やっぱり僕の異世界スクールライフは間違っている。 作:トゥーラ
テニスコートの惨劇からしばらくたって、今はテスト前の時期になっていた。
しかしそれでも、あの事件の爪痕は少なからず残ってしまっている。
まず奉仕部とその他の人々は被害者というわけなので御咎めなし、なのだが船橋が暴れまわったテニスコートの後始末を命じられてしまった、今ではあらかた補修さたのだが。
ちなみに練習の方は再開され、この前のような騒動は起こらず、平穏に終えることができた、その後戸塚から
「その、本当にごめんね、何もできなくて
あと、追い出してくれて、ありがとう」
と、若干悲しい顔をしつつも笑顔でタオルセットをプレゼントしてくれた、ありがたく受け取っておこうと船橋は思った。
しかし三浦と船橋は困ったことになっていた。
船橋の激しい暴行を食らった三浦は何日か意識が戻らず、戻った後も激痛に悶絶し、また気絶するのを繰り返しながらも翌日何とか退院することができた。
ただ若干の後遺症が残ってしまったらしく、時々発生する痛みに顔をしかめるのを何回か見かけた、おまけに船橋を見かけるとまるで親の仇を見るかのように殺意を込めて睨んでいた、自業自得なのだが。
けど問題はそこではなかった、どうもあの事件は学校中に尾ひれが付いた状態で流れてしまったらしく、さっき聞いた話では。
「船橋英一は普段はおとなしいが、キレると情け容赦なく悪・即・斬を掲げ、裁きの鉄槌を下す」
「三浦優美子はテニス部の練習に乱入するという悪行を行ったため船橋に粛清された」
と、言うところまでになっているらしい。
「はぁ・・・・・・しばらくおとなしくしてよ・・・・・」
と、静かに呟きながら歩いていると、話し声が聞こえた。
「ねえ聞いた?この前の事・・・」
「あー知ってる、船橋君だっけ?三浦さんをボコボコにしたってやつ・・・・」
やはり、船橋と三浦の事だった。
「なんでも、テニス部の練習に勝手に入り込もうとしたんだって・・・・」
「それで船橋君は半殺しにしたんでしょ、
あたしの方もそれで持ちっきりだよ、すごいよね」
「てゆうかさ、あの人前から何か図に乗ってない?」
「あーわかるーバレー部にも乱入してきたっていうし」
「それにさ、さっき見たんだけと「何であーしが悪いの!?あいつは悪くないの!?」って怒鳴り散らしてたらしいよ・・・・」
「うわー・・・近くにいた人、災難だったねー・・・」
「にしてもさー、船橋君ってすごいよねーまるで正義の味方みたい!」
「まぁそうだねー、ぶっちゃけあの三浦さん見てざまー見ろって内心思っちゃった」
と言うやり取りを聞き流す。
どうも三浦の評判は前から悪いようだ。
しかも自分はいつの間にか正義の味方という扱いを受けている、そして船橋は苦笑する。
(あんなことやる奴のどこが正義の味方なんだろうな・・・・)
[newpage]
そして何となく部室前を通ってみると、なにやら騒いでいた、よくみるとテスト勉強をしているようだ。
(この前の事もあるし、ちょっと寄ってみるか)
と、思いつつ部室に入る。
「あ、ふなっしー・・・・」
「おお船橋殿、もう大丈夫なのか」
「・・・・・・・」
由比ヶ浜と材木座は戸惑いつつも心配し、雪ノ下は若干怒りを込めつつ睨んでいた。
「あ、えーっと・・・・この前はごめん、暴れちゃって・・・・・・」
「別に構わないわ」
突然の返答に船橋は驚く。
「あれは普通に追い出せばいいにも関わらず挑発に乗って勝手に勝負を申し出た私にも責任があるわ」
「そ、そうかじゃあ」
「だけどね」
ほっとした束の間、雪ノ下は鋭利な口調で話を続ける。
「あなたのやった事は、どんな大義名分があったとしても許される物ではないのよ」
「で、でもゆきのん、ふなっしーが動いてくれたから続けられたわけだし・・・」
「それはそれ、これはこれよ」
あわてて由比ヶ浜がフォローをするも雪ノ下は構わず話し続ける。
「三浦さんはあの後病院に搬送されてそのまま入院、退院後も後遺症で苦しんでるというわ、負い目を感じたってこの事実は変わらない事を覚えておきなさい」
