式 鬼芯八重芯」

「海の呼吸 弐ノ型 篠突き・雨」

 

 

七海が猗窩座の拳を突き技で受け止めた。七海の力があるからこそ、この行動ができる。他の人だと刀が折れるのは間違いないし、私もやろうとした瞬間に吹き飛ばされるのは確実だ。刀も七海が血鬼術で作った特殊なものということもあり、七海が猗窩座の拳を受け止めることは信じていた。

だから、私はその隙に動ける。

 

 

「破壊殺 脚式 冠先割」

「華ノ舞い 炎ノ花 紅梅うねり渦」

 

 

そう思ったが、流石に猗窩座の羅針には私の動きが分かっているらしく、猗窩座が足技を放ってきた。私はすぐに型でそれを防いだ。

 

相手が猗窩座であるため、念には念を入れた。この型が原因で色々言われるかもしれないけど、今はそれどころではないし、いざという時は煉獄さんの呼吸を見てと言い訳をしよう。かなり怪しまれる可能性があるけどね。

でも、猗窩座の蹴りの威力を知っているので、徹底的に対策を練っておかないと。

 

 

私は猗窩座の蹴りを防ぎ切った。だが、それによって私の足が止まり、猗窩座が標的を七海から私に変更した。私はそれに気づき、刀を構え直した。

 

 

「華ノ舞い 花ノ束 桜花しぐれ」

「破壊殺 乱式」

「華ノ舞い 炎ノ花 紅梅うねり渦」

 

 

私が広範囲攻撃に変えると、猗窩座はその斬撃を拳で撃ち落とした。私は危機感を覚え、防御に専念した。煉獄さんが私の様子に気づいて加勢しようとするが、七海が代わりに止めてくれた。

 

 

「血鬼術 千波織」

 

 

血鬼術の波が私を包むように猗窩座の攻撃から守った。私はその間に横へ動き、刀を振った。それにより、猗窩座の片腕を抑えることができ、その隙を狙って煉獄さんが刀を振るう。

 

 

「炎の呼吸 参ノ型 気炎万象」

「海の呼吸 陸ノ型 暁雨白浪」

「華ノ舞い 花ノ束 桜花しぐれ」

 

 

煉獄さんの斬撃に合わせて七海も攻撃し、私は猗窩座の攻撃に備えて型を使う。広範囲だが、猗窩座の動きを抑えるのには良い。広範囲に動き回れるのはそういった意味でも助かる。ただ、体力は減りやすくなるのだけどね。利点はあるけど、長期戦には向かない。

そのため、煉獄さんに猗窩座の攻撃が当たるぎりぎりまで動かないようにしていたのだ。

煉獄さんには本当に申し訳なかったけど....。

 

 

「華ノ舞い 炎ノ花 紅梅うねり渦」

 

 

猗窩座が拳を握った瞬間、私は広範囲の攻撃を止め、防御を選んだ。広範囲で行動範囲を狭めてきたが、それで私達も猗窩座の間合いやその近くにいることになっている。

七海はまだ猗窩座の攻撃を普通に受け止められるし、上手くいけば押し返すこともできるが、私にはそれができない。受け流すのが可能でも、この距離でやれば煉獄さんや七海に当たってしまう。そうなると、私ができることは一番防御に向く型を使うしかない。

ただ、それで受け止められるかどうかは五分五分だ。幾ら防御に優れていても、猗窩座の攻撃を完全に防げるのかという確証はない。

 

 

私は必死に刀を振ったが、やはり防ぎきれなかった。猗窩座の攻撃が私の羽織に擦った。いや、七海が私を血鬼術で引き寄せなかったら猗窩座の攻撃が当たり、骨が折られたかもしれない。下手したら内臓に当たった可能性もあった。

 

 

「七海、ありがとう」

「どういたしまて。それより、次に意識を向けないと」

「華ノ舞い 炎ノ花 紅梅うねり渦」

「海の呼吸 壱ノ型 蒼海環流」

 

 

七海に一応礼を言ったが、私も七海もそれどころではなかった。七海は口では返事していてもそちらに意識を向けられない。私もすぐに型で猗窩座の攻撃を防ぎ、七海と連携していく。

どちらも余裕がない。やはり前と違ってあの五年間がないと駄目なようだ。七年間だったものを二年にしたが、それは無理があった。

煉獄さんが私達のことを気にしている。猗窩座の攻撃を受けていないから怪我はしていないけど、このままだと私達が押し切られる。

 

 

「華ノ舞い 水ノ花 水仙龍舞」

「ちょっと!?その型を使うの!?あー!もう!」

 

 

