第一章までは連投します
道化師と緑
「……おい」
「うん? 何かな?」
場所は日本の某所、ここ三十年で観光地として確立した都市である。名前は
「群青、儀式の準備はまだかと聞いているんだ」
「八割方終わったよ。後は役者を配置するだけだね」
カラカラと笑うかのような声は、透き通っているにも関わらず、年齢も性別も特定できなかった。
「ふん……まぁ遂行できるならばそれでいい。英霊共を出し抜いて、景品だけかっさらおうではないか」
「あはははっ! 儀式に参加すらしない
「漁夫の利ができるならばそれに越したことはない。そもそもがこの儀式には私の力が不可欠。ならばそれは私の功績と言える」
「まぁ色々な魔術を
「当然だ」
あくまで傲慢な態度をやめない女に群青と呼ばれた人物は何が面白いのか笑い続ける。それに眉をしかめるが、何を言っても無駄だと諦めた。
「開催は大体三週間後、既に数人には招待状を送ったよ。気の早い者達はもうこの街に居るみたいだね」
「ほぅ……そういえばこのところ街で謎の殺人事件が起きていたか、だがしかし役者たり得るのか?」
すうっと瞳を薄めると、眼鏡越しの視線が、物理的に圧力を帯びているかのように錯覚する。仮面の人物の仮面が割れていく。
「もちろんだよ、ミスグリーン。全員顔見知りでね。中々の
「ならいい、では空いた枠はどうするつもりだ?」
「それは聖杯が選ぶだろうさ、模造品の劣化品とはいえ、聖杯だからね……おっと! 何するのさ?」
仮面の男の背後の扉が轟音を立てて吹き飛ぶ。横に飛んでいなければ、仮面の男の手が扉の代わりになっていただろう。
女は殺意を漲らせ、その瞳はハッキリと青黒く輝いていた。
「貴様……私の聖杯を模造品と抜かすか……劣化品と抜かすか!」
「あぁそこに怒ってるのか、そうは言うけどね。
その言葉に、女は歯軋りする。怒りからか、目の前のテーブルを蹴り上げると、喚き散らした。
「黙れ! あれは私の最高傑作! 第三魔法に迫らんと生み出された至高の杯だ! もはや再現不可能に近い技術を未だに残る魔術で補い、正常に作動させた! 貴様如きが、
「いやいや、結局完成しきらなくて、結局私が手伝ったんじゃないか。まるで自分一人の手柄みたいに言わない方がいい」
「黙れぇぇぇ!!! あれは私の物だ! 貴様には渡さんぞ!」
「……やれやれ、じゃあ仕方ないか」
仮面の男は肩を
反撃に魔圧の魔眼を発動するが、そこに既に男の姿はなかった。追撃に備えるが、しばらく待ってもそれはなかった。
「……逃げた? クソッ! 忌々しい奴だ。私の物を掠め取ろう等と!」
地団駄を踏み、仕留め損なった事に怒りを抱く。
「まぁいいだろう……既に儀式の準備は終わっている。であればもはや奴に用はない」
それは先程仮面の男から聞いただけの情報であるにも関わらず、信用している上に、まるで自分が用意したかのような言い草だが、本人にそれを自覚している様子はない。
これからの自分の栄光を妄想し、ニヤニヤと笑みを浮かべていた。
「さて、では聖杯の最終調整でもするか、万が一でも不備があってはならんからな」
自分で言いながらそれは無いだろうと根拠も無く確信していた。
「では行こうではないか、これこそが栄光の始ま……」
閃光、同時に熱と轟音。部屋は跡形もなく消し飛び、中に誰かが居たのかすら分からない。骨の欠片も残さず、痕跡は皆無だった。
「やれやれ……もう少し遊びたかったのになぁ。まぁこうなっては仕方がない。部屋に仕掛けられた起爆魔術に気付かない程度の実力しかなかったし、もうあれの役目は終わったからね」
この男、本名不明、年齢不明、性別不明、人種不明。分かっているのは世界各地で出没し、一度現れたのなら、必ず災いを招くと言われていた。
人呼んで極東の群青、笑う
「あぁでも聖杯の場所を聞き忘れたな。やれやれ、探し物から始めなきゃならないなんて……
数年前には
「さぁ今宵の祭りを始めよう」