雪ノ下はハッキリとそう告げた。
「・・・・・・うん、分かった」
「ところであなたは何しに来たの?」
「たまたま通りかかっただけで、そっちは何してるの?」
「テスト勉強をしてるのよ」
よく見てると、様々な教科本が開かれていた。
「由比ヶ浜さん、ここ、また間違えているわよ」
「え?うそ!?絶対これで合ってると思ったのに~!」
どうも由比ヶ浜の学力向上は滞っているようである。なにせ、いま雪ノ下が教えているのは中学生レベルの問題で、ここ総武高校は進学校なのに受かったものである。
「うう~、頭が痛いよ~、分からなさすぎるよ~……」
「仕方が無いわね。これ以上無理に続けても効率が悪そうだし、休憩にしましょうか」
雪ノ下が由比ヶ浜の様子を見て一息入れることを提案する。
「ほむん。休息。それは戦士にとって、来るべき大いなる戦いに備えて力を蓄える時。我はこれより精神統一し、我の力を極限まで高めなければならぬ。すまないが八幡と船橋殿よ。これより我に話しかけるのは止めてくれ。例え我が盟友八幡と船橋といえども、この一時を邪魔されては敵わんからな」
などと偉そうなことを言って、材木座は腕を組んで目を閉じる。
ピロピロリン♪
そんな時、不意に携帯の着信音が鳴る。
「あ、あたしのだ」
どうやら由比ヶ浜の携帯にメールが届いたらしく、由比ヶ浜は携帯の画面を開く。
「うわ……」
だが、画面を見た由比ヶ浜は曖昧な笑みを浮かべ、深い深いため息をつく。
「由比ヶ浜さん、どうかしたのかしら?」
その様子に疑問を持った雪ノ下が尋ねると、由比ヶ浜が微妙な表情を浮かべて答える。
「いや、うん……。なんか最近、変なメールが送られて来ることがあって、それが今あたしのケータイに届いたんだよ。これなんだけどさ……」
そう言って由比ヶ浜は携帯の画面を差し出す。その画面を見るとそこにはこう書かれていた。
『戸部は稲毛のカラーギャングの仲間でゲーセンで西高狩りをしていた』
『大和は三股かけている最低の屑野郎』
『大岡は練習試合で相手高校のエースを潰すためにラフプレーをしていた』
その文面を見て雪ノ下が口を開く。
「チェーンメール、ね」
「うん……」
チェーンメール。確かこれは送らないと不幸になるとか、よくないことが起きるとか訳の解らないことの書かれているやつと船橋は思った。
コンコンコン。
俺がそんなことを考えていると、部室の戸をノックする音が聞こえてきた。
「こんな時に誰かしら?」
「さあな。どうする?追い返すのか?」
チェーンメールと依頼者。どちらを優先するか。
「……そうね。平塚先生の紹介できたのであれば無下にはできないし、とりあえず聞くだけ聞いてみましょう」
雪ノ下はそう言って「どうぞ」と来訪者に入室を促す。すると扉が開いて来訪者が入ってくる。その人物は意外な人物だった。
「ちょっといいかな?依頼しに来たんだが」
「げ」
船橋は驚く。
そう言ってやって来たのは葉山だった。
「うーん・・・・そっちはお取り込み中か、忙しい所ごめんな」
葉山は詫びるも雪ノ下は心なしか、いつもより声は刺々しくして話しかけてきた。
「何か用があるからここへ来たのでしょう?葉山隼人君」
冷たい響きを滲ませた雪ノ下の声に若干顔をしかめつつも話を続ける。
「ああ、そうだった。奉仕部ってここでいいんだよね?平塚先生に悩み事を相談するならここだって言われてきたんだが」
「そうだからさっさと用件を言え。用件が無いなら俺は帰るぞ」
「ああ、ごめん。これなんだ」
葉山はそう言って携帯を取り出し、画面を俺たちに向けてくる。そこには先ほど見た物と同じ内容の物が表示されていた。
「おい、これって……」
「由比ヶ浜さんに送られてきたチェーンメールと同じ物ね」
携帯をしまいながら葉山が続ける。
「これが出回って、どうも周りが疑心暗鬼になっていてる上に、友達のこと悪く書かれてて困ってるんだ」
そう言う葉山の表情は先立っての由比ヶ浜のように、正体のわからない悪意にうんざりした顔だった。