私が最近修得したばかりの型を使うと、七海は片手で頭をかきむしる。だが、それでも私にあわせて行動してくれている。私はそれに感謝しながらも猗窩座に確実に当てた。その瞬間、七海が血鬼術で氷柱を出し、猗窩座を貫いた。煉獄さんがそれに続き、刀を振り上げた。

 

 

「破壊殺 終式 青銀乱残光」

 

 

しかし、それに動じないところが流石だろう。猗窩座は貫かれた状態でも気にせずに血鬼術を使った。

鬼はすぐに回復するとはいえ、これは予想外だった。私はまだ範囲内にいるし、煉獄さんも入っている。このままだと猗窩座の攻撃が直撃するのは間違いない。

 

 

「華ノ舞い!」

 

 

私は華ノ舞いを使おうと構え、刀を振った。だが、迷いがあり、その刀は炎を纏わず、色すら変わらなかった。どの型でもこの状況を打破できそうになく、急所には当たらないだろうが、何処かに攻撃が当たるのは分かる。水仙流舞は受け流す型であるが、攻撃を防ぐわけではないので、仮に和幸が避けきっても煉獄さんに当たってしまう。水仙龍舞の方も同様だ。それなら紅梅うねり渦か桜花しぐれが有効なのだろうが、紅梅うねり渦では範囲が広すぎて難しいし、桜花しぐれも広範囲に動けるとはいえ、全て捌ききれない。

それでも、何か抵抗をしたくて、反射的に刀を振った。それは普通の斬撃で、猗窩座の攻撃を受ければ吹き飛ばされてしまうようなものだった。

 

 

だが、そうならなかった。猗窩座に当たる直前で刀の色が変わった。峰の部分が桃色で、刃の部分が赤色という二色になり、刀の模様も梅と桜の両方の模様が浮かび上がっていた。....これはどちらも木の上に咲く花だからなのか...共通点がよく分からないが、私の頭の中には紅梅うねり渦と桜花しぐれの二つが流れたまま、加えて別の型も頭の中に入ってきた。その型は花の呼吸の陸ノ型の渦桃だった。

どんな共通点があるのか知らないが、この三つが繰り返し頭の中に浮かび、一つの形となった時に私の口が動いた。

 

 

「華ノ舞い 燃花ノ束 桜梅跳竜巻(おうばいとうりんまき)

 

 

私はスキップのように軽く飛び跳ねながら進み、刀を回転させた状態で渦を描き、それを前へと向ける。

すると、炎を纏ったその斬撃は渦となり、その上で炎の軌跡には一緒に桜や梅などの花びらが舞った。私がそれらを集めるように刀を回転させ、思いっきり刀を振っていると、そこからも渦が発生する。その渦が猗窩座の攻撃を呑み込み、その攻撃が渦を貫くことはなかった。そして、その渦は猗窩座の進路を塞ぎ、猗窩座の身動きを封じていく。

 

 

さらに、ここで私達に追い風が吹いた。私の目にゆっくり動く猗窩座や周りの姿が映った。その姿は透明で、猗窩座の筋肉の動きがしっかり見えた。何度もこの世界で戦い、見てきたそれと感覚に私は驚くと同時に、口角を上げて歓喜した。

これは透き通る世界だ。そう確信した時には視界は元に戻っていた。やはり長時間の使用はまだできないみたいだ。

 

 

だが、これは絶好の機会なのは間違いない。透き通る世界に入れたのはあの新しい型を使っている最中だった。なので、その間は猗窩座に感知されなかったということだ。

 

私の攻撃に猗窩座は反応できていなかったらしく、両腕が斬られたうえに体も斬撃の渦によって所々斬り裂かれていた。私はすぐに追撃した。色々なことが起こっていたが、今一番優先するのは目の前の相手だ。

 

 

「華ノ舞い 雷ノ花 梔子一閃」

 

 

私ができる限り速く動ける型を使い、一気に猗窩座との距離を詰めた。透き通る世界には入れてないこの型は猗窩座の羅針に引っかかった。だが、猗窩座に反応される前に間合いに入ることができた。刀を振り、片腕を斬り落とした。それもすぐに再生してしまうだろうが、それでも僅かに時間ができる。

 

 

「炎の呼吸 壱ノ型 不知火」

 

 

私の方を向く猗窩座の背後から煉獄さんが刀を振った。刃が猗窩座の頸に当たる。猗窩座は振り払おうとするが、その前に私と七海が動いた。

 

 

「華ノ舞い 水ノ花 水仙流舞」

「海の呼吸 弐ノ型 篠突き」

 

 

私が片脚を斬り落とし、もう片方の脚は七海が突き技で地面に縫い付ける。だが、猗窩座の回復速度は速く、腕が再生しかかっていた。

 

 

「ヒノカミ神楽 陽華突」

 

 

私は再生しようとする右腕を突き刺し、これ以上の再生を止めようとしたが、それはできなかった。いや、片方の腕の再生は止まったのだ。だが、もう片方の腕はそのまま再生を続けた。それどころか私の突き刺した腕の方の再生を諦め、残った腕の再生に集中し、一瞬でもう片方の腕を再生させた。煉獄さんの刀が猗窩座の頸に食い込んでいるが、まだ半分も斬れていない。

突き刺すのではなく、何度も斬る方を選ぶべきだった。流石に慌てていて、そこまで

 

 

猗窩座は再生した腕を煉獄さんに向けて振り下ろした。

 

 

「煉獄さん!左から攻撃が来ています!」

「煉獄さん!!」

 

 

私も遠くで見ていた炭治郎も叫んだ。だが、猗窩座の腕は煉獄さんの頭を......。

 

 

「血鬼術 千波織」

 

 

その時、七海が空中から水を出し、その水により猗窩座の攻撃が弾かれた。だが、猗窩座は再び腕を振り下ろそうとする。その腕を煉獄さんが掴んで止めた。猗窩座が目を見開き、振り払おうとするが、煉獄さんはその手を離さなかった。それと、そんな状態でありながらも刀を握る手は緩めず、刀は猗窩座の頸の半分以上の位置にあった。

 

そこまで頸が斬られているならもう少しだ。

 

 

私は刀を強く握り、猗窩座から離れようにした。猗窩座は私達を振り払い、この状況をどうにかしようとしているようだ。頸を斬られそうになっているし、もうすぐ日が昇る時間だ。このまま耐えきれば勝てる。そう思うが、何故か嫌な予感がする。

 

 

炭治郎と伊之助もこちらに向かってくる。私達に加勢しようとしているのが分かる。

.....だけど...この流れは前に何処かで.........あっ。

 

 

私が気づいた時には猗窩座の姿が消えていた。刀に刺さっていたのは再生しかけた右腕と肩だけであった。七海の刀には片脚があり、煉獄さんの手にもう片方の腕があった。だが、反対の手で握っている刀は刃の部分が無くなっていた。

見上げると、両腕と片脚がなく、頸には刀が刺したままの猗窩座がいた。私はそれに既視感を感じた。

 

 

原作と似た展開になっている。煉獄さんが体を貫通されていないが、猗窩座を後一歩のところまで追い詰めたのに、そこを猗窩座が両腕を失ってまで脱出した。この後の猗窩座は林の方に逃げるはずだ。

 

 

私が林の方に向かい、七海も私の後を追いかける。猗窩座は残った脚で地面を強く蹴り、私達の上を飛び越え、林の中へと入っていった。私と七海が呼吸を使って追いかけようとしたが、その前に炭治郎が刀を投げるのが早かった。

相変わらず、炭治郎の命中率は凄い。心臓辺りに突き刺さっている。

 

 

猗窩座の体に刀が刺さったのを確認した時には猗窩座の両腕と片脚が再生したのが見えた。刀が刺さっても猗窩座は走り続け、木陰によって視界から消えてしまった。今から追いかけても猗窩座に追いつけないだろう。再生しているのだから、私達の足で追いつける可能性は低くなった。

それに、猗窩座はそんなに消耗していない。太陽から逃げるのに、全速力で走っているし、私達の足で追いつけるかどうか分からないうえに、あちらには鳴女という鬼がいて、その鬼の力で無限城に入られる可能性がある。日陰に入っているし、血鬼術は使える。あの場所で猗窩座が血鬼術を使うことはないだろうが、鳴女が使うかもしれない。

 

 

そう判断し、私はすぐに七海に羽織を被せ、列車の影に隠れた。七海の体に少し火傷を負っていたが、それはすぐに再生した。そのことに安堵している間に炭治郎達の方は進んでいる。

炭治郎の声が辺りに響いていて、少し離れたところにいる私達にも聞こえてきた。言っていることは原作と変わっていない。ただ、私と七海の名前が出てくることに違和感を感じるが、大体の流れは同じだった。

 

 

炭治郎の叫びを聞いた後、煉獄さんが炭治郎を呼んでいた。そんな大きな怪我はしていないし、命に別状はないと思うが、原作と同じ状況で不安になった。

念のために確認しに行こうか悩んだが、七海をしばらくの間放置するのが怖い。今の私は刀だけを持っている状態だ。列車の車両を守るのに、少しでも身軽になろうと思い、背負い箱と薬箱(薬が入っているウエストポーチ型の箱)は席に置いてきたのだ。影に隠れているが、何処から日の光が漏れるか分からない。早く背負い箱の中に入れないと...。

 

 