相手がはっきりすればどうとでもなるのだが、分からない場合は正直どうしようもない。抱いた感情をどこにぶつければいいのかも分からないのだから。
「止めたいんだ、ハッキリ言って迷惑だから。あ、犯人捜しもいいけどなるべく慌ただしくしない方法を知りたい。頼めるか?」
もしチェーンメールの事を先生に告げれば立場上、先生は全生徒に向けて聞き込みを行い、事態の収拾を図らなければならない。しかし、それは葉山の望む形ではないので、平塚先生にはおぼろげなことしか述べなかったのだろう。そうしたら奉仕部に来たのだ。
「つまり、事態の収拾を図ればいいのね?」
「うん、まあそういうこと」
「では、犯人を捜すしかないわね」
「ちょっとまて、そんな事して大丈夫なのか?」
どうやら雪ノ下も俺と同じ考えだったらしく、犯人を捜すという結論に至ったようだ。
前後の流れを完全に無視された葉山は一瞬驚いた顔を見せ、雪ノ下の意図を問う。
それに対し、雪ノ下はその葉山の顔を侮蔑するような顔と共に話し始める。
「チェーンメール……。あれは人の尊厳を踏みにじる最低の行為よ。自分の名前も顔も出さず、ただ傷つけるためだけに誹謗中傷の限りを尽くす。悪意を拡散させるのが悪意とは限らないのがまた性質が悪いのよ。好奇心や時には善意で、悪意を周囲に拡大し続ける……。止めるならその大本を根絶やしにしないと効果が無いわ。ソースは私」
「お前の実体験かよ……。まあ、雪ノ下の言う通りだがな。しかも汚いのが、チェーンメールの発端人は隠れてやってるってことだ。自分がチェーンメールの仕掛け人だってことが判明すれば周りから袋叩きになるのは必至。そうならないように誰が送り主か分からないようにするってことは、周囲に敵視されたくないって事。自分が傷つく覚悟も無いのに他人を傷つけようとするとか、どんだけ卑怯者だってことだよな」
「まぁ、その犯人さんは自業自得で御愁傷様と言うわけで、それに丸く納めるにしても、そんな傍迷惑をかける人は痛い目に遭わないと止めようがないし」
「比企谷くんと船橋くんの言う通り。とにかく、そんな最低なことをする人間は確実に滅ぼすべきだわ。目には目を、歯には歯を、敵意には敵意をもって返すのが私の流儀」
どこか聞き覚えのある言い回しに由比ヶ浜が反応する。
「あ、今日世界史でやった!マグナ・カルタだよね!」
「ハムラビ法典だよ」
さらりと切り返すと雪ノ下は葉山に向き直る。
「私は犯人を捜すわ。一言言うだけでぱったり止むと思う。その後どうするかはあなたの裁量に任せる。それで構わないかしら?」
「じゃあ付け加えてもいいか?犯人が分かったとしても絶対に周囲に事実を公表しない、解決するのであればなるべく秘密裏に行ってくれ」
突然の一言に周囲は反応する。
「え?なんで?」
「そんな事をしてその情報が露見したら、周りはそれをネタに一方的に糾弾するだろう?そんなマスゴミ染みた事はさせたくない」
「何甘いことをを言っているの、やるからには徹底的にやらなくちゃ止められないでしょう?」
「雪ノ下さんはその人の気持ちを無視して自分勝手な正義感で一方的に傷つけるのは良いのか?」
「「つっ・・・・・・・」」
「それに自業自得であれ、これを受けた人は怒りを覚えるに違いない、そして復讐心からさらに酷いことをする、そしてまた周囲は攻め立てて・・・・こんな負の連鎖を巻き起こすわけにはいかない」
葉山の意見に船橋と雪ノ下は唇を噛み締める。
確かに事実を知ったとしたら周囲は必ずやり返すであろう、しかしさっきも言ったようにいくら悪を制裁するとはいえ相手を攻撃することは許される事ではなく、下手すれば取り返しの付かない事になるのはこの前のテニスコートの件でよく知っているだろう。
「というか、そんな事をするってことは犯人と同じ加害者になるって訳だからね」
「・・・・・・わかったわ」
「すまない」
雪ノ下は若干納得がいってなかったが、この話を聞き渋々同意し、葉山は申し訳なく謝罪した。
「メールが送られ始めたのはいつからかしら?」
「先週末からだ。な、結衣」
葉山が答えると由比ヶ浜も頷く。
「先週末から突然始まったわけね。なら、先週末にクラスで何かあったの?」
「・・・・・・関係あるのか解らないけど、優美子の陰口を叩いてたな」
「あ・・・・」
葉山は由比ヶ浜は暗い表情をする。
「なら、比企谷くん、船橋君あなたは?」
「何もなかったと思うな」
「いや、君平塚先生に職場見学の件で公開処刑のごとくドヤされてたでしょ」
実はさっき比企谷は、希望見学場所と希望する職種に、専業主夫と書いた結果、平塚先生に書き直しを言われたのを思い出す。
「……うわ、それだ。グループ分けのせいだ」
「どうゆう事だ?」
俺の答えに由比ヶ浜が反応し、それに葉山がきょとんとした顔で聞く。
「いやー。こういうイベントごとのグループ分けはその後の関係性に関わるからね。ナイーブになる人も、いるんだよ……」
「つまりあれか?職場見学のグループ分けで自分の思うようなグループに入りたいからチェーンメールを送ったということか?」
「うん。そうだと思う」
「なら、葉山君、書かれているのはあなたの友達、と言ったわね。あなたのグループは?」
「いや、まだ決めてない。とりあえずはその三人の誰かと行くことになると思うけど」
「犯人、わかっちゃったかも・・・・・・」
由比ヶ浜がげんなりした表情で言った。
「説明してもらえるかしら?」
「うん、それってさ、つまりいつも一緒にいる人たちから一人ハブになるってことだよね?四人の中から一人だけ仲間外れができちゃうじゃん。それで外れた人、かなりきついよ」
実感のこもった声に誰もが黙り込んだ。
「……では、その三人の中に犯人がいるとみてまず間違いないわね」
雪ノ下がそう結論を出すと、葉山は反論する。。
「おい、何でそうなる?あいつらは被害者何だぞ、自分で自分の悪評書く意味が解らないんだが?」
「バカかお前、そんなの自分が容疑者じゃないようにするためにわざと書いたんだろ」
「じゃあ100%黒だって証拠は?」
と、負けずに反論をするも。
「確かにこれだけでは犯人だって言えないけど、この人たちが100%白とも言えないでしょう?とりあえず、その人たちのことを教えてくれるかしら?」
と切り返し、雪ノ下が情報の提示を求めると、葉山は頭をボリボリ掻きながらため息をつき、三人の情報を提示するする。
「戸部は、俺と同じサッカー部だ。金髪で見た目は悪そうに見えるけど、一番ノリのいいムードメーカーだな、たまにやかましくて空気を読まない軽薄な部分もあるけど、文化祭とか体育祭とかでも積極的に動いてくれる。少なくとも犯罪するような人間じゃないな」
「騒ぐだけしか能がないお調子者、ということね」
「・・・・・・・」
雪ノ下の一言に葉山は静かながらも憤りを覚えていた。
「?どうしたの?続けて」
急に黙り込んだ葉山に不思議そうな顔を向ける雪ノ下。
葉山は気づかれないようにガンを飛ばしながらも次の人物評に移る。
「大和はラグビー部。冷静で人の話をよく聞いてくれる。どんくさい所があるけどそこが人を安心させるっていうのかな。普通にいい奴だよ」
「反応が鈍いうえに優柔不断・・・・と」
「・・・・・・大岡は野球部だ。人懐っこくていつも誰かの味方をしてくれる気のいい性格だ。上下関係にも気を配って礼儀正しいし、いい奴だよ」
「人の顔色を窺う風見鶏、ね」
と、いい終えると葉山は机に手を叩きつけ、雪ノ下を睨み付ける。
「・・・・・・雪ノ下さんは戸部が愉快犯みたく暴れまわったり、大和が犯行現場を目撃したのを黙ってたり、大岡が麻薬運んでたのを見たって訳?」
「いえ、そんなことないわ、少なくとも私の視点で彼らの事を調べたのだけれど」
「あ・・・そう」
まあ、ここまで一方的に友人の事を糾弾されて黙ってる訳には行かない、すかさず船橋はフォローをする。
「うーんそれだともっと犯人じゃなくなると思うんだけど」
「どうゆうことかしら?」