私は煉獄さんと炭治郎が向き合っている姿に背を向け、背負い箱を取りに行った。少し探し回ったし、列車が横転した衝撃で壊れていないか心配だったが、善逸が確保してくれたようで、元の状態のままだった。薬箱の方も大丈夫だった。

 

 

私はそれらを持って七海のところへ戻った。七海は自身の体を縮ませ、日の光に当たらないようにその場から動かなかった。背負い箱を開けて七海の前に置くと、七海は一瞬で中に入り、私は苦笑いを浮かべながら閉めた。

 

日の光を浴びたらそこから焼け始め、全身にまで広がり、灰になるまでその痛みが続くというのは流石に七海も嫌みたいだ。

 

 

箱を背負った後、私は煉獄さん達のところに向かい、立ち止まった。

炭治郎が泣いている。

炭治郎のことを見て、私は顔を真っ青にして煉獄さんに駆け寄り、脈を確認した。脈は動いている。口元に近づき、耳を澄ますと、呼吸音が聞こえるし、胸も動いている。どうやら眠っているようだ。

私はそれを知って安堵したが、困惑もした。煉獄さんが生きているのに、どうして炭治郎がこんなに泣いているのだろうかと。

 

 

「炭治郎。座ったまま寝ている煉獄さんの前で、どうして泣いているの?」

「どうしてって.....だって....煉獄さんがぁ.......」

「煉獄さんなら生きているよ。寝息が聞こえたし、本当に寝ているだけだよ」

「えっ?」

「はあっ!?」

 

 

あの質問に対する炭治郎の反応を見て、まさかと思っていたけど、そのまさかだったようだ。炭治郎と伊之助が驚いていた。被り物をしていてよく分からなかったが、伊之助も泣いていたみたいだ。

 

 

「けど、血が.....腹の辺りに....あれ?」

「あー...その血はきっと猗窩座の返り血だと思う。私達、猗窩座の近くにいたから」

「ギョロ目、なんで寝てんだ?」

「....普通に疲れたんだと思うよ」

 

 

炭治郎の言葉に私は苦笑いを浮かべながら答えた。あの血がついたところを目撃していたし、そもそもその返り血は私と七海が両腕や脚を斬った時についたものだし......。...この勘違いの原因って、私達だよね....。

けど、煉獄さんが寝たのはたぶん疲れが原因だと思う。これは予想だから、本当なのではないけどね。伊之助の質問には答えづらくて、お茶を濁した。

 

 

空が完全に明るくなり、私は朝日を眺めた。猗窩座の血は日光に当たって消えてしまったが、私と七海の刀に付着していて、少量は手に入った。無限列車での戦いも煉獄さんが死なず、私達全員が生き残った。猗窩座の頸をここで斬れなかったことは悔しいが、今はそれ以上にここで全員が明日を迎えられることを喜んでおこうと思う。

 

まだまだ色々あるけど、今は一つ乗り越えたと思って...休みたいなあ.....。

 

 

 

戦いが終わったと改めて認識した瞬間、体から力が抜け、意識も遠くなった。

 

 

 

 

 

 

「えっ?彩花!」

「おい!彩芽!しっかりしろ!」

「彩花ちゃん!.....いや、心臓が動いているから、たぶん眠っているんだと思う。箱からも七海ちゃんの寝息が聞こえるし」

「そうか。確かに彩花も七海も上弦の鬼と戦っていたから、疲れているはずだ」

 

 

突然倒れた彩花を見て、炭治郎と伊之助が駆け寄った。禰豆子の入った箱を背負ってきた善逸も声で状況を知ったらしく、彩花に近寄ってきた。だが、近づけば心臓の音が聞こえ、そうではないのだと分かった。彩花の背負う箱からも寝息が聞こえてきて、二人とも眠っているのだと分かる。炭治郎はそれに気づいて納得し、ほっとしてその場に座った。

 

 

「お疲れ、彩花」

「七夢もな」

「七海ちゃんもでしょ!」

 

 

炭治郎達もまたいつもの調子に戻ってきた。だが、上弦の鬼の猗窩座と出会い、自分達の力不足を痛感した炭治郎達は強くなることを誓い合った。

その話は夢の中にいる彩花や七海に聞こえてなかったが、起きた後の三人の様子でそれを察し、一緒に鍛練をするようになった。そこに仲良くなったしのぶさんと甘露寺さんが加わり、善逸が凄く上機嫌になるが、その話を聞いた伊黒さんにより、炭治郎達は柱稽古のように障害物に縛り付けられることになった。

 

 

 

 






この話で、しばらくの間はお休みさせてもらいます。次の投稿の予定は未定ですが、体調が元に戻り、なおかつ時間があれば投稿を再開しようと思います。


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