「その推測が正しいとすると、戸部くんはそんな狡猾な事をするほどおつむは良くないし、鈍い大和くんはチェンメこの事なんて気づかないだろうし、あと他者の誹謗中傷を恐れている大岡君は、そんな自分で自分の首を絞めるような自殺行為は行わないと思うよ」
「まあ、そうと言えばそうだな・・・・」
比企谷が呟くと周りは静かになる。
「うーん、ここまでだと解らないね?」
「少し調査してみる必要があるわね、比企谷君、葉山君、船橋君、由比ヶ浜さん、お願いできるかしら?」
と、雪ノ下は言い一旦打ち切ることになった。
[newpage]
翌日、船橋達は調査に乗り出した。
比企谷は机に突っ伏しながら三人を観察、何かに気がついたようだ。
そして由比ヶ浜はと言うと、三人の関係を三浦、海老名に聞こうとするも三浦は「知るか!!」と怒鳴り付け、海老名は腐女子精神を暴走させ、収拾を付けなくしまっていた。
そして船橋は。
「・・・・よし」
戸部の元へ向かっていた。
船橋の作戦はこうだ、物で釣る。
シンプルかもしれないが結構効果はある。
それに徹清もこう言っていた。
「英一、これで迷惑をかけた人に何かを買ってきてあげなさいその方が謝罪も円滑に進むからな」
といっていた、気を引き閉めて向かっていると。
「?」
野球のグラウンドの外れたところに誰かが双眼鏡で野球部の練習試合を見ていた、制服が違うから少なくともうちの生徒じゃなさそうだ。
気になってみたので声を掛ける事にする。
「あのー」
「うわっ!?」
声を掛けた途端、その人は驚く。
「はービックリさせないでください・・・」
「あ、ゴメン、所で君はなにやっているの?」
「あ、はい相手校の偵察に・・・」
「偵察?」
「そうです、ほら」
と言うと、その人は野球部についてのデータをまとめたノートを見せた。
「へー・・・すごい」
「こんな風に相手校のデータをとっているんです」
船橋は納得する。
「ごめんなさい、邪魔しちゃって」
「いいですよ、もう偵察はすんだので」
と、言うとその少年は荷物を持って去っていった。
「あ、そうだ!戸部くんに会いに行かないと」
急いで戸部のもとへ向かうのであった。
[newpage]
そして数日後、船橋達は奉仕部の部室に集まっていた。
「それじゃ由比ヶ浜さん、なにか分かったことはあるかしら?」
と訪ねるも。
「ゴメン!無理だった!」
三浦に聞いても興味ないと返され、海老名の腐女子トークにヒイヒイ言っていた由比ヶ浜はなにも聞き出すことは出来なかった。
「そう、じゃあ比企谷君と船橋君は?」
「・・・・・・・少なくともお前と一緒に居るときはワイワイ騒いでいたな、分かりやすいくらい仲の良い奴等だと思ったよ」
「解りやすいは余計だけど、なかが良いのは間違いないな」
「じゃあ葉山、お前はお前がいなくなった後のあいつらを見たことがあるか?」
意外な一言に葉山は動揺する。
「どうゆう事だ?」
「要するにお前の友達三人組は、1人と1人と1人というわけだ。葉山は友達だけれど、他の奴は葉山と言う友達の友達。つまりお前を介してしか繋がってなかったということだ。事実、お前が先生に呼ばれたとかで席を立つと、途端に黙り込んでたぞ」
「あ、ああ~。それすごいわかる……。会話回してる人がいなくなると何していいかわかんなくて、つい携帯とかいじっちゃうんだよね……」
由比ヶ浜が共感している隣では、葉山が苦々しい顔をしていた。
衝撃の事実が信じられないようだ。
「なるほど、じゃあこれもパチじゃないわけか・・・・」
「何なの?」
船橋の発言に皆は視線を移す。
「いやさこの前、戸部くんと大和くんと大岡くんにちょっと聞き込み調査したんだけとさ、三人ともこんな事を言ってたんだよ
「実はあの二人の事よく知らない」ってさ」
「なんだって!?」
「そうだったの!?」
由比ヶ浜と葉山は声を荒立てる。
「そうなんだよ」
と、船橋は以前の事を思い出していた。
[newpage]
数日前、
船橋が偵察をしていた少年と別れた後、戸部と対面していた。
「ちょっと良いかな?」
「うわっ、船橋君・・・・・・」
戸部は驚き、引いてしまう。
どうもこの前の一件から苦手に思われているようだ。
「えーっと・・・この前はごめんね、ちょっと、意識すっ飛んでたって言うか・・・・」
「あーいいよいいよ、気にしてないから・・・・・」
と、苦笑いしつつ答えた。
そして船橋は気を取り直して話を進めた。
「あのさ、今日の放課後空いてる?」
「空いてるけど」
「じゃあゲーセンに遊びに行かない?奢るからさ」
と言って、船橋は五千円札を取り出す。
「え!?こんなに!?」
「うん良いよ、ガンガン使って」
「うおーっ!あざーすっ!!早速行こうべ!!」
と言うと船橋と戸部はゲーセンに向かった。
「うららららら!!」
「・・・・・・・・」
シューティングゲーム、クレーンゲームをハシゴしていく中、早速船橋はあの話をする事にした。
「あのさ、戸部くん」
「なんたべ?」
「大和くんと大岡くんの事なんだけどさ、大和君はモテモテで、大岡君は野球で大活躍だって知ってた?」
「え、そうだったの?」
意外な回答に船橋は困惑する。
「あれ?知らないの?いつも一緒に居るのに?」
「あー・・・・・・ぶっちゃけ言うとね、俺あの二人の事よく知らないんだわ」
「何で?」
「いや~何でかって言うと・・・あの二人自分から誘った訳じゃなくて隼人くんが紹介してきたらからな~だからその、興味ないっていうか・・・・・・」
[newpage]
「とまあ、大和君も大岡君も同じような事を言ってたよ」
と、船橋の話を聞いて特に葉山は言葉を失う。
「うーん、三人ともお互いの事を知らないとなると悪口の書きようが無いと思うなー・・・」
「・・・・確かに、その人の事を知らないようじゃ悪口なんて言えないわね」
「じゃあ、犯人は三人の中じゃなくて他の人間って事?」
「そうなるかな?」
そのやり取りを聞いた後、葉山は考え込んだ後。
「・・・・・・それじゃあ、犯人探しは難しいな」
「あら?諦めるの?」
「探しようがないだろ、ケータイ使っている人はたくさんいるんだから、いちいち探してたら何年かかると思う?」
雪ノ下は黙りこむ、確かに三人以外となってしまうとこれ以上の探索は難しいだろう。
すると比企谷が。
「ひとつだけ丸く納める方法があるぞ」
「え?何?」
「葉山。お前がこの三人の前で宣言しろ。『俺は他の人とグループを作る』と。結局はお前が誰とグループを組むか分からないから犯人は今回の行動に及んだんだ。お前がはっきりすればこんなふざけたメールは来なくなると思うぞ」
「……そうか。分かった。明日あいつらの前でそう言ってみるよ」
「その後どうなるかはお前次第だ。この三人の仲が悪くなったとしてもそこまでは関与しない」
「いや、充分だ。助かったよ。これをきっかけにあいつらの仲がより良いものになればいいからな」
[newpage]
そして、下校しようとすると比企谷と出会した。
「あれ?比企谷君?君も自転車なの?」
「お前、何でここにいるんだよ?」
「いや、僕も自転車通学だから・・・・・」
そして、このまま帰るのも難なので途中まで一緒に帰ることにした
「結局さ、チェーンメールの犯人って誰だったんだろうね?」
「知らねーよ興味ねーし」
「ははは・・・あれ?」
船橋はある少年を目にするあの人は確か偵察に来ていた人だ。
船橋は声を掛けようとすると、その人はそそくさと去ってしまった。
「・・・行っちゃった」
「なんだ?知り合いか?」
「いや、知り合いじゃないけど、あの子以前ここの偵察していたんだよ」
「ふーん」
このときの僕は全然知らなかったんだ。
あの少年が、僕らの運命を、僕の知っている物語を大きく狂わせてしまう元凶だったという事に。
はじめましての人ははじめまして、キタロ-です。
結局犯人は誰だったんでしょうね?こっちでは三人以外の誰かという事にしてますが。
一説では海老名さんが挙げられてるらしいです。
あと、さっき出た偵察君は後の方でまた出てきます、どんな風で出てくるのかは後のお楽しみにと言うわけで。
次回、その慈悲は、願いは、善か、悪か。
乞うご期